本発明において、触媒として芳香族カルボン酸チタン化合物を使用して重合されたポリエステル成分を有する樹脂は、樹脂中に均一にチタン化合物を含む。このチタン化合物は結着樹脂と磁性酸化鉄双方に対して親和性を持つため、トナー中での磁性酸化鉄の分散性と、結着樹脂との密着力を飛躍的に向上させる効果があることが分かった。
このメカニズムは未だ明確になってはいないが、次の様に推測される。芳香族カルボン酸チタン化合物は水分による触媒失活を受けにくい為、エステル化反応で生成する水分で失活しにくく、ポリエステル成分中に芳香族カルボン酸チタン化合物として存在できる量が多くなる。そのため、チタン化合物の芳香族カルボン酸の部位がポリエステル成分に親和性を持ち、チタンの部位が磁性酸化鉄との親和性を持つことができるので、磁性酸化鉄をポリエステル成分中に均一に分散させる分散剤としての効果をもつものと思われる。その結果、トナー粒子表面からの磁性酸化鉄の遊離を防止したり、トナー粒子中に磁性酸化鉄を均一に分散させることに効果を発揮する。
これに対し、水分で失活しやすいチタン触媒は失活して酸化チタン等へ変化してしまい、分散剤としての効果を持ちにくい。また、重合中に触媒が失活するとポリエステル成分中に活性を持った触媒が不均一に存在してしまう為に、触媒活性の残っている周辺の重合度が高くなりやすくなる。そのため、触媒活性の低い部分の重合度が低くなるので、ポリエステル成分中に粘度の高い部分と低い部分が出来てしまう。
特にゲル成分のような超高分子を生成させると、局所的にゲル成分が成長する為に、架橋点間分子量の小さい、硬いゲル成分が出来やすい。また、触媒が失活した周辺は重合度が上がらず、粘度が低いままになる為、低粘度の低分子量成分中に非常に硬いゲル成分が局在しているポリエステル成分が出来てしまう。
この様な樹脂をトナーに用いると、ゲル成分中に磁性酸化鉄やワックスなどのトナー材料が入り込みにくく、トナー中で偏在してしまい、帯電安定性が低下しやすい。また、樹脂の粘度にムラがあるため、粉砕時に超微粉が発生しやすく、トナーの帯電安定性を悪化させるので、画像濃度が低下したり、カブリが増加したり、スリーブゴーストが悪化したりすることがある。
本発明の芳香族カルボン酸チタン化合物を触媒として用いたポリエステル成分は、触媒が失活しにくいのでポリエステル成分全体の重合度が均一に上昇する為、粘度にムラの無い均一なポリエステル成分を得ることが出来る。さらに、樹脂中にゲル成分を存在させる場合にも、局所的なゲル成分の成長が起こらないため、架橋点間分子量の大きな軟らかいゲル成分を得ることが出来る。そのため、磁性酸化鉄やワックスなどのトナー材料が均一に分散しやすくなるうえに、粉砕時に超微粉も発生しにくくなる為、優れた帯電性を得ることが出来る。
また、架橋点間分子量の大きな軟らかいゲル成分を得られることで、低温領域での低い溶融粘度と、高温領域での高い弾性を両立できる為、優れた定着性と耐高温オフセット性を同時に満足することが可能になる。
特に、芳香族カルボン酸チタン化合物を触媒として使用して重合されたポリエステル成分を含む樹脂を用いたトナーは、測定磁場795.8kA/mでの飽和磁化σsが5〜80Am2/kgにすることが好ましい。より好ましくは10〜70Am2/kg、さらに好ましくは20〜50Am2/kgである。また、該トナーは、残留磁化σrが0.1〜15.0Am2/kgであることが好ましい。より好ましくは0.5〜12.0Am2/kg、さらに好ましくは1.0〜10.0Am2/kgである。トナーの飽和磁化及び残留磁化を上記範囲にすることによって、現像スリーブへのトナーの磁気拘束力とトナーの帯電量とが高度にバランスのとれた状態になる。それにより、トナーの現像スリーブへのコート性、現像スリーブ上でのトナーの帯電性などが非常に安定する。そのため、画像濃度の耐久安定性や環境安定性が増し、カブリやスリーブゴーストを抑制することが出来る。
トナーの飽和磁化σsが5Am2/kgより小さい場合、トナーの磁気力が小さすぎて現像スリーブへのコート性が悪化しやすく、カブリが悪化したり、スリーブゴーストが悪化したりする場合がある。飽和磁化σsが80Am2/kgより大きい場合、トナーの現像スリーブへの磁気的な拘束力が大きくなりすぎて、現像性が悪化しやすい。
また、トナーの残留磁化σrが0.1Am2/kgより小さい場合、現像スリーブにトナーが引き寄せられる力が弱まり、特にジャンピング現像においては、感光ドラム上に現像されたトナーを現像スリーブに引き戻す力が弱くなるので、カブリが悪化しやすい。残留磁化σrが15.0Am2/kgより大きい場合には、感光ドラム上に現像されたトナーを現像スリーブに引き戻す力が強すぎて画像濃度が薄くなることがある。また、現像スリーブにコートされたトナーが離れにくくなる為に、現像機内でのトナーの循環が悪くなってチャージアップしやすくなったりする場合がある。
本発明で用いられる芳香族カルボン酸チタン化合物としては、以下のものが挙げられる。安息香酸チタンの如き芳香族モノカルボン酸チタン類、フタル酸チタン、テレフタル酸チタン、イソフタル酸チタン、1,3−ナフタレンジカルボン酸チタン、4,4−ビフェニルジカルボン酸チタン、2,5−トルエンジカルボン酸チタン、アントラセンジカルボン酸チタンなどの芳香族ジカルボン酸チタン類、トリメリット酸チタン、2,4,6−ナフタレントリカルボン酸チタンなどの芳香族トリカルボン酸チタン類、ピロメリット酸チタン、2,3,4,6−ナフタレンテトラカルボン酸チタンなどの芳香族ポリカルボン酸チタン類、また、安息香酸チタニルなどの芳香族モノカルボン酸チタニル類、フタル酸チタニル、テレフタル酸チタニル、イソフタル酸チタニル、1,3−ナフタレンジカルボン酸チタニル、4,4−ビフェニルジカルボン酸チタニル、2,5−トルエンジカルボン酸チタニル、アントラセンジカルボン酸チタニルなどの芳香族ジカルボン酸チタニル類、トリメリット酸チタニル、2,4,6−ナフタレントリカルボン酸チタニルなどの芳香族トリカルボン酸チタニル類、ピロメリット酸チタニル、2,3,4,6−ナフタレンテトラカルボン酸チタニルなどの芳香族ポリカルボン酸チタニル類、及びこれら芳香族カルボン酸チタニルのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩。
特に、本発明で用いられる芳香族カルボン酸チタン化合物は、芳香族カルボン酸とチタンアルコキシドとが反応することにより得られるものが好ましい。チタンアルコキシドはカルボン酸や酸無水物と容易に反応してチタンアシレートを形成するが、特に酸として芳香族カルボン酸を用いた場合、エステル化、エステル交換の両反応で優れた触媒活性を示す為に好ましい。
さらに、エステル化によって副生する水分による触媒失活が起こりにくい為、重合時に樹脂全体の粘度が均一に上昇し、架橋点間分子量の大きな軟らかいゲル成分が出来易いため、定着性、耐高温オフセット性ともに優れたものが得られやすい。
さらに、芳香族カルボン酸としては、2価以上の芳香族カルボン酸及び/又は芳香族オキシカルボン酸であることが好ましい。2価以上の芳香族カルボン酸や芳香族オキシカルボン酸を用いると、芳香族カルボン酸チタン化合物とポリエステル成分との親和性がより高くなり、結着樹脂と磁性酸化鉄の密着性をより高めることが可能となるとともに、磁性酸化鉄の分散性も向上する。
上記2価以上の芳香族カルボン酸としては、以下のものが挙げられる。フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸の如きジカルボン酸類又はその無水物、トリメリット酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸の如き多価カルボン酸類又はその無水物、エステル化物。
上記芳香族オキシカルボン酸としては、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシカルボン酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸等が挙げられる。
これらの中でも、特にイソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
また、上記チタンアルコキシドとしては、下記一般式(1)で示される化合物が、定着性と耐高温オフセット性に優れた結着樹脂が得られやすいため、好ましく用いられる。
(一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4は、炭素数1乃至20のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なってもよく、また置換基を有してもよい。nは1乃至10の整数を示す。)
更に、R1、R2、R3及びR4は、炭素数1乃至10のアルキル基であることが好ましい。具体的には、以下のチタンアルコキシドが好ましい。チタンテトラメトキサイド、チタンテトラエトキサイド、チタンテトラ−i−プロポキサイド、チタンテトラ−n−プロポキサイド、チタンテトラ−i−ブトキサイド、チタンテトラ−n−ブトキサイド、チタンテトラ−t−ブトキサイド、チタンテトラペンチルオキサイド、チタンテトラヘキシルオキサイド、チタンテトラヘプチルオキサイド、チタンテトラオクチルオキサイド、チタンテトラノニルオキサイド、チタンテトラデシルオキサイド。
また、一般式(1)において、nが2乃至10のポリチタン酸エステルも好ましい。具体的には、テトラ−n−ブチルポリチタネート、テトラ−n−ヘキシルポリチタネート、テトラ−n−オクチルポリチタネートが好ましい。
また該芳香族カルボン酸チタン化合物の添加量としては、ポリエステルモノマーに対して0.001質量%以上5質量%以下、好ましくは0.005質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上2質量%以下がよい。添加量が0.001質量%未満となると、ポリエステル重合時の反応時間が長くなるとともに、磁性酸化鉄の分散性を向上させる効果が得られなくなる。また2質量%よりも多く含有すると、トナーの帯電特性に影響を及ぼすようになり、環境による帯電量の変動が大きくなりやすい。
また、本発明では、必要に応じて芳香族カルボン酸チタン化合物以外に、他の重合触媒を併用することも可能であり、特にチタン化合物を併用することが好ましい。2種以上のチタン化合物を重合触媒として併用することで、ポリエステル重合時のエステル化反応とエステル交換反応の反応速度のバランスをとることが出来、架橋点間距離の大きい軟らかいゲル成分を生成させることが出来る。
芳香族カルボン酸チタン化合物と共に併用される好ましいチタン化合物の例としては、以下のものが挙げられる。ジクロロチタン、トリクロロチタン、テトラクロロチタン、トリフルオロチタン、テトラフルオロチタン等のハロゲン化チタン類、チタンアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドビスアセチルアセトナート、チタニルアセチルアセトナート等のチタンジケトンエノレート類、ギ酸チタン、酢酸チタン、プロピオン酸チタン、オクタン酸チタン、シュウ酸チタン、コハク酸チタン、マレイン酸チタン、アジピン酸チタン、セバシン酸チタンなどの脂肪族カルボン酸チタン類、ギ酸チタニル、酢酸チタニル、プロピオン酸チタニル、オクタン酸チタニル、シュウ酸チタニル、コハク酸チタニル、マレイン酸チタニル、アジピン酸チタニル、セバシン酸チタニル等の脂肪族カルボン酸チタニル類、及びこれらカルボン酸チタニルのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩。これらの中でも、エステル化反応の触媒活性の高さから、シュウ酸チタニル塩が特に好ましく用いられる。
芳香族カルボン酸チタン化合物と共に併用されるチタン化合物の添加量としては、ポリエステルモノマーに対して0.001質量%以上5質量%以下が好ましい。
また、本発明のトナーにおいて、該芳香族カルボン酸チタン化合物の他に、必要に応じて、以下のものを助触媒として用いても良い。
助触媒として、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、リン、スズ等の元素を有する化合物が好ましく用いられる。これらの元素を有する化合物としては、上記元素の酢酸塩等の脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、アルコキシド、また、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセナート塩、酸化物等が好ましく用いられる。また、ジカルボン酸、ジアルコール及びオキシカルボン酸等とのキレート化合物、芳香族ジオールとアルコシキドが反応したもの、有機モノカルボン酸とアルコキシドが反応したものも好ましく用いられる。
これらの中で好ましく用いられるものは、酢酸塩、炭酸塩、アルコキシド、アルコシキドハロゲン化物、アセチルアセナート塩が好ましく、これらの中でも、ジルコニウムアルコキシド、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウムが特に好ましい。
これらの助触媒を用いることは、該芳香族カルボン酸チタン化合物と共存させることにより、重縮合反応が速やかに進行させることができるので、好ましい。
これらの助触媒の使用量としては、該芳香族カルボン酸チタン化合物に対し、0.01質量%乃至200質量%の範囲で用いられる。
本発明に用いられるポリエステル成分は、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との縮重合により得られる。本発明に用いられるポリエステル成分には、例えば以下に示す成分が用いられる。
