JP4459587B2 - 脱揮押出装置を用いた(メタ)アクリル系重合体の製造方法 - Google Patents

脱揮押出装置を用いた(メタ)アクリル系重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、脱揮押出装置を用いた(メタ)アクリル系重合体の製造方法に関する。
メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル系単量体を重合して製造される、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの(メタ)アクリル系重合体は、透明性、耐候性、外観に優れており、照明、看板、車両等の多くの分野で使用されている。また、光学レンズ、ディスク基盤、プラスチック光ファイバ等の光学用途にも広く適用されている。
(メタ)アクリル系重合体の製造方法としては、懸濁重合法によるものが一般的であるが、使用する懸濁分散剤等の補助剤が(メタ)アクリル系重合体中に混入するため、その透明性が低下し光学用途に不向きであった。また、濾過・洗浄・乾燥と煩雑な工程を要し、生産性が悪かった。
(メタ)アクリル系重合体の製造方法としては、上記の懸濁重合法の他に、塊状重合法や溶液重合法が知られている。これらの方法によれば、透明性が低下することなく優れた特性を有する(メタ)アクリル系重合体を製造することが可能である。さらに最近は、塊状重合法、あるいは溶媒を少量含む溶液重合法による製造を連続的に行うことで、生産性を高めた連続重合法が注目されている。ところが、これらの手法による(メタ)アクリル系重合体の製造においては、その重合体含有率が高くなると、いわゆる「ゲル効果」により重合反応速度が急激に加速する現象が起こることが知られている。すなわち、重合体含有率が高い状態で、安定した重合反応を起こすように制御することは非常に難しい。
したがって、安定した重合反応を実現するために、重合体含有率が低い段階で重合反応を終了することが多い。得られた(メタ)アクリル系重合体及び未反応の(メタ)アクリル系単量体を主成分とする揮発成分を含む反応混合物は、重合釜から抜き出された後に加熱・加圧され、ベントを有する脱揮押出装置に導入される。内部が減圧状態の脱揮押出装置にて反応混合物中に含まれる揮発成分が除去され、目的とする(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。例えば、得られた反応混合物を20kg/cm2以上に加圧かつ210〜270℃に加熱して、50torr以上大気圧以下の圧力に調整された脱揮押出装置の供給部に導入し、ベント部の圧力を50torr以下かつ温度を250〜290℃に調整することで、揮発成分含有量の少ない(メタ)アクリル系重合体の製造方法が知られている(特許文献1)。
通常、脱揮押出装置において、内部に挿入されているスクリューと脱揮押出装置本体の接触部の周辺には軸シール部が形成されており、脱揮押出装置の内部が減圧状態で維持でき、かつスクリューがなめらかに回転できる構造となっている。しかし、長期間の製造を連続して行うと、脱揮押出装置内の軸シール部付近に(メタ)アクリル系単量体あるいはその重合体等が付着し、製造される(メタ)アクリル系重合体に異物が混入する、また、場合によっては軸シール部が重合体で覆われ、スクリューの運転そのものが困難になる、などの問題があった。
特開昭50−40688号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、長期間の運転をしても、軸シール部に重合体が付着せず、得られる重合体に異物が混入しない脱揮押出装置を用いて、異物の混入のない(メタ)アクリル系重合体を長期にわたり連続して安定に製造可能な方法を提供することを目的とする。
本発明は、
重合体と揮発成分とを含む反応混合物を供給可能な反応混合物供給口と、
該反応混合物から分離された前記重合体を排出可能な重合体排出口と、
該反応混合物から分離された前記揮発成分を排出可能な、一つまたは複数のベントと、
回転可能なスクリューと、
該スクリューが挿入された挿入口の周囲に設置された、内部の気密性を保つ軸シール部と、
前記反応混合物供給口および前記ベントが設置された位置のいずれよりも前記軸シール部側の位置に設置された、ガス導入口
を有る脱揮押出装置を用いる。このような脱揮押出装置によれば、長期間の運転をしても、軸シール部に重合体が付着することなく、得られる重合体に異物が混入しない。
上記のような脱揮押出装置において、前記ベントの少なくとも一つが、前記反応混合物供給口が設置された位置よりも前記軸シール側の位置に設置されていることが好ましい。また、前記軸シール部がウィルソンシールにより形成されていることが好ましい。
上記のような脱揮押出装置と、重合釜と、該重合釜と該脱揮押出装置を連結する連結部とを有する(メタ)アクリル系重合体の製造装置とすることが、本発明で用いる装置の好ましい実施形態である。
そして、本発明は、上記のような脱揮押出装置を用いて、
