(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における積層基板の製造方法のフローチャートであり、図2は、同積層基板の断面図であり、図3から図16は、本実施の形態1における積層基板の製造方法における各工程の詳細図である。なお、図1から図16において、従来と同じものは同じ番号とし、その説明は簡略化してある。
まず図2を用いて本実施の形態1における積層基板の構成を説明する。図2において、101は熱硬化性の樹脂基板であり多層に形成されている。そして、この層内はインナービア(図示せず)で各層の上面と下面が接続されている。また、各層の上面には銅箔パターン(図示せず)が敷設され、各電子回路を形成している。
そして、この基板101の上面には、ランドパターン104a,104bが形成されており、この基板101の上面に載置された半導体素子(電子部品の一例として用いた)105とランドパターン104aの間ははんだバンプ102で接続され、一方抵抗(電子部品の一例として用いた)106とランドパターン104bとの間は、はんだ(接続固定材の一例として用いた)107で接続されている。
なお、このはんだ107には、錫・銀・銅系を用いた鉛フリーはんだを用いている。これは有害な物質を含まず、環境へ悪影響を与えないためである。また、このはんだ107の代わりに、熱硬化性を有する導電性接着剤を用いることもできる。導電性接着剤を用いると、この導電性接着剤ははんだより溶融温度が高いので、例えば、近傍ではんだ接続等をして高温環境にしても半導体素子105や抵抗106が基板101から外れることはない。
108は、基板101と銅箔パターン109との間に挟まれた熱硬化性の樹脂であり、半導体素子105や抵抗106の外周を隙間がないように覆っている。
次に、本実施の形態1における積層基板の製造方法における各工程について、図1に示す工程の順に図3から図16を用いて説明する。図1は本実施の形態1における積層基板の製造フローチャートであり、図3は、フラックス塗布工程における積層基板の断面図である。図1、図3において、111は、フラックス塗布工程である。このフラックス塗布工程111では、半導体素子105(図5に示す)を装着するためのランドパターン104a上に、メタルスクリーン(図示せず)によってフラックス112を印刷する。
図4は、本実施の形態1におけるクリームはんだ印刷工程における積層基板の断面図である。図1、図4において、113は、フラックス塗布工程111の後に設けられたクリームはんだ印刷工程である。このクリームはんだ印刷工程113では、抵抗106(図5に示す)を装着するためのランドパターン104b上にスクリーン131を用いて、クリームはんだ2(接続固定材の一例として用いた)を印刷する。なお、このスクリーンはステンレス製のメタルスクリーンを用い、このスクリーン131には、フラックス112が塗布された位置に凹部126を形成してある。そしてこの凹部126は、クリームはんだ2印刷時に、フラックス112がスクリーン131に付着することを防ぐものである。
図5は、本実施の形態1の電子部品装着工程における積層基板の断面図である。図1、図5において、114はクリームはんだ印刷工程の後に設けられた電子部品装着工程であり、この電子部品装着工程114では、半導体素子105や抵抗106などが、自動実装機によって基板101の所定位置に装着される。なお、この半導体素子105の下面105b側には、複数のはんだバンプ102が形成されているものを用いる。
図6は、本実施の形態1のリフロー工程における積層基板の断面図である。図1、図6において、115は電子部品装着工程の後に設けられたリフロー工程であり、このリフロー工程115では、クリームはんだ2を融点温度よりも高くすることによって、クリームはんだ2を溶融させて、抵抗106とランドパターン104b、半導体素子105のバンプ102とランドパターン104aとをはんだ付け固定している。なお、本実施の形態1においては、このリフロー工程115は窒素雰囲気で行っている。これによって、基板101の表面の酸化を抑えることができ、基板101とプリプレグとの密着性を良くしている。
なお、このリフロー工程115の後に洗浄工程(図示せず)で洗浄し、フラックス112の残渣やはんだボールなどを清浄化している。そしてさらに、O2アッシャー処理や、シランカップリング処理などを行うとさらに良い。これは、これらの表面改質処理によって、基板101とプリプレグとの密着性を向上させることができるためである。
なお、本実施の形態1において、リフローはんだ付けを用いているのは、品質が高く良質なはんだ付けをするためであり、このリフローはんだ付けによれば、セルフアライメント効果によって、リフローはんだ付けされた部品は定位置に固定される。従って、部品が精度良く固定されるので、この部品に続くパターン線路の長さが一定になる。つまり、パターン線路をインダクタとして用いるような場合において、インダクタンス値が一定になり、電気性能が定められた値になる。このことは高周波回路においては特に重要なことである。
116は、リフロー工程の後に設けられた宙吊り工程であり、この宙吊り工程116では予め孔加工工程117で孔136,137が加工されたプリプレグ12を、それぞれの基板101の上方に宙吊り状態で保持させる。そして、このようにして宙吊りされたプリプレグ12は、減圧・積層工程118で基板101上に積層され、この減圧・積層工程118の後の一体化工程119で基板101と一体化される。
図7は、本実施の形態1の一体化手段の断面図であり、この一体化手段132は、宙吊り工程と真空化・積層工程ならびに一体化工程119を通して使用するものである。図7において、141,142はプラテン(圧縮手段の一例として用いた)であり、プラテン142側に基板101が搭載される。
そしてこのプラテン141,142と、伸縮壁143とによって、密封容器144(密閉手段の一例として用いた)が構成される。そして、この密封容器144には吸引機(真空化手段の一例として用いた、図示せず)が接続されている。なお、本実施の形態1においては、プラテン142の外周部近傍に設けられた孔145から密封容器144内の空気を吸引する。
146は、プラテン141,142内に埋め込まれたヒータ(加熱手段の一例として用いた)であり、このヒータ146によってプリプレグ152を加熱する。147は、サーボモータ(駆動手段の一例として用いた)であり、プラテン142側に連結され、プラテン142を駆動するために用いている。なお、本実施の形態1においてはプラテン142に対して良好な応答性を得る為にサーボモータを用いている。そしてさらに、サーボモータ147とプラテン142との間には、減速機構148が挿入される。そしてこの減速機構148では、サーボモータ147の回転運動を往復運動へと変換するとともに、サーボモータ147を減速している。なお、本実施の形態1における減速機構148にはボールナット軸受けを用いている。従ってプラテン142の位置を精密に制御できる。