二価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また(A)式で表されるビスフェノール及びその誘導体;また(B)式で示されるジオール類。
[式中Rはエチレン又はプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつx+yの平均値は0〜10である。]
二価の酸成分としては、以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等のベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸等のアルケニルコハク酸類若しくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体。
特に、芳香族ジカルボン酸を用いた場合に、ポリエステル成分と芳香族カルボン酸チタン化合物との親和性が高くなり、均一に分散しやすくなる為に、磁性酸化鉄とポリエステル成分との密着性が高くなるので好ましい。
さらには、カルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸を全カルボン酸成分に対して50モル%以上含有することが好ましい。これら芳香族ジカルボン酸を多く使用することで、ポリエステル成分と芳香族カルボン酸チタン化合物との親和性をより高めることが可能になり、現像性の耐久安定性を高めることが出来る。
また架橋成分として働く三価以上のアルコール成分と三価以上の酸成分を併用することが好ましい。
三価以上の多価アルコール成分としては、以下のものが挙げられる。ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン。
特に好ましい三価以上の多価アルコール成分として、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルを含む構造の化合物が挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルを含む構造の化合物は、ノボラック型フェノール樹脂と分子中一個のエポキシ環を有する化合物との反応物であり、かつ末端に三つ以上のアルコール性の水酸基を有する。
ノボラック型フェノール樹脂としては、以下のものが挙げられる。エンサイクロベディア・オブ・ポリマーサイエンス・アンド・テクノロジー(インターサイエンス・パブリッシャーズ)第10巻1頁のフエノリツク・レジンズの項に記載されるように、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸又はパラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸又は酢酸亜鉛等の金属塩を触媒としてフェノール類とアルデヒド類からの重縮合により製造されるもの。
フェノール類としては、フェノールや炭素数1〜35の炭化水素基及び/又はハロゲン基を一個以上置換基として有する置換フェノールが挙げられる。置換フェノールのとしては、以下のものが挙げられる。クレゾール(オルソ体、メタ体若しくはパラ体)、エチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、スチレン化フェノール、イソプロペニルフェノール、3−クロルフェノール、3−ブロムフェノール、3,5−キシレノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール、3,5−ジクロルフェノール、2,4−ジクロルフェノール、3−クロル−5−メチルフェノール、ジクロルキシレノール、ジブロムキシレノール、2,4,5−トリクロルフェノール、6−フェニル−2−クロルフェノール。フェノール類は二種以上併用してよい。
これらの中ではフェノール及び炭化水素基で置換された置換フェノールが好ましく、その中でも特にフェノール、クレゾール、t−ブチルフェノール及びノニルフェノールが好ましい。フェノールとクレゾールは価格及びトナーの耐オフセット性を付与する点で好ましく、t−ブチルフェノール及びノニルフェノールに代表される炭化水素基で置換された置換フェノールは、トナーの帯電量の湿度依存性を小さくする点で好ましい。
アルデヒド類としては、ホルマリン(各種濃度のホルムアルデヒド溶液)、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。
ノボラック型フェノール樹脂の数平均分子量は通常300〜8000、好ましくは350〜3000、さらに好ましくは400〜2000である。ノボラック型フェノール樹脂中の数平均のフェノール類の核体数は通常3〜60、好ましくは3〜20、さらに好ましくは4〜15である。
また軟化点(JIS K2531;環球法)は、通常40〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜130℃である。軟化点が40℃未満では常温でブロッキングし取り扱いが困難となる。また軟化点が180℃を超えるとポリエステル成分の製造過程でゲル化を引き起こし好ましくない。
分子中一個のエポキシ環を有する化合物の具体例としては、エチレンオキサイド(EO)、1,2−プロピレンオキサイド(PO)、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等を挙げることができる。また炭素数1〜20の脂肪族一価アルコール若しくは一価フェノールのグリシジルエーテルも使用できる。これらの中ではEO及び又はPOが好ましい。
ノボラック型フェノール樹脂1モルに対する、分子中一個のエポキシ環を有する化合物の付加モル数は、通常1〜30モル、好ましくは2〜15モル、さらに好ましくは2.5〜10モルである。またノボラック型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基一個に対する分子中一個のエポキシ環を有する化合物の平均付加モル数は通常0.1〜10モル、好ましくは0.1〜4モル、さらに好ましくは0.2〜2モルである。
本発明で特に好ましく用いられるノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル化合物の構造を下記一般式に例示する。
[式中Rはエチレン又はプロピレン基であり、xは0以上の整数であり、少なくともy1〜y3のいずれかは1以上の同一の又は異なる整数である。]
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル化合物の数平均分子量は、通常300〜10000、好ましくは350〜5000、さらに好ましくは450〜3000である。数平均分子量が300未満ではトナーの耐オフセット性が十分でなく、10000を超えるとポリエステル成分の製造過程でゲル化を引き起こして好ましくない。
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル化合物の水酸基価(アルコール性及びフェノール性水酸基の合計)は、通常10〜550mgKOH/g、好ましくは50〜500mgKOH/g、さらに好ましくは100〜450mgKOH/gである。また、水酸基価のうち、フェノール性水酸基価は通常0〜500、好ましくは0〜350mgKOH/g、さらに好ましくは5〜250mgKOH/gである。
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル化合物の製法を例示すると、必要により触媒(塩基性触媒又は酸性触媒)の存在下、ノボラック型フェノール樹脂に分子中一個のエポキシ環を有する化合物を付加反応させることにより得られる。反応温度は通常20〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、常圧下、又は加圧下、さらには減圧下においても行うことできる。また反応は、溶媒(例えばキシレン、ジメチルホルムアミド等)、他の二価アルコール類、及び他の三価以上のアルコール類の少なくともいずれかの存在下で行うこともできる。
また、本発明に用いられる三価以上の多価カルボン酸成分としては、以下のものが挙げられる。ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;下記一般式で表されるテトラカルボン酸等、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体。なかでも、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸及びこれらの無水物、低級アルキルエステルが好ましい。
[式中Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5〜30のアルキレン基又はアルケニレン基を示す。]
本発明に用いられるアルコール成分としては40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが好ましい。また三価以上の多価の成分は、全成分中の5〜60mol%であることが好ましい。
該ポリエステル成分は通常一般に知られている縮重合によって得られる。ポリエステル成分の重合反応は、触媒として芳香族カルボン酸チタン化合物の存在下で150〜300℃、好ましくは170〜280℃程度の温度条件下で行われる。また反応は常圧下、減圧下、若しくは加圧下で行うことができるが、所定の反応率(例えば30〜90%程度)に到達後は、反応系を200mmHg以下、好ましくは25mmHg以下、さらに好ましくは10mmHg以下に減圧し、反応を行うのが望ましい。
反応物の性質(例えば酸価、軟化点等)が所定の値に到達した時点、あるいは反応機の撹拌トルク又は撹拌動力が所定の値に到達した時点で反応を停止させることによって本発明のポリエステル成分を得ることができる。
本発明のトナーには、ビニル系重合体成分を含有していることが好ましい。ビニル系重合体成分を含有させることで、ポリエステル成分の水分の吸着し易さを抑制することが可能になる為、磁性トナーの現像性の環境安定性が高まる。
ビニル系重合体成分を構成するビニル系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−ブチルスチレン、p−tert−トリブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如き不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体。
さらに、以下のものが挙げられる。アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー。
さらに、以下のものが挙げられる。2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
またさらに、以下のものが挙げられる。マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和ジカルボン酸ハーフエステル類;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチルの如き不飽和ジカルボン酸ジエステル類;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和ジカルボン酸無水物類もビニル系モノマー。
本発明に用いられる結着樹脂を製造するのに使用される全モノマー成分を基準としてポリエステル系モノマー成分の割合を算出するときには、これらに限りポリエステル系モノマー成分として算出する。
さらに、必要に応じて以下に例示するような架橋性モノマーで架橋された重合体であっても良い。
芳香族ジビニル化合物としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び上記の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの。
また、エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、以下のものが挙げられる。ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの。
また、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては以下のものが挙げられる。ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの。また、ポリエステル型ジアクリレート類としては、商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート。
これらの架橋剤は、他のビニル系モノマー成分100質量部に対して、0.01〜10.0質量部(さらに好ましくは0.03〜5質量部)用いることが好ましい。
前記ビニル系重合体成分を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキジイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート。
本発明に用いられるビニル系重合体成分を製造する場合に用いられる開始剤として、以下に例示する多官能性重合開始剤を単独で、又は単官能性重合開始剤と併用して用いても良い。
