JP4462641B2 - モノカルボン酸とジカルボン酸の両方を含むエチレンのコポリマーをベースとする新規のイオノマーと、このようなイオノマーを含むポリアミド・ブレンド - Google Patents
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Description
本出願は、1997年2月28日に出願され現在保留中の関連出願第08/807943号の一部継続出願である。
発明の背景
発明の分野
本発明は、イオノマー、すなわちある種のモノカルボン酸とある種のジカルボン酸の両方またはそれらの誘導体のコモノマー・ユニットを共重合化したエチレン/カルボン酸コポリマーの部分的に中和された金属塩に関する。この新規のイオノマーは、既存の従来型のイオノマーと比べて多数の有用な優れた特性を有する。特に、このイオノマーをポリアミドと混合して強化多相熱可塑性組成物を形成するのに有用である。
関連技術の説明
コポリマー、すなわちエチレンと不飽和単カルボン酸、メタクリル酸、またはアクリル酸のみからなるジポリマーは良く知られている。市販のそのようなジポリマーは通常、少なくとも約75重量%、最大で約92重量%のエチレンを含む。このようなジポリマーは成形、包装、ある種の接着応用例に使用される。そのようなエチレン/酸コポリマーの例には、E.I.du Pont de Nemours and Companyによって生産され、Nucrel(登録商標)の商標で販売されているコポリマーが含まれる。そのようなエチレン/酸コポリマーは、米国特許第4351931号(Armitage)で開示されている。その親開示は1961年6月に出願されたものである。
モノカルボン酸コモノマーを有するこの種の酸コポリマーはイオノマーを調製するためにも使用され、その場合、コポリマーのカルボン酸ユニットは金属イオンで部分的に中和される。そのような「イオノマー」は、Surlyn(登録商標)の商標でE.I.du Pont de Nemours and Companyによって販売されている。このような樹脂は溶融物では熱可塑性である。部分中和を使用するのは、完全に中和された酸コポリマーは、制御不能な溶融物を有することが知られており、かつそのように開示されているからである。イオノマーは、別の効果を有し、未中和エチレン/カルボン酸コポリマー「前駆体物質」とは特性が著しく異なる。イオノマーは米国特許第3264272号(Rees)で初めて開示された。このイオンは、低温で「イオン架橋」結合を形成するが、ある種の未中和カルボン酸群が残っている場合、融点で、典型的な熱可塑性溶融加工性を与えるほど不安定である。
上記のArmitageの特許は、アクリル酸およびメタクリル酸以外の酸コモノマーの使用を開示しておらず、実際、このようなモノカルボン酸は、エチレン/カルボン酸コポリマーならびに誘導金属イオン中和イオノマーにおける唯一の商業的に重要な酸コモノマーである。しかし、エチレンで重合化する他の酸コモノマーと、その結果得られるコポリマーは、たとえば前述のReesの特許で開示されている。この特許では、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸水素メチルなどそれらの酸のモノアルキルエステル、無水マレイン酸などの無水物など0.2〜25モル%のジカルボン酸コモノマーを含むコポリマーが開示されている。エチレンと6重量%のイタコン酸とを含むコポリマーと、6重量%の無水マレイン酸を含むコポリマーが、上記のコポリマーから誘導されたイオノマーとして例示されている。この開示は、一価金属および二価金属で中和されたエチレン/ジカルボン酸ジポリマーの例を与えている。一価金属イオンの場合、部分的に中和されたコポリマーのメルトフローは非常に低いものとして開示されており、二価金属イオンを用いた場合、いくつかの例では流量が零になる。この開示では、中和の程度は具体的に記載されていないが、エチレン/モノカルボン酸イオノマーとは異なり、ジカルボン酸コポリマーの中和は制御不能であるか、あるいはほぼ制御不能であると推定される。
エチレン/ジカルボン酸と二価金属イオンのイオノマーが制御不能であるのは、イオン結合が非常に強力であるために「このようなイオノマーが通常の架橋ポリオレフィンと同様に挙動する」ためであると考えられることを、Reesの開示は示している。R.W.Rees著「Thermoplastic Elastomers-A Comprehensive Review」(N.Legge等編、Haser発行、1987年)の第10A章「Ionomers Thermoplastic Elastomers,Early Research-Surlyn(登録商標)and Related Polymers」によるイオノマーの調査では、データが与えられ、エチレンとジカルボン酸とのジポリマーを中和することによって、一価ナトリウム・イオンを含む低流量材料が与えられ、亜鉛やストロンチウムなどの二価イオンを用いた場合、流量は零になると記載されている。中和の程度は具体的には記載されていない。この文献は、エチレン/ジカルボン酸コポリマーイオノマーが、モノカルボン酸コポリマーイオノマーと比べて顕著ではないことも示唆している。
酸コポリマーも、あるいはモノカルボン酸コモノマーとジカルボン酸コモノマー(またはそれらの誘導体)の両方を有する酸コポリマーの誘導イオノマーであるターポリマー(または場合によってはより高次のコモノマーコポリマー)もReesでは具体的に開示されていない。しかし、アクリル酸アルキルやメタアクリル酸アルキルやそれらの誘導イオノマーなどの非酸ターモノマーを有するターポリマーは開示されている。後に、この種のイオノマー、具体的には、エチレン、メタクリル酸、アクリル酸n−ブチルまたはアクリル酸イソブチルの部分的に中和されたターポリマーが市販され、現在でもSurlyn(登録商標)の商標で販売されている。これらのターポリマーイオノマーは一般に「軟」イオノマーと呼ばれ、「軟化」アクリル酸ターモノマーを含まないジポリマーイオノマーを「硬」イオノマーと呼ぶ。
半エステルに作用する架橋剤で架橋された、エチレンと、約50重量%〜65重量%のアクリル酸メチルおよび低レベルのマレイン酸のアルキルモノエステルとのターポリマーが、架橋剤で硬化されてエラストマが作製され、E.I.du Pont de Nemours and CompanyからVamac(登録商標)の商標で販売されている。この場合、架橋硬化によって通常、共有結合架橋が作製される。そのような硬化(架橋)樹脂は、弾性を有するが、溶融加工不能である。そのようなターポリマーと、それから誘導された架橋エラストマは、米国特許第3904588号(Green)に記載されている。
