孔版印刷装置などの印刷装置では、インキを収納したインキ収納容器を印刷装置内に装着し、装着されたインキ収納容器内のインキをインキポンプで吸引し、吸引したインキを版胴内のインキ溜り部へ供給している。
このような孔版印刷装置におけるインキ収納容器の装着部分の構造、及び、装着されたインキ収納容器を取り外すときに発生する不都合について、図13ないし図16に基づいて説明する。
印刷装置内に案内レール1が設けられ、案内レール1上にインキ収納容器ホルダ2が取り付けられている。インキ収納容器ホルダ2は案内レール1上を矢印a、a′方向へスライド可能に取り付けられ、インキを収納したインキ収納容器3がインキ収納容器ホルダ2に着脱可能に取り付けられている。インキ収納容器ホルダ2には、このインキ収納容器ホルダ2をスライド操作するときに把持する取っ手4と、着脱可能に取り付けられるインキ収納容器3の取り付け位置を位置決めするための位置決め部5とが形成されている。
インキ収納容器3は、可撓性を有する合成樹脂フィルム等により形成されたインキ収納袋6、インキ収納袋6に取り付けられたインキ供給筒7、インキ収納袋6を収納する厚紙製直方体形状の収納ボックス8等により形成されている。インキ供給筒7には、キャップ(図示せず)を取り付けるためのネジ部9、インキ収納容器ホルダ2への取り付け位置を位置決めするための鍔部10が形成されている。インキ収納容器ホルダ2への取り付け位置の位置決めは、インキ供給筒7を位置決め部5に形成されたU字形状部(図示せず)に嵌合させ、位置決め部5を鍔部10と収納ボックス8とで挟むことにより行われる。
印刷装置内におけるインキ収納容器ホルダ2のスライド方向先端側には、インキポンプ11が設けられている。インキポンプ11は、インキ収納容器3のインキ供給筒7に接続されるインキ吸引筒12、インキを吸引するための負圧を発生させるピストン(図示せず)、ピストンに連結されて矢印方向へ往復スライドするピストン軸13等により形成されている。インキポンプ11には、吸引したインキを版胴(図示せず)内のインキ溜り部(図示せず)へ案内するインキ供給パイプ14が接続されている。
このような構成において、インキ収納容器3が取り付けられたインキ収納容器ホルダ2を、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが接続される接続位置(図13及び図14に示す位置)へ向けて矢印a方向へスライドさせる。これにより、インキ吸引筒12がインキ供給筒7に挿入され、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが接続される。インキ吸引筒12の外周面にはOリング15が取り付けられており、このOリング15がインキ供給筒7の内周面に圧接され、インキ吸引筒12とインキ供給筒7との接続部分からのインキの漏れ出しが防止されている。なお、インキ収納容器ホルダ2を接続位置までスライドさせてインキ吸引筒12とインキ供給筒7とを接続したとき、インキ収納容器ホルダ2はロック機構(図示せず)により自動的にロックされる。
図13及び図14に示したようにインキ吸引筒12とインキ供給筒7とを接続した後、インキポンプ11を駆動させることによりインキ収納容器3内のインキがインキポンプ11側へ吸引され、吸引されたインキはインキ供給パイプ14内を流れてインキ溜り部へ供給される。
インキ収納容器3内のインキが無くなった場合には、このインキ収納容器3を新しいものに交換する。
インキ収納容器3の交換作業時には、ロック機構によるロックを解除した後にインキ収納容器ホルダ2をインキ吸引筒12とインキ供給筒7との接続が解除される接続解除位置へ向けて矢印a′方向へスライドさせ、インキ吸引筒12とインキ供給筒7との接続を解除する。インキ吸引筒12とインキ供給筒7との接続を解除した後にインキ収納容器ホルダ2を引き続き矢印a′方向へ所定位置(インキ収納容器3の着脱位置)までスライドさせ、インキ収納容器3をインキ収納容器ホルダ2から取り外し、新しいインキ収納容器3をインキ収納容器ホルダ2に取り付ける。新しいインキ収納容器3をインキ収納容器ホルダ2に取り付けた後、インキ収納容器ホルダ2を接続位置へ向けて矢印a方向へスライドさせ、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とを接続し、インキ収納容器3の交換作業を終了する。
このインキ収納容器3の交換作業時において、インキ収納容器ホルダ2を接続位置から接続解除位置へスライドさせるとき、接続を解除されるインキ吸引筒12とインキ供給筒7との間でインキが図15に示すように糸を引くように伸び出し、伸び出したインキが切れたときに図16に示すようにインキ供給筒7とインキ吸引筒12とからインキが垂れ落ちる。このようなインキの垂れ落ちが発生すると、垂れ落ちたインキが印刷装置内に付着したり、印刷装置が設置されている床面に付着したり、作業者の衣類に付着したりするという問題が生じる。
インキ収納容器ホルダ2を接続位置から接続解除位置へスライドさせるとき、ゆっくりとスライドさせれば、インキ吸引筒12とインキ供給筒7との間で糸を引くように伸び出したインキは長く伸び出す前に切れ、切れたインキの端部はそれぞれインキ吸引筒12内とインキ供給筒7内とに戻り、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とからのインキの垂れ落ちが発生しない。
しかし、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とはOリング15を介在させて強く接続されているため、インキ収納容器ホルダ2を接続位置から接続解除位置へスライドさせるためにはインキ収納容器ホルダ2に強い引っ張り力を加える必要があり、強い引っ張り力を加えているためにインキ吸引筒12とインキ供給筒7とが接続を解除されたときにはインキ吸引筒12とインキ供給筒7とが互いに離反する方向へ移動する速度が速くなる。このため、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが接続を解除されたときには、インキ吸引筒12とインキ供給筒7との間でインキが糸を引くように長く伸び出し、長く伸び出したインキが切れたときにそのインキがインキ吸引筒12とインキ供給筒7とから垂れ落ちる。