そして、プラテン141,142には温度センサと、圧力センサと、位置センサ(図示せず)とを設け、これらセンサの出力と、メモリ(図示せず)とが、制御回路(図示せず、駆動手段制御回路、ならびに加熱手段制御回路の一例として用いた)の入力へ接続されている。そして、この制御回路の出力はサーボモータ147の入力、ヒータ146の入力と、真空化手段へ接続され、それらの動作を制御している。なお、この制御回路には、クロックタイマの出力が接続されており、一体化工程119における時間の管理も行っている。また、本実施の形態1においては、エポキシ樹脂108は温度によって粘度が変化するため、このエポキシ樹脂108の粘度を温度に置き換えて管理している。さらに、メモリには、一体化工程119におけるセンサ出力に対する判定条件をデータとして格納し、制御回路はこれらのデータと各センサからの出力とを比較・判定し、ヒータ146やサーボモータ147あるいは真空化手段などを制御しているものである。
なお、プラテン141には、このプラテン141に設けられた支軸133へ回動自在に連結された保持爪151を有している。この保持爪151は、バネ(図示なし)によって内側方向に向けて付勢されており、プリプレグ152(シートの一例として用いた)を挟んで保持する。なお、この保持爪151の先端には突起151aが設けられており、この突起151aによってプリプレグ152が落下しないように保持されている。そして、本実施の形態1においては、これらプラテン141と保持爪151とによって宙吊り手段を構成する。
そして、116は、リフロー工程115の後に設けられた宙吊り工程であり、基板101上方にプリプレグ152を宙吊りで保持する工程である。そして、この宙吊り工程116における宙吊り手段は、プリプレグ152を保持爪151で挟むことで、プリプレグ152が基板101と対向するように保持し、プリプレグ152と半導体素子105や抵抗106とが接触しないようにしている。これによって、半導体素子105や抵抗106とプリプレグ152との間、さらに基板101とプリプレグ152との間に隙間153を形成させる。
ここで、プリプレグ152は、孔加工工程117で予め孔154,155が加工されたものであり、孔154は、半導体素子105に対応する位置に設け、孔155は、抵抗106に対応する位置に設けている。そして、プラテン142の所定の位置に基板101を搭載したときに、プリプレグ152は、孔154,155と半導体素子105、抵抗106との位置が対応するように宙吊り保持される。
なお、プリプレグ152とプラテン141との間には、プリプレグ152上面全体に銅箔156が設けられている。
なお、本実施の形態1におけるプリプレグ152は、ガラス不織布に熱硬化性樹脂を含侵させ、乾燥させたものである。また、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いているが、これは、フェノールなど他の熱硬化性樹脂を用いても良い。さらに、ガラス不織布を用いたが、これはガラス織布であるとか、他のアラミド樹脂などの樹脂系繊維などによる布を用いても良い。
図8、図9は、本実施の形態1の真空化・積層工程における一体化手段の断面図である。図1、図8、図9において、118は、宙吊り工程116の後に設けられた真空化・積層工程である。この真空化・積層工程118では、吸引機によって、孔145から密封容器144内の空気を抜き取り、密封容器144内を略真空状態となるまで減圧化する。
本実施の形態1においては、密封容器144内の圧力が低下するに従って、伸縮壁143が縮まり、図8に示すように、プラテン142が矢印A方向へと持ち上げられる。そして、図9に示すように、基板101とプリプレグ152と銅箔156とは完全にプラテン141とプラテン142との間に挟まれて保持される。このように密封容器144内を真空化することによって、プリプレグ152には、約0.2MPaの負圧がかかった状態で、基板101上へ積層されることとなる。
このとき、孔154,155と半導体素子105あるいは抵抗106との間にできる空隙161,162内が略真空となることが重要である。つまり、本実施の形態1において、基板101と半導体素子105との間の狭い隙間163は、約40μmから約350μmの寸法であり、基板101と抵抗106間の狭い隙間164は約10μmから約40μmであり、共に非常に小さいものである。
従って、このような狭い隙間163,164へ樹脂を充填するのは困難である。そこで、宙吊り工程116の後に真空化・積層工程を設けることで、隙間153を有した状態で空気を抜き取ることができる。これにより、プリプレグ152を基板積層前に、空隙161,162内を真空とすることができるので、隙間163,164も真空とすることができる。これにより、後述する強制流入工程122で、エポキシ樹脂108を、隙間163や隙間164へ確実に充填することができる。
以上のような工程を有しているので、隙間163や164へ樹脂が確りと充填され、これらの隙間163,164や空隙161,162内にはボイドが発生し難くなる。従って、隙間163,164に予め中間材などを注入せずとも、信頼性の良好な積層基板を実現できる。
なおここで、プリプレグ152は、空隙161,162を設けているので、半導体素子105や抵抗106などの電子部品が装着された基板101上にプリプレグ152を容易に積層することができる。
また、半導体素子105や抵抗106はリフローはんだ付けによって装着されるので、クリームはんだ2の溶融によるセルフアライメント効果で、位置精度良く所定の位置へ装着される。つまり、半導体素子105や抵抗106の位置精度が良好であるので、空隙161,162を小さくすることができる。これにより、エポキシ樹脂108が隙間163,164へ流入しやすくなる。なお、本実施の形態1において、空隙161における半導体素子105の側面方向の空隙161aは、約0.4mmである。空隙162における抵抗106の側面方向の空隙162aは、約0.2mmとしている。これにより、空隙161a,162aを有しているので、たとえ半導体素子105や抵抗106の装着位置が、所定の位置よりもずれて装着されたとしても容易にプリプレグ152を積層することができる。
なお、本実施の形態1においてプリプレグ152は、厚さ0.2mmのプリプレグ152a〜152fの6枚からなるプリプレグ152がこの順に積層されている。この内、プリプレグ152aから152dまでの4枚のシートは、半導体素子105が挿入される孔154と、抵抗106が挿入される孔155とが形成されている。
また、プリプレグ152dの上面に積層されるプリプレグ152eには抵抗106が挿入される孔155だけが設けられており、半導体素子105が挿入される孔154は設けられていない。即ち、電子部品の高さに応じた孔を設ける訳である。なおこの場合、半導体素子105や抵抗106の上方にも空隙161b,162bを設けておくと良い。これは、後述する一体化工程119で加えられる圧縮圧力により、半導体素子105や抵抗106が、破壊しないようにするためである。つまりこれは、エポキシ樹脂108が軟化する前に、半導体素子105や抵抗106へ圧縮圧力がかかることを防ぐものである。
なお、本実施の形態1において基板101上には、半導体素子105と、抵抗106の2種類の電子部品しか搭載していない。従って、プリプレグの積層枚数は6枚としている。しかしながら、さらに多種の電子部品が搭載される場合には、電子部品の高さも多種存在するので、これら種々の電子部品の高さに応じた隙間の高さを設定する必要が生じる。従って、そのような場合においては、さらに厚みの薄いプリプレグを用い積層枚数を増やしても良い。例えば0.1mmの厚みのプリプレグを用いて、それを12枚積層することや、2種類以上の厚みのプリプレグを混ぜて積層しても構わない。しかしその場合には、プリプレグの積層回数が増加することとなるので、電子部品の高さの差へ対応できる範囲内で、できる限り積層枚数を少なくなるようにすることが望ましい。
