JP4465077B2 - アルコール吸収代謝調整剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルコール吸収代謝調整剤に関する。より詳細には摂取されたアルコールの胃における吸収を阻害し、生体内でのアルコール代謝を促進し、酒酔い、悪酔い、二日酔い等の症状を予防・緩和するアルコール吸収代謝調整剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
摂取されたアルコールは主に胃など上部消化管から吸収され、その後全身にほぼ均等に拡散し、脳をはじめ種々の臓器に作用する。吸収されたアルコールの2〜10%は肺と腎から消失するが、残りの90%以上は肝臓で代謝される。肝臓にとりこまれたアルコールはアルコール脱水素酵素(ADH)もしくはミクロソームエタノール酸化系(MEOS)やカタラーゼにより酸化され、アセトアルデヒドに変換される。アセトアルデヒドは更にアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酢酸に変換される。
東洋系の民族(モンゴロイド)にはlow Km ALDHの欠損者が多く、日本人では約半数が欠損者であることが知られている。このようなALDHの欠損者はアルコール摂取後の血中アセトアルデヒド濃度が高くなることが知られている。
【0003】
血中アルコール濃度の上昇はさまざまな障害をもたらす。血中アルコール濃度が100mg/dlくらいまでの範囲では大脳前頭葉皮質の機能低下がおき、軽い興奮、自制心の欠如、変則的挙動などが現れる。血中アルコール濃度が100mg/dlを超えると小脳の機能抑制、辺縁皮質の機能抑制が起こり、発語不明瞭、歩行失調、強調運動障害、情緒の不安定、記憶の低下などが現れる。また、アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドは非常に強い化学反応性と薬理学的中毒作用を有し皮膚紅潮、動悸、頻脈、頭痛、吐気、口臭、尿臭などの悪酔い症状を呈する。
【0004】
酒酔い、悪酔い、二日酔いなどの防止又は低減させるための物質又は食品としては、アセトアルデヒドの毒性を抑制するL−アラニン(特開昭61−134313号公報)、又はL−アラニンを含むジペプチド(特開平4−21635号公報)、アセトアルデヒドの上昇抑制作用を有するプロリン又はリジン(特開平6−116144号公報)、飲酒による悪酔い(顔面紅潮、心悖亢進)を防止する胡麻油抽出物(特開平4−261120号公報)、アルコール代謝を促進する豚肉加工品(特開平11−276116号公報)などが知られている。
【0005】
ジスルフィラムはALDHを阻害することにより、飲酒時の血中アセトアルデヒド濃度を上昇させ、悪酔い状態にして飲酒願望を抑制する。ジスルフィラムには飲酒欲望を抑制する効果はあるが、それは不快感を伴うものであり、酒酔いや悪酔いそのものを防止、低減させるわけではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
アルコール摂取により引き起こされる酒酔いや悪酔いなど不快感を伴うさまざまな症状を防止、改善するためには、アルコール摂取に伴う血中のアルコール濃度及びアセトアルデヒド濃度の上昇を抑制することが必要である。このような効果を示す物質や食品が提案されているが、いずれも十分な効果が認められるにいたっていない。
【0007】
従って、本発明の目的はアルコールの体への吸収を抑制し、またその代謝を促進し、アルコール摂取により引き起こされる不快感を伴うさまざまな症状を防止、改善するアルコール吸収代謝調整剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、大豆加工物中にアルコールの胃での吸収を抑制する作用、吸収されたアルコールの代謝を促進し、血中アルコール濃度、アセトアルデヒド濃度の上昇を抑制する作用があることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、ビフィドバクテリウム属細菌を用いて発酵した発酵豆乳を有効成分とするアルコール吸収代謝調整剤を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の大豆加工物としては、大豆抽出物、大豆加工食品及びその抽出物が挙げられる。ここで、大豆加工食品としては、豆腐、納豆、豆乳、醗酵豆乳等が挙げられる。
【0011】
大豆抽出物又は大豆加工食品抽出物は、大豆又は大豆加工食品を、そのまま、必要により粉砕、すり潰して水、熱水、アルコール等の大豆成分を抽出できる溶媒で抽出したものであって、そのまま又は他の成分と混合して使用する。
【0012】
大豆加工物の典型的なものとして豆乳、醗酵豆乳が挙げられる。醗酵豆乳は、常法により製造した素豆乳に微生物を接種し培養して製造すればよい。
ここで用いる微生物としては、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus asidphilus)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ユーグルティ(Lactobacillus jugurti)、ラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.デルブルッキィ(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptcoccus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis subsp. Lactis)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等のエンテロコッカス属細菌、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum)等のビフィドバクテリウム属細菌、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属細菌を含む酵母類、バチルス・ナットー(Bacillus natto)等のバチルス属細菌等が挙げられ、中でも、ラクトバチルス属細菌等の乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌を用いれば、風味良好な醗酵豆乳が得られるため好ましい。