そこで、インキ吸引筒とインキ供給筒との接続を外す際におけるインキ吸引筒やインキ供給筒からのインキの垂れ落ちを防止するため、インキ収納容器ホルダ2を接続位置から接続解除位置へ移動させる際に、インキ収納容器ホルダが接続解除位置へ移動してインキ吸引筒とインキ供給筒との接続が解除されたことを検知し、その検知結果に基づいてインキポンプを駆動させることによりインキ収納容器のインキ供給筒内のインキを吸引するようにした発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、特許文献1に開示された発明では、インキ収納容器が接続解除位置へ移動してインキポンプにインキ収納容器が接続されていない状態となったときにインキポンプを駆動させるため、インキポンプ内に空気が吸い込まれてしまい、新たなインキ収納容器を装着した後のインキポンプのインキ吸引動作がスムーズに行えない場合がある。
また、インキ吸引筒とインキ供給筒との接続が解除された後にインキポンプを駆動させるため、インキポンプの駆動タイミングが僅かに遅れる傾向にあり、インキ吸引筒やインキ供給筒からのインキの垂れ落ちを確実に防止することは難しい。
本発明の目的は、インキ収納容器を交換などのためにインキポンプから取り外した際に、インキ収納容器とインキポンプとの接続箇所からのインキの垂れ落ちを防止することである。
本発明のインキ垂れ落ち防止装置は、インキポンプのインキ吸引筒に接続されるインキ供給筒を備えたインキ収納容器を保持し、前記インキ吸引筒と前記インキ供給筒とが接続される接続位置と接続が解除される接続解除位置とへ移動可能なインキ収納容器ホルダと、前記インキ収納容器ホルダが前記接続位置から前記接続解除位置へ移動するときの移動速度を、接続を解除された前記インキ吸引筒と前記インキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下となるように制限する移動速度制限手段と、を有する。
したがって、インキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置へ移動してインキポンプのインキ吸引筒とインキ収納容器のインキ供給筒とが接続を解除されるとき、移動速度制限手段によってインキ収納容器ホルダの移動速度が低速になり、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とが低速で離反するため、インキ吸引筒とインキ供給筒との間で糸を引くようにインキが伸び出しても、そのインキは長く伸び出す前に切れる。インキが長く伸び出す前に切れることにより、切れたインキの端部はそれぞれインキ吸引筒内とインキ供給筒内とに戻り、インキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちが防止される。
なお、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とが離反する際の速度を、0.2m/s以下、より好ましくは0.1m/s以下とすることにより、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちを効果的に防止することができる。
請求項1記載の発明における前記移動速度制限手段は、前記インキ収納容器ホルダが前記接続位置から前記接続解除位置へ移動する間前記インキ収納容器ホルダの外側面に対向するように位置付けられたブレーキ部材と、前記ブレーキ部材を前記インキ収納容器ホルダの外側面に当接するように押圧する付勢体と、を有する。
したがって、インキ収納容器ホルダを接続位置から接続解除位置へ移動させるとき、付勢体により付勢されたブレーキ部材がインキ収納容器ホルダの外側面に当接されるので、ブレーキ部材とインキ収納容器ホルダの外側面との間に作用する摩擦力によってインキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置まで移動する間の移動速度が低速になり、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とが低速で離反し、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちが防止される。
請求項2記載の発明における前記移動速度制限手段は、前記インキ収納容器ホルダにこのインキ収納容器ホルダの移動方向に延出して設けられ、このインキ収納容器ホルダが移動するための駆動力が伝達される駆動力被伝達部と、少なくとも前記インキ収納容器ホルダが前記接続位置から前記接続解除位置へ移動する間前記駆動力被伝達部に駆動力を伝達する駆動力伝達部と、前記駆動力伝達部に連結され、前記インキ収納容器ホルダが少なくとも前記接続位置から前記接続解除位置へ移動する間、前記インキ収納容器ホルダの移動速度が接続を解除された前記インキ吸引筒と前記インキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下となるように前記駆動力伝達部を駆動させる駆動部と、を有する。
したがって、駆動部からの駆動力が駆動力伝達部を介して駆動力被伝達部に伝達され、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下でインキ収納容器ホルダが移動し、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちが防止される。
なお、駆動部からの駆動力によりインキ収納容器が移動する際の移動速度は、接続位置から接続解除位置へ移動する間において接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下となるように設定されていればよく、接続解除位置を通過した後からインキ収納容器をインキ収納容器ホルダに対して着脱する位置までインキ収容容器ホルダを移動させる場合には、駆動部の回転力をアップさせて高速としてもよい。
