以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の膝保護用エアバッグ装置Sは、図1・4に示すごとく、乗員としての運転者MDの膝K(KL・KR)を保護できるように、運転者MDの車両前方側であるステアリングコラム9の下方に配設されている。なお、本明細書における上下、左右、及び、前後は、膝保護用エアバッグ装置Sを車両に搭載させた際の車両の上下・左右・前後に対応するものである。
ステアリングコラム9は、図1に示すように、コラム本体10とコラムカバー13とを備えて構成されている。コラム本体10は、メインシャフト11と、メインシャフト11の周囲を覆うコラムチューブ12と、を備えて構成されている。
膝保護用エアバッグ装置Sは、折り畳まれたエアバッグ85、エアバッグ85に膨張用ガスを供給するインフレーター64、インフレーター64に外装されてインフレーター64を挟持して保持するリテーナ69、折り畳まれたエアバッグ85とインフレーター64とを収納するとともに車両後方側を開口させたケース17、ケース17から突出しているインフレーター64の端部64eを押え可能に配設される抜け防止部材79、ケース17を車両のボディ1側に取付固定するニーパネル43、及び、ケース17における開口18aの車両後方側を覆うエアバッグカバー54を、備えて構成されている。
ケース17は、図1〜4に示すように、板金製として、ステアリングコラム9の下部側に配設されている。ケース17は、箱形状の本体部18と、本体部18の開口18a周縁に配設されるとともにケース17にエアバッグカバー54を取り付ける取付部材32と、を備えて構成されている。
本体部18は、略四角筒形状の周壁部19と、周壁部19の車両前方側を塞ぐ固定壁部としての底壁部29と、から構成されるとともに、車両後方側に略長方形状の開口18aを備えて、構成されている。
周壁部19は、上下方向で対向する上側・下側壁部20・21と、左右方向で対向する左側・右側壁部22・23と、から構成されている。右側壁部23は、略水平方向に沿った横断面において、それぞれ、前後方向に略沿って配設される前方側の元部側壁部24と、後方側の先端側壁部25と、の間に、傾斜壁部26を配設させ、この傾斜壁部26を、先端側壁部25側を拡開させるように傾斜させて、段差状に形成されている(図3・8・13参照)。元部側壁部24には、インフレーター64を挿通可能な挿通孔24aが、形成されている。ケース本体部18の外周側には、挿通孔24aから突出しているインフレーター64の端部64eを押えておくための抜け防止部材79が、配設されることとなる。そして、挿通孔24a周縁となる傾斜壁部26の部位に、この抜け防止部材79の後述する係止フック82を挿入させるための係止孔27が、形成されている。係止孔27は、図7・8に示すように、元部側壁部24側を幅広とした横向きの略T字形状とされて、係止フック82の頭部84を挿通可能とする広幅部27aと、係止フック82の首部84のみを挿通可能とする狭幅部27bと、から構成されるもので、狭幅部27b周縁に、係止フック82の頭部84が係止されることとなる。そして、狭幅部27b周縁に係止された係止フック82の頭部84は、先端84aを、先端側壁部25の内周面側に圧接されることとなる。
底壁部29は、エアバッグ85とインフレーター64とを取り付ける固定壁部とされるもので、リテーナ69に配設される後述するボルト部75を挿通させるための挿通孔29aを、左右方向に沿った2箇所に、配設させている。また、底壁部29における挿通孔29a・29aの間には、内周側(インフレーター64側)に突設される支持突起30が、形成されている。この支持突起30は、略円錐台形状とされるもので、車両搭載時において、略平面状の先端部30aをインフレーター64の後述する大径部64aに当接させることにより、先端部30a利用して、リテーナ69がインフレーター64を挟持可能な構成とされている。
