JP4463360B2 - コレクター式筆記具 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、先端に筆記部を有したボールペン、サインペン、マーカー、万年筆、小管式筆記具などのインクを直接保蔵するインクタンクと内部の圧力変化を吸収する溝状調節体であるコレクターを備えた所謂コレクター式筆記具の改良に関する。特にコレクター式筆記具の、航空機での使用など急激な圧力変化を伴う環境で使用する場合の吹き出しや直流の問題と、インクタンク内部に部品が入った場合の外観の不具合を解決する機構の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から存在するペン先1とインクタンク3の間にインクタンク3内の圧力を調整して直液状態のインク2を内蔵しつつペン先1の先端9からのインク漏れや空気孔10からの吹き出しを防止する内圧調節体であるコレクター6を備えた筆記具が知られている。コレクター式筆記具は比較的低粘度のインク2をインクタンク3内からコレクター6に設けられた保留溝13や毛細管を利用した繊維に一時的に保留したり、インクタンク3に戻したりする事で内圧をバランスさせてペン先に圧力変化による影響がない状態に維持する機能を有している。コレクター式筆記具はインクの流量が多く、最後まで安定した筆記流量を確保でき、外観からインク2の残量を視認できる優秀な性能を有している。
【0003】
しかし、コレクター式筆記具はインク2を直接内蔵して、コレクター6へインク2を出し入れすることから、コレクター6の内圧調整能力限界である最大保留容量をオーバーする環境ではインク2を保持するスペースがなくなり筆記具の空気孔10から外部へインク2がでてしまい指や服を汚す重大な欠点が存在している。これを解決もしくは少しでも安全性をアップさせるためには、コレクター6の容量を大きいものにする、インクタンク3を小さくするなどの対策が考えられる。一般的な緩やかな温度変化等の環境下での使用では吹き出すことがないコレクター容量としたものが既に市販されている。
【0004】
コレクター式筆記具は、現状でも安全性を考慮してやや太い軸となっており、これ以上太い軸にすると握りにくく外観がスマートでなくなる問題がある。インクタンク3を小さくした場合にはインク量が減って寿命が短くなる事になる。コレクター6を長くした場合にはペン先1にかかるインクヘッドHは気液交換部18からペン先先端9の高さとなるため通常のコレクター6を長くするとインクヘッドHが高くなって先端9からインク2が漏れる直流が発生する。
【0005】
また、地上の約1気圧の状態でキャップをして約0.8気圧前後といわれる航空機内の気圧変化された状態でキャップを開けた場合には、ペン体内部は1気圧でバランスしていた状態から0.8気圧前後の状態に瞬間的にさらされて内部のインク2がコレクター6の空気溝周辺を急激に噴流してしまうので、保留溝13全体に十分にインク2を保持できずに空気孔10からインク2が噴き出してしまう。この気圧変化の状態での吹き出しの問題を解決する目的で実公平3−31580、実公平3−31581、特開平9−104194などの考案や発明がなされてきた。しかしながらこれらでは噴流が直接空気孔に到達させない効果しかなく、十分とは言えず本発明人は特願平10−135914、特願平10−167808、特願平10−262267などの発明を提案したが、さらに有効な改良や違う手段による解決策も望まれていた。
【0006】
特開平4−227886などの空気供給管などを使用した発明も見られるが、従来の発明ではペン体を上向きにしてインク補給しないと連続して筆記をすることができない問題や、当初からインク量を半分しか入れられない問題などを有しており、消費者にはこの様な取り扱いに関して又は当初からインク量が少ない件に関して等説明をする必要がある。消費者に全く説明の必要がなく、特に飛行機の乗り換えや低温の外気から暖房機の前などの急な加圧や減圧を繰り返す環境で使用されることも考えられるため、これらの繰り返しに対して有効な対策を有したうえで、低粘度のインク2を使用して書味の良い特長を生かしたままの優位な直液式コレクター式筆記具が求められている。
【0007】
