JP4458355B2 - 集電装置の揚力制御構造 - Google Patents
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Description
図7及び図8に示す集電装置(パンタグラフ)103は、車両102の車体102aの屋根上にがい子を介して設置される台枠104と、台枠104に支持される枠組105と、枠組105に支持される舟支え機構部106と、架線101のトロリ線101aと接触するすり板107と、すり板107を取り付ける集電舟(舟体)108などを備えている。車両102がA方向に走行すると、集電装置103の各部材に働く空気力に起因して集電舟108に揚力±Lが発生する。特に、トロリ線101aを支持する架線101が間隔をあけて支持点で支持されているため、支持点付近では集電装置103が架線101を押し上げる押上量が小さくなり、支持点間では集電装置103が架線101を押し上げる押上量が大きくなる。その結果、車両102がA方向に走行すると、集電装置103が上下方向に周期的に変動をするため、集電舟108に作用する気流の迎角θが常に変化し揚力±Lが作用してしまう。この揚力±Lは、トロリ線101aとすり板107との接触力の増加分に相当する力であり速度の二乗に比例する。集電舟108には、揚力±Lの安定性と空力音の低減とが要求されている。揚力±Lの安定化を図るためには、集電舟108に対する気流の迎角θが常に変化しても、揚力±Lは迎角θに関わらず一定である必要がある。空力音の低減を図るためには、集電舟108の断面形状を流線型にすることが好ましいが、迎角θの変化に揚力±Lが敏感に反応し、図8(B)に示すようにすり板107が摩耗して集電舟108の外観形状が変化すると、この集電舟108の周囲の空気の流れが変化して揚力±Lの変化の要因となる。このため、集電舟108の前縁部から空気を噴き出し又は吸い込むことで気流を変化させ、揚力±Lを制御する揚力制御構造がある。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、集電装置(3)に作用する揚力(±L)を制御する集電装置の揚力制御構造であって、前記集電装置の集電舟(8)の前方の空気をこの集電舟に取り入れる空気取入部(9a)と、前記空気取入部から取り入れた空気を前記集電舟から排出する空気排出部(9b,9c)とを備え、前記空気取入部は、前記集電舟の前部から前記空気を取り入れる前側取入部(9a)を備え、前記空気排出部は、前記集電舟を上昇させる方向の揚力がこの集電舟に作用するときには、前記前側取入部からの空気をこの集電舟の上方に向かってこの集電舟の上部から排出する上側排出部(9b)と、前記集電舟を下降させる方向の揚力がこの集電舟に作用するときには、前記前側取入部からの空気をこの集電舟の下方に向かってこの集電舟の下部から排出する下側排出部(9c)とを備えることを特徴とする集電装置の揚力制御構造(9)である。
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る集電装置の揚力制御構造を備える集電装置を模式的に示す構成図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る集電装置の揚力制御構造の構成図である。
図1に示す架線1は、線路上空に架設される架空電車線であり、所定の間隔をあけて支持点で支持されている。トロリ線1aは、集電装置3が接触移動する電線であり、集電装置3が摺動することによって車両2に負荷電流を供給する。車両2は、電車や電気機関車などの電気車であり、例えば高速で走行する新幹線などの鉄道車両である。車体2aは、乗客を積載し輸送するための構造物である。
ステップ(以下Sという)100において、揚力±Lの演算が開始される。図1に示すように、車両2がA方向に走行すると集電舟8に揚力±Lが作用し、ばね6cが撓むとともに集電舟8が撓む。その結果、撓み検出部9nがばね6cの撓みを検出して撓み検出信号を揚力演算部9qに出力するとともに、撓み検出部9pが集電舟8のたわみを検出して撓み検出信号を揚力演算部9qに出力する。ここで、慣性力の無視できる低周波数領域においては、トロリ線1aとすり板7との間に作用する接触力Cには、以下に示す数1が成立する。
(1) この第1実施形態では、集電舟8の前方の空気をこの集電舟8に取入部9aが取り入れ、取入部9aから取り入れた空気を集電舟8から上方及び/又は下方に向かって排出部9b,9cが排出する。このため、外部から空気を導入してこの空気を圧縮するためのコンプレッサなどの大規模な圧縮空気供給機器が必要なくなり、集電舟8の前方から高圧の空気を取り込む簡単な構造によって、集電舟8の周囲の空気の流れを制御することができる。その結果、高速走行時に問題となる集電装置3に作用する揚力±Lや空力音を抑制することができる。また、従来の集電装置の揚力制御構造のように集電舟の前方で空気を給排気する構造に比べて、集電舟8の上方及び/又は下方から空気を排出するため、集電舟8の後方の渦構造を壊すことができエオルス音を低減することができる。