取付部材32は、図5に示すように、本体部18と別体とされるもので、本体部18の開口18aと対応する位置に、本体部18の周壁部19における開口18a周縁部位を嵌挿可能とされる嵌挿穴33を備える構成とされている。そして、嵌挿穴33周縁には、車両前方側に向かって突設されるとともに、周壁部19における開口18a近傍の外周面に固着される固着部35が、略全周にわたって配設され、取付部材32は、この固着部35を周壁部19に固着させることにより、本体部18と一体化される構成である。また、取付部材32における嵌挿穴33上方側近傍となる部位には、表裏(前後)を貫通するように、略長方形状に開口した複数(実施形態では4個)の貫通孔37が、左右方向に沿って並設されている。これらの貫通孔37は、エアバッグカバー54の後述する組付片部58を挿通させるためのもので、組付片部58を組み付ける各係止爪部38近傍の前後方向で重なる位置に、配設されている。
固着部35における本体部18の上側・下側壁部20・21近傍に配設される部位には、それぞれ、係止爪部38と係止突起40とが、延設されている。係止爪部38は、上側壁部20側に配設されるもので、左右方向に沿って複数(実施形態では4個)配設されている。各係止爪部38は、上側壁部20から上方に突出して、先端を車両前方側に向けるように、断面略L字形状とされており、組付片部58の後述する係止穴部58aに挿入されて、係止穴部58a周縁を係止可能とされている。係止突起40は、下側壁部21側に配設されるもので、それぞれ、下側壁部21から下方に突出するように、左右方向に沿って複数(実施形態では4個)配設されている。各係止突起40は、エアバッグカバー54の後述する組付壁部59に形成される係止穴部59aに挿通可能とされるもので、ケース17と別体とされる押え部材50により、係止穴部59aに組み付けられる構成である。各係止突起40は、組付時に、組付壁部59から下方に突出する突出部40aを備えており、突出部40aに、前後方向に貫通して、押え部材50の挿入部52を挿入可能な挿入孔40bが、形成されている。
押え部材50は、板金製とされて、上下方向に略沿って配設される固定部51と、固定部51の下端側から後方側に延びるように前後方向に沿って配設される櫛歯状の挿入部52と、から構成されている。挿入部52は、実施形態の場合、係止突起40に対応して、左右方向に沿って4個並設されている。固定部51には、リテーナ69のボルト部75を挿通可能な2つの挿通孔51aが、形成されている。そして、押え部材50は、各挿入部52を、組付壁部59から下方に突出している各係止突起40の突出部40aに形成される挿入孔40bに挿入させて、閂状に配設させることにより、各係止突起40の係止穴部59aからの抜けを防止する構成である。押え部材50は、リテーナ69をケース17に固定させるためのボルト部75とナット76とを使用して、リテーナ69とともにケース本体部18に固定されることとなる。
取付部材32の嵌挿穴33の左右両側は、ケース17をニーパネル43に固定させるための固定部41として構成されている。各固定部41は、ケース開口18aの開口面に沿って、後部側を上方に位置させ前部側を下方に位置させるように、傾斜して配設されるもので、それぞれ、嵌挿穴33の開口面における上下方向に沿って、2つのボルト41aを、車両前方側に向かって突設させた構成とされている。
ニーパネル43は、実施形態の場合、ケース17の右側に配設される右側パネル部44と、ケース17の左側に配設される左側パネル部46と、から構成されている。右側パネル部44は、左端下端付近を固定部41に固定される略直角三角形板状とされて、上端側と右端側とに、ボディ1側に取り付ける取付部45(45A・45B)を、配設させている。各取付部45には、ボディ1側にボルト止めするための取付孔45aが、形成されている。左側パネル部46は、前後方向に略沿って配設される略長方形板状とされて、下端付近を固定部41に固定される構成であり、上下両端側に、ボディ1側に取り付ける取付部47(47A・47B)を、配設させている。各取付部47には、ボディ1側にボルト止めするための取付孔47aが、形成されている。各左側・右側パネル部44・46は、固定部41と同様に、ケース開口18aの開口面に沿って、後部側を上方に位置させ前部側を下方に位置させるように、傾斜して配設されており、それぞれ、ケース17の固定部41に形成されるボルト41aを挿通可能な挿通孔44a・46aを、備えている。実施形態の場合、上部側の取付部45A・47Aを取り付けるボディ1側のブラケット4・4は、インパネリインフォースメント2に連結されている。また、下部側の取付部45B・47Bを取り付けるブラケット5・6は、ボディ1側の図示しないセンターブレースやフロントボディピラーに、それぞれ、連結されている(図4参照)。
