本発明の不織布は機械的強度に優れているように、非パルプ状繊維を含んでいる。この「非パルプ状繊維」とは1本の繊維から枝分かれした微細繊維(フィブリル)が発生していない繊維を意味する。
本発明の非パルプ状繊維は繊維形態を維持し、機械的強度を不織布に付与できるように、後述のような熱可塑性樹脂の融点よりも高い(好ましくは10℃以上高い、より好ましくは20℃以上高い)融点又は炭化温度を有する樹脂からなる。
非パルプ状繊維を構成する樹脂は熱可塑性樹脂との関係で決まるため特に限定するものではないが、汎用性に優れる不織布であるように、耐熱性に優れているのが好ましいことから、非パルプ状繊維は融点又は炭化温度が300℃以上の樹脂からなるのが好ましい。好適な非パルプ状繊維構成樹脂としては、「融点が300℃以上の樹脂」として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイドなどを挙げることができ、また、「炭化温度が300℃以上の樹脂」として、メタ系全芳香族ポリアミド、パラ系全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリベンズイミダゾール、全芳香族ポリエステルなどを挙げることができる。これらの中でも、全芳香族ポリアミド(メタ系全芳香族ポリアミド、パラ系全芳香族ポリアミド)又は全芳香族ポリエステルは、特に耐熱性に優れているため好適である。
この好適である全芳香族ポリアミド非パルプ状繊維及び/又は全芳香族ポリエステル非パルプ状繊維は、耐熱性に優れているように、非パルプ状繊維の50mass%以上を占めているのが好ましく、70mass%以上を占めているのがより好ましく、90mass%以上を占めているのが更に好ましく、100mass%を占めているのが最も好ましい。
本発明における「融点」は、JIS K 7121に規定されている示差熱分析により得られる示差熱分析曲線(DTA曲線)から得られる融解温度をいい、「炭化温度」は、JIS K 7120に規定されている熱重量測定を行い、試験片の質量が5%減量した時点での温度とする。
このような非パルプ状繊維の繊度は緻密な構造をもつ不織布で、電気絶縁性、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性などの各種性能に優れているように、1dtex以下であるのが好ましく、0.8dtex以下であるのがより好ましい。
また、非パルプ状繊維の繊維長は緻密な構造をもつ不織布で、電気絶縁性、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性などの各種性能に優れているように、0.1〜15mmであるのが好ましく、0.1〜10mmであるのがより好ましく、0.1〜5mmであるのが更に好ましい。
本発明における「繊度」はJIS L 1015に規定されているA法により得られる値をいい、「繊維長」はJIS L 1015のB法(補正ステープルダイヤグラム法)により得られる長さをいう。
このような非パルプ状繊維は不織布に機械的強度を付与できるように、不織布中、5mass%以上含まれているのが好ましく、10mass%以上含まれているのがより好ましい。他方、後述のパルプ状繊維及び熱可塑性樹脂との関係から、30mass%以下であるのが好ましく、25mass%以下であるのがより好ましい。なお、非パルプ状繊維は樹脂組成、繊度、及び/又は繊維長の点で異なる2種類以上の非パルプ状繊維を含んでいても良い。2種類以上の非パルプ状繊維を含んでいる場合には、その合計質量が前記範囲内にあるのが好ましい。
本発明の不織布は緻密な構造をもち、電気絶縁性、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性などの各種性能に優れているように、パルプ状繊維を含んでいる。この「パルプ状繊維」とは1本の繊維から枝分かれした微細繊維(フィブリル)が発生した繊維を意味する。このようなパルプ状繊維は繊維形態を維持できるように、後述のような熱可塑性樹脂の融点よりも高い(好ましくは10℃以上高く、より好ましくは20℃以上高い)融点又は炭化温度を有する樹脂からなる。
このパルプ状繊維を構成する樹脂も熱可塑性樹脂との関係で決まるため特に限定するものではないが、汎用性に優れる不織布であるように、耐熱性に優れているのが好ましいことから、パルプ状繊維も融点又は炭化温度が300℃以上の樹脂からなるのが好ましい。この融点又は炭化温度が300℃以上の樹脂は非パルプ状繊維を構成できる樹脂と同様の樹脂から構成することができ、非パルプ状繊維の場合と同様に、全芳香族ポリアミド(メタ系全芳香族ポリアミド、パラ系全芳香族ポリアミド)又は全芳香族ポリエステルからなるのが好ましい。好適である全芳香族ポリアミドパルプ状繊維及び/又は全芳香族ポリエステルパルプ状繊維は、耐熱性に優れているように、パルプ状繊維の50mass%以上を占めているのが好ましく、70mass%以上を占めているのがより好ましく、90mass%以上を占めているのが更に好ましく、100mass%を占めているのが最も好ましい。
このようなパルプ状繊維の濾水度は緻密な構造をもつ不織布で、電気絶縁性、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性などの各種性能に優れているように、300mlCSF以下であるのが好ましく、200mlCSF以下であるのがより好ましく、100mlCSF以下であるのが更に好ましい。なお、50mlCSF以上であるのが好ましい。このような濾水度のパルプ状繊維は、例えば、リファイナー、パルパー、ビーター、ミル、或いは高圧ホモジナイザー等によりフィブリル化して、又はフィブリル化を促進させて得ることができる。本発明における「濾水度」はJIS P8121 カナダ標準ろ水度試験方法により測定した値をいう。
このようなパルプ状繊維は緻密な不織布であることができるように、不織布中、35mass%以上含まれているのが好ましく、50mass%以上含まれているのがより好ましく、60mass%以上含まれているのが更に好ましく、65mass%以上含まれているのが更に好ましい。他方、前述の非パルプ状繊維及び後述の熱可塑性樹脂との関係から、75mass%以下であるのが好ましく、70mass%以下であるのがより好ましい。パルプ状繊維は樹脂組成及び/又は濾水度の点で異なる2種類以上のパルプ状繊維を含んでいても良い。2種類以上のパルプ状繊維を含んでいる場合には、その合計質量が前記範囲内にあるのが好ましい。
本発明の不織布においては、上述のような非パルプ状繊維及びパルプ状繊維以外にガラス繊維を含んでいることができる。このようなガラス繊維を含んでいることによって、加圧によって潰れにくく、空隙を維持できるため、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性等に優れている。
このようなガラス繊維の繊維径(円形断面に換算した値)は特に限定するものではないが、緻密な構造を有する不織布であることができ、電気絶縁性、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性などの各種性能に優れているように、3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのがより好ましく、1μm以下であるのが更に好ましい。他方、0.001μm以上であるのが好ましく、0.01μm以上であるのがより好ましい。また、ガラス繊維の繊維長は特に限定するものではないが、緻密な不織布であることができるように、0.1〜15mmであるのが好ましく、0.1〜10mmであるのがより好ましく、0.1〜5mmであるのが更に好ましい。
このような繊維径の小さいガラス繊維は、例えば、静電紡糸法により製造することができる。より具体的には、特開2003−73964号に開示されている方法により製造することができる。つまり、(1)テトラエトキシシランを主体とするゾル溶液を形成する工程、(2)前記ゾル溶液をノズルから押し出すとともに、押し出したゾル溶液に電界を作用させることにより細くして、ゲル状細繊維を形成し、支持体上にゲル状細繊維を集積させる工程、(3)前記集積させたゲル状細繊維を乾燥して、乾燥ゲル状細繊維を形成する工程、及び(4)前記乾燥ゲル状細繊維を焼結する工程、によってガラス繊維を製造することができる。なお、このような静電紡糸法によって製造したガラス繊維は一般的に繊維が連続した長繊維であるため、非パルプ状繊維やパルプ状繊維と混合できるように、ゲル状細繊維、乾燥ゲル状細繊維、或いはガラス繊維を切断するのが好ましい。また、静電紡糸法によって製造したゲル状細繊維をコンベアなど支持体上に集積させると、ゲル状細繊維同士が接着した状態となりやすく、また、焼結することによっても接着した状態となりやすいため、焼結後(好ましくは切断した後)に、水中に投入し、リファイナー、パルパー、ビーター、ミル、或いは高圧ホモジナイザー等で個々のガラス繊維に分離させるのが好ましい。なお、リファイナー、パルパー、ビーター、ミル、或いは高圧ホモジナイザー等を使用することによって、ガラス繊維を切断することもできる。
このようなガラス繊維の不織布全体における質量比率は、非パルプ状繊維、パルプ状繊維及び熱可塑性樹脂との関係から、40mass%以下であるのが好ましい。
