JP4458724B2 - 摩擦部材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や産業用機械のブレーキ、クラッチ等に使用される摩擦部材の製造方法に関し、さらに詳しくは、自動車や産業用機械のブレーキ、クラッチ等に使用されるディスクブレーキパッド、ドラムブレーキシュー、或いはクラッチ板等、鉄系などの金属製の裏金(バックプレート、裏板と称されることもある)とその表面に一体に接合された非石綿系摩擦材からなる摩擦部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車などのディスクブレーキ用摩擦パッド、ブレーキシュー、クラッチ板等に使用される摩擦部材は、摩擦材に、鉄系金属からなる裏金を一体に接合して形成されている。これらの摩擦部材は、ディスクロータや相手側のクラッチプレートとの間に押しつけられた状態で相対的な移動が加えられ、その際の摩擦力で自動車を制動したり、エンジンの駆動力を車輪に伝達したりする。
そのため、摩擦材と裏金との間には、大きな剪断力が加わる。したがって、摩擦材と裏金との間には、この剪断力に耐えることができるような強い接合力(或いは接着力)が必要となる。
【0003】
一般に、摩擦材と裏金とが接合された、ディスクブレーキ用摩擦パッドなどの摩擦部材は、裏金に摩擦材を密着させて加熱成形することにより製造される。さらに説明すると、摩擦材は、セラミック繊維、スチール繊維、銅繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウム繊維等の繊維基材、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ゴム粉末、カシューダスト、黒鉛、二硫化モリブデン、銅及びアルミニウム等の摩擦・摩耗調整剤も含む充填材および全体を結合するフェノール樹脂等の結合材を含有している。加熱成形時には、これら材料を混合撹拌した状態で裏金に密着させ、あるいは混合撹拌するとともに予め摩擦材の形状に予備成形して裏金に密着させ、これら裏金及び摩擦材を金型に入れて熱及び圧力を加えることにより、結合材である樹脂を溶融、硬化させて摩擦材を所定の形状・寸法に成形し、更に裏金に接着するのである。また、摩擦部材の摩擦材と裏金との接合面の接着強度を高めるために、裏金については、表面処理が行われ、例えば、脱脂処理、ブラスト処理、化成被膜処理、プライマー処理などが行われている。このようにして摩擦部材は、製造されている。
【0004】
ところで、従来から、摩擦部材の摩擦材と裏金との接着強度不足の原因として、例えば、セミメタリック材の断熱層の接着強度不足、すなわち断熱効率を向上するため、断熱層の金属繊維成分量を少なくすることによる高温強度の不足、あるいは異材質間の馴染み不足による接着強度不足がある。また、非石綿系摩擦材の接着強度不足、すなわち摩擦材中の結合材が少ないことによる接着強度の不足、又は接着剤或いは接着剤及び接合層と摩擦材との接着強度不足、すなわち異材質間の馴染み不足や成形不良による接着強度不足などが挙げられている。
【0005】
そのため、従来から改良された摩擦部材の製造方法が種々提案されている。例えば、特許第2904244号公報では、摩擦材と金属製の裏板とを含むディスクブレーキ用摩擦パッドの製造方法において、裏板に摩擦材を密着させて加熱成形することにより摩擦部材とするとともに裏板に固着する際に、裏板の摩擦材が密着する側とは反対側の裏面を加熱する温度を、摩擦材の裏板に密着する側とは反対側の表面を加熱する温度より高くしたことを特徴とするディスクブレーキ用摩擦パッドの製造方法が提案されている。すなわち、通常、摩擦部材を成形する際には、金型温度は、全ての金型面(成形面)で同じとするものであり、その結果、加圧・加熱成形の際に、裏金側の摩擦材組成物の温度上昇が遅れるとされるものであるが、この特許公報では、裏板の摩擦材を密着させる側とは反対側の裏面を加熱する温度を高くすることにより、裏板が摩擦材の表面側より速く加熱され、摩擦材の裏板側部分の硬化が表面側部分に対して遅れなく進行し、従って、硬化時に発生するガスは、摩擦材の裏板側部分から少なくなり、その結果、摩擦材の裏板側部分には、大きな気孔が少ないため強度が高くなるというものを開示している。
【0006】