多官能構造を有する前記多官能重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,3−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン及び2,2−t−ブチルパーオキシオクタンの如き、一分子内に二つ以上のパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤;及びジアリルパーオキシジカーボネート、トリブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレートの如き、一分子内にパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基との両方を有する多官能性重合開始剤。
これらのうち、より好ましいものは、以下のものである。1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネート。
本発明で用いられる結着樹脂は、以下のものから選択される樹脂であることが好ましい。ポリエステル樹脂、ポリエステル成分とビニル系重合体成分を有しているハイブリッド樹脂、又はハイブリッド樹脂とビニル系樹脂との混合物、又はハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、又はポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂とビニル系重合体、又はポリエステル樹脂とビニル系重合体との混合物。特にハイブリッド樹脂を用いることが好ましい。
ハイブリッド樹脂はポリエステル成分とビニル系重合体成分が化学的に結合しているので、ポリエステル成分とビニル系重合体成分を単純にブレンドするよりも結着樹脂全体の粘度が均一になりやすい。そのため、ゲル成分のような超高分子成分を含有させても、磁性トナーを製造する際の粉砕時に超微粉が発生しにくく、磁性トナーの帯電性を高めることが可能になる。
特に、芳香族カルボン酸チタン化合物を触媒として使用して重合されたポリエステル成分を含有するハイブリッド樹脂はビニル系重合体成分とポリエステル成分との相溶性が高い。そのため、樹脂全体の粘度だけでなく、組成も均一になりやすく、トナーの帯電の環境安定性が非常に高くなるので好ましい。
ハイブリッド樹脂は、以下のものが挙げられる。ポリエステル成分と(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマー成分を重合したビニル系重合体成分とがエステル交換反応によって形成されるもの、あるいはフマル酸のような不飽和基を持つモノマーを用いて重合された不飽和ポリエステル成分の存在下でビニル系モノマーを重合し、ポリエステル成分の不飽和基にビニル系重合体成分がグラフトして形成されるもの。
なお、本発明のトナーに含有される結着樹脂は、少なくともポリエステル成分を有する樹脂であればよく、好ましくは、全結着樹脂中に含まれるポリエステル成分が、全結着樹脂に対して30質量%以上であることが、本発明の効果を発現させるために好ましい。更に好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。
本発明で用いられるハイブリッド樹脂は、ビニル系重合体成分及び/又はポリエステル成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル成分を構成するモノマーのうちビニル系重合体成分と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系重合体とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、以下の方法であることが好ましい。即ち、先に挙げたビニル系重合体成分及びポリエステル成分のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含む重合体が存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の重合体の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
本発明で用いられるハイブリッド樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ビニル系重合体、ポリエステル成分をそれぞれ製造後にブレンドする方法であり、ブレンドは有機溶剤(例えば、キシレン)に溶解・膨潤した後に有機溶剤を留去して製造される。尚、ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系重合体成分とポリエステル成分を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させる。そして、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行って合成されたポリエステル成分とビニル系重合体成分を有するハイブリッド樹脂を得ることが出来る。
(2)ビニル系重合体成分製造後に、この存在下にポリエステル成分を生成し反応させ、ポリエステル成分とビニル系重合体成分を有するハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体成分(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/またはポリエステル樹脂との反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3)ポリエステル成分製造後に、この存在下にビニル系重合体成分を生成し、反応させポリエステル成分とビニル系重合体成分を有するハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステル樹脂(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/またはビニル系重合体との反応により製造される。
(4)ビニル系重合体成分及びポリエステル成分製造後に、これらの重合体成分存在下にビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂成分が製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5)ポリエステル成分とビニル系重合体成分を有するハイブリッド樹脂成分を製造後、ビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行う。それにより、ビニル系重合体及/又はポリエステル樹脂、又は更にハイブリッド樹脂成分が製造される。この場合、該ポリエステル成分とビニル系重合体成分を有するハイブリッド樹脂成分は上記(2)乃至(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
(6)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行う。それによりビニル系重合体成分、ポリエステル成分及びポリエステル成分とビニル系重合体成分を有するハイブリッド樹脂成分が製造される。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)〜(6)の製造方法において、ビニル系共重合体成分及び/またはポリエステル成分は複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体成分を使用することができる。
本発明で特に好ましく用いられる製造方法としては(2)及び(3)が挙げられる。
本発明において、ビニル系重合体成分は、ビニル系単重合体若しくはビニル系共重合体を意味するものである。
本発明で用いられる結着樹脂は、酸価が1〜100mgKOH/g、水酸基価が1〜100mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
本発明における結着樹脂の酸価の測定は、下記のように実施できる。基本操作はJIS K0070に準ずる。
1)結着樹脂の粉砕品0.5乃至2.0(g)を精秤し、結着樹脂の重さW(g)とする。
2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(トルエンの質量/エタノールの質量=4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
3)0.1規定のKOHのメタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットとを用いての自動滴定が利用できる。)
4)この時のKOH溶液の使用量S(ml)とし、同時にブランクを測定しこの時のKOH溶液の使用量をB(ml)とする。
5)次式により結着樹脂の酸価を計算する。fはKOHのファクターである
酸価(mgKOH/g)=((S−B)×f×5.61)/W
<結着樹脂の水酸基価の測定法>
本発明における結着樹脂の水酸基価の測定は、下記のように実施できる。
(A)試薬
(a)アセチル化試薬:無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜる。アセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス及び酸の蒸気に触れないようにし、褐色びんに保存する。
(b)フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95vol%)100mlに溶かす。
(c)N/2水酸化カリウム−エチルアルコール溶液:水酸化カリウム35gをできるだけ少量の水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1リットルとし、2〜3日間放置後ろ過する。
本発明に用いられる結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜75℃であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも小さいとトナーの保存安定性が不十分となることがあり、結着樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも大きいとトナーの定着性が不十分となることがある。
本発明に用いられる磁性体は、異種元素を含有するマグネタイト,マグヘマイト,フェライト等の磁性酸化鉄及びその混合物が好ましく用いられる。
中でも以下のものが好ましい。リチウム,ベリリウム,ボロン,マグネシウム,アルミニウム,シリコン,リン,ゲルマニウム,チタン,ジルコニウム,錫,鉛,亜鉛,カルシウム,バリウム,スカンジウム,バナジウム,クロム,マンガン,コバルト,銅,ニッケル,ガリウム,カドミウム,インジウム,銀,パラジウム,金,水銀,白金,タングステン,モリブデン,ニオブ,オスミウム,ストロンチウム,イットリウム,テクネチウム,ルテニウム,ロジウム,ビスマスから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する磁性酸化鉄。
本発明において、磁性酸化鉄は、磁気特性としては以下の範囲に含まれることが好ましい。即ち、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg、より好ましくは70〜100Am2/kgである。また、残留磁化が1〜100Am2/kg、より好ましくは2〜20Am2/kgである。また、抗磁力が1〜30kA/m、より好ましくは2〜15kA/mである。
本発明において、磁性酸化鉄粒子は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、チタネート、アミノシラン又は有機ケイ素化合物の如き表面処理剤で処理しても良い。
本発明のトナーには、着色剤を含有しても良い。本発明のトナーに使用し得る着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料があげられる。例えば顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。
また同様の目的で、染料を用いることも出来る。例えばアゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料があり樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
本発明では、次の一般式に示した芳香族ヒドロキシカルボン酸金属化合物を使用することが、帯電の立ち上がりを早くし、現像性の環境安定性を高めるうえで好ましい。
次に、該ヒドロキシカルボン酸金属化合物の具体例を示す。
なかでも、中心金属としてAlのものが、より高い帯電量が得られるという点で好ましい。なお、上記式中のtBuはターシャリーブチル基を意味する。
本発明のトナーには、荷電制御剤としてモノアゾ鉄化合物を含有させることも、トナーの帯電を高くし、帯電の安定性を高めるという観点で好ましい形態である。
特に、下記一般式で表されるモノアゾ鉄化合物が、帯電量を高く、安定して与えるので好ましい。
[式中、X2及びX3は水素原子,低級アルキル基,低級アルコキシ基,ニトロ基又はハロゲン原子を示し、k及びk’は1〜3の整数を示す。また、Y1およびY3は水素原子,C1〜C18のアルキル,C2〜C18のアルケニル,スルホンアミド,メシル,スルホン酸,カルボキシエステル,ヒドロキシ,C1〜C18のアルコキシ,アセチルアミノ,ベンゾイル,アミノ基又はハロゲン原子を示す。また、l及びl’は1〜3の整数を示し、Y2およびY4は水素原子またはニトロ基を示す(上記のX2とX3,kとk’,Y1とY3,lとl’,Y2とY4は同一でも異なっていても良い。)。
