(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における部品内蔵基板の断面図であり、図2は、同部品内蔵基板の製造方法のフローチャートであり、図3から図12は、本実施の形態1における部品内蔵基板の製造方法の各工程の詳細図である。なお、図1から図12において、従来と同じものは同じ番号とし、その説明は簡略化してある。
まず図1を用いて本実施の形態における部品内蔵基板の構成を説明する。図1において、101は熱硬化性樹脂による回路基板であり多層に形成されている。そして、この層内はインナービア(図示せず)で各層の上面と下面が接続されている。また、各層の上面には銅箔145(導体パターンの一例として用いた)が敷設され、各電子回路を形成している。
そして、この回路基板101の上面には、ランドパターン104a,104bが形成されており、この回路基板101の上面に載置された半導体素子(電子部品の一例として用いた)105とランドパターン104aの間ははんだバンプ102で接続され、一方抵抗(電子部品の一例として用いた)106とランドパターン104bとの間は、はんだ107で接続されている。
なお、このはんだ107やバンプ102には、錫・銀・銅系を用いた鉛フリーはんだを用いている。これは有害な物質を含まず、環境へ悪影響を与えないためである。また、このはんだ107やバンプ102の代わりに、熱硬化性を有する導電性接着剤を用いることもできる。導電性接着剤を用いると、この導電性接着剤ははんだより溶融温度が高いので、例えば、近傍ではんだ接続等をして高温環境にしても半導体素子105や抵抗106が回路基板101から外れることはない。
108は、回路基板101と銅箔145との間に挟まれた熱硬化性樹脂による部品内蔵層であり、半導体素子105や抵抗106の外周を隙間がないように覆っている。
ここで、部品内蔵層108には、半導体素子105や、抵抗106を覆う樹脂流動埋設部108aと、この樹脂流動埋設部108aの外側を覆う基材入り樹脂部109とが設けられている。そして、この基材入り樹脂部109は、複数の基材109aと複数の樹脂110b,110cとが交互に重なって積層されている。樹脂110cは最下層の基材と回路基板101との間に設けられ、樹脂110dは、最上層の基材と銅箔145との間に設けられる。なお本実施の形態において、基材109aの厚みは約80μmであり、樹脂110bの厚みは、約10μmであり、樹脂110c,110dの厚みは約5μmである。
以上のように基材109aを積層する構成とすることで、後述する一体化工程において、回路基板101上に積層された樹脂110bは、基材109aによって回路基板101の面方向に対して流動が加速される。これにより樹脂が樹脂流動埋設部に隙間なく充填されて、空気等が残ることはない。したがって、この空気が熱膨張することによる負荷により接続が損なわれることはなく接続の信頼性が向上する。
樹脂流動埋設部108aは樹脂110bと同じく、熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂となる。このように樹脂流動埋設部108aと樹脂110bとは同じ樹脂であるので、温度に対する熱膨張係数が同じである。従って、熱変化などによる伸縮量が同じとなるので、樹脂流動埋設部108aと樹脂110bとの境界部において破損などは起こり難くなる。
また、基材109aと回路基板101との間に樹脂110cを有しているので、部品内蔵層108と回路基板101との間での剥離は起こり難い。さらに、基材109aと銅箔145との間には、樹脂110dを有しているので、部品内蔵層108と銅箔145との間での剥離は起こり難い。
さらに、基材109aには、ガラス織布を用いているので、樹脂流動埋設部108aがエポキシ樹脂のみの領域となることによる、曲げ強度の低下を抑え、熱変動での伸縮などを小さくすることができる。
なお本実施の形態では、ガラス繊維による織布を用いたが、これは不織布や、アラミド繊維などのような他の繊維によるものを用いても良い。さらに、樹脂流動埋設部108aと樹脂110bにエポキシ樹脂を用いたが、これは他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いた場合でも、本実施の形態と同じ効果を奏することができる。
次に、本実施の形態における部品内蔵基板の製造方法における各工程について、図2に示す工程の順に図3から図16を用いて説明する。図2は本実施の形態1における部品内蔵基板の製造フローチャートであり、図3は、フラックス塗布工程における部品内蔵基板の断面図である。図2、図3において、111は、フラックス塗布工程である。このフラックス塗布工程111では、半導体素子105(図5に示す)を装着するためのランドパターン104a上に、メタルスクリーン(図示せず)によってフラックス112を印刷する。
