JP4454872B2 - 内燃機関のデコンプ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、往復動式内燃機関の始動時に、圧縮圧力を低減して始動を容易にするデコンプ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の内燃機関のデコンプ装置として、実用新案登録第2534274号公報に開示されたものがある。このデコンプ装置は、二股にされた先端で、2つの吸気バルブをそれぞれ開弁させる吸気ロッカーアームを備えるエンジンに設けられ、一方の吸気バルブと吸気ロッカアームの一方の先端との間に挿入されたデコンプアームと、このデコンプアームを揺動させるデコンプカムとを備える。そして、始動時に圧縮圧力を低減すべく、デコンプカムによりデコンプアームを揺動させて、前記一方の吸気バルブのみを押し開く。これにより、デコンプアームおよびデコンプカムが受ける吸気バルブのバルブスプリングの反力は、一方の吸気バルブからのものだけとなって半減するので、デコンプカムの耐久性が向上し、操作力を軽減できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来技術では、デコンプアームが吸気ロッカアームと吸気バルブのとの間に挿入されることから、始動時にデコンプアームにより吸気弁を開くデコンプ作動が解除された後も、吸気カムにより吸気バルブが開閉されるときは、吸気カムが吸気ロッカアームを揺動させると共に、常にデコンプアームも揺動させるため、吸気弁を開閉する動弁系の等価慣性重量がデコンプアームの分大きくなり、特に内燃機関の高回転時に吸気カムに対する吸気バルブの開閉動作の追従性が低下して、機関出力の低下をもたらしていた。また、デコンプアームが常に吸気ロッカアームと一緒に揺動させられるため、デコンプアームには、始動後における内燃機関の高回転時の揺動に耐え得る剛性、さらに吸気カムからの押圧力とバルブスプリングの反力とが作用する状態での、吸気ロッカアームおよび吸気弁との接触に起因する摩耗を抑制するための耐摩耗性が求められることから、コストが高くなる難点があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1および請求項2記載の発明は、デコンプアームを備えたデコンプ装置において、動弁系の等価慣性重量を増加させることなく、カムに対する高回転時の吸気弁または排気弁の開閉動作の追従性が良好で、かつコスト削減ができる内燃機関のデコンプ装置を提供することを共通の目的とする。そして、請求項2記載の発明は、さらに、自動操作によるデコンプ作動解除時においても、マニュアル操作によるデコンプ作動が可能なコンパクトなデコンプ装置を提供することを目的とし、請求項記載の発明は、さらに、開弁期間およびリフト量を調整することで最適なデコンプ作動が可能なデコンプ装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、吸気弁および排気弁を備え、クランク軸の動力で回転駆動されるカム軸に設けられたカムにより揺動されるロッカアームが前記吸気弁または前記排気弁を開閉させる内燃機関において、機関回転数が始動