本発明の不織布は前述のようなパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点が、非繊維状態の熱可塑性樹脂によって固定されているため、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性等に優れている。つまり、熱可塑性樹脂は繊維のように長く伸びる直線状又は曲線状の皮膜を形成しておらず、面ではなく点で固定した状態にあるため、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性等に優れている。このように、「非繊維状態」とは熱可塑性樹脂が連続した皮膜を形成していないことを意味する。このような状態は、不織布表面における電子顕微鏡写真によって確認することができる。なお、熱カレンダー等によって熱と圧力を同時に作用させ、繊維を融着又は圧着させた場合には、非繊維状態とすることは困難である。
また、熱可塑性樹脂は不織布の厚さ方向において、偏在していないのが好ましい。偏在していないことによって、熱可塑性樹脂量が同じであれば、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性等に優れているためである。このような状態はエマルジヨン型接着剤によってパルプ状繊維及び非パルプ状繊維を接着した場合には困難である。つまり、エマルジョン型接着剤で接着するために乾燥した場合、液体(通常水)の揮発に伴って接着剤も不織布表面へ移動(いわゆるマイグレーション)するためである。
この熱可塑性樹脂は前述のようなパルプ状繊維及び非パルプ状繊維を構成する樹脂の融点又は炭化温度よりも低い融点(好ましくは10℃以上低い融点、より好ましくは20℃以上低い融点)をもつ熱可塑性樹脂から構成されていれば良く特に限定するものではないが、例えば、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなど)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1など)、ポリ塩化ビニリデン樹脂、などを挙げることができる。これら熱可塑性樹脂の中でも、耐熱性に優れているように、200℃以上(好ましくは210℃以上、より好ましくは220℃以上)の融点をもつ熱可塑性樹脂からなるのが好ましく、このような200℃以上の融点をもつ熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなど)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、などを挙げることができ、これらの中でも、耐熱性に優れているポリエステル樹脂が好適である。
このような熱可塑性樹脂は不織布の機械的強度に優れているように、不織布の20mass%以上を占めているのが好ましい。他方、パルプ状繊維及び非パルプ状繊維との関係から、35mass%以下を占めているのが好ましく、30mass%以下を占めているのがより好ましい。なお、熱可塑性樹脂は樹脂組成の点で異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を含んでいても良い。2種類以上の熱可塑性樹脂を含んでいる場合には、その合計質量が前記範囲内にあるのが好ましい。
本発明の不織布は前述のようなパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点を、熱可塑性樹脂が非繊維状態で固定したものであるが、その状態は通気度に反映される。つまり、皮膜を形成していると、通気性が低くなるが、本発明のように皮膜が形成されていないと、通気性が高くなるのである。より具体的には、本発明の不織布の通気度は120s/100ml以下であるのが好ましく、100s/100ml以下であるのがより好ましい。この「通気度」はJIS P8117に規定するガーレー試験機(B型)に、直径5mmのアダプターをガスケットの先に装着した状態で測定した値をいう。
本発明の不織布は、目付が5〜30g/m2、厚さが17〜55μm、かつ見掛密度が0.32〜0.6g/cm3であるのが好ましい。不織布がこのような物性を同時に満足すると、薄くしかも空隙が多いことによって、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性等に優れているためである。つまり、不織布の目付が5g/m2未満であると、不織布の均一性が損なわれる傾向があり、30g/m2を越えると、厚さが厚くなりやすく、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性等が悪くなる傾向がある。また、不織布の厚さが17μm未満であると、基本的性能である電気絶縁性能、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性などの各種性能が悪くなる傾向にあり、厚さが55μmを越えると、不織布の利点を生かすことができない傾向があるためで、より好ましい厚さは20〜50μmである。更に、不織布の見掛密度が0.32g/cm3未満であると、機械的強度が弱くなり、取り扱いにくくなる傾向があり、見掛密度が0.6g/cm3を越えると、緻密な構造となりすぎて、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性等が悪くなる傾向がある。この「目付」はJIS P 8124(紙及び板紙−坪量測定方法)に規定する方法に基いて得られる坪量をいい、「厚さ」はJIS B 7502に規定する方法による測定値、すなわち、5N荷重時の外側マイクロメーターによる測定値をいい、更に、「見掛密度(D、単位:g/cm3)」は目付(W、単位:g/cm2)を厚さ(T、単位:cm)で除した商、つまり、次の式から得られる値をいう。
D=W/T
本発明の不織布は上述のような目付、厚さ、見掛密度を有する、目付が比較的小さく、空隙の多いものであるにもかかわらず、少なくとも一方向における引張り強さが10N/15mm幅以上(より好ましくは11N/15mm幅以上)と引張り強さが高く、取り扱いやすいものであるのが好ましい。このような引張り強さをもつ方向はどの方向であっても良いが、不織布はその長手方向に対して張力をかけながら取り扱う場合が多いため、不織布の長手方向における引張り強さが10N/15mm幅以上であるのが好ましい。なお、「引張り強さ」は、不織布から長方形の試料(幅:15mm、長さ:200mm)を採取した後に、JIS P−8113に準じ、引張り試験機((株)オリエンテック社製、UCT−500)を使用して、つかみ間隔100mmで測定した引張り強さをいう。
本発明の不織布は、不織布使用時における外力によっても破断しにくいように、例えば、不織布を電気二重層キャパシタ用セパレータに使用した場合には、充放電時における電極の膨張及び収縮の繰り返しによる不織布への圧力によっても破断しにくいように、少なくとも一方向における引裂き強さが0.25N以上であるのが好ましい。このような引裂き強さをもつ方向はどの方向であっても良いが、長尺状の不織布を使用する場合が多いため、長手方向における引裂き強さが0.25N以上であるのが好ましい。なお、「引裂強さ」は、不織布から長方形の試料(幅:50mm、長さ:100mm)を5枚採取した後に、JIS L−1096 6.15.4(C法)に準じ、引張速度200mm/分で測定した引裂強さの算術平均値をいう。
本発明の不織布は、目付が5〜30g/m2かつ平均流量孔径が1.1μm以下であるのが好ましい。このように、目付が低く、繊維絶対量が少ないにもかかわらず平均流量孔径が小さいということは、パルプ状繊維及び非パルプ状繊維が均一に分散していることを意味し、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性などの各種性能に優れ、各種用途に適用できるためである。より好ましくは、目付が10〜30g/m2かつ平均流量孔径が1μm以下である。なお、「平均流量孔径」は、ASTM−F316に規定されている方法により得られる値をいい、例えば、ポロメータ(Polometer、コールター(Coulter)社製)を用いて、バブルポイント法により測定できる。
本発明の不織布は上述のようなパルプ状物、非パルプ状物及び熱可塑性樹脂を含むものであるが、高温下においても機械的強度が優れており、熱安定性に優れているように、本発明の不織布は、不織布を示差走査熱量測定してDSC曲線を描いても、結晶化ピークが描かれないものであるのが好ましい。つまり、熱可塑性樹脂が十分に結晶化していることを意味するため、高温下においても外力に抵抗してパルプ状物及び非パルプ状物の固定状態を維持し、不織布の構造変化を抑制して、所望の性能(引張り強度、引裂強度など)を発揮できる、熱安定性の優れるものであるためである。
なお、示差走査熱量測定はJIS K 7121(熱流束示差走査熱量測定)に準じ、次の条件下で行なってDSC曲線を描く。
1.試験片(不織布)の形状、大きさ及び質量;試験片として、直径6.4mmの円形の不織布を使用する。試験片の質量は電子天秤で5mgを目安として、小数点第2位まで計量する。
2.窒素ガスの流入速度;50ml/min.