請求項3記載の発明における前記移動速度制限手段は、前記インキ収納容器ホルダにこのインキ収納容器ホルダの移動方向に延出して設けられ、このインキ収納容器ホルダが移動するための駆動力が伝達される駆動力被伝達部と、前記インキ収納容器ホルダが前記接続位置から前記接続解除位置へ移動する間前記駆動力被伝達部に駆動力を伝達する駆動力伝達部と、弾性復元力を蓄積可能であり、蓄積した弾性復元力によって前記インキ収納容器ホルダが前記接続位置から前記接続解除位置へ移動する向きに前記駆動力伝達部を駆動させる弾性復元方式駆動部と、を有する。
したがって、インキ収納容器ホルダは、弾性復元方式駆動部に蓄積された弾性復元力によりを接続位置から接続解除位置へ移動され、このときの移動速度が接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下であるので、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちが防止される。
一例として、前記弾性復元方式駆動部における弾性復元力の蓄積は、前記インキ収納容器ホルダを前記接続解除位置から前記接続位置へ移動させる動作により行われる。
したがって、弾性復元方式駆動部の弾性復元力は、インキ収納容器ホルダを接続解除位置から接続位置へ移動させる動作により行われるので、この動作はインキ収納容器を交換した際には必須の動作であり、弾性復元力を蓄積するための専用の操作が不要となり、操作性が向上する。
請求項5記載の発明における前記移動速度制限手段は、前記インキ収納容器ホルダの移動に伴って回転する回転体と、前記インキ収納容器ホルダが前記接続位置から前記接続解除位置へ移動する間前記回転体の回転を制動することにより前記インキ収納容器ホルダの移動速度を制限するブレーキ部材と、を有する。
したがって、インキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置へ移動する間、インキ収納容器ホルダの移動に伴って回転する回転体がブレーキ部材により回転を制動され、これにより、インキ収納容器ホルダの移動速度が制限され、その移動速度は接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下であるので、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちが防止される。
請求項6記載の発明における前記移動速度制限手段は、前記インキ収納容器ホルダと一体に移動するピストン部と、前記ピストン部がスライド自在に嵌合されたシリンダ部と、前記インキ収納容器ホルダが前記接続位置から前記接続解除位置へ移動する間前記シリンダ部に対する前記ピストン部のスライド抵抗を上昇させる移動時抵抗上昇手段と、を有する。
したがって、インキ収納容器ホルダが接続位置と接続解除位置との間を移動するとき、インキ収納容器ホルダと一体に移動するピストン部がシリンダ部内をスライドする。インキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置へ移動するときは、移動時抵抗上昇手段によってピストン部のスライド抵抗が上昇されるので、インキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置まで移動する間の移動速度が低速になり、この移動速度は接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下であるので、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちが防止される。
請求項7記載の発明は、インキを収納したインキ収納容器が着脱可能に取り付けられ、前記インキ収納容器内のインキをインキポンプで吸引して印刷部に供給する印刷装置において、請求項1ないし6のいずれか一記載のインキ垂れ落ち防止装置を具備する。
したがって、この印刷装置によれば、請求項1ないし7のいずれか一記載の発明と同様の作用を奏し、インキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置へ移動してインキポンプのインキ吸引筒とインキ収納容器のインキ供給筒とが接続を解除されるとき、インキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちが防止される。
本発明によれば、インキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置へ移動してインキポンプのインキ吸引筒とインキ収納容器のインキ供給筒とが接続を解除されるとき、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とを低速が離反するので、インキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちを防止できる。
請求項1記載の発明によれば、インキ収納容器ホルダを接続位置から接続解除位置へ移動させるとき、付勢体により付勢されたブレーキ部材がインキ収納容器ホルダの外側面に当接されるので、ブレーキ部材とインキ収納容器ホルダの外側面との間に作用する摩擦力によってインキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置まで移動する間の移動速度が低速になり、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とが低速で離反し、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちを防止できる。
請求項2記載の発明によれば、駆動部からの駆動力が駆動力伝達部を介して駆動力被伝達部に伝達され、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下でインキ収納容器ホルダが移動するので、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちを防止できる。
請求項3記載の発明によれば、インキ収納容器ホルダは、弾性復元方式駆動部に蓄積された弾性復元力によりを接続位置から接続解除位置へ移動され、このときの移動速度が接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下であるので、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちを防止できる。