(A)(メタ)アクリル系単量体と、ラジカル重合開始剤と、連鎖移動剤とを含有する原料組成物を重合釜へ連続的に供給する工程と、
(B)該重合釜で、前記(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部を重合させて、前記(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部が重合した(メタ)アクリル系重合体を含む反応混合物とする工程と、
(C)該反応混合物を前記重合釜から連続的に抜き出す工程と、
(D)前記重合釜から抜き出された前記反応混合物を、前記脱揮押出装置に導入し、前記ガス導入口から不活性ガスを導入しながら脱揮処理して、前記(メタ)アクリル系重合体を得る工程と
を有することを特徴とする(メタ)アクリル系重合体の製造方法である。また、前記ガス導入口から導入する不活性ガスの流量が、0.5〜5L/minであることがさらに好ましい。
本発明で用いる脱揮押出装置によれば、長期間の運転をしても、軸シール部に重合体が付着せず、得られる重合体に異物が混入しない。また、本発明によれば、異物の混入のない(メタ)アクリル系重合体を長期にわたり連続して安定に製造可能な方法となる。
本発明の脱揮押出装置は、重合体と揮発成分とを含む反応混合物を供給し、減圧下で脱揮処理をして揮発成分をベントから排出し、揮発成分が除去された重合体を重合体排出口から取り出すものである。したがって、
重合体と揮発成分とを含む反応混合物を供給可能な反応混合物供給口と、
反応混合物から分離された重合体を排出可能な重合体排出口と、
反応混合物から分離された揮発成分を排出可能な、一つまたは複数のベントと、
回転可能なスクリューと、
スクリューが挿入された挿入口の周囲に設置された、内部の気密性を保つ軸シール部と
を有する脱揮押出装置に関するものであり、
反応混合物供給口およびベントが設置された位置のいずれよりも軸シール部側の位置に設置された、ガス導入口をさらに有することが本発明の特徴である。
このような本発明の脱揮押出装置の一構成例の概略を図1に示す。重合体と揮発成分とを含む反応混合物は反応混合物供給口41から供給される。この時、脱揮押出装置内部は減圧状態になっているため、反応混合物が反応混合物供給口41付近で霧状にフラッシュし、反応混合物に含まれる揮発成分の少なくとも一部がベント42から排出される。さらに、反応混合物がスクリュー47の回転により図1において右方向に進み、リング51によって一時的に滞留するとともに加圧され、その隙間から再度フラッシュすることで、反応混合物に含まれる揮発成分の少なくとも一部が気化しベント43から排出される。このようにして揮発成分の多くはベントから除去され、揮発成分の少ない重合体を重合体排出口44から得ることができる。また、脱揮押出装置内部の減圧状態を維持するために、スクリューが挿入された挿入口の周囲は、軸シール部46によりシールされている。また、反応混合物供給口41並びにベント42及び43が設置された位置のいずれよりも軸シール部46側にガス導入口45が設置されており、このガス導入口45からガスを導入することが可能な構成となっている。
従来のガス導入口の無い脱揮押出装置では、長期間の製造を連続して行うと、脱揮押出装置内の軸シール部付近に揮発成分に含まれる単量体やその重合体等が付着し、得られる重合体に異物が混入する、また、場合によっては軸シール部が重合体で覆われ、スクリューの運転そのものが困難になる、などの問題があった。このとき、軸シール部付近では、揮発成分に含まれる単量体成分が軸シール部付近で液化して付着し、また熱により重合し重合体となっており、その付着物が飛散し異物として重合体中に混入していると考えられる。本発明の脱揮押出装置では、反応混合物供給口およびベントが設置された位置のいずれよりも軸シール部側の位置にガス導入口が設けられており、ガス導入口からガスを導入することが可能な構成となっている。すなわち、例えば図1における脱揮押出装置においては、ガス導入口45とベント42との間の空間では、導入したガスにより右方向へのガスの流れが形成されるため、揮発成分に含まれる単量体成分は軸シール部付近まで到達しにくくなる。したがって、長期間の運転を連続して行っても、脱揮押出装置内の軸シール部付近に揮発成分に含まれる単量体やその重合体等が付着することなく、得られる重合体に異物が混入しなくなる。
以上の観点からガス導入口はできるだけ軸シール部に近い場所に設置されることが好ましい。
本発明の脱揮押出装置に設置されるベントの数には特に制限はなく、図1の脱揮押出装置のようにベントが2箇所に設置されていても良く、1箇所でも3箇所以上でも構わない。脱揮効率と運転コストの観点から、2〜4つのベントが設置されていることが好ましい。ただし、複数のベントが設置される場合のガス導入口の設置位置は、反応混合物供給口と全てのベントが設置された位置よりも軸シール部側でなければならない。ベントと反応混合物供給口との位置関係についても制限はないが、特に、ベントの少なくとも一つが、反応混合物供給口が設置された位置よりも軸シール側の位置に設置されている脱揮押出装置においては、本発明のようなガス導入口を設置する効果が大きいため、好ましい。