3.加熱速度;10.0deg/min.
4.測定開始温度;室温(25℃)
本発明の不織布は、不織布の基本的な性能である電気絶縁性能、分離性能、液体保持性能、払拭性、或いは隠蔽性等に優れているばかりでなく、相反する性能であるイオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性等にも優れているため、各種用途に使用できるものである。例えば、電気二重層キャパシタ用セパレータ用途、リチウムイオン二次電池用セパレータ用途、アルカリ二次電池用セパレータ用途、気体又は液体濾過材用途、積層板用基材用途、電極支持材用途、ワイピング材用途、医療用基材用途、電子写真装置における定着ロールのクリーニングシート用途、などに好適に使用することができる。
特に、本発明の不織布を電気二重層キャパシタ用セパレータとして用いた場合には、(1)電気絶縁性に優れているため、漏れ電流が発生しにくい安定した電気二重層キャパシタを製造することができる、(2)機械的強度が高いため、電気二重層キャパシタ製造時等における取り扱い性に優れており、ラウンド型の電気二重層キャパシタも製造しやすい、(3)機械的強度が高いため、電気二重層キャパシタの充放電時に破断するなどして電気絶縁性能を損なうことがない、(4)パルプ状繊維及び非パルプ状繊維の交点が非繊維状態の熱可塑性樹脂により固定されていることによって空隙が多く、イオン透過性に優れているため、内部抵抗が低く、容量の大きい電気二重層キャパシタを製造できる、(5)目付が低く、厚さが薄い不織布からなることができるため、一定体積におけるエネルギー密度の高い電気二重層キャパシタを製造できる、(6)非パルプ状繊維やパルプ状繊維を構成する樹脂が全芳香族ポリアミド又は全芳香族ポリエステルのように耐熱性に優れている場合には、電気二重層キャパシタ用セパレータ、集電極、及び電極を組み立てた後に、温度150℃以上の高温で一緒に乾燥できるため、耐電圧の高い電気二重層キャパシタやエネルギー密度の高い電気二重層キャパシタを製造しやすい、など、様々な効果を奏するため、本発明の不織布は電気二重層キャパシタ用セパレータとして好適に使用できる。なお、ガラス繊維を含む不織布を電気二重層キャパシタ用セパレータとして使用した場合には、水系電解液、有機系電解液のいずれに対しても、不織布の親和性が高く、内部抵抗を下げる効果がある。
また、本発明の不織布を電気二重層キャパシタ用セパレータとして使用する場合には、見掛密度が0.32〜0.6g/cm3であるのが好ましい。見掛密度が0.32g/cm3未満であると、機械的強度が弱くなり、取り扱いにくくなる傾向があり、見掛密度が0.6g/cm3を越えると、緻密な構造となりすぎて、イオン透過性が悪くなり、容量の大きい電気二重層キャパシタを製造するのが困難になる傾向があるためである。
本発明の不織布をリチウムイオン二次電池用セパレータとして用いた場合には、内部抵抗が低く、イオン透過性に優れているため、ハイレート特性に優れるリチウムイオン二次電池を製造することができる。そのため、このリチウムイオン二次電池は電動バイクや工具などのパワーを必要とする用途の電池として好適に使用できる。また、非パルプ状繊維やパルプ状繊維を構成する樹脂が全芳香族ポリアミド又は全芳香族ポリエステルのように耐熱性に優れている場合には、温度が180℃を超えるような高温になったとしても、セパレータ(不織布)に孔が開いたり、収縮せず、電極同士の接触による短絡を生じにくい、安全性の高いリチウムイオン二次電池を製造することができる。
なお、本発明の不織布をリチウムイオン二次電池用セパレータとして使用する場合には、見掛密度が0.5〜0.6g/cm3であるのが好ましい。見掛密度が0.5g/cm3未満であると、脱落した電極活物質がセパレータを貫通したり、機械的強度が弱くなり、取り扱いにくくなる傾向がある。他方、見掛密度が0.6g/cm3を越えると、緻密な構造となりすぎて、イオン透過性が悪くなり、ハイレート特性に優れるリチウムイオン二次電池を製造するのが困難になる傾向があるためである。
本発明の不織布は、例えば、パルプ状繊維、非パルプ状繊維及び前述のような熱可塑性樹脂からなる繊維とを用いて繊維ウエブを形成する繊維ウエブ形成工程、この繊維ウエブの熱可塑性樹脂繊維を無圧下で溶融させて繊維形態を消滅させるとともに、溶融した熱可塑性樹脂をパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点に凝集させる凝集工程、及び前記繊維ウエブにおける凝集した熱可塑性樹脂を無圧下で凝固させる凝固工程、によって製造することができる。
繊維ウエブ形成工程においては、まず、前述のようなパルプ状繊維、非パルプ状繊維、及び前述のような熱可塑性樹脂からなる繊維とを用意する。なお、熱可塑性樹脂繊維の繊度は0.45dtex以下であるのが好ましい。これは、熱可塑性樹脂繊維は繊維形態を消滅させてパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点で凝集し、凝固するが、熱可塑性樹脂繊維が細ければ、熱可塑性樹脂繊維が繊維形態でなくなることによって形成される空隙が小さいため繊維分散の均一性を損なわず、また、不織布全体にわたって均一に凝固した不織布を製造することができるためで、より好ましい繊度は0.35dtex以下であり、更に好ましい繊度は0.25dtex以下であり、最も好ましい繊度は0.15dtex以下である。熱可塑性樹脂繊維の繊度の下限は特に限定するものではないが、0.00000001dtex程度であるのが好ましい。
上述のように、熱可塑性樹脂繊維の繊度は0.45dtex以下であるのが好ましいが、このような熱可塑性樹脂繊維が、例えば、海島型繊維の海成分を除去することにより製造された島成分繊維、メルトブロー法により製造されたメルトブロー繊維、静電紡糸法により製造された静電紡糸繊維の群の中から選ばれる繊維からなると、より小さい繊度であることができるため、熱可塑性樹脂繊維が繊維形態でなくなることによる繊維分散の均一性を損なわず、また、不織布全体にわたって均一に凝固することができ、平均流量孔径の小さい不織布を製造しやすいため好適である。
より具体的には、海島型繊維の海成分を除去することにより製造された島成分繊維は繊度0.1dtex以下であることができ、好ましくは0.05dtex以下であることができる。なお、島成分繊維の繊度の下限は0.0000001dtex程度が適当である。
なお、島成分繊維は熱可塑性樹脂繊維の一態様であり、不織布においては、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点において、非繊維状態で固定した熱可塑性樹脂のもととなるため、島成分繊維を構成する樹脂は前述のような熱可塑性樹脂からなる。
このような島成分繊維は、島成分繊維を構成する樹脂を島成分とし、この島成分を除去できない溶媒によって除去できる樹脂を海成分とする海島型繊維を用意し、この海島型繊維の海成分を前記溶媒で除去することによって製造することができる。例えば、熱可塑性樹脂繊維を構成する樹脂として好適なポリエステル、つまりポリエステルからなる島成分繊維は、例えば、ポリスチレンからなる海成分中に、ポリエステルからなる島成分を備えた海島型繊維を常法の複合紡糸法により製造した後、ジメチルホルムアミド(DMF)中に浸漬し、海成分であるポリスチレンを抽出除去して、ポリエステルからなる島成分繊維を製造することができる。
