JP4467364B2 - 溶接金属、溶接ワイヤ及びエレクトロスラグ溶接方法 - Google Patents

溶接金属、溶接ワイヤ及びエレクトロスラグ溶接方法 Download PDF

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Description

本発明は、建築用鉄骨等の鋼材をエレクトスラグ溶接した際に形成される溶着金属、エレクトスラグ溶接する際に使用される溶接ワイヤ及びエレクトロスラグ溶接方法に関する。
エレクトロスラグ溶接は、溶接入熱が極めて大きいため、他の溶接方法に比べて、機械的特性が良好な溶接金属及び鋼材の溶接熱影響部(HAZ:heat-affected zone)を得ることが難しい。種々の機械的特性の中でも、衝撃値及び伸びは過大な溶接入熱によって特性が低下しやすく、特に、靱性を示す衝撃値は良好な値を安定して確保することが困難である。溶接入熱は、被溶接材である鋼材の厚さが増加するに従い上昇し、例えば、鋼材の厚さが60mmであるダイヤフラムをエレクトロスラグ溶接で接合した場合、溶接入熱は800kJ/cmを超える値となる。
また、エレクトロスラグ溶接は、溶接速度が極めて遅いため、凝固過程における最終融液に靱性を低下させる不純物元素が凝縮しやすい。更に、中心部になる程冷却速度が遅く、金属組織が劣化するため、溶接金属の中心部の靱性が周辺部に比べて極めて低くなる。このため、エレクトロスラグ溶接により形成された溶接金属は、靱性のばらつきが大きく、溶接部の靱性を安定化させることは難しい。このような理由から、エレクトロスラグ溶接においては、溶接金属の靱性値の改善は、技術的なハードルが高い要求と言える。
一方、近時、建築分野においては、耐震性改善要求を契機にして、溶接部全体の高強度化及び高靱性化が求められており、その機械的特性の要求値が高くなっている。このため、エレクトロスラグ溶接についても、HAZ及び溶接金属の高強度化及び高靱性化が求められており、鋼材及び溶接材料の両面から、これらの性能改善が検討されている。具体的には、鋼材に関しては、大入熱溶接においても高靱性の熱影響部を得ることができる鋼材(以下、高HAZ靱性鋼材という)が開発され、実用化されている。また、溶接材料に関しては、ワイヤ組成を工夫することにより、従来のエレクトロスラグ溶接用ワイヤを使用した場合に比べて、溶接金属の靱性を向上させることができる溶接ワイヤが提案されている(特許文献1参照)。更に、大入熱溶接して得た高靱性の溶接継手も提案されている(特許文献2参照)。特許文献2の溶接継手においては、鋼材のC含有量を0.03乃至0.12質量%にし、更に溶接金属の組成を適正化することにより、熱影響部の靱性低下を防止すると共に溶接金属の靱性を向上させている。
特開2002−79396号公報 特開2003−155539号公報
しかしながら、前述の従来の技術には、以下に示す問題点がある。即ち、高HAZ靱性鋼材は、通常の多層盛り溶接等での大入熱溶接において、HAZの靱性を向上させることを念頭に設計されているため、極大入熱の1パスのエレクトロスラグ溶接に適用した場合、従来の鋼材を使用した継手よりもHAZの靱性は向上するが、溶接金属の靱性は向上しないという問題点がある。
また、特許文献1に記載の大入熱エレクトロスラグ溶接用ワイヤは、鋼HAZ靱性鋼と組み合わせて使用した場合でも、70J程度の靱性値を得ることができ、従来の溶接ワイヤに比べて靱性値を大幅に向上することができるが、溶接金属の靱性がばらつきやすく、安定した衝撃特性が得られないという問題点がある。更に、特許文献2に記載の溶接継手は、溶接入熱が200kJ/cmを超えた場合の靱性確保を目的としているが、被溶接部材である鋼材の厚さが厚く、溶接入熱が極めて高いエレクトロスラグ溶接に適用した場合、十分な靱性が得られないという問題点がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、溶接入熱が大きいエレクトロスラグ溶接により形成しても優れた靱性が安定して得られる溶接金属、溶接ワイヤ及びエレクトロスラグ溶接方法を提供することを目的とする。
本願第1発明に係る溶接金属は、鋼材をエレクトロスラグ溶接することにより形成される溶接金属であって、C:0.03乃至0.10質量%、Si:0.20乃至0.80質量%、Mn:0.60乃至1.80質量%、Cu:0.10乃至1.00質量%、Ni:0.20乃至1.40質量%、Mo:0.50乃至2.00質量%、Ti:0.010乃至0.040質量%及びO:0.005乃至0.060質量%を含有し、Cr:0.80質量%以下、B:0.0020質量%以下及びN:0.010質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
本発明においては、大入熱溶接した場合においても靱性を改善する効果が高いMoを添加すると共に、Moと共に添加することにより靱性のばらつきを抑制する効果があるCuを添加しており、更に、これらの含有量を適正化しているため、溶接入熱が250kJ/cmを超えるエレクトロスラグ溶接により形成されたものであっても、優れた靱性が得られる。
この溶接金属は、例えば、JIS規格G3136に規定された建築構造用圧延鋼材であって、C:0.18質量%以下、Si:0.55質量%以下、Mn:1.60質量%以下、P:0.030質量%以下、S:0.015質量%以下に規制されると共に、Cu:2.0質量%以下、Ni:3.0質量%以下、Cr:2.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成の鋼材を溶接することにより得られる。
また、前記溶接金属は、更に、La:0.01乃至0.10質量%及びCe:0.01乃至0.10質量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有していてもよい。これにより、靱性をより向上させることができる。