本発明の脱揮押出装置で用いる軸シール部は、公知の軸シールの形態で形成されていれば良く、メカニカルシール、グランドパッキン、ウィルソンシール、Oリングシール、ベローズシール等を使用することができる。特に、ウィルソンシールにより軸シール部が形成された脱揮押出装置においては、本発明のようなガス導入口を設置する効果が大きいため、好ましい。ウィルソンシールに用いるグリースとしては、例えば東芝シリコーン社製YG−6080(商品名)等を用いることができる。
本発明の脱揮押出装置に用いるスクリューの本数及び構成は特に制限が無く、重合体の物性や製品への要求特性等を考慮して適宜選定して用いればよい。スクリュー径としては、例えばφ30〜300mm程度のものを用いることができる。
以上の説明のように、本発明の脱揮押出装置によれば、長期間の運転をしても、軸シール部に重合体が付着せず、得られる重合体に異物が混入しなくなる。
また、本発明は、上記のような脱揮押出装置と、重合釜と、該重合釜と該脱揮押出装置を連結する連結部とを有する(メタ)アクリル系重合体の製造装置に関する。
本発明で用いる重合釜は、原料組成物供給口、反応混合物排出口、および攪拌装置を備えた槽型反応装置を用いることができ、攪拌装置は重合釜内全体にわたる混合性能を持つことが好ましい。また、必要に応じて除熱、あるいは加熱して所定の重合温度に制御する機構を有することが好ましい。温度制御する機構としては、既知の機構を使用することができる。例えば、重合釜周囲に設置されたジャケットを用いる機構、重合釜内に設置したドラフトチューブあるいはコイル等へ熱媒を循環する機構、原料組成物の温度調整により温度制御する機構等を採用することができる。
本発明における連結部は、反応混合物を送液するための配管、送液用のポンプ、反応混合物加熱用の加熱機を具備したものを用いることができる。その他に、機械式背圧弁、調圧バルブ、圧力計式調圧弁等の圧力調整手段や、スタティックミキサーを内装した管型反応器等を具備しても良い。特に、機械式背圧弁を設置すると、反応混合物の圧力を一定に保つことができるため、好ましい。
図2には、本発明の(メタ)アクリル系重合体の製造装置の一構成例を示す。攪拌装置11を備えた重合釜10には、原料組成物投入口12及び反応混合物排出口13が設けられている。反応混合物排出口13は、脱揮押出装置40の反応混合物供給口41と連結部20によって連結されている。連結部には、ポンプ21及び加熱機22が配置され、それぞれが配管23〜25によって接続されている。
以上のような(メタ)アクリル系重合体の製造装置によれば、脱揮押出装置のスクリュー軸シール部付近に揮発成分に含まれる単量体やその重合体等が付着しないため、異物の混入のない(メタ)アクリル系重合体を長期にわたり連続して安定に製造可能となる。
次に、本発明の(メタ)アクリル系重合体の製造方法について説明する。
本発明の(メタ)アクリル系重合体の製造方法は、
(A)(メタ)アクリル系単量体と、ラジカル重合開始剤と、連鎖移動剤とを含有する原料組成物を重合釜へ連続的に供給する工程と、
(B)該重合釜で、前記(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部を重合させて、前記(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部が重合した(メタ)アクリル系重合体を含む反応混合物とする工程と、
(C)該反応混合物を前記重合釜から連続的に抜き出す工程と、
(D)前記重合釜から抜き出された前記反応混合物を、上述のような脱揮押出装置に導入し、前記ガス導入口からガスを導入しながら脱揮処理して、前記(メタ)アクリル系重合体を得る工程と
を有することを特徴である。
本発明の(メタ)アクリル系重合体の製造方法は、(メタ)アクリル系単量体の塊状重合または溶液重合に好適に適用されるものである。(メタ)アクリル系単量体としては特に限定されず、例えば炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル系単量体は、単独でも、2種以上を併用することもできる。なお、「(メタ)アクリル酸」の表現は、メタクリル酸あるいはアクリル酸を意味する(以下同様)。
本発明は、メタクリル酸メチル単位を80質量%以上含有し、さらにメタクリル酸メチル単位以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含有する(メタ)アクリル系重合体を製造するときに好適である。このとき、メタクリル酸メチルとメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは一般に重合活性が異なるので、上記のような(メタ)アクリル系重合体を得ようとする場合には、(メタ)アクリル系単量体の組成を重合活性に応じて適宜選定するのが好ましい。例えば、メタクリル酸メチル単位を80質量%と、アクリル酸メチル単位又はアクリル酸エチル単位を20質量%とを有する(メタ)アクリル系重合体を製造する場合の(メタ)アクリル系単量体の組成は、ラジカル重合開始剤の種類や重合温度等の条件により異なるが、メタクリル酸メチル75質量%程度、アクリル酸メチル又はアクリル酸エチル25質量%程度とすることが好ましい。