また、特許第3141598号公報では、摩擦材を、裏金に密着させて加熱成形することにより摩擦材とするとともに、裏金に固着させて製造されるディスクブレーキ用摩擦パッドの製造方法において、裏金を予備加熱して裏金に予め余熱を与えた状態を維持しつつ、加熱成形を行うことを特徴とするディスクブレーキ用摩擦パッドの製造方法が提案されている。すなわち、この特許公報も、加熱成形の際に、接合層の温度上昇が遅れるために内部欠陥が生じ易いとされる課題に対して、裏金側の摩擦材組成物の温度上昇が遅れる原因とされる裏金を予備加熱して裏金に予め余熱を与えた状態を維持しつつ、加熱成形を行うことにより、摩擦材の硬化の最も遅い部分、すなわち強度の弱くなるおそれのある部分が摩擦材の裏金近傍部分から離れ、その結果、摩擦材の強度を上げることができ、耐久性に優れた摩擦パッドを製造することができるというものを開示している。
【0007】
さらに、特開平11−254473号公報では、繊維状体、結合材及び摩擦調整剤を含む摩擦材の材料を熱成形して摩擦材を製造する方法において、熱成形に際して、その当初にあっては上型の温度を下型の温度よりも低くし、熱成形の進行に伴って上型の温度を上げて行くことを特徴とする摩擦材の製造方法が提案されている。すなわち、摩擦材側の上型の温度を熱成形の当初、裏金側の下型の温度よりも低くすることなどにより、熱成形時に亀裂が発生することがないようにしたものを開示している。
【0008】
しかしながら、これらの提案にも拘わらず、摩擦材と裏金とが接合された摩擦部材においては、接着剤或いは接着剤及び接合層と摩擦材の境界面で剥離したり、また、通常接合層の強度は、摩擦材の強度より大であり、接合層を用いた摩擦部材の接着強度は、摩擦材の剪断強度以上となるはずであるが、そうならない場合もあり、さらに、接合層は、摩擦材より樹脂成分量が多く良好な熱伝導性を持つため、接合層の硬化が早くなり、それに比して、摩擦材の硬化が遅れるために摩擦材に内部欠陥が生じる等、十分な接着強度が得られないという恐れがあった。
【0009】
従って、摩擦材と裏金との間に、大きな剪断力が加わわっても、この剪断力に耐えることができるような強い接着強度が得られる摩擦部材の製造方法が強く求められている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術の問題点に鑑み、摩擦材と裏金との間に強い接着強度が得られ、耐久性に優れた摩擦部材の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、摩擦部材の成形に用いる金型の温度に注目し、従来提案されてきた裏金全体、又は裏金の摩擦材側とは反対側の温度を高くすることとは逆に、裏金の接する側の金型温度を摩擦材側の金型温度より低くして成形することにより、驚くべきことに、接着剤や接合層の結合材の樹脂の硬化が遅くなり、或いは接着剤や接合層と接している摩擦材中の結合材の樹脂の硬化が遅くなり、接着剤や接合層と摩擦材の境界面での摩擦材の樹脂とのなじみが良くなり、その結果、境界面での剥離の恐れが減少し、接着強度が飛躍的に向上することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、金属製の裏金と、繊維基材、結合材及び充填材を主成分とする摩擦材とを加熱加圧して一体に成形する摩擦部材の製造方法において、裏金の摩擦材が接合される側とは反対側の裏金に接する金型の温度を、摩擦部材の成形可能な温度以上で、かつ摩擦材と接する他の金型の温度より低くして成形することを特徴とする摩擦部材の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、摩擦材は、セミメタリック材を除く非石綿系摩擦材であることを特徴とする摩擦部材の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、摩擦材は、裏金と接合される側に、繊維基材、結合材及び充填材を主成分とする接合層を有することを特徴とする摩擦部材の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、接合層は、摩擦材に比較して結合材の含有割合量が多いことを特徴とする摩擦部材の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、裏金に接する金型と、摩擦材と接する他の金型との温度差は、5〜50℃の範囲であることを特徴とする摩擦部材の製造方法が提供される。
【0013】
