JP4463956B2 - 応力伝達装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基礎杭の杭頭と上部構造との間に設置されて上部構造と基礎杭との間において応力を伝達するための応力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物を構築する場合、支持地盤まで埋め込んだ杭に上部構造を支持させ、これによって上部構造全体を支持することが一般に行われている。
従来では、杭頭を上部構造に剛に結合することとされていたが、この場合、地震時に杭頭に水平力を受けた場合に、杭頭が破壊される懸念があり、これを防ぐために杭頭部を大きく拡径するなどの補強が必要となっていた。
【0003】
そこで、杭頭に生じる応力を低減するため、上部構造に対して杭頭を相対回転できるように結合し、杭頭の応力を開放するようにしたピン結合構造や、建物に対し杭頭を滑り移動できるようにして杭頭の応力を開放するようにしたローラ結合構造が提案されている(例えば、特開平1-284613号公報、特開平8-120687号公報、特開平10-227039号公報、特開平10-227040号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの構造において、杭頭と上部構造との間に良好に相対変位を生じさせるには、杭頭と上部構造との間の摩擦を小さくしてやる必要があった。これには、杭頭と上部構造との当接面を滑らかにするために、樹脂加工したり、機械加工をするなどの必要があり、コストの上昇を招いていた。
【0005】
また、これらの構造においては、杭頭と上部構造とが離間する方向に力が働くことも考えられるが、従来、杭頭と上部構造との相対変位を許容しつつ、これらの抜け上がりを防止することが考えられていなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コストの上昇を伴うことなく、杭頭と上部構造との間の曲げモーメントの伝達を防ぎ、なおかつ、この場合に、杭頭と上部構造との間に作用する引張力に対し良好に対処することが可能な応力伝達装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の応力伝達装置は、基礎杭の杭頭に設置される杭頭部材と、上部構造に固定されるとともに前記杭頭部材に対向配置される構造物支持部材とを備えてなり、
前記杭頭部材および前記構造物支持部材は、第一の仮想球面の一部をなす第一の当接面を介して上下に互いに接し、
前記杭頭部材および構造物支持部材には、これらを前記第一の当接面を介して押圧しつつ当接させるための引張部材が取り付けられていることを特徴としている。
【0008】
このような構成により、杭頭部材と構造物支持部材との間に作用する引張力が、引張部材による押圧力以下である場合に、構造物支持部材の杭頭部材からの浮き上がりを防止することができる。
【0009】
加えて、請求項1記載の応力伝達装置は、前記杭頭部材および前記構造物支持部材のうち一方に球座が設けられ、同他方に凹面が形成され、前記球座の外面と前記凹面とが互いに当接することにより、前記第一の当接面が形成されているとともに、前記凹面の曲率は前記球座の外面に比較して緩やかに形成されており、
前記球座の外面は、前記第一の仮想球面と同一面を構成するように形成され、
前記凹面には、前記引き抜き抵抗部材が挿通されるための貫通孔が形成され、前記球座における前記貫通孔に対向する位置には、孔部が形成され、
前記引張部材は、これら貫通孔および孔部に挿通されるように配置されるとともに、その両端が係止部材により、前記杭頭部材および前記構造物支持部材にそれぞれ係止し、なおかつ、プレストレスが導入された構成とされていることを特徴としている。
【0010】
このような構成により、杭頭部材および構造物支持部材を第一の当接面を介して押圧することができる。
【0011】
さらに、請求項1記載の応力伝達装置は、
前記引張部材は、前記球座の曲率中心を通る鉛直軸がその中心軸となるように配置されていることを特徴としている。
【0012】
このような構成により、球座および凹面間の押圧力のうち、第一の当接面に垂直な成分が、球座の外縁部付近で過大なものとならない。
【0013】
請求項2記載の応力伝達装置は、請求項1記載の応力伝達装置であって、
前記引張部材の両端に設けられた前記係止部材のうちの一方は、前記杭頭部材または前記構造物支持部材に対して、第二の仮想球面の一部をなす第二の当接面を介して接し、