本発明におけるラジカル重合開始剤は特に限定されず、有機過酸化物またはアゾ化合物等の公知のラジカル重合開始剤を、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、重合釜における重合温度での半減期が10秒〜1時間のラジカル重合開始剤である。半減期が短すぎるラジカル開始剤の場合、反応の均一性が低下することがあり、半減期が長すぎるラジカル開始剤の場合、重合釜内で重合体塊が生成しやすく安定に運転することが困難となることがある。より好ましくは、重合釜における重合温度での半減期が120秒〜30分のラジカル重合開始剤である。なお、上記のラジカル重合開始剤の「半減期」の値は、日本油脂(株)または和光純薬(株)等の公知の製品カタログに記載の値とした。
このようなラジカル開始剤としては、例えば、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサネート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物;2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビスイソブチレート、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)等のアゾ化合物等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、重合温度や生産性を考慮して適宜選定すれば良く、例えば、(メタ)アクリル系単量体1モルに対して5.0×10-6〜5.0×10-5モル程度の量を使用することができる。
本発明における連鎖移動剤は特に限定されず、塩素含有化合物、アルキルベンゼン化合物、メルカプタン化合物等の公知の連鎖移動剤を、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の効率が高く、製造する(メタ)アクリル系重合体の耐熱分解性が優れることから、メルカプタン化合物が好適である。
メルカプタン化合物としては、n−ブチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、sec−ブチルメルカプタン、sec−ドデシルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン等のアルキル基又は置換アルキル基を有する第1級、第2級、第3級メルカプタン化合物;フェニルメルカプタン、チオクレゾール、4−tert−ブチル−o−チオクレゾール等の芳香族メルカプタン化合物;チオグリコール酸とそのエステル;エチレンチオグリコール等の炭素数3〜18のメルカプタン化合物等が挙げられる。これらのメルカプタン化合物の中でも、tert−ブチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンが特に好適である。
連鎖移動剤の使用量は、目的とする(メタ)アクリル系重合体の物性を考慮して適宜選定すれば良く、例えば、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(標準ポリスチレン換算値)が70000〜150000の範囲となるような使用量が好ましい。具体的には、(メタ)アクリル系単量体100モルに対して0.01〜1.0モル、好ましくは0.05〜0.5モルである。多すぎると、(メタ)アクリル系重合体の重合度が低くなり製品強度が低下することがある。少なすぎると、(メタ)アクリル系重合体の耐熱分解性が低下することがある。
本発明では、上述のような成分を含有する原料組成物を重合釜へ連続的に供給し、重合釜で(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部を重合させて、(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部が重合した(メタ)アクリル系重合体を含む反応混合物とする。(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部を重合させる形式としては、不活性溶媒を使用しない塊状重合でも、不活性溶媒を使用した溶液重合でも良い。特に好ましくは塊状重合である。溶液重合であっても、使用する不活性溶媒が反応混合物全体の5質量%未満であれば、塊状重合と同様に、少量のラジカル重合開始剤で効率よく重合率を高めることが可能であり、耐熱分解性に優れた(メタ)アクリル系重合体を生産性よく製造可能であるため好ましい。使用する不活性溶媒が多すぎる溶液重合の系では、多量のラジカル重合開始剤を使用する必要があり、重合反応の制御が難しくなる。不活性溶媒としては、メタノール、エタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、酢酸ブチルなど公知の有機溶媒が使用可能である。メタノール、トルエン、エチルベンゼン、酢酸ブチルが特に好ましい。不活性溶媒は、上述のような(メタ)アクリル系単量体と、ラジカル重合開始剤と、連鎖移動剤とを含有する原料組成物に添加して用いることができる。
