JP4465562B2 - 丸刃工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、丸刃工具に係り、特に、金属、ゴム、プラスチック、紙などの薄い材料を帯状に切断するスリッター装置などに好適な丸刃工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
丸刃の回転により金属、ゴム、プラスチック、紙などの薄い材料を帯状に切断する丸刃工具では、材料を様々な幅に切断できるようにするため、丸刃を保持するホルダーの位置をシャフトの軸方向に沿って移動できるようにする必要がある。このため、ホルダーのシャフトへの固定と固定の解除を行うことができるようにする様々な構成の丸刃工具が提案されている。例えば、実開平2―135118号公報や特開平3―245995号公報などでは、丸刃を保持するホルダーに偏心した内周面を有する環状の偏心凹部を形成し、この偏心凹部に外周面が内周面に対し偏心したC字形状の偏心リングを収容し、ホルダーと偏心リングを相対回転させて偏心リングの内周面側に挿通されたシャフトに偏心リングの内周面を押しつけることでホルダーをシャフトに固定し、固定時とは逆方向にホルダーと偏心リングを相対回転させることでシャフトへのホルダーの固定を解除できる丸刃工具が提案されている。特開平2−250711号公報、実開平6−3593号公報などでは、油道とねじなどによる加圧手段とその加圧手段に連通している油圧室とにより、ホルダーの内周面を膨張または収縮させることで、シャフトへの固定及び解除ができる丸刃工具が提案されている。特開平3−154799号公報では、キー溝の天井に設けられたビスによりキーをシャフトへ押しつけることでホルダーをシャフトに固定し、反対にビスを緩めることで固定を解除できる丸刃工具が、また、特開平8−155893号公報では、ホルダーの外周面から内周面に向けて通された割溝を締め付けビスにより締め付けることによりホルダーの内径を減少させることでホルダーをシャフトに固定できる丸刃工具が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の丸刃工具では、ホルダーの偏心した内周面と外周面とによってホルダーをシャフトに固定する丸刃工具では、ホルダーの内周面の内径寸法とシャフト外周面の外形寸法との差のはめあい隙間の量だけホルダーの回転中心がずれてしまう。一方、ホルダーの内周面を加圧手段とその加圧手段に連通している油圧室とにより膨張させてシャフトに固定する丸刃工具では、ホルダーの内周面を膨張させようとするときには、ホルダーの幅方向の中央部から膨張し始めるが、このとき左右がバランスよく膨張して行くとは限らず軸心とは平行にならない場合がある。また、ホルダーにキーや割溝などを設けてビスで締め付け、ホルダーの内径を減少させてシャフトに固定するようにした丸刃工具では、ビスで締め付ける前のホルダーの内周面とシャフトの間にはホルダーを軸心方向に移動するために必要とされる隙間が存在しており、この状態でビスを締め付けると、丸刃の芯とシャフトの芯がずれた状態になる。このように、従来の丸刃工具ではいずれの場合にも丸刃の芯とシャフトの芯とがずれた状態になる場合があり、各々の芯がずれた状態で丸刃を回転させると、刃先や刃面などの外周方向などへの振れが発生し、十分な切断精度を得ることができない。
【0004】
本発明の課題は、丸刃工具の切断精度を向上することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の丸刃工具は、丸刃と、この丸刃を保持する略円板状のホルダーとを備え、ホルダーは、シャフトにホルダーを固定する固定手段と、丸刃を保持する丸刃保持手段とを有し、ホルダーの中央部には、シャフトを挿通するシャフト孔が形成され、固定手段は、ホルダーの内周面に摺接する略円筒状の弾性を有するスリーブと、このスリーブを前記シャフト方向に押さえつけて変形させる押圧手段と、スリーブを円周方向に回転させる回転手段とからなり、スリーブは、このスリーブの外周面に等間隔で少なくとも3箇所に形成された平面部を有し、押圧手段を、ホルダーの内周面の、スリーブの平面部に対応する部分に配設することにより上記課題を解決する。
