JP4470329B2 - 燃料電池発電装置およびその運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、据付け型の燃料電池発電装置、特に空調設備を備えたビル等の特定建造物に、使用電力を賄うための発電設備として設置される燃料電池発電装置、ならびにその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2は、従来のこの種の燃料電池発電装置の反応ガス系と冷却水系の基本構成例を示すフロー図である。図において、1は燃料改質器、2はCO変成器、3は燃料電池本体、4は水蒸気分離器、5は電池冷却水循環ポンプ、6は生成水回収装置、7は回収水循環ポンプ、8は熱回収装置、9は水回収用空冷式熱交換器であり、10は回収水ポンプ、11は水処理装置、12は給水ポンプである。
【0003】
図に見られるように、外部から導入した原燃料を水蒸気分離器4から供給される水蒸気と混合して燃料改質器1に送り、水蒸気改質して水素濃度の高い改質ガスとし、さらにCO変成器2でCO濃度を低減させる処理を行って得られた燃料ガスが、燃料電池本体3の燃料極に供給される。
【0004】
また、燃料電池本体3の空気極には図示しないブロアーにより取り込まれた空気が供給される。燃料極より排出された燃料極オフガスは、燃料改質器1の燃焼器へと送られ、燃焼させて改質触媒の加熱に用いられる。燃焼生成水を含んだ約 200℃の高温の燃焼排ガスは生成水回収装置6へと送られ、生成水が回収される。また、空気極より排出される約 160℃の空気極オフガスには電気化学反応に伴う反応生成水が含まれており、この反応生成水を回収するために、空気極オフガスも生成水回収装置6へと送られる。電気化学反応は発熱反応であり、発電運転に伴って熱が発生する。
【0005】
このため、水蒸気分離器4の電池冷却水を電池冷却水循環ポンプ5によって燃料電池本体3の冷却機構へと送って冷却し、燃料電池本体3の温度を所定の温度に保持している。電池冷却水は、燃料電池本体3の発熱を吸収して高温の気液二相流となって水蒸気分離器4へ戻され、電池冷却水と水蒸気とに分離される。分離された水蒸気は上記の改質用水蒸気として用いられる。本燃料電池発電装置は、外部から補給水を持ち込まなくとも連続運転の可能な水自立式の装置として構成されており、生成水回収装置6へ送られた燃焼排ガスに含まれる燃焼生成水および空気極オフガスに含まれる反応生成水を回収し、その一部を電池冷却水循環系へ送って、水蒸気改質用として使用される水蒸気量に相当する水量を補っている。
【0006】
すなわち、生成水回収装置6においては、凝縮水タンク6bに凝縮された約 50 ℃の回収水を、回収水循環ポンプ7によって水回収用空冷式熱交換器9に送り、大気冷却によって約 40 ℃に冷却したのち凝縮水タンク6bの上部に備えられた排ガス冷却器6aに送り込み、約 200℃の燃焼排ガスや約 160℃の空気極オフガスと直交流で接触させることにより、これらのガスを約 50 ℃に冷却し、この温度降下によってガスに含まれる水蒸気を凝縮させて回収水を取出している。取出された回収水の一部は、回収水ポンプ10によって水処理装置11へ送られて純化され、そののち給水ポンプ12によって昇圧されて電池冷却水循環系へと送られており、この純水の供給によって水蒸気改質用として使用された水蒸気量に相当する水量が補われている。
【0007】
なお、回収水循環系の水回収用空冷式熱交換器9の前段に組み込まれた熱回収装置8は、ユーザーの要求に対応して適宜外部へ熱を取出すための装置で、二次系に流れる外部からの水を加熱して利用するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のごとき従来の燃料電池発電装置は、冷却水系が水自立式として構成されているため、外部から補給水を持ち込まなくとも連続して運転できるという優れた特徴を持つ。水自立式にするためには生成水を含んだ高温の燃焼排ガスおよび/あるいは空気極オフガスを冷却して回収水を取出す必要があり、図2に示したごとく、水回収用空冷式熱交換器9を備えた回収水循環系を通流させることによって回収水を冷却する方法が採られている。