また、前記溶接金属は、例えば、500kJ/cm以上の超大入熱エレクトロスラグ溶接により形成されたものであっても、優れた靱性が得られる。
本願第2発明に係る溶接ワイヤは、鋼材をエレクトロスラグ溶接する際に使用される溶接ワイヤであって、C:0.01乃至0.12質量%、Si:0.10乃至1.00質量%、Mn:0.5乃至2.0質量%、Cu:0.05乃至1.00質量%、Mo:0.7乃至3.0質量%、Ti:0.10乃至0.40質量%及びO:0.0005乃至0.0500質量%を含有し、Ni:2.2質量%以下、Cr:0.60質量%以下、B:0.0010質量%以下及びN:0.0100質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
本発明においては、大入熱溶接において溶接金属の靱性を改善する効果が高いMoを添加すると共に、Moと共に添加することにより溶接金属における靱性のばらつきを抑制する効果があるCuを添加しているため、大入熱エレクトロスラグ溶接に使用した際に、高靱性の溶接金属が得られる。
この溶接ワイヤは、例えば、JIS規格G3136に規定された建築構造用圧延鋼材であって、C:0.18質量%以下、Si:0.55質量%以下、Mn:1.60質量%以下、P:0.030質量%以下、S:0.015質量%以下に規制されると共に、Cu:2.0質量%以下、Ni:3.0質量%以下、Cr:2.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成の鋼材をエレクトロスラグ溶接する際に使用される。
前記溶接ワイヤは、更に、La:0.01乃至0.20質量%及びCe:0.001乃至0.20質量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有していてもよい。これにより、溶接金属の靱性をより向上させることができる
また、この溶接ワイヤは、溶接入熱が500kJ/cm以上の超大入熱溶接に使用した場合においても、靱性が優れた溶接金属が得られる。
本願第3発明に係るエレクトロスラグ溶接方法は、C:0.01乃至0.12質量%、Si:0.10乃至1.00質量%、Mn:0.5乃至2.0質量%、Cu:0.05乃至1.00質量%、Mo:0.7乃至3.0質量%、Ti:0.10乃至0.40質量%及びO:0.0005乃至0.0500質量%を含有し、Ni:2.2質量%以下、Cr:0.60質量%以下、B:0.0010質量%以下及びN:0.0100質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成の溶接ワイヤを使用して鋼材を溶接し、C:0.03乃至0.10質量%、Si:0.20乃至0.80質量%、Mn:0.60乃至1.80質量%、Cu:0.10乃至1.00質量%、Ni:0.20乃至1.40質量%、Mo:0.50乃至2.00質量%、Ti:0.010乃至0.040質量%及びO:0.005乃至0.060質量%を含有し、Cr:0.80質量%以下、B:0.0020質量%以下及びN:0.010質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成の溶接金属を得ることを特徴とする。
本発明においては、大入熱溶接において溶接金属の靱性を改善する効果が高いMoが添加され、更にMoと共に添加されることにより溶接金属における靱性のばらつきを抑制する効果があるCuも添加されている溶接ワイヤを使用し、これらの元素が含まれる溶接金属を形成しているため、大入熱エレクトロスラグ溶接においても、高靱性の溶接金属が得られる。
前記鋼材は、例えば、JIS規格G3136に規定された建築構造用圧延鋼材であって、C:0.18質量%以下、Si:0.55質量%以下、Mn:1.60質量%以下、P:0.030質量%以下、S:0.015質量%以下に規制されると共に、Cu:2.0質量%以下、Ni:3.0質量%以下、Cr:2.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成である。
また、前記溶接ワイヤは、更に、La:0.01乃至0.20質量%及びCe:0.001乃至0.20質量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有し、前記溶接金属は、更に、La:0.01乃至0.10質量%及びCe:0.01乃至0.10質量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有していてもよい。これにより、溶接金属の靱性をより向上することができる。
更に、前記エレクトロスラグ溶接方法は、溶接入熱を500kJ/cm以上にした場合においても、靱性が優れた溶接金属を得ることができる。
本発明によれば、大入熱溶接において溶接金属の靱性を改善する効果が高いMoを添加し、更にMoと共に添加することにより溶接金属における靱性のばらつきを抑制する効果があるCuを添加しているため、エレクトロスラグ溶接においても優れた靱性の溶接金属を安定して得ることができる。
以下、本発明に係る溶接金属について具体的に説明する。本発明者等は、上記課題を解決するため、溶接金属の高靱性化に取り組んだ結果、以下の知見を得た。溶接金属における靱性等の機械的特性は、金属組織と密接な関係があり、溶接入熱が大きくなると、溶融金属及び溶融部の冷却速度が著しく低下し、金属組織中に脆化要因となる粒界フェライトが生成しやすくなる。粒界フェライトの生成を抑制するためには、結晶粒界によって形成される粒界フェライトの核の生成を防止し、オーステナイトを、細かく緻密なフェライト粒からなるアシキュラーフェライトに変態させることが有効である。アシキュラーフェライトは、靱性改善の効果が極めて高く、良好な靱性を得るためには好ましい組織である。また、粒界フェライトの生成を防止するためには、Mn及びNi等の焼き入れ性が高い元素を添加することも有効である。しかしながら、これらの焼き入れ元素の含有量が過剰になると、大入熱溶接において、アシキュラーフェライトに代わって粗大なベイナイトが生成するため、溶接金属の強度が増し、靱性が著しく低下する。このため、エレクトロスラグ溶接のように、溶接入熱が極めて大きく且つ冷却速度が極めて遅い場合は、粒界フェライトの生成及び粗大ベイナイトの生成を同時に抑制しなければならない。