【0006】
このような構成とすれば、スリーブの平面部では、平面部の中央でスリーブの肉厚が薄く、平面部の両端でスリーブの肉厚が厚くなっているため、回転手段によりスリーブを回転させ、等間隔に配設された押圧手段がスリーブの平面部の一端に当接した状態になると、押圧手段がスリーブの平面部をシャフト側に押し込まれるように変形させ、スリーブがシャフトの円周面を均一に押さえつけるため、ホルダーに装着された丸刃の芯とシャフトの芯とがほぼ一致した状態でホルダーをシャフトに固定することができる。すなわち、丸刃を回転したときの刃先や刃面などの外周方向への振れなどを低減できるので、切断精度を向上することができる。
【0007】
さらに、押圧手段が、ホルダーの内周面に形成された溝に挿入される円柱状のピンからなる構成とする。また、回転手段が、ホルダーの外周面間に穿設された貫通孔に螺合する固定ねじと、円柱状のジョイントピンとからなり、このジョイントピンは、固定ねじに形成されたくびれ部と、スリーブに形成された溝との間に挿入される構成とする。
【0008】
ところで、丸刃をホルダーに装着する場合、丸刃の円板面または丸刃の円板面などが均一な力で押さえつけられた状態で保持されていない場合、切断時に丸刃の刃先に力がかかると、丸刃の円板面などを押さえつける力が弱い部分で丸刃が円板面方向に撓み、丸刃の円板面方向への振れが発生して、十分な切断精度を得られなくなる場合がある。
【0009】
このような場合には、丸刃保持手段は、丸刃の中央部に形成された孔とほぼ同じ径を有してホルダーの片側の面に形成された丸刃装着部と、この丸刃装着部の外周面の中央部を取り巻いて形成された溝に保持されるリングスプリングと、丸刃側に向かって漸次縮径するテーパー状に形成され、リングスプリングが摺接する内周面を有する保持リングと、リングスプリングを前記保持リング側に押し開いて変形させる等間隔で少なくとも3箇所に配設された先端部がテーパー状に形成された押圧ねじとからなる構成とする。
【0010】
これにより、丸刃装着部に等間隔に配設された押圧ねじを丸刃装着部に挿入して行くことで、押圧ねじのテーパー状の先端部がリングスプリングを均一に外側に押し開き、リングスプリングが保持リングのテーパー状の内周面を均一な力で押さえることで、保持リングを装着された丸刃の方向への均一な力で押すことができる。このため、薄い材料などの切断時に、丸刃の円板面方向への振れなどを低減することができ、切断精度を向上することができるので好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用してなる丸刃工具の一実施形態を図1及び図12を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる丸刃工具の一部を破断して構成を示した正面図である。図2は、丸刃工具の一部を図1のII−II線に沿って破断した側面図である。図3は、図1のIII−III線での矢視図である。図4は、一部を破断したホルダー本体の正面図である。図5は、ホルダー本体の一部を図4のV−V線に沿って破断した側面図である。図6は、カバーリングの正面図である。図7は、図6のVII−VII線での矢視図である。図8は、スリーブの正面図である。図9は、図8のIX−IX線での矢視図である。図10は、固定ねじの側面図である。図11は、保持リングの断面図である。図12は、薄い丸刃を取り付けた状態を示す部分断面図である。図13は、厚い丸刃を取り付けた状態を示す部分断面図である。なお、図1乃至図3は、ホルダーの構成を分かり易くするため、丸刃を取り付けていない状態を示している。
【0012】