本発明は、上記した如く、金属製の裏金と摩擦材とを加熱加圧して一体に成形する摩擦部材の製造方法において、裏金の摩擦材が接合される側とは反対側の裏金に接する金型の温度を、摩擦部材の成形可能な温度以上、かつ摩擦材と接する他の金型の温度より低くして成形することを特徴とする摩擦部材の製造方法などに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)裏金と摩擦材との接合層は、摩擦材に比較して高い熱伝導率を有することを特徴とする上記のいずれかの摩擦部材の製造方法。
(2)接着剤は、熱硬化性樹脂接着剤であることを特徴とする上記のいずれかの摩擦部材の製造方法。
(3)第5の発明において、温度差は、10〜30℃の範囲であることを特徴とする摩擦部材の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について項目毎に詳細に説明する。
本発明の摩擦部材の製造方法では、金属製の裏金と摩擦材とを加熱加圧して一体に成形する際に、裏金の摩擦材が接合される側とは反対側の裏金に接する金型の温度を、摩擦材と接する他の金型の温度より低くして成形することにより、接合層と、摩擦材の境界面での摩擦材の樹脂とのなじみが良くなり、その結果、境界面での剥離が減少し、接着強度が飛躍的に向上することに最大の特徴がある。
【0015】
1.摩擦部材
本発明の摩擦部材の製造方法に係る摩擦部材は、貫通孔が穿孔された金属製裏金と、非石綿系摩擦材とからなる。この摩擦材と金属製裏金とは、接着剤を介して接合されている。
【0016】
(1)非石綿系摩擦材
本発明に係る非石綿系摩擦材は、繊維基材、結合材及び充填材とを主成分とするものである。
繊維基材として、石綿(アスベスト)以外の摩擦材に通常用いられる無機質繊維、有機質繊維などが挙げられる。
このような繊維基材として、比較的硬いものとしては、例えば、セラミック繊維、天然鉱物繊維、ガラス繊維、金属繊維などが挙げられ、比較的柔らかいものとしては、例えば、アラミド繊維、炭素繊維、セルロース繊維、アクリル繊維、チタン酸カリウム繊維などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも好ましいのは、アラミド繊維やチタン酸カリウム繊維などが挙げられる。
【0017】
具体的には、セラミック繊維としては、例えばアルミナ、シリカを主成分とするセラミック繊維、アルミナ、シリカ、ジルコニアを主成分とするセラミック繊維、シリカ、酸化カルシウム、酸化マグネシウムを主成分とするセラミック繊維等が挙げられる。
天然鉱物繊維としては、例えばウオラストナイト、セピオライト等が挙げられる。
金属繊維としては、例えば、ステンレス、青銅、銅、真鍮、アルミニウム等の各種金属の繊維等が挙げらる。
【0018】
本発明においては、繊維基材は、短繊維状、パルプ状、粉末状で用いられ、繊維成分の含有量は、特に制限されず、非石綿系摩擦材全量基準で、用いる繊維基材成分の種類により、適宜選ばれ、通常、5〜90体積%程度、好ましくは20〜70体積%である。
【0019】
また、本発明において用いられる結合材には、通常摩擦材に用いられる公知のものを使用することができ、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂またはそれらの変成樹脂のような熱硬化性樹脂や、ポリアセタール、芳香族ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂、又はNBRなどが挙げられる。これらの1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、金型の温度差で顕著な効果を発揮する点から結合材には、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0020】
さらに、結合材の含有量は、特に制限されず、非石綿系摩擦材全量基準で、用いる結合材成分の種類により、適宜選ばれ、通常、5〜50体積%程度、好ましくは10〜25体積%である。
【0021】
本発明に係る非石綿系摩擦材において、充填材成分として使用されるものは、有機系でも無機系でもよく、通常摩擦材に用いられる公知のものを使用することができ、例えば二硫化モリブデン、三硫化アンチモン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、カシューダスト、黒鉛、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、タルク、三酸化モリブデン、三酸化アンチモン、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、雲母、硫化鉄、酸化ジルコニウム、金属粉末、石英、酸化ケイ素、ゴム粉末、アルミナ、酸化クロム、バーミキュライトなどが挙げられる。中でも二硫化モリブデン、三硫化アンチモン、カシューダスト、黒鉛、三酸化アンチモンのような潤滑性のあるものは、耐摩耗性の向上や対面攻撃性の減少に寄与する。逆に、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、石英、酸化珪素、アルミナ、酸化クロムのような研磨作用のあるものは、摩擦特性の向上に寄与する。これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