コレクター式筆記具において、筆記時にインク2を消費すると気液交換部18からはインクタンク3側に外気を取り入れて内部が減圧状態にならないようにしていることから通常はコレクター6の後方は気泡が自由に移動できる空間が必要である。従来の実開昭59−184682などで見られるように、インクタンク3の中にインク吸蔵体31等の固形物をコレクター6の後方に密状態で設けた場合には、気液交換部18から発生した気泡がインク2で濡れた状態のインク吸蔵体31を抵抗なく通過しないとインク吸蔵体31自体が第2の気液交換部になってしまうことから筆記具内部の内圧が下がってしまい、カスレが発生するなどの筆記性の不具合が発生する。
【0008】
上記の問題を解決するためには、インク吸蔵体31を密閉しない形状である気泡通過部を設けたものとする等の対策が必要であるが、コレクター6の気液交換部18は通常1カ所でありこの気液交換部18の位置とインク吸蔵体31の気泡通過部の位置をうまく合わせて組み立てなければならない問題が発生し、さらにその後方にシュノーケル25などの部品を設けた場合には、上述の位置決めの問題と共にシュノーケル25の通気部27との位置決めの問題がある。これらにより内蔵するインク吸蔵体31やシュノーケル25を小径として、その周囲にインク2が出入りできるようにした。この場合には内蔵した部品はやや細くなった分は長さを長くする必要が生じるが、インク2が全くなくなっても内部が見えてしまうことから、上述した部品がインク2で濡れているとまだインク2が残っているように見えてしまう錯覚などの外観の問題が発生するため、これらの問題を解決する事が求められている。
【0009】
コレクター式筆記具ではインク2がなくなると急に書けなくなる問題があるためインク量が少ない場合には予備筆記具を携帯しないといけない問題もあり、できれば終筆近くまではコレクター式筆記具の特徴であるたっぷりとした流量が続いて最後のインク2が見えなくなってからはメモ程度は筆記できるわずかな期間は筆記流量暫減する中綿式のような性能が発揮できないかという終筆性の問題や、上向きで長期保管するとペン先のインクがドロップして筆記しにくくなるインクドロップ性の問題や、筆記のインク流出量は従来の中綿式の初期と同等以上で多い状態がほぼインクがなくなるまで続くコレクター式筆記具の特徴があるため同じインク搭載量でも筆記寿命は短くなる事からインクタンク容積はできる限り減らしたくないという問題、などを解決する要望がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、主に普及型のコレクター式筆記具の改良を目的としており、温度変化や気圧変化に対するインクタンク3内部の加減圧を吸収してペン先1の先端9からインク2が漏れ出す直流や、コレクター6の圧力調整能力をオーバーして空気孔10からインク2が出てしまう吹き出しによって消費者の服や指を汚す重大な事故を防止する筆記具を、使い方が特殊になるなどの構造をとらずに提供するという課題を解決することが望まれている。
【0011】
特に航空機内での使用や温度変化の激しい環境での使用に対するコレクター式筆記具の吹き出しやすい欠点を解決する事が望まれており、現状でも太くなりやすく、インク量を多く搭載したいというコレクター式の外観や筆記距離(寿命)を維持したまま上記の問題を解決したコレクター式筆記具を安価に提供するという課題を解決することが本発明の第1の目的である。
【0012】
さらに上述の問題の解決をする手段としてインク吸蔵体31やシュノーケル25等の部品を追加した場合の、インクの流通や気泡の通過を規制しない流路の確保と共に、それらの部品が入ったことでインク残量の確認ができなくなることがない外観の問題、特にインク残量の確認性に影響を与えない構成を有した筆記具を提示することが本発明の第2の目的である。終筆性の問題やインクドロップの問題なども解決できればさらに有効な筆記具を提供できる様になる。
【0013】
【課題を解決するための手段】
一般的にコレクター式筆記具は、先端に筆記部9を有するペン先1にインクタンク3から低粘度(100mPa・s以下)インク2を筆記部9まで流路を確保するインク誘導芯(中芯7やコレクター芯8など)又はコレクター6のスリット(縦溝14を先端までのばした場合)などのインク誘導手段を有したボールペン、万年筆、小管式筆記具や、インク誘導芯(7,8)そのものがペン先1となるサインペンやマーカー類である。
【0014】