本実施形態の丸刃工具の丸刃を保持するための略円板状のホルダー1は、図1乃至図3に示すように、本体3、スリーブ5、ストップリング7、カバーリング9、押圧ピン11、ジョイントピン13、固定ねじ15、丸刃の保持リング17、リングスプリング19、そして押圧ねじ21などで構成されている。なお、本実施形態では、丸刃工具のホルダー1を構成する本体3、スリーブ5、ストップリング7、カバーリング9、押圧ピン11、ジョイントピン13、固定ねじ15、丸刃の保持リング17、リングスプリング19、そして押圧ねじ21などの構成部材は、全てステンレス製である。しかし、これらの構成部材は、丸刃工具の用途などに応じ、適宜ステンレス以外の金属材料、例えば鉄、アルミニウム、種々の合金など、または合成樹脂などで形成してもよく、さらに金属製の部材と合成樹脂製の部材とを組み合わせてもよい。
【0013】
本体3は、図4及び図5に示すように、シャフトにホルダー1を固定する部分となる円板状の固定部23と、この固定部23の片側の面に形成され、この固定部23よりも外径が小さな円板からなる丸刃の装着部25とからなり、縦断面が略凸字形状に形成されている。固定部23の中央部にはシャフト孔27が、丸刃装着部25の中央部にはシャフト孔29が各々形成されており、固定部23の内径ID23は、丸刃装着部25の内径ID25よりも大きく、シャフト孔27とシャフト孔29とは、同軸に連通している。本体3の固定部23側の面32の周縁部33は、図5に示すように、他の部分よりも突出している。周縁部33は、図5及び図7に示すように、平板環状のカバーリング9の厚みDとほぼ同じ厚みD33で環状に突出しており、かつ周縁部33の内径ID33は、図5及び図6に示すように、カバーリング9の外径ODとほぼ同じ大きさに形成されている。また、面32には、図5乃至図7に示すように、カバーリング9に穿設されたねじ孔40に対応する位置に、等間隔で6箇所にタップにより雌ねじ37が切られている。さらに、固定部23には、図4及び図5に示すように,シャフト孔27の中心から固定部23の外周面39へ向かう方向とほぼ垂直な方向に固定部23を貫通する貫通孔41が穿設されている。
【0014】
本体3の固定部23の内周面43と丸刃装着部25の内周面45とには、図1及び図4に示すように、本体3の固定部23側の面32から本体3の丸刃装着部25側の面47にかけて、円柱状の押圧ピン11が挿入可能なU字形状の溝49が等間隔で3箇所に形成されている。また、固定部23の内周面43の貫通孔41中央部に対応する部分には、固定部23側の面32から丸刃装着部25側の面47にかけて、平面状の底部52を有する溝51が形成されている。溝51の底部52の貫通孔41と交わる部分は、貫通孔41と連通している。丸刃装着部25の面47には、図4及び図5に示すように、丸刃装着用の雌ねじ53が等間隔で6箇所に形成されている。なお、図4では一部が破断面となっているため、6個の雌ねじ53のうち2個は図示されていない。丸刃装着部25の外周面55には、外周面55の中央部を取り巻くようにU字形状の溝57が形成されている。溝57は、雌ねじ53と、雌ねじ53の中央部で交わり、溝57の底部58の雌ねじ53と交わる部分は、雌ねじ53と連通している。また、溝57よりも固定部23側の外周面55の部分は、他の外周面55の部分よりも径が大きく形成されている。したがって、溝57の固定部23側の外周面55には、段部59が形成されている。
【0015】
スリーブ5は、図1乃至図3、図8、及び図9に示すように、シャフト孔27の内径ID23とほぼ同じ外径ODを有し、弾性を有する略円筒形状に形成されている。スリーブ5の外周面60は、図8及び図9に示すように、等間隔で3箇所に平面状に形成された平面部61を有している。平面部61では、平面部61の中央に向かうに連れてスリーブ5の肉厚が漸次薄くなり、両端に向かうに連れてスリーブ5の肉厚が漸次厚くなっている。スリーブ5の軸方向の幅Dは、図5、図8、及び図9に示すように、固定部23のシャフト孔27の深さD27とほぼ同じに形成されており、スリーブ5の内径IDは、丸刃装着部25のシャフト孔29の内径ID25とほぼ同じに形成されている。また、外周面60の1つの平面部61に対向する部分には、図1及び図8に示すように、円柱状のジョイントピン13とほぼ同じ径を有する半円形状の溝63が軸に平行な方向に形成されている。
【0016】