図4は、本実施の形態におけるクリームはんだ印刷工程における部品内蔵基板の断面図である。図2、図4において、113は、フラックス塗布工程111の後に設けられたクリームはんだ印刷工程である。このクリームはんだ印刷工程113では、抵抗106(図5に示す)を装着するためのランドパターン104b上にスクリーン131を用いて、図5のクリームはんだ107を印刷する。なお、このスクリーン131はステンレス製のメタルスクリーンを用い、このスクリーン131には、フラックス112が塗布された位置に凹部126を形成してある。そしてこの凹部126は、クリームはんだ107印刷時に、フラックス112がスクリーン131に付着することを防ぐものである。
図5は、本実施の形態1の電子部品装着工程における部品内蔵基板の断面図である。図2、図5において、114はクリームはんだ印刷工程の後に設けられた電子部品装着工程であり、この電子部品装着工程114では、半導体素子105や抵抗106などが、自動実装機によって回路基板101の所定位置に装着される。なお、この半導体素子105の下面105a側には、複数のはんだバンプ102が形成されているものを用いる。
図6は、本実施の形態1のリフロー工程における部品内蔵基板の断面図である。図2、図6において、115は電子部品装着工程の後に設けられたリフロー工程であり、このリフロー工程115では、クリームはんだ107を融点温度よりも高くすることによって、クリームはんだ107を溶融させて、抵抗106とランドパターン104b、半導体素子105のバンプ102とランドパターン104aとをはんだ付け固定している。なお、本実施の形態1においては、このリフロー工程115は窒素雰囲気で行っている。これによって、回路基板101の表面の酸化を抑えることができ、回路基板101とプリプレグ141a(図7に示す)との密着性を良くしている。
なお、このリフロー工程115の後に洗浄工程(図示せず)で洗浄し、フラックス112の残渣やはんだボールなどを清浄化している。そしてさらに、O2アッシャー処理や、シランカップリング処理などを行うとさらに良い。これは、これらの表面改質処理によって、回路基板101とプリプレグとの密着性を向上させることができるためである。
なお本実施の形態において、リフローはんだ付けを用いているのは、品質が高く良質なはんだ付けをするためであり、このリフローはんだ付けによれば、セルフアライメント効果によって、リフローはんだ付けされた部品は定位置に固定される。従って、部品が精度良く固定されるので、この部品に続くパターン線路の長さが一定になる。つまり、パターン線路をインダクタとして用いるような場合において、インダクタンス値が一定になり、電気性能が定められた値になる。このことは高周波回路においては特に重要なことである。
図7は、本実施の形態のプリプレグ積層工程における部品内蔵基板の断面図であり、図8は、同、部品内蔵基板の要部拡大断面図である。図2、図7、図8において、孔付プリプレグ141は、孔加工工程117で、プリプレグ141に予め半導体素子105と、抵抗106が挿入される孔142が加工される。そして、プリプレグ積層工程116は、リフロー工程の後に設けられ、回路基板101上に孔付プリプレグ141を積層する工程である。ここで、プリプレグ141には、予めガラス織布による基材109aにエポキシ樹脂を含浸させたものを用いている。そして図8に示すようにプリプレグ141が回路基板101上に積層されることとなる。これによって、回路基板101上には基材109aと樹脂110b,110c,110dとが交互に積み重なった積層体が完成する。なお、本実施の形態におけるプリプレグ141は、約80μmの基材109aに樹脂110が含浸されて、約120μmの厚みとなっている。
なお、孔142と抵抗106の外周との間に空隙144を設けているので、抵抗106が装着された回路基板101に、孔付プリプレグ141を容易に積層することができる。
また、半導体素子105や抵抗106はリフローはんだ付けによって装着されるので、クリームはんだ107の溶融によるセルフアライメント効果で、位置精度良く所定の位置へ装着される。つまり、半導体素子105や抵抗106の位置精度が良好であるので、空隙144を小さくすることができる。従って、樹脂110bが空隙156,157へ流入しやすくできる。なお、本実施の形態において、空隙144は、約0.2mmとしている。これにより、たとえ抵抗106の装着位置が、所定の位置よりもずれて装着されたとしても容易にプリプレグ141を積層することができる。
さらに、予め基材109aに対して樹脂110b,110c,110dが含浸されたプリプレグ141を用いるので、例えば基材109aと樹脂110bとに対して孔142を同時に加工することができるので、生産性が良い。また、基材109aと樹脂110bなどを夫々個別に積層する必要が無く、積層回数を少なくできる。従って生産性が良好である。
そして、プリプレグ141の最上面には孔142が設けられていないプリプレグ141aが載置され、さらにこのプリプレグ141aの上面全体に銅箔145が設けられる。そして積層工程116では、回路基板101側より順に、約20μmの厚みの樹脂110cの上に約80μmの基材109a、そしてこの基材109aの上に40μmの樹脂110bが積層されることとなる。また、最上層の基材109aと銅箔145との間には、約20μmの厚みの樹脂110dが積層されることとなる。