上記で指摘したエチレン、アクリル酸(メタクリル酸)、アクリル酸アルキルのターポリマーは、引張り応力が低く(したがって「軟質」であり)、良好な低温特性を有する酸コポリマーの種類を形成する。酸コポリマーを調製する方法は米国特許第4690981号に上記で指摘したように、これらの酸コポリマーは、金属イオンによる部分中和によって「軟」イオノマーを形成するために前駆体酸コポリマーとして使用されるが、アクリル酸を含むこのような酸コポリマーも固有の有効性が見出されている。これらのアクリル酸ターモノマー・ターポリマー・イオノマーは、一価金属で中和されるか、それとも二価金属で中和されるかにかかわらず、ジポリマーイオノマーと同程度に良好なメルトフローを有し、したがって容易に加工することができる。
それぞれ、マレイン酸やその無水物など、低レベルの二酸または二酸誘導体でグラフトされたポリエチレンは、接着剤に使用されることが良く知られており、マレイン酸または無水物のグラフトは特に、接着性を強化するために使用される。しかし、(REES第10A章)によれば、モノカルボン酸とジカルボン酸のどちらかでグラフトされた高密度ポリエチレンを部分的に中和してイオノマーを形成した場合、機械的特性については利益が与えられず、特性の主要な変化はメルトフローが大幅に減少することであった。
従来型のイオノマーと同様に熱可塑性加工可能であるが、改良された特性を有するか、あるいは周知のエチレン/モノカルボン酸/(アクリル酸アルキル)ジポリマー(またはターポリマー)イオノマーと比べて新しい範囲の特性を与えるイオノマーが必要である。
SURLYN(登録商標)の商標で販売されているエチレンメタクリル酸中和イオノマーなどのイオノマーをナイロンなどの材料の衝撃調節剤として使用することも知られている。米国特許第3845163号または第4174358号を参照されたい。アクリル酸n−ブチルなどのアクリル酸型コモノマーを使用することによってある種の衝撃調節特性が改良されたが、米国特許第4801649号で開示されたこの手法では、機械的剛性などのある特性が犠牲になる。Epsteinの米国特許第4174358号で開示されたようなグラフトオレフィンゴムなど他のナイロン調節剤も知られている。このような組成物をポリアミドに添加すると、優れた衝撃抵抗が得られるが、機械強度が低減する。
本発明は、本発明のイオノマーを含むポリアミド組成物も提供し、この強化組成物は、従来型のイオノマーと比べて改良された衝撃抵抗を有し、さらに衝撃抵抗特性と機械強度特性バランスを向上させる。
発明の概要
本発明は、モノカルボン酸とジカルボン酸(またはそれらの誘導体)の両方をエチレンで共重合化すると、エチレン/ジカルボン酸(または誘導体)ジポリマーの中和時に生成される制御不能な樹脂の種類を生成せずに、上記の樹脂を部分的に中和してイオノマーを形成することが可能であるという発見に依存するものである。このため、溶融加工可能なイオノマー内で「鎖内」ジカルボン酸ユニットの特性属性を実現することができる。このような特性属性は、モノカルボン酸が従来型のモノカルボン酸イオノマーに典型的な量だけ存在する場合にそのような従来型のイオノマーに存在する特性属性以外のものである。あるいは、比較的低レベルのモノカルボン酸しか存在しないときは、ポリマーチェーンの性質に依存する特性を決定する際に、イオノマー化ジカルボン酸ユニット属性がイオノマー化モノカルボン酸ユニットの特定の属性にほぼ置き代わることができる。
具体的には、本発明は、
(a)エチレンと、
(b)2重量%〜25重量%のアクリル酸(メタクリル酸)と、
(c)マレイン酸と、無水マレイン酸と、マレイン酸のC1−C4−アルキル半エステルと、フマル酸と、イタコン酸と、無水イタコン酸とからなる群から選択された0.1重量%〜15重量%のジカルボン酸モノマーと、
(d)0重量%〜40重量%のC1−C8−アルキルアルキルアクリレート、すなわちナトリウムと、マグネシウムと、リチウムと、亜鉛と、カルシウムと、これらの混合物とからなる群から選択される金属イオンでコポリマー中のカルボン酸ユニットの総数の約5%〜90%を中和することによって形成されたイオノマーとを含み、
ただし、アクリル酸(メタクリル酸)およびジカルボン酸モノマーの総量が約4重量%〜約26重量%であり、さらに、総コモノマー含有量が50重量%を超えないモノマーから誘導された鎖内重合化ユニットを有する部分的に中和された前駆体酸コポリマーを含む組成物に関する。
また、本発明は、
(i)非結晶ポリアミドまたは半結晶ポリアミドまたは結晶ポリアミドと、
(ii)
(a)エチレンと、
(b)2重量%〜25重量%のアクリル酸(メタクリル酸)と、
(c)マレイン酸と、無水マレイン酸と、マレイン酸のC1−C4−アルキル半エステルと、フマル酸と、イタコン酸と、無水イタコン酸とからなる群から選択された0.1重量%〜15重量%のジカルボン酸モノマーと、
(d)0重量%〜40重量%のC1−C8−アルキルアルキルアクリレート、すなわちナトリウムと、マグネシウムと、リチウムと、亜鉛と、カルシウムと、これらの混合物とからなる群から選択される金属イオンでコポリマー中のカルボン酸ユニットの総数の約5%〜90%を中和することによって形成されたイオノマーとを含み、
アクリル酸(メタクリル酸)およびジカルボン酸モノマーの総量が約4重量%〜約26重量%であり、さらに、総コモノマー含有量が50重量%を超えないモノマーから誘導された鎖内重合化ユニットを有する部分的に中和された前駆体酸コポリマーとを含む強化熱可塑性組成物を含む。
本発明は、
(i)非結晶ポリアミドまたは半結晶ポリアミドまたは結晶ポリアミドと、
(ii)
(a)エチレンと、
(b)2重量%〜25重量%のアクリル酸(メタクリル酸)と、
(c)マレイン酸と、無水マレイン酸と、マイレン酸のC1−C4−アルキル半エステルと、フマル酸と、イタコン酸と、無水イタコン酸とからなる群から選択された0.1重量%〜15重量%のジカルボン酸モノマーと、
(d)0重量%〜40重量%のC1−C8−アルキルアルキルアクリレートとを含み、
アクリル酸(メタクリル酸)およびジカルボン酸モノマーの総量が約4重量%〜約26重量%であり、さらに、総コモノマー含有量が50重量%を超えないモノマーから誘導された鎖内重合化ユニットを有する酸コポリマーとを含む強化熱可塑性組成物を含む。
発明の詳細な説明
この開示で、コポリマーの語は、2つまたは3つ以上のコモノマー・ユニットを含むポリマーを全般的に含めるために使用される。ジポリマーやターポリマーなどの語は、特定の数のコモノマーを有するコポリマーを指すときに使用される。コポリマーの一般的な用語に従って、コポリマーは所与のコモノマーを「含む」あるいは「有する」、あるいは所与のコモノマー「の」コモノマーであると言われ、このことは、コモノマーが直接、コモノマー誘導ユニットとしての鎖として重合化されることを意味するものであり、もちろん、コポリマーが実際にモノマーを含むことを意味するわけではない。これらを「鎖内」ユニットと呼ぶ。ジカルボン酸モノマー、特に無水マレイン酸は一般にポリマーにグラフトされるので、これは特にジカルボン酸モノマーの場合に重要である。グラフトされたコモノマー・ユニットを有するポリマーは、鎖内に同じコモノマーを有するポリマーと、性質および調製態様がまったく異なる。そのような鎖内コモノマーコポリマーは場合によっては、モノマーが後で既存のポリマー鎖上に重合化されるグラフトコポリマーではなく、すべてのモノマーが「直接」重合化される「直接」コポリマーと呼ばれる。