本発明者等は、先ず金属組織への影響が大きい元素の添加量について検討を行ったが、目標とする靱性は容易に得られず、また靱性値を安定化することもできなかった。そこで、本発明者等は、溶接金属の靱性を向上するため鋭意実験研究を行った結果、以下に示す特定成分の含有量を制御することにより、溶接金属の靱性を向上させることができることを見出した。即ち、従来の知見では、Moは強度及び靱性を高める効果があるが、過剰に添加すると靱性及び伸びが低下するとされていたが、本発明者等は、あえてMo含有量を高くした溶接金属について検討を行ったところ、溶接金属中にMoを一定量以上含有させると、溶接金属の中心部における結晶粒界が減少して靱性が向上することを見出した。また、Moと共にCuを添加することにより、衝撃値のばらつきが小さくなり、靱性が安定化することも見出した。更にまた、溶接金属に希土類を含有させると、靱性が良好になることも見出した。
以下、本発明の溶接金属における化学組成の数値限定理由について説明する。
溶接金属中のC:0.03乃至0.10質量%
Cは、溶接金属の強度を確保するために有効な元素であるが、溶接金属中のC含有量が0.03質量%未満では、その効果が得られない。一方、C含有量が多すぎると、具体的には、溶接金属中のC含有量が0.10質量%を超えると、溶接金属の靱性が低下すると共に高温割れ感受性が高くなる。よって、溶接金属中のC含有量は0.03乃至0.10質量%とする。
溶接金属中のSi:0.20乃至0.80質量%
Siは、溶接金属の焼入れ性を確保すると共に、溶接金属の湯流れを安定させるために必要な元素である。但し、溶接金属中のSi含有量が0.20質量%未満の場合、その効果が得られない。一方、Siを過剰に添加すると、具体的には、溶接金属中のSi含有量が0.80質量%を超えると、溶接金属中の酸素量が増加して靱性が低下する。よって、溶接金属中のSi含有量は0.20乃至0.80質量%とする。
溶接金属中のMn:0.60乃至1.80質量%
Mnは、脱酸剤として作用すると共に、焼き入れ性を向上させる効果があり、溶接金属の靱性を安定化するためには必須の元素である。但し、溶接金属中のMn含有量が0.6質量%未満の場合、溶接金属の靱性を向上させるアシキュラーフェライトが減少し、粒界フェライト等の靱性を低下させる組織が生成する。一方、溶接金属中のMn含有量が1.8質量%を超えると、焼入れ性が著しく高くなり、靱性が低下する。よって、溶接金属中のMn含有量は0.60乃至1.80質量%とする。
溶接金属中のCu:0.10乃至1.00質量%
Cuは、合金成分として添加された場合には、溶接金属の強度を改善する効果があるが、Moと共に添加された場合には、靱性のばらつきを抑制する効果があり、本発明の溶接金属には必須の元素である。但し、溶接金属中のCu含有量が0.10質量%未満の場合、靱性を改善する効果が得られない。また、靱性が高い成分系であっても、Cu含有量が0.10質量%未満であると、場所によって特性が大きくばらついて、溶接金属中に靱性が低い箇所が生じるため、特性が不十分となる。一方、溶接金属中のCu含有量が1.00質量%を超えると、強度が高くなりすぎて靱性が低下する。よって、溶接金属中のCu含有量は0.10乃至1.00質量%とする。
溶接金属中のNi:0.20乃至1.40質量%
Niは、焼入れ性を向上させる効果があり、補助的に添加することにより、溶接金属の金属組織及び強度を調節することができる。但し、溶接金属中のNi含有量が0.20質量%未満の場合、粒界フェライトが生成し、靱性が低下する。一方、溶接金属中のNi含有量が1.40質量%を超えると、粗大なベイナイトが生成しやすくなるため靱性が低下すると共に、凝固偏析が大きくなって、伸びを低下させるマルテンサイト相の生成が顕著になる。よって、溶接金属中のNi含有量は0.20乃至1.40質量%とする。
溶接金属中のMo:0.50乃至2.00質量%
Moは、溶接金属の金属組織の制御及び靱性の改善おける効果が極めて大きく、本発明者等により新たな知見が見出された成分である。Moは、高温におけるオーステナイトの結晶粒サイズを安定化し、その後の冷却工程においても粒界フェライトを抑制する働きが顕著である。但し、溶接金属中のMo含有量が0.50質量%未満であると、十分な靱性を得ることができない。一方、溶接金属中のMo含有量が2.00質量%を超えると、焼入れ性が高くなりすぎて、靱性及び伸びが低下する。よって、溶接金属中のMo含有量は0.50乃至2.00質量%とする。
溶接金属中のTi:0.010乃至0.040質量%
Tiは、アシキュラーフェライトを生成する核となり、粒界フェライトの生成を防止するために必須の成分である。但し、溶接金属中のTi含有量が0.010質量%未満の場合は、その効果が得られない。一方、溶接金属中のTi含有量が0.040質量%を超えると、溶接金属中のTi析出物が多くなりすぎて、靱性及び伸びが低下する。よって、溶接金属中のTi含有量は0.010乃至0.040質量%とする。
溶接金属中のO:0.005乃至0.060質量%