なお本実施の形態ではプリプレグ141aと銅箔145を用いたが、これに代えていわゆる硬化済みの回路基板(片面、両面あるいは多層基板などにかかわらず)を用いても良い。このように予め硬化された基板間を用いれば、後述する冷却工程でのプリプレグ141の熱収縮によるソリが小さくできる。また、本実施の形態では、半導体素子105と抵抗106との間隔が狭いために、複数の電子部品に対応して1個の孔142を設けた。しかし電子部品間の間隔が充分にあり、この間の隙間にプリプレグ141を設けることができる場合には、夫々の部品毎に対応して孔を設けても良い。ただしこの場合にもプリプレグ141の装着性を保つ為に、夫々の電子部品とその電子部品夫々に対応する孔との間には、空隙を設けておくことが必要である。また、この場合夫々の電子部品の高さに応じて孔の深さも変えておくと良い。このようにすれば、樹脂を埋設する体積が小さくなり樹脂が確実に充填されるためである。
次に118(図2に示す)は、プリプレグ積層工程で積層された回路基板101とプリプレグ141と銅箔145とを、はんだ107が溶融しない程度の温度で加熱圧着し、一体化する一体化工程である。以下にこの一体化工程118について、図2に示す工程の順で説明する。
図9は、本実施の形態1の一体化工程における一体化手段の断面図であり、図9を用いて、この一体化手段について詳細に説明する。151,152はプラテンであり、このプラテン152側に回路基板101が搭載される。そしてこれらプラテン151,152と、伸縮壁153とで密封容器154が構成される。そして、この密封容器154には吸引機が接続されている。160は、プラテン151,152内に埋め込まれたヒータであり、このヒータ160によってプリプレグ141を加熱する。
駆動部162とプラテン152との間には、減速機構163が挿入される。そしてこの減速機構163では、回転運動を往復運動へと変換するとともに、回転を減速している。制御回路(図示せず)は駆動部162と、ヒータ160とへ接続され、それらを動作させるためのタイミングを管理している。ここで、樹脂110は温度によって粘度が変化するため、樹脂110を所要の粘度とすべく、ヒータ160の温度コントロールを行う。
では、次にこのようにして構成された一体化手段を用いた一体化工程について詳細に説明する。図10は、本実施の形態の真空化工程における一体化手段の断面図である。図2、図9、図10において、119は、プリプレグ積層工程の後に設けられた真空化工程である。この真空化工程119において、プリプレグ積層工程116でプリプレグ141が回路基板101上に積層された部品内蔵基板を、プラテン151,152と、伸縮壁153によって構成された密封容器154内に収納する。なお、本実施の形態1において、プラテン151側は固定であり、プラテン152側が可動するものである。
そして、吸引機によって、プラテン152に設けられた孔155から密封容器154内の空気を抜き取り、密封容器154内を略真空状態にする。このとき、孔142内を略真空とすることが重要である。これは、孔142内を真空とすることで、後述する強制流入工程122で、プリプレグ141中の樹脂110bを、孔142内や、回路基板101と半導体素子105との間の隙間156や、回路基板101と抵抗106間の隙間157などへ確実に充填するためである。本実施の形態1における隙間156は、約40μmから約350μmの寸法であり、隙間157は約10μmから約40μmである。
なお、本実施の形態1においては説明の便宜上、半導体素子105を1個、抵抗106を2個のみ装着したものを用いて説明している。しかし、実際にはさらに多くの電子部品が回路基板101上に装着される。また、部品内蔵基板の生産性を考慮すると、回路基板101のサイズは大きい方が望ましい。従って、実際にはもっと多くの箇所に空隙144や隙間156,157を有することとなる訳である。
そこで真空化工程119においては、これら数多くの空隙144や隙間156,157に存在する空気を完全に吸引することが重要となる。これは、プリプレグ141内に空気が残ると、ボイドが発生しやすくなるためである。そこで、本実施の形態における積層工程116ではこのボイドを発生し難くするために、常温において粘性を有していない板体状のプリプレグ141を積層し、真空化工程119で、プリプレグ141が軟化する前に、孔142内を真空としている。これにより、プリプレグ141に粘性が生じ、プリプレグ141同士やプリプレグ141と回路基板101とが粘着する前に孔142内の空気を抜くことができる。ただし、遅くともプリプレグ141の温度がガラス転移点よりも低い温度のうちに、真空化工程119を完了することが重要である。これによって、各プリプレグ141同士の間の隙間や、プリプレグ141と回路基板101との間の隙間などから完全に空気を抜くことができるので、空隙144や隙間156,157を略真空にすることができ、ボイドが発生し難くなる。