また、充填材の含有量は、特に制限されず、非石綿系摩擦材全量基準で、用いる充填材成分の種類により、適宜選ばれ、通常、5〜60体積%程度、好ましくは10〜40体積%である。
【0023】
本発明において、非石綿系摩擦材には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記の繊維基材、結合材及び充填材以外の、摩擦材に通常用いられる任意材料を適宜添加することができる。例えば、コークス、リン系潤滑剤等が挙げられるが、任意材料はこれらに限定されるものではない。
また、本発明に係る非石綿系摩擦材の製造方法においては、上記の繊維基材、結合材及び充填材などをヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、アイリッヒミキサー等の混合機を用いて均一に混合し、成形用粉体を得、この粉体を加圧型内で予備成形するものである。
【0024】
(2)裏金
本発明に係る摩擦部材の裏金には、図2に示すように、裏金の製造工程で得られた裏金が用いられるが、特に限定されるものではない。本発明に係る摩擦部材は、裏金の製造工程で得られた裏金と、別の摩擦材の製造(予備成形)工程で得られた摩擦材とを、接着剤或いは接着剤及び接合層を介して接合して、加熱・加圧成形し、次いで、焼成工程、仕上げ工程とを経て、摩擦材と裏金が一体となった摩擦部材が製造されるものである。
【0025】
通常、裏金の製造工程は、次の(A)〜(F)工程からなる。
(A)板金プレス成形工程:鋼板などを、プレスの打ち抜き加工などによって成形する工程。この工程により、貫通孔が穿孔された金属製裏金の原形物が得られる。
(B)脱脂処理工程:工程Aで得られた、貫通孔が穿孔された裏金を、アルカリ水溶液などにより、脱脂処理する工程。脱脂処理工程は、油分などが接合力低下の原因となるので取り除くために実施される。
(C)ブラスト加工表面処理工程:工程Bの脱脂処理工程の次に、或いは同時に、裏金の表面をブラストにより加工する工程。この工程は、裏金と摩擦材との接着強度を高めるために、すなわち、裏金の面粗度を上げるために、裏金に向けて粒状物、例えば、砥粒を含む水(スラリー又はブラスト液)を噴射し、ブラスト加工するものである。
(D)化成被膜処理工程:工程Cで得られた表面処理した裏金を、さらに、化成被膜処理する工程。この工程は、裏金の防錆のために、裏金表面に化成被膜を形成する防錆被膜処理の工程である。
(E)プライマー処理工程:工程Dで得られた化成被膜処理した裏金を、裏金の防錆性と接着剤の接着性とを向上させるために、プライマー処理(裏金にプライマー剤を塗布、乾燥、焼き付け)する工程。
(F)接着剤塗布工程:別に予備成形された摩擦材と接合させるために、工程Eで得られた裏金に、接着剤を塗布・乾燥する工程。
【0026】
(3)接合層
本発明に係る摩擦部材において、裏金と摩擦材との間の接合層には、前記の接着剤塗布工程で用いられる接着剤の層、或いは接着剤の層に加えて繊維基材、結合材及び充填材を主成分とする接合層が形成されており、その接着剤には、ブレーキをかけたときの摩擦熱が150℃以上の高温になるために、耐熱性を必要とし、そのために熱硬化性接着剤や合成ゴム系接着剤が用いられる。
このような熱硬化性接着剤や合成ゴム系接着剤としては、例えば、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等のゴム系接着剤や、ニトリルゴムに対し少なくとも2倍以上のフェノールレジンを配合したニトリルゴムフェノール系接着剤、或いはフェノール系やエポキシ系樹脂の熱硬化性接着剤を挙げることができる。
【0027】
さらに、本発明において、必須の構成要件ではないものの、裏金と摩擦材との間の接合層には、上記の接着剤層と摩擦材との間に、繊維基材、結合材及び充填材を主成分とする接合層を有することが望ましい。