A”+はアンモニウムイオン,ナトリウムイオン,カリウムイオン,水素イオン又はそれらの混合イオンを示し、好ましくはアンモニウムイオン75〜98モル%を有する。]
次に、モノアゾ鉄化合物の具体例を示す。
なかでも、モノアゾ鉄化合物(1)式で表されるものが、トナーの帯電量を高めるので好ましい。
これらモノアゾ鉄化合物の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
特に本発明では、ヒドロキシカルボン酸Al化合物とモノアゾ鉄化合物を併用すると、芳香族カルボン酸チタン化合物を使用して重合されたポリエステル成分と組み合わせた場合にトナーの帯電量が飛躍的に向上し、現像性の環境安定性が高まる為、好ましい。
本発明のトナーは、ワックスを含有していても良い。
本発明に用いられるワックスとしては以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;又は、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪族エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪族エステルを一部又は全部を脱酸化したもの。
さらに前記ワックスとしては、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、或いはさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カウナビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、或いはさらに長鎖のアルキル基を有するアルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪族ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものが好ましく用いられる。また、これらのワックスを、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
本発明において特に好ましく用いられるワックスとしては、酸基や水酸基、エステル基などの極性基を有する炭化水素系ワックスが挙げられる。このようなワックスは、本発明で用いられるような、触媒として芳香族カルボン酸チタン化合物を使用して重合されたポリエステル成分を含有する結着樹脂と組み合わせると、トナーの帯電量が非常に高く、帯電量の分布もシャープになる。そのため、スリーブゴーストが発生しにくくなったり、微小ドットの再現性が改良されるなどの、画質の向上が可能になる。
前記極性基を有する炭化水素系ワックスは、酸価が1〜50mgKOH/g(好ましくは1〜30mgKOH/g)、水酸基価が5〜100mgKOH/g(好ましくは20〜80mgKOH/g)、融点が50℃〜100℃のものが特に好ましく用いられる。
炭化水素系ワックスが酸基を有していることにより、ワックスの帯電性が高くなり、ワックスがトナー粒子表面に露出してもトナーの帯電性を悪化させることがなくなるので、トナーの帯電性が向上する。炭化水素系ワックスの酸価が1mgKOH/g未満だと、ワックスの帯電性が小さくなり、現像性を悪化させる場合がある。また、炭化水素系ワックスの酸価が100mgKOH/gより大きいと、ワックスが吸湿しやすくなる為、高湿環境での現像性が悪化しやすい。
更に、炭化水素系ワックスの分子中に適度な水酸基を有していることにより、本発明の芳香族カルボン酸チタン化合物を触媒として重合されたポリエステル成分との分散性が向上する。この理由は明確になっていないが、水酸基を有する炭化水素系ワックスと、ポリエステル成分中に含まれるチタン化合物との相互作用により、ワックスがポリエステル成分中に微粒子状に分散されるためと思われる。炭化水素系ワックスの水酸基価が5mgKOH/g未満だと、炭化水素系ワックスが十分に微分散せず、トナーの現像性が低下することがある。また、炭化水素系ワックスの水酸基価が100mgKOH/gより大きいと、炭化水素系ワックスのポリエステル成分との親和性が高くなりすぎ、微粒子状に分散されずに相溶し易くなるため、機械的強度が低下し、現像耐久性が低下することがある。
前記炭化水素系ワックスの酸価、水酸基価は後述する方法により測定することが出来る。また炭化水素系ワックスの酸価、水酸基価は、例えば以下のように調整することが可能である。即ち、脂肪族炭化水素系ワックスから炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを生成し、該炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを加水分解する工程において、触媒として添加するホウ酸と無水ホウ酸の添加量又は添加比、反応温度、反応時間によって調整する。特に水酸基価とエステル価の割合は、エステル化反応と加水分解反応それぞれの反応工程において、反応温度、反応時間によって転化率を調整することにより、調整することが可能である。
また、前記炭化水素系ワックスの融点は、50℃〜100℃であり、好ましくは60℃〜80℃である。
前記炭化水素系ワックスの融点が50℃未満になると、トナーの耐ブロッキング性、耐オフセット性が低下し、現像剤担持部材の汚染を引き起こしやすくなり、100℃以上になると、トナーの定着性能に悪影響を与える場合がある。
前記炭化水素系ワックスの融点は、後述する方法によって測定することができる。また、前記炭化水素系ワックスの融点は、例えば炭化水素系ワックスの種類やアルコール転化等による改質によって調整することが可能である。
本発明に使用する極性基を有する炭化水素系ワックスは、以下の構造を有する炭化水素分子鎖を好ましくは含むものである。
すなわち、少なくとも下記部分構造式(A)乃至(E)で表せる、二級炭素に水酸基を有する二級アルコールの構造を有する分子鎖、乃至一級炭素に水酸基を有する一級アルコールの構造を有する分子鎖を有する。また同時に下記部分構造式(C)乃至(D)で表せる、一級乃至二級の炭素にカルボキシル基を有する分子鎖を有する。下記部分構造式(A)及び(E)、並びに、(C)及び(D)は、それぞれ一つの炭化水素鎖に両方を有していても良い。さらに下記部分構造式(B)で表せる、エステル結合を有するエステルの構造を有する分子鎖を有していても良い。より好ましくは、下記部分構造式(A)及び(E)、(C)及び(D)、並びに(B)で表されるアルコール構造、カルボキシル基、ならびにエステル結合をそれぞれ有する分子鎖を有する炭化水素鎖である。
また、一つの炭化水素鎖に任意の下記部分構造式A、B、C、D及びEの構造を有していても良い。
本発明に用いられる炭化水素系ワックスは、トナー粒子中の分散性や、トナーの帯電性に与える影響から、脂肪族炭化水素系ワックスが好ましい。特に、水酸基を有する炭化水素系ワックスが好ましい。
脂肪族炭化水素系ワックスから水酸基を有する炭化水素系ワックスを生成する一連の工程をアルコール転化と称する。アルコール転化には、種々の工程群を挙げることができる。例えば、炭化水素系ワックスから前記炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを生成し、前記炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを加水分解して、水酸基を有する炭化水素系ワックスを生成する方法が挙げられる。アルコール転化の工程を利用して所望の特性を有する炭化水素系ワックスを得ることが、炭化水素系ワックスの酸基、水酸基、エステル基の転化率をコントロールしやすいという点で好ましい。
脂肪族炭化水素系ワックスから水酸基を有する炭化水素系ワックスを生成する製造例として、炭化水素系ワックスを、ホウ酸及び無水ホウ酸の存在下で、分子状酸素含有ガスで液相酸化することで得られる方法が挙げられる。触媒としてはホウ酸と無水ホウ酸の混合物を使用することができる。ホウ酸と無水ホウ酸の混合比(ホウ酸/無水ホウ酸)はmol比で1.0〜2.0好ましくは1.2〜1.7の範囲である。無水ホウ酸の割合が前記範囲より少ないと、ホウ酸の過剰分が凝集現象を引き起こし好ましくない。また、無水ホウ酸の割合が前記範囲より多いと、反応後無水ホウ酸に由来する粉末物質が回収され、また過剰の無水ホウ酸は反応に寄与せず経済的な面からも好ましくない。
使用されるホウ酸と無水ホウ酸の添加量は、その混合物をホウ酸に換算して、原料の脂肪族炭化水素1molに対して0.001〜10mol、特に0.1〜1.0molが好ましい。
反応系に吹き込む分子状酸素含有ガスとしては酸素、空気、又はそれらを不活性ガスで希釈した広範囲のものが使用可能であるが、酸素濃度が1〜30容量%であるのが好ましく、より好ましくは3〜20容量%である。
液相酸化反応は通常溶媒を使用せず、原料の脂肪族炭化水素の溶融状態下で行われる。反応温度は120〜280℃、好ましくは150〜250℃である。反応時間は1〜15時間が好ましい。ホウ酸と無水ホウ酸はあらかじめ混合して反応系に添加するのが好ましい。ホウ酸のみを単独で添加すると、ホウ酸の脱水反応等が起こり好ましくない。また、ホウ酸と無水ホウ酸の混合溶媒の添加温度は100℃〜180℃がよく、好ましくは110〜160℃であり、100℃より低い場合には系内に残存する水分等に起因して、無水ホウ酸の触媒機能が低下するので好ましくない。
反応終了後、反応混合物に水を加え、生成したワックスのホウ酸エステルを加水分解後、精製して、所望のワックスが得られる。
また、本発明の磁性トナーには、磁性トナー粒子に外添剤として疎水性無機微粒子を添加することが好ましい。
本発明で用いられる疎水性無機微粒子としては、以下のものが挙げられる。湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化スズの如き酸化物;チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウムやジルコン酸カルシウムの如き複酸化物;炭酸カルシウム及び、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩化合物。特に、現像性、流動性向上のために、シリカ、酸化チタン、アルミナ、あるいはそれらの副酸化物から選ばれることが好ましい。
特に好ましいのは、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉末であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等の他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、本発明に用いられるシリカとしてはそれらも包含する。
本発明に用いられる疎水性無機微粒子は、無機微粒子と反応或いは物理吸着することができる以下のものが好ましい。シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤の一種又は二種以上により疎水化処理されていること。
特にシラン化合物,シリコーンオイルで処理されたものが好ましく、中でも両者で処理されたものが特に好ましい。すなわち、この2つのタイプの処理剤で表面処理することで疎水化度分布を高疎水性のものに揃え、しかも均質に処理できる。それにより、優れた流動性,均一帯電性,耐湿性を付与できるようになり、トナーに良好な現像性、特に高湿下での現像性,耐久安定性を与えることができる。
シラン化合物としては、以下のものが挙げられる。メトキシシラン,エトキシシラン,プロポキシシラン等のアルコキシシラン類、クロルシラン,ブロモシラン,ヨードシラン等のハロシラン類、シラザン類、ハイドロシラン類、アルキルシラン類、アリールシラン類、ビニルシラン類、アクリルシラン類、エポキシシラン類、シリル化合物類、シロキサン類、シリルウレア類、シリルアセトアミド類、及びこれらのシラン化合物類が有する異種の置換基を同時に有するシラン化合物類。これらのシラン化合物を用いることにより、流動性,転写性,帯電安定化が得られる。これらのシラン化合物は複数用いても良い。
具体例として、以下のものが挙げられる。ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン。これらは1種或いは2種以上の混合物として用いても良い。
本発明に好ましく用いられるシリコーンオイルとしては以下のものが挙げられる。アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、異種官能基変性の如き反応性シリコーン;ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、脂肪酸変性、アルコキシ変性、フッ素変性の如き非反応性シリコーン;ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンの如きストレートシリコーン。
これらのシリコーンオイルの中でも、置換基として、アルキル基、アリール基、水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されたアルキル基、水素を置換基として有するシリコーンオイルが好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルである。
これらのシリコーンオイルは、25℃における粘度が5〜2,000mm2/sであることが好ましく、より好ましくは10〜1,000mm2/s、さらに好ましくは30〜100mm2/sである。5mm2/s未満では十分な疎水性が得られないことがあり、2,000mm2/sを超える場合には無機微粒子処理時に均一に処理しずらくなったり、凝集物ができやすく十分な流動性が得られないことがある。