前記第一および第二の仮想球面は、その曲率中心が一致していることを特徴としている。
【0014】
このような構成により、杭頭部材および構造物支持部材が、第一の仮想球面に沿った方向に相対変位する際に、引張部材が杭頭部材または構造物支持部材に対して同方向に相対変位することができる。
【0015】
請求項3記載の応力伝達装置は、請求項1または2記載の応力伝達装置であって、
前記貫通孔および孔部は、前記第一の当接面において、その一方が他方よりも大きな孔径となるように形成され、
前記基礎杭と前記上部構造との間に生じることが予想される最大回転角をもって前記杭頭部材および前記構造物支持部材が相対変位した際に、前記第一の当接面において、前記貫通孔および前記孔部のうち一方の内部に同他方が位置するように、前記貫通孔および孔部の径寸法が定められていることを特徴としている。
【0016】
このような構成により、貫通孔および孔部が相対変位したとしても、第一の当接面の面積が変化することがない。
【0017】
請求項4記載の応力伝達装置は、請求項1,2または3記載の応力伝達装置であって、
前記貫通孔および前記孔部は、前記基礎杭と前記上部構造との間に生じることが予想される最大回転角をもって前記杭頭部材および前記構造物支持部材が相対変位した際に、その内周面が、前記引張部材が位置する範囲よりも外側に位置するように、その径寸法が定められていることを特徴としている。
【0018】
このような構成により、引張部材が貫通孔および孔部の内周面に接触することがない。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図4は、本発明の一実施の形態を模式的に示す図であり、図中、符号1は、建物(構造物)を示す。この建物1は、地盤Gに設置された基礎杭2と、基礎杭2によって支持された上部構造3とからなるものであり、これら基礎杭2および上部構造3の間に応力の伝達を行うための応力伝達装置4が備えられた構成となっている。
【0032】
図1は、この応力伝達装置4を拡大して示したものである。図中に示すように、応力伝達装置4は、基礎杭2の杭頭2aに設置された杭頭部材5と、上部構造3に固定されるとともに杭頭部材5に対向配置された構造物支持部材6と、これら杭頭部材5および構造物支持部材6に取り付けられたPC鋼棒(引張部材)7とにより概略構成されている。これら杭頭部材5、構造物支持部材6、およびPC鋼棒7は、ともに、鉛直軸Vaを中心として軸対称に形成されている。
【0033】
図中に示すように、杭頭部材5は球座8を備えた構成とされており、この球座8の外面9が、構造物支持部材6に形成された凹面10に対して接することにより、杭頭部材5および構造物支持部材6が第一の当接面11を介して互いに当接する構成となっている。なお、凹面10の曲率は、球座8の外面9に比較して若干緩やかに形成されている。
【0034】
また、球座8は、その外面9から底部12までを貫通する孔部13を有している。一方、構造物支持部材6は、その凹面10の中心部が凹状に形成された凹部14として形成されており、なおかつ、凹部14の中心部に貫通孔15が備えられた構成となっている。
【0035】
また、PC鋼棒7は、孔部13および貫通孔15に挿通されるとともに、鉛直軸Vaがその中心軸となるように配置されている。さらに、PC鋼棒7の両端7a,7aには、ナット(係止部材)17および押さえ板(係止部材)18が取り付けられ、押さえ板18が杭頭部材5および構造物支持部材6に係止することにより、PC鋼棒7の両端7aが杭頭部材5および構造物支持部材6に対して係止する構成となっている。そして、PC鋼棒7にプレストレスが導入されることにより、杭頭部材5と構造物支持部材6とが、第一の当接面11を介して押圧される構成となっている。
【0036】
また、球座8の外面9は、図2に示すように、鉛直軸Va上に位置する曲率中心O1を中心とした第一の仮想球面Sv1と同一面をなすように形成されており、これにより、第一の当接面11が、第一の仮想球面Sv1の一部をなすようになっている。
【0037】
また、この応力伝達装置4においては、図3に示すように、基礎杭2と上部構造3との間に生じることが予想される最大回転角θをもって、杭頭部材5および構造物支持部材6が相対変位した際に、貫通孔15および孔部13がPC鋼棒7に接触しないように、すなわち、貫通孔15および孔部13の内周面が、PC鋼棒7が位置する範囲よりも外側に位置するように、貫通孔15および孔部13の径寸法が定められた構成となっている。