【0013】
大豆加工物の摂取量は10%固形分としてアルコール飲料時やその前後に0.5〜20ml/kg体重程度であればアルコール吸収代謝調整効果を得ることができるため好ましく、1〜10ml/kg体重程度がより好ましい。
【0014】
本発明のアルコール吸収代謝調整剤は、飲食品の形態とすることができ、例えば豆乳、醗酵豆乳、大豆タンパク含有食品、大豆粉、豆腐、納豆の形態で摂取してもよく、特に、豆乳、醗酵豆乳が好ましい。
【0015】
また、豆乳、醗酵豆乳等は、乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌で培養した醗酵乳、甘味料(砂糖、果糖、オリゴ糖、糖アルコール等)、果汁、水、香料、安定剤、ゲル化剤等を適宜加えて、食用に供することができる。具体的には、豆乳ヨーグルト、液状豆乳ヨーグルト、豆乳チーズ、豆乳アイスクリーム等とすることができる。
【0016】
本発明に用いる大豆製品は従来から飲食されてきたものであるので、その安全性は高く、常用しても副作用の問題はない。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
実施例1
11週齢のSDラット(♂)36匹を使用し表1の飼料で1週間予備飼育した。24時間絶食後、平均体重に差が出ないように3群(1群12匹)に分け、下記のサンプル溶液を10ml/kg B.W.経口投与した。投与30分後及び240分後にエーテル麻酔下で解剖し、胃内容物を採取した。胃内容物は遠心分離(10000rpm×10分)した後、上清のエタノール濃度を測定した。また、投与30分後には、腹部大動脈より採血を行った。血液の遠心分離(3000rpm×20分)して血漿を調製しエタノール濃度、アセトアルデヒド濃度を測定した。エタノール濃度の測定にはF−キットエタノール(ロシュ・ダイアグノスティックス)、アセトアルデヒド濃度の測定F−キットアセトアルデヒド(ロシュ・ダイアグノスティック)を用いた。
なお、統計処理は、レーベンの検定を用い分散を調べ、分散に有意な差がないときは分散分析後Tukeyの検定を、またノンパラメトリックな値の場合には、Ktuskal−Wallisの分析の後、ノンパラメトリック用のTukeyの検定を用いた。
【0019】
【表1】
Figure 0004465077
【0020】
投与サンプル溶液
・コントロール群……コントロール溶液:エタノール=4:1混合液
・豆乳群………豆乳:エタノール=4:1混合液
・醗酵豆乳群…醗酵豆乳:エタノール=4:1混合液
*豆乳は固形分10.95%(粗蛋白4.80%、粗脂肪2.93%を含む)のものを用いた。また、該豆乳にビフィドバクテリウムYIT4065を摂取し37℃で21時間培養したものを醗酵豆乳とした。コントロール溶液は豆乳タンパク質と等量のカゼイン、脂質と等量のコーン油、それ以外は蔗糖を使用し調製した。
【0021】
表2に示すように、胃内エタノール濃度は投与30分後及び240分後ともに、豆乳、醗酵豆乳群においてコントロール群に比べ有意に高濃度であったことから、豆乳及び醗酵豆乳に胃でのアルコール吸収抑制効果が認められた。
また、投与30分後の血漿中エタノール濃度は、240分後豆乳、醗酵豆乳群はいずれもコントロール群に比べ有意に低濃度であったことから、豆乳、醗酵豆乳には、アルコール摂取による血中アルコール濃度の上昇抑制効果が認められた。
【0022】
【表2】
Figure 0004465077
【0023】
表3に示すように、投与240分後の血漿中アセトアルデヒド濃度は、醗酵豆乳群はコントロール群に比べ有意に低濃度であった。また豆乳群もコントロール群に比べ低濃度であった。このことから、豆乳、醗酵豆乳に、アルコール摂取による血中アセトアルデヒド濃度の上昇抑制効果が認められた。
【0024】
【表3】
Figure 0004465077
【0025】
実施例2
11週齢のSDラット(♂)32匹を使用し、平均体重に差が出ないように4群(1群8匹)に分け、表4の飼料ならびにコントロール群、豆乳群、醗酵豆乳群は5%エタノール溶液、ノーマル群は8.9%の蔗糖溶液を自由摂取させ25日間飼育した。試験期間中の摂取量、摂取エネルギーおよび体重(投与開始時および解剖時)には差が見られなかった。
【0026】
【表4】
Figure 0004465077
【0027】
飼育後のラットをエーテル麻酔下で解剖し、肝臓を採取後液体窒素で凍結し、−80℃で保存した。これを4倍量の1.15%塩化カリウム溶液でホモジナイズし、ミトコンドリア分画、サイトゾル分画およびミクロソーム分画を調製し、ALDH(アセトアルデヒドとの親和性が高いlow Km ALDH)活性を測定した。
ALDH活性の測定は、1.15mM塩化マグネシウムを含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中で0.5mM NAD+、ADHの阻害剤として200μM4−メチルピラゾール、基質としてアセトアルデヒド50mMおよび酵素(各フラクション)の存在下に反応させ、340nmでNADHの生成を測定することで行った。なおミトコンドリア分画に関しては、NADHオキシダーゼの阻害剤として2μMロテノンを反応液に加え測定を行った。
【0028】
表5に示すように、ミトコンドリア分画および総活性(ミトコンドリア分画、サイトゾル分画およびミクロソーム分画を合わせた活性)ともに、アルコール投与(コントロール群)群、アルコールおよび豆乳投与(豆乳群)群、アルコールおよび醗酵豆乳投与(醗酵豆乳群)群、アルコール非投与群の順にlow KmALDH活性の上昇傾向が見られた。このことから、豆乳または醗酵豆乳投与により、アルコール摂取によるALDH活性の低下の改善傾向が認められた。
【0029】
【表5】
Figure 0004465077
【0030】
【発明の効果】
本発明のアルコール吸収代謝調整剤は、胃でのアルコールの吸収を抑制し、生体内でのアルコールの代謝を促進する作用を有し、アルコール摂取により引き起こされる酒酔い、悪酔い、二日酔い等の症状を予防・緩和することができる。

Claims (2)

  1. ビフィドバクテリウム属細菌を用いて発酵した発酵豆乳を有効成分とするアルコール吸収代謝調整剤。
  2. アルコール吸収抑制剤である請求項1記載のアルコール吸収代謝調整剤。
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