119(図1に示す)は、プリプレグ積層工程で積層された基板101とプリプレグ152と銅箔156とを、はんだ107が溶融しない程度の温度で加熱圧着し、一体化する一体化工程である。以下にこの一体化工程119について、図1に示す工程の順で説明をする。
図10は、本実施の形態1の軟化工程における一体化手段の断面図である。図1、図10において、120は、真空化工程の後に設けられた軟化工程(第1の加熱工程の一例として用いた)である。この軟化工程120においては、ヒータ146を熱することにより、プリプレグ152に含浸されたエポキシ樹脂108を軟化させる。本実施の形態1においてエポキシ樹脂108の温度は、約110℃まで上昇させ、粘度を約2100psまで低下させる。なお、この粘度は、本実施の形態1における真空化手段による真空化によって生じる圧力(0.2MPa)において、エポキシ樹脂108が流動を開始する粘度である。
プリプレグ152は、プラテン141,142によって0.2MPaの微小な圧力で圧縮されているので、プラテンを銅箔156の表面に密着させることができる。従って、ヒータ146の熱を確実にプリプレグ152へ伝えることができ、エネルギー効率が良く、省エネルギーな加熱手段を実現できる。
図11は樹脂流動抑制工程における一体化手段の断面図である。図1、図11において、121(図1に示す)は、軟化工程の後に設けられた樹脂流動抑制工程である。ここで、ヒータ146は、エポキシ樹脂108を流動できる粘度以上にまで加熱する。これは、後述する強制流入工程122において、樹脂108の粘度は、できるだけ小さい方が隙間163,164へ流入しやすくなるためである。
そのため、たとえ真空化によって発生する程度の微小な圧力(0.2MPa)であっても、エポキシ樹脂108は基板101の外側や、空隙161,162や隙間163,164へと流れ出してしまうこととなる。例えば、エポキシ樹脂108が基板101よりも外へ流れ出した場合、本来後述する強制流入工程122で流れるエポキシ樹脂108の量が少なくなるので、隙間163,164などへの樹脂が流入し難くなってしまう。
また軟化工程120においてプラテン141,142は、基板101やプリプレグ152を上下方向から挟んで加熱するので、これらプラテン141,142に設けられたヒータ146から近い場所と、遠い場所との間に温度差が生じ易い。一般に隙間163,164は、プラテン141,142から離れた位置に形成される。つまり、この隙間163,164の温度はエポキシ樹脂108の温度よりも低くなり易い。従って強制流入工程122以前に、隙間163,164へエポキシ樹脂108が流入してしまうと、エポキシ樹脂108の温度が低下する。その結果、隙間163,164へ流入したエポキシ樹脂108の粘度が大きくなり、強制流入工程122においてそれ以上にエポキシ樹脂108が隙間へ流れ込まず、ボイドなどの発生要因となってしまう。
そこで、本実施の形態1では、軟化工程120と強制流入工程122との間に樹脂流動抑制工程121を設けている。そしてこの樹脂流動抑制工程において、エポキシ樹脂108の流動開始から、エポキシ樹脂108を強制的に流入させるまでの間、プラテン141,142によるプリプレグ152への圧縮圧力を緩和し、エポキシ樹脂が流動しないようにするものである。これによって、エポキシ樹脂108が外へ流れ出したりすることが少なくなる。また、エポキシ樹脂108が隙間に入り易くなり、強制流入工程122において、エポキシ樹脂を確りと隙間へ充填することができる。
なお、本実施の形態1においては、圧縮圧力を緩和させるためにプラテン142に接続したサーボモータ147を圧縮樹脂流動抑制手段としても用いている。つまり、温度センサの信号に基づき、このサーボモータが、プラテン142を図11に示すB方向へ広げることによって、エポキシ樹脂108に加わる圧縮圧力を緩和している。なお、エポキシ樹脂108は温度によって粘度が変化するため、このエポキシ樹脂108の粘度は、温度に置き換えて管理している。つまりメモリには、エポキシ樹脂108が流動を始める流動開始温度データを格納している。そして、制御回路は、温度センサで検出した信号と、流動開始温度データとを比較し、エポキシ樹脂108が流動開始温度に到達したと判定した場合に、サーボモータ147を駆動する。そして制御回路は、圧力センサからの圧力信号を入力し、サーボモータ147を制御することで、プラテン142の圧力が所定の圧力となるように制御している。
なお、エポキシ樹脂108の流動を抑制するためには、プラテン141,142と基板101、プリプレグ152とは、接触可能な範囲において、できるだけ低い圧力で保持することが望ましい。そこで、本実施の形態1の樹脂流動抑制工程121における圧力は、約0.1MPaとしている。これによって、エポキシ樹脂108が流動することを少なくでき、後述する強制流入工程122において、隙間163,164へエポキシ樹脂108を確りと充填することができる。
次に図12は、本実施の形態1の強制流入工程における一体化手段の断面図である。図1および図12において、122は、樹脂流動抑制工程の後に設けられた強制流入工程である。この強制流入工程122では、プリプレグ152は略3分の2の厚みにまで圧縮され、プリプレグ152のガラス不織布に含まれたエポキシ樹脂108が流出し、空隙161,162や隙間163,164全体に充填される。つまり、図12における矢印C方向へプラテン142を高速に移動させ、プリプレグ152を高速で圧縮する。これによって、軟化したエポキシ樹脂108を、一気に空隙161a,161b,162a,162bならびに隙間163,164へと流入させるものであり、プラテン142の圧縮速度を大きくし、短時間で隙間163,164にまで樹脂を注入させる。
ここで、隙間163,164は、空隙161,162に比べて非常に小さいので、エポキシ樹脂108がこの隙間163,164へ流れ込むときに大きな圧力損失が発生する。また、エポキシ樹脂108は粘性流体であるので、基板101や半導体素子105や抵抗106との接触面で摩擦が発生する。
さらに、半導体素子105はバンプ102を有しているので、エポキシ樹脂108が流れる通路の幅は、バンプ102によって縮小、拡大が繰り返される。従って特にこの隙間163におけるエポキシ樹脂108の圧力損失は大きくなる。そこで、このエポキシ樹脂108の流速を大きくすることで、このエポキシ樹脂108の隙間163,164への充填が完了するまでに、圧力損失や摩擦力によって流れが止まらないようにするものである。
さらに、本実施の形態1においては、この強制流入工程122の間においても、ヒータ146で加熱を継続して行っている。従って、この空隙161,161a,161bや、162,162a,162bへの充填は短時間で完了することが必要となる。これは、プリプレグ152が熱硬化性樹脂であるために、ヒータ146からの加熱によって、エポキシ樹脂108の温度が上昇し、硬化することを防ぐためである。