スリーブ5を回転させるための略円柱状の固定ねじ15には、図1及び図10に示すように、中央部に、ジョイントピン13とほぼ同じ径を有する半円形状の溝からなるくびれ部65が形成されている。固定ねじ15のくびれ部65と片側の端部67との間には、ねじ山部69が形成されており、くびれ部65と他方の端部71との間は、ねじ山部69よりも径が小さい軸部73になっている。したがって、固定ねじ15と螺合する本体3の固定部23に形成された貫通孔41は、貫通孔41の溝51と片側の開口部75との間は、タップにより、固定ねじ15のねじ山部69に対応する雌ねじ部77が形成されており、溝51と他方の開口部78との間は、固定ねじ15の軸部73とほぼ同じ径に形成されている。なお、貫通孔41の開口部75、78は、各々、固定部23の外周面39の一部分を切り欠いたように形成された切り欠き部79、80に連通している。
【0017】
なお、スリーブ5、押圧ピン11、ジョイントピン13、そして固定ねじ15は、ホルダー1を図示していないシャフトに固定するための固定手段を構成しており、またこのうち、ジョイントピン13と固定ねじ15は、スリーブ5の回転手段を構成している。
【0018】
保持リング17は、図11に示すように、丸刃装着部25に対応する孔81を有する環状に形成されており、保持リング17の内周面82は、内径が漸次縮小するテーパー状に形成されている。このテーパー状の内周面82の最も縮径した側の端部83の内径ID17は、本体3の丸刃装着部25の段部59よりも面47側の部分の外径OD25とほぼ同じになっている。また、端部83の孔81の周囲部85が、丸刃装着部25の段部59に当接するように形成されている。断面円形のリングスプリング19は、図2及び図3に示すように、本体3の丸刃装着部25の溝57に嵌合する環状に形成されており、リングスプリング19が丸刃装着部25の溝57に装着されて保持されたとき、リングスプリング19の雌ねじ53に対応する部分は、雌ねじ53内に張り出している。押圧ねじ21は、図2に示されているように、先端が尖ったテーパー状に形成されており、本体3の丸刃装着部25の雌ねじ53と螺合するように形成されている。平板状のストップリング7は、図2及び図3に示すように、固定部23の内径ID23となるシャフト孔27の直径とほぼ同じ外径を有し、丸刃装着部25の内径ID25となるシャフト孔29の直径とほぼ同じ内径を有する環状に形成されている。
【0019】
このような本実施形態の丸刃工具を組み立てる場合、まず、図2及び図3に示すように、シャフト孔27にストップリング7を挿入して丸刃装着部25に当接させた後、さらにスリーブ5を挿入する。このとき、スリーブ5の平面部61の中央に本体3の溝49が、スリーブ5の溝63が本体3の溝51の一端に位置するようにスリーブ5を本体3に装着する。本体3の溝49に押圧ピン11を挿入する。貫通孔41の開口部75に、端部71側から固定ねじ15を挿入し、貫通孔41の雌ねじ部77と固定ねじ15のねじ山部69とを螺合させる。固定ねじ15のくびれ部65が、スリーブ5の溝63に対応する位置に来るまで挿入し、固定ねじ15のくびれ部65とスリーブ5の溝63との間にジョイントピン13を挿入する。この状態で、カバーリング9を本体3の固定部23に形成された周縁部33の内側に嵌め込み、カバーリング9のねじ孔40からカバーリング9固定用のねじ87を挿入し、雌ねじ37へ螺合させ、カバーリング9を固定部23の面32に固定する。
【0020】
次に、図2及び図3に示すように、丸刃装着部25の溝57にリングスプリング19を嵌め込んで保持させ、図12に示すように、中央部に丸刃装着部25を挿入可能な孔が形成され、固定部23と段部59間の幅よりも厚い円板状の丸刃89を丸刃装着部25に挿入する。保持リング17を、テーパー状の内周面82の最も縮径した側の端部83側から丸刃装着部25に嵌め込み、端部83がリングスプリング19を乗り越えた状態にする。6個の押圧ねじ21を、各々、丸刃装着部25の6箇所の雌ねじ53に螺合させて挿入し、押圧ねじ21のテーパー状の先端部により、リングスプリング19を6箇所でほぼ均等に外側に押し開く。これにより、リングスプリング19が保持リング17のテーパー状の内周面82全体を均等に押さえつけるため、保持リング17が、固定部23側に移動し、保持リング17の孔81の周囲部85全体が、丸刃89の側面に均等に押しつけられることで、保持リング17を固定状態にする。なお、円板状の丸刃89は、円周面と円板面の角部を刃先として用いるものである。