尾栓などの別部品との組み合わせ又は一体で有底コップ状のインクタンク3と、ペン先の間には、複数の保留溝13(一般的には複数の羽12の間のスキマ)と外気へ通じる空気溝15と各保留溝13の間をインク連通させる細い縦溝14を有した、あるいはコレクター6が繊維束であるものなど、毛細管力を利用してインク2を保留するコレクター6を設け、コレクター6に設けられた十分に小さいサイズの気液交換部18をインク2で濡らすことにより、インクタンク3と外気を遮断して気液交換部18以外では外気がインクタンク3内部に流通できない構造としてある。
【0015】
本発明では上記の一般的なコレクター筆記具の構成を設けると共に、まず本発明の有効な手段としては、インク2をある程度消費した時点でのインクタンク3内部の空気が膨張する航空機での使用時等にペン先を下に向けた場合に、インクタンク3内部に後方の膨張した空気をコレクター6側へ抜いてインク2へ圧力がかかるのを防止する通気部27を一体又は部品の組み合わせで備えるシュノーケル25を設ける。またシュノーケル25に一体又は別体でインクタンク6をほぼ分断する区画部26を設けて、シュノーケル25の通気部27から通気しやすくする。区画部26には適宜通気部27よりは通気しにくいサイズのインク導通部30を設ける。
【0016】
筆記時にコレクター6の気液交換部18から空気置換された外気が気泡となってインクタンク3に流れ込んだ場合に、インク吸蔵体31やシュノーケル25等によって気泡が抵抗をほとんど受けることなく後方の空間へ移動できるように、該コレクター6とシュノーケル25の間に空隙部42を設ける事は望ましい。その空隙部42は筆記具の周囲が相対的に減圧状態である場合に内部の相対的に高い内圧を逃がす通気路ともなる。
【0017】
本発明の有効な第1の手段としては、インクタンク3を内部視認可能な樹脂で成形すると共に、シュノーケル25は少なくともその一部、望ましくは視認できるほぼ全体にわたって透明又は半透明の材質で成形したものである。材質が半透明樹脂であっても肉厚が厚くなると内部の視認性が悪くなってしまう事、及び材質としては透明性がやや悪いものでも極薄肉にすると内部を視認することが可能になることから、肉厚も考慮した光線透過率が40%以上であれば問題のない知見が得られた。具体的な手段としては、シュノーケル25を透明ABS、AS、PS、PP、PE、PET、PC、透明PA、など及びこれらに界面活性剤など各種添加剤を混練りしたものや、各種アロイなど、いずれにしても耐インク性のある透明、半透明材質で成形されたものである。
【0018】
本発明の有効な第2の手段としては、インクタンク3の内部にインクタンク3からペン先1へインク2を誘導可能な様に中芯7,8又は縦溝14に接続したインク保持可能な中綿、スポンジ、繊維束、発泡体などのインク吸蔵体31を内蔵した。インク吸蔵体31は、少なくともインクタンク3の略中央よりも後方に位置しており、少なくともインク吸蔵体31の前方及び後方の両方からインク2を吸収可能とした。インク吸蔵体31としては一般的な繊維を接着剤や熱により固定、成形した繊維束芯や柔らかい繊維や連泡スポンジを、非吸液性の外皮で巻いた中綿が使用できる。有効にインク2を消費するためには中芯7,8よりも毛細管力を小さくするなどの手段を適宜選択する事が望まれる。
【0019】
本発明の有効な第3の手段としては、インク吸蔵体31を、少なくともその一部望ましくはインク吸蔵体31のほぼ全体にわたって光線透過率が40%以上となる透明、半透明の材質で成形したものである。インク吸蔵体31は通常は繊維を束ねたものやさらにその外側に外皮を設けたものやスポンジや熱や接着剤で形状を整えた空間の多いものである。具体的にはインク吸蔵体31はアクリル(PMMA)、ポリエステル(PET)、透明ABS、AS、PS、PP、PE、PC、透明PA、などの繊維や発泡体を素材として使用したもの、各種アロイ等が利用でき、いずれにしてもインク2で濡れた状態やインク無しの状態などで光線透過率が40%以上となる素材で構成したものである。インク吸蔵体31は通常厚みがあるが、内部に大量の空間を有しており、その使用する材料に透明性があれば通常は内部のインク2が透けて見えたり、インク2が無くなると色がかなり薄くなり繊維束等の中にインク2が無くなったことが視認できるようになるため肉厚に関しては考慮する必要は少ない。
【0020】