【0038】
さらに、この応力伝達装置4においては、貫通孔15のうち第一の当接面11に接する端縁部を構成する凹部14の径寸法および孔部13の径寸法が、基礎杭2と上部構造3との間に生じることが予想される最大回転角θをもって杭頭部材5および構造物支持部材6が相対変位した際に、第一の当接面11において、常に凹部14の内側に孔部13が位置するように定められている。これにより、凹部14の外側に孔部13が位置することに伴って、凹面10と球座8の外面9との間の接触面積が変化することがないようになっている。
【0039】
次に作用および効果を説明する。
上述の応力伝達装置4および建物1においては、杭頭部材5および構造物支持部材6が、第一の仮想球面Sv1の一部をなす第一の当接面11を介して上下に互いに接し、杭頭部材5および構造物支持部材6に、これらを第一の当接面11を介して押圧しつつ当接させるためのPC鋼棒7が取り付けられているために、杭頭部材5と構造物支持部材6との間に作用する引張力が、PC鋼棒7による押圧力以下である場合に、構造物支持部材6の杭頭部材5からの浮き上がりを防止することができる。これにより、上部構造3の抜け上がりを防止しつつ、杭頭部材5および構造物支持部材6を第一の仮想球面Sv1に沿って相対変位させ、杭頭2aと上部構造3との接合部における回転変形能力を確保して、上部構造3および基礎杭2間に伝達される曲げモーメントが過大なものとならないようにすることができる。さらに、構造物支持部材6が杭頭部材5から浮き上がることがないために、上部構造3と杭頭2aとの間に常にせん断力を伝達することができるだけでなく、離間した構造物支持部材6と杭頭部材5とが再接触して衝突することで杭頭部材5や杭頭2aに過大な荷重が作用するようなことが無く、これにより、地震時における建物1の安定性および安全性を確保することができる。
【0040】
また、上述の建物1においては、杭頭部材5および構造物支持部材6が、PC鋼棒7を介して連結された構成となっているために、上部構造3に作用する浮き上がり力をPC鋼棒7を介して基礎杭2に伝達することが可能であり、これにより、基礎杭2の引き抜き抵抗を有効に活用することができる。
【0041】
また、上述の応力伝達装置4および建物1においては、杭頭部材5に球座8が設けられるとともに、構造物支持部材6に凹面10が形成され、球座8の外面9と凹面10とが互いに当接することにより、第一の当接面11が形成されておりまた、球座8の外面9が、第一の仮想球面Sv1と同一面を構成するように形成され、PC鋼棒7が、凹面10に形成された貫通孔15と球座8に形成された孔部13の内部に挿通されて、その両端7a,7aが、ナット17および押さえ板18によって杭頭部材5および構造物支持部材6に対して係止された構成となっている。これにより、簡易な構造によって、杭頭部材5および構造物支持部材6を第一の当接面11を介して押圧することができる。
【0042】
また、この場合、PC鋼棒7が、鉛直軸Vaを中心軸として配置されているために、PC鋼棒7による球座8および凹面10間の押圧力は、鉛直方向に作用する。ここで、球座8のうち、第一の当接面11を構成する外縁部8a(図1参照)は、その傾斜角が比較的大きいため、この外縁部8aにおいて、球座8の外面9に作用する押圧力のうち、第一の当接面11に垂直な成分が過大なものとならない。これにより、球座8の外縁部8a付近においては、球座8の外面9と凹面10との間に作用する摩擦力が大きくならず、PC鋼棒7のプレストレスが、杭頭部材5および構造物支持部材6間の回転性能に影響を与える心配が少ない。
【0043】
また、上述の応力伝達装置4および建物1においては、貫通孔15のうち第一の当接面11に接する端縁部をなす凹部14の径寸法が、孔部13の径寸法に比較して大きくなるように形成され、さらに、貫通孔15および孔部13の径寸法は、基礎杭2と上部構造3との間に生じることが予想される最大回転角θをもって杭頭部材5および構造物支持部材6が相対変位した際に、凹部14の内側に孔部13の端縁が位置するように定められているために、貫通孔15および孔部13の位置が相対変位したとしても、第一の当接面11の面積が変化することがなく、常に、杭頭部材5と構造物支持部材6との間に作用する圧縮力を良好に支持することが可能となる。
【0044】