なお本実施の形態では、真空化工程119の開始と同時にヒータ160をオンとして、プラテン151,152への加熱を開始するとともに、駆動部162によりプラテン151,152を駆動し、部品内蔵基板へ所定の圧力を加える。そしてこれにより、伸縮壁153,153が縮まり、図9に示すように、プラテン152が矢印A方向へと持ち上げられる。そして、図10に示すように、回路基板101と積層されたプリプレグ141と銅箔145とは完全にプラテン151とプラテン152との間で規定の圧力で圧縮された状態となる。なお、本実施の形態では、ヒータ160の温度は約110℃の温度とし、圧力は約平方センチメートル当たり40kgの圧力としている。
図11は、本実施の形態の軟化工程における一体化手段の断面図である。図2、図11において、120は、真空化工程の後に設けられた軟化工程である。本実施の形態においては、真空化工程119によってプラテン151,152が回路基板101と銅箔145とに接触した時点からプリプレグ141は加熱される。そして、ヒータ160の熱により、プリプレグ141に含浸した樹脂110c,110b,110dを軟化させる。本実施の形態においては樹脂110c,110b,110dの温度を約110℃まで上昇させて、粘度を約2400pa・sまで低下させる。
プリプレグ141は、プラテン151,152によって圧縮されているので、プラテン151,152を銅箔145の表面に密着させることができる。従って、ヒータ160の熱を確実にプリプレグ141へ伝えることができ、エネルギー効率が良く、省エネルギーな加熱手段を実現できる。
次に図12は、本実施の形態の強制流入工程における一体化手段の断面図である。図2および図12において、122は、軟化工程120の後に設けられた強制流入工程である。この強制流入工程122では、各プリプレグ141は、約90μmの厚みにまで圧縮される。そしてこのとき、プリプレグ141の樹脂110b,110cは、基材109aに沿って矢印B(図8に示す)の方向へと流れ、孔142内へ流出する。そして最終的に樹脂110b,110cから流れ出した樹脂によって空隙144や隙間156,157全体が充填されることとなる。
ここで、樹脂110b,110cの流速を大きくするためには、樹脂110b,110cの粘度を出来るだけ長い時間の間低い状態に保つことが望ましい。そのために、樹脂110b,110cを供給圧力下においてできる限り短い時間で流動できる粘度とすることが重要である。そのために本実施の形態における軟化工程120におけるプリプレグの温度は、毎分約4.5℃の傾斜で上昇させている。そしてさらに、強制流入工程122においてプリプレグ141は、30分の間110℃の温度に保持されるとともに、40kg/cm2の圧力で圧縮が行われる。
これによってプリプレグ141の粘度は急激に小さくなり、加熱開始から約15分で流動が開始できる粘度にまで達する。そして開始から約25分後に粘度は最も小さくなり、約1500pa・sにまで達する。そして開始から50分まで110℃を維持している。このように本実施の形態では、最低粘度の状態を出来る限り長い時間維持するために、樹脂110b,110cの粘度をできるだけ早く小さくし、空隙144や隙間156,157への充填を開始するタイミングを早くするとともに、110℃の温度を所定の時間維持することにより、熱硬化性樹脂であるために発生する加熱に伴う付加重合反応をできるだけ遅くし、加熱による粘度の上昇を抑制している。
ここで、軟化工程120においてプラテン151,152は、回路基板101やプリプレグ141を上下方向から挟んで加熱するので、これらプラテン151,152に設けられたヒータ160から近い場所と、遠い場所との間に温度差が生じ易い。一般に隙間156,157は、プラテン151,152から離れた位置に形成される。つまり、この隙間156,157の温度は樹脂110b,110cの温度よりも低い箇所もある。そしてこのように隙間156,157と樹脂110b,110cとの温度が均一となる前に、隙間156,157へ樹脂110b,110cが流入してしまうと、先端部の樹脂110aの温度が低下する。その結果、隙間156,157へ流入した樹脂110aの粘度が大きくなり、強制流入工程122においてそれ以上に樹脂110b,110cが隙間へ流れ込まず、ボイドなどの発生要因となってしまう。
そこで、本実施の形態では、強制流入工程122では約30分の間110℃の温度を維持させている。これによって、隙間156,157の温度も樹脂110b,110cの温度とを同一とし、樹脂110b,110cの温度低下による流入停止を防止している。なお、プラテン152の移動は、ストッパ161に当接することで静止する。
そして、このようにして樹脂110b,110cを隙間156,157へ充填した後に、硬化工程123(図2に示す)によって樹脂110b,110c,110dを硬化させる。この硬化工程123は、はんだバンプ102やはんだ107の液相線温度以下で加熱し、プリプレグ141の流動性を失わせて、プリプレグ141を完全に硬化させる加熱工程を行う。