本発明の第4の手段としては、インク吸蔵体31とシュノーケル25を内蔵しており、そのうちの一方は光線透過率が40%以下の不透明な材質で構成されている場合に、その不透明な部材にはインク色と違う色を有した材質、又はインク色とは違う着色を施したものであり、もう一方の透明な部材は表面の面粗度が算術平均粗さRaが0.8a(単位μm)以下、望ましくは0.2a以下の平滑な表面を有していることである。この平滑な表面は望ましくはその内部部品の全体が上述の表面粗さを満足した方が良いが、少なくとも外部から視認される部分の一部分がこの表面粗さを満足している事は必要である。
【0021】
【実施例】
以下、図示した実施例について詳説する。図1から図3は本発明の実施例を示しており、図4に従来例を示し、本発明に関して以下に詳説する。
【0022】
図に示すように本発明の第1の実施例の筆記具は、まず先端にボールの筆記部9を有するペン先1にインクタンク3からのインク2を筆記部9まで流路を確保するインク誘導芯として中芯7やコレクター芯8のインク誘導手段を有したボールペンである。ペン先1には既に述べたようにサインペン、万年筆、小管式筆記具等各種の筆記具のペン先1を応用できる。一体又は尾栓等の部品との組み合わせで有底コップ状のインクタンク3と、ペン先1の間には、複数の羽12を設けてそのスキマを複数の保留溝13として機能させ、外気へ通じる空気溝15と各保留溝13の間をインク連通させる細い縦溝14を有したコレクター6を設けた、所謂コレクター式筆記具である。このコレクター6は、従来から用いられている横方向の保留羽12を用いたものや、綿等を用いたものなど、いずれにしても毛細管力のバランスで加減圧による変化をインク一時保留する事で調整する機能と、気液交換部18の小径メニスカス機構を利用してインクタンク6内部を相対的に減圧としてペン先1の内部にはインクヘッドHが余分にかからない機能とを有した部品である。
【0023】
図4に示される様に、従来からのコレクター筆記具では直液状態のインク2をインクタンク3内部に保蔵すると共に、コレクター6に設けられた十分に小さいサイズの気液交換部18をインク2で濡らすことにより、インクタンク3と外気を遮断して気液交換部18以外では外気がインクタンク3内部に流通できない構造としてある。コレクター6は通常はプラズマ処理や硫酸クロム酸混液等の化学処理や成形樹脂中に濡れやすい石鹸成分などを混練り等、での濡れ性改善や表面コーティングなどでインク2に対して濡れやすくする処理をする。その他のクチプラ5,継手4、キャップ(図示せず)、及びインク2などは特に本発明により限定されるものではなく、従来から用いられているものが適宜選択可能である。
インク2も同様に、水、アルコール、キシレン、各種グリコール形容剤類、各種エーテル系溶剤等の各種溶剤のものや、染色剤としての顔料インクや染料インクのものや、やや粘度や擬塑性を付与したインクなど、コレクター式筆記具として使用可能なものが適宜選択可能である。
【0024】
コレクター筆記具はいずれも圧力変化に対してバランスする機能を利用して直液状態のインク2を内部から漏れ出さないようにする機能を有している。インクタンク3の内部の内圧が変化すると気液交換部18を介してインク2がコレクター6の保留溝13へ入ったり、逆に気液交換部18から空気がタンク3内に入ったりして内圧のバランスをとって、ペン先1の内部への圧力はインクヘッドH以外にはほとんどかからないような、気液交換部18のメニスカスによるインクタンク3側を実質的には外気よりも減圧状態とするメカニズムでペン先1からの直流を防いでいる。気液交換部18のサイズを小径にすれば内圧を低くする事が可能となりインクの漏れだしを防止しやすくなるが、同時に筆記に対してもインクが流れにくくなるため、気液交換部18のサイズは一般的には0.05mmから0.2mm程度のサイズとなっている。気液交換部18は溝形状のものや、繊維束芯である中芯やコレクターを綿で設けた場合などでは、繊維間のスキマが気液交換部18となる。
【0025】
筆記時のインク消費によりインクタンク3内部のインク2の量がコレクター6の最大保留できる量よりもやや多いインク残量の時がインクタンク3の内圧変化が最も多く、外気の加減圧や気温変化によるタンク3内部空気の膨張収縮がある場合でも、コレクター6内にインク2が充満して空気孔10からインク2が吹き出す不具合が起こらないように従来のコレクター筆記具では設計されている。一般的にはインクタンク3の大きさとコレクター6の最大インク保留容量iとの間には相関関係が成り立つ知見が得られており、従来より通常はインクタンク容積の10%から30%程度の最大インク保留容積となるように設計される。
【0026】