別の熱可塑性樹脂繊維として、メルトブロー法により製造されたメルトブロー繊維を使用することができる。このメルトブロー繊維はメルトブロー法により製造されたもの、つまり、ダイから溶融押し出しした樹脂に対して空気などの気体を吹きつけて細径化したものであるため、メルトブロー繊維の繊度はバラツキが比較的大きい。しかしながら、メルトブロー繊維の平均繊度(メルトブロー繊維100本の算術平均値)は0.3dtex以下であることができ、好ましくは0.05dtex以下であることができる。なお、メルトブロー繊維の平均繊度の下限は0.0001dtex程度が適当である。
なお、メルトブロー繊維も熱可塑性樹脂繊維の一態様であり、不織布においては、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点において、非繊維状態で固定した熱可塑性樹脂のもととなるため、メルトブロー繊維を構成する樹脂は前述のような熱可塑性樹脂からなる。
このようなメルトブロー繊維は常法のメルトブロー法によって製造することができる。なお、メルトブロー法によって製造したメルトブロー繊維をコンベアなど捕集体上に集積させると、メルトブロー繊維同士が融着した状態となりやすいため、集積させた後に、水中に投入し、リファイナー、パルパー、ビーター、ミル、或いは高圧ホモジナイザー等で個々のメルトブロー繊維に分離させるのが好ましい。
更に別の熱可塑性樹脂繊維として、静電紡糸法により製造された静電紡糸繊維を使用することができる。この静電紡糸繊維の繊度は0.01dtex以下であることができ、好ましくは0.007dtex以下であることができる。なお、静電紡糸繊維の繊度の下限は0.00000001dtex程度が適当である。
なお、静電紡糸繊維も熱可塑性樹脂繊維の一態様であり、不織布においては、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点において、非繊維状態で固定した熱可塑性樹脂のもととなるため、静電紡糸繊維を構成する樹脂は前述のような熱可塑性樹脂からなる。
このような静電紡糸繊維は常法の静電紡糸法によって製造することができる。なお、静電紡糸法によって製造した静電紡糸繊維は一般的に繊維が連続した長繊維であるため、非パルプ状繊維及びパルプ状繊維と均一に混合した不織布を形成できるように、コンベアなどの捕集体上に集積させた後に、切断するのが好ましい。また、静電紡糸法によって製造した静電紡糸繊維をコンベアなど捕集体上に集積させると、静電紡糸繊維同士が融着した状態となりやすいため、集積した後(好ましくは切断した後)に、水中に投入し、リファイナー、パルパー、ビーター、ミル、或いは高圧ホモジナイザー等で個々の静電紡糸繊維に分離させるのが好ましい。このようなリファイナー、パルパー、ビーター、ミル、或いは高圧ホモジナイザー等を使用することによって、静電紡糸繊維を切断することもできる。
なお、熱可塑性樹脂繊維の繊維長は繊維ウエブの形成方法によって異なるため特に限定されるものではないが、緻密で繊維の均一分散性に優れる湿式繊維ウエブを形成する場合には、1〜25mmであるのが好ましく、3〜20mmであるのがより好ましい。
このような非パルプ状繊維、パルプ状繊維及び熱可塑性樹脂繊維の質量比率は、(非パルプ状繊維):(パルプ状繊維):(熱可塑性樹脂繊維)=5〜30:35〜75:20〜35であるのが好ましく、(非パルプ状繊維):(パルプ状繊維):(熱可塑性樹脂繊維)=10〜25:50〜70:20〜30であるのが好ましい。
このような非パルプ状繊維、パルプ状繊維及び熱可塑性樹脂繊維を用いて繊維ウエブを形成する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法で形成できる。例えば、エアレイ法、カード法などの乾式法、或いは湿式法により形成できる。特に湿式法により形成した繊維ウエブは緻密で繊維の均一分散性に優れる不織布を製造できるため好適である。この好適である湿式法としては、例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、順流円網・逆流円網コンビネーション方式、順流円網・円網フォーマーコンビネーション方式、逆流円網・円網フォーマーコンビネーション方式、短網・円網コンビネーション方式、又は長網・円網コンビネーション方式等を挙げることができる。
なお、繊維配向が同じ又は異なる繊維ウエブを2枚以上積層した、積層繊維ウエブ(特には、隣接する繊維ウエブの繊維配向が異なる積層繊維ウエブ)を形成するのが好ましい。このような積層繊維ウエブは電気絶縁性能、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性などの各種性能が更に優れる不織布を製造できるためである。例えば、湿式法により繊維ウエブを形成する場合には、同じ種類の網によって抄造した湿式繊維ウエブを積層したり、異なる種類の網(例えば、短網と円網、長網と円網)によって抄造した湿式繊維ウエブを積層して、積層湿式繊維ウエブを製造することができ、異なる種類の網によって抄造した湿式繊維ウエブを積層すると、繊維配向の異なる積層湿式繊維ウエブを形成できる。なお、抄き上げた湿潤状態の湿式繊維ウエブを乾燥する際には、熱可塑性樹脂繊維が溶融しない温度で乾燥するのが好ましい。
次いで、凝集工程を実施する。この凝集工程は、繊維ウエブの熱可塑性樹脂繊維を無圧下で溶融させて繊維形態を消滅させるとともに、溶融した熱可塑性樹脂をパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点に凝集させる工程である。このように無圧下で溶融させて繊維形態を消滅させているため、熱可塑性樹脂繊維に由来する熱可塑性樹脂の皮膜が形成されない。つまり、この段階で圧力を作用させると、熱可塑性樹脂の繊維交点での凝集が妨げられ、繊維状態に近い状態、つまり、直線状又は曲線状に熱可塑性樹脂が連続した皮膜の状態で固定されたり、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点の周囲に皮膜の状態で固定され、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性などの各種性能を悪くする傾向があるが、圧力を作用させないため、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性などの各種性能に優れた不織布を製造できる。このような熱可塑性樹脂繊維の無圧下での溶融は、例えば、赤外線を照射する方法、熱風を吹き付ける方法(好ましくは熱風を透過させる)、レーザーを照射する方法、を単独で、或いは組み合わせて実施することができる。
例えば、赤外線(特に波長が5.6〜1000μmの遠赤外線が好ましい)を照射した場合には、繊維ウエブの外側に存在する繊維(パルプ状繊維、非パルプ状繊維及び熱可塑性樹脂繊維)の表面及び内部ばかりでなく、繊維ウエブの内側に存在する繊維(パルプ状繊維、非パルプ状繊維及び熱可塑性樹脂繊維)の表面及び内部も均一に加熱し、瞬時に熱可塑性樹脂繊維を溶融させて繊維形態を消滅させ、この溶融した熱可塑性樹脂は最も安定な状態である、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点で凝集させる。