ジカルボン酸に関連する「誘導体」の語は、モノエステルまたはそのような酸の無水物の意味で使用される。誘導体自体が共重合化可能なコモノマーを形成するが、これを特定のコモノマーから「誘導された」鎖内ユニットと混同しないように留意されたい。したがって、ポリマーには、コモノマーから得たコモノマー誘導単位、すなわち、無水マレイン酸などの二酸の誘導体がある。
特許請求の範囲に記載の酸ユニットの中和率に関しては、モノカルボン酸は1つの酸ユニットを与え、ジカルボン酸は2つの酸ユニットを与え、無水マレイン酸などの無水物は2つの酸ユニットを与えるものとみなされ、半エステルは1つの酸ユニットを与えるものとみなされる。中和率の計算は、上記による割合とみなされる酸ユニットの数と、添加される金属等価物の数とに基づく。実際には、無水物ユニットは、酸ユニットには変化せず、無水物ユニットのままであってよい。無水物モノマー・ユニットは、中和されたときに、二金属塩または一金属塩を形成することも、あるいは未中和二酸ユニットを形成することも、あるいは無水物ユニットを変化させずに無水物ユニットのままにしておき、酸機能を有さないように働くこともできる。二酸の半エステルは、1つの酸しか有さないものとみなされるが、実際には上記で指摘した中和に関する様々な可能性を有する二酸または無水物に転換することができる。しかし、前述のように、実際に存在する酸基(遊離または中和)の数にかかわらずに、計算中和率は、上記で定義したように与えられるものとみなされる酸ユニットの数に基づく。可能な二酸モノマーおよび塩の様々な「変異」に鑑みて、実際の総中和遊離酸基および未中和遊離酸基の割合としての中和酸基の実際の割合は、上記の仮定に基づく計算中和率とは異なる。この差は、酸ユニットではないが、2つの酸ユニットとみなされる無水物ユニットによるものである。
ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体と、モノカルボン酸および任意選択のアクリル酸モノマーの両方を含むポリマー、すなわち、本発明のイオノマーの未中和前駆体ポリマーを「前駆体酸コポリマー」または「前駆体エチレン/酸コポリマー」と呼ぶ。都合上、エチレン/酸コポリマーの「エチレン」の語は、理解され通常は省略され、単に酸コポリマーと呼ばれる。「ジカルボン酸モノマー」の語は、本開示では、説明の都合上、ジカルボン酸誘導体モノマー(半エステルおよび無水物)を含む。修飾語「モノマー」なしで使用される「ジカルボン酸」の語は、ジカルボン酸誘導体モノマーを含まない。
前駆体酸コポリマー中のモノカルボン酸モノマーは、メタクリル酸でも、あるいはアクリル酸でも、あるいはその両方でもよい。この3つの可能性は本開示では都合上、「エチレン/アクリル酸(メタクリル酸)コポリマー」の語を使用することによって参照される。
前駆体酸コポリマーは、1つ〜8つの炭素を含むアルキル群を有する最大40重量%のアクリル酸アルキルを含むこともできる。これはC1−C8−アルキルアルキルアクリレートとして指定される。アクリル酸アルキルが存在する場合、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
前記酸コポリマー中のジカルボン酸モノマーは、ジカルボン酸またはジカルボン酸の誘導体である。ジカルボン酸モノマーには、マレイン酸と、イタコン酸と、フマル酸と、これらの酸のC1−C4−アルキル半エステルと、無水マレイン酸と無水イタコン酸とを含むこれらの酸の無水物とが含まれる。好ましいモノマーは無水マレイン酸と、マレイン酸水素エチルと、マレイン酸水素メチルである。最も好ましいモノマーは無水マレイン酸である。これらのモノマーのカルボン酸または無水物ユニットは、モノカルボン酸カルボン酸ユニットの場合と同様に金属イオンで中和することができる。ただし、上記で指摘したように、ジカルボン酸モノマーの中和は、その性質と、溶融挙動を含むポリマー特性に対する効果が異なるものであってよい。ジカルボン酸を脱水してポリマー内(すなわち、架橋鎖間無水物ユニットではなく鎖内)に鎖内無水物ユニットを形成することができる。
本発明のイオノマーは、部分的に中和された酸コポリマーであり、中和モノカルボン酸ユニットおよび未中和モノカルボン酸ユニットと、モノ中和ジカルボン酸ユニットおよびモノ未中和ジカルボン酸ユニットと、鎖内無水物ユニットとを含むことができる。
前記酸コポリマー中のジカルボン酸モノマーの量は、0.15重量%〜15重量%であり、好ましくは0.5重量%〜10重量%である。0.15%よりも少ない場合、このモノマーから得られる有利な特性が実現されない。イオノマー中のジカルボン酸モノマー・レベルが高いと、特性は、モノカルボン酸ユニットがバックボーン・ユニットとしての効果を有するのと同様に、誘導されたユニットの効果をバックボーン・ユニットとして反映することができる。低レベル、特に2重量%以下でも、ジカルボン酸モノマーの効果は依然として強力であるが、ポリマーに対するモノマーのバックボーン・ユニットとしての構造的効果よりも、他のポリマーまたは基板と相互作用するモノマーの化学的能力(たとえば、適合化効果を有するか、あるいは改良された接着性を与える)に依存するようになる。ジカルボン酸モノマーが15重量%を超えると、重合化中にこのモノマーを取り込むにつれて問題が深刻化していく。ジカルボン酸モノマーのレベルが10重量%である場合、高レベルの酸機能およびモノマー・バックボーン効果が与えられ、それに対応する効果が特性に対して与えられる。
モノカルボン酸の量は2重量%〜25重量%である。前述のように、モノカルボン酸が存在すると、おそらく、中和のレベルが非常に低いときを除いて、コポリマーに顕著なイオノマー特性を与えるには不十分な部分的に中和されたエチレン/ジカルボン酸モノマージポリマーには存在しない制御可能性が与えられる。2重量%よりも低い場合、ターポリマーを含むジカルボン酸モノマーの流量増加は不十分である。