エアバッグカバー54は、オレフィン系等の熱可塑性エラストマーから形成されて、ケース17の車両後方側を覆い可能に、構成されている。また、エアバッグカバー54は、アッパパネル14aとロアパネル14bとから構成されるインストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)14のロアパネル14b側に配設されており、ケース17の開口18a付近に配設される扉部55と、エアバッグカバー54をケース17に組み付ける組付片部58及び組付壁部59と、扉部55周縁における左右両側と上方側とに配設される周縁部60と、から構成されている。
扉部55は、ケース17の開口18aより僅かに大きく形成されて、開口18aを覆う略長方形板状とされている。そして、扉部55は、実施形態では、周囲に、車両後方側から見て略H字形状とされる薄肉の破断予定部56と、上端及び下端に配設されて開き時の回転中心となるヒンジ部57と、を配設させて構成され、開き時に、上下両側に開く構成とされている。
周縁部60は、扉部55の左右両側の部位において、扉部55より一段車両前方側に凹むように段差状とされ、ロアパネル14bにおける扉部55の左右に配設される部位を支持して、扉部55とロアパネル14bとの車両後方側の面を略面一とするように、構成されている(図3参照)。
組付片部58は、ケース本体部18の上側壁部20の外周側に隣接して、車両前方側に突出するように配設されるもので、係止爪部38にあわせて、左右方向に沿った4箇所に配設されており、ぞれぞれ、係止爪部38を係止させるための略長方形状に開口した係止穴部58aを備えている。また、各組付片部58は、左右方向の幅寸法を、取付部材32の貫通孔37に挿通可能な寸法に、設定されている。
組付壁部59は、ケース本体部18の下側壁部21の外周側に隣接して、車両前方側に突出するように配設されるもので、係止突起40を係止させるための4個の長方形状に開口した係止穴部59aを、備える構成とされている。
インフレーター64は、図3・5に示すように、軸方向を左右方向に略沿って配設される円柱状とされて、大径部64aと、大径部64aの左右方向の一端側から突設される小径部64bと、を備えて構成されている。小径部64bには、膨張用ガスを吐出可能な多数のガス吐出口64cが、形成されている。実施形態の場合、小径部64bは、大径部64aの左端側に、配設されている。大径部64aにおける右端64e側には、エアバッグ作動回路と接続されるリード線67を結線させたコネクタ66を接続させるための接続口部64dが、形成されている。インフレーター64は、右方側の端部64eを、ケース本体部18の右側壁部23から突出させるようにして、本体部18内に収納される構成である。
リテーナ69は、図5・6に示すように、インフレーター64に外装させる略円筒状の板金製の保持部70と、保持部70から車両前方側に向かって突設される2つのボルト部75・75と、から構成されている。
保持部70は、軸方向を左右方向に略沿わせた略円筒状とされている。保持部70におけるインフレーター64の後方側に配設される部位には、車両搭載時においてインフレーター64における大径部64aの外周面と当接するように配設される当接部71が、軸方向に沿ってボルト部75に対応した2箇所に、それぞれ、形成されている。各当接部71は、前後方向の断面において、ボルト部75と対向する車両後端側の部位で、略上下方向に沿うように、保持部70の軸回り方向に沿って配設される2つの当接支持部72を、備えて構成されている(図3・17参照)。各当接支持部72は、保持部70を、インフレーター64側(内周側)に向かって凹ませるように形成されるもので、実施形態の場合、保持部70の周方向に沿う断面形状を略半円弧状として、先端面72aを、大径部64aの外周面と当接させる構成とされている。また、保持部70の車両搭載時におけるインフレーター64の前方側であって、ボルト部75・75間となる部位には、ケース本体部18の底壁部29に形成される支持突起30を挿通させるための貫通穴70aが、長手方向を左右方向に沿わせた略長円形状に開口して、形成されている。