重合釜で(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部を重合させる際の温度は、用いる原料の種類や配合比等から適宜選定すれば良い。その温度制御は既知の方法によって行うことができる。例えば、ジャケットによる温度制御、重合釜内に設置したドラフトチューブあるいはコイル等への熱媒循環による温度制御、原料組成物の温度調整による温度制御等の方法を採用することができる。
本発明においては、(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部が重合した(メタ)アクリル系重合体を含む反応混合物を重合釜から連続的に抜き出す工程を有する。反応混合物の重合釜での平均滞在時間は、1〜6時間の範囲で実施することが好ましい。この範囲内にすることにより、重合制御を安定にすることができるとともに、成形加工性に優れた(メタ)アクリル系重合体を製造することができる。滞在時間が短すぎると、ラジカル開始剤の使用量を増やす必要があり、ラジカル開始剤の増加により重合反応の制御が難しくなるとともに、(メタ)アクリル系重合体の末端二重結合量が多くなるため耐熱分解性に優れた重合体は得られない。より好ましくは2時間以上である。一方、上記平均滞留時間が長すぎると生産性が低下するとともに、(メタ)アクリル系単量体の二量体の生成が多くなるため好ましくない。より好ましくは5時間以下である。
また、重合釜から抜き出す反応混合物は、重合体含有率が35〜65質量%の範囲であることが好ましい。重合体含有率が高すぎると、混合および伝熱の効率が低下し安定性が悪くなる場合がある。重合体含有率が低すぎると、未反応の(メタ)アクリル系単量体を主成分とする揮発物の分離が難しくなる。
重合釜から抜き出された反応混合物は、通常、180〜250℃かつ1〜3MPa(ゲージ圧表記)程度に加熱・加圧され、前述のようなガス導入口を有する脱揮押出装置に導入され、ガス導入口からガスを導入しながら脱揮処理される。用いるガスについては特に制限はなく、空気であっても、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスであっても良い。ただし、空気を導入すると(メタ)アクリル系重合体の酸化劣化が起こる可能性があるので、不活性ガスを導入することが特に好ましい。導入するガスの流量は、脱揮押出装置の構造、スクリューの径、(メタ)アクリル系重合体の製造速度等を考慮して適宜設定すればよいが、(メタ)アクリル系単量体が軸シール部に到達しにくく、かつ、(メタ)アクリル系重合体と揮発成分とを分離する性能を維持する観点から、0.5〜5L/minが好ましい。
脱揮処理は、連続的に送られてくる反応混合物を、減圧(例えば、上流側のベント圧力を−0.01〜−0.04MPa(ゲージ圧表記)程度に、下流側のベント圧力を−0.09〜−0.1MPa(ゲージ圧表記)程度に調整)下に200〜290℃に加熱することで、未反応の(メタ)アクリル系単量体を主成分とする揮発成分の大部分を連続的に分離除去することで実施できる。得られる(メタ)アクリル系重合体に残存する、(メタ)アクリル系単量体の二量体が1000質量ppm以下、かつ(メタ)アクリル系単量体が3000質量ppm以下であることが好ましい。これにより、高い熱変形温度と優れた成形加工性を有する(メタ)アクリル系重合体となる。さらに、残存する連鎖移動剤は50質量ppm以下にすることが好ましい。これにより(メタ)アクリル系重合体の成形加工時の加熱による着色を抑制することができる。これらは、脱揮処理の圧力や温度の条件を適宜設定することにより達成することができる。
上記の脱揮処理と同時に、またはその後に、必要に応じて、高級アルコール類、高級脂肪酸エステル類等の滑剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、帯電防止剤等を、(メタ)アクリル系重合体に添加することができる。
以上のような(メタ)アクリル系重合体の製造方法によれば、脱揮押出装置のスクリュー軸シール部付近に単量体やその重合体等が付着しないため、異物の混入のない(メタ)アクリル系重合体を長期にわたり連続して安定に製造可能となる。
本発明の製造方法及び製造装置により得られた(メタ)アクリル系重合体は、その優れた透明性や耐候性を生かして照明、看板、車両等の多くの分野で使用できる。また、光学レンズ、ディスク基盤、プラスチック光ファイバ等の光学用途にも適用できる。さらに、射出成形時に、シリンダ内での保持時間が長くなる大型成形品や、樹脂温度を高く設定する薄肉成形品にも適している。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