なお、本実施の形態1におけるプラテン142は、約300mm/秒以上の高速で圧縮する。これによって、エポキシ樹脂108へ流れを発生させ、空隙161,161a,161b,162,162a,162bや隙間163,164へエポキシ樹脂108を一気に注入するわけである。本実施の形態1においてプラテン142の駆動のために応答性の良好なサーボモータ147を用いているので、プラテン142に対して急激な加速度を与えることができる。そして、プラテン142の移動は、保持爪151の先端がプラテン142へ当接することで静止する。
この強制流入工程122において、隙間163,164の周囲は、粘性が高いエポキシ樹脂108で密封された状態となるので、強制流入工程122と略同時に真空を解除しても隙間163,164の真空は維持されると考えられる。つまり、強制流入工程において真空を解除状態としておいてやれば、プリプレグ152は、内側へ圧縮される方向の圧力を受けることとなる。
そこで、本実施の形態1においては、強制流入工程122と略同時に真空状態を解除し、略大気圧へ復帰させている。これによって、強制流入工程122において、エポキシ樹脂108は、プラテン141,142によって上下方向から圧縮されると同時に側面方向からも圧力が加わるので、エポキシ樹脂108は、隙間163,164へ流入しやすくなる。従って、空隙161a,161b,162a,162bや隙間163,164内に、真空ボイドは発生し難くなる。
ここで、半導体素子105のバンプ部にこの真空ボイドが発生すると、半導体素子105とランドパターン104aとの間での接続が外れたり、隣接同士のバンプ同士がショートしたりする。つまり、リフローはんだ付け等の加熱によってバンプが溶融し、この溶融したバンプが真空ボイドによって吸引されることによって、接続が外れる。また、基板などの吸水による真空ボイドへの水滴の侵入などが原因となり、リフローはんだ付けなどで水蒸気爆発が起こり、接続が外れたりする。従って本実施の形態1においては、強制流入工程122と略同時に真空解除することによって真空ボイドを防止している。これにより、リフロー工程などにおいてバンプの接続が外れることが無く、信頼性の高い積層基板を実現できる。
そして、このようにしてエポキシ樹脂108を隙間163,164へ充填した後に、硬化工程123(図1に示す)によってエポキシ樹脂108を硬化させる。この硬化工程123は、はんだバンプ102やはんだ107の液相線温度以下で加熱し、プリプレグ152の流動性を失わせる第2の加熱工程と、この第2の加熱工程の後で、プリプレグ152を完全に硬化させる第3の加熱工程とを有している。
ここで第2の加熱工程では、はんだバンプ102、はんだ107の液相線温度よりも低い温度で、プリプレグ152が流動性を失うようにすることが重要となる。ここで、はんだバンプ102、はんだ107には、融点が約217℃の鉛フリーはんだを用いているので、第2の加熱工程でのエポキシ樹脂108が流動性を失う温度は、少なくとも約200℃以下とすることが望ましい。そこで、本実施の形態1においては、約150℃でエポキシ樹脂108の流動性を失わせている。そのために、150℃におけるエポキシ樹脂108の粘度が、約24000psであるので、この粘度以上では流動しないように、第2の加熱工程における圧力は約4MPaとしている。
これによって、第2の加熱工程でエポキシ樹脂108の流動性を失わせ、その後に、第3の加熱工程でエポキシ樹脂108の温度を180℃まで上昇し、エポキシ樹脂108を確実に硬化させる。従って、第2の加熱工程において、エポキシ樹脂108は約150℃で流動性を失うこととなるので、半導体素子105と基板101との間や、抵抗106と基板101との間での接続が外れることはない。
このようにしてプリプレグ152の硬化が完了すると、冷却工程124(図1に示す)へ移る。この冷却工程124では、ゆっくりとした勾配で冷却を行う。そのために、プラテン141,142に挟んだ状態のままで、ヒータ146の温度を制御しながら徐冷する。なおこの徐冷は、ガラス転移点以下(TMA測定法で160℃)の温度となるまで行い、その後プラテン141,142を開放して自然冷却する。これにより、銅箔156やエポキシ樹脂108との線膨張係数の差によって生じる縮み量の差を小さくでき、積層基板のソリを小さくできる。また、基板101上の導体と、エポキシ樹脂108との界面での剥離などを防止することができる。
図13は、本実施の形態1の切断工程における切断手段の断面図である。図1、図13において、125は、強制流入工程122によって、基板101の外側へ流れ出した樹脂172を切除する切断工程である。この切断工程125において、171は積層基板を切断するダイシング歯であり、この切断工程125でダイシング歯171を回転させて、不要な樹脂172を切除する。なお、本実施の形態1においては、不要な樹脂172部分のみを切除するのではなく、基板101と樹脂172との双方を切断している。これは、基板101の端部より内側を切断することにより、積層基板の寸法を、基板101の伸縮などによらず、略一定寸法とするためである。
以上のように、一体化工程119では、軟化工程120によって流動可能な温度まで加熱し、加熱・圧縮工程118aによって、プリプレグ152と基板101へ与える温度やプラテン142の圧力や速度を、エポキシ樹脂108の粘度あるいは温度等に応じて制御しながら加熱・圧縮し、基板101とプリプレグ152とを一体化することで、積層基板(図2に示す)を完成する。なお、図2において最上層に設けた銅箔156をエッチングし、配線パターン109を形成している。従って、このパターン109を用い、最上層に電気回路やその配線および端子等を形成することができる。また、この銅箔156のエッチングを行わずにグランドへ接続すれば、グランドプレーンとしての使用やシールドとしての使用をすることができる。
次に、一体化工程119において、エポキシ樹脂108が隙間163,164へ注入される動作について説明する。そこでまずエポキシ樹脂108の温度と、圧力ならびに粘度特性との関係について図面を用いて説明する。図14は、エポキシ樹脂108の特性図であり、横軸201が温度であり、第1の縦軸202は粘度であり、第2の縦軸203が圧縮圧力を示している。図14において、204はプリプレグ中に含まれるエポキシ樹脂108の粘度特性を示し、205はプリプレグが受ける(プラテン141,142の圧力)である。
まずこの樹脂108は、常温においては粘性を有せず、温度が上昇するにつれて軟化し粘度が低下する。温度206において最低粘度207となり、この温度206以上で粘度が増加し、硬化が促進される。本実施の形態1におけるエポキシ樹脂108における温度206が、約133℃であり、そのときの最低粘度207は約1150psである。
なおここで注意しなければならないのは、上述の一体化工程119中においてエポキシ樹脂108には、常に圧力が加えられていることである。つまり、エポキシ樹脂108の流動は、このエポキシ樹脂108へ加えられる圧力と、エポキシ樹脂108の粘度(温度)によって決定づけられることである。
そこで次に、本実施の形態1におけるプラテン141,142の圧力特性を見てみると、軟化工程120では圧力208が加えられ、硬化工程123では圧力209が加えられ、強制流入工程122では、圧力209の2倍以上の瞬間ピーク圧力210が加わる。