また、保持部70における左端近傍部位には、インフレーター64を挿入させた際の挿入方向先端側のインフレーター64の位置決めとなる突起部73が、内周側に突出するように、形成されている(図3・6参照)。この突起部73は、インフレーター64の大径部64aにおける小径部64bの先端面64fに当接され、先端面64fの左方向への移動を規制して、リテーナ69内における小径部64b(ガス吐出口64c)の位置を決めるためのものである。
さらに、保持部70における右端側には、後述するインフレーター挿入用の開口スリット88から、リテーナ69をエアバッグ85内に収納させてエアバッグ85を折り畳んだ際に、この開口スリット88から突出するように配設される係止爪部74が、形成されている。係止爪部74は、保持部70の軸直交方向の断面に投影した状態で、ボルト部75と点対称となる位置、実施形態の場合、図2・3に示すように、保持部70の車両搭載時における後端近傍となる位置において、後方側に突出するとともに先端側を上方に向けるように屈曲された略L字形状とされている。実施形態の膝保護用エアバッグ装置Sでは、組立作業時において、リテーナ69を内部に収納させた状態で折り畳んだエアバッグ85を、ケース17内に収納させた後に、インフレーター64を、ケース本体部18に形成される挿通孔24aを介して、開口スリット88からエアバッグ85内に挿入させ、リテーナ69の保持部70内に挿入させる構成であり、この係止爪部74は、エアバッグ85内に収納させたリテーナ69の保持部70が、開口スリット88に対して位置がずれることを防止するために、配設されている。特に、実施形態では、係止爪部74が、保持部70の軸直交方向の断面に投影した状態で、ボルト部75と点対称となる位置に配設されていることから、ケース本体部18内に折り畳まれたエアバッグ85を収納させた際に、図7に示すごとく、開口スリット88の前端88a側と後端88c側とが、それぞれ、係止爪部74側とボルト部75側とに保持されることとなり、開口スリット88に対する保持部70の位置を、安定させることができる。
インフレーター64の右端側におけるケース本体部18の外周側には、膨張用ガス吐出時におけるインフレーター64のケース17からの抜けを防止する抜け防止部材79が、配設されている。抜け防止部材79は、図8〜11に示すように、上方から見て略L字形状とされるもので、インフレーター64の端部64eを押え可能に配設される押え板部81と、押え板部81の先端側(前方側)に配設される係止フック82と、押え板部81の元部側(後方側)に配設される固定部80と、から、構成されている。
押え板部81は、ケース本体部18の右側壁部23の元部側壁部24の部位の右方側(インフレーター端部64eの右方側)において、インフレーター64の軸方向と略直交するように、前後方向に沿って配設されるもので、長手方向を前後方向に(ボルト部75の突出方向)に略沿わせた略長方形板状とされている。押え板部81の中央付近には、インフレーター端部64eの端面64gから突出するように配設される接続口部64dを突出可能とする開口81aが、形成されている。この開口81aは、長手方向を前後方向に略沿わせた長円状とされており、周縁を構成する部位81cで、インフレーター端部64eにおける接続口部64dの周縁の端面64gの部位を押える構成とされている(図12参照)。実施形態の場合、開口81aは、上下方向の開口幅寸法を、大径部64aの外径寸法よりも小さく設定されている。また、押え板部81における上下方向側の縁部には、フランジ部81b・81bが、ケース本体部18側に向かって突出するように、配設されている。このフランジ部81b・81bは、実施形態の場合、図9・14に示すごとく、ケース本体部18側に向かって拡開するように、傾斜して配設されており、ケース本体部18から突出しているインフレーター64の端部64eの上下両側の近傍に配設されて、膨張用ガス吐出時におけるインフレーター64の上下動を抑えるために、配設されている。
固定部80は、押え板部81の前端側から左方に向かって突出するように配設されており、ケース本体部18における底壁部29の外周側(前方側)に配設されている。固定部80には、リテーナ69における右側に配設されるボルト部75Rを挿通可能とする挿通孔80aが、左右方向に略沿った長穴状とされて、配設されている。固定部80は、リテーナ69のボルト部75(75R)のナット76止め時に、共締めされて、ケース本体部18に固定されることとなる。実施形態の抜け防止部材79では、ケース本体部18への取付時において、係止フック82を右側壁部23に係止させた後に、ボルト部75Rを挿通孔80aに挿通させる構成であることから、取付作業性を良好にするように、挿通孔80aを、左右方向に沿った長穴状としている。