さらに、上述の応力伝達装置4および建物1においては、貫通孔15および孔部13は、最大回転角θをもって杭頭部材5および構造物支持部材6が相対変位しても、その内周面が、PC鋼棒7が位置する範囲よりも外側に位置するようにその径寸法が定められているために、PC鋼棒7が貫通孔15および孔部13の内周面に接触することにより杭頭部材5および構造物支持部材6の相対変位が妨げられることが無く、常に、杭頭2aと上部構造3との間の回転変形能力を確保して、これらの間の曲げモーメントの伝達を抑制することができる。
【0045】
なお、上記実施の形態において、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、応力伝達装置4あるいはそれが適用される建物1の構造等について、他の構成を採用するようにしてもよい。
【0046】
例えば、応力伝達装置の構造は、図1から図3に示したようなものに限らず、図5および図6に示したようなものであってもよい。
図5に示す応力伝達装置21は、図1から図3に示した応力伝達装置4とほぼ同様の構造を有するものであるが、PC鋼棒7の下端部7bと杭頭部材5とが係止する部分の構造が、応力伝達装置4と異なっている。
【0047】
この応力伝達装置21においては、PC鋼棒7の下端部7bがナット17および曲面座金22によって杭頭部材5の球座8の内面23と係止する構成となっている。また、曲面座金22の上面22aおよび球座8の内面23は、第二の仮想球面Sv2と同一面を構成するように形成されており、これにより、曲面座金22の上面22aおよび球座8の内面23が形成する第二の当接面24が、第二の仮想球面Sv2と同一面を形成するようになっている。
また、ここで、第二の仮想球面Sv2の曲率中心O2は、第一の仮想球面Sv1の曲率中心O1と一致する構成となっている。
【0048】
このような構成の応力伝達装置21においては、杭頭部材5および構造物支持部材6が、第一の仮想球面Sv1に沿った方向に相対変位する際に、図6に示すように、曲面座金22が球座8の内面23に対して、第二の仮想球面Sv2に沿って相対変位することができるために、PC鋼棒7が杭頭部材5により拘束されず、構造物支持部材6の変位に合わせて杭頭部材5に対して相対変位することが可能となる。このため、PC鋼棒7の存在が、杭頭部材5および構造物支持部材6の相対変位に影響を与える心配が少なく、杭頭部材5および構造物支持部材6間の滑り性能を良好に確保することが可能となる。
【0049】
また、上記実施の形態、あるいは、図5,6に示したその変形例においては、杭頭部材5に球座8が、構造物支持部材6に凹面10が形成された構成となっていたが、これとは逆に、図7のような構成を採用するようにしてもよい。
【0050】
図7に示す応力伝達装置31は、基礎杭2に設けられた杭頭部材32に、凹面33が形成され、上部構造3に固定されるとともに杭頭部材32に対向配置された構造物支持部材34に、下方に向けて突出する球座35が形成された構成となっており、さらに、凹面33と球座35の外面との当接面が、第一の仮想球面Sv1’の一部をなす第一の当接面36とされている。本実施の形態においても、凹面33の曲率は、球座35に比較して若干緩やかに形成されている。
【0051】
さらに、この応力伝達装置31においては、凹面33に貫通孔37が形成されるともに、球座35のうち貫通孔37に対向する位置に孔部38が形成されており、これら貫通孔37および孔部38内にPC鋼棒39が配置された構成となっている。PC鋼棒39は、杭頭部材32に係止部材41により係止するとともに、球座35の内面42に対して、曲面座金43により係止している。さらに、PC鋼棒39にプレストレスが導入されることにより、杭頭部材32および構造物支持部材34が、第一の当接面36を介して所定の押圧力をもって締結されている。
【0052】
また、曲面座金43は、球座35の内面42に対して、第二の仮想球面Sv2’と同一面をなす第二の当接面44を介して接する構成となっている。この第二の仮想球面Sv2’と第一の仮想球面Sv1’とは、互いに一致する曲率中心O3を有するものとなっている。
【0053】
図7のような構成においては、地震時等において、杭頭部材32と構造物支持部材34との間に作用する引張力が、PC鋼棒39による押圧力以下である場合に、構造物支持部材34の杭頭部材32からの浮き上がりを防止することができる。これにより、上部構造3の抜け上がりを防止しつつ、杭頭部材5および構造物支持部材6を第一の仮想球面Sv1’に沿って相対変位させ、杭頭2aと上部構造3との接合部における回転変形能力を確保して、上部構造3および基礎杭2間に伝達される曲げモーメントが過大なものとならないようにすることができる。また、この場合、曲面座金43が球座35の内面42に対して、第二の仮想球面Sv2’に沿って相対変位することができるために、PC鋼棒39が杭頭部材32により拘束されず、構造物支持部材6の変位に合わせて杭頭部材5に対して相対変位することが可能となり、杭頭部材5および構造物支持部材6間の滑り性能を良好に確保することが可能となる。