これらのシリコーンオイルは1種あるいは2種以上の混合物あるいは併用や多重処理して用いられる。また、シラン化合物による処理と併用しても構わない。
上記無機微粒子のシラン化合物処理は、無機微粒子を撹拌等によりクラウド状としたものに気化したシラン化合物を反応させる乾式処理又は、無機微粒子を溶媒中に分散させ、シラン化合物を滴下反応させる湿式法等、一般に知られた方法で処理することができる。
無機微粒子のシラン化合物処理は、無機微粒子原体100質量部に対し、処理剤を5〜40質量部、好ましくは5〜35質量部、より好ましくは10〜30質量部添加して処理することが好ましい。
オイルによる処理量としては、無機微粒子100質量部に対し3〜35質量部である場合に、高温高湿での現像性に優れるために好ましい。
特に本発明では、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理後に、さらにシリコーンオイルで処理された疎水性シリカが好ましく用いられる。ヘキサメチルジシラザンによる処理は、処理の均一性に優れ、流動性の良いトナーが得られるが、ヘキサメチルジシラザンによる処理だけでは高温高湿環境での帯電が安定しにくい。逆にシリコーンオイルによる処理は、高温高湿環境での帯電は高く保てるが、均一な処理が難しく、均一に処理しようとすると処理に必要なシリコーンオイルの量が多くなり、流動性が悪化しやすくなる。ヘキサメチルジシラザンで処理後にシリコーンオイルで処理を行なうと、少ないオイルの量で均一な処理が可能になる為、高い流動性と高温高湿環境での帯電安定性の両立が可能になる。
本発明の疎水性シリカは、たとえば以下のようにして疎水化処理を行なうことができる。
シリカの原体を処理槽に投入して、処理槽内を撹拌翼等で撹拌しながら、ヘキサメチルジシラザンを所定量滴下或いは噴霧して充分に混合する。このとき、ヘキサメチルジシラザンをアルコールの如き溶媒で希釈して処理することも出来る。混合分散した処理剤を含むシリカ原体はパウダーリキッドを形成しており、このパウダーリキッドを窒素雰囲気中でヘキサメチルジシラザンの沸点以上の温度(好ましくは、150乃至250℃)に加熱し、0.5乃至5時間、撹拌しながら還流する。その後、必要に応じて余剰の処理剤等を除去することも可能である。
シリコーンオイルによる原体シリカ表面の疎水化処理方法には、公知の技術が用いられ、例えば、ヘキサメチルジシラザン処理と同様に、シリカ粒子の原体を処理槽に投入して、処理槽内を撹拌翼等で撹拌しながら、シリカ粒子とシリコーンオイルとを混合する。シリコーンオイルとの混合はヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合させてもよいし、原体シリカ粒子へシリコーンオイルを噴霧する方法によってもよい。或いは、適当な溶剤に、シリコーンオイルを溶解或いは分散せしめた後、ベースのシリカ粒子と混合し、その後、溶剤を除去して作製してもよい。
シラン化合物及びシリコーンオイルで処理する場合には、原体シリカ粒子をシラン化合物で処理後、シリコーンオイルを噴霧し、その後、200℃以上で加熱処理する方法が好適に用いられる。
本発明に係る疎水性シリカの疎水化処理方法としては、シリカ粒子の原体を所定量バッチ内に仕込み、高速で撹拌しながら処理をバッチ内で行うバッチ式処理方法が好ましい。バッチ式処理方法によって得られた疎水性シリカ粒子は、均一に処理が施され、品質的にも安定したものが再現性良く得られる。
疎水性シリカ粒子の添加量は、その種類や機能等によっても異なるが、トナー粒子100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは、0.1〜3質量部)であることが好ましい。
本発明の磁性トナーには、シリカ微粒子以外の外添剤を必要に応じて添加してもよい。このような他の外添剤としては、例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
より具体的には、例えばフッ素系樹脂、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンの如き滑剤、中でもポリフッ化ビニリデンが好ましい。或いは酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。或いは例えば酸化チタン、酸化アルミニウム等の流動性付与剤、中でも特に疎水性のものが好ましい。ケーキング防止剤、或いは例えばカーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ等の導電性付与剤、また逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
本発明の磁性トナーは、静電荷像を現像する為に使用されるトナー粒子を生成する通常の方法を用いて製造することが可能である。本発明の磁性トナーの材料としては、前述した結着樹脂、及び磁性酸化鉄を少なくとも用い、さらに必要に応じて着色剤、ワックス、荷電制御剤等の他の材料が用いられる。
特に本発明では、球形化された磁性トナー粒子が好ましく用いられる。磁性トナーを球形化すると、磁性トナーの帯電量が高く、帯電量分布もシャープになるため、感光ドラムの微小ドットの再現性が高くなり、画質が良化する。しかし、従来の技術で磁性トナーを球形化すると、現像スリーブへの磁性トナーのコート安定性が悪化して、カブリやスリーブゴーストが悪化しやすかった。本発明の磁性トナーは、芳香族カルボン酸チタン化合物を触媒として重合されたポリエステル成分を含有している。そのため、磁性酸化鉄がトナー粒子内に均一に分散されており、トナー粒子ごとの磁気特性バラツキが非常に少なく、かつ、トナー粒子表面に露出する磁性酸化鉄の割合も均一でバラツキが少ない為に、現像スリーブへのトナーコート性が非常に安定する。
本発明の磁性トナーの球形化の手段としては、以下のものが挙げられる。トナー粒子に機械的な衝撃力を繰返し与えて球形化処理する方法、熱気流中、あるいは熱水などの分散媒にトナー粒子を分散させて熱球形化させる方法などの、粉砕法により得られたトナーを球形化する方法や、結着樹脂が可溶な溶剤にトナー材料を溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤して球形トナーを得る方法、結着樹脂が可溶な溶剤にトナー材料を溶解分散後、結着樹脂の貧溶媒(例えば水や水−メタノール混合溶媒)に分散させ、次いで溶剤を除去して球形トナーを得る方法などの、球形トナー製造方法。
特に本発明に係るトナーを作製するには、まず、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合する。その後、熱ロール,ニーダー,エクストルーダーの如き熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後粗粉砕を行った後に微粉砕、分級を行った後に、機械的衝撃力により球形化を行う方法が好ましい。さらに必要に応じ所望の添加剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により十分混合し、本発明に係るトナーを製造することができる。
本発明の磁性トナーは、芳香族カルボン酸チタン化合物を触媒として重合されたポリエステル成分を含有している。そのため、磁性酸化鉄と結着樹脂との密着性が高く、機械的衝撃力により磁性トナーを球形化しても、磁性トナー粒子表面に露出する磁性酸化鉄が外れにくい。また、トナー粒子表面に常に磁性酸化鉄が一定の割合で存在することができ、トナー粒子ごとのバラツキも少ない。このため、磁性トナーの帯電量分布がシャープになり、カブリやスリーブゴーストを悪化させずに微小ドットの再現性を高め、画質を向上させることができる。
特に本発明の磁性トナーは、フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm以上400μm以下の測定粒子における平均円形度が0.935以上0.995未満となるように、磁性トナー粒子を球形化することが好ましい。平均円形度が0.935未満の場合には、画質を向上させる効果が充分に得られない。平均円形度が0.995より大きい場合にはトナーの流動性が過剰に良くなる為に、現像スリーブや現像材規制ブレードと磁性トナーの摩擦帯電が起こりにくくなり、カブリや画像濃度薄が発生しやすくなる。また、該平均円形度が、0.935以上0.970未満であることが好ましく、より好ましく0.935以上0.965未満、さらに好ましくは0.935以上0.960未満、最も好ましくは0.940以上0.955未満である。
本発明トナーの特定の円形度分布を達成するために機械的衝撃力を加える処理として、球形化工程を用いたトナー粒子製造方法について説明する。
以下に、球形化工程で使用される球形化装置及び球形化装置を利用したトナー粒子の製造方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に使用する球形化装置の一例を示し、図2は図1において高速回転する回転子の上面図の一例を示す。
図1に示す球形化装置は、ケーシング、冷却水或いは不凍液を通水できるジャケット(図示しない)を有する。また、球形化手段である、ケーシング内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面に角型のディスク或いは円筒型のピン40を複数個有し、高速で回転する円盤上の回転体である分散ローター36を有する。また、球形化装置は、分散ローター36の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられているライナー34(尚、ライナー表面上の溝はなくても構わない)を有する。また、球形化装置は、球形化された原料を所定粒径に分級するための手段である分級ローター31を有する。また、球形化装置は、冷風を導入するための冷風導入口35、被処理原料を導入するための原料供給口33を有する。また、球形化装置は、球形化時間を自在に調整可能となるように、開閉可能なように設置された排出弁38、処理後の粉体を排出するための粉体排出口37を有する。また、球形化装置は、分級ローター31と分散ローター36−ライナー34との間の空間においては以下の空間を有する。即ち、分級手段へ導入される前の第一の空間41と、分級手段により微粉を分級除去された粒子を球形化手段へ導入するための第二の空間42である。また、球形化装置は、第二の空間42に仕切る案内手段である円筒形のガイドリング39を有する。分散ローター36とライナー34との間隙部分が球形化ゾーンであり、分級ローター31及びローター周辺部分が分級ゾーンである。
尚、分級ローター31の設置方向は図1に示したように縦型でも構わないし、横型でも構わない。また、分級ローター31の個数は図1に示したように単体でも構わないし、複数でも構わない。
以上のように構成してなる球形化装置では、排出弁38を閉とした状態で原料供給口33から原料トナー粒子を投入すると、投入された原料トナー粒子は、まずブロワー(図示しない)により吸引され、分級ローター31で分級される。その際、分級された所定粒径以下の微粉は装置外へ連続的に排出除去され、所定粒径以上の粗粉は遠心力によりガイドリング39の内周(第二の空間42)に沿いながら分散ローター36により発生する循環流にのり球形化ゾーンへ導かれる。球形化ゾーンに導かれた原料は分散ローター36とライナー34間で機械的衝撃力を受け、球形化処理される。球形化された粒子は、機内を通過する冷風にのって、ガイドリング39の外周(第一の空間41)に沿いながら分級ゾーンに導かれる。そして、分級ローター31により、再度微粉は機外へ排出され、粗粉は、循環流にのり、再度球形化ゾーンに戻され、繰り返し球形化作用を受ける。一定時間経過後、排出弁38を開とし、排出口37より球形化粒子を回収する。
本発明においては、トナー粒子球形化工程において、トナー粒子の球形化と同時に微粉成分を除去できることを特徴とする。それにより、トナー粒子中に存在する超微粒子がトナー粒子表面に固着することがなく、所望の円形度、及び超微粒子量を有するトナー粒子を効果的に得ることができる。球形化と同時に微粉を除去することができない場合、球形化後のトナー粒子中の超微粒子量が多く存在してしまう上に、トナー粒子球形化工程において、機械的、熱的な影響により、適正な粒径を有するトナー粒子の表面に超微粒子成分が固着してしまう。その結果、トナー粒子の表面に、固着した微粉成分による突起が生成し、所望の円形度を有するトナー粒子が得られない。
尚、本発明において、「球形化と同時に微粉成分を除去する」とは、トナー粒子の球形化及び微粉除去を繰り返し行うことを意味する。それは前記のような単一装置内でそれぞれの工程を有する装置を用いても良く、また、球形化と微粉除去を異なる装置によって行い、それぞれの工程を繰り返し行うことによっても良い。
本発明者が検討した結果、球形化装置における球形化時間(=サイクルタイム、原料供給が終了してから排出弁が開くまでの時間)としては、5秒以上180秒以下、更に好ましくは、15秒以上120秒以下であることが好ましい。球形化時間が5秒未満の場合、球形化時間が短時間過ぎるため、トナー粒子が十分に球形化されない場合がある。また、球形化時間が180秒を超えると、球形化時間が長時間過ぎるため、球形化時に発生する熱による機内融着の発生、及び処理能力の低下を招く場合がある。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、該球形化装置内に導入する冷風温度T1を5℃以下とすることが好ましい。該球形化装置内に導入する冷風温度T1を5℃以下、より好ましくは、0℃以下、更に好ましくは、−5℃以下とすることにより、球形化時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該球形化装置内に導入する冷風温度T1が5℃を超えると、球形化時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