接合層に用いられる繊維基材、結合材及び充填材は、摩擦材に用いられたものと概略類似のものが用いられ、接合層の剪断強度又は接着強度を上げるために、摩擦材と比較すると、摩擦材より結合材の含有比率(割合)が大であることが望ましい。また、摩擦材に比較して高い熱伝導率を有することも、望ましい。
裏金と摩擦材との間に、上記の接合層を有することにより、裏金の接する側の金型温度を摩擦材側の金型温度より下げて成形することの本発明の効果が、更に、発揮される。その理由としては、接合層の結合材の樹脂の硬化が遅くなり、或いは接合層と接している摩擦材(結合材)の樹脂の硬化が遅くなり、接合層と摩擦材の境界面での摩擦材(結合材)の樹脂とのなじみが良くなり、その結果、境界面での剥離の恐れが減少することなどが挙げられている。尚、接合層の厚さは、0.2〜5mm程度である。
【0028】
2.摩擦部材の製造方法
本発明に係る摩擦部材の製造方法は、前記したように、裏金の製造工程で得られた裏金と、耐熱性有機繊維や無機繊維、金属繊維等の繊維基材と、無機や有機の充填材及び結合材である熱硬化性樹脂バインダ等の粉末原料とを配合し、攪拌により十分に均質化した原材料を常温にて所定の圧力で成形する摩擦材の製造(予備成形)工程で得られた摩擦材とを、接着剤或いは接着剤及び接合層を介して接合して、加熱・加圧成形し、次いで、焼成工程、仕上げ工程とを経て、摩擦材と裏金が一体となった摩擦部材が製造されるものである。
【0029】
本発明は、特に、摩擦部材の製造工程の中の加熱・加圧成形工程に関するものであり、その加熱・加圧成形工程において、図1に示すような熱プレス装置を用いることができる。
本発明においては、金属製の裏金(7)と、繊維基材、結合材及び充填材を主成分とする摩擦材(9)とを加熱加圧して一体に成形する摩擦部材の製造方法において、裏金に接する金型(1)の温度(温度センサー:8)を、摩擦材と接する他の金型(2や3)の温度(温度センサー:8’)より低くして成形する。
その場合、裏金に接する金型(1)と、摩擦材と接する他の金型(2や3)とは、それぞれの温度を別々に制御できるようにすることが好ましい。その温度制御のためには、各金型に、ヒーター(11)を有する熱盤(4〜6)などの加熱装置や、温度センサー(8や8’、8’’)を設ける。
【0030】
本発明において、裏金に接する金型の温度を、摩擦材と接する他の金型の温度より低くする程度は、裏金に接する金型の温度が、摩擦材及び接合層の結合材或いは接着剤が溶融、熱硬化を開始する温度以上、すなわち摩擦部材の成形可能な温度以上であれば、特に限定されないが、接着剤又は結合材の熱硬化特性の点から、温度差が5〜50℃程度の範囲が好ましく、特に10〜30℃程度の範囲がより好ましい。温度差が5℃未満であると、本発明の効果が発揮されず、一方、50℃を超えると、摩擦材側の結合材の硬化が進み、接着剤又は接合層の結合材が摩擦材側に沁み込む量が少なくなり、境界層の強度が充分でなくなる恐れが生じる。
【0031】
また、本発明において、上記以外の加熱・加圧成形条件としては、通常、例えば200〜500kgf/cm、130〜200℃、3〜15分であり、続いて焼成条件としては、180〜230℃、1〜10時間である。
【0032】
次に、得られた成形品を140〜250℃の温度で2〜48時間熱処理(後硬化)し、必要に応じてスプレー塗装、焼き付け、研磨処理を施して完成品が得られる。
【0033】
本発明に係る摩擦部材は、自動車、大型トラック、鉄道車両、各種産業機械等のディスクブレーキ用摩擦パッド、ブレーキシュー、クラッチプレートなどの各種用途に好適に用いることができる。
【0034】
【実施例】
本発明について、実施例及び比較例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
【0035】
[実施例1〜4及び比較例1〜3]
実施例1〜4及び比較例1〜3は、図1に示すような、摩擦材に接した金型の上型(2)、摩擦材と裏金に接した金型の中型(3)、裏金に接した金型の下型(1)、金型の上型に接しヒーター(11)を内蔵した上熱盤(4)、金型の中型に接しヒーター(11)を内蔵した中熱盤(5)及び金型の下型に接しヒーター(11)を内蔵した下熱盤(6)を有し、各型が、独立して温度が制御できる構造の摩擦材熱成形用金型及び熱盤にて作成した。その金型の材質は、鉄系材料(SKD61)を焼き入れの上、クロムメッキを施して用いた。また、ヒーターの熱容量は十分に余裕を持たせた。
【0036】