請求項4記載の発明によれば、弾性復元方式駆動部の弾性復元力は、インキ収納容器ホルダを接続解除位置から接続位置へ移動させる動作により行われるので、弾性復元力を蓄積するための専用の操作が不要となり、操作性を向上させることができる。
請求項5記載の発明によれば、インキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置へ移動する間、インキ収納容器ホルダの移動に伴って回転する回転体がブレーキ部材により回転を制動され、これにより、インキ収納容器ホルダの移動速度が制限され、その移動速度は接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下であるので、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちを防止できる。
請求項6記載の発明によれば、インキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置へ移動するときは、移動時抵抗上昇手段によってピストン部のスライド抵抗が上昇されるので、インキ収納容器ホルダが接続位置から接続解除位置まで移動する間の移動速度が低速になり、この移動速度は接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下であるので、接続を解除されたインキ吸引筒とインキ供給筒とからのインキの垂れ落ちを防止できる。
請求項7記載の発明によれば、印刷装置において請求項1ないし6のいずれか一記載のインキ垂れ落ち防止装置を具備するので、この印刷装置は請求項1ないし6のいずれか一記載の発明と同様の効果を奏することができる。
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図4に基づいて説明する。なお、図13ないし図16において説明した部分と同じ部分は同じ符号で示し、説明も省略する(他の実施の形態でも同じ)。
図1は、印刷装置である孔版印刷装置の概略構造を示す縦断正面図である。この孔版印刷装置は、スキャナ21、製版部22、印刷部23、排版部24、給紙部25、排紙部26等により形成されている。
スキャナ21は、コンタクトガラス(図示せず)上に位置する原稿の画像を光学的に読み取る。このスキャナ21での原稿の読み取りは、ADFを使用して原稿をコンタクトガラス上で移動させながら行ってもよく、又は、原稿を1枚ずつコンタクトガラス上に載置させて行ってもよい。
製版部22は、ロール状態から引き出されたマスタ原紙27をスキャナ21で読み取った画像データに応じて加熱溶融穿孔することによりマスタ原紙27に穿孔画像を形成するサーマルヘッド28、マスタ原紙27をサーマルヘッド28に押し付けながらマスタ原紙27を搬送するプラテン29、穿孔画像が形成されたマスタ原紙27を所定長さにカットするカッタ30等により形成されている。穿孔画像が形成されたマスタ原紙27がカッタ30で所定長さにカットされることによりマスタ(図示せず)が作成される。なお、サーマルヘッド28によるマスタ原紙27の加熱溶融穿孔は、スキャナ21で読み取った画像データに基づいて行う場合のみならず、パーソナルコンピュータなどから送信された画像データに基づいて行うことも可能である。
印刷部23は、軸線回りに回転駆動されてその外周面にマスタが巻き付けられる多孔性で円筒状の版胴31、版胴31の外周面に巻き付けられたマスタに接離する位置へ移動自在なプレスローラ32、インキローラ33、ドクターローラ34、インキ供給パイプ14等により形成されている。インキローラ33とドクターローラ34とインキ供給パイプ14とは版胴31の内部に配置され、インキローラ33とドクターローラ34とにより形成された楔状凹部は、インキ供給パイプ14内を通して供給されるインキが貯溜されるインキ溜り部35とされている。
排版部24は、版胴31に巻き付けられて印刷に用いられ、印刷が終了して不要になった使用済みのマスタを版胴31の外周面から剥がして収納するところであり、マスタを版胴31の外周面から剥がす剥がし機構36、版胴31から剥がされたマスタを収納する収納箱37等により形成されている。
給紙部25には、印刷部23へ給紙される印刷用紙38がセットされる。給紙部25にセットされた印刷用紙38は一枚ずつ分離給紙され、印刷部23で印刷が行われた後に排紙部26に排紙される。
この孔版印刷装置には、版胴31の中心線方向の一端側であって版胴31の外方に位置し、案内レール1(図13参照)、案内ガイド39a、39b、インキ収納容器ホルダ2、インキポンプ11が配置されている。インキ収納容器ホルダ2には、インキを収納するインキ収納容器3が着脱可能に取り付けられている。インキ収納容器ホルダ2には取っ手4と位置決め部5とが設けられ、インキ収納容器ホルダ2は案内レール1上を矢印a、a′方向へスライド可能に設けられている。インキ収納容器3が取り付けられたインキ収納容器ホルダ2を図2に示す接続位置へスライドさせることにより、インキ収納容器3に設けられたインキ供給筒7とインキポンプ11に設けられたインキ吸引筒12とが接続される。また、インキ収納容器ホルダ2を図3に示す接続解除位置へスライドさせることにより、インキ吸引筒12とインキ供給筒7との接続が解除される。
また、この孔版印刷装置には、インキ収納容器ホルダ2が図2に示した接続位置から図3に示した接続解除位置へスライドするときのスライド速度(移動速度)を、接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下となるように制限する移動速度制限手段40が設けられている。
この移動速度制限手段40は、インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へ移動する間インキ収納容器ホルダ2の外側面に対向するように位置付けられたブレーキ部材41と、ブレーキ部材41をインキ収納容器ホルダ2の外側面に当接するように押圧する付勢体であるコイルスプリング42とにより形成されている。