最大インク保留容積をインクタンク3のサイズに比較して大きな比にしていけば吹き出しに関する安全性は向上するものの、コレクター6の長さをあまりにも長くした場合にはペン先1へかかるインクヘッドHが大きくなってしまい、ペン先からの直流の問題が発生する。コレクター6の径を大きくすると、軸サイズが太くなってしまって握り部の太さの問題や外観のスマートさに影響が出やすい。
またインクタンク3を小さくすると、インク容量が減少してしまい、筆記距離が短くなるなどの問題があるため従来例図4のように主要部保留溝16に追加した補助保留溝17を設けてインクヘッドHを増加させずにコレクター容量を増加させたものも本出願人は発明している。
【0027】
しかしながら、航空機での使用のように、地上での約1気圧と約0.8気圧といわれる飛行中の機内との間で使用を繰り返されると、コレクター式筆記具ではコレクター6内に急激に入ったインクが噴流となって十分に保留することなく吹き出したり、急に外気が加圧状態となるとコレクター6内のインク2をタンク3に戻す事なく空気だけがタンク3に入ってしまう。特にこれらを繰り返すとコレクター6の保留溝13はインク2を保持はしているが順次保留インクが増加した状態となって吹き出したり、吹き出さなかったものでも体温程度のわずかな温度上昇でも吹き出してしまう現象による欠点を解消することが望まれてきた。
【0028】
本発明の実施例では、有効な構成として、まずインクタンク3を実質的に分断してペン先1を下向きにした場合の上部(インクタンク後方)の空気を抜いてインク2はタンク3内部に極力残す様になるシュノーケル25を設ける。シュノーケル25にはインクタンク3を分断する区画部26と管状の通気路である通気部27を備え、図2に示すようにコレクター6の後端側に開口する前方開口28とインクタンク3の略中央付近もしくはより後方に開口する後方開口29を通気部27で通気する。区画部26はインクタンク3の内壁に圧入して前タンク37と後タンク38に実質的に分断している。区画部26には通気部27のサイズよりも十分に小さい溝や孔であるインク導通部30を1カ所(望ましくは通気部27よりも小さいサイズの複数箇所)に設けた。
【0029】
この様な構成とすることで、インク量が減少した状態で、ペン先1を下向きにしてゆっくりとした加温や気圧変化した場合には、インクタンク3内部のインク2は区画部26で区画された後タンク38側からインク導通部30を通過して前タンク27側に移動可能である。つまり、実質的には区画部26でタンク3を分断はしているがインク導入部30により遮断はしていないので、連続的に筆記したりコレクター6側にインク2を移動したりすることが可能である。実際に試作して確認しても筆記状態ではインク2は前タンク27側に移動してくる事は確認できた。この様にゆっくりとした気圧や温度の変化状態では、従来のコレクター式で問題がない一般的なコレクター6等を設けることで、十分にコレクター6のインク保留能力を発揮することができる。
【0030】
航空機での使用や低温と高温の環境間での使用においては、内部のインク2の揮発防止のためのキャップによりシールして移動される。航空機での使用を例として説明すると、通常は約1気圧の地上で使用され、その1気圧に対応したインクタンク3の内部の圧力となった状態でキャップされてその内圧状態を維持する。航空機に搭乗し約0.8気圧の減圧状態で筆記具を使用する時には、キャップをまず開ける。この時には筆記具の内圧は約1気圧の状態から急激に0.8気圧の環境に開放されたことになり、気液交換部18を経由してインクタンク3の内圧は航空機内の気圧より相対的に高くなっているので、従来のコレクター筆記具では急激にインク2がコレクター6の内部を噴流となって噴出する。
【0031】
本発明の構成では、内圧が相対的に高くなった状態のタンク3内部の空気を通気部27によって優先的にコレクター6側に逃がす事ができる。前タンク37周辺のインク2も同時に流れ込んでくるが、その容量は十分に小さく、吹き出しを防止することが可能である。通常の使用状態では筆記によって流出したインク2と同量の空気が気液交換部18からインクタンク3側に気泡として入ってくるため、及び通常キャップした状態では上向きでポケットに収容されるか鞄に横向きで保管される事から一般的には前タンク37は空間となっていることが多く、急加減圧時にコレクター6側に流れ込むインク2がほとんど無い状態つまり吹き出しにくい状態である可能性が高くなる構成となっている。
【0032】