【0021】
さらに、片側の円板面の周縁部が研磨されており、固定部23と段部59間の幅よりも薄い丸刃91を装着する場合には、図13に示すように、中央部に丸刃装着部25を挿入可能な孔が形成された丸刃91と丸刃91を弾性的に本体3の固定部23側に押さえつけるための環状の弾性部材93とを順次丸刃装着部25に挿入し、前述の丸刃89の場合と同様に、保持リング17を丸刃装着部25に嵌め込み、6個の押圧ねじ21のテーパー状の先端部により、リングスプリング19を6箇所でほぼ均等に外側に押し開く。これにより、保持リング17が、固定部23側に移動し、保持リング17の孔81の周囲部85全体が丸刃装着部25の段部59に均等に押しつけられることで、保持リング17を固定状態にする。このように、保持リング17、リングスプリング19、押圧ねじ21、そして丸刃装着部25は、丸刃の保持手段を構成している。
【0022】
ここで、本実施形態の丸刃工具は、金属、ゴム、プラスチック、紙などの薄い材料を帯状に切断するスリッター装置などに用いられるものであり、薄い材料の切断幅に応じてシャフトへの丸刃の取付位置を適宜変えることができるものである。なお、本実施形態の丸刃工具は、例えばシャフトを所定の間隔で上下に配設して上刃と下刃とを組み合わせて用いるようなスリッター装置などの一方のシャフトのみに用いることもできるし、上下双方のシャフトに用いることもできる。さらに、1つのシャフトに1つの丸刃が固定された状態で用いることもできるし、複数の丸刃が固定された状態で用いることもできる。また、上刃のみを有し、この上刃の刃先がローラー面や平板面に当接しているようなスリッター装置など様々な構成のスリッター装置に適用することができる。加えて、ホルダー1には、丸刃89、91などのような形状の丸刃に限らず、例えば、丸刃の円板面の両側周縁部を研磨して刃先を鋭角としたような丸刃など様々な形状の丸刃を支持することができる。
【0023】
このような本実施形態の丸刃工具を図示していないシャフトに固定する場合には、図1に示すように、固定ねじ15をドライバーやレンチなどで回転させ、固定ねじ15を溝51の幅内で前進させ、ジョイントピン13を介してスリーブ5を回転方向Aへ回転させる。スリーブ5が回転方向Aへ回転することにより、スリーブ5と押圧ピン11との当接位置が平面部61の中央の最も肉厚の薄い位置から、平面部61の一端の肉厚が厚い位置に移動するため、押圧ピン11がスリーブ5を図示していないシャフト方向に押さえつけるようになる。これにより、スリーブ5の等間隔な3箇所の位置が図示していないシャフト側に押し込まれて変形することで、スリーブ5の変形した3箇所の部分が、図示していないシャフトの円周面を平均的に押さえつけ、ホルダー1を固定状態にする。このとき、スリーブ5の等間隔な3箇所の変形位置で図示していないシャフトの円周面を均一に押さえつけるため、丸刃89が装着されたホルダー1は、丸刃89の芯と図示してないシャフトの芯とが一致した状態で固定される。
【0024】
また、ホルダー1の図示していないシャフトへの固定状態を解除する場合には、固定ねじ15をドライバーやレンチなどで回転させて後退させることで、ジョイントピン13を介してスリーブ5を回転方向Bへ回転させる。スリーブ5が回転方向Bへ回転することにより、スリーブ5と押圧ピン11との当接位置が肉厚の厚い平面部61の一端から、最も肉厚の薄い平面部61の中央へ移動するため、スリーブ5が押圧ピン11によりほとんど押さえつけられていない状態になる。スリーブ5が押圧ピン11により押さえつけられていない状態になると、スリーブ5の弾性により、スリーブ5の変形はなくなり、図示していないシャフトへのホルダー1の固定状態が解除される。これにより、ホルダー1は、図示していないシャフトの軸方向に適宜位置を移動できるようになる。
【0025】