係止フック82は、押え板部81の上下方向の中央付近から、後方側に向かって突出するように形成されており、実施形態の場合、断面略Z字形状とするように、屈曲しつつ、前後方向に略沿って、形成されている。係止フック82は、上下方向の幅寸法を狭幅として元部側(押え板部81側)に配設される首部83と、首部83の先端側において首部83より上下に膨出されるようにして上下方向の幅寸法を首部83より幅広とした頭部84と、を備えて構成されている。実施形態の場合、係止フック82は、首部83の領域において、一端ケース本体部18の内方側(左方側)に向かって曲がり、その後、ケースの外方側(右方側)へ向かうように屈曲して、頭部84の先端84aを右方側に向けるように、水平方向に沿った断面を略Z字形状として、構成されている。
そして、係止フック82は、右側壁部23に形成される係止孔27から挿入されて、首部83を係止孔27の狭幅部27bに挿入させた状態で、頭部先端84a側を右側壁部23における先端側壁部25の内周面側に当接可能な構成とされている(図13参照)。ケース本体部18の係止孔27は、インフレーター挿通用の挿通孔24a周縁の傾斜壁部26の部位に配設されるもので、元部側壁部24側を幅広とした横向きの略T字形状とされて、係止フック82の頭部84を挿通可能な開口幅寸法を備えた広幅部27aと、係止フック82の首部83のみを挿通可能な開口幅寸法を備えた狭幅部27bと、を備えた横向きの略T字形状とされるもので、先端側壁部25の内周面側に当接している頭部84を抜け不能に、狭幅部27b周縁で、頭部84が係止されることとなる。また、実施形態では、図13の二点鎖線に示すように、ナット76締結前には、係止フック82は、頭部先端84aを先端側壁部25内周面側に当接させるように配設され、ボルト部75Rにナット76を締結させた際に、主に、首部83における頭部84側の部位83aから頭部84にかけての部位を、本体部18内周面側(左方側)に向かって撓ませるようにして、頭部先端84aを、係止孔27周縁の先端側壁部25の内周面側に圧接させるようにして、配設されることとなる。
エアバッグ85は、実施形態の場合、可撓性を有したポリエステルやポリアミド糸等からなる織布から形成されるもので、膨張完了時の形状を、図1・4の二点鎖線に示すように、略長方形板状として、運転者MDの両膝KL・KRを保護可能な左右方向の幅寸法を備えるように、構成されている。実施形態の場合、エアバッグ85は、図15・16に示すごとく、膨張完了時にケース本体部18内に配設される取付部86と、膨張完了時に本体部開口18aから車両後方側に突出して、運転者MDの膝KL・KRを保護可能に配設される保護膨張部91と、を備えて構成されている。
取付部86には、図15に示すように、2つの挿通孔87・87と、開口スリット88及び貫通穴89と、が、形成されている。挿通孔87・87は、リテーナ69の各ボルト部75を挿通させるものである。開口スリット88は、エアバッグ85を単体で平らに展開させた状態では、略左右方向に沿った直線状とされるもので(図15参照)、車両搭載時においては、図7に示すごとく、略前後方向に沿って配設されることとなる。そして、リテーナ69を内部に収納させた状態では、リテーナ69の係止爪部74は、開口スリット88の右端(車両搭載時における前端)88aから突出するように、配設されることとなる。また、実施形態の場合、開口スリット88の中央付近には、小径の貫通孔88bが、スリット88と連通して形成されている。この貫通孔88bは、インフレーター64の挿入作業を容易にするために、配設されている。貫通穴89は、ケース本体部18の底壁部29に形成される支持突起30を挿通させるためのもので、挿通孔87・87間において、長手方向を左右方向に沿わせた略長円形状に開口して、形成されている。
実施形態のエアバッグ85では、エアバッグ85内に、2枚のテザー93・94が、それぞれ、左右方向に略沿って配設されている。テザー93は、取付部86と保護膨張部91とを区画するように配設され、テザー94は、保護膨張部91の領域を上下で区画するように、配設されている。各テザー93・94には、膨張用ガスを流通可能な複数のガス流通孔93a・94aが、形成されている。