そして、エポキシ樹脂108は、圧力208においては温度211で流動を開始する流動開始粘度212となる。つまり、エポキシ樹脂108は、常温から温度211までの温度領域213(第1の温度領域の一例として用いた)において板体状であり、流動はしない。本実施の形態1において圧力208は、0.2MPaであるので、流動開始粘度は2100psであり、そのときの、温度211は約110℃である。
次に、この温度211を超えると、エポキシ樹脂108の粘度は、温度206で最低粘度207まで低下する。そして強制流入工程122は、温度211と温度206との間の温度領域214(第2の温度範囲の一例として用いた)で行われる。
この強制流入工程122が完了すると、硬化工程123でエポキシ樹脂108を硬化するが、この硬化工程123では圧力209が印加される。エポキシ樹脂108は、温度206以上の温度領域215(第3の温度範囲の一例として用いた)になると徐々に硬化を始め、圧力209では温度216で流動性を失う粘度217となる。なお、圧力209が4MPaにおいて、温度216は、150℃、粘度217は24000psである。
なお、本実施の形態1における硬化工程123では、エポキシ樹脂108を約180℃の温度まで上昇させて、60分間その温度で保持する。その後、プラテン141,142に挟んだままで、ヒータ146の温度を調節しながら、約1℃/分の割合で徐冷する徐冷工程を有している。
以上の方法によって、温度211(流動開始粘度212)と温度206(最低粘度207)との間に強制流入工程122を設け、プラテン142で圧力210を加える。これによって急激な加速度を発生させ、強制的にエポキシ樹脂108を流動させる。なお、このプラテンの移動開始から終了までの間の時間は、略1秒以内という短時間で完了させる。そして、最小粘度207となる温度206を超えて、さらに加熱することによって付加重合反応が進み硬化が始まる。そして、温度216以上の温度まで加熱されると、エポキシ樹脂108は略流動しなくなり、硬化した状態となる。
図15は、本実施の形態1の強制流動工程における半導体素子105の要部拡大図である。図15において、エポキシ樹脂108は、図12に示すようにプラテン142によって圧縮され、その先端108aが隙間163へ流入する。このとき、空隙161に比べて隙間163は非常に小さく、エポキシ樹脂108aは、縮小管を通過する流体として考えれば良い。従って、半導体素子105の角105aに近傍で渦201が発生し、圧力損失が発生する。
また、はんだバンプ102においては、縮小管の後に拡大管を通過する流体として考えれば良い。従って、縮小管と拡大管とを通過するのであるから、はんだバンプ102を通過するエポキシ樹脂108も、大きな圧力損失が発生することとなる。
さらに、強制流入工程122は、温度211(流動開始粘度212)と温度206(最低粘度207)との間で行う。つまりエポキシ樹脂108の粘性は、約2100psから1150psにあるので、隙間163,164へ流入させるエポキシ樹脂108は、粘性流体である。従って、エポキシ樹脂108aと半導体素子105の下側表面105bとの間で摩擦が生じる。そこで、この圧力損失や摩擦抵抗によってエポキシ樹脂108aの流速が0とならないように、プラテン142に圧力210を加えてエポキシ樹脂108を高速に流動させる。
そして、エポキシ樹脂108aの流速をできるだけ大きくするために、強制流入工程122におけるエポキシ樹脂108の温度は、できる限り最低粘度に近い温度である方が望ましい。しかし、圧力損失や摩擦によるエネルギー損失分は、熱エネルギーへの変換によって発熱する。つまり、この発熱によりエポキシ樹脂108aの温度は、強制流入工程122におけるエポキシ樹脂108の温度よりも高くなると考えられる。ここで、エポキシ樹脂108aは、温度206を超えると粘度が大きくなるので、温度206(図14)以下の温度で隙間163,164へ流入させることが必要となる。
以上のように強制流入工程122では、エポキシ樹脂108が硬化することを防ぐために、プリプレグ152の温度(粘度)は、硬化を始める温度206(粘度207)に対してエポキシ樹脂108aの発熱による温度上昇分だけ低い温度(高い粘度)となるように設定している。
また、エポキシ樹脂108aの流入速度が大きいと、発熱も大きくなる。従って、プラテン142の移動速度は、摩擦熱によって上昇するエポキシ樹脂108aの温度が、温度206を超えない速度とすることも必要である。
また、ここでは説明の便宜上半導体素子105が1個、抵抗が2個としているが、実際にはもっと多くの種類の部品がさらに数多く装着される。そのような場合、エポキシ樹脂108がそれぞれの隙間へ流入する時間のタイミングは異なる。これは、空隙161や空隙162の大きさや、ヒータ146の配置などに起因して発生するプリプレグ152内での温度ばらつきなどによるものと考えられる。
以上の理由により、強制流入工程122は、プラテン142の速度を大きくする一方で、温度206(粘度207)に対して約8℃低い温度(100ps高い粘度)で行う。これにより、強制流入工程122において、隙間163,164に流入するエポキシ樹脂108aの温度は、摩擦熱などによって上昇しても温度206より高くならない。従って、エポキシ樹脂108は、隙間163,164へ流入しやすくなる。
また、強制流入工程122は、短時間で終了させるので、強制流入工程122開始時点でのエポキシ樹脂108の粘度を低くできる。従って、エポキシ樹脂108を隙間163,164へ流入させることができる。
以上のような積層基板の製造法を用いることにより、半導体素子105や抵抗106と基板101との間の隙間163,164へエポキシ樹脂108を容易に流入させることができるので、中間材などを用いなくても半導体素子105や抵抗106と基板101との間にエポキシ樹脂108を確実に充填することができる。従って、予め半導体素子105や抵抗106などと基板101との間の隙間163,164に、中間材などを充填することなく、プリプレグ152と基板101との一体化工程119で同時に隙間163,164へエポキシ樹脂108を確実に充填することができる積層基板の製造方法を提供することができる。
また、中間材を別途注入する工程が必要なく、また中間材も不必要となるので、低価格な積層基板を実現できる。
さらに、強制流入工程122において狭い隙間163,164へ確りとエポキシ樹脂108を充填できる。従って、ボイドの発生もしにくくなり、信頼性の高い積層基板を実現することができる。
以下に、本実施の形態1における積層基板の製造設備に関する一連の制御について、図面を用いて説明する。図16は、この制御を示すためのタイミング図である。図16(a)は、プラテン圧力のタイムチャートであり、図16(b)は、基板とプリプレグとを合算した厚みの変化特性を示し、図16(c)は、真空化手段のタイムチャートである。図16(a)、(b)、(c)において、横軸271は、時間を示し、図16(a)の縦軸272は圧力、図16(b)の縦軸273は厚み、図16(c)の縦軸274は気圧を示している。
まず樹脂流動抑制工程121について説明する。なお、図16において、275はプラテンの圧力特性を示し、276は厚み特性を示し、277は真空度特性を示している。真空化・積層工程118においてプリプレグ152は、0.2MPaの圧力を受けている。そしてこの圧力を受けたままで、軟化工程120へ移行し、温度上昇に伴って粘度が小さくなり、温度211で流動する温度に達する。そのため、そのまま圧力が加えられると、エポキシ樹脂108は、基板の外側や隙間163,164へ流れ出てしまう。