このように、本実施形態の丸刃工具では、固定ねじ15を回転させることにより、スリーブ5が回転方向Aへ回転することで、等間隔に配設された押圧ピン11によりスリーブ5がシャフト側に変形し、スリーブ5がシャフトの円周面を均一に押さえつけるため、ホルダー1に装着された丸刃89の芯とシャフトの芯とがほぼ一致した状態でホルダー1をシャフトに固定することができる。すなわち、丸刃を回転したときの刃先や刃面などの外周方向への振れなどを低減できるので、切断精度を向上することができる。
【0026】
また、固定ねじ15のみを操作することで、丸刃の芯とシャフトの芯とが一致した状態でのホルダー1のシャフトへの固定と、シャフトへのホルダー1の固定状態の解除とを簡便に行うことができる。さらに、従来の丸刃工具のようにホルダーの内周面が膨張または収縮できるような構造や、内周面を膨張または収縮させるための油圧機構などが必要なく、丸刃工具の構造を簡素化できる。
ところで、丸刃をホルダーに装着する場合、丸刃の円板面または丸刃の円板面を押さえる弾性部材などが均一な力で保持リングにより押さえつけられていない場合、薄い材料の切断時に丸刃の刃先に力がかかると、丸刃の円板面や弾性部材などを押さえつける力が弱い部分で丸刃が円板面方向に撓み、丸刃の円板面方向への振れが発生して、十分な切断精度を得られなくなる場合がある。
【0027】
これに対し、本実施形態の丸刃工具では、押圧ねじ21を丸刃装着部25に等間隔に設けられた雌ねじ53に螺合させて挿入して行くことで、押圧ねじ21のテーパー状の先端部がリングスプリング19を均一に外側に押し開き、リングスプリング19が保持リング17のテーパー状の内周面82を均一な力で押さえることで、保持リング17を固定部23方向への均一な力で押すことができる。このため、薄い材料などの切断時に、丸刃の円板面方向への振れなどを低減することができ、切断精度を向上することができる。
【0028】
また、本実施形態では、ホルダー1の本体3の内周面43、45に溝49を形成し、この溝49に押圧ピン11を挿入する構成としたが、内周面43、45の溝49を形成した部分に、軸に平行な方向に延在する断面半円形状の突起部を形成し、この突起部とスリーブ5の平面部61とを摺接させるようにしてもよい。同様に、スリーブ5に溝63を形成し、この溝63にジョイントピン13を挿入する構成としたが、スリーブ5の溝63を形成した部分に軸に平行な方向に延在する断面半円形状の突起部を形成し、この突起部と固定ねじ15のくびれ部65を係合させるようにしてもよい。ただし、スリーブ5を構成する材料と固定ねじ15や本体3を構成する材料との摩擦が大きい場合には、本実施形態のように、本体3の内周面43、45の溝49に押圧ピン11を、スリーブ5の溝63にジョイントピン13を挿入する構成とした方が、スリーブ5を滑らかに回転させることができるので好ましい。
【0029】
さらに、本実施形態では、ホルダー1の本体3の内周面43、45の3箇所に溝49を形成したが、等間隔に4箇所以上の溝49を内周面43、45に形成し、スリーブ5にもこの溝49の数と位置に対応する平面部61を形成するようにしてもよい。また、ホルダー1の本体3の丸刃装着部25に等間隔で6箇所に雌ねじ53を形成したが、均一にスプリングリング19を押し開くためには、少なくとも等間隔で3箇所に雌ねじ53を形成すればよく、6箇所以上に雌ねじ53を形成してもよい。
【0030】
また、本実施形態では、丸刃装着部25に段部59を形成し、この段部に保持リング17を当接させるようにしたが、図14に示すように、十分な厚みがある丸刃93を保持する場合などでは、段部59を形成せず、丸刃93を保持リング17で押さえつけるようにすることもできる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、丸刃工具の切断精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用してなる丸刃工具の一実施形態の一部を破断して構成を示した正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿って破断した側面図である。