実施例1では、表1に示すように、繊維基材、結合材及び充填材などの組成(成分)を配合した、摩擦材AとC及び接合層の結合材が主に異なる接合層B、D、Eとの計5種の配合品を、夫々レディゲミキサーを用いて均一に混合し、加圧型内で100kg/cmで1分間加圧して予備成形した。この予備成形物を、金型の温度条件を変えた4条件につき、例えば、摩擦材Aと接合層Bの組み合わせでは、裏金に接した金型の下型(1)の成形温度140℃、摩擦材に接した金型の上型(2)の成形温度150℃、及び摩擦材と裏金に接した金型の中型(3)の成形温度145℃、成形圧力250kg/cmの条件下で10分間成形し、その後、200℃で5時間熱処理(後硬化)を行った。このようにして、4種の摩擦部材を製造した。
【0037】
実施例2〜4及び比較例1〜3も、実施例1と同様に、表1に示すような条件で、各実施例、比較例につき、4種の摩擦部材を製造した。
【0038】
得られた実施例、比較例の28種の摩擦部材につき、次に示す評価方法に基づき、接着強度、成形性、及び耐亀裂性を評価した。その評価結果を表1に示す。接着強度は、「JASO C437−76」に準拠し、測定した。接着強度の高いもの程、良好である。
成形性の評価は、製品の外観検査を目視により実施し、その評価基準としては、良好なもの(問題なし)を○、若干シワがあるが、問題ないものを△、亀裂又は浮き発生したものを×で示した。
耐亀裂性の評価は、「JASO C406−87」に準拠して、常用ブレーキのダイナモメータ性能試験を実施した後に、外観検査を目視により実施し、その評価基準としては、亀裂が認められなく良好なものを○、長さが3mm未満の微小な亀裂が認められるものの問題ないものを△、長さが3mm以上で、かつ0.5mmの厚さ計(シックネスゲージ)が入る亀裂が認められるものを×で示した。
【0039】
【表1】
Figure 0004458724
【0040】
本方法により成形した実施例1〜4の摩擦部材は、比較例1〜3の摩擦部材に比べて、接合層と摩擦材の境界面での摩擦材の樹脂とのなじみが良くなり、その結果、境界面での剥離が減少し、接着強度が飛躍的に向上することが確認された。また、成形性、耐亀裂性も良好である。
一方、比較例1〜3の摩擦部材は、例えば、裏金に接する金型の温度と摩擦材と接する他の金型の温度が等しい比較例1では、成形性は良好なものの接着強度は低く、また耐亀裂性もそれ程良好となっていない。
【0041】
【発明の効果】
本発明の摩擦部材の製造方法により得られた摩擦部材は、摩擦材と裏金との間に、大きな剪断力が加わわっても、接着剤或いは接着剤及び接合層と摩擦材の境界面で剥離や破壊が起きずに、この剪断力に耐えることができるような強い接着強度が得られ、耐久性に優れるという顕著な効果を発揮する。そのため、自動車、大型トラック、鉄道車両及び各種産業用機械のブレーキ、クラッチ等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の摩擦部材の製造方法に係る加熱・加圧成形工程に用いる熱プレス装置の概略の縦断面図である。
【図2】摩擦部材の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
1 成形下型(裏金側金型)
2 成形上型(摩擦材側金型)
3 成形中型(摩擦材枠型)
4 上熱盤
5 中熱盤
6 下熱盤
7 裏金
8,8’,8’’ 温度センサー
9 摩擦材
10 接合層
11 ヒーター

Claims (5)

  1. 金属製の裏金と、繊維基材、結合材及び充填材を主成分とする摩擦材とを加熱加圧して一体に成形する摩擦部材の製造方法において、裏金の摩擦材が接合される側とは反対側の裏金に接する金型の温度を、摩擦部材の成形可能な温度以上で、かつ摩擦材と接する他の金型の温度より低くして成形することを特徴とする摩擦部材の製造方法。
  2. 摩擦材は、セミメタリック材を除く非石綿系摩擦材であることを特徴とする請求項1記載の摩擦部材の製造方法。
  3. 摩擦材は、裏金と接合される側に、繊維基材、結合材及び充填材を主成分とする接合層を有することを特徴とする請求項1又は2記載の摩擦部材の製造方法。
  4. 接合層は、摩擦材に比較して結合材の含有割合量が多いことを特徴とする請求項3記載の摩擦部材の製造方法。
  5. 裏金に接する金型と、摩擦材と接する他の金型との温度差は、5〜50℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の摩擦部材の製造方法。
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