約5重量%を超える高いモノカルボン酸レベルでは一般に、ポリマー中のモノカルボン酸は、流量増加に必要な量よりも多くなる。そのようなポリマーは、バックボーン中の大量のモノカルボン酸モノマーの効果が必要である場合に有用である。一般的に言えば、モノカルボン酸の量が約8重量%よりも高い場合、接着効果またはポリマー適合化効果を与えるために比較的低レベルのジカルボン酸モノマーが使用される。これは、モノマーまたは誘導された無水物が反応部位として働くからである。一方、大量のジカルボン酸モノマーと少量のモノカルボン酸とを含むポリマーは、ジカルボン酸モノマーのバックボーン効果と接着/適合化効果の両方を反映することができ、メルトフローを与えるのに十分なモノカルボン酸を含むポリマーとみなすことができる。もちろん、この両極端のポリマー(高モノカルボン酸/低ジカルボン酸モノマーと、低モノカルボン酸/高ジカルボン酸モノマー)の中間のポリマー、すなわち、5重量%〜約12重量%のモノカルボン酸および2重量%〜8重量%のジカルボン酸モノマーの適度なレベルを有するポリマーも有効である。
コポリマー中に存在する総酸量が増加するにつて重合化は困難になる。これは1つには、ポリマーとモノマー・ミックスとの間の極性の差によるものである。モノマー・ミックスは、反応性の問題のために、酸モノマーの比率が、結果として得られるコポリマー中の(ポリマー・ユニットとしての)比率よりずっと低い。極性の差は相分離を引き起こす。そのため、約26重量%の総酸モノマーを含むポリマーを調製するのは容易ではない。総酸モノマーが4重量%よりも少ない場合、部分的に中和された樹脂に有意の程度のイオノマー特性を与えるのに十分な酸モノマーを前駆体酸コポリマー中に与えるには不十分である。
総コモノマー含有量も制限される。別々に存在する各コモノマーに上限があるが、総コモノマー含有量が50重量%を超えることはない。総コモノマーが50重量%よりも多いと、重合化は困難になる。
本発明のイオノマーの酸コモノマー前駆体物質は、高圧を使用して連続的に動作する標準遊離基共重合化法によって調製することができる。モノマーは、その反応性に関係する比率で、取り込みたい量だけ反応混合物に供給される。このように、鎖に沿ったモノマー・ユニットの一様な近無作為分布が達成される。未反応モノマーは再循環することができる。このような重合化は良く知られており、引用によって本明細書に組み込まれた米国特許第4351931号(Armitage)に記載されている。高酸レベルでは、いわゆる「助溶剤」技法を使用して、形成されるポリマーとモノマー・ミックスとの極性差が高いことによるモノマーとポリマーの相分離を防止すると有利である。この場合、酸モノマーの反応性が全般的に高いので、上記で指摘したように、酸モノマーの含有量はポリマーの含有量よりもずっと少なくなる。このことは、共に、やはり引用によって本明細書に組み込まれた、米国特許第5028674号(Hatch等)および第5057593号(Statz)に完全に記載されている。これらのポリマーは、ナイロン6、66、6/66、11、12などの非結晶ポリアミドまたは半結晶ポリアミドまたは結晶ポリアミド、およびポリアミドを形成することが知られているアルキルジアミンまたはアリルジアミンとジカルボン酸または無水物との他の既知の組合せに直接添加することができる。強化組成または多相組成を形成するには、本明細書で説明するイオノマーを含む無水物とポリアミドをブレンドするか、あるいは組み合わせることが好ましい。
モノカルボン酸とジカルボン酸モノマーは、反応性がいくらか異なるが、混合溶液として供給することができる。これらの酸の反応性はエチレンと比べて非常に高いので、すべての酸は、ポリマー中に必要なモノマーの量に必要な割合で導入されたときにほぼ転換される。
本発明のイオノマーの酸コポリマー前駆体ポリマーのメルトインデックス(MI)は、AASTM D−1238、条件E(190℃、重量2160g)を使用して測定したときには、約2g/10分〜500g/10分であり、好ましくは5g/10分〜250g/10分であり、最も好ましくは20g/10分〜200g/10分である。低MI前駆体ポリマーを、同じ酸含有量を有する高MIポリマーと同じ程度(中和率)に中和すると必ず、イオノマーの流量が低くなる。したがって、高MIポリマーを用いた場合、より高い中和が可能なので、金属イオン含有量を増加させ、したがってイオノマー特性を高めることができる。
本発明のイオノマーは、引用によって本明細書に組み込まれた米国特許第3264272号(Rees)で開示された標準中和技法によって調製することができる。この結果得られるイオノマー、すなわち本発明の組成物のMIは0.01g/10分〜100g/10分であり、好ましくは0.1g/10分〜30g/10分である。上記のパラグラフで定義した総中和率は、約5%〜90%であり、好ましくは10%〜70%であり、最も好ましくは25%〜60%である。中和レベルが低いとイオノマー特性が低下し、それに対して、レベルが高いとより流量の低いイオノマーが生成される。使用する金属イオンは、周期表の第I群または第II群の任意の金属イオンでよい。しかし、実際には、好ましい金属はナトリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム、カルシウム、またはこれらの混合物である。最も好ましい金属はナトリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウムである。
どんなモノマーが存在するかにかかわらず、コモノマーが50重量%よりも多いと、重合化が困難になる。
本発明の組成物に関しては多数の変数が可能であるので、請求した発明の骨組み内の変形形態の数は非常に多い。したがって、このポリマーは、可変酸コポリマー前駆体MIレベルと、可変レベルのモノカルボン酸モノマーおよび可変レベルのジカルボン酸モノマーとを有することができ、これらはそれぞれ、異なるモノマーであってよい。この結果得られるイオノマーは、総中和率と、中和に使用される特定の金属と、最終MIが異なるものになる。どの特定の1組の組成変数によって特定のニーズまたは応用例に最適なポリマーが生成されるかを判定することは、当業者の能力の範囲内である。それにもかかわらず、ある好ましい組成がある。
高モノカルボン酸/低ジカルボン酸モノマー・タイプの組成物では、少なくとも6重量%のモノカルボン酸を有することが好ましく、少なくとも8重量%のモノカルボン酸を有することがより好ましいが、ジカルボン酸モノマーは、3重量%以下であり、好ましくは2重量%よりも少なく、最も好ましくは1.5重量%よりも少ない。これらの種類の組成物では、ジカルボン酸モノマーの機能は、モノカルボン酸/イオノマーから与えられる特性に、他のポリマーに適合する能力を高めることなど追加の特性を与えることである。多くのポリマーは、従来型のモノカルボン酸のポリマーに類似したものとなる。このような追加の特性を与えるには比較的低いレベルのジカルボン酸モノマーしか必要とされず、1.0重量%程度、場合によっては約0.5重量%のジカルボン酸モノマーでこのような追加の特性が与えられることが判明している。