【図3】図1のIII−III線での矢視図である。
【図4】本発明を適用してなる丸刃工具の一実施形態の一部を破断したホルダー本体の正面図である。
【図5】ホルダー本体の一部を図4のV−V線に沿って破断した側面図である。
【図6】本発明を適用してなる丸刃工具の一実施形態のカバーリングの正面図である。
【図7】図6のVII−VII線での矢視図である。
【図8】本発明を適用してなる丸刃工具の一実施形態のスリーブの正面図である。
【図9】図8のIX−IX線での矢視図である。
【図10】本発明を適用してなる丸刃工具の一実施形態の固定ねじの側面図である。
【図11】本発明を適用してなる丸刃工具の一実施形態の保持リングの断面図である。
【図12】本発明を適用してなる丸刃工具の一実施形態の厚い丸刃を取り付けた状態を示す部分断面図である。
【図13】本発明を適用してなる丸刃工具の一実施形態の薄い丸刃を取り付けた状態を示す部分断面図である。
【図14】本発明を適用してなる丸刃工具の別の実施形態に厚い丸刃を取り付けた状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 ホルダー
3 本体
5 スリーブ
9 カバーリング
11 押圧ピン
13 ジョイントピン
15 固定ねじ
17 保持リング
19 スプリングリング
27、29 シャフト孔
41 貫通孔
43 内周面
49、51、63 溝

Claims (5)

  1. 丸刃と該丸刃を保持するホルダーとを備えてなり、前記ホルダーは、シャフトに前記ホルダーを固定する固定手段と、前記丸刃を保持する丸刃保持手段とを有し、前記ホルダーの中央部には、シャフトを挿通するシャフト孔が形成され、前記固定手段は、前記ホルダーの内周面に摺接する略円筒状の弾性を有するスリーブと、該スリーブを前記シャフト方向に押さえつけて変形させる押圧手段と、前記スリーブを円周方向に回転させる回転手段とからなり、前記スリーブは、該スリーブの外周面に等間隔で少なくとも3箇所に形成された平面部を有し、前記押圧手段は、前記ホルダーの内周面の、前記スリーブの平面部に対応する部分に配設されている丸刃工具。
  2. 前記押圧手段が、前記ホルダーの内周面に形成された溝に挿入される円柱状のピンからなることを特徴とする請求項1に記載の丸刃工具。
  3. 前記回転手段が、前記ホルダーの外周面間に穿設された貫通孔に螺合する固定ねじと、円柱状のジョイントピンとからなり、該ジョイントピンは、前記固定ねじに形成されたくびれ部と、前記スリーブに形成された溝との間に挿入されることを特徴とする請求項1または2に記載の丸刃工具。
  4. 前記丸刃保持手段は、前記丸刃の中央部に形成された孔とほぼ同じ径を有して前記ホルダーの片側の面に形成された丸刃装着部と、該丸刃装着部の外周面の中央部を取り巻いて形成された溝に保持されるリングスプリングと、前記丸刃側に向かって漸次縮径するテーパー状に形成され、前記リングスプリングが摺接する内周面を有する保持リングと、前記リングスプリングを前記保持リング側に押し開いて変形させる等間隔で少なくとも3箇所に配設され先端部がテーパー状に形成された押圧ねじとからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の丸刃工具。
  5. 丸刃と、該丸刃を保持する略円板状のホルダーとを備えてなり、前記ホルダーは、中央部にシャフトを挿通するシャフト孔が形成されており、前記丸刃を保持する丸刃保持手段を有し、該丸刃保持手段は、前記丸刃の中央部に形成された孔とほぼ同じ径を有して前記ホルダーの片側の面に形成された丸刃装着部と、該丸刃装着部の外周面の中央部を取り巻いて形成された溝に保持されるリングスプリングと、前記丸刃側に向かって漸次縮径するテーパー状に形成され、前記リングスプリングが摺接する内周面を有する保持リングと、前記リングスプリングを前記保持リング側に押し開いて変形させる等間隔で少なくとも3箇所に配設された先端部がテーパー状に形成された押圧ねじとからなる丸刃工具。
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