そこで、制御回路は、温度センサからの信号によって、エポキシ樹脂108が温度211に達したことを検出すると、一旦プラテン142の圧力を圧力278まで下げる。このとき制御回路は、圧力センサからの信号を入力し、この信号によってプラテン142の圧力が278に達したことを検出し、プラテン142の動作を停止する。これによって、エポキシ樹脂108へ加えられる圧力が緩和され、エポキシ樹脂108が流動することを抑制している。
なお、本実施の形態1において、圧力278は、約0.15MPaとしている。これによって、強制流入工程122において、エポキシ樹脂108の空隙161,162側へ流入する量を多くできる。また、強制流入工程122より前に、エポキシ樹脂108が隙間163,164へ流入し難くなるので、エポキシ樹脂108の温度低下なく、均一温度に維持することができる。従って、強制流入工程122において隙間163,164へエポキシ樹脂108を確りと充填することができる。
次に、強制流入工程122における制御について説明する。この強制流入工程122では、プラテン142を高速で移動させて、エポキシ樹脂108を隙間163,164へ強制的に流入させる。このとき制御回路は、位置センサからの出力とクロックタイマからの信号によって、プラテン142が所定速度で移動しているかどうかを判定する。つまり、制御回路は、ある時間におけるプラテン142の位置と、予め定められた位置情報とを比較することで、規定の移動速度であるかどうかを判定する。
そして、これらの位置情報の差によってサーボモータ147(図12)へ供給するパルス信号の幅を変更することで、プラテン142の圧縮速度を制御し、一気にプリプレグ152を圧縮する。これによって、この強制流入工程122においてのプリプレグ152に移動速度を大きくしている。従って、図16(b)に示すように、プリプレグ152の厚みは、この強制流入工程122において厚み283から厚み284へと一気に小さくなる。なお、本実施の形態1における強制流入工程122において、プリプレグ152の厚みは、約0.4mm減少する。
また、制御回路には、圧力センサから出力される圧力情報信号も入力されている。そこで制御回路は、この圧力が規定の値以上とならないようにプラテン142の圧力を監視している。これは、エポキシ樹脂108aが、隙間163,164の四方より流入し、隙間163,164の略中心で衝突する。そのとき、プラテン142の圧力に応じて、エポキシ樹脂108の流速は大きくなり、隙間163,164での衝突時の力は大きくなる。この衝突による力は、半導体素子105や抵抗106を基板101から引き剥がそうとする方向へ加わる。そこで、この衝撃による力で半導体素子105と基板101とを接続するバンプ102や抵抗106と基板とを接続するはんだ2などの破壊を防ぐために、制御回路がプラテン142の圧力を監視する。そしてこの制御回路は、圧力が予め定めた限界圧力279以下となるようにサーボモータを停止させる。
ここで、この強制流入工程122の時間は非常に短いので、圧力センサから圧力情報信号が出力されてからサーボモータが駆動するまでの間の応答時間が問題となる。これは、特にボールナット軸受け部分の応答性が遅い(慣性モーメントが大きい)ことが最大の要因となる。つまり、制御回路が、限界圧力279に達したと判定した後にサーボモータ147を停止したのでは、軸受けの慣性力によって、プラテン142の圧力は限界圧力279を超えてしまうこととなる。従って、本実施の形態1において制御回路は、タイミングクロックの信号と圧力情報信号とから、圧力曲線275の増加の傾きを演算することで、プラテン142の圧力が限界圧力272に達する時間280を予測し、この時間280よりも制御系が応答するまでに必要な応答時間281だけ前の時間282でサーボモータ147を停止させる。
これにより制御回路は、圧力センサからの圧力情報信号を基に、プラテン142をフィードフォアードバック制御する。従って、バンプ102や、はんだ2などの破断が発生し難くなり、信頼性の良好な積層基板を得ることができる。また、応答性の良好な積層基板の製造装置を実現できる。
本実施の形態1においては、半導体素子105や抵抗106へ加わる衝突による力を緩和するために、限界圧力210に達した後に、圧縮圧力を圧力209まで下げる圧力緩和工程122a(図1に示す)を設けている。この圧力緩和工程122aにおいて制御回路は、圧力センサからの圧力信号が限界圧力210となったことを検知すると、サーボモータを逆方向へ回転させる。このサーボモータの逆回転によって、プラテン142を開く方向へ移動させて、圧力を小さくする。
また、強制流入工程122と略同時に、真空状態を解除している。これは、エポキシ樹脂108の温度(粘度)が温度206(最低粘度207)を超える前に、真空を解除するので、たとえ隙間163,164内に真空ボイドが発生しても、エポキシ樹脂108が真空ボイドへ流れ込むことができる。従って、真空ボイドが消失するので、真空ボイドの発生が少ない積層基板を実現することができる。
さらに、強制流入工程122の開始と略同時に真空状態を解除するので、プリプレグ152は、プラテン142による上下方向からの圧縮と同時に、真空化解除による増圧で側面方向からの圧力も増加することとなる。これにより、さらにエポキシ樹脂108は隙間163,164などへ流入しやすくなる。
以上のように本実施の形態1においては、プラテンの圧縮圧力や、移動速度や温度を管理・制御することによって、エポキシ樹脂108の流動を制御し、小さな隙間163,164へもエポキシ樹脂108を充填することができるものである。これによって、隙間163,164に対し、ボイドなどを発生しにくくすることができ、信頼性の高い積層基板を実現することができる。
なお、このプリプレグ152は熱硬化性樹脂であるので、一旦熱硬化された後は、たとえ再度加熱されても可塑状態には戻らない。従って、一旦樹脂108で封止された半導体素子105の固定は保持される。また、エポキシ樹脂108は略150℃の温度までは粘度はだんだん下がる。従って、このように樹脂108は、粘度が小さくなり、流動性が増して、狭い隙間にも十分に充填することができる。また、ガラス不織布にエポキシ樹脂が含浸されているので、軟化工程120や、強制流入工程122において、エポキシ樹脂108を流動させても、基板としての体裁を維持することができるので、寸法精度の良好な積層基板を実現することができる。
また、この加熱圧着ではんだ107の雰囲気温度をはんだ107の内部温度がはんだ107の溶融点以下にしておくことが望ましい。従って、はんだ107には硬化工程123の温度より溶融点の高いはんだを用いると良い。
さらに、プリプレグ152には半導体素子105と抵抗106との間に空隙161を有する孔154,155が設けられているので、たとえ基板101から突出する電子部品が装着されていたとしても容易に遊挿することができ、組み立ては容易である。
また、この強制流入工程における温度は半導体素子105や抵抗106を接続固定するはんだが溶融しない程度に低い温度(150℃)で一体化するので、この一体化により接続固定が破壊されることはなく、半導体素子105と抵抗106は強固な接続固定を保つことができる。