高ジカルボン酸モノマー/低モノカルボン酸タイプの組成物では、少なくとも5重量%のジカルボン酸モノマーと5重量%以下のモノカルボン酸とを有することが好ましい。ジカルボン酸モノマーのレベルが高くなるにつれて、イオノマーの特性はますます、ジカルボン酸モノマーから誘導された鎖内ユニットに依存する特性に関係するものとなる。一般に、5重量%のモノカルボン酸は、ジカルボン酸モノマーしか含まないポリマーに勝る改善された流量を与えるのに十分なものである。しかし、ジカルボン酸モノマーのレベルがより高い場合は一般に、より高いレベルのモノカルボン酸モノマー必要であり、適切なメルトフローを確保するためにより低い中和レベルが必要である。適切なモノカルボン酸と中和レベルの適切なバランスを決定し、適切なメルトフローを有する高ジカルボン酸モノマー・ユニットを有するポリマーを形成することは当業者の能力の範囲内である。前述の制限内の十分なモノカルボン酸を用いた場合、取り込むことができ、依然としてメルトフローを達成することができるジカルボン酸モノマーの量は驚くほど高い。最大で15重量%のジカルボン酸モノマーが可能である。ただし、この場合、前述の範囲のより低い部分の中和レベルが必要になる。
特定の理論には傾倒しないが、モノカルボン酸も存在する部分的に中和されたジカルボン酸モノマーコポリマーでは、ジカルボン酸モノマー・タイプの酸コポリマーしか含まない部分的に中和されたコポリマーと比べて流量が増加することは以下のように説明できると考えられる。部分的に中和された酸コポリマー溶融物にせん断力が加わると、架橋として働く金属イオン・クラスタが単に破壊されることによって制御可能性が達成され、それによって金属イオンは離散カルボキシル酸基に結合される。この場合、金属イオンはクラスタから移動し、未中和酸基に結合し、すなわち金属イオンと水素イオンが交換される。金属イオン/水素イオン交換は、金属イオン/金属イオン交換よりも高速であると考えられ、このため、モノカルボン酸しか含まないコポリマーの場合でも、流量を達成するには完全な中和が不可欠である。ジカルボン酸の場合、金属イオンをジカルボン酸ユニット中の残留水素イオンと交換するには、まったく中和されていないジカルボン酸ユニットに隣接する位置に完全に中和されたジカルボン酸ユニットを形成する必要がある。これは、ある酸基が中和されるときの第2の酸基のpKに関する平衡問題のために、それほど好ましくない条件ではなく、あるいは近傍の酸基の効果によってある種の抑制になる。しかし、特定の理由にはかかわらず、モノカルボン酸が存在すると、対応するモル量の総酸および中和率に関して流量が増加する。
モノカルボン酸が存在することによる流量面の利点だけでなく、エチレン/モノカルボン酸/ジカルボン酸モノマーイオノマーでは、ジカルボン酸モノマーしか有さないエチレン/酸コポリマーをベースとするイオノマーと比べて、他の特性も向上する。したがって、本発明のイオノマーでは、適合化樹脂として働く能力と、樹脂が様々な基板に付着する能力が向上する。これは、ジカルボン酸が、反応性の高い鎖内無水物ユニットを容易に形成することができ、あるいはジカルボン酸モノマー自体が無水物であり、そのような無水物ユニットを直接与えるためであると考えられる。この場合も特定の理論には傾倒しないが、部分中和に関しては、無水物ユニットのかなりの部分が中和されず、他のポリマー中の半分とさらに化学的に相互作用することができるために様々な利点が与えられると考えられる。
強化ポリアミド組成物を調製するには、前述のイオノマーまたはポリマーをポリアミドに添加する。さらに、工学的材料を含む成形品を形成するために使用される、強化組成物中の様々な一次成分の重量百分率は、イオノマーを含む少なくとも1つの無水物が1wt.%〜55wt.%であり、ポリアミドが45%〜99%である。イオノマーを含む無水物を他の熱可塑性ポリマーとブレンドまたは溶融ブレンドし、次いで成形または押出し成形して成形品を作製し、あるいは組立て部品または皮膜を形成することもできる。そのような他の熱可塑性ポリマーには、無水物含有イオノマーが適合するポリマーが含まれ、かつオレフィンポリマーと非オレフィンポリマーの両方、またはそのようなポリマーのグラフト態様が含まれる。無水物含有イオノマーまたはポリマーは、米国特許第5346963号に記載されたメタロセンポリマーなどほぼ線状のエチレンポリマーと混合することも、あるいは従来型の異質分岐線状エチレンポリマーまたは均質分岐線状エチレンポリマー、ポリアミドに代わる非オレフィンポリマー、あるいはこれらのポリマーの組合せとブレンドすることもできる。そのようなポリマーの例には、高密度ポリエチレン(HPDE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、ポリプロピレン、エチレンプロピレンコポリマー、エチレンスチレンコポリマー、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)コポリマー、エチレン/アクリル酸(EAA)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)、エチレンおよび一酸化炭素、またはエチレン一酸化炭素およびアクリル酸、またはエチレン、プロピレン、一酸化炭素のポリマーなどが含まれる。非オレフィンポリマーは、ポリエステル、塩化ポリビニル、エポキシ、ポリウレタン、ポリカルボネートなどから選択され、好ましい非オレフィンも同様にポリアミドから選択される。
1つまたは複数のポリマー、好ましくは相溶性ポリマーとブレンドできるポリマーまたはイオノマーを含む無水物の量は、可変であり、他のポリマーの性質、ブレンドの所期される用途、添加剤の有無、添加剤が存在する場合のその性質などを含め多数の因子に依存する。ポリマーまたはイオノマーを含む無水物をLLDPEやHDPEやPPなどのポリオレフィンポリマーとブレンドする応用例では、ブレンドは、ポリマーまたはそのイオノマーを含む1wt.%〜70wt.%の無水物、または好ましくは約5%〜55%のイオノマーまたはポリマーを含む上記の無水物のブレンドを含む。ワイヤおよびケーブルは、そのようなブレンドの最終用途である。これらの材料が存在すると、イオノマーまたはポリマーを含む上記の無水物を含む組成物に、改善された衝撃特性および強度特性が与えられる。これらのポリマーブレンド、あるいはイオノマーまたはポリマーを含む無水物はさらに、充填剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、粘着付与剤、芳香剤など追加の原料を含むことができる。これらの添加剤は、既知の方法によって取り込まれる。ある種の状況では、イオノマーを含むこのような無水物を、前述のSURLYN(登録商標)またはNUCREL(登録商標)の商標で販売されているようなイオノマーまたはポリマーを含む他の非無水物とブレンドすると有用である。