赤外線を照射する場合、熱可塑性樹脂繊維は溶融するものの、パルプ状繊維及び非パルプ状繊維は溶融又は炭化しない温度で行う。つまり、熱可塑性樹脂繊維が、熱可塑性樹脂繊維の融点以上、パルプ状繊維と非パルプ状繊維の融点又は炭化温度の中で最も低い温度よりも低い温度となるまで照射する。このような条件は熱可塑性樹脂繊維、パルプ状繊維及び非パルプ状繊維の種類によって変化するため、特に限定するものではない。この赤外線の照射条件は、実験を繰り返すことによって適宜設定することができる。このように熱可塑性樹脂繊維が溶融した熱可塑性樹脂を、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点で凝集させるが、この段階で圧力を作用させると、熱可塑性樹脂の凝集が妨げられ、繊維状態に近い状態、つまり、直線状又は曲線状に熱可塑性樹脂が連続した皮膜の状態で固定され、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性などの透過性を悪くするため、無圧下で行なう。なお、赤外線は直進性があり、照射されない部分の熱可塑性樹脂繊維は溶融しにくいため、熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度以上の温度の熱風を吹き付けたり、循環させることによって、熱可塑性樹脂繊維を均一に加熱するのが好ましい。このように熱風を吹き付けたり、循環させると、風圧によって熱可塑性樹脂がパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点で凝集しやすいという付加的な効果も奏する。本発明における「ガラス転移温度」は、JIS K 7121-1987に規定されるガラス転移温度の求め方により得られる値をいう。
また、熱風を吹き付けた場合も、熱可塑性樹脂繊維を溶融させて繊維形態を消滅させ、この溶融した熱可塑性樹脂を最も安定な状態である、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点で皮膜を形成することなく凝集させる。この熱風は熱可塑性樹脂繊維は溶融するものの、パルプ状繊維及び非パルプ状繊維は溶融又は炭化しない温度の熱風を吹き付ける。つまり、熱可塑性樹脂繊維の融点以上、パルプ状繊維と非パルプ状繊維の融点又は炭化温度の中で最も低い温度よりも低い温度の熱風を吹き付ける。このように熱風の作用により熱可塑性樹脂繊維が溶融して形成した熱可塑性樹脂は、熱風を吹き付けた際の風圧も作用して、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点で凝集するが、この段階で熱風吹き付け以外に圧力を作用させると、熱可塑性樹脂の繊維交点での凝集が妨げられ、繊維状態に近い状態、つまり、直線状又は曲線状に熱可塑性樹脂が連続した皮膜の状態で固定されたり、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点の周囲に皮膜の状態で固定され、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性などの各種性能を悪くする傾向があるため、熱風吹き付け以外に圧力を作用させないのが好ましい。なお、この凝集工程において、熱風を吹き付けることにより繊維ウエブ中の熱可塑性樹脂繊維を溶融させているが、熱可塑性樹脂繊維を効率的に溶融させるとともに、溶融した熱可塑性樹脂がパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点に凝集しやすいように、熱風が繊維ウエブを透過するように熱風を吹き付けるのが好ましい。熱風の透過によって熱可塑性樹脂を押し分け、熱可塑性樹脂をパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点に移動させて凝集させやすいためである。
また、繊維ウエブにレーザーを照射した場合には、繊維ウエブの外側に存在する繊維(パルプ状繊維、非パルプ状繊維及び熱可塑性樹脂繊維)の表面及び内部ばかりでなく、繊維ウエブの内側に存在する繊維(パルプ状繊維、非パルプ状繊維及び熱可塑性樹脂繊維)の表面及び内部も均一に加熱し、瞬時に熱可塑性樹脂繊維を溶融させて繊維形態を消滅させ、この溶融した熱可塑性樹脂を最も安定な状態である、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点で凝集させる。
このレーザーは熱可塑性樹脂繊維のみを溶融させることができれば良く、特に限定するものではないが、例えば、気体レーザー(主に炭酸ガスレーザー、He−Neレーザー、Arイオンレーザー)や固体レーザー(主にルビーレーザー、Nd:YAGレーザー、Nd:ガラスレーザー)や液体レーザー(主に色素レーザー)を使用することができる。なお、レーザーの照射は熱可塑性樹脂繊維が溶融するまで行なうが、その照射条件(波長、出力、照射時間など)は熱可塑性樹脂繊維、非パルプ状繊維及びパルプ状繊維の種類によって異なるため、実験を繰り返して適宜設定する。また、レーザーを繊維ウエブ全体に対して照射するには、例えば、光ファイバーで分岐したり、また、拡散用レンズ(ZnSeレンズ等)と光ファイバーとを組み合わせて使用するなどして実施する。
なお、レーザーを照射する場合、熱可塑性樹脂繊維を効率的に溶融させるとともに、溶融した熱可塑性樹脂がパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点に凝集しやすいように、熱風が繊維ウエブを透過するように熱風を吹き付けるのが好ましい。熱風の透過によって熱可塑性樹脂を押し分け、熱可塑性樹脂をパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点に移動させて凝集させやすいためである。なお、熱風の温度は特に限定されるものではないが、溶融した熱可塑性樹脂のパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点への凝集を妨げないように、熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつ融点より10℃以上低い温度であるのが好ましい。
次いで、凝固工程、つまり繊維ウエブにおける凝集した熱可塑性樹脂を無圧下で凝固させる工程を実施して、本発明の不織布を製造することができる。この凝固工程は凝集した熱可塑性樹脂が凝固するのであればどのような方法であっても良く、特に限定するものではないが、例えば、熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満の気体を吹き付けたり、循環させる方法、或いは熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満の気体中に放置する方法などがある。なお、この凝固工程においても、未だ溶融状態にある熱可塑性樹脂に対して圧力を加えると、繊維状ではないものの、パルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点を中心として広い範囲にわたって皮膜が形成され、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性などの透過性を悪くするため、無圧下で行なう。以上の説明からわかるように、本発明における「無圧下」とは、気体の吹き付け圧力、及び気体の循環圧力以外に圧力を作用させないことをいう。