このような構成において、インキ収納容器3が取り付けられたインキ収納容器ホルダ2が図2に示す接続位置に位置する場合には、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが接続され、インキポンプ11を駆動することによりインキ収納容器3内のインキが吸引され、インキ供給パイプ14内を通って版胴31内のインキ溜り部35へ供給される。また、インキ収納容器ホルダ2が接続位置に位置するときは、コイルスプリング42に付勢されたブレーキ部材41がインキ収納容器ホルダ2の外側面に当接されている。
インキ収納容器3内のインキが無くなったためにインキ収納容器3を交換する場合には、まず、図2の接続位置に位置しているインキ収納容器ホルダ2を図3に示す接続解除位置へスライドさせる。このスライド操作は、取っ手4に手をかけてインキ収納容器ホルダ2を矢印a′方向へ引っ張ることにより行う。取っ手4に手をかけてインキ収納容器ホルダ2を矢印a′方向へ引っ張ることにより、インキ収納容器ホルダ2は接続位置から接続解除位置へスライドし、インキ吸引筒12とインキ供給筒7との接続が解除される。
インキ収納容器ホルダ2が図2に示す接続位置から図3に示す接続解除位置へスライドするまでの間、インキ収納容器ホルダ2の外側面には、コイルスプリング42に付勢されたブレーキ部材41が当接されている。このため、ブレーキ部材41とインキ収納容器ホルダ2の外側面との間に作用する摩擦力によってインキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置までスライドする間の移動速度が制限されて低速となり、接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とが低速で離反する。このため、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが離反することに伴ってインキ吸引筒12とインキ供給筒7との間でインキが糸を引くように伸び出しても、そのインキは長く伸び出す前に切れるので、切れたインキの端部はそれぞれ図4に示すようにインキ吸引筒12内とインキ供給筒7内とに戻り、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とからのインキの垂れ落ちが防止される。これにより、インキポンプ11からインキ収納容器3を外したときに、インキがインキ吸引筒12やインキ供給筒7から垂れ落ちることを防止でき、垂れ落ちたインキが印刷装置内や、印刷装置が設置されている床面や、作業者の衣類に付着することを防止できる。
インキ収納容器ホルダ2が矢印a′方向へスライドしてブレーキ部材41がインキ収納容器ホルダ2に当接しなくなると、インキ収納容器ホルダ2に作用していたブレーキ部材41の摩擦力が無くなるので、インキ収納容器ホルダ2を小さな力で、かつ、移動速度を制限されることなく引き続き矢印a′方向へスライドさせることができる。ブレーキ部材41がインキ収納容器ホルダ2に当接しなくなった後にインキ収納容器ホルダ2を必要な位置(例えば、インキ収納容器3をインキ収納容器ホルダ2に対して着脱できる位置)まで矢印a′方向へスライドさせ、その位置でインキ収納容器ホルダ2へのインキ収納容器3の着脱を行うことができる。
本発明の第2の実施の形態を図5及び図6に基づいて説明する。本実施の形態の孔版印刷装置の基本的構造は第1の実施の形態の孔版印刷装置と同じであり、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、移動速度制限手段40aの構造である。
本実施の形態の孔版印刷装置にも、インキ収納容器ホルダ2を図5に示した接続位置から図6に示した接続解除位置へスライドさせるときのスライド速度(移動速度)を、接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下となるように制限する移動速度制限手段40aが設けられている。
この移動速度制限手段40aは、インキ収納容器ホルダ2にこのインキ収納容器ホルダ2のスライド方向に延出して設けられた駆動力被伝達部であるラック43と、インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へスライドする間ラック43と噛み合って駆動力を伝達する駆動力伝達部であるピニオンギア44と、ピニオンギア44に連結されてこのピニオンギア44をインキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へスライドする向きに回転駆動させる駆動部である電動モータ45とにより形成されている。ピニオンギア44は、電動モータ45のモータ軸46に連結されている。なお、電動モータ45の回転数は、インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へスライドするときの移動速度が接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下となるように設定されている。
このような構成において、インキ収納容器3が取り付けられたインキ収納容器ホルダ2が図5に示す接続位置に位置する場合には、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが接続され、インキ収納容器3内のインキがインキポンプ11により吸引可能となる。また、ラック43とピニオンギア44とが噛み合っている。
インキ収納容器ホルダ2が図5に示す接続位置に位置している状態から、インキ収納容器3の交換などのためにインキ収納容器ホルダ2を接続解除位置にスライドさせる場合には、作業者が電動モータ45を駆動させるスイッチ(図示せず)をオンにする。
このスイッチ操作により電動モータ45が駆動され、ピニオンギア44が矢印b方向に回転駆動される。ピニオンギア44の回転に伴いピニオンギア44と噛み合っているラック43が移動し、ラック43が設けられているインキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へ向けて矢印a′方向へスライドする。