エレクトロスラグ溶接においては、溶接中は、溶融スラグによって溶接金属が大気から遮断されるため、溶接金属中のO含有量は変動しにくい。しかしながら、Oは溶接金属の金属組織に対する影響が大きい元素であるため、溶接金属の特性を確保するためには、O含有量が所定の範囲になるように調節することが好ましい。具体的には、溶接金属中のO含有量が0.005質量%未満であると、焼入れ性が高くなりすぎて、靱性が著しく低下する。一方、溶接金属中のO含有量が0.060質量%を超えると、合金元素が酸化により消耗する量が増加し、結果として靱性が低下する。よって、溶接金属中のO含有量は0.005乃至0.060質量%とする。
溶接金属中のCr:0.80質量%以下
Crは、溶接金属の焼入れ性を高め、金属組織を改善する効果があるが、過剰に添加されると、具体的には、溶接金属中のCr含有量が0.80質量%を超えると、靱性が低下する。よって、溶接金属中のCr含有量は0.80質量%以下に規制する。
溶接金属中のB:0.0020質量%以下
本発明者等の検討結果により、適正量のBを添加すると、衝撃値が向上することが判明したが、その効果はB含有量が比較的高い場合にしか得られなかった。また、Bは、粒界フェライトの生成を抑制する効果が高いが、大入熱溶接においては、凝固偏析を生じて高温割れ感受性を高める元素でもある。このため、溶接金属中のB含有量は少なくすることが好ましい。よって、溶接金属中のB含有量は0.0020質量%以下に規制する。
溶接金属中のN:0.010質量%以下
溶接に使用される鋼材及び溶接ワイヤは、一般に、低コストな大気圧中で製造されるため、その製造工程においてNが混入してしまう。しかしながら、Nは溶接金属の靱性を低下させる元素であり、その含有量はできるだけ少なくすることが好ましい。よって、溶接金属中のN含有量は0.010質量%以下に規制する。
溶接金属中のLa:0.01乃至0.10質量%、Ce:0.01乃至0.10質量%
La及びCeは、溶接金属の靱性を改善する効果があり、本発明の溶接金属においては、La及びCeからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有していてもよい。本発明の溶接金属において必須成分であるTiは、溶接金属中でTiNとして析出して、オーステナイトからフェライトが析出する際の有効異質核として作用し、アシキュラーフェライトの生成を促進すると考えられている。そこで、本発明者等は、溶接金属中にLa及びCeが添加されると、これらの元素が溶存酸素を他の元素よりも優先して消費し、Tiが酸化消耗する反応、即ち、TiがTiOとなる反応が抑制されるため、TiNの生成が促進されて、その結果、アシキュラーフェライトの生成が促進されると考えている。但し、溶接金属中のLa含有量が0.01質量%未満の場合、靱性改善の効果が得られない。一方、Laは高価な材料であり、また、溶接金属への歩留まりが低いため、溶接金属に多量に添加しようとすると、溶接材料が極めて高価になる。このため、溶接金属中のLa含有量の上限は0.10質量%とすることが好ましい。同様に、溶接金属中のCe含有量が0.01質量%未満の場合、靱性改善の効果が得られない。一方、溶接金属中のCe含有量が0.10質量%を超えると、溶接材料のコストが極めて高価になる。よって、La及びCeを添加する場合、溶接金属中のLa含有量は0.01乃至0.10質量%とし、Ce含有量は0.01乃至0.10質量%とすることが好ましい。
この溶接金属は、溶接ワイヤを使用して、下記表1に示す組成の建築構造用圧延鋼材をエレクトロスラグ溶接することにより得ることができる。なお、下記表1における残部はFe及び不可避的不純物である。このような組成の鋼材としては、例えば、JIS規格G3136に規定されているSN490B及びSN490C等があげられ、高HAZ靱性鋼材もこの組成の範囲内に入る鋼材である。以下、上述した組成を有する溶接金属を形成する際に使用される溶接ワイヤの化学成分の数値限定理由について説明する。
Figure 0004467364
溶接ワイヤ中のC:0.01乃至0.12質量%
Cは、溶接金属の強度を確保するために有効な元素である。但し、溶接ワイヤ中のC含有量が0.01質量%未満では、その効果が得られない。一方、溶接ワイヤ中のC含有量が0.12質量%を超えると、溶接金属の靱性が低下すると共に高温割れ感受性が高くなる。よって、溶接ワイヤ中のC含有量は0.01乃至0.12質量%とする。
溶接ワイヤ中のSi:0.10乃至1.00質量%
Siは、溶接金属の焼入れ性を確保すると共に、溶接金属の湯流れを安定させるために必要な元素である。但し、溶接ワイヤ中のSi含有量が0.10質量%未満の場合、その効果が得られない。一方、溶接ワイヤ中のSi含有量が1.00質量%を超えると、溶接金属中の酸素量が増加して靱性が低下する。よって、溶接ワイヤ中のSi含有量は0.10乃至1.00質量%とする。
溶接ワイヤ中のMn:0.5乃至2.0質量%
Mnは、脱酸剤として作用すると共に、焼き入れ性を高める効果があり、溶接金属の靱性を安定化するためには必須の成分である。但し、溶接ワイヤ中のMn含有量が0.5質量%未満の場合、溶接金属の靱性を向上させるアシキュラーフェライトが減少し、粒界フェライト等の靱性を低下させる組織が生成する。一方、溶接ワイヤ中のMn含有量が2.0質量%を超えると、焼入れ性が著しく高くなり、溶接金属の靱性が低下する。よって、溶接ワイヤ中のMn含有量は0.5乃至2.0質量%とする。
溶接ワイヤ中のCu:0.05乃至1.00質量%
Cuは、溶接金属の強度を改善する効果がある。また、Moと共に添加された場合には、溶接金属における靱性のばらつきを抑制する効果を発揮するため、本発明の溶接ワイヤには必須の元素である。但し、溶接ワイヤ中のCu含有量が0.05質量%未満の場合、溶接金属の靱性を改善する効果が得られない。また、仮に溶接金属が靱性が高い成分系により構成されていても、溶接ワイヤ中のCu含有量が0.05質量%未満であると、溶接金属中のCu含有量が少なくなり、靱性のばらつきが大きくなる。一方、溶接ワイヤ中のCu含有量が1.00質量%を超えると、溶接金属中のCu含有量が多くなるため、溶接金属の強度が高くなりすぎて靱性が低下する。よって、溶接ワイヤ中のCu含有量は0.05乃至1.00質量%とする。なお、本発明の溶接ワイヤにCuを添加する方法としては、溶接ワイヤの表面にCuめっき層を設けてもよいが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、溶接ワイヤ中に合金成分として添加しためっき無しのソリッドワイヤでも同様の効果が得られる。