図4は、この発明の第2実施形態に係る集電装置の揚力制御構造の構成図であり、図4(A)は集電舟を上昇させる方向の揚力が作用している状態を示し、図4(B)は集電舟を下降させる方向の揚力が作用している状態を示す。以下では、図1〜図3に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図4(A)に示すように、集電舟8に対する気流の迎角θが正となってこの集電舟8を上昇させる方向の揚力+Lがこの集電舟8に作用すると、集電舟8の取入部10a付近の空気圧が上昇して、この付近の空気が取入部10aから流路10e内を通過し排出部10cから集電舟8の上方に向かって排出する。その結果、排出部10c付近の空気圧が上昇して、集電舟8を押し下げる力が揚力+Lとは反対方向に作用する。一方、図4(B)に示すように、集電舟8に対する気流の迎角θが負となってこの集電舟8を下降させる方向の揚力−Lがこの集電舟8に作用すると、この集電舟8の取入部10b付近の空気圧が上昇して、この付近の空気が取入部10bから流路10f内を通過し排出部10dから集電舟8の下方に向かって排出する。その結果、排出部10d付近の空気圧が上昇して、集電舟8を押し上げる力が揚力−Lとは反対方向に作用する。
図5は、この発明の第3実施形態に係る集電装置の揚力制御構造の構成図であり、図5(A)はすり板の摩耗前の状態を示し、図5(B)はすり板の摩耗後の状態を示す。
図5に示す揚力制御構造11は、取入部11aと、排出予定部11bと、流路11c,11dなどを備えている。取入部11aは、集電舟8の前部から空気を取り入れる取入口であり、集電舟8の前部から空気を取り入れる。取入部11aは、集電舟8の前縁部の長さ方向に沿って間隔をあけて多数形成されている。排出予定部11bは、集電舟8に取り付けられてトロリ線1aと接触するすり板7が所定量Δd摩耗したときに、取入部11aからの空気をすり板7の上方に向かってすり板7の上部から排出する排出口である。排出予定部11bは、図5(A)に示すように、すり板7が所定量Δd摩耗するまではすり板7の内部に埋没し、図5(B)に示すようにすり板7が所定量Δd摩耗するとすり板7の表面から露出する。排出予定部11bは、すり板7の前側に形成されている。流路11c,11dは、取入部11aから取り入れた空気を排出予定部11bに導く管路である。流路11cは、集電舟8内に配置されており、流路11dは上流側の端部が流路11cの下流側の端部と接続しておりすり板7内に形成されている。流路11dは、図5(A)に示すように、すり板7の集電舟8に取り付けられる側からすり板7のトロリ線1aと接触する側の途中まで形成されており、流路11dの底部には排出予定部11bが形成されている。
図5(A)に示すように、トロリ線1aとすり板7とが接触した状態で、車両2がA方向に走行するとすり板7が徐々に摩耗する。すり板7が摩耗してすり板7の上部が平坦になると気流の流れが変化して、集電舟8を下降させる方向の揚力−Lがこの集電舟8に作用する。図5(B)に示すように、すり板7が所定量Δd摩耗するとすり板7の上面に排出予定部11bが露出する。このため、取入部11aの前方の高圧の空気が取入部11aから流路11c,11dに流入し排出予定部11bからすり板7の上方に向かって排出する。その結果、すり板7の上方の空気圧が変化して、集電舟8を押し上げる力が揚力−Lとは反対方向に作用する。
図6は、この発明の第4実施形態に係る集電装置の揚力制御構造の構成図である。
図6に示す揚力制御構造9は、図2に示す取入部9aを省略して、空気供給部9sと空気蓄積部9tなどを備えている。空気供給部9sは、空気蓄積部9tに空気を供給する空気圧縮機(コンプレッサ)などである。空気供給部9sは、空気蓄積部9t内の空気圧が所定圧以下に低下すると動作してこの空気蓄積部9t内に外部から空気を供給する。空気蓄積部9tは、排出部9b,9cから排出する空気を蓄積する空気だめ(エアタンク)などである。空気蓄積部9tは、枠組5などに沿って配管された絶縁性のゴムチューブなどからなる流路9dに接続されている。空気供給部9s及び空気蓄積部9tは、車両2内に収容されている。