インキ収納容器ホルダ2が電動モータ45により駆動されて接続位置から接続解除位置までスライドする間の電動モータ45の回転数が低い値に設定されているため、インキ収納容器ホルダ2の移動速度は低速に維持され、接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とが低速で離反する。このため、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが離反することに伴ってインキ吸引筒12とインキ供給筒7との間でインキが糸を引くように伸び出しても、そのインキは長く伸び出す前に切れる。これにより、長く伸び出す前に切れたインキの端部はそれぞれ図4に示すようにインキ吸引筒12内とインキ供給筒7内とに戻り、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とからのインキの垂れ落ちが防止される。このため、インキポンプ11からインキ収納容器3を外したときに、インキがインキ吸引筒12やインキ供給筒7から垂れ落ちることを防止でき、垂れ落ちたインキが印刷装置内や、印刷装置が設置されている床面や、作業者の衣類に付着することを防止できる。
インキ収納容器ホルダ2が矢印a′方向へスライドしてピニオンギア44とラック43との噛み合いが解除された後は、取っ手4に手をかけてインキ収納容器ホルダ2を矢印a′方向へ引っ張ることにより、インキ収納容器ホルダ2を小さな力で、かつ、移動速度を制限されることなく引き続き矢印a′方向へスライドさせることができる。ピニオンギア44とラック43との噛み合いが解除された後にインキ収納容器ホルダ2を必要な位置まで矢印a′方向へスライドさせ、その位置でインキ収納容器ホルダ2へのインキ収納容器3の着脱を行うことができる。
なお、本実施の形態では、インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へスライドするときに電動モータ45の駆動によりインキ収納容器ホルダ2を低速でスライドさせ、接続解除位置を通過した後は手動でインキ収納容器ホルダ2をスライドさせる場合を説明したが、インキ収納容器ホルダ2のスライド範囲の全域でラック43とピニオンギア44とをかみ合わせる構造としてもよい。この場合には、インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へスライドする間は上述したように電動モータ45を低速回転させてインキ収納容器ホルダ2を低速でスライドさせ、接続解除位置を通過した後は電動モータ45の回転数を上げてインキ収納容器ホルダ2のスライド速度をアップさせることができる。
本発明の第3の実施の形態を図7及び図8に基づいて説明する。本実施の形態の孔版印刷装置の基本的構造は第1の実施の形態の孔版印刷装置と同じであり、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、移動速度制限手段40bの構造である。
本実施の形態の孔版印刷装置にも、インキ収納容器ホルダ2を図7に示した接続位置から図8に示した接続解除位置へスライドさせるときのスライド速度(移動速度)を、接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下となるように制限する移動速度制限手段40bが設けられている。
この移動速度制限手段40bは、インキ収納容器ホルダ2にこのインキ収納容器ホルダ2のスライド方向に延出して設けられた駆動力被伝達部であるラック43と、インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へ移動する間ラック43と噛み合って駆動力を伝達する駆動力伝達部であるピニオンギア47と、ピニオンギア47に連結された弾性復元方式駆動部48とにより形成されている。弾性復元方式駆動部48の回転軸49にピニオンギア47が連結されている。
弾性復元方式駆動部48は、インキ収納容器ホルダ2が接続解除位置から接続位置へスライドするときにラック43と噛み合って回転するピニオンギア47の回転により生じるエネルギーを弾性復元力として蓄積し、蓄積した弾性復元力によってインキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へスライドする向きにピニオンギア47を回転駆動させる駆動部であり、内部には貯溜したオイルの流動抵抗を利用したダンパー機構を内蔵している。このダンパー機構を内蔵することにより、弾性復元方式駆動部48は、蓄積した弾性復元力によりピニオンギア47を回転させるときの回転を低速に制限できる。
また、この孔版印刷装置には、インキ収納容器ホルダ2を接続位置でロックするロック機構50が設けられている。ロック機構50は、インキ収納容器ホルダ2に設けられたロック用突起51、支軸52を支点として回動自在であってインキ収納容器ホルダ2が接続位置に位置するときにロック用突起51に係合されるロック部材53、ロック部材53をロック用突起51との係合状態を維持する向きに付勢するスプリング54、ロック部材53をロック用突起51との係合状態を解除する向きに回動させる操作レバー55により形成されている。
このような構成において、インキ収納容器3が取り付けられたインキ収納容器ホルダ2を図8に示した接続解除位置から図7に示した接続位置へスライドさせることにより、ピニオンギア47がラック43と噛み合って回転し、ピニオンギア47の回転により生じるエネルギーが弾性復元力として弾性復元方式駆動部48に蓄積される。インキ収納容器ホルダ2を接続位置までスライドさせることにより、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが接続されてインキ収納容器3内のインキがインキポンプ11により吸引可能となる。また、ロック部材53がロック用突起51に係合され、インキ収納容器ホルダ2が接続位置でロックされている。また、ラック43とピニオンギア47とが噛み合っている。
インキ収納容器3の交換などのためにインキ収納容器ホルダ2を図7に示す接続位置から図8に示す接続解除位置にスライドさせる場合には、作業者が操作レバー55を矢印c方向に引っ張る。この引っ張り操作により、ロック部材53が支軸52を支点として矢印d方向に回動し、ロック部材53のロック用突起51への係合状態が解除される。これにより、弾性復元方式駆動部48に蓄積された弾性復元力によりピニオンギア47が矢印e方向へ回転し、ピニオンギア47とラック43との噛み合いによってインキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へ向けて矢印a′方向へスライドする。