溶接ワイヤ中のMo:0.7乃至3.0質量%
Moは、溶接金属の金属組織の制御及び靱性の改善おける効果が極めて大きく、本発明者等により新たな知見が見出された成分である。Moは、高温下で溶接金属のオーステナイトの結晶粒サイズを安定化し、その後の冷却工程においても粒界フェライトを抑制する働きが顕著である。但し、溶接ワイヤ中のMo含有量が0.7質量%未満であると、溶接金属の靱性が低下する。一方、溶接ワイヤ中のMo含有量が3.0質量%を超えると、溶溶接金属の焼入れ性が高くなりすぎて、靱性及び伸びが低下する。よって、溶接ワイヤ中のMo含有量は0.7乃至3.0質量%とする。
溶接ワイヤ中のTi:0.10乃至0.40質量%
Tiは、溶接金属中でアシキュラーフェライトを生成する核となり、粒界フェライトの生成を防止するために必須の成分である。しかしながら、溶接ワイヤに含まれるTiは、溶接中にその多くが酸化消耗されるため、溶接ワイヤ中のTi含有量が0.10質量%未満の場合は、十分な効果が得られない。一方、溶接ワイヤ中のTi含有量が0.40質量%を超えると、溶接金属中のTi析出物が多くなりすぎて、靱性及び伸びが低下する。よって、Ti含有量は0.10乃至0.40質量%とする。
溶接ワイヤ中のO:0.0005乃至0.0500質量%
Oは、溶接金属の金属組織に対する影響が大きい元素であり、溶接金属の特性を確保するためには、溶接金属中のO含有量を一定範囲にすることが好ましい。溶接ワイヤ中のO含有量が0.0005質量%未満であると、溶接金属の焼入れ性が高くなり、靱性が著しく低下する。一方、溶接ワイヤ中のO含有量が0.0500質量%を超えると、合金元素が酸化により消耗する量が増加し、結果として溶接金属の靱性が低下する。よって、溶接ワイヤ中のO含有量は0.0005乃至0.0500質量%とする。
溶接ワイヤ中のNi:2.2質量%以下
Niは、溶接金属の焼入れ性を向上させる効果があり、溶接ワイヤに補助的に添加することにより、溶接金属の金属組織及び強度を調節することができる。しかしながら、高HAZ靱性鋼材等には、鋼材の靱性を確保するためにNiが添加されているため、溶接ワイヤにおいては、Ni含有量の上限値のみを規定する。具体的には、溶接ワイヤ中のNi含有量が2.2質量%を超えると、溶接金属中に粗大なベイナイトが生成しやすくなって靱性が低下すると共に、凝固偏析が大きくなって、伸びを低下させるマルテンサイト相の生成が顕著になる。よって、溶接ワイヤ中のNi含有量は2.2質量%以下に規制する。
溶接ワイヤ中のCr:0.60質量%以下
Crは、溶接金属の焼入れ性を高め、金属組織を改善する効果があるが、Cr含有量が0.60質量%を超えると、溶接金属の靱性が低下する。よって、溶接ワイヤ中のCr含有量は0.60質量%以下に規制する。
溶接ワイヤ中のB:0.0010質量%以下
Bは、溶接金属中に粒界フェライトが生成することを抑制する効果が高いが、大入熱溶接においては、溶接金属成分を凝固偏析させ、溶接金属の高温割れ感受性を高める元素である。このため、溶接金属中のB含有量は、できるだけ少なくすることが好ましい。なお、高HAZ靱性鋼材にはBが添加されていることが多いため、被溶接材に高HAZ靱性鋼材を使用する場合には、溶接ワイヤにはBを添加しないことが好ましい。よって、溶接ワイヤ中のB含有量は、一般的な製造工程で含まれる範囲とし、0.0010質量%以下に規制する。
溶接ワイヤ中のN:0.0100質量%以下
溶接ワイヤは、一般に大気圧中で製造されるため、その製造工程においてNが混入してしまう。しかしながら、Nは溶接金属の靱性を低下させる元素であり、その含有量はできるだけ少なくすることが好ましい。よって、溶接ワイヤ中のN含有量は0.0100質量%以下に規制する。
溶接ワイヤ中のLa:0.01乃至0.20質量%、Ce:0.01乃至0.20質量%
La及びCeは、溶接金属の靱性を改善する効果があり、本発明の溶接ワイヤにおいては、La及びCeからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有していてもよい。但し、溶接ワイヤ中のLa含有量が0.01質量%未満の場合、溶接金属の靱性改善効果は得られない。また、Laは高価な材料であると共に、溶接金属への歩留まりが低い。このため、溶接ワイヤに多量に添加しようとすると、溶接ワイヤのコストが極めて高価になる。そこで、溶接ワイヤ中のLa含有量は0.20質量%以下にすることが好ましい。同様に、溶接ワイヤ中のCe含有量が0.01質量%未満の場合、溶接金属の靱性改善効果が得られない。一方、溶接ワイヤ中のCe含有量が0.20質量%を超えると、溶接ワイヤのコストが極めて高価になる。よって、溶接ワイヤにLa及びCeを添加する場合、La含有量は0.01乃至0.20質量%とし、Ce含有量は0.01乃至0.20質量%とすることが好ましい。
この溶接ワイヤは、大入熱溶接において溶接金属の靱性を改善する効果が高いMoを添加すると共に、Moと共に添加することにより溶接金属における靱性のばらつきを抑制する効果があるCuを添加しているため、溶接金属中に最適な量のMo及びCuが添加され、鋼材を大入熱のエレクトロスラグ溶接した場合でも、高靱性の溶接金属が得られる。また、この溶接ワイヤは、特に高HAZ靱性鋼を大入熱エレクトロスラグ溶接する際に好適であり、これにより、靱性値が高い溶接金属及びHAZを安定して得ることができる。その場合、高HAZ靱性鋼は、被溶接材の少なくとも一部に使用されていればよい。例えば、橋梁等に使用されるBOX柱において、スキンプレートに高HAZ靱性鋼材を使用した場合、ダイヤフラム及び裏当て材には通常の鋼材を使用することができる。