ここで加熱工程では、はんだバンプ102、はんだ107の液相線温度よりも低い温度で、プリプレグ141が流動性を失うようにすることが重要となる。ここで、はんだバンプ102、はんだ107には、融点が約217℃の鉛フリーはんだを用いているので、加熱工程での樹脂110b,110cが流動性を失う温度は、少なくとも約200℃以下とすることが望ましい。そこで、本実施の形態における加熱工程での圧力は、樹脂110b,110cが約150℃で流動性を失うように40kg/cm2の圧力としている。なお、このときの樹脂110b,110cの粘度は、約24000pa・sである。
このように、加熱工程では、まず樹脂110b,110cの流動性を完全に失わせた後に、樹脂110b,110cの温度を200℃まで上昇して硬化させる。従って、この加熱工程において、樹脂110b,110cは約150℃で流動性を失うので、半導体素子105と回路基板101との間や、抵抗106と回路基板101との間での接続が外れることはない。
次にプリプレグ141の硬化が完了すると、冷却工程124(図2に示す)へ移る。この冷却工程124では、ゆっくりとした勾配で冷却を行う。そのために、プラテン151,152に挟んだ状態のままで、ヒータ160の温度を制御しながら徐冷する。なおこの徐冷は、ガラス転移点以下(TMA測定法で160℃)の温度となるまで行い、その後プラテン151,152内に水を注入し、水冷によって急冷を行う。これにより、銅箔145や樹脂110b,110c,110dとの線膨張係数の差によって生じる縮み量の差を小さくでき、部品内蔵基板のソリを小さくできる。また、回路基板101上の導体と、樹脂110b,110cとの界面での剥離などを防止することができる。
図13は、本実施の形態の切断工程における切断手段の断面図である。図2、図13において、125は、強制流入工程122によって、回路基板101の外側へ流れ出した樹脂172を切除する切断工程である。この切断工程125において、171は部品内蔵基板を切断するダイシング歯であり、この切断工程125でダイシング歯171を回転させて、不要な樹脂172を切除する。なお、本実施の形態においては、不要な樹脂172部分のみを切除するのではなく、回路基板101と樹脂172との双方を切断している。これは、回路基板101の端部より内側を切断することにより、部品内蔵基板の寸法を、回路基板101の伸縮などによらず、略一定寸法とするためである。
以上のように、一体化工程118では、軟化工程120によって急激に流動可能な温度まで加熱する。また、加熱・圧縮工程118aでは、プリプレグ141と回路基板101へ与える温度上昇を抑え、略一定の温度で維持しながら圧縮し、回路基板101とプリプレグ141とを一体化することで、部品内蔵層108を完成する。
次に、一体化工程118において、樹脂110b,110cが隙間156,157へ注入される動作について詳細に説明する。そこでまず樹脂110b,110cの温度と、圧力ならびに粘度特性との関係について図面を用いて説明する。図14は、粘度試験器にて測定した樹脂110b,110cの粘度特性図であり、横軸201が温度であり、第1の縦軸202は粘度を示している。図14において特性203は、軟化工程120と強制流入工程122における温度上昇の傾斜を一定とした場合の粘度曲線であり、特性204は、軟化工程120に対して強制流入工程122の温度上昇の傾斜を小さくした場合の粘度特性である。
軟化工程120と強制流入工程122における温度上昇を一定の傾斜となるようにした場合、昇温速度が小さくなり粘度の低下は小さくなる。これにより、最低粘度217の値が大きくなってしまうこととなる。従って強制流入工程122において樹脂110b,110cが隙間156,157へ流れ込み難くなってしまうこととなる。一方、強制流入工程122での温度上昇の傾斜を小さくあるいは略一定とし、その分軟化工程120における昇温速度を大きくした場合の方が、粘度の低下が大きく、最低粘度207の値が小さくなる。
この場合、樹脂110b,110cは、常温においては粘性を有せず、温度が上昇するにつれて軟化し粘度が低下する。温度206において最低粘度207となり、この温度206以上で粘度が増加し、硬化が促進される。本実施の形態における樹脂110b,110cでは、温度206が約133℃である場合に最低粘度207は約1150pa・sとなる。
ここで、樹脂110b,110cの流動は、この樹脂110b,110cへ加えられる圧力と、樹脂110b,110cの粘度(温度)によって決定づけられる。例えば本実施の形態のようにプラテン151,152の圧力が40kg/cm2である場合、樹脂110b,110cは、温度211で流動を開始する流動開始粘度212となる。つまり、樹脂110は、常温から温度211までの温度領域213において板体状であり、流動はしない。本実施の形態のように圧力が40kg/cm2である場合には、流動開始粘度は24000pa・sであり、そのときの、温度211は約90℃である。
次に、この温度211を超えると、樹脂110b,110cの粘度は、温度206で最低粘度207まで低下する。そこで強制流入工程122は、温度211と温度206との間の温度領域214で行われる。