集電舟8を上昇させる方向の揚力+Lが作用していると制御部9rが判断したときには、開閉弁9gを開放させ開閉弁9hを閉鎖させて、空気蓄積部9t内の高圧の空気を流路9d,9eに流入させる。その結果、排出部9bから高圧の空気が噴出して集電舟8の上方の空気圧が上昇し、揚力+Lの作用方向とは反対方向にこの集電舟8を押し下げる力がこの集電舟8に作用し、この集電舟8を上昇させる方向の揚力+Lが低下する。一方、集電舟8を下降させる方向の揚力−Lが作用していると制御部9rが判断したときには、開閉弁9gを閉鎖させ開閉弁9hを開放させて、空気蓄積部9t内の高圧の空気を流路9d,9fに流入させる。その結果、排出部9cから高圧の空気が噴出して集電舟8の下方の空気圧が上昇し、揚力−Lの作用方向とは反対方向にこの集電舟8を押し上げる力がこの集電舟8に作用し、この集電舟8を下降させる方向の揚力−Lが低下する。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、集電舟8の断面形状が流線形である場合を例に挙げて説明したが、断面形状が四角形の集電舟についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、集電舟8及びすり板7の片側に取入部9a,10a,10b,11aを形成した場合を例に挙げて説明したが、集電舟8及びすり板7の両側に取入部を形成しこの取入部からの空気を排出部から排出させることもできる。この場合には、車両2が上下線のいずれの方向を走行する場合についても揚力±Lを制御することができる。
1a トロリ線
2 車両
2a 車体
3 集電装置
7 すり板
8 集電舟
9 揚力制御構造
9a 取入部(前側取入部)
9b 排出部(上側排出部)
9c 排出部(下側排出部)
9e 流路(上側流路)
9f 流路(下側流路)
9g 開閉弁(上側開閉弁)
9h 開閉弁(下側開閉弁)
9k,9m 流路(作用管)
9r 制御部
9s 空気供給部
9t 空気蓄積部
10 揚力制御構造
10a 取入部(下側取入部)
10b 取入部(上側取入部)
10c 排出部(上側排出部)
10d 排出部(下側排出部)
11 揚力制御構造
11a 取入部(前側取入部)
11b 排出予定部(上側排出予定部)
L 揚力
θ 迎角
Δd 摩耗量
Claims (5)
- 集電装置に作用する揚力を制御する集電装置の揚力制御構造であって、
前記集電装置の集電舟の前方の空気をこの集電舟に取り入れる空気取入部と、
前記空気取入部から取り入れた空気を前記集電舟から排出する空気排出部とを備え、
前記空気取入部は、前記集電舟の前部から前記空気を取り入れる前側取入部を備え、
前記空気排出部は、
前記集電舟を上昇させる方向の揚力がこの集電舟に作用するときには、前記前側取入部からの空気をこの集電舟の上方に向かってこの集電舟の上部から排出する上側排出部と、
前記集電舟を下降させる方向の揚力がこの集電舟に作用するときには、前記前側取入部からの空気をこの集電舟の下方に向かってこの集電舟の下部から排出する下側排出部とを備えること、
を特徴とする集電装置の揚力制御構造。 - 請求項1に記載の集電装置の揚力制御構造において、
前記前側取入部から前記上側排出部に前記空気を導く上側流路と、
前記前側取入部から前記下側排出部に前記空気を導く下側流路と、
前記上側流路を開閉する上側開閉弁と、
前記下側流路を開閉する下側開閉弁と、
前記集電舟を上昇させる方向の揚力がこの集電舟に作用するときには、前記下側開閉弁が閉鎖して前記上側開閉弁が開放し、前記集電舟を下降させる方向の揚力がこの集電舟に作用するときには、前記上側開閉弁が閉鎖して前記下側開閉弁が開放するように、この上側開閉弁及びこの下側開閉弁を制御する制御部とを備えること、
を特徴とする集電装置の揚力制御構造。 - 請求項2に記載の集電装置の揚力制御構造において、
前記上側開閉弁及び前記下側開閉弁は、流体圧を作用させる作用管に接続されており、この流体圧に応じて前記上側流路及び前記下側流路を開閉すること、
を特徴とする集電装置の揚力制御構造。 - 集電装置に作用する揚力を制御する集電装置の揚力制御構造であって、
前記集電装置の集電舟の前方の空気をこの集電舟に取り入れる空気取入部と、
前記空気取入部から取り入れた空気を前記集電舟から排出する空気排出部とを備え、
前記空気取入部は、
前記集電舟の前部の斜め下方から前記空気を取り入れる下側取入部と、
前記集電舟の前部の斜め上方から前記空気を取り入れる上側取入部とを備え、
前記空気排出部は、
気流の迎角が正の値となり前記集電舟を上昇させる方向の揚力がこの集電舟に作用するときには、前記下側取入部からの空気をこの集電舟の上方に向かってこの集電舟の上部から排出する上側排出部と、
気流の迎角が負の値となり前記集電舟を下降させる方向の揚力がこの集電舟に作用するときには、前記上側取入部からの空気をこの集電舟の下方に向かってこの集電舟の下部から排出する下側排出部とを備えること、
を特徴とする集電装置の揚力制御構造。 - 集電装置に作用する揚力を制御する集電装置の揚力制御構造であって、
前記集電装置の集電舟の前方の空気をこの集電舟に取り入れる空気取入部と、
前記空気取入部から取り入れた空気を前記集電舟から排出する空気排出部とを備え、
前記空気取入部は、前記集電舟の前部から前記空気を取り入れる前側取入部を備え、
前記空気排出部は、前記集電舟に取り付けられてトロリ線と接触するすり板が所定量摩耗したときに貫通して、前記前側取入部からの空気をこのすり板の上方に向かってこのすり板の上部から排出する上側排出予定部を備えること、
を特徴とする集電装置の揚力制御構造。
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