攪拌装置を備えた槽型反応装置に、以下のような配合比となる原料組成物1を供給し、重合温度135℃、平均滞在時間3時間となるように設定して、重合反応を行った。
<原料組成物1>
・メタクリル酸メチル(MMA) 98.0質量部
・アクリル酸メチル(MA) 2.0質量部
・n−オクチルメルカプタン 0.25質量部
・tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート
(MMAとMAとの合計量に対して)70質量ppm
槽型反応装置から抜き出された反応混合物を、多管式熱交換機からなる加熱器によって220℃に加熱して、図1に示した構成の単軸の脱揮押出装置(φ150mm、スクリュー:L/D28)に導入し、脱揮処理(260℃、ベント42の圧力−0.02MPa(ゲージ圧表記)、ベント43の圧力−0.097MPa(ゲージ圧表記))することで、(メタ)アクリル系重合体を製造した。なお、脱揮押出装置のガス導入口からは窒素ガスを1.5L/minの流量で流しながら実施した。製造開始後24時間たってもスクリューの軸シール部に付着物は見られなかった。
得られた(メタ)アクリル系重合体のペレットを用いて、シリンダ温度260℃での射出成形により100mm×100mm×2mmの板を作製した。得られた板には異物は確認されず、外観は透明であった。
(実施例2)
脱揮押出装置のガス導入口から流すガスを空気に変更する以外は、実施例1と同様の手法により(メタ)アクリル系重合体を製造した。製造開始後24時間たってもスクリューの軸シール部に付着物は見られなかった。
得られた(メタ)アクリル系重合体のペレットを用いて、シリンダ温度260℃での射出成形により100mm×100mm×2mmの板を作製した。得られた板には異物は確認されなかったが、外観は若干黄味を帯びた透明であった。
(比較例1)
脱揮押出装置のガス導入口からガスを流さない以外は、実施例1と同様の手法により(メタ)アクリル系重合体を製造した。製造開始後24時間たった時点で、スクリューの軸シール部に付着物が確認された。
得られた(メタ)アクリル系重合体のペレットを用いて、シリンダ温度260℃での射出成形により100mm×100mm×2mmの板を作製した。得られた板には異物が確認された。
本発明の一実施例である脱揮押出装置の内部構造を示す概略図である。 本発明の一実施例である(メタ)アクリル系重合体の製造装置の構成を示す図である。
符号の説明
10 重合釜
11 撹拌装置
12 原料組成物投入口
13 反応混合物排出口
20 連結部
21 ポンプ
22 加熱機
23〜25 配管
40 脱揮押出装置
41 反応混合物供給口
42、43 ベント
44 重合体排出口
45 ガス導入口
46 軸シール部
47 スクリュー
51 リング

Claims (4)

  1. (A)(メタ)アクリル系単量体と、ラジカル重合開始剤と、連鎖移動剤とを含有する原料組成物を重合釜へ連続的に供給する工程と、
    (B)該重合釜で、前記(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部を重合させて、前記(メタ)アクリル系単量体の少なくとも一部が重合した(メタ)アクリル系重合体を含む反応混合物とする工程と、
    (C)該反応混合物を前記重合釜から連続的に抜き出す工程と、
    (D)前記重合釜から抜き出された前記反応混合物を、
    重合体と揮発成分とを含む反応混合物を供給可能な反応混合物供給口と、
    該反応混合物から分離された前記重合体を排出可能な重合体排出口と、
    該反応混合物から分離された前記揮発成分を排出可能な、一つまたは複数のベントと、
    回転可能なスクリューと、
    該スクリューが挿入された挿入口の周囲に設置された、内部の気密性を保つ軸シール部と、
    前記反応混合物供給口および前記ベントが設置された位置のいずれよりも前記軸シール部側の位置に設置された、ガス導入口と
    を有する脱揮押出装置に導入し、前記ガス導入口から不活性ガスを導入しながら脱揮処理して、前記(メタ)アクリル系重合体を得る工程と
    を有することを特徴とする(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
  2. 前記ベントの少なくとも一つが、前記反応混合物供給口が設置された位置よりも前記軸シール側の位置に設置されている請求項1に記載の(メタ)アクリル系重合体の製造方法
  3. 前記軸シール部がウィルソンシールにより形成されている請求項1または2に記載の(メタ)アクリル系重合体の製造方法
  4. 前記ガス導入口から導入する不活性ガスの流量が、0.5〜5L/minである請求項1〜3のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
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