なお、エレクトロスラグ溶接方法には、溶接により通電ノズルが溶融して消耗する消耗ノズル式、及び溶融して消耗するノズルを含まない構成の非消耗ノズル式の2種類の施工方法があるが、本発明の溶接ワイヤは、どちらの施工方法にも適用可能であり、どちらの施工方法を適用した場合においても、高靱性で且つ靱性にばらつきがない溶接金属を得ることができる。また、本発明の溶接ワイヤは、特に、Mo及びCuの添加量を適正化しているため、500kJ/cm以上の大入熱溶接においても、溶接金属のミクロ組織が良好なアシキュラーフェライト及びベーナイト組織となるため、靱性が優れた溶接金属を得ることができる。
以下、本発明の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。先ず、本発明の第1実施例として、溶接ワイヤの組成を変えて、スキンプレートとダイヤフラムとをエレクトロスラグ溶接しBOX柱を作製した。図1(a)はその際の溶接方法を示す斜視図であり、図1(b)は断面図である。なお、図1(a)においては、図を見やすくするために裏当金を省略している。図1(a)及び(b)に示すように、本実施例においては、板厚が夫々60乃至100mmであり、下記表2に示す組成の高HAZ靱性鋼材A又は高HAZ靱性鋼材Bからなるスキンプレート1に形成されたノズル挿入孔5から、直径が1.6mmで下記表3に示す組成の溶接ワイヤをBOX柱内に挿入し、板厚が60mmで下記表2に示す組成のJIS規格G3100−SM400鋼材からなるダイヤフラム2とスキンプレート1とを、非消耗ノズル式でエレクトロスラグ溶接して実施例及び比較例の溶接継手を作製した。その際、幅が65mmで厚さが32mmのJIS規格G3100−SM400鋼材を裏当金3として使用し、フラックスには溶融フラックスを使用した。また、溶接条件は、開先4のルートギャップを25mm、電流を400A、電圧を52V、溶接速度を1.2乃至1.4cm/分とし、溶接入熱は約960kJ/cmであった。なお、下記表2及び表3における残部は、Fe及び不可避的不純物である。また、本実施例においては、鋼材によってスキンプレート1の厚さが異なっているが、溶接時の電流値により入熱を決めているため、上記溶接条件にはほとんど影響しない。
Figure 0004467364
Figure 0004467364
そして、上述の方法及び条件で作製した実施例1乃至10及び比較例1乃至16の溶接継手における溶接金属の成分分析を行った。その結果を下記表4に示す。なお、下記表4における残部はFe及び不可避的不純物である。
Figure 0004467364
次に、実施例1乃至10及び比較例1乃至16の溶接継手について、引張試験及びシャルピー衝撃試験を行い、その溶接部の機械的特性を評価した。以下、各項目の評価方法について説明する。図2(a)は引張試験片の採取位置を示す断面図であり、図2(b)は衝撃試験片の採取位置を示す断面図である。引張試験は、各溶接継手の溶接金属5の中央部から図2(a)に示す直径が12.5mmの試験片6を採取し、JIS規格Z−3111に基づいて実施し、試験片6の0.2%耐力、引張強度及び伸びを測定した。また、シャルピー衝撃試験は、各溶接継手の溶接金属5の中央部から図2(b)に示す形状の試験片7を採取し、JIS規格JIS規格Z−3111に基づいて実施した。その際、ノッチ形状は2mmVノッチとし、試験温度は0°とした。これらの結果を下記表5にまとめて示す。なお、本実施例においては、各評価項目の目標値を、夫々、0.2%耐力は440N/mm以上、引張強度は600N/mm、伸びは22%以上、衝撃値(シャルピー吸収エネルギー)は各測定値が70以上、平均値が90以上、標準偏差が22以下とし、下記表5に示す総合評価は、全てが目標値以上であった場合を○、1つでも目標値に満たない場合は×とした。
Figure 0004467364
上記表3乃至5に示すように、比較例1の溶接継手は、溶接ワイヤのC含有量が本発明の範囲よりも少ないため、溶接金属中のC含有量が0.03質量%未満になり、衝撃値が目標値よりも低くなった。一方、比較例2の溶接継手は、溶接ワイヤのC含有量が本発明の範囲よりも多いため、溶接金属中のC含有量が0.10質量%を超え、伸び及び衝撃値が目標値よりも低くなった。また、比較例3の継手は、溶接ワイヤのSi含有量が本発明の範囲範囲よりも少ないため、溶接金属中のSi含有量が0.20質量%未満になり、衝撃値が目標値よりも低くなった。一方、比較例4の溶接継手は、溶接ワイヤのSi含有量が本発明の範囲よりも多いため、溶接金属中のSi含有量が0.80質量%を超え、伸び及び衝撃値が目標値よりも低くなり、衝撃値のばらつきも大きかった。
比較例5の継手は、溶接ワイヤのMn含有量が本発明の範囲範囲よりも少ないため、溶接金属中のMn含有量が0.60質量%未満になり、衝撃値が目標値よりも低くなった。比較例6の溶接継手は、溶接ワイヤのMn含有量が本発明の範囲よりも多いため、溶接金属中のMn含有量が1.80質量%を超え、伸び及び衝撃値が目標値よりも低くなった。比較例7の継手は、溶接ワイヤのCu含有量が本発明の範囲範囲よりも少ないため、溶接金属中のCu含有量が0.10質量%未満になり、伸び及び衝撃値が目標値よりも低くなり、衝撃値のばらつきも大きかった。比較例8の溶接継手は、溶接ワイヤのCu含有量が本発明の範囲よりも多いため、溶接金属中のCu含有量が1.00質量%を超え、衝撃値が目標値よりも低くなった。