更に、加熱圧着時における軟化で、狭い隙間163,164にも樹脂108が充填される。また、熱硬化性のプリプレグ152を用いているので、熱硬化された後に加熱されても再度可塑状態には戻らず、封止された半導体素子105と抵抗106の安定した固定状態が保たれる。
更にまた、半導体素子105と抵抗106は基板101に装着されているので、この基板101の状態で検査をすることができ、積層基板完成後における良品率が向上する。
なお、本実施の形態1においては、プリプレグ152を6枚用いたが、これは厚みの厚いプリプレグ1枚でも良い。その場合、積層工程118を短時間で行うことができるので、低価格な積層基板を得ることができる。
さらに、本実施の形態1において強制流入工程122で真空状態を解除しているが、これは、エポキシ樹脂108の粘度が、大きくなり、各プリプレグ152間に隙間がなくなる温度以上で、エポキシ樹脂108が流動性を失う温度までの間であれば良い。これは、この温度範囲内で真空を解除しても、空気が空隙161,162や隙間163,164へ入らないので、強制流入工程122においてそれらの真空は維持されているためである。これによって、強制流入工程122において、確りとエポキシ樹脂108を隙間163,164へ流入させることができる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図面を用いて説明する。図17は、本発明の実施の形態2における積層基板の製造方法のフローチャートである。なお、図18から図20において、図1から図13と同じものは同じ番号とし、その説明は簡略化してある。実施の形態1においては、基板101上に6枚のプリプレグ152を積層したが、本実施の形態2においては、基板101上に厚さが約1mmのプリプレグを1枚積層している。
では、図17の工程の順序に従って、各工程の詳細を説明する。本実施の形態2において、実施の形態1と同様に、基板101上に半導体素子や抵抗106を装着し、リフロー工程115ではんだ付けする。300は、リフロー工程115の後に設けられ、プリプレグ(シートの一例として用いた)を基板101上に宙吊りする宙吊り工程であり、301は、宙吊り工程300の後に設けられた減圧・積層工程である。以下に、この宙吊り工程300と減圧・積層工程301について、図18、図19を用いて説明する。図18は、本実施の形態2における宙吊り工程における宙吊り手段の断面図であり、図19は同、減圧・積層工程における減圧・積層手段の断面図である。
まず、宙吊り工程300(図17)について説明する。図18において、密封容器311(密閉手段の一例として用いた)は、プラテン142(圧縮手段の一例として用いた)と、基板101の側面側を囲むガイド312と、このガイド312の上端部に設けられた傾斜部313とを有し、このガイド312の上方に開口部314を有する構成としている。このように構成された密封容器311のガイド312内へ基板101を挿入する。ここで、ガイド312と基板101との間の隙間は、片側で約0.5mmとし、このガイド312によって基板101が位置決めされる。
そして、この開口部314を覆うように、プリプレグ(シートの一例として用いた)302を載置する。このとき、プリプレグ302の幅315は、ガイド312の幅316よりも大きく、傾斜部313の開口寸法313aよりも小さな寸法としておく。このようにして、宙吊り工程300において、プリプレグ302は、傾斜部313によって宙吊り状態で保持されることとなる。そして、このプリプレグ302の上に銅箔156が積層される。つまり、本実施の形態2において傾斜部313は、プリプレグ302と半導体素子105や抵抗106とが接触しないようにそれらの間に隙間を形成させるために、プリプレグ302を宙吊りする宙吊り手段となる。
なお、本実施の形態2におけるプリプレグ302は、できる限り早く粘性を低下させることによって加熱を小さくし、少ないエネルギーで積層基板を製造できるようにするために、常温において粘性を有したエポキシ樹脂317を用いている。従って、プリプレグ302の端部302aが、傾斜部313に密着する。これによって、プラテン142、ガイド312、傾斜部313およびプリプレグ302とによって密封されることとなる。つまり、本実施の形態2においては、プリプレグ302自体が密封容器311の蓋を成すものである。
そして、真空化手段(図示せず)は、プリプレグ302によって蓋された状態で、ガイド312に設けた孔318から空気を吸引する。この減圧化によって密封容器311内が負圧となり、プリプレグ302は傾斜部313とガイド312に沿って下方へ移動する。本実施の形態2においては、孔318はガイド312の下端部の近傍に設けてある。なお、孔318は、減圧によって降下するプリプレグ面よりも下側に設けておくことが望ましい。これによって、孔318から空気を抜いてもプリプレグ302が吸引されず、確実に真空化することができる。
図19は、本実施の形態2の減圧・積層工程における減圧積層手段の断面図である。図19に示すように、プリプレグ302は、半導体素子105上面や抵抗106の上面に接する状態で停止し、プリプレグ302が基板101上へ積層される。この状態において、プリプレグ302は、真空化による負圧がかかった状態で保持される。
これによって、半導体素子105や抵抗106とプリプレグ302との間に空気が入った気泡が残ることがない。従って、プリプレグ302と半導体素子105の上面105cや抵抗106の上面106aとの間での密着性を向上することができ、信頼性の高い積層基板を得ることができる。
図20は、一体化工程303における一体化手段の断面図である。図20において、303は、減圧・積層工程の後に設けられた一体化工程である。この一体化工程303では、上側プラテン321がプリプレグ302を加熱・圧縮・冷却することで、隙間163,164へもエポキシ樹脂317を充填するとともに、基板101とプリプレグ302とを一体化している。
この一体化工程303において、まず304は、減圧・圧縮工程301の後に設けられた軟化工程であり、この軟化工程304では、プラテン142と上側プラテン321に設けられたヒータ146を加熱し、プリプレグ302を流動可能な温度まで軟化させる。なお、本実施の形態2におけるプリプレグ302は、常温において略流動性を有する状態となっているものを用いているので、軟化工程における熱の供給を少なくできる。従って省エネルギーである。
そして、軟化工程304の後に設けた強制流入工程305において、実施の形態1と同様に、急激な圧力(速度)でエポキシ樹脂317を流入する訳である。そこで、この流入による摩擦熱や圧力損失などによる温度上昇によって、隙間163,164へ流入するエポキシ樹脂317が、硬化を始める温度を超えないようにプラテン321を移動させる。このように、エポキシ樹脂317の温度が約100℃の状態で、急激な圧力(速度)を付加し、隙間163,164へ強制的に流入させるので、隙間163,164へ別途中間材を注入する必要はない。なお、本実施の形態2において、エポキシ樹脂317が硬化を始める温度は、約110℃から150℃であり、この110℃から150℃において約10分保持するとエポキシ樹脂317は付加重合反応が始まるものを用いている。
なお、本実施の形態2の上側プラテン321には、位置センサ(図示せず)を設けてある。制御回路は、この位置センサからの信号と、メモリ(図示せず)に予め記憶した上側プラテン321の位置データとを比較し、上側プラテン321が規定の位置であると判定したときに、上側プラテン321へ接続されたサーボモータへ停止する旨の命令を送る。