尚、該球形化装置内に導入する冷風は、装置内の結露防止という面から、除湿したものであることが好ましい。除湿装置としては公知のものが使用できる。給気露点温度としては、−15℃以下が好ましく、更には−20℃以下が好ましい。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、該球形化装置内は、機内冷却用のジャケットを具備しており、該ジャケットに冷媒(好ましくは冷却水、更に好ましくはエチレングリコール等の不凍液)を通しながら球形化処理することが好ましい。該ジャケットによる機内冷却により、トナー粒子球形化時における熱による機内融着を防止することができる。
尚、球形化装置の該ジャケット内に通す冷媒の温度は5℃以下とすることが好ましい。球形化装置内の該ジャケット内に通す冷媒の温度を5℃以下、より好ましくは、0℃以下、更に好ましくは、−5℃以下とすることにより、球形化時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該ジャケット内に導入する冷媒の温度が5℃を超えると、球形化時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、該球形化装置内の分級ローター後方の温度T2を60℃以下とすることが好ましい。該球形化装置内の分級ローター後方の温度T2を60℃以下、好ましくは50℃以下とすることにより、球形化時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該球形化装置内の分級ローター後方の温度T2が60℃を超えると、球形化ゾーンにおいては、それ以上の温度が影響するため、球形化時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、球形化装置内の該分散ローターとライナーとの間の最小間隔が0.5mm乃至15.0mmとすることが好ましく、更には、1.0mm乃至10.0mmとすることが好ましい。また、該分散ローターの回転周速は75m/sec乃至200m/secとすることが好ましく、更には、85m/sec乃至180m/secとすることが好ましい。更に、球形化装置内の該分散ローター上面に設置されている角型のディスク或いは円筒形のピンの上部と、該円筒型のガイドリングの下部との間の最小間隔が2.0mm乃至50.0mmとすることが好ましい。更には、5.0mm乃至45.0mmとすることが好ましい。
本発明において、該球形化装置内の分散ローター及びライナーの粉砕面は耐摩耗処理されていることがトナー粒子の生産性上好ましい。尚、耐摩耗処理方法は何ら限定されるものではない。また、該球形化装置内の分散ローター及びライナーの刃形状に関しても、何ら限定されるものではない。
本発明のトナー粒子製造方法としては、あらかじめ所望の粒径付近に微粒子化された原料トナー粒子を、気流式分級機を用いて微粉及び粗粉をある程度除去した上で、球形化装置によってトナー粒子の球形化及び超微粉成分の除去を行うことが好ましい。あらかじめ微粉を除去しておくことにより、球形化装置内でのトナー粒子の分散が良好になる。特に、トナー粒子中の微粉成分は、比表面積が大きく、他の大きなトナー粒子と比較して相対的に帯電量が高いために他のトナー粒子からの分離がされにくく、分級ローターで適正に超微粉成分が分級されない場合がある。しかし、あらかじめトナー粒子中の微粉成分を除去しておくことによって、球形化装置内で個々のトナー粒子が分散しやすくなり、超微粉成分が適正に分級ローターによって分級され、所望の粒度分布を有するトナー粒子を得ることができる。気流式分級機によって微粉を除去されたトナーは、コールターカウンター法を用いて測定される粒度分布において、4μm未満のトナー粒子の個数平均分布の累積値が10%以上50%未満であることが好ましい。また、より好ましくは15%以上45%未満、さらに好ましくは15%以上40%未満である。このような超微粉体は、本発明の球形化装置によって効果的に超微粉成分を除去することができる。本発明で用いられる気流式分級機としては、エルボジェット(日鉄工業社製)があげられる。
更に本発明においては、該球形化装置内の分散ローター及び分級ローターの回転数等を制御することにより、トナー粒子の円形度をより適正な値に制御することができる。
本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものである。本発明ではシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて23℃、60%RHの環境下で測定を行った。このとき、円相当径0.60μm〜400μmの範囲内の粒子を測定し、そこで測定された粒子の円形度を下式により求め、更に円相当径3μm以上400μm以下の粒子において、円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
円形度a=L0/L
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子投影像の周囲長を示す。〕
本発明に用いている円形度はトナー粒子及びトナーの凹凸の度合いの指標であり、トナー粒子及びトナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度の算出にあたって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を61分割したクラスに分けをする。そして、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度の値と、各粒子の円形度の総和を用いる算出式によって算出される平均円形度の誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度である。本発明においては、算出時間の短縮化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、各粒子の円形度の総和を用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いても良い。さらに本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来よりトナー粒子及びトナーの形状を算出するために用いられていた「FPIA1000」と比較して、以下の点で性能が向上している。即ち、処理粒子画像の倍率の向上、さらに取り込んだ画像の処理解像度を向上(256×256→512×512)することによりトナー粒子及びトナーの形状測定の精度が上がっている。それにより微粒子のより確実な捕捉を達成している装置である。従って、本発明のように、より正確に形状及び粒度分布を測定する必要がある場合には、より正確に形状及び粒度分布に関する情報が得られるFPIA2100の方が有用である。
具体的な測定方法としては、予め容器中の不純物を除去した水200〜300ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波発振器で2分間分散し、分散液濃度を0.2〜1.0万個/μlとして粒子の円形度分布を測定する。超音波発振器としては、例えば以下の装置を使用し、以下の分散条件を用いる。
UH−150(株式会社エス・エム・テー社製)
OUTPUT レベル:5
コンスタントモード
測定の概略は、以下の通りである。
試料分散液は、フラットで扁平なフローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
本発明の磁性トナーは、トナーの平均面粗さが10.0nm以上26.0nm未満、好ましくは12.0nm以上24.0nm未満であることが好ましい。磁性トナーの平均面粗さは、外添剤粒子が磁性トナー粒子に添加された後の表面状態を表すものであり、外添剤を添加する前の磁性トナー粒子の表面状態と、外添剤粒子の磁性トナー粒子への付着状態とを総合的に表すことができる。
外添剤が添加された後の磁性トナー表面の面粗さを精密に制御することで、現像スリーブや現像剤規制ブレードなどの、トナーに帯電を付与する部材と磁性トナーとの接触機会をコントロールすることが可能になる。そのため、帯電の立ち上がりが非常に早く、高い帯電性を持った磁性トナーを得ることができる。その結果、環境によらず、高い画像濃度と優れたドット再現性を持ち、スリーブゴーストの発生しない磁性トナーを得ることができる。
磁性トナーの平均面粗さが10.0nm未満だと、磁性トナー粒子表面に外添剤粒子が埋め込まれていたり、付着している外添剤粒子が少なすぎる状態となることがある。そのため、磁性トナーに十分な帯電性や流動性が付与できず、画像濃度の低下が起きたり、カブリが悪化しやすくなる。磁性トナーの平均面粗さが26.0nm以上だと、外添剤が付着する前の磁性トナー粒子表面に凹凸が多すぎたり、磁性トナー粒子表面の外添剤粒子が不均一にコートされている状態となることがある。そのため、磁性トナーの帯電性が悪化しやすく、スリーブゴーストやドット再現性が悪化しやすい。
本発明の磁性トナーは、芳香族カルボン酸チタン化合物を触媒として重合されたポリエステル成分を含有する結着樹脂を使用しており、磁性酸化鉄が均一に分散されている。そのため、トナー化時の粉砕工程や、機械的衝撃力による球形化処理工程において、粉砕されやすい界面や球形化処理されやすい部位が存在しない。よって、磁性トナーの円形度や平均面粗さを、本発明で好ましく用いられる範囲に制御することが可能になる。
一方、芳香族カルボン酸チタン化合物以外の触媒を使用して重合されたポリエステル成分を含有する結着樹脂を用いると、結着樹脂中に粘度の高い部分や低い部分が局在することがある。そのため、磁性トナーの円形度や平均面粗さを、本発明で好ましく用いられる範囲に制御することができない場合がある。
本発明において、磁性トナーの平均面粗さは、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定される。以下に、測定方法の例を示す。
プローブステーション:SPI3800N(セイコーインスツルメンツ(株)製)
測定ユニット:SPA400
測定モード:DFM(共振モード)形状像
カンチレバー:SI−DF40P
解像度:Xデータ数 256
Yデータ数 128
本発明においては、磁性トナーの表面の1μm四方のエリアを測定する。測定するエリアは、走査型プローブ顕微鏡で測定される磁性トナー表面の、中央部の1μm四方のエリアとする。測定する磁性トナー粒子は、コールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)に等しいトナー粒子をランダムに選択して、そのトナー粒子を測定する。測定されたデータは、2次補正を行う。異なるトナー粒子を5個以上測定し、得られたデータの平均値を算出して、その磁性トナーの平均面粗さとする。
以下に各用語を説明する。
・平均面粗さ(Ra)
JIS B0601で定義されている中心線平均粗さRaを、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したもの。基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で次式で表される。
F(X,Y):全測定データの示す面
S
0:指定面が理想的にフラットであると仮定したときの面積
Z
0:指定面内のZデータの平均値
指定面とは、本発明においては1μm四方の測定エリアを意味する。
本発明の磁性トナーの製造には、以下のような装置を用いることができる。混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
また混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
また粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング)。
また分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
また粗粒等をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。本発明における各種物性データの測定法を以下に詳述する。
[磁性トナー及び磁性酸化鉄の磁気特性]
「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定することができる。
以下、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(芳香族カルボン酸チタン化合物の製造例1)
ピリジン100質量部に、テレフタル酸19.6質量部を溶解した後、この溶液にテトラ−n−ブトキシチタン80.4質量部を滴下し、窒素雰囲気下で40℃、2時間保持してテトラ−n−ブトキシチタンとテレフタル酸を反応させた。その後、減圧蒸留により、ピリジンと反応生成物であるブタノールを留出させ、芳香族カルボン酸チタン化合物1を得た。
(芳香族カルボン酸チタン化合物の製造例2)