本発明の不織布は上述のようにして製造することができるが、熱可塑性樹脂繊維が瞬時に溶融すると、結晶化度が低く、耐熱性に劣る傾向があるため、凝集工程の後に、熱処理をして熱可塑性樹脂を結晶化させる結晶化工程を実施し、高温下で外力が加わる用途に使用したとしても、構造変化が生じにくく所望の性能を発揮できる、熱安定性に優れる不織布とするのが好ましい。なお、この結晶化工程は凝固工程を実施した後に実施しても良いし、凝固工程と同時に実施することもできる。
この熱可塑性樹脂を結晶化させる熱処理は、熱可塑性樹脂が結晶化する熱処理である限り、特に限定するものではないが、熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度の熱風を吹き付けたり、循環させる方法を挙げることができる。なお、熱処理温度は熱可塑性樹脂が結晶化する熱処理である限り、特に限定するものではなく、熱可塑性樹脂の組成によって異なるため、実験的に適宜確認する。例えば、熱可塑性樹脂が好適であるポリエステルからなる場合には、130〜230℃であるのが好ましい。ポリエステルの場合、130℃未満では結晶化が不十分になる傾向があり、230℃を超えると、補外溶解開始温度(樹脂が溶け始める温度)に近くなり、ポリエステルが再溶融しはじめ、不織布におけるポリエステルの凝固状態が変わってしまうためで、より好ましくは150〜220℃である。また、この結晶化工程における熱処理は、熱可塑性樹脂が直線状又は曲線状に連続した皮膜を形成しないように、どの段階で実施する場合にも、無圧下で実施する。なお、「結晶化させる」とは、製造した不織布を示差走査熱量測定して描いたDSC曲線に結晶化ピークが描かれない状態とすることをいう。
このようにして本発明の不織布を製造できるが、凝固工程後の不織布に厚さのバラツキがある場合がある。また、見掛密度が好適である0.32〜0.6g/cm3の範囲内になかったり、少なくとも一方向における引張り強さが10N/15mm幅以上なかったり、或いは少なくとも一方向における引裂き強さが0.25N以上ない場合がある。そのような場合には、熱可塑性樹脂繊維の軟化温度よりも低い温度でカレンダー処理(カレンダー工程)を行って、前記問題点を解決するのが好ましい。好ましくは、熱可塑性樹脂繊維の軟化温度よりも20℃以上低い温度でカレンダー処理を行う。なお、このカレンダー工程における圧力は、厚さのバラツキの程度、所望見掛密度、所望引張り強さ、所望引裂き強さ等によって異なるため特に限定するものではない。この圧力は、実験を繰り返すことによって、適宜設定することができる。
なお、平均流量孔径が1.1μm以下である不織布は、湿式法により繊維ウエブを形成すること、パルプ状繊維量を多くすること、繊度が0.05dtex以下の熱可塑性樹脂繊維を使用すること、凝固工程後にカレンダー工程を行うこと、などを単独で又は併用することによって、製造することができる。
また、本発明の不織布を各種用途へ適用するにあたり、各用途への適合性を高める後加工を実施しても良い。例えば、電気二重層キャパシタ用セパレータ用途、リチウムイオン二次電池用セパレータ用途、アルカリ二次電池用セパレータ用途に用いる場合には電解液との親和性をもたせるために、親水化処理などの親和性付与処理、気体又は液体濾過材用途或いはワイピング用途に用いる場合には、塵埃等の捕捉性を高めるためのエレクトレット化処理、積層板用基材用途に用いる場合には、ワニスとの親和性を高めるための親和性付与処理、電極支持材用途に用いる場合には、金属膜との密着性を高めるための親和性付与処理、医療用基材用途に用いる場合には、汚染液体の透過を抑制するための撥水・撥油処理、定着部用クリーニングシート用途に用いる場合には、シリコーンオイルなどの離型剤の付与処理、などを実施することができる。
以上、パルプ状繊維及び非パルプ状繊維が熱可塑性樹脂によって固定された不織布の製造方法について説明したが、ガラス繊維も含み、ガラス繊維も熱可塑性樹脂によって固定された不織布は、繊維ウエブを形成する工程において、上述と同様のパルプ状繊維、非パルプ状繊維及び熱可塑性樹脂繊維に加えて、ガラス繊維を用いて繊維ウエブを形成すること以外は、上述と同様にして製造することができる。
本発明の電気二重層キャパシタは、前述のような不織布をセパレータとして用いていること以外は、従来の電気二重層キャパシタと全く同様であることができる。なお、電気二重層キャパシタのセル構造は特に限定するものではなく、積層型、円筒型、角型、コイン型などであることができる。
例えば、集電極としては、例えば、アルミニウム薄板、白金薄板などの金属薄板を使用することができ、電極としては、例えば、粒状活性炭に導電剤と接着剤とを混ぜ合わせ、圧粉法、圧延法、塗布法、或いはドクターブレード法によって作製されたものを使用することができる。また、電解液としては、例えば、プロピレンカーボネートをテトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボーレイトに溶解させた有機電解液や、プロピレンカーボネートをテトラエチルフォスフォニウム・テトラフルオロボーレイトに溶解させた有機電解液などを使用することができる。
この電気二重層キャパシタの製造方法について簡単に述べると、まず、前述のような集電極、電極、及び前述のような不織布からなるセパレータを用意する。次いで、例えば、集電極、電極、セパレータ、電極、集電極の順に積み重ねることを繰り返したり、このように積み重ねた積層体を巻き上げて電極群を形成する。
次いで、電極群と前記のような有機電解液とをケースに挿入した後、前記ケースを封緘してキャパシタを製造することができる。なお、セパレータである不織布を構成するパルプ状繊維及び非パルプ状繊維を構成する樹脂の融点又は炭化温度が300℃以上の樹脂からなる場合には、電極群を形成した後に、電極群を150℃以上の温度で、集電極、電極及びセパレータを同時に乾燥し、ケースに挿入することができる。セパレータである不織布を構成するパルプ状繊維及び非パルプ状繊維を構成する樹脂の融点又は炭化温度が300℃未満の樹脂からなる場合には、予め個別に乾燥した後に電極群を形成する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、前述のような不織布をセパレータとして用いていること以外は、従来のリチウムイオン二次電池と全く同様であることができる。例えば、正極として、リチウム含有金属化合物のペーストを集電材に担持させたもの等を使用し、負極として、リチウム金属やリチウム合金、及びリチウムを吸蔵、放出可能なカーボンまたはグラファイトを含む炭素材料(例えばコークス、天然黒鉛や人造黒鉛などの炭素材料)、複合スズ酸化物を集電材に担持させたもの等を使用し、電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒にLiPF6を溶解させた非水電解液等を使用できる。なお、リチウムイオン二次電池のセル構造も特に限定するものではなく、積層型、円筒型、角型、コイン型などであることができる。
リチウムイオン二次電池の製造方法は、特に限定されないが、例えばアルミパック型リチウムイオン二次電池は、以下の方法により製造できる。