弾性復元方式駆動部48は、内蔵するダンパー機構によりピニオンギア47を回転させるときの回転が低速に制限され、ピニオンギア47とラック43との噛み合いによって行われるインキ収納容器ホルダ2の矢印a′方向へのスライド速度が低速に制限され、接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とが低速で離反する。このため、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが離反することに伴ってインキ吸引筒12とインキ供給筒7との間でインキが糸を引くように伸び出しても、そのインキは長く伸び出す前に切れるので、切れたインキの端部はそれぞれ図4に示すようにインキ吸引筒12内とインキ供給筒7内とに戻り、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とからのインキの垂れ落ちが防止される。これにより、インキポンプ11からインキ収納容器3を外したときに、インキがインキ吸引筒12とインキ供給筒7とから垂れ落ちることを防止でき、垂れ落ちたインキが印刷装置内や、印刷装置が設置されている床面や、作業者の衣類に付着することを防止できる。
インキ収納容器ホルダ2が矢印a′方向へスライドしてピニオンギア47とラック43との噛み合いが解除されると、その後はインキ収納容器ホルダ2を小さな力で、かつ、移動速度を制限されることなく引き続き矢印a′方向へスライドさせることができる。ピニオンギア47とラック43との噛み合いが解除された後にインキ収納容器ホルダ2を必要な位置まで矢印a′方向へスライドさせ、その位置でインキ収納容器ホルダ2へのインキ収納容器3の着脱を行うことができる。
本発明の第4の実施の形態を図9及び図10に基づいて説明する。本実施の形態の孔版印刷装置の基本的構造は第1の実施の形態の孔版印刷装置と同じであり、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、移動速度制限手段40cの構造である。
本実施の形態の孔版印刷装置にも、インキ収納容器ホルダ2を図9に示した接続位置から図10に示した接続解除位置へスライドさせるときのスライド速度(移動速度)を、接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下となるように制限する移動速度制限手段40cが設けられている。
この移動速度制限手段40cは、インキ収納容器ホルダ2にこのインキ収納容器ホルダ2のスライド方向に延出して設けられたラック43と、インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へ移動する間ラック43と噛み合うピニオンギア56と、ピニオンギア56に一方向クラッチ57を介して連結された回転体58と、回転体58の外周面に押圧されるブレーキ部材59とにより形成されている。一方向クラッチ57は、ピニオンギア56が矢印f方向に回転するときに回転体58が一体に回転するように機能する。ブレーキ部材59は、支軸60を支点として回動自在なアーム61に固定され、アーム61はスプリング62によってブレーキ部材59を回転体58の外周面に押圧する向きに付勢されている。
また、この孔版印刷装置には、接続位置に位置するインキ収納容器ホルダ2を接続解除位置に向けて付勢する圧縮バネ63と、インキ収納容器ホルダ2を接続位置でロックするロック機構64とが設けられている。ロック機構64は、インキ収納容器ホルダ2に設けられたロック用突起51、支軸65を支点として回動自在であってインキ収納容器ホルダ2が接続位置に位置するときにロック用突起51に係合されるロック部材66、ロック部材66をロック用突起51との係合状態を維持する向きに付勢するスプリング67、ロック部材66をロック用突起51との係合状態を解除する向きに回動させる操作レバー68により形成されている。
このような構成において、インキ収納容器3が取り付けられたインキ収納容器ホルダ2が図9に示す接続位置に位置する場合には、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが接続され、インキ収納容器3内のインキがインキポンプ11により吸引可能となる。また、ロック部材66がロック用突起51に係合され、インキ収納容器ホルダ2が接続位置でロックされている。また、ラック43とピニオンギア56とが噛み合っている。
インキ収納容器3の交換などのためにインキ収納容器ホルダ2を図9に示す接続位置から図10に示す接続解除位置にスライドさせる場合には、作業者が操作レバー68を矢印g方向に押圧する。この押圧操作により、ロック部材66が支軸65を支点として矢印h方向に回動し、ロック部材66のロック用突起51への係合状態が解除される。これにより、インキ収納容器ホルダ2は圧縮バネ63の付勢力によって接続解除位置へ向けて矢印a′方向へスライドし、インキ収納容器ホルダ2に設けられているラック43と噛み合っているピニオンギア56が回転し、回転体58がピニオンギア56と一体に回転する。
回転体58の回転時において、回転体58の外周面にはブレーキ部材59が押圧されているので、回転体58とピニオンギア56との回転、及び、インキ収納容器ホルダ2の矢印a′方向へのスライド速度が低速に制限され、接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とが低速で離反する。このため、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが離反することに伴ってインキ吸引筒12とインキ供給筒7との間でインキが糸を引くように伸び出しても、そのたインキは長く伸び出す前に切れるので、切れたインキの端部はそれぞれ図4に示すようにインキ吸引筒12内とインキ供給筒7内とに戻り、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とからのインキの垂れ落ちが防止される。これにより、インキポンプ11からインキ収納容器3を外したときに、インキがインキ吸引筒12やインキ供給筒7から垂れ落ちることを防止でき、垂れ落ちたインキが印刷装置内や、印刷装置が設置されている床面や、作業者の衣類に付着することを防止できる。