次に、実施形態の膝保護用エアバッグ装置Sを構成するエアバッグ組付体SAの組み立てについて説明をする。まず、ボルト部75を挿通孔87から突出させるようにして、リテーナ69を、エアバッグ85内に収納させ、エアバッグ85を、開口スリット88の前端88aからリテーナ69の保持部70に配設される係止爪部74を突出させるようにして、折り畳む。その後、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材により、折り畳んだエアバッグ85をくるんでおく。このとき、ボルト部75はラッピング材から突出させ、開口スリット88及び貫通穴89は、ラッピング材から露出させておく。
次いで、折り畳んだエアバッグ85を、ボルト部75を挿通孔29aから突出させるようにして、ケース17内に収納させる。このとき、ケース底壁部29に形成される支持突起30は、エアバッグ85の貫通穴89と、リテーナ69の貫通穴70aと、を貫通して、リテーナ69の内周側に突出するように、配設されることとなる。その後、インフレーター64を、ガス吐出口64c側から、ケース17の右側壁部23に形成されている挿通孔24aを介して、開口スリット88を経て、エアバッグ85内(リテーナ69の保持部70内)に挿入させる(図17のA参照)。このとき、大径部64aの先端面64fが、リテーナ69の保持部70に形成される突起部73に当接するまで、インフレーター64を挿入させる。
そして、エアバッグカバー54を、ケース17に組み付ける。その際、まず、エアバッグカバー54の各組付片部58を、ケース17の各貫通孔37に挿入させ、組付片部58に形成される係止穴部58aに、各係止爪部38を挿入させて、係止穴部50a周縁に係止させる。その後、組付壁部59に形成される各係止穴部59aに、それぞれ、係止突起40を挿入させる。次いで、抜け防止部材79を、ケース17に組み付ける。その際、まず、係止フック82の頭部84をケース17の右側壁部23に形成される係止孔27の広幅部27aに挿入させ、首部83を狭幅部27bに挿通させるようにして、頭部84を係止孔27における狭幅部27b周縁に係止させ、首部83付近を回転中心として固定部80側を回転させるように移動させ、固定部80の挿通孔80aに右側のボルト75Rを挿通させて、抜け防止部材79を、図13の二点鎖線に示すごとく、ケース17の外周側に配置させる。このとき、係止フック82の頭部84は、先端84aを先端側壁部25の内周面側に当接させるようにして、配置されることとなる。
その後、ケース17の前方側から、各挿入部52を、組付壁部59から突出している各係止突起40の挿入孔40bに挿入させるとともに、固定部51の各挿通孔51aにボルト部75を挿通させるようにして、押え部材50を配置させる。次いで、ケース17の前方側から、各挿通孔44a・46aにボルト41aを挿通させるようにして、ニーパネル43を構成する右側・左側パネル部44・46を配置させる。その後、ボルト部75及びボルト41aに、それぞれ、ナット42・76を締結させれば、エアバッグ組付体SAを組み立てることができる。
このナット76の締結作業時に、抜け防止部材79における係止フック82において、主に、首部83における頭部84側の部位83aから頭部84にかけての部位が、本体部18内周面側(左方側)に向かって撓み、頭部先端84aが、係止孔27周縁の先端側壁部25の内周面側に圧接されるようにして、配設されることとなる(図13参照)。また、リテーナ69は、図17のA・Bに示すように、ナット76の締結時に、インフレーター64に外装された保持部70を、底壁部29側へ移動させることとなる。すなわち、底壁部29に形成される支持突起30が、先端部30aをインフレーター64における大径部64aの外周面に当接されるようにして、インフレーター64を、逆に、車両後方側へ押圧するような態様となり、保持部70に形成される当接部71の各当接支持部72の先端面72aに、インフレーター64が当接され、インフレーター64の車両後方側に配設される4個の当接支持部72の先端面72aと、インフレーター64の車両前方側に配設される1個の支持突起30の先端部30aと、により、インフレーター64が挟持されて、リテーナ69に保持されることとなる。なお、図17では省略されているが、ケース底壁部29とナット76との間には、押え部材50の固定部51や、抜け防止部材79の固定部80が、介在される構成である。