好ましい応用例では、イオノマーを含む無水物をポリアミドと前述の比率でブレンドする。前駆体ポリマーおよびそれから誘導されたイオノマー中のジカルボン酸コモノマーの好ましい範囲は、コポリマーの総重量を基準として0.1wt.%〜6wt.%である。ジカルボン酸コモノマーの最も好ましい範囲は0.4wt.%〜3.0wt.%である。ポリアミドとブレンドされたイオノマー中の最も好ましいコモノマーは、マレイン酸水素エチルやマレイン酸水素メチルなど、無水マレイン酸および無水物のモノエステルである。イオノマーを含む無水物の中和の好ましい範囲は30%〜80%であり、最も好ましい陽イオンは亜鉛である。また、イオノマーを含む無水物または前駆体ポリマーを含む無水物をポリアミドとブレンドして強化組成物を形成することができる。
適切なポリアミドは、総称的に、反復アミド結合を含むポリマーとして記載されている、広範囲な既知の市販のポリアミドから選択される。ポリアミドのモノマー組成物は、アリルジアミンまたはアルキルジアミン、およびジカルボン酸または無水物、あるいはそれらの誘導体から選択される。適切なポリアミドの物性には、非結晶ポリアミド、すなわち標準DSC測定による非結晶と、半結晶ポリアミドまたは結晶ポリアミドが含まれる。
例
試験手順
メルト・インデックス(MI)については、ASTMD−1238および2160gの錘を使用して測定し、190℃で測定する。
差走査熱量測定法(DSC)およびDupont Thermal Analyzerを使用して融点(Tm)を測定した。
以下のように剥離強度を測定した。Killionブロー成形フィルム・ラインで3層ブロー成形フィルムを作製した。試験中のイオノマー層は、ポリエチレン(LLDPE)とナイロン(6ナイロン)との間の内側層を形成する。幅1インチ(2.54cm)長さ5インチ(12.7cm)のフィルム試料を切り取り、50%の相対湿度で2カ月間老化させた。まず、1インチ(2.54cm)のナイロン外側層をイオノマー層から剥離する(イオノマー層とポリエチレン層は分離不能である)。ナイロン層をInstron(登録商標)引張試験機の上部ジョーにクランプ止めし、基板層を下部ジョーにクランプ止めする。次いで、毎分12インチ(30.48cm)のクロスヘッド速度で試料を剥離する。表(表3)に示したデータは各材料ごとの5回の試験の平均を表す。
ASTMD−638および射出成形棒を使用して引張強度を測定した。
ASTMD−256および射出成形試料を使用してアイゾッド衝撃を測定した。成形棒は長さ5インチ(12.7cm)、幅1/2インチ(1.27cm)、厚さ1/8インチ(0.32cm)であった。棒を半分に切り、ゲートから1 1/4インチ(3.17cm)(ゲートの近傍、表ではGとしてリストされている)およびゲートから3 3/4インチ(9.53cm)(ゲートから遠方、表ではFとしてリストされている)の位置にノッチを形成した。表4のデータからわかるように、成形中の可能な配向のために、2つの位置に関して衝撃結果が異なることがある。
パーセントとして報告される曇り度については、ASTMD−1894−63と、厚さが10ミルの油圧プレス成形フィルムを使用して測定した。
やはり厚さ10ミルのプレス成形使用を使用し、ASTMD−1922を使用してエルメンドルフ引裂き強さを測定した。
厚さ10ミル、幅1/2インチ(1.27cm)、長さ8インチ(20.32cm)のプレス成形フィルム・ストリップに対してクリープ試験を行った。100℃に設定された炉内で100gの錘を用いてフィルムを吊り下げた。錘が落下した時点でクリープ時間を求めた。この手順を使用して、水がシールを破壊することがある沸騰水応用例に関する指針を得た。
ASTMD−790および射出成形棒を使用して曲げモジュラスを測定した。
表7および表8に示したナイロン混合物を二軸押出機で調製した。
無水マレイン酸とマレイン酸水素エチルのどちらかを含む実験ポリマーを試験工場で前述のように調製した。無水マレイン酸またはマレイン酸水素エチルをメタクリル酸またはアクリル酸と混合し、約240℃および約27000p.s.i.で稼動される試験工場のオートクレーブに供給する均質溶液を形成した。
赤外線吸収を使用してポリマーの組成を判定した。メタクリル酸またはアクリル酸の含有量は940cm-1と求められ、無水物の含有量は1783cm-1と求められた。無水物形成モノマーがIR分析用の無水物に転換されるように、プレス成形フィルム・サンプルを290℃で1分間処理した。この処理によってほぼ100%のモノマーが無水物に転換されると考えられる。表1の、分析による組成をリストした列に示したマレイン酸水素エチルおよびイタコン酸の含有量は、IRで求められた無水物の重量を基準としてモノマーの重量から算出された(すなわち、分子量に対する比率として算出された)重量%を示す。
炭酸ナトリウム(11重量%のメタクリル酸を含むエチレン/メタクリル酸コポリマーにおいて45重量%であり、メルトインデックスが100g/10分)または酸化亜鉛(同じ酸コポリマー中の30重量%の濃縮物)、あるいはそれらの混合物を含む濃縮物と反応させることによって酸コポリマーをイオノマーに転換した。この反応については、二軸押出機内で生じさせ、ポリマーのスループット・レートの約3%に相当する率で一定の脱イオン水流を射出することによって推進した。
本発明のイオノマーの他のポリマーとのブレンドは、混合スクリューを有する二軸押出機を使用し融点220℃〜250℃を使用して行うか、あるいはHaake Rheocord 90メルトミキサで温度約230℃で行った。表4に示したナイロンブレンドを押出しによって調製し、それに対してHaakeミキサを使用して表5のナイロンブレンドを調製した。ポリ(エチレングリコール)とのブレンド(すなわち酸化ポリエチレン)もHaakeミキサで調製した。
表1は、本発明のイオノマーを調製するために中和された(あるいは中和されるのに適した)酸前駆体ポリマーをリストしたものである。表2は、本発明のイオノマーをリストしたものである。表3、4、5、6は、本発明のイオノマーのいくつかの特性と、ナイロンまたは酸化ポリエチレンとブレンドされたこのようなイオノマーのいくつかの特性とを示す。このようなブレンドは、本発明のイオノマーの相溶化剤またはブレンド樹脂としての効果を示す働きをする。様々な効果について以下で説明する。
表2は、本発明の樹脂のメルト・インデックス(MI)またはメルトフロー(標準MIに関する温度以外の温度で測定される流量)を示す。モノカルボン酸とジカルボン酸モノマーの両方を含むすべての樹脂は、測定可能であり、場合によっては極めて高いMIを示す。これに対して、従来技術では不十分な流量が報告されている。一般に、亜鉛中和樹脂はナトリウム中和樹脂よりも良好な流量を示す。酸前駆体ポリマー中の分析されたマレイン酸水素エチルレベルが9%であっても、モノカルボン酸が存在するときには流動が可能である(前駆体物質14、表1)。ナトリウム中和イオノマーは特に良好に流動するわけではない(例24および25)が、この前駆体物質のナトリウム/亜鉛混合イオンイオノマーは優れた流量を示す(例32)。これに対して、目標組成E/マレイン酸水素エチル95/5のポリマー(モノカルボン酸を有さない前駆体物質1C)は、ナトリウム、亜鉛、またはナトリウム/亜鉛ブレンドで中和されると(例2C、3C、4C)完全に制御不能になる。この例は、従来技術で報告された制御不能性を確認するものである。