芳香族カルボン酸チタン化合物の製造例1のテレフタル酸19.6質量部を無水トリメリット酸36.1質量部に、テトラ−n−ブトキシチタン80.4質量部を63.9質量部に変更する以外は同様にして、芳香族カルボン酸チタン化合物2を得た。
(芳香族カルボン酸チタン化合物の製造例3)
芳香族カルボン酸チタン化合物の製造例1のテレフタル酸19.6質量部を安息香酸41.5質量部に、テトラ−n−ブトキシチタン80.4質量部をテトラメトキシチタン58.5質量部に変更する以外は同様にして、芳香族カルボン酸チタン化合物3を得た。
<結着樹脂製造例1>
式(A)で表わされるビスフェノール誘導体
(R:プロピレン基でx+y=2.2):400質量部
テレフタル酸:70質量部
イソフタル酸:60質量部
無水トリメリット酸:30質量部
これらに、触媒として芳香族カルボン酸チタン化合物1を2質量部、シュウ酸チタニルカリウム1質量部を添加した。
このポリエステル系モノマー及び重合触媒の混合物に、窒素雰囲気下、160℃で下記ビニル系モノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下し、ビニル系重合体成分の重合をまず行った。
スチレン:44質量部
アクリル酸ブチル:16質量部
アクリル酸:5質量部
ジクミルパーオキサイド3質量部
その後、220℃に昇温して10時間以上縮合重合を行い、所望の粘度まで反応を行い、ビニル系重合体成分にポリエステル成分がグラフトしたハイブリッド樹脂(結着樹脂1)を得た。結着樹脂中のポリエステル成分は約88質量%であり、Tg=55℃、ピーク分子量Mp=6900、軟化点=138℃、THF不溶分=11質量%であった。
<結着樹脂製造例2>
式(A)で表わされるビスフェノール誘導体
(R:エチレン基でx+y=2):200質量部
式(A)で表わされるビスフェノール誘導体
(R:プロピレン基でx+y=3):200質量部
テレフタル酸:180質量部
これらに、触媒として芳香族カルボン酸チタン化合物1を4質量部添加し、230℃で10時間縮合重合した。ここで、無水トリメリット酸40質量部、シュウ酸チタニルカリウム2質量部を追加触媒として添加し、さらに縮合重合を進め、ポリエステル樹脂(結着樹脂2)を得た。結着樹脂中のポリエステル成分は100質量%であり、Tg=60℃、ピーク分子量Mp=10600、軟化点=144℃、THF不溶分=17質量%であった。
<結着樹脂製造例3>
芳香族カルボン酸チタン化合物1の代わりに芳香族カルボン酸チタン化合物2を3質量部添加し、シュウ酸チタニルカリウムを添加しない事以外は、結着樹脂製造例2と同様にして、ポリエステル樹脂(結着樹脂3)を得た。結着樹脂中のポリエステル成分は100質量%であり、Tg=59℃、ピーク分子量Mp=9200、軟化点=124℃、THF不溶分=4質量%であった。
<結着樹脂製造例4>
芳香族カルボン酸チタン化合物1の代わりに芳香族カルボン酸チタン化合物3を3質量部添加し、シュウ酸チタニルカリウムを添加しない事以外は、結着樹脂製造例2と同様にして、ポリエステル樹脂(結着樹脂4)を得た。結着樹脂中のポリエステル成分は100質量%であり、Tg=56℃、ピーク分子量Mp=7100、軟化点=118℃、THF不溶分=12質量%であった。
<結着樹脂製造例5>
式(A)で表わされるビスフェノール誘導体
(R:プロピレン基でx+y=2.2):400質量部
テレフタル酸:100質量部
イソフタル酸:80質量部
これらに、触媒としてテレフタル酸チタンを5質量部添加し、230℃で10時間縮合重合した。ここで、無水トリメリット酸60質量部を添加し、さらに縮合重合を進め、ポリエステル樹脂(結着樹脂5)を得た。結着樹脂中のポリエステル成分は100質量%であり、Tg=55℃、ピーク分子量Mp=5400、軟化点=129℃、THF不溶分=29質量%であった。
<結着樹脂製造例6>
式(A)で表わされるビスフェノール誘導体
(R:プロピレン基でx+y=2):400質量部
フマル酸:85質量部
無水トリメリット酸:60質量部
これらに、触媒としてテレフタル酸チタンを5質量部添加し、230℃で縮合重合を行い、ポリエステル樹脂(結着樹脂6)を得た。結着樹脂中のポリエステル成分は100質量%であり、ガラス転移温度Tg=53℃、ピーク分子量Mp=4700、軟化点=115℃、THF不溶分=29質量%であった。
<比較用結着樹脂製造例1>
式(A)で表わされるビスフェノール誘導体
(R:プロピレン基でx+y=2.2):400質量部
フマル酸:95質量部
無水トリメリット酸:30質量部
これらに、触媒としてテトラメトキシチタンを3質量部添加し、230℃で縮合重合を行い、ポリエステル樹脂(結着樹脂7)を得た。結着樹脂中のポリエステル成分は100質量%であり、ガラス転移温度Tg=52℃、ピーク分子量Mp=5100、軟化点=105℃、THF不溶分=3質量%であった。
<比較用結着樹脂製造例2>
触媒としてテトラメトキシチタンを2質量部、ジブチルスズオキサイド2質量部を添加する以外は比較用結着樹脂製造例1と同様にし、ポリエステル樹脂(結着樹脂8)を得た。結着樹脂中のポリエステル成分は100質量%であり、ガラス転移温度Tg=54℃、ピーク分子量Mp=4400、軟化点=111℃、THF不溶分=7質量%であった。
(ワックスの合成例)
原料物質としてフィッシャートロプシュワックス1,000gをガラス製の円筒反応器に入れ、窒素ガスを少量(3.5リットル/分)円筒反応器に吹き込みながら、140℃まで昇温した。ホウ酸/無水ホウ酸:1.44(モル比)の混合触媒26.1g(0.41モル)を円筒反応器に加えた後、空気(20リットル/分)と窒素(15リットル/分)を円筒反応器に吹き込みながら、180℃で2時間反応を行った。反応終了後、反応混合物に等量の温水(95℃)を加え、反応混合物を加水分解後、静置して上層に分離した炭化水素系ワックスを分取し、分取した炭化水素系ワックスを水洗いしてワックスAを得た。ワックスAの水酸基価は67mgKOH/g、酸価は6mgKOH/g、融点は75℃であった。
(樹脂の軟化点測定方法)
JIS K 7210にのっとり、高架式フローテスターにより測定されるものを指す。具体的な測定方法を以下に示す。
高架式フローテスター(島津製作所製)を用いて1cm3の試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1960N/m2(20kg/cm2)の荷重を与え、直径1mm,長さ1mmのノズルを押し出すようにする。これにより、プランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするとき、h/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を樹脂の軟化点(Tm)とする。
(樹脂のガラス転移温度Tg)
示差熱分析測定装置(DSC測定装置)としてTAインスツルメンツ社製Q−1000を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定する。測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程で吸熱ピークが得られ、この吸熱ピークが出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点をガラス転移温度Tgとする。
(樹脂の分子量の測定)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流す。試料をTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。試料濃度として0.05〜0.6重量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、以下のものを用いることができる。Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102,2.1×103,4×103,1.75×104,5.1×104,1.1×105,3.9×105,8.6×105,2×106,4.48×106。そして、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、以下のような市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せることが好ましい。Waters社製のμ−styragel 500,103,104,105の組合せや、昭和電工社製のshodex KA−801,802,803,804,805,806,807の組合せ。
<ワックスの融点、結着樹脂のガラス転移温度の測定法>
本発明におけるワックスの融点及び、結着樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC測定装置)、Q−1000(TAインスツルメンツジャパン社製)を用いて、下記条件にしたがって行うことができる。ワックスの融点及び結着樹脂のガラス転移温度は、下記温度曲線の昇温IIで測定される吸熱ピークが検出される温度を用いる。
試料 :5〜20mg、好ましくは10mg
測定法 :試料をアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。
温度曲線:昇温I(20℃→180℃、昇温速度10℃/min.)
降温I(180℃→10℃、降温速度10℃/min.)
昇温II(10℃→180℃、昇温速度10℃/min.)
<ワックスの水酸基価の測定法>
本発明におけるワックスの水酸基価の測定は、下記のように実施することができる。
・装置及び器具
メスシリンダー(100ml)
全量ピペット(5ml)
平底フラスコ(200ml)
グリセリン浴
・試薬
アセチル化試薬(無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振り混ぜる。)
フェノールフタレイン溶液
0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液
・測定法
(a)炭化水素系ワックスを0.5〜6.0g平底フラスコに精秤して、これにアセチル化試薬5mlを全量ピペットを用いて加える。
(b)フラスコの口に小さな漏斗を置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。フラスコの首がグリセリン浴の熱を受けて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根にかぶせる。
(c)1時間後フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。
(d)更に、分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール(95)5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗う。
(e)フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。
(f)空試験は、炭化水素系ワックス(a)を入れないで(a)〜(e)を行う。
(g)試料が溶解しにくい場合は、少量のピリジンを追加するか、キシレン又はトルエンを加えて溶解する。
・計算
得られた結果から下記の式によって炭化水素系ワックスの水酸基価を求める。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
但し、
A:炭化水素系ワックスの水酸基価(mgKOH/g)
B:空試験に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
C:滴定に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:炭化水素系ワックスの質量(g)
D:炭化水素系ワックスの酸価(mgKOH/g)
28.05:水酸化カリウムの式量56.11×1/2
<ワックスの酸価の測定法>
本発明におけるワックスの酸価の測定は、下記のように実施することができる。
(装置及び器具)
三角フラスコ(300ml)
ビュレット(25ml)
水浴又は熱板
(試薬)
0.1kmol/m3塩酸
0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液(標定は、0.1kmol/m3塩酸25mlを全ピペットを用いて三角フラスコに取る。そこに、フェノールフタレイン溶液を加え、0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、中和に要した量からファクターを求める。)
フェノールフタレイン溶液溶剤(ジエチルエーテルとエタノール(99.5)を体積比で1:1又は2:1で混合したもの。これらは、使用直前にフェノールフタレイン溶液を指示薬として数滴加え、0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で中和する。)
(測定法)
(a)ワックス1〜20gを三角フラスコに精秤する。
(b)溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水浴上でワックスが完全に溶けるまで十分に振り混ぜる。
(c)0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いたときを終点とする。
(計算)
得られた結果から下記式によりワックスの酸価を算出する。
A=5.611×B×f/S
但し、
A:ワックスの酸価(mgKOH/g)
B:滴定に用いた0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:ワックスの質量(g)