まず、負極として、負極活物質をPvdf−NMP(ポリフッ化ビニリデン−N−メチルピロリドン)などの溶液に混合して形成した負極合剤のペーストを、銅箔上に塗布、乾燥し、加圧成型した後に、加熱処理して負極を調製する。また、正極として、リチウム複合酸化物、導電剤、及びPvdf−NMPなどの溶液に混合して形成した正極合剤のペーストを、アルミニウム箔上に塗布、乾燥し、加圧成型した後に、加熱処理して正極を調製する。次いで、本発明の不織布からなるセパレータを負極と正極との間に介在させた複数のユニットと、有機溶媒に電解質を溶解させた非水電解液とをアルミパック内に装填し、封印して、アルミパック型のリチウムイオン二次電池を作製できる。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
パラ系全芳香族ポリアミドからなるパルプ状繊維(製品名:トワロン1094、帝人製、炭化温度:500℃以上、濾水度(CSF):150ml)、パラ系全芳香族ポリアミドからなる非パルプ状繊維(製品名:テクノーラ、帝人製、炭化温度:500℃以上、繊度:0.8dtex、繊維長:3mm)、及びポリエチレンテレフタレートからなる、繊度0.11dtex、繊維長3mmのポリエステル繊維(登録商標:テピルス、帝人製、融点:260℃、軟化温度:253℃、ガラス転移温度:90℃)を用意した。
次いで、前記パルプ状繊維をリファイナーによりフィブリル化を促進させたパルプ状繊維(濾水度(CSF):90ml)、非パルプ状繊維及びポリエステル繊維とを70:10:20の質量比率で分散させたスラリーを形成した。
その後、順流円網、傾斜ワイヤー型短網、順流円網、及びヤンキードライヤーを備えた抄紙機に、前記スラリーを各網へ供給し、それぞれ湿潤繊維ウエブを形成し、それぞれの湿潤繊維ウエブを積層した積層湿潤繊維ウエブを形成し、続いて、この積層湿潤繊維ウエブを温度120℃に設定したヤンキードライヤーにより乾燥して、繊維配向が一方向、ランダム、一方向の三層湿式繊維ウエブを形成した(以上、繊維ウエブ形成工程)。この三層湿式繊維ウエブ表面の電子顕微鏡写真を図1に示すように、パルプ状繊維、非パルプ状繊維及びポリエステル繊維が混在した状態にあった。
次いで、温度490℃に設定した遠赤外線セラミックヒータ(Ryoka製)を、上下にそれぞれ12基づつ備えた遠赤外線照射装置の遠赤外線セラミックヒータ間を、速度8m/min.で前記三層湿式繊維ウエブを通過させることにより、ポリエステル繊維を溶融させて繊維形態を消滅させるとともに、溶融したポリエステル樹脂をパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点に凝集させ、凝集繊維ウエブを形成した。なお、いずれの遠赤外線セラミックヒーターとも50mm離間させて通過させた。また、移動する三層湿式繊維ウエブに対して、温度220℃の熱風を吹き付けた(以上、凝集工程)。
次いで、凝集繊維ウエブを無圧下、室温で空冷して、凝集したポリエステル樹脂を凝固させて、凝固不織布を製造した(以上、凝固工程)。
その後、前記凝固不織布を、無圧下、温度220℃に加熱したドライヤー内を3秒間かけて通過させ、ポリエステル樹脂を結晶化させ、結晶化不織布を製造した(以上、結晶化工程)。
次いで、この結晶化不織布を室温のカレンダーにより押圧(線圧力:100N/cm)して、目付28g/m2、厚さ50μm、見掛密度0.56g/cm3の湿式不織布を製造した。この湿式不織布表面の電子顕微鏡写真を図2に示す。このように、ポリエステル樹脂繊維が消滅し、ポリエステル樹脂がパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点に非繊維状態で凝固した状態にあった。また、ポリエステル樹脂は湿式不織布の厚さ方向において偏在しておらず、均一に分布していた。この湿式不織布の示差走査熱量測定したところ、図3に示すようなDSC曲線を描き、結晶化ピークが描かれなかった。
(比較例1)
実施例1と同じフィブリル化を促進させたパルプ状繊維、実施例1と同じポリエステル繊維、及び芯鞘型複合ポリエステル繊維(登録商標:メルティ、ユニチカ製、芯部の融点:255℃、鞘部の融点:110℃、繊度1.1dtex、繊維長:3mm)を用意した。
次いで、パルプ状繊維、ポリエステル繊維、及び芯鞘型複合ポリエステル繊維を50:20:30の質量比率で分散させたスラリーを形成した。その後、順流円網、傾斜ワイヤー型短網、順流円網、及びヤンキードライヤーを備えた抄紙機に、前記スラリーを各網へ供給し、それぞれ湿潤繊維ウエブを形成し、それぞれの湿潤繊維ウエブを積層した積層湿潤繊維ウエブを形成し、続いて、この積層湿潤繊維ウエブを温度120℃に設定したヤンキードライヤーにより乾燥するとともに芯鞘型複合ポリエステル繊維を融着させ、繊維配向が一方向、ランダム、一方向の三層湿式繊維ウエブを形成した。
次いで、この三層湿式繊維ウエブの両面を、温度200℃に加熱した直径が1.2mのシリンダードライヤーにテンポ20m/min.で接触させて熱処理し、目付20g/m2、厚さ55μm、見掛密度0.36g/cm3の湿式不織布を製造した。この湿式不織布は、芯鞘型複合ポリエステル繊維が繊維の状態で融着し、直線状又は曲線状に皮膜を形成した、面的に融着した状態にあった。
(比較例2)
実施例1と同じパルプ状繊維及びポリエステル繊維を用意した。次いで、リファイナーによりフィブリル化を促進させたパルプ状繊維(濾水度(CSF):90ml)とポリエステル繊維とを70:30の質量比率で分散させたスラリーを形成した。その後、順流円網、傾斜ワイヤー型短網、順流円網、及びヤンキードライヤーを備えた抄紙機に、前記スラリーを各網へ供給し、それぞれ湿潤繊維ウエブを形成し、それぞれの湿潤繊維ウエブを積層した積層湿潤繊維ウエブを形成し、続いて、この積層湿潤繊維ウエブを温度120℃に設定したヤンキードライヤーにより乾燥して、繊維配向が一方向、ランダム、一方向の三層湿式繊維ウエブを形成した。
次いで、この乾燥した三層湿式繊維ウエブを温度220℃に設定した一対の熱カレンダーにより押圧(線圧力:50N/cm)して、目付15g/m2、厚さ25μm、見掛密度0.6g/cm3の湿式不織布を製造した。この湿式不織布は、ポリエステル繊維が繊維の状態で圧着した状態にあった。
(比較例3)
実施例1と同じパルプ状繊維及びポリエステル繊維を用意した。次いで、リファイナーによりフィブリル化を促進させたパルプ状繊維(濾水度(CSF):90ml)とポリエステル繊維とを70:30の質量比率で分散させたスラリーを形成し、このスラリーを使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして、繊維ウエブ形成工程、凝集工程、凝固工程、結晶化工程、及びカレンダーによる厚さ調整を行ない、目付28g/m2、厚さ50μm、見掛密度0.56g/cm3の湿式不織布を製造した。この湿式不織布表面の電子顕微鏡写真を図4に示す。このように、ポリエステル樹脂繊維が消滅し、ポリエステル樹脂がパルプ状繊維同士の交点に非繊維状態で凝固した状態にあった。また、ポリエステル樹脂は湿式不織布の厚さ方向において偏在しておらず、均一に分布していた。この湿式不織布の示差走査熱量測定したところ、図5に示すようなDSC曲線を描き、結晶化ピークが描かれなかった。
(内部抵抗の測定)
電極として、粒状活性炭、カーボンブラック、及びポリテトラフルオロエチレンを混ぜて練り上げたもの、集電極としてアルミ箔、セパレータとして実施例1及び各比較例の湿式不織布、及び電解液としてテトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボーレイトをプロピレンカーボネートに溶解させたものを用意した。