この強制流入工程122が完了すると、硬化工程123で樹脂110b,110c,110dを硬化するが、この硬化工程123においてもプラテン152の圧力は40kg/cm2としている。エポキシ樹脂110b,110c,110dは、温度206以上の温度領域215になると徐々に硬化を始め、温度216で流動性を失う流動開始粘度212となる。なお、本実施の形態の圧力において、樹脂110が流動性を失う温度は、150℃であり、その粘度は24000pa・sである。
以上のようなことより、軟化工程120での温度上昇に比べ、強制流入工程122での温度上昇を小さくするとともに、強制流入工程122での温度を温度211(流動開始粘度212)と温度206(最低粘度207)との間の温度とすれば、規定の供給圧力で樹脂110は、容易に隙間156,157へ流れ込むことが可能な粘度に長い時間維持させることができる。これにより、樹脂110b,110cは圧力で強制的に流動し、孔142や隙間156,157が樹脂110b,110cで確実に充填されることとなる。
ここで、エポキシ樹脂が隙間156へ流動する動作について図面を用いて説明する。図15は、本実施の形態の強制流入工程における半導体素子105の要部拡大図であり、図16は本実施の形態の一体化工程118における特性図である。図15において、樹脂110は、プラテン151,152の圧縮により、その先端部の樹脂110aが隙間156へ流入する。このとき、空隙144に比べて隙間156は非常に小さく、樹脂110aは、縮小管を通過する粘性流体と考えられる。従って、半導体素子105の角105bの近傍で渦221が発生し、圧力損失が発生する。
また、はんだバンプ102においては、縮小管の後に拡大管を通過する粘性流体として考えられ、縮小管と拡大管とを繰返し通過することとなるのであるから、はんだバンプ102を通過する樹脂110aも、大きな圧力損失が発生し、樹脂110aの流速が低下する。従って、この樹脂110aの流れが停止しないように、樹脂110aの流速をできる限り大きくすることが重要である。
そこで、本実施形態では樹脂流動埋設部108aにガラス織布の基材109aを設け、樹脂110a〜dが流れる断面積を小さくしている。つまり、樹脂110a〜dは基材109a内をB矢印(図8に示す)方向に移動し難い。また、プリプレグ141には孔142が加工されているので、一体化工程118での圧縮力は、基材109aと樹脂110a〜dとに集中する。さらに、圧縮樹脂110a〜dは基材109aで挟まれた小さな断面積の空間を流れることとなる。これにより、プラテン152による圧縮量(あるいは圧縮圧力)に対する樹脂110a〜dの流速を大きくすることができる。従って、樹脂の粘性力に比べて樹脂の速度により生じる慣性力が大きくなるので、樹脂110a〜dの流速が加速されることとなると考えられる。この結果、樹脂110a〜dの流速が大きくなるので、空隙144や、隙間156,157などに対しても確実に樹脂110a〜dを流入させることができることとなる。
ではここで、本実施の形態における実際の一体化工程118での温度、圧力などについて図面を用いて説明する。図16(a)は、本実施の形態における時間と樹脂温度および粘度との関係図であり、図16(b)は圧力、図16(c)は真空度を示している。図16(a),(b),(c)において、横軸231は時間であり、図16(a)の第1縦軸232が温度、第2縦軸233が粘度を示す。また、図16(b)の縦軸234は圧力であり、図16(c)の縦軸235は真空度を示している。
図16(c)において、本実施の形態の真空化工程119では、時間236で真空度237とする。具体的には、時間236は約4分であり、真空度237は約37torrとしている。なお、このとき同時にプリプレグ141への圧力の供給を開始し、約1分で規定の40kg/cm2の圧力に達する。そしてさらに、ヒータ160の加熱も同時にスタートしておく。
図16(a)において特性曲線238はプリプレグ141の温度であり、特性曲線239は樹脂110a〜dの粘度を示している。真空化工程119が完了した後の軟化工程120では、樹脂110a〜dを流動可能とすべく、温度240にまで上昇させる。なお本実施の形態における温度240は、約90℃である。そして温度上昇の傾斜を約4.5℃/分とすることで、開始より約15分で温度は温度240となり、粘度は粘度248にまで下げることができる。なお、本実施の形態において用いた樹脂110a〜dは、温度が90℃となると約24000pa・sとなり、プラテン152の圧力(40kg/cm2)の圧力に対して、流動を開始する粘度となる。
強制流入工程122は、軟化工程120で樹脂110a〜dを流動可能な粘度まで下げた後に行われ、圧力249を供給した状態のままで、温度をさらに温度241にまで上げ、この温度241を約30分間維持することで樹脂110a〜dを隙間156,157へ強制的に流れ込ませる工程である。ここで、軟化工程120では出来る限り早く粘度248以下となるように素早く加熱し、強制流入工程122では、樹脂110の温度を温度241で略一定に保つと良い。これは、樹脂110a〜dの負荷重合反応を進行し難くし、長時間低い粘度を維持させるためである。