筆記具内部で急激なインク2又は空気の移動がある場合には、区画部26によりインク2が直接コレクター6に到達することができず、通気部27と通気部27よりもサイズの小さいインク導通部30の間で十分に流路抵抗に差があれば、急激な移動であればあるほどインク2や空気が流れやすい方にのみ流れが発生する。インクと空気では同じサイズの通路でも、空気の方が遙かに流れやすい。つまり急激な変化では空間に開口した通気部27から空気が抜ける方が、下向きの状態でインク2で濡れているインク導通部30をインク2が流れていくよりも流路抵抗が遙かに少なく、結果的には急な加減圧時にはほぼ空気だけがコレクター6側に流れる構成となっている。
【0033】
さらに本発明の構成では、インクタンク3内にインク2に浸積された状態の部品を内蔵するため、それらの部品にインク2が付着した状態では、まだインク2が残っているかのような外観を呈する不具合が発生する場合がある。この外観の問題を解決するために、シュノーケル25を透明な材質で成形すれば多少のインク2が付着していてもインク2が無くなった状態であると視認できる知見が得られた。つまりインク2が全て無くなった場合でもインク2にはある程度の透過性があり、内部部品自体が光線透過性があれば特に視認可能であることがわかったが、PP、透明ABSなど既に述べた材質で調査したところ光線透過率を規定することで視認の可否が行える結果が得られた。具体的には光線透過率が40%以上であれば実用上問題なくインク2が残っている様に見える錯覚現象が起こらず、80%以上であればインクタンク3内部にシュノーケル25等の部品が入っていることがよく見なければ判定できないほど視認性が良い。
【0034】
第2の特徴的な構成としては、インク保持可能な吸蔵体31を上述したシュノーケル25と共に設けたことである。本発明者は既にインク吸蔵体31をインクタンク3内に設けることにより、インク2の量を減らすことなく、インク2を消費してインクタンク3内に空間ができた場合に、その空間の容積を減らす効果がある発明を行った(特願平10−135914及び167808)。この先願発明を対策したものであり、インク吸蔵体31には非吸液性の外皮35を有したものとした。
【0035】
インクタンク3は通常はインク残量の視認性やインク揮発防止性などを考慮してPP、PE、PET、PS、ASなどの透明樹脂で成型される。同様にインク吸蔵体31をアクリル樹脂製の透明繊維を使用し、外皮には透明度の高いPPを使用して中綿を構成し、本発明のインク吸蔵体31として使用した場合は既に述べたインク残量の錯覚性に関して問題のない構成とすることができた。繊維束は部品の状態ではやや白色の外観色を呈するものの、インク2を搭載した状態では透明度が増し、インク残量が無くなった時点ではインク吸蔵体31内部のインク2が存在している間はインク色として視認可能であり、インク吸蔵体31内部のインク2も無くなった状態(インク2がないので筆記不可能な状態)では、インク吸蔵体31内部にはインク2が薄く付着した状態ではあるものの明らかに外光が通過しているためにインク色が極端に薄くなることから容易にインク残量がないことが視認可能であった。光線透過率が40%以下の材質のものでは内部の視認ができず、インク吸蔵体31内にインク2が残っていても、無くなっても、ほぼ同様の外観で、視認性は悪いものであった。
【0036】
さらに本発明では、内蔵する部材の内、透明度が高い部材に関しては表面粗さを極力細かいものとすることで、視認性が向上する知見も得られた。透明度が高い材質でも表面の面粗度がスリガラス状であると、インク2がなくなっても内部が視認できない問題があると共に、透明度が40%以上であっても部品の表面にインク滴がびっしりと残りやすくなるため、実際のインク2がなくなった状態では材質の透明度よりもかなり視認性が悪化してインク残量が残っているように錯覚する視認性の問題が発生してしまう場合があった。表面粗さは小さい(細かい)ものの方が結果は良かったが、実験の結果、算術平均表面粗さが0.2a(μm)以下では非常に良好な結果であり、表面粗さが0.8a以下であれば実用上十分な結果であった。シュノーケル25、インク吸蔵体31の内部部材は、透明度が十分でない場合には残量確認性の点からインク色以外の色であることは当然望まれるが、できれば白、グレーなどのインク色とははっきりと区別できる無彩色であることが望ましい。
【0037】