表3は、本発明の様々なイオノマーを使用して6−ナイロンおよびポリエチレンを接着したときの引き剥がし粘着力を示す。フィルム例F−1〜F−4は、モノカルボン酸モノマーとジカルボン酸モノマーとを含むイオノマーが、モノカルボン酸のみを唯一の酸コモノマーとして含むイオノマーよりも優れた粘着力を示すことを示す。例F−C3はイオノマーではなく酸コポリマーであるので本発明の例ではない。しかし、この例が、モノカルボン酸を唯一の酸コモノマーとして含む酸コポリマーをベースとするイオノマーよりも優れた粘着力を与えることも判明した。
表4は、本発明のイオノマーを使用してナイロン6を強化すると、衝撃抵抗が、場合によっては−30℃でも、相当する量の従来型のモノカルボン酸イオノマーを使用して得られるよりもずっと優れたものになることを示す。この例では、ナイロン/イオノマーブレンドに含まれるイオノマーは50重量%よりも少ない。
表5は、他の一連のナイロン/イオノマーブレンドを示す。しかし、この場合、ナイロンは50重量%以下であり、前述の強化の場合とは異なり、ナイロンはイオノマーの耐クリープ性を増大させるために使用され、ナイロンの剛性を増大させるためにイオノマーが使用されている。この表は、ナイロンで修飾された本発明のイオノマーが、ナイロンで修飾された従来型のモノカルボン酸イオノマーよりもクリープが著しく少ないことを示す(クリープ時間がより長い)。従来型のSurlyn(登録商標)を場合によっては50%のナイロンとブレンドしてもクリープは改善されない。また、本発明のイオノマーをナイロンとブレンドした場合の曇り度は、場合によってはより高いナイロン・レベルでも従来型のイオノマーとのブレンドよりずっと低い。
表6は、ある種の酸化ポリエチレン(PEO)を本発明のイオノマーとブレンドすることによって達成できる引裂強さの向上を示す。従来型のイオノマーと本発明のイオノマーは共に、ヒドロキシル末端基を有する高分子量の酸ポリエチレンとブレンドされたときにわずかな改善しか示さないが、どちらのイオノマーも、メチルエーテル末端を有するより分子量の低いPEOを用いた場合にずっと大きな改善を示す。しかし、両方のPEOタイプを用いた場合、引裂強さは本発明のイオノマーの方がずっと向上する。本発明のイオノマーは実際には、より分子量の多い酸化ポリエチレンを用いても流量の向上をまったく示さず、そればかりか流量の低下を示す。高分子量のPEOは、従来型のイオノマーと本発明のイオノマーの両方の場合に、ヘーズを大幅に向上させる。しかし、本発明のメチルエーテル末端低分子量PEOイオノマーを用いた場合、流量はある程度向上しており、曇り度は、従来型のイオノマーと本発明のイオノマーのどちらかのみと比べて低下する。低分子量メチルエーテル末端PEOが、選択すべきPEOであり、本発明のイオノマーを用いた場合に引裂強さの向上に対してずっと大きな効果を有することは明らかである。
表7は、ナイロン66などのポリアミドとブレンドされたイオノマーを含む無水物を使用した例および比較例を要約したものである。使用したナイロン66(B−C14)は、E.I.DuPont de Nemours and Companyから入手できる市販のナイロン66、ZYTEL(登録商標)である。比較例には、DuPont社から販売されているグラフトされたEPDMを含む市販のスーパータフ・ナイロン66、ZYTEL(登録商標)ST801(B−C15)と、DuPont社からSURLYN(登録商標)の商標で販売されているイオノマーを含む非無水物(B−C16、B−C17、B−C18)が含まれる。例B−9〜B−16で使用したイオノマーと、それらの前駆体物質は上記のように番号付けされている。ASTMD−1238と、280℃で測定された2160gの錘とを使用して、ブレンドのメルト・インデックを測定した。表7の結果は、未修飾ナイロン66(B−C14)は、強度は高いが衝撃抵抗が不十分であることを示す。ZYTELST 801(B−C15)は優れた衝撃抵抗を示したが、曲げモジュラスを大幅に減少させた。市販の非無水物は、限界衝撃抵抗を与える(B−C18)か、あるいは衝撃抵抗を向上させた(軟イオノマーB−C16およびB−C17)が、強度を低下させた。一方、B−9〜B−14など本発明の例は、優れた衝撃抵抗および高い機会強度を示した。また、軟化アクリル酸コモノマーを有さないイオノマーを含む無水物は、引張モジュラスが20000p.s.iよりも大きく、軟化モノマーを含む無水物(B−15)の方が引張モジュラスが低かった。また、本発明の例では粘度が向上した。これは、ブロー成形などより高い粘度が必要な応用例で顕著な利益を与える。
表8は、ポリアミドナイロン6用の調節剤として使用されるイオノマーを含む無水物の例および比較例を要約したものである。使用したナイロン6(B−C19)は、BASF社から販売されている市販のナイロンULTRAMIDE(登録商標)B3である。例B−17〜B−22で使用したイオノマーとその前駆体物質は、相互参照できるように番号付けされている。ASTMD−1238と、280℃で測定された2160gの錘とを使用して、ブレンドのメルト・インデックを測定した。
表8の結果は、未修飾ナイロン6は、強度が高いが衝撃抵抗が不十分であったことを示す。市販のイオノマーは、限界衝撃抵抗を与える(B−C20)か、あるいは衝撃抵抗を向上させたが強度を低下させた(B−C21)。本発明の例をポリアミドブレンドとして含む無水物は、優れた衝撃抵抗と高機械強度の両方を示した。B−20では、コモノマーはイタコン酸であり、B−21ではマレイン酸水素エチル(4wt.%)であった。例B−22は、優れた衝撃抵抗を示し、イオノマーとポリエチレンとを含む無水物などのブレンドがポリアミド用の調節剤として適していることを示す。この例では、ブレンドは、イオノマーを含む10wt.%無水物と、10wt.%の市販のポリエチレンとを含み、密度が0.81であり、ASTMD−1238によって190℃で測定されたメルト・インデックスは10decg/分であった。このポリエチレンは、DOW社からENGAGE(登録商標)8100として市販されている。ナイロン6と他の2つの原料を二軸押出機内で直接混合することによってこのブレンドを調製した。