これによって、粘度248を過ぎてから30分経過した時点においても、樹脂110a〜dは流動可能な状態が維持され、圧力249によって樹脂110a〜dを確りと隙間156,157へ流動させることができる。なお、本実施の形態における温度241は約110℃であり、粘度242は、約3550pa・sである。
ここで、樹脂110a〜dが流動性を失うときに樹脂110a〜dに加えられる圧力よりも、流動開始させるときに樹脂110a〜dに加えられる圧力を大きくすると良い。これは、樹脂110a〜dを空隙144や隙間156,157へ流れ込ませるときの圧力が大きい方が、樹脂110a〜dの流動速度が大きくなり、樹脂は空隙144や隙間156,157に確りと充填されるためである。
そこで本実施の形態の積層工程116で積層されるプリプレグ141は、半導体素子105や抵抗106の上や周囲に空隙144を設けておく。つまり、一体化工程118aにおけるプラテン151,152の圧力は、当初プリプレグ141の孔142を除いた部分の面146(図8に示す。樹脂加圧流出部の一例として用いた)に対して集中することとなる。これにより樹脂110にはプラテン152が供給する圧力よりも大きな圧力が加わることとなる。また、孔142は半導体素子105あるいは抵抗106の夫々に設けるのではなく、これら半導体素子105や抵抗106全てを囲むようにしている。これにより例えば本実施の形態において孔142は、基板101全体の約1/2の面積を占めているので、樹脂110a〜dには80kg/cm2という大きな圧力を加えることができることとなる。これにより、樹脂110a〜dは本来の流動開始粘度212よりも大きな粘度(低い温度)で流動可能となるので、樹脂110a〜dが流動可能な時間を長くできる。従って、強制流入工程122においてさらに容易に樹脂110a〜dを、空隙144や隙間156,157に確実に充填することができる。
次に強制流入工程122で樹脂110a〜dの隙間156への充填が完了した後に、硬化工程123が行われる。この硬化工程123では、樹脂110a〜dの温度を圧力249において樹脂110a〜dが流動を失う温度である温度245以上の温度にまで上昇させる。これにより樹脂110a〜dは完全に流動しない状態となる。なお、本実施の形態において圧力249で流動性を失う粘度は、流動を開始する粘度248と略同じであるので、約24000pa・sである。そして硬化工程123では樹脂110a〜dの温度を200℃まで上げ、約60分間維持して完全に硬化させる。
以上のような部品内蔵基板の製造法を用いることにより、基材109aを設けることで、樹脂110a〜dの流速を大きくすることができ、半導体素子105や抵抗106と回路基板101との間の隙間156,157へ樹脂110a〜dを容易に流入させることができるので、中間材などを用いなくても半導体素子105や抵抗106と回路基板101との間に樹脂110a〜dを確実に充填することができる。従って、予め半導体素子105や抵抗106などと回路基板101との間の隙間156,157に、中間材などを充填することなく、プリプレグ141と回路基板101との一体化工程118で同時に隙間156,157へ樹脂110a〜dを確実に充填することができる部品内蔵基板の製造方法を提供することができる。
また、中間材を別途注入する工程が必要なく、また中間材も不必要となるので、低価格な部品内蔵基板を実現できる。さらに、強制流入工程122において狭い隙間156,157へ確りと樹脂110a〜dを充填できる。従って、ボイドの発生もしにくくなり、信頼性の高い部品内蔵基板を実現することができる。
ここで、樹脂110a〜dが空隙144や隙間156へ完全に充填が完了することによって、プラテン152の圧力は面146(図8に示す)と孔142内に充満した樹脂との双方に供給されることとなる。これによりプラテン151,152が供給する圧力を受ける樹脂の面積が大きくなる(本実施の形態では約2倍となる)ので、樹脂110a〜dに加わる圧力は小さくなる。このように予め半導体素子105や抵抗106に対して空隙144を有するような孔142を設けるだけで、流動可能となる時間を長くできるという効果がある。さらに、流動開始時点でプラテン151,152に供給する圧力も小さくできるので、駆動部を小型化できる。従って、設備が小型かつ低価格となる。
そして本実施の形態では、プラテン151,152の圧力は40kg/cm2という大きな圧力で圧縮できる。これは、積層工程116において、半導体素子105や抵抗106の上方にも空隙142を有するようにプリプレグ141を積層するので、プラテン151,152の圧力が直接半導体素子105や抵抗106に加わらないためである。このように大きな圧力を供給できるので、樹脂110a〜dは確実に空隙144や隙間156,157へ充填されることができる。
なお、プリプレグ141は熱硬化性樹脂であるので、一旦熱硬化された後は、たとえ再度加熱されても可塑状態には戻らない。従って、一旦樹脂110a〜dで封止された半導体素子105の固定は保持される。また、ガラス織布にエポキシ樹脂が含浸されているので、軟化工程120や、強制流入工程122において、樹脂110a〜dを流動させても、基板としての体裁を維持することができるので、寸法精度の良好な部品内蔵基板を実現することができる。