上述したように、本発明では急な加減圧の場合の空間の膨張量自体を減少させることで吹き出しの勢いを弱め、コレクター6側に流れ出す量を減らすことが可能となる。構成としては、中綿などのインク吸蔵体31を、シュノーケル25の通気部27を塞がないように設けた。インク吸蔵体31の容積減少効果を発揮するためには、インクタンク3の略中央周辺又はそれよりも後方まで延びた長さを有してインク2を吸蔵した状態ではインクの搭載容量は減らさずに後方の空間を占有する事で実質的には加減圧時の空気膨張を減少させ、しかも直液式の筆記具としては径方向には少なくとも一部がインクタンク3外部に視認できる空間(通常は後タンク38周辺)にインク3が自由に出入りする必要がある。
【0038】
【作用】
実施例に於いて、本発明の作用を説明する。本発明の構成とすることで、従来のコレクター筆記具の温度変化による比較的ゆっくりとした内圧変化に対応してインクが吹き出すことのない作用はまったく同様に有しているばかりでなく、航空機での使用時を考慮した急激な圧力変化した場合に、タンク中の空気を抜くことでインクタンク側からコレクターにインクが急激に流入する事を防止する作用を有している。また空気が抜けることから仮にインクが流れてもインクの噴流の勢いを弱めることができ、繰り返して加圧減圧の環境で使用されてコレクターにインクが蓄積されてしまう問題も解決することが可能となる事で、総合的にコレクター筆記具の吹き出しや直流の事故を防止する作用を有している。
【0039】
インク吸蔵体と組み合わせて使用することで、本発明の膨張した空気を極力筆記具の外部へ逃がす作用とインク吸蔵体の容積減少作用との相乗効果によって、吹き出しに関する問題が発生しにくい筆記具とできる大きな作用を有している。
さらに小さなインク吸蔵体を有していることからペン先を上に向けた状態でのインクドロップの問題も解決可能であると共に、筆記寿命の最後では100m程度は直液インクがなく中綿式の様にインクがはっきりと書けなくなるのではなくごくわずかには筆記可能にできる事から直液式筆記具での急にかけなくなってしまう終筆性の問題も解決できる作用を有している。
【0040】
本発明の透明度を満足した内部部品の構成とすることで、インクが残量していないにも関わらず、インクが付着した部品によって、インクが残っているかのように見える視認性の問題を解決できる作用を有している。透明度が40%以上ある部品を使用するため、内部部品にインクが薄く付着していても、外光の透過によってインク色の発色を弱めて実際にはインクが残量していないことを視認できる作用を有している。
【0041】
さらに本発明の表面粗さを満足することで、表面がスリガラス状とはならず、上述した作用を有する十分な光線透過を確保できる作用を有する共に、内部部材表面の凹凸にインクが残量してしまうことを防止できる作用を有している。つまり、総合的にインク2がないにも関わらずインクタンク3内部の部品がインク2が残っているかのような錯覚を起こすことがない作用を有している。この様な種々の作用を有していることから何ら問題が発生することがなく、急激な内圧調整を行い、どの様な状況でも現在の筆記具の使用環境では吹き出しや直流の問題が発生しない筆記性に優れた外観の良い筆記具とできる作用を有している。
【0042】
【発明の効果】
本発明の筆記具の構成及び作用は以上の如くであり、細身で外観が良く、筆記性の優れた筆記具とする事ができる。航空機による加減圧下や、温度変化、キャップによるポンピング現象による吹き出し、落下等による筆記異常やペン先からの直流現象、が発生しにくくなり、安全かつ安定した筆記性を確保できるようになる。特に航空機を乗り継いで筆記をするビジネスマンが使用するような航空機の減圧環境を繰り返し受ける環境でも吹き出しや直流の事故のない筆記具とすることができる。
【0043】
さらにインク吸蔵体と組み合わせることで、さらに安全性が増すだけではなくインクドロップの問題や終筆性の問題も同時に解決できることから従来のコレクター筆記具と比較しても上述のような有効な効果があり、航空機での使用を満足させるための部材による不具合が発生せず、製造が容易で、長期保存性や終筆時のインク残量確認性に優れた安全なコレクター筆記具をユーザーに特別な注意事項を知らせる必要もなく、つまりは安価で外観の良い、優良な筆記具を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例である筆記具本体の全体を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施例である筆記具の後方拡大縦断面図である。