【0054】
さらに、構造物支持部材34が杭頭部材32から浮き上がることがないために、上部構造3と杭頭2aとの間に常にせん断力を伝達することができるだけでなく、離間した構造物支持部材34と杭頭部材32とが再接触して衝突することで杭頭部材32や杭頭2aに過大な荷重が作用するようなことが無く、これにより、地震時における建物の安定性および安全性を確保することができる。
このように、球座と凹面の位置を上下逆にした構成を採用することによっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0055】
また、上記実施の形態において、PC鋼棒7に代えて、PC鋼線などのプレストレス力が導入可能な部材を利用するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態においては、応力伝達装置4を建物1に適用するようにしていたが、これに限定されず、土木構造物など、基礎杭2と上部構造3とを有する形態の構造物のすべてに、応力伝達装置4を適用することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る応力伝達装置においては、杭頭部材および構造物支持部材に、これらを第一の仮想球面の一部をなす第一の当接面を介して押圧しつつ当接させるための引張部材が取り付けられているために、構造物支持部材の杭頭部材からの浮き上がりを防止することができ、上部構造の抜け上がりを防止しつつ、杭頭と上部構造との接合部における回転変形能力を確保し、上部構造および基礎杭間に伝達される曲げモーメントが過大なものとならないようにすることができる。さらに、構造物支持部材が杭頭部材から浮き上がることがないために、上部構造と杭頭との間に常にせん断力を伝達することができるだけでなく、離間した構造物支持部材と杭頭部材とが再接触して衝突することで杭頭部材や杭頭に過大な荷重が作用するようなことが無く、これにより、地震時における安定性および安全性を確保することができる。
【0058】
加えて、杭頭部材および構造物支持部材の一方に球座が設けられるとともに、他方に凹面が形成され、球座の外面と凹面とが互いに当接することにより、第一の当接面が形成されているとともに、前記凹面の曲率は前記球座の外面に比較して緩やかに形成されており、球座の外面が、第一の仮想球面と同一面を構成するように形成され、さらに、プレストレスの導入された引張部材が、凹面に形成された貫通孔と球座に形成された孔部の内部に挿通されて、その両端が、係止部材により杭頭部材および構造物支持部材に対して係止する構成となっているために、簡易な構造により、杭頭部材および構造物支持部材を第一の当接面を介して押圧することができる。
【0059】
さらに、引張部材が、球座の中心を通過する仮想鉛直軸がその中心軸となるように配置されているために、球座の外縁部付近における球座と凹面との間の摩擦力を低減することができ、引張部材が、杭頭部材および構造物支持部材間の回転性能に影響を小さく抑えることができる。
【0060】
請求項2に係る応力伝達装置においては、係止部材のうち、引張部材と杭頭部材または構造物支持部材との間に設けられたものが、第一の仮想球面と同一の曲率中心を有する第二の仮想球面に沿って杭頭部材または構造物支持部材に接するようになっているために、引張部材の存在が杭頭部材および構造物支持部材の相対変位に与える影響を低減し、杭頭部材および構造物支持部材間の滑り性能を良好に確保することが可能となる。
【0061】
請求項3に係る応力伝達装置においては、基礎杭と上部構造との間に生じる最大回転角をもって杭頭部材および構造物支持部材が相対変位した際にも、第一の当接面において、貫通孔および孔部のうち一方の内部に他方が位置するように、貫通孔および孔部の径寸法が定められているために、貫通孔および孔部の位置が相対変位したとしても、第一の当接面の面積が変化することがなく、常に、杭頭部材と構造物支持部材との間に作用する圧縮力を良好に支持することが可能となる。
【0062】
