JP4460036B2 - 可燃性長尺物貫通部の防火処理部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケーブルやプラスチック配管などの可燃性長尺物が壁や床などの防火区画体を貫通する部分に用いられる防火処理部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の可燃性長尺物貫通部の一般的な防火処理構造を図6に示す。この防火処理構造は、コンクリート壁などの防火区画体10に形成された穴に金属管12(電線管)を貫通配置してモルタル14により固定し、この金属管12にケーブル等の可燃性長尺物を貫通させた後、金属管12の両端を耐熱性シール材18で塞ぎ、さらにこの耐熱性シール材18を包むように二つ割型の金属製カバー20を被せて、このカバー20を締付け部材22により金属管12の端部に固定したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の防火処理構造は、上記のように防火区画体を金属管が貫通しているため、防火区画体の片側で火災が発生した場合、金属管の熱伝導によって火災の熱が防火区画体の反火災側に伝わりやすいという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、以上のような問題点に鑑み、火災の熱が防火区画体の反火災側に伝わりにくい可燃性長尺物の防火処理部材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は、可燃性長尺物が防火区画体を貫通する部分の防火処理部材であって、内面側に熱膨張性耐火材を収納した2本の金属筒体が、軸線方向に間隔をあけて、前記金属筒体より熱伝導性の低い材料で作られた筒状の中間部材によって連結され、少なくとも一方の金属筒体が前記中間部材に軸線方向に移動可能に取り付けられていることを特徴とするものである。
このような防火処理部材を用いると、一方の金属筒体が火炎で加熱されても、中間に熱伝導性の低い筒状の中間部材があるため、火災の熱が他方の金属筒体に伝わり難くなり、延焼防止の効果がさらに向上する。
【0006】
また、少なくとも一方の金属筒体が中間部材に軸線方向に移動可能に取り付けられているため、施工時に防火処理部材の長さを防火区画体の厚さに応じて調整できると共に、保管時、運送時には防火処理部材の長さを縮めた状態にすることにより、省スペースを図ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔関連技術1〕
図1は本発明の関連技術を示す。この防火処理部材30は、軸線方向に間隔をあけて配置された2本の金属筒体32A、32Bを有しており、この2本の金属筒体32A、32Bは筒状の中間部材34によって連結されている。中間部材34は金属筒体32A、32Bより熱伝導性の低い材料、例えばプラスチック又はセラミック等で形成され、金属筒体32A、32Bと一体化されている。また金属筒体32A、32Bの外端付近にはそれぞれ環状膨出部36が形成され、この環状膨出部36の内面側の凹部には熱膨張性耐火材38が収納されている。
【0008】
熱膨張性耐火材38は、火災時の熱で加熱されると12〜20倍に体積膨張し、かつ膨張した状態で耐火性を保持するもので、このようなものとしては例えばブチルゴム等のベース樹脂と、熱膨張性黒鉛などの膨張材と、ポリカーボネート等の加熱によって炭化物等の残渣を生成する樹脂とからなる組成物が公知である。市販品では株式会社古河テクノマテリアル製のダンシールD(商品名)などがある。このほかドイツのバイエル社製のフォモックス(商品名)、米国の3M社製のファイヤーバリヤー(商品名)なども使用可能である。
【0009】
この防火処理部材30の使用方法は次のとおりである。まず防火処理部材30を防火区画体の穴に通してモルタル等により固定し、その後、防火処理部材30にケーブル等の可燃性長尺物を貫通させるだけでよい。従来のように耐熱性シール材の盛り付け、二つ割金属製カバーの取り付けは必要ないため、施工は非常に簡単である。施工後、防火区画体の片側で火災が発生した場合は、その熱で熱膨張性耐火材38が膨張して,金属筒体32A又は32Bと可燃性長尺物との間の隙間を埋め、可燃性長尺物の延焼を防止する。また火災により一方の金属筒体例えば32Aが加熱されても、中間に熱伝導性の低い中間部材34が存在するため、反火災側の金属筒体32Bに熱が伝わり難く、反火災側で発煙などのトラブルが発生するおそれが少なくなる。
【0010】
〔実施形態1〕
図2及び図3は本発明の一実施形態を使用状態で示す。ここで使用する防火処理部材30は、2本のらせん波付き金属筒体40A、40Bと、この2本のらせん波付き金属筒体40A、40Bを軸線方向に間隔をあけて連結する筒状の中間部材34と、らせん波付き金属筒体40A、40Bの内面のらせん溝内に収納された紐状の熱膨張性耐火材38とから構成されている。中間部材34及び熱膨張性耐火材38の材質は関連技術1と同じである。
【0011】
中間部材34の内面には、らせん波付き金属筒体40A、40Bの外面のらせん溝とねじ結合するらせん突条42が形成されている。つまり、らせん波付き金属筒体40A、40Bは、その内端側を中間部材34にねじ込むことにより連結されており、そのねじ込み量を調整することで防火処理部材30の長さが調整できるようになっている。また中間部材34の内面の軸線方向中央部には、らせん波付き金属筒体40A、40Bの内端が突き当たるストッパー44が突設されている。このストッパー44はらせん波付き金属筒体40A、40Bの最大ねじ込み量を規制すると共に、らせん波付き金属筒体40A、40Bを接触させないようにする(熱絶縁する)ためのものである。
【0012】
また熱膨張性耐火材38を、らせん波付き金属筒体40A、40Bの内面のらせん溝内に収納したのは、防火処理部材30内にケーブル等の可燃性長尺物を貫通させるときに、熱膨張性耐火材38が可燃性長尺物により擦られて移動したり損傷したりしないようにするためである。