【0009】
しかしながら回収水を冷却するためには多量の熱を外部へ取出す必要があり、組み込まれる水回収用空冷式熱交換器9は大型の熱交換器となる。特に、この空冷式の熱交換器は、大気温度によって性能が変化し、大気温度が高いほど性能が低下するので、大気温度が高くなる夏場の温度条件を基準に設計、製作されている。このため、熱交換器はより大型となり、かつ高価となるという問題点がある。さらに、大気温度が低くなる冬場には熱交換器の性能が上昇し、回収水量が過剰となるので、余剰の回収水は外部へ排出せざるをえないという不具合を生じている。
【0010】
本発明の目的は、上記のごとき従来技術の難点を解消し、大型の水回収用空冷式熱交換器を用いなくとも電池冷却水量が適正に保持され、さらには、余剰の回収水が有効に使用される燃料電池発電装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明においては、
燃料ガスと空気を導入して電気化学反応により発電を行う燃料電池本体と、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを得る燃料改質器と、燃料電池本体に電池冷却水を循環供給するとともに燃料ガスの水蒸気改質に用いられる水蒸気を供給する電池冷却水系と、燃料電池本体で生じた反応生成水と燃料改質器で生じた燃焼生成水のうち少なくともいずれか一方を凝縮させて回収し、適宜電池冷却水系へと供給すると共に、一部を空冷式熱交換器で冷却して前記凝縮のための冷媒として用いる生成水回収系とを備える燃料電池発電装置で、かつ、空調設備を備えた特定建造物の発電設備として設置されるものにおいて、
(1)冷房運転時に上記の空調設備より排出される除湿水の少なくとも一部を、空調設備より生成水回収系へと供給する配管を備えることとする。
【0012】
(2)また、得られた回収水の一部を、生成水回収系より空調設備の加湿器へと供給する配管を備えることとする。
(3)さらに、(1)のごとく構成した燃料電池発電装置を、
空調設備の冷房運転時には、生成水を凝縮して得た回収水の電池冷却水系への供給を停止し、空調設備の除湿水の少なくとも一部を生成水回収系を介して電池冷却水系へと導入して燃料電池発電装置を運転し、
空調設備の冷房運転が行われない時には、空調設備の除湿水の供給を停止し、生成水を凝縮して得た回収水を生成水回収系より電池冷却水系へと導入して燃料電池発電装置を運転することとする。
【0013】
(4)また、(2)のごとく構成した燃料電池発電装置を、
空調設備の加湿運転時には、回収水の少なくとも一部を生成水回収系より空調設備の加湿器へと供給して燃料電池発電装置を運転し、
空調設備の加湿運転が行われない時には、生成水回収系より空調設備の加湿器への回収水の供給を停止して燃料電池発電装置を運転することとする。
【0014】
空調設備を備えた特定建造物の発電設備として設置される燃料電池発電装置は、例えば 100 kW のりん酸型燃料電池発電装置の場合、最大 50kW 相当の熱エネルギーを冷房用として空調設備に供給することができる。この空調設備で冷房運転を行うと、冷凍機の効率は約 70 %であるので、約 35kW の冷凍出力が得られる。この出力で冷房運転を行うと、冷却風量 120 m3/min を吐出して約 400 m2 の空調面積の室内温度を 35 ℃から 20 ℃まで降下させることができる。このとき室内空気の湿度を 75 %(東京の8月の平均湿度)とすれば、温度降下によって除湿されて凝縮する水の量は約 97 kg/hとなる。一方、100 kWのりん酸型燃料電池発電装置を水自立方式により運転する際に電池冷却水循環系に補給しなければならない回収水の量は 65 kg/hであるから、上記の空調設備で冷房運転に伴って生じる除湿水を用いれば、電池冷却水循環系への補給水が十分に賄え、生成水回収系からの回収水の供給は不要となる。なお、上記では50kWを空調設備の冷房用に使用するものとしているが、約 35 kWの発電電力、したがって約 25 kWの冷凍出力によって所要補給水量に相当する約 65 kg/hの除湿水が得られるので、冷房用の電力がこの値以上であれば、生成水回収系からの回収水の供給は不要となる。