通常、衝撃抵抗を加えるようにナイロンを修飾するには軟質ゴム状調節剤が好ましい。たとえば、Epsteinの米国特許第4173358号は、このような調節剤の引張モジュラスを20000psiより低くすることを開示している。この手法では、修飾されたナイロン材料の機械強度が犠牲になる。本発明は、機械強度の高い非ゴム状イオノマーが、このイオノマーを含むポリアミドブレンドで高衝撃抵抗と高機械強度の両方を達成できることを実証する。表7および表8で使用したサンプルは、引張モジュラスが20000psiよりも大きな本発明のイオノマーが優れた衝撃抵抗を加えることができることを示す。分析による約19wt.%のアクリル酸n−ブチルを含む表1のサンプル8の前駆体酸コポリマーをベースとする表2の例11は軟イオノマーである。この例は、表7の混合物例B−12に示したように、優れた衝撃抵抗を加えるが、ブレンドサンプルは曲げモジュラスが低い。本発明の修飾されたナイロンが溶融粘度の向上を示し、ブレンドのブロー成形フィルムが良好な光学透明度を保持することも判明した。
ナイロン材料の溶融粘度を向上させ、かつ/あるいは制御することは、ブロー成形物およびブロー成形フィルムの製造など、ナイロンに関するある種の転換プロセスにとって重要である。表9に示したように、B−C19(ナイロン6)、B−23、ナイロン6と10wt.%の酸コポリマーとのブレンド(サンプル9、表1)、B−24、ナイロン6とイオノマーとのブレンド(例39、表2A)の粘度を比較した。Kayeness Test Instrument社によって製造されている溶融毛管レオメータで250℃で溶融粘度を測定した。表9で報告したデータは、せん断速度10.0/秒での溶融粘度である。メルトフローについては、ASTMD−1238と2160gの錘を使用し、240℃でメルト・インデックスで測定した。ブレンド例の粘度は大幅に向上した。3/4インチ(1.91cm)押出機と1インチ(2.54cm)ブロー成形フィルム・ダイとを含む実験室ブロー成形フィルム機器でブロー成形フィルムを作製した。B−C19からブロー成形フィルムを作製することは困難であり、結果として得られたブロー成形フィルムは厚さが約5ミル〜6ミルであった。B−23とB−24ではどちらの場合も、2ミル〜3ミルの高品質のブロー成形フィルムが作製された。ASTMD−1003によって曇り度を測定した。
Claims (11)
- 酸コポリマー前駆体物質から部分的に中和して得られたイオノマーを含む組成物であって、該酸コポリマー前駆体物質が、
(a)エチレンと、
(b)2〜25重量%のアクリル酸および/またはメタクリル酸と、
(c)マレイン酸と、フマル酸と、イタコン酸と、無水マレイン酸と、無水イタコン酸と、マレイン酸のC1−C4−アルキル半エステルと、これらのジカルボン酸モノマーの混合物とからなる群から選択される0.1〜15重量%のジカルボン酸モノマーと、
(d)0〜40重量%のC1−C8−アルキルアルキルアクリレートと、
を含むモノマーから誘導された重合化鎖内ユニットを有し、
イオノマーが、ナトリウムと、亜鉛と、リチウムと、マグネシウムと、カルシウムと、これらの混合物とからなる群から選択される金属イオンでコポリマー中のカルボン酸ユニットの総数の5〜90%を中和することによって形成され、
アクリル酸および/またはメタクリル酸およびジカルボン酸モノマーの総量が酸コポリマー前駆体物質の4〜26重量%であり、さらに、前記(b)〜(d)に特定されたコモノマーの総含有量が酸コポリマー前駆体物質の50重量%を超えず、
イオノマーのASTM D−1238、条件E(190℃、重量2160g)により測定されたメルト・インデックスが0.01〜100g/10分であることを特徴とする組成物。 - 前記メルト・インデックスが0.1〜30g/10分であり、中和レベルが10〜70%であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 酸コポリマー前駆体物質のモノカルボン酸含有量が少なくとも8重量%であり、ジカルボン酸モノマー含有量が3重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- ジカルボン酸モノマー含有量が1.5重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
- ジカルボン酸モノマー含有量が少なくとも5重量%であり、総モノカルボン酸が10重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 熱可塑性組成物であって、
(i)非結晶ポリアミドまたは半結晶ポリアミドまたは結晶ポリアミドあるいはそれらの混合物から選択されるポリアミドと、
(ii)
(a)エチレンと、
(b)2〜25重量%のアクリル酸および/またはメタクリル酸と、
(c)マレイン酸と、無水マレイン酸と、マレイン酸のC1−C4−アルキル半エステルと、フマル酸と、イタコン酸と、無水イタコン酸とからなる群から選択される0.1〜15重量%のジカルボン酸モノマーと、
(d)0〜40重量%のC1−C8−アルキルアルキルアクリレートと、
を含むモノマーから誘導された鎖内重合化ユニットを有する酸コポリマー前駆体物質から部分的に中和して得られたイオノマーと、を含み、
該イオノマーが、ナトリウムと、マグネシウムと、リチウムと、亜鉛と、カルシウムと、これらの混合物とからなる群から選択される金属イオンでコポリマー中のカルボン酸ユニットの総数の5〜90%を中和することによって形成され、
アクリル酸および/またはメタクリル酸およびジカルボン酸モノマーの総量が4〜26重量%であり、前記(b)〜(d)に特定されたコモノマーの総含有量が50重量%を超えず、さらに、前記(i)のポリアミドと前記(ii)のイオノマーとの総重量に基づき、前記(i)が45〜99重量%の範囲で存在し、前記(ii)が1〜55重量%の範囲で存在することを特徴とする熱可塑性組成物。 - ポリアミドがナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン11、またはナイロン12から選択されることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性組成物。
- ジカルボン酸コモノマーが、コポリマーの総重量に対する0.1〜6重量%の重量百分率範囲で存在することを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性組成物。
- ジカルボン酸コモノマーが、無水マレイン酸、あるいはマレイン酸水素エチルまたはマレイン酸水素メチルから選択されるモノエステルから選択されることを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性組成物。
- イオノマーの金属が亜鉛から選択されることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性組成物。
- 成分(d)の重量%が0.1〜20%であることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性組成物。
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