【0013】
図2は、らせん波付き金属筒体40A、40Bを中間部材34にその内端がストッパー44に突き当たるまでねじ込んだ状態で、つまり防火処理部材30の長さを最も短くした状態で、防火区画体10の穴に挿通し、モルタル14で固定した場合である。これは防火区画体10の厚さが比較的薄い場合である。防火処理部材30はこのようにらせん波付き金属筒体40A、40Bの外端側が防火区画体10から突出するように設置される。これに対し図3は防火区画体10の厚さが比較的厚い場合である。この場合は、らせん波付き金属筒体40A、40Bを中間部材34に途中までねじ込んだ状態で、つまり防火処理部材30の長さを長くした状態で、防火区画体10の穴に挿通し、モルタル14で固定する。
【0014】
このように、この実施形態の防火処理部材30は防火区画体10の厚さに応じて長さを調整できるため、1種類のサイズで厚さの異なる防火区画体に容易に対応できる利点がある。もちろん関連技術1と同様、らせん波付き金属筒体40A、40Bが熱伝導性の低い中間部材34によって軸線方向に間隔をあけて連結されているため、防火区画体の片側で発生した火災の熱が反火災側に伝わり難いという利点はそのまま備えている。さらに防火処理部材30の長さを図2のように最も短くした状態で、保管、運送ができるため、保管時、運送時のスペースを節約できる利点もある。
【0015】
この実施形態の防火処理部材30をさらに具体化した例を説明すると、らせん波付き金属筒体40A、40Bとして外径60mm、内径50mm、長さ70mmのステンレス製波付き管を使用し、その内面の谷部に熱膨張性耐火材(古河テクノマテリアル製ダンシールD3mm厚の紐状体)を外端側から4周分収納した。この2本の波付き管を、長さ70mmのプラスチック(ポリ塩化ビニル)製中間部材34に両端からねじ込んで連結した。このようにして得られた防火処理部材30は、最短150mm から最長200mm まで長さを調整することが可能である。またこの防火処理部材30を防火壁に取り付けて、JISA−1304による標準加熱試験(2時間)を行った結果、火災側温度は1025℃であったが、反火災側には延焼、発火は見られず、反火災側のケーブルの最高温度は250 ℃であった。
【0016】
〔実施形態2〕
図4は本発明の他の実施形態を示す。この防火処理部材30も関連技術1と同様、2本の金属筒体32A、32Bを、軸線方向に間隔をあけて、熱伝導性の低い中間部材34により連結し、金属筒体32A、32Bの外端付近に膨出部36を形成して、その内側に熱膨張性耐火材38を収納したものであるが、関連技術1と異なる点は、金属筒体32A、32Bを中間部材34に対して軸線方向にスライド可能にしたことである。金属筒体32A、32Bが中間部材34から引き抜けないようにするため、金属筒体32A、32Bの内端には鍔部46が形成され、中間部材34の両端には内向き突縁48が形成されている。また中間部材34の内面の軸線方向中央部には金属筒体32Aと32Bの接触を防止するストッパー44が形成されている。
このような構成でも実施形態1と同様な効果を得ることができる。
【0017】
〔実施形態3〕
図5は本発明のさらに他の実施形態を示す。この防火処理部材30は実施形態2と同様のものであるが、実施形態2と異なる点は、中間部材34が金属筒体32A、32Bの内側に入るようにしたことである。これに伴い、金属筒体32A、32Bの内端には内向き突縁50が形成され、中間部材34の両端には鍔部52が形成されている。また中間部材34のストッパー44は中間部材34の外面に形成されている。上記以外の構成は実施形態2と同様である。このような構成でも実施形態2と同様な効果を得ることができる。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、火災側の熱が反火災側に伝わり難い、より延焼防止効果のすぐれた防火処理部材を得ることができる。
また金属筒体を中間部材に軸線方向に移動可能に取り付けるようにすれば、全体の長さを調整できるので、厚さの異なる防火区画体に容易に対応できると共に、保管時、運搬時のスペースを節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る防火処理部材の関連技術を示す半分切開側面図。
【図2】 本発明に係る防火処理部材の一実施形態を使用状態で示す半分切開側面図。
【図3】 図2の防火処理部材の異なる使用状態を示す半分切開側面図。
【図4】 本発明に係る防火処理部材の他の実施形態を示す半分切開側面図。
【図5】 本発明に係る防火処理部材のさらに他の実施形態を示す半分切開側面図。
【図6】 従来の防火処理部材の一般的な例を示す断面図。
【符号の説明】
10:防火区画体
14:モルタル
30:防火処理部材
32A、32B:金属筒体
34:中間部材
36:膨出部
38:熱膨張性耐火材
40A、40B:らせん波付き金属筒体
42:らせん突条
44:ストッパー
Claims (2)
- 可燃性長尺物(16)が防火区画体(10)を貫通する部分の防火処理部材であって、内面側に熱膨張性耐火材(38)を収納した2本の金属筒体(32A、32B)が、軸線方向に間隔をあけて、前記金属筒体より熱伝導性の低い材料で作られた筒状の中間部材(34)によって連結され、少なくとも一方の金属筒体(32A、32B)が前記中間部材(34)に軸線方向に移動可能に取り付けられていることを特徴とする可燃性長尺物貫通部の防火処理部材。
- 2本の金属筒体(32A、32B)がそれぞれ前記中間部材(34)に軸線方向に移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の防火処理部材。
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