【0015】
したがって、上記(1)のごとく燃料電池発電装置を構成し、さらに上記(3)のごとき方法により運転することとすれば、生成水回収系は、空調設備の冷房運転が行われない時期、すなわち大気の温度が低く、空冷式熱交換器の効率の高い時期にのみ運転すればよいので、生成水回収系に用いる空冷式熱交換器の所要伝熱面積は従来装置に比べて大幅に低減され、小型で安価な空冷式熱交換器を組み込めばよいこととなる。
【0016】
また、生成水回収系に用いる空冷式熱交換器は大気の温度が低くなればなるほど効率が高まり回収される凝縮水の量も増大する。特に低温となる冬季には凝縮水量が過剰となる。したがって、上記(2)のごとく燃料電池発電装置を構成し、さらに上記(3)のごとき方法により運転することとすれば、余剰の凝縮水が空調設備の加湿運転に有効に使用され、水道使用料が低減されることとなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の燃料電池発電装置の反応ガス系と冷却水系の基本構成例を示すフロー図である。
本実施例の構成の図1に示した従来例の構成との相違点の第1は、生成水回収装置6の凝縮水タンク6bに凝縮された回収水を電池冷却水循環系へと送る配管に、冷房運転時に空調設備13より排出される除湿水を供給する配管が連結されていることにあり、第2の相違点は、回収水を電池冷却水循環系へと送る配管に、回収水の一部を空調設備13の加湿器13aへと送る分岐管が連結されていること、第3の相違点は、回収水循環系に組み込まれている水回収用空冷式熱交換器9Aが、従来例の構成の水回収用空冷式熱交換器9に比べて大幅に小型化されている点にある。
【0018】
すなわち、本実施例の構成では、夏季に空調設備13の冷房運転により得られる除湿水を除湿水タンク14に送りこみ、さらに除湿水回収ポンプ15で除湿水専用凝縮水タンク16へと送りこんだのち、電池冷却水循環系へと送っている。既に述べたように、冷房運転で得られる除湿水の量は電池冷却水循環系が必要とする補給水量を賄うに十分な水量であるため、生成水回収装置6の凝縮水タンク6bに凝縮された回収水を水を電池冷却水循環系に送る必要はない。したがって、空調設備13の冷房運転時には、凝縮水タンク6bの回収水の温度を通常運転時の約 50 ℃に限定する必要はなく、ユーザー側の使用する熱回収装置8の要求に対応して、最大100 ℃の範囲内で変更することができる。それゆえ、水回収用空冷式熱交換器9Aは、空調設備13の冷房運転時、すなわち大気温度が高く効率が低下する夏季には回収水を低温へ冷却する必要がなく、大気温度が低く熱交換器の効率が向上するシーズンにのみ回収水を低温へ冷却すればよいので、従来例の構成で用いられていた水回収用空冷式熱交換器9に比べて伝熱面積が半分以下の小型の水回収用空冷式熱交換器9Aにより所定の冷却が可能となる。
【0019】
水回収用空冷式熱交換器9は、上記のように大気温度が低下するとともに効率が向上し、特に温度が低くなる冬季には効率が高くなる。したがって、多量の回収水が凝縮水タンク6bに凝縮することとなる。回収水を電池冷却水循環系へと送る配管と空調設備13の加湿器13aとの間に連結された分岐管は、冬季に余剰となる凝縮水の一部を加湿器13aへと導入して室内の乾燥防止に使用するためのものであり、給水ポンプ12で昇圧後の水が分岐、供給されている。
【0020】
なお、図1に示した実施例の構成では、除湿水を除湿水タンク14、さらに除湿水回収ポンプ15を用いて除湿水専用凝縮水タンク16へと送りこんだのち、電池冷却水循環系へ供給するように構成しているが、空調設備13から生成水回収装置6の凝縮水タンク6bへ送ることとしてもよい。すなわち、凝縮水タンク6bは大気開放タンクであるので、空調設備13が凝縮水タンク6bより高い位置にあれば、空調設備13から凝縮水タンク6bへ直接送ることとすればよく、空調設備13がほぼ同レベルか低い位置にある場合には、除湿水タンク14に一旦受けたのち除湿水回収ポンプ15によって凝縮水タンク6bへ送ることとすればよい。
【0021】
【発明の効果】