請求項4に係る応力伝達装置においては、貫通孔および孔部が、基礎杭と上部構造との間に生じる最大回転角をもって杭頭部材および構造物支持部材が相対変位しても、その内周面が、引張部材が位置する範囲よりも外側に位置するようにその径寸法が定められているために、引張部材が杭頭部材および構造物支持部材の相対変位が妨げられることが無く、常に、杭頭と上部構造との間の回転変形能力を確保して、これらの間の曲げモーメントの伝達を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を模式的に示す応力伝達装置の拡大立断面図である。
【図2】 図1に示した応力伝達装置において、杭頭部材に設けられた球座の形状を拡大して示した立断面図である。
【図3】 図1に示した応力伝達装置において、杭頭部材と構造物支持部材とが相対変位した際の状況を示す立断面図である。
【図4】 図1に示した応力伝達装置が適用された建物を模式的に示す立断面図である。
【図5】 本発明の他の実施の形態を模式的に示す応力伝達装置の拡大立断面図である。
【図6】 図5に示した応力伝達装置において、杭頭部材と構造物支持部材とが相対変位した際の状況を示す立断面図である。
【図7】 本発明のさらに他の実施の形態を模式的に示す応力伝達装置の拡大立断面図である。
【符号の説明】
1 建物
2 基礎杭
2a 杭頭
3 上部構造
4,21,31 応力伝達装置
5,32 杭頭部材
6,34 構造物支持部材
7,39 PC鋼棒(引張部材)
8,35 球座
9 外面
10,33 凹面
11,36 第一の当接面
13,38 孔部
15,37 貫通孔
17 ナット(係止部材)
18 押さえ板(係止部材)
22,43 曲面座金(係止部材)
24,44 第二の当接面
41 係止部材
Sv1,Sv1’ 第一の仮想球面
Sv2,Sv2’ 第二の仮想球面
Va 鉛直軸
Claims (4)
- 基礎杭の杭頭に設置される杭頭部材と、上部構造に固定されるとともに前記杭頭部材に対向配置される構造物支持部材とを備えてなり、
前記杭頭部材および前記構造物支持部材は、第一の仮想球面の一部をなす第一の当接面を介して上下に互いに接し、
前記杭頭部材および構造物支持部材には、これらを前記第一の当接面を介して押圧しつつ当接させるための引張部材が取り付けられ、
前記杭頭部材および前記構造物支持部材のうち一方に球座が設けられ、同他方に凹面が形成され、前記球座の外面と前記凹面とが互いに当接することにより、前記第一の当接面が形成されているとともに、前記凹面の曲率は前記球座の外面に比較して緩やかに形成されており、
前記球座の外面は、前記第一の仮想球面と同一面を構成するように形成され、
前記凹面には、前記引き抜き抵抗部材が挿通されるための貫通孔が形成され、前記球座における前記貫通孔に対向する位置には、孔部が形成され、
前記引張部材は、これら貫通孔および孔部に挿通されるように配置されるとともに、その両端が係止部材により、前記杭頭部材および前記構造物支持部材にそれぞれ係止し、なおかつ、プレストレスが導入された構成とされ、
前記引張部材は、前記球座の曲率中心を通る鉛直軸がその中心軸となるように配置されていることを特徴とする応力伝達装置。 - 請求項1記載の応力伝達装置であって、
前記引張部材の両端に設けられた前記係止部材のうちの一方は、前記杭頭部材または前記構造物支持部材に対して、第二の仮想球面の一部をなす第二の当接面を介して接し、
前記第一および第二の仮想球面は、その曲率中心が一致していることを特徴とする応力伝達装置。 - 請求項1または2記載の応力伝達装置であって、
前記貫通孔および孔部は、前記第一の当接面において、その一方が他方よりも大きな孔径となるように形成され、
前記基礎杭と前記上部構造との間に生じることが予想される最大回転角をもって前記杭頭部材および前記構造物支持部材が相対変位した際に、前記第一の当接面において、前記貫通孔および前記孔部のうち一方の内部に同他方が位置するように、前記貫通孔および孔部の径寸法が定められていることを特徴とする応力伝達装置。 - 請求項1,2または3記載の応力伝達装置であって、
前記貫通孔および前記孔部は、前記基礎杭と前記上部構造との間に生じることが予想される最大回転角をもって前記杭頭部材および前記構造物支持部材が相対変位した際に、その内周面が、前記引張部材が位置する範囲よりも外側に位置するように、その径寸法が定められていることを特徴とする応力伝達装置。
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