そして、上記のようにして組み立てたエアバッグ組付体SAを、ブラケット4・5・6を利用して、ボディ1側に取付固定し、同時に、抜け部材79における押え板部81の開口81aから突出しているインフレーター64の接続口部64dに、リード線67を結線させたコネクタ66を接続させる。その後、インパネ14やアンダーカバー15(図1・2参照)を取り付ければ、エアバッグ装置Sを車両に搭載することができる。
エアバッグ装置Sの車両への搭載後、リード線67を経て、インフレーター64に作動信号が入力されれば、インフレーター64のガス吐出口64cから膨張用ガスが吐出されて、エアバッグ85内に流入することとなる。そして、エアバッグ85は、膨張して、図示しないラッピング材を破断するとともに、エアバッグカバー54の扉部55を押圧し、破断予定部56を破断させることとなる。そして、扉部55が、ヒンジ部57を回転中心として上下に開くこととなり、エアバッグ85が、図1・4の二点鎖線で示すごとく、展開膨張することとなる。
そして、実施形態の膝保護用エアバッグ装置Sでは、膨張用ガスが吐出された際に、インフレーター64が、コネクタ66側の端部64eを、挿通孔24aから突出させるように、軸方向に沿う右方側へ移動しようとしても、インフレーター64の端部64eが、インフレーター64の軸方向と略直交して配設される抜け防止部材79の押え板部81により、押えられることとなる。押え板部81は、前端側がボルト部75によってケース底壁部29に共締めされ、後端側が係止フック82の頭部82bによりケース右側壁部23の係止孔27周縁に係止されていることから、右方側への移動を規制され、かつ、左方側への移動も規制されることとなる。そのため、この押え板部81により、インフレーター64の軸方向に沿った右方側への移動を、抑えられることとなる。その結果、インフレーター64を、実施形態のごとく、外周面を挟持させてリテーナ69の保持部70に保持させる構成であっても、膨張用ガスの吐出時に、インフレーター64が軸方向に沿ってケース17から突出するように移動することを、抑えることができる。
従って、実施形態の膝保護用エアバッグ装置Sでは、膨張用ガスの吐出時にも、インフレーター64を安定して保持することができる。
また、実施形態の膝保護用エアバッグ装置Sでは、抜け防止部材79は、係止孔27周縁に係止される係止フック82と、リテーナ69のボルト部75Rのナット76止め時に共締めされてケース17に固定される固定部80と、により、ケース17に固定される構成であることから、リテーナ69をケース17に固定させるナット76の締結作業時に、同時に、抜け防止部材79をケース17に固定させることができて、エアバッグ装置の組付工数が増大することを、抑えることができる。
さらに、実施形態の膝保護用エアバッグ装置Sでは、抜け防止部材79の係止フック82を、係止孔27に挿入させて、頭部84の先端84a側をケース17の内周側から、係止孔27周縁の先端側壁部25に圧接させるようにして、係止孔27周縁に係止させている構成である。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Sでは、係止フック82の先端84a側が、ケース17の内周面側において、係止孔27周縁となる先端側壁部25に支持されることから、押え板部81が、インフレーター64の軸方向に沿って移動することを、極力抑えることができる。また、係止フック82における頭部84の先端84aが、係止孔27周縁となる先端側壁部25に圧接されていることから、車両走行時等において、係止フック82がケース17に対してぶれて、異音が発生することを、抑えることができる。
なお、実施形態では、リテーナ69のみを内部に収納させて折り畳んだエアバッグ85をケース17内に収納させた後に、インフレーター64をリテーナ69の保持部70に保持させる構成の膝保護用エアバッグ装置Sについて説明しているが、本発明を適用可能な膝保護用エアバッグ装置はこれに限られるものではなく、所定箇所をかしめることにより、リテーナ単独でインフレーターを挟持させ、リテーナとインフレーターとをエアバッグ内に収納して折り畳み、その後折り畳まれたエアバッグをケース内に収納する構成の膝保護用エアバッグ装置に、本発明を適用してもよい。