さらに、圧力249において樹脂110が流動性を失う温度245は、はんだ107の融点よりも低くすることが重要である。これは、軟化工程123の加熱によりはんだ107が溶ける前に樹脂110a〜dが固まっているようにするためである。つまり、はんだ107が溶ける温度において、樹脂110a〜dは、はんだ107の周りを覆った状態で固まっているので、たとえはんだ107が溶けてもはんだ107が流れ出さないので、信頼性が良好である。
さらにまた、硬化工程123の温度246(図16)は、はんだ107の溶融点以下としている。つまり、はんだ107には硬化工程123の温度より溶融点の高い高温はんだを用いている。このようにすれば、硬化工程123の熱ではんだ107が溶けることがないので、さらに信頼性の高い配線基板が実現できる。
また、この強制流入工程における温度は半導体素子105や抵抗106を接続固定するはんだが溶融しない程度に低い温度(150℃)で一体化するので、この一体化により接続固定が破壊されることはなく、半導体素子105と抵抗106は強固な接続固定を保つことができる。
更にまた、半導体素子105と抵抗106は回路基板101に装着されているので、この回路基板101の状態で検査をすることができ、部品内蔵基板完成後における良品率が向上する。
なお、本実施の形態においては、プリプレグ141を複数枚積層したが、これは基材109aと、樹脂110b,110c,110dとを夫々別に積層しても良い。このようにすれば、適宜製品の厚さなどに応じて樹脂110b〜dの流動速度を適宜変化させることができる。
さらに、本実施の形態では強制流入工程122の温度は一旦温度241を超えるオーバーシュート部247(図16)を設けている。これにより、軟化工程120での温度上昇の傾斜を大きくすることができるので、素早く樹脂110a〜dの粘度を下げることができる。したがって、強制流入工程122において長い時の間低い粘度を維持でき、樹脂110a〜dの流動性が良くなる。ここで、本実施の形態におけるオーバーシュート部247での最高温度は、115℃としている。なおこのオーバーシュート部247における最高温度は、供給圧力で硬化を開始する温度244(125℃)よりも低くしておくことが重要である。
なお、積層工程116において、基板101上に積層される樹脂110a〜dの量は、空隙142や隙間156,157が完全に樹脂110a〜dで充満しても余りあるような樹脂量が供給されることが必要である。これは、プリプレグ141の厚みのばらつきや、基材109aのばらつきや、圧力、温度などの条件のばらつきなどを含めても、樹脂110a〜dを確実に空隙144や隙間156,157へ充填させるためである。ところが、この供給量は多すぎると基板101の外周からはみ出す樹脂が多くなるので非常に不経済となる。そこで、本実施形態では、基材109aを設けることによって樹脂110a〜dの流れを加速しているので、できる限り樹脂110a〜dの余りが少なくなるような樹脂量で空隙144や隙間156,157を樹脂110a〜dで充満することができる。
また、この樹脂110a〜dの過供給により、一体化工程118aにおいて空隙114や隙間156,157内の樹脂圧が大きくなり、ストレスとして残留しソリを発生することや、極端な場合には部品を破壊するようなこともある。そこで、この一体化工程118aでの圧縮は、基材109aと基板101との間や、基材109a同士の間および、基材109aと銅箔145との間に、夫々樹脂層110a〜dが残るように圧縮することが重要である。これにより、積層工程116において過供給された樹脂110a〜dは、基板101の外周方向へ流れ易くなる。
つまり、基材109aと基板101との間や、基材109a同士の間および、基材109aと銅箔145とを完全に密着させないことで、基材109aが圧縮されたときに、過供給による余分な樹脂分をこれら樹脂層110部分を通過して外周側へと流動させている。これによって、一体化工程118aにおいて空隙114や隙間156,157内の樹脂圧の上昇が小さくなるので、ソリや部品の破壊などが発生し難くなる。
以上のように、複数の基材109aと複数の樹脂110b,110cとが交互に重なって積層された基材入り樹脂部109を設けたり、加熱条件により樹脂110が流動可能となる時間を長くしたり、あるいは樹脂110に加えられる圧力を変化させるなどによって、樹脂110a〜dを孔142内に流れやすくすることで、従来のように半導体素子105と抵抗106との間に基材109aを設けなくても、隙間を樹脂で完全に充填することが可能となる。これにより、半導体素子105と抵抗106との間に基材109aを設けなくても良い。従って、半導体素子105と抵抗106などの電子部品間を小さくできるので、電子部品を高密度に実装できる。その結果、部品内蔵基板の小型化が可能となり、これを用いたモジュールなども小型化できるという効果を有する。