5.611:水酸化カリウムの式量56.11×1/10
<磁性酸化鉄の製造例1>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対しSi元素の含有量が0.6質量%となるようにケイ酸ソーダを添加した後、苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを10に調整しながら空気を吹き込み、80乃至90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
種晶の生成が確認されたら、このスラリー液にさらに硫酸第一鉄水溶液を適宜加え、スラリー液のpHを10に調整しながら空気を吹き込み酸化反応を進めた。その間に、未反応の水酸化第一鉄濃度を調べながら反応の進行率を調べつつ、水溶液のpHを酸化反応の初期はpHを9に、反応中期にはpHを8に、反応後期にはpHを6にというように段階的に調整する。このように調整することで磁性酸化鉄内でのSi元素の分布を制御し、酸化反応を完結させた。
次いで、該Si元素を含有する磁性酸化鉄粒子が生成しているアルカリ性懸濁液中に水可溶性アルミニウム塩を生成粒子に対してアルミ元素換算で0.10質量%になるように添加した後、pHを6〜8の範囲に調整する。これにより、磁性酸化鉄表面にアルミ水酸化物として析出させた。次いでロ過、水洗、乾燥、解砕することにより、磁性酸化鉄表面にアルミニウム元素を有する磁性酸化鉄を得た。生成した磁性酸化鉄粒子を常法により洗浄、ろ過乾燥した。
得られた磁性酸化鉄粒子の一次粒子は、凝集して凝集体を形成している。そのため、ミックスマーラーを使用して磁性酸化鉄粒子の凝集体に圧縮力及びせん断力を付与して、前記凝集体を解砕して磁性酸化鉄粒子を一次粒子にすると共に、磁性酸化鉄粒子の表面を平滑にし、表1に示すような特性を有する磁性酸化鉄1を得た。
<磁性酸化鉄の製造例2〜3>
磁性酸化鉄の製造例1の反応温度やpHなどの製造条件を変化させ、表1に示すような特性を有する磁性酸化鉄2〜3を得た。
〔実施例1〕
・結着樹脂1:100質量部
・磁性酸化鉄1:100質量部
・モノアゾ鉄化合物(1)(カウンターイオンがNH4 +とNa+の混合物であり、NH4 +とNa+の混合比NH4 +/Na+=7/3):2質量部
・サリチル酸Al化合物(1):1質量部
・ワックスA:6質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に加熱された2軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050))を用いて、機械式粉砕させて微粉砕物を得た。このとき、粉砕機入り口エアー温度を−15℃、出口エアー温度を49℃、粉砕ローター及びライナーを冷却する冷媒の温度を−5℃に調整した。得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去し、磁性トナー粒子を得た。この磁性トナー粒子の重量平均粒径(D4)は6.1μm、個数分布における4μm未満の粒子の累積個数%は26.3%であった。
この磁性トナー粒子を、図1に示す球形化装置で球形化及び微粉除去を行った。その際、本実施例においては、分散ローター上部に角型のディスクを16個設置し、ガイドリングと分散ローター上角型ディスクの間隔を60mm、分散ローターとライナーとの間隔を4mmとした。また分散ローターの回転周速を160m/secとし、ブロワー風量を30m3/minとした。また磁性トナー粒子の投入量を200kg/hrとし、サイクルタイムを60secとした。またジャケットに通す冷媒の温度を−15℃、冷風温度T1を−20℃とした。更に、分級ローターの回転周速を85m/secに制御することにより、0.6μm以上3μm未満の粒子比率を所望の値とした。以上の工程を経て、コールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)6.3μm、4μm未満のトナー粒子の個数分布における4μm未満の粒子の累積個数%は20.7%の負帯電性磁性トナー粒子1を得た。
この磁性トナー粒子100質量部と、乾式シリカ(BET:200m2/g)にヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して磁性トナー1を調製した。
この磁性トナー1の、飽和磁化σsは39.0kA/m、残留磁化σrは2.8kA/m、FPIA2100で測定された円相当径3μm以上400μm以下のトナーにおける平均円形度は0.952であった。また、この磁性トナー1の走査型プローブ顕微鏡で測定される平均面粗さは16.3nmであった。
〔実施例2〕
結着樹脂1を結着樹脂2に変える以外は実施例1と同様にして、磁性トナー2を調製した。この磁性トナー2の物性を表2に示す。
〔実施例3〕
結着樹脂1を結着樹脂3に、ワックスAをフィッシャートロプシュワックス(DSCピークトップ温度=104℃、Mw/Mn=1.8):4質量部に変えた。さらに、疎水性シリカ微粉体1.2質量部を1.5質量部に変える以外は実施例1と同様にして、磁性トナー3を調製した。この磁性トナー3の物性を表2に示す。
〔実施例4〕
原材料組成を以下のように変え、疎水性シリカ微粉体1.2質量部を1.0質量部に変える以外は実施例1と同様にして、磁性トナー4を調製した。この磁性トナー4の物性を表2に示す。
・結着樹脂4:100質量部
・磁性酸化鉄2:150質量部
・モノアゾ鉄化合物(1)(カウンターイオンがNH4 +とNa+の混合物であり、NH4 +とNa+の混合比NH4 +/Na+=7/3):2質量部
・フィッシャートロプシュワックス(DSCピークトップ温度=104℃、Mw/Mn=1.8):4質量部
〔参考例1〕
原材料組成を以下のように変え、疎水性シリカ微粉体1.2質量部を0.8質量部に変える以外は実施例1と同様にして、磁性トナー5を調製した。この磁性トナー5の物性を表2に示す。
・結着樹脂5:100質量部
・磁性酸化鉄3:50質量部
・モノアゾ鉄化合物(1)(カウンターイオンがNH4 +とNa+の混合物であり、NH4 +とNa+の混合比NH4 +/Na+=7/3):2質量部・フィッシャートロプシュワックス(DSCピークトップ温度=104℃、Mw/Mn=1.8):4質量部
〔参考例2〕
結着樹脂5を結着樹脂6に変え、疎水性シリカ微粉体0.8質量部を0.6質量部に変える以外は参考例1と同様にして、磁性トナー6を調製した。この磁性トナー6の物性を表2に示す。
〔参考例3〕
参考例2の球形化処理後の疎水性シリカを混合する前の磁性トナー粒子に、以下のシリカ微粉体をヘンシェルミキサーで混合して磁性トナー7を調製した。シリカ微粉体は、実施例1と同様の疎水性シリカ微粉体1.0質量部、乾式シリカ(BET:50m2/g)にヘキサメチルジシラザン処理を行った大粒径疎水性シリカ微粉体1.0質量部である。この磁性トナー7の物性を表2に示す。
〔参考例4〕
・結着樹脂6:100質量部
・磁性酸化鉄3:200質量部
・サリチル酸Zr化合物(1):2質量部
・フィッシャートロプシュワックス(DSCピークトップ温度=104℃、Mw/Mn=1.8):4質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に加熱された2軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050))を用いて、機械式粉砕させて微粉砕物を得た。このとき、粉砕機入り口エアー温度を−10℃、出口エアー温度を40℃、粉砕ローター及びライナーを冷却する冷媒の温度を0℃に調整した。得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去し、磁性トナー粒子を得た。この磁性トナー粒子の重量平均粒径(D4)は6.7μm、個数分布における4μm未満の粒子の累積個数%は19.1%であった。
この磁性トナー粒子には球形化処理は行わなかった。その磁性トナー粒子100質量部と、乾式シリカ(BET:200m2/g)にヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して磁性トナー8を調製した。この磁性トナー8の物性を表2に示す。
〔参考例5〕
磁性酸化鉄3:200質量部を磁性酸化鉄2:20質量部に変える以外は参考例4と同様にして磁性トナー9を調製した。この磁性トナー9の物性を表2に示す。
〔比較例1〕
・結着樹脂7:100質量部
・磁性酸化鉄3:200質量部
・サリチル酸Cr化合物(1):1質量部
・フィッシャートロプシュワックス(DSCピークトップ温度=104℃、Mw/Mn=1.8):4質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に加熱された2軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物をジェットミルを用いて微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去し、磁性トナー粒子を得た。この磁性トナー粒子の重量平均粒径(D4)は8.4μm、個数分布における4μm未満の粒子の累積個数%は11.9%であった。
この磁性トナー粒子100質量部と、乾式シリカ(BET:200m2/g)にヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体0.8質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して磁性トナー10を調製した。この磁性トナー10の物性を表2に示す。
〔比較例2〕
結着樹脂7を結着樹脂8に変える以外は比較例1と同様にして、磁性トナー11を調製した。この磁性トナー11の物性を表2に示す。
次に、これら調製された磁性トナーを用いて、以下に示すような方法によって評価を行った。評価結果を表3に示す。
[定着試験]
ヒューレットパッカード社製レーザービームプリンタ:LaserJet4300の定着器を取り出し、定着器の定着温度を任意に設定できるようにし、かつプロセススピードを300mm/secとなるようにした外部定着器を用いた。
この外部定着器を150〜200℃の範囲で5℃おきに温調し、普通紙(90g/m2)紙に現像したベタ黒(紙上トナー現像量を0.6mg/cm2に設定)未定着画像の定着を行った。このとき得られた画像を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が10%以下になる点を定着温度とした。この温度が低いほど低温定着性に優れたトナーである。
耐高温オフセット性については、プロセススピードを100mm/secにし、180〜240℃の範囲で5℃おきに温調し、普通紙(75g/m2)紙に現像したベタ黒(紙上トナー現像量を0.6mg/cm2に設定)未定着画像の定着を行った。このとき画像上のオフセット現象による汚れを目視で確認し、オフセットが発生した温度を耐高温オフセット性とした。この温度が高いほど耐高温オフセット性に優れたトナーである。
[現像性試験]
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaserJet4300を改造して55ppm(A4タテ、プロセススピード=約325mm/秒)にしたマシンを用いて以下の評価を行った。
(1)画像濃度とカブリ
常温常湿環境下、低温低湿環境下、高温高湿環境下の各環境下で、1枚のジョブ毎に一旦マシンが停止するモードで、印字比率2%の横線パターンを複写機用普通紙(75g/m2)に1万枚の画出し試験を行った。このとき、常温常湿環境は23℃,60%RH、低温低湿環境は15℃,10%RH、高温高湿環境は32.5℃,80%RHとした。
画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
低温低湿環境でのカブリは、リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
(2)スリーブゴースト
上記(1)の評価途中で、1000枚プリントアウト毎にスリーブゴーストの評価もあわせて行った。図3に示すような、現像スリーブ1周分にブロック状のベタ黒画像があり、その下にハーフトーンの全面ベタが続く画像をプリントした。そして、現像スリーブ2周目以降のハーフトーンに、現像スリーブ1周目の画像の履歴がどれくらい現れるかについて、画像の目視による官能評価をもって下記判断基準により判定した。
ネガゴーストは、スリーブ2周目以降で出る画像において、スリーブ1周目に黒印字部だった部分の画像濃度が非画像部だった部分の画像濃度よりも低く現れる現象である。また、ポジゴーストはこれとは逆に、スリーブ1周目に黒印字部だった部分の画像濃度が非画像部だった部分の画像濃度よりも高く現れる現象である。ゴーストの評価としてA、B、C、Dの4段階で評価し、各環境1000枚毎の評価の中での最悪の評価結果を表に示す。
A:濃淡差が全く見られない。
B:軽微な濃淡差が見られる。
C:濃淡差が顕著に見られる。
D:濃淡差がスリーブ3周目以降にも見られる。
(3)ドット再現性
上記(1)の評価において、常温常湿環境下(23℃,60%RH)で3000枚プリントアウト後に、孤立した1ドットのハーフトーンパターンをプリントし、ドットの再現性を光学顕微鏡を用いて、目視による官能評価をもって下記判断基準により判定した。
A:ドットのエッジ部がシャープで、ドット周辺にトナーの飛び散りがほとんどない
B:ドットのエッジ部はシャープだが、ドット周辺のトナーの飛び散りが若干見られる
C:飛び散りがやや多く、エッジがぼんやりした感じである
D:Cのレベルに満たない