上述のごとく、本発明においては、
(1)請求項1に記載のごとく燃料電池発電装置を構成し、さらに請求項3に記載のごとき方法により運転することとしたので、生成水回収系に組み込まれる空冷式熱交換器が小型となり、コンパクトで低コストの燃料電池発電装置が得られることとなった。
【0022】
(2)また、請求項2に記載のごとく燃料電池発電装置を構成し、さらに請求項4に記載のごとき方法により運転することとすれば、余剰の回収水が空調設備の加湿運転に有効に使用され、水道使用料が低減されるので、運転コストの安い燃料電池発電装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池発電装置の反応ガス系と冷却水系の基本構成例を示すフロー図
【図2】従来のこの種の燃料電池発電装置の反応ガス系と冷却水系の基本構成例を示すフロー図
【符号の説明】
1 燃料改質器
3 燃料電池本体
4 水蒸気分離器
5 電池冷却水循環ポンプ
6 生成水回収装置
6a 排ガス冷却器
6b 凝縮水タンク
7 回収水循環ポンプ
8 熱回収装置
9,9A 水回収用空冷式熱交換器
10 回収水ポンプ
11 水処理装置
12 給水ポンプ
13 空調設備
13a 除湿器
14 除湿水タンク
15 除湿水回収ポンプ
16 除湿水専用凝縮水タンク
Claims (4)
- 燃料ガスと空気を導入して電気化学反応により発電を行う燃料電池本体と、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを得る燃料改質器と、燃料電池本体に電池冷却水を循環供給するとともに燃料ガスの水蒸気改質に用いられる水蒸気を供給する電池冷却水系と、燃料電池本体で生じた反応生成水と燃料改質器で生じた燃焼生成水のうち少なくともいずれか一方を凝縮させて回収し、適宜電池冷却水系へと供給すると共に、一部を空冷式熱交換器で冷却して前記凝縮のための冷媒として用いる生成水回収系とを備える燃料電池発電装置で、かつ、空調設備を備えた特定建造物の発電設備として設置されるものにおいて、
冷房運転時に前記の空調設備より排出される除湿水の少なくとも一部を、空調設備より前記の生成水回収系へと供給する配管が備えられていることを特徴とする燃料電池発電装置。 - 燃料ガスと空気を導入して電気化学反応により発電を行う燃料電池本体と、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを得る燃料改質器と、燃料電池本体に電池冷却水を循環供給するとともに燃料ガスの水蒸気改質に用いられる水蒸気を供給する電池冷却水系と、燃料電池本体で生じた反応生成水と燃料改質器で生じた燃焼生成水のうち少なくともいずれか一方を凝縮させて回収し、適宜電池冷却水系へと供給すると共に、一部を空冷式熱交換器で冷却して前記凝縮のための冷媒として用いる生成水回収系とを備える燃料電池発電装置で、かつ、空調設備を備えた特定建造物の発電設備として設置されるものにおいて、
得られた回収水の一部を、前記の生成水回収系より前記の空調設備の加湿器へと供給する配管が備えられていることを特徴とする燃料電池発電装置。 - 請求項1に記載の燃料電池発電装置の運転方法において、
空調設備の冷房運転時には、生成水を凝縮して得た回収水の電池冷却水系への供給を停止し、空調設備の除湿水の少なくとも一部を生成水回収系を介して電池冷却水系へと導入して燃料電池発電装置を運転し、
空調設備の冷房運転が行われない時には、空調設備の除湿水の供給を停止し、生成水を凝縮して得た回収水を生成水回収系より電池冷却水系へと導入して燃料電池発電装置を運転することを特徴とする燃料電池発電装置の運転方法。 - 請求項2に記載の燃料電池発電装置の運転方法において、
空調設備の加湿運転時には、回収水の少なくとも一部を生成水回収系より空調設備の加湿器へと供給して燃料電池発電装置を運転し、
空調設備の加湿運転が行われない時には、生成水回収系より空調設備の加湿器への回収水の供給を停止して燃料電池発電装置を運転することを特徴とする燃料電池発電装置の運転方法。
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