【図3】本発明の第1実施例であるコレクターの上方外観図である。
【図4】従来例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ペン先
2 インク
3 インクタンク(軸)
4 継手
5 口プラ
6 コレクター
7 コレクター芯
8 中芯
9 筆記部(ボールペンの場合はボール)
10 空気孔
11 コレクターの通気孔
12 羽
13 保留溝
14 縦溝
15 空気溝
16 主要部保留溝
17 補助保留溝
18 気液交換部
19 仕切部
20 幅広溝
21 幅狭溝
22 延設部横溝
23 仕切部溝
24 面削ぎ
25 シュノーケル
26 区画部
27 通気部
28 前方開口
29 後方開口
30 インク導通部
31 インク吸蔵体
32 前方吸収部
33 後方吸収部
34 インクタンク内壁
35 外皮
36 接続溝
37 前タンク
38 後タンク
39 導出部
40 導出溝
41 突起部
42 空隙部
43 スペーサー部
44 突状部
45 気泡通過溝
46 保持部
47 受け部(インク吸蔵体受け)

Claims (3)

  1. 先端に筆記部を有するペン先と、内部に低粘度のインクを直液状態で保蔵するインクタンクと、インクタンクからペン先までのインク誘導手段とを有し、インクタンクとペン先の間に複数の溝へ内圧調整時にインクを保蔵する調節体であるコレクターを有した筆記具に於いて、
    インクタンク内部には、シュノーケル及びインク吸蔵体を内蔵し、該シュノーケルは、インクタンクをほぼ分断する区画部と、該区画部の前方と後方のそれぞれの空間を通気可能でインク吸蔵体と該区画部で囲まれた通気部と、インクタンクと区画部で囲まれた該通気部よりも小径のインク導通部と、を一体又は別部品で備え、該インク吸蔵体は、インク保持可能かつインクタンクからペン先へ誘導する中芯又はペン先延長部に接続し、シュノーケルの内面とインク吸蔵体の外面によってインクタンク内の空気と連通状態を形成し、
    該インクタンクは少なくとも該シュノーケル周辺を視認可能な透明又は半透明樹脂で成形すると共に、当該シュノーケルは少なくともその一部望ましくはそのほぼ全体が光線透過率40%以上となる透明又は半透明の材質で成形及び肉厚である事を特徴とするコレクター式筆記具。
  2. 先端に筆記部を有するペン先と、内部に低粘度のインクを直液状態で保蔵するインクタンクと、インクタンクからペン先までのインク誘導手段とを有し、インクタンクとペン先の間に複数の溝へ内圧調整時にインクを保蔵する調節体であるコレクターを有した筆記具に於いて、
    インクタンク内部には、インクタンクからペン先へ誘導する中芯又はペン先延長部に接続するインク保持可能なインク吸蔵体と、インクタンクをほぼ分断する区画部と、該区画部の前方と後方のそれぞれの空間を通気可能でインク吸蔵体と該区画部で囲まれた通気部と、インクタンクと区画部で囲まれた該通気部よりも小径のインク導通部と、を一体又は別部品で備えたシュノーケルを内蔵し、
    該インク吸蔵体は、シュノーケルの内面とインク吸蔵体の外面によってインクタンク内の空気と連通状態を形成し、
    該インクタンクは少なくとも該インク吸蔵体周辺を視認可能な透明又は半透明樹脂で成形され、インク吸蔵体はインクタンクの少なくとも略中央よりも後方に位置する長さで少なくとも前方後方からインクを吸収可能に構成すると共に、インク吸蔵体は少なくともその一部望ましくはそのほぼ全体が光線透過率40%以上となる透明又は半透明の材質である事を特徴とするコレクター式筆記具。
  3. インクタンク内部にはシュノーケル及びインク吸蔵体を内蔵し、シュノーケル、インク吸蔵体のうちの一方は、光線透過率40%以下となるインク色と違う外観色を有する材質又はインクの色とは違う色で着色(無彩色を含む)された上で、当該シュノーケル、インク吸蔵体のうち透明性を有する方の表面は、表面の面粗度が算術平均粗さRa0.8a(μm)以下のほぼ平滑な表面を、外部から視認可能な部分の少なくとも一部に有する事を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のコレクター式筆記具。
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