比較例9の継手は、溶接ワイヤのNi含有量が本発明の範囲範囲よりも多いため、溶接金属中のNi含有量が1.40質量%を超え、伸び及び衝撃値が目標値よりも低くなった。比較例10の溶接継手は、溶接ワイヤのCr含有量が本発明の範囲よりも多いため、溶接金属中のCr含有量が0.80質量%を超え、伸び及び衝撃値が目標値よりも低くなった。比較例11の継手は、溶接ワイヤのMo含有量が本発明の範囲範囲よりも少ないため、溶接金属中のMo含有量が0.50質量%未満になり、伸び及び衝撃値が目標値よりも低くなった。比較例12の溶接継手は、溶接ワイヤのMo含有量が本発明の範囲よりも多いため、溶接金属中のMo含有量が2.00質量%を超え、伸び及び衝撃値が目標値よりも低くなった。
比較例13の継手は、溶接ワイヤのTi含有量が本発明の範囲範囲よりも少ないため、溶接金属中のTi含有量が0.01質量%未満になり、衝撃値が目標値よりも低くなった。比較例14の溶接継手は、溶接ワイヤのTi含有量が本発明の範囲よりも多いため、溶接金属中のTi含有量が0.04質量%を超え、衝撃値が目標値よりも低くなった。比較例15の継手は、溶接ワイヤのN含有量が本発明の範囲範囲よりも多いため、溶接金属中のN含有量が0.01質量%を超え、衝撃値が目標値よりも低くなった。比較例16の溶接継手は、溶接ワイヤのO含有量が本発明の範囲よりも多いため、溶接金属中のO含有量が0.060質量%を超え、伸び及び衝撃値が目標値よりも低くなった。
一方、本発明の範囲内の組成を有する溶接ワイヤを使用して溶接した実施例1乃至10の溶接継手は、委溶接金属の組成が本発明の範囲内となり、0.2%耐力、引張強度、伸び及び衝撃値の全ての項目で目標値を上回り、比較例1乃至16の溶接継手よりも機械的特性が優れていた。
また、本発明の第2実施例として、上記表2に示す鋼材を、前述の第1実施例と同様の方法及び条件で溶接して、下記表6に示す組成の溶接金属を形成した。なお、下記表6における残部はFe及び不可避的不純物である。
Figure 0004467364
そして、実施例11乃至21及び比較例27乃至42の溶接金属について、前述の第1実施例と同等の方法で引張試験及びシャルピー衝撃試験を行い、その機械的特性を評価した。その結果を下記表7にまとめて示す。
Figure 0004467364
上記表6及び表7に示すように、比較例27の溶接金属は、C含有量が本発明の範囲よりも少ないため、0.2%耐力及び衝撃値が目標値よりも低かった。比較例28の溶接金属は、C含有量が本発明の範囲よりも多いため、衝撃値が目標値よりも低かった。比較例29の溶接金属は、Si含有量が本発明の範囲よりも少ないため、0.2%耐力及び衝撃値が目標値よりも低かった。比較例30の溶接金属は、Si含有量が本発明の範囲よりも多いため、衝撃値が目標値よりも低かった。比較例31の溶接金属は、Mn含有量が本発明の範囲よりも少ないため、0.2%耐力及び衝撃値が目標値よりも低かった。比較例32の溶接金属は、Mn含有量が本発明の範囲よりも多いため、伸び及び衝撃値が目標値よりも低かった。
比較例33の溶接金属は、Cu含有量が本発明の範囲よりも少ないため、衝撃値のばらつきが大きかった。比較例34の溶接金属は、Cu含有量が本発明の範囲よりも多いため、伸び及び衝撃値が目標値よりも低かった。比較例35の溶接金属は、Ni含有量が本発明の範囲よりも少ないため、衝撃値が目標値よりも低かった。比較例36の溶接金属は、Ni含有量が本発明の範囲よりも多いため、伸びが目標値よりも低かった。比較例37の溶接金属は、Cr含有量が本発明の範囲よりも多いため、衝撃値が目標値よりも低く、ばらつきも大きかった。比較例38の溶接金属は、Mo含有量が本発明の範囲よりも少ないため、0.2%耐力及び衝撃値が目標値よりも低かった。比較例39の溶接金属は、Mo含有量が本発明の範囲を超えているため、伸び及び衝撃値が目標値よりも低かった。
比較例40の溶接金属は、Ti含有量が本発明の範囲よりも少ないため、0.2%耐力及び衝撃値が目標値よりも低かった。比較例41の溶接金属は、Ti含有量が本発明の範囲を超えているため、衝撃値が目標値よりも低く、ばらつきも大きかった。比較例42の溶接金属は、O含有量が本発明の範囲よりも多いため、0.2%耐力、伸び及び衝撃値が目標値よりも低かった。
一方、本発明の範囲内の組成を有する実施例11乃至21の溶接金属は、0.2%耐力、引張強度、伸び及び衝撃値の全ての項目で、目標値を上回っており、前述の比較例27乃至42の継手よりも優れた機械的特性が得られ、更に靱性のばらつきも少なかった。
更に、本発明の第3実施例として、ダイヤフラム2の厚さを40mmにして、それ以外は前述の第1実施例と同様の方法及び条件で、スキンプレート1とダイヤフラム2とをエレクトロスラグ溶接して、実施例22の溶接継手を作製した。このとき、スキンプレート1には鋼材Aを使用した。下記表8にこの溶接継手の溶接金属の組成を示す。なお、下記表8には、ダイヤフラム2の厚さが60mmである実施例11の溶接継手の溶接金属組成を併せて示す。また、下記表8における残部はFe及び不可避的不純物である。
Figure 0004467364
次に、この溶接継手の溶接金属について、前述の第1及び第2実施例と同等の方法で引張試験及びシャルピー衝撃試験を行い、溶接金属の機械的特性を評価した。その結果を下記表9にまとめて示す。なお、下記表9には、実施例11の溶接継手における溶接金属の機械的特性の評価結果を併せて示す。
Figure 0004467364
上記表9に示すように、ダイヤフラムの厚さを40mmにすると、ダイヤフラムの厚さが60mmの場合よりも溶接入熱が低くなるため、実施例22の溶接継手は、実施例11の継手よりも機械的性能が向上し、特に衝撃値が大幅に向上していた。
(a)は本実施例の溶接方法を示す斜視図であり、(b)はその断面図である。 (a)は引張試験片の採取位置を示す断面図であり、(b)は衝撃試験片の採取位置を示す断面図である。
符号の説明
1;スキンプレート
2;ダイヤフラム
3;裏当金
4;開先
5;溶接金属
6;引張試験片
7;衝撃試験片
8;ノズル挿入孔