インキ収納容器ホルダ2が矢印a′方向へスライドしてピニオンギア56とラック43との噛み合いが解除されると、その後はインキ収納容器ホルダ2を小さな力で、かつ、移動速度を制限されることなく引き続き矢印a′方向へスライドさせることができる。ピニオンギア56とラック43との噛み合いが解除された後にインキ収納容器ホルダ2を必要な位置まで矢印a′方向へスライドさせ、その位置でインキ収納容器ホルダ2へのインキ収納容器3の着脱を行うことができる。
本発明の第5の実施の形態を図11及び図12に基づいて説明する。本実施の形態の孔版印刷装置の基本的構造は第1の実施の形態の孔版印刷装置と同じであり、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、移動速度制限手段40dの構造である。
本実施の形態の孔版印刷装置にも、インキ収納容器ホルダ2を図10に示した接続位置から図11に示した接続解除位置へスライドさせるときのスライド速度(移動速度)を、接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とからインキが垂れ落ちることを防止できる速度以下となるように制限する移動速度制限手段40dが設けられている。
この移動速度制限手段40dは、インキ収納容器ホルダ2と一体にスライドするピストン部69と、ピストン部69がスライド自在に嵌合されたシリンダ部70と、インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へスライドする間シリンダ部70に対するピストン部69のスライド抵抗を上昇させる移動時抵抗上昇手段71とにより形成されている。ピストン部69は、ピストン軸69aとピストン本体69bとにより形成され、ピストン本体69bの外周面がシリンダ部70の内周面に摺接されている。移動時抵抗上昇手段71は、シリンダ部70の底面に形成された貫通孔72と、この貫通孔72を閉止する向きに付勢され、接続解除位置から接続位置へのインキ収納容器ホルダ2のスライド動作に伴ってピストン部69がシリンダ部70内をスライドするときにはシリンダ部70内の圧力上昇により貫通孔72を開放する位置に回動する開閉弁73とにより形成されている。
シリンダ部70の底面には、貫通孔72より小径であって常時開放されている空気孔74が形成されている。また、シリンダ部70には、ピストン部69が矢印a′方向へスライドして所定位置までスライドした後、シリンダ部70の内部と外部とを連通するスリット溝75が形成されている。
このような構成において、インキ収納容器3が取り付けられたインキ収納容器ホルダ2が図10に示す接続位置に位置する場合には、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが接続され、インキ収納容器3内のインキがインキポンプ11により吸引可能となる。このとき、貫通孔72は開閉弁73により閉止されている。
インキ収納容器3の交換などのためにインキ収納容器ホルダ2を図11に示す接続位置から図12に示す接続解除位置にスライドさせる場合には、作業者がインキ収納容器ホルダ2の取っ手4に手をかけ、インキ収納容器ホルダ2を矢印a′方向へ引っ張る。
インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置に向けて矢印a′方向へスライドするとき、ピストン部69がシリンダ部70内を矢印a′方向にスライドする。そして、インキ収納容器ホルダ2が図12に示す接続解除位置へスライドすることにより、インキ吸引筒12とインキ供給筒7との接続が解除される。
インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置へスライドするまでの間、ピストン部69がシリンダ部70内をスライドし、このとき、貫通孔72が開閉弁73により閉止された状態に維持され、小径の空気孔74のみが開放されている。このため、シリンダ部70の内部は負圧状態となり、インキ収納容器ホルダ2のスライド動作に対して大きな抵抗となり、インキ収納容器ホルダ2が接続位置から接続解除位置までスライドする間の移動速度が低速になって接続を解除されたインキ吸引筒12とインキ供給筒7とが低速で離反する。このため、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とが離反することに伴ってインキ吸引筒12とインキ供給筒7との間でインキが糸を引くように伸び出しても、そのインキは長く伸び出す前に切れるので、切れたインキの端部はそれぞれ図4に示すようにインキ吸引筒12内とインキ供給筒7内とに戻り、インキ吸引筒12とインキ供給筒7とからのインキの垂れ落ちが防止される。これにより、インキポンプ11からインキ収納容器3を外したときに、インキがインキ吸引筒12やインキ供給筒7から垂れ落ちることを防止でき、垂れ落ちたインキが印刷装置内や、印刷装置が設置されている床面や、作業者の衣類に付着することを防止できる。
インキ収納容器ホルダ2が矢印a′方向へスライドし、ピストン本体69bがスリット溝75に位置に達すると、このスリット溝75によりシリンダ部70の内部と外部とが連通されるので、その後のインキ収納容器ホルダ2の矢印a′方向へのスライド操作は、小さな力で、かつ、移動速度を制限されることなく行える。インキ収納容器ホルダ2が矢印a′方向へ所定位置までスライドさせた後、その位置でインキ収納容器ホルダ2へのインキ収納容器3の着脱を行うことができる。
インキ収納容器ホルダ2を図12に示す接続解除位置から図11に示す接続位置へスライドさせる場合には、ピストン部69のスライドに伴うシリンダ部70内の圧力が上昇し、その圧力上昇により開閉弁73が開放される。このため、インキ収納容器ホルダ2を接続解除位置から接続位置へスライドさせるときには、移動時抵抗上昇手段71はインキ収納容器ホルダ2のスライド動作の抵抗とはならず、インキ収納容器ホルダ2を接続解除位置から接続位置へスライドさせる操作をスムーズに行える。