次いで、集電極、電極、実施例1又は比較例1〜比較例3のセパレータ、電極、集電極の順に積み重ねることを繰り返した積層体からなる電極群をそれぞれ形成した。次いで、この電極群を200℃の温度で乾燥した。次いで、この乾燥した電極群と前記電解液とをケースに挿入した後、ケースを封緘して、コインセル型のキャパシタをそれぞれ100個づつ作製した。
その後、各キャパシタの内部抵抗を、充放電試験機により測定した充放電カーブから求めた。すなわち、1Aの定電流で2分間、2.5Vまで充電した後、2分間で放電する操作により得られた充放電カーブから求めた。この結果は表1に示す通りであった。この内部抵抗は2Ω以下であれば、イオン透過性に優れるものと判断できるが、表1から明らかなように、本発明の湿式不織布からなるセパレータは1.7Ωの優れたイオン透過性を示すものであった。これは湿式不織布に皮膜が形成されておらず、空隙の多い構造に起因すると予測された。
(短絡防止性の評価)
上記(内部抵抗の測定)で用いたコインセル型のキャパシタをそれぞれ100個づつ作製した時に、短絡してしまい、不良品となったキャパシタの百分率(不良率)を算出した。この結果は表1に示す通りであった。本発明の湿式不織布からなるセパレータを用いた場合、不良品のキャパシタを生じず、短絡防止性に優れるものであった。これは湿式不織布構成繊維が均一に分散しているとともに、引張強さ、引裂き強さ等の機械的強度に優れているためであると予測された。
(引張強さの測定)
実施例1及び各比較例の湿式不織布から長方形の試料(幅:15mm、長さ(長手方向):200mm)を採取した後に、JIS P−8113に準じ、引張り試験機((株)オリエンテック社製、UCT−500)を使用して、つかみ間隔100mmで引張り強さを測定した。この結果は表1に示す通りであった。この引張強さは7N/15mm幅以上あれば、コイン型およびラウンド型のいずれのキャパシタにおいても支障なく使用することができる。表1から明らかなように本発明の湿式不織布は15.5N/15mmの優れた引張強さを有する、取り扱い性の優れるものであった。
(通気度の測定)
実施例1及び各比較例の湿式不織布の通気度を、JIS P8117に規定するガーレー試験機(B型)に、直径5mmのアダプターをガスケットの先に装着した状態で測定した。この結果は表1に示す通りであった。
(平均流量孔径の測定)
実施例1及び各比較例の湿式不織布の平均流量孔径を、ポロメータ(Polometer、コールター(Coulter)社製)を用いて、バブルポイント法により測定した。この結果は表1に示す通りであった。
(引裂強さの測定)
実施例1及び各比較例の湿式不織布から長方形の試料(幅:50mm、長さ(長手方向):100mm)を5枚採取した後に、JIS L−1096 6.15.4(C法)に準じ、引張速度200mm/分で引裂き強さを測定した後、算術平均した。この結果は表1から明らかなように本発明の湿式不織布は0.28Nで、優れた引裂強さを有するものであった。
#:総合評価
◎:内部抵抗が低く、引張強さ、引裂強さ等の機械的強度に優れ、不良品を発生させない、特に良好な湿式不織布(セパレータ)
×1:内部抵抗が高く、不良率が比較的高いため使用できない
×2:内部抵抗が高く、しかも引張強さや引裂き強さ等の機械的強度に劣り不良率が非常に高いため使用できない
△:引張強さ、引裂き強さ等の機械的強度にやや劣り、不良品を発生させるため、使用しずらい
(実施例2)
実施例1と全く同様にして、目付21g/m2、厚さ35μm、見掛密度0.6g/cm3の湿式不織布を製造した。この湿式不織布においては、ポリエステル樹脂繊維が消滅し、ポリエステル樹脂がパルプ状繊維同士の交点、非パルプ状繊維同士の交点、及びパルプ状繊維と非パルプ状繊維との交点に非繊維状態で凝固した状態にあった。また、ポリエステル樹脂は湿式不織布の厚さ方向において偏在しておらず、均一に分布していた。この湿式不織布の示差走査熱量測定し、DSC曲線を描いたところ、結晶化ピークが描かれなかった。
(比較例4)
市販されているポリエチレン製微孔膜(セルガード社製、目付:15g/m2、厚さ:25μm、見掛密度:0.6g/cm3)を用意した。
(リチウムイオン二次電池の作製)
まず、メソフェーズ小球体を黒鉛化したものと、Pvdf−NMP(ポリフッ化ビニリデン−N−メチルピロリドン:13重量%)溶液を、固形分の質量比90:10で混合したペーストを、銅箔上に塗布・乾燥し、加圧成型した後に加熱処理した負極を4枚調製した。
また、LiCoO2:アセチレンブラック:Pvdf−NMP溶液(12重量%)を、固形分の質量比85:5:10で混合したペーストを、アルミニウム箔上に塗布・乾燥し、加圧成型した後に加熱処理して正極を3枚調製した。
次いで、セパレータとして、実施例2及び比較例4の湿式不織布又は微孔膜をそれぞれ用い、負極と正極との間に介在させて複数のユニットを形成した。他方、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネートを体積比で1:1で混合した溶媒に、1mol/LのLiPF6を溶解させた非水電解液を用意した。その後、前記複数のユニットと非水電解液とをアルミパック内に装填して、アルミパック型リチウムイオン二次電池(セルサイズ:40×60mm、電池容量:180mAh)を作製した。
(リチウムイオン二次電池の電池特性評価)
作製したリチウムイオン電池を、定電流−定電圧(0.5C、3時間)で4.2Vまで充電し、放電終止電圧3.0Vで定電流放電を行った。0.2C電流値での放電容量を100%とした時の、各放電レート特性を算出した。この結果は表2に示す通りであった。表2から明らかなように、本発明の湿式不織布からなるセパレータを使用した電池は放電特性の優れるものであった。これは湿式不織布に皮膜が形成されておらず、空隙の多い構造であることによって、イオン透過性に優れていることに起因すると予測された。
(安全性試験)
作製した各リチウムイオン電池を満充電まで充電した後、ラミネートパックに釘を刺し、電池表面最高温度の測定と状態を観察した。この結果は表2に示す通りであった。表2から明らかなように、本発明の湿式不織布からなるセパレータを使用した電池は、セパレータ(湿式不織布)に孔が開いて短絡しても、収縮せず、電極同士の接触による短絡を防止できる、安全性の高いものであった。
#1:発火、発煙ともになし
#2:発煙
◎:安全性が高く、放電レート特性(ハイレート)に優れている
×:安全性が低く、放電レート特性(ハイレート)にも劣る
(引張り強さの測定)
実施例2及び比較例4の湿式不織布又は微孔膜から長方形の試験(幅:15mm、長さ(長手方向):200mm)を採取した後に、JIS P−8113に準じ、引張り試験機((株)オリエンテック社製、UCT−500)を使用して、つかみ間隔100mmで引張り強さを測定した。この結果は表2に示す通りであった。この引張り強さが7N/15mm幅以上あれば、リチウムイオン二次電池のセパレータとして支障なく使用することができる。表2から明らかなように、本発明の湿式不織布からなるセパレータは11.3N/15mm幅の優れた強度を有する、取り扱い性の優れるものであった。
(各種物性の測定)
実施例2及び比較例4の湿式不織布又は微孔膜の通気度、平均流量孔径、及び引裂強さを、実施例1及び各比較例の湿式不織布と同様にして測定した。これらの結果は表2に示す通りであった。