Claims (12)

  1. 鋼材をエレクトロスラグ溶接することにより形成される溶接金属であって、C:0.03乃至0.10質量%、Si:0.20乃至0.80質量%、Mn:0.60乃至1.80質量%、Cu:0.10乃至1.00質量%、Ni:0.20乃至1.40質量%、Mo:0.50乃至2.00質量%、Ti:0.010乃至0.040質量%及びO:0.005乃至0.060質量%を含有し、Cr:0.80質量%以下、B:0.0020質量%以下及びN:0.010質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする溶接金属。
  2. 前記鋼材は、JIS規格G3136に規定された建築構造用圧延鋼材であって、C:0.18質量%以下、Si:0.55質量%以下、Mn:1.60質量%以下、P:0.030質量%以下及びS:0.015質量%以下に規制されると共に、Cu:2.0質量%以下、Ni:3.0質量%以下、Cr:2.0質量%以下及びMo:1.0質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の溶接金属。
  3. 更に、La:0.01乃至0.10質量%及びCe:0.01乃至0.10質量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接金属。
  4. 500kJ/cm以上の溶接入熱で溶接されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶接金属。
  5. 鋼材をエレクトロスラグ溶接する際に使用される溶接ワイヤであって、C:0.01乃至0.12質量%、Si:0.10乃至1.00質量%、Mn:0.5乃至2.0質量%、Cu:0.05乃至1.00質量%、Mo:0.7乃至3.0質量%、Ti:0.10乃至0.40質量%及びO:0.0005乃至0.0500質量%を含有し、Ni:2.2質量%以下、Cr:0.60質量%以下、B:0.0010質量%以下及びN:0.0100質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする溶接ワイヤ。
  6. 前記鋼材は、JIS規格G3136に規定された建築構造用圧延鋼材であって、C:0.18質量%以下、Si:0.55質量%以下、Mn:1.60質量%以下、P:0.030質量%以下及びS:0.015質量%以下に規制されると共に、Cu:2.0質量%以下、Ni:3.0質量%以下、Cr:2.0質量%以下及びMo:1.0質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項5に記載の溶接ワイヤ。
  7. 更に、La:0.01乃至0.20質量%及びCe:0.001乃至0.20質量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項5又は6に記載の溶接ワイヤ。
  8. 500kJ/cm以上の溶接入熱で溶接されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の溶接ワイヤ。
  9. C:0.01乃至0.12質量%、Si:0.10乃至1.00質量%、Mn:0.5乃至2.0質量%、Cu:0.05乃至1.00質量%、Mo:0.7乃至3.0質量%、Ti:0.10乃至0.40質量%及びO:0.0005乃至0.0500質量%を含有し、Ni:2.2質量%以下、Cr:0.60質量%以下、B:0.0010質量%以下及びN:0.0100質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成の溶接ワイヤを使用して鋼材を溶接し、C:0.03乃至0.10質量%、Si:0.20乃至0.80質量%、Mn:0.60乃至1.80質量%、Cu:0.10乃至1.00質量%、Ni:0.20乃至1.40質量%、Mo:0.50乃至2.00質量%、Ti:0.010乃至0.040質量%及びO:0.005乃至0.060質量%を含有し、Cr:0.80質量%以下、B:0.0020質量%以下及びN:0.010質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成の溶接金属を得ることを特徴とするエレクトロスラグ溶接方法。
  10. 前記鋼材は、JIS規格G3136に規定された建築構造用圧延鋼材であって、C:0.18質量%以下、Si:0.55質量%以下、Mn:1.60質量%以下、P:0.030質量%以下及びS:0.015質量%以下に規制されると共に、Cu:2.0質量%以下、Ni:3.0質量%以下、Cr:2.0質量%以下及びMo:1.0質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項9に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
  11. 前記溶接ワイヤは、更に、La:0.01乃至0.20質量%及びCe:0.001乃至0.20質量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有し、前記溶接金属は、更に、La:0.01乃至0.10質量%及びCe:0.01乃至0.10質量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項9又は10に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
  12. 溶接入熱が500kJ/cm以上であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
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