ここで、プリプレグ302に孔を設けないので、本実施の形態2において半導体素子105や抵抗106の周囲に形成される隙間331は、実施の形態1で形成される空隙161,162よりも大きくなる。そこで、本実施の形態2における強制流入工程305の温度は100℃とすることで、確りと隙間331や隙間163,164へエポキシ樹脂317を充填できる。
306は強制流入工程305の後に設けられた硬化工程であり、この硬化工程306で150℃とすることでエポキシ樹脂317を完全に硬化させている。そして、硬化工程306で完全に硬化させた後、徐冷工程124で徐々に冷却し、その後に切断工程125で切断する。
以上のように一体化工程303の前に減圧・積層工程301を有しているので、半導体素子105や抵抗106とプリプレグ302との間に空気が入った気泡が残ることがない。従って、プリプレグ302と半導体素子105の上面105cや抵抗106の上面106aとの間での密着性を向上することができ、信頼性の高い積層基板を得ることができる。
また、実施の形態1のようにプリプレグ317には、予め半導体素子105や抵抗106に対応した孔を設けなくても良いので、実施の形態1における孔加工工程117が不要となる。従って、低価格な積層基板を得ることができる。
さらに、本実施の形態2においては、部品の高さに応じた孔が不要となるので、プリプレグ317は、1枚でも良い。従って、プリプレグ317を1枚積層すれば良いので、低価格な積層基板を得ることができる。
さらにまた、プリプレグ317は、傾斜部313の上に載せるだけで良いので、積層作業を非常に容易に行うことができる。従って低価格な積層基板を実現できる。
その上さらに、孔318はガイド312に設けてあるので、基板101とガイド312との間の隙間を小さくできる。従って、ガイド312は、基板101を精度良く位置決めするとともに、プリプレグ302が外側へ流出することを防止する。従って、エポキシ樹脂317は、隙間331や隙間163,164へ流れるので、ボイドなどの発生がなく、確りと隙間163,164へエポキシ樹脂317を充填することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3は、実施の形態2における減圧・積層手段の他の例である。本実施の形態3における各工程は、実施の形態2と同じである。そこで本実施の形態3においては、減圧・積層工程の減圧・積層手段に関してのみ説明する。図21、図22は本実施の形態3の減圧・積層工程における減圧・積層手段の断面図であり、図23は、同強制流入工程における積層基板の断面図である。なお、図21、図22、図23において、図18から図20と同じものは、同じ番号とし、その説明は簡略化している。
図21において、プラテン141,142と伸縮壁143とによって密封容器144(密封手段の一例として用いた)が形成される。そして、予め半導体素子105や抵抗106などの電子部品がリフローはんだ付けされた基板101が、プラテン142の所定位置に搭載される。
401は、プラテン141に設けられた支軸402へ回動自在に連結された保持爪である。この保持爪401は、バネ(図示なし)によって内側方向に向けて付勢されており、プリプレグ302を挟んで保持している。このとき、保持爪401とプラテン141は、プリプレグ302が基板101と対向する位置となるように保持する。そして、このプラテン141と保持爪401より成る宙吊り手段は、プリプレグ302と半導体素子105や抵抗106とが接触しないようにしている。これによって、プリプレグ302と半導体素子105や抵抗106との間に、隙間403が形成される。そして吸引機(図示せず)によって、孔145から空気を抜き、減圧・真空化することによって、密封容器144内が負圧となり、プラテン142が上昇する。
図22は、本実施の形態2の減圧・積層工程における減圧積層手段の断面図である。図22に示すように、真空化によってプリプレグ302は、半導体素子105上面や抵抗106の上面に接する状態で停止し、プリプレグ302が基板101上へ積層される。この状態において、プリプレグ302は、真空化による負圧が加わった状態で保持される。
これによって、半導体素子105や抵抗106とプリプレグ302との間に空気が入った気泡が残ることがない。従って、プリプレグ302と半導体素子105の上面105cや抵抗106の上面106aとの間での密着性を向上することができ、信頼性の高い積層基板を得ることができる。
図23は、一体化工程303における一体化手段の断面図である。図23に示したように一体化工程303では、上側プラテン321がプリプレグ302を加熱・圧縮・冷却することで、隙間163,164へもエポキシ樹脂317を充填するとともに、基板101とプリプレグ302とを一体化している。
なお、この場合保持爪401の先端401aがプラテン142へ当接する位置で停止する。つまり、この保持爪401は、実施の形態1におけるストッパとしての役割も行っている。
本実施の形態3において、保持爪401はプリプレグ302の全周を覆うように設けている。これによって、一体化工程303において、エポキシ樹脂317の流動時に保持爪401は、エポキシ樹脂317の外側への流出を阻止する。従って、エポキシ樹脂317は、隙間331や隙間163,164へ流れるので、ボイドなどの発生がなく、確りと隙間163,164へエポキシ樹脂317を充填することができる。また、プリプレグ302の外への流出を少なくできるので、その分プリプレグを小さくできる。従って、使用するプリプレグ302を少なくできるので低価格な積層基板を得ることができる。ここで、熱硬化性樹脂は、一般に一旦硬化させると再利用できない。従って、プリプレグ302の使用量を削減することは、環境的な側面においても非常に重要な点になる。
そして、一体化工程303が完了すると、保持爪401が外側(図23の矢印方向)へ回動し、プリプレグ302を開放する。これによって、プラテン141が上方向へ開放され、基板101が取り出せることとなる。
以上のように一体化工程303の前に減圧・積層工程301を有しているので、半導体素子105や抵抗106とプリプレグ302との間に空気が入った気泡が残ることがない。従って、プリプレグ302と半導体素子105の上面105cや抵抗106の上面106aとの間での密着性を向上することができ、信頼性の高い積層基板を得ることができる。
また、実施の形態1のようにプリプレグ317には、予め半導体素子105や抵抗106に対応した孔を設けなくても良いので、実施の形態1における孔加工工程117が不要となる。従って、低価格な積層基板を得ることができる。
さらに、実施の形態2においては、部品の高さに応じた孔が不要となるので、プリプレグ317は、1枚でも良い。従って、プリプレグ317を1枚積層すれば良いので、低価格な積層基板を得ることができる。
さらにまた、プリプレグ317は、保持爪401内に挟み込むだけで良いので、積層作業を非常に容易に行うことができる。従って低価格な積層基板を実現できる。
なお、本実施の形態3においては、プリプレグ302を宙吊り状態としたが、これは基板101側を宙吊りしても良く、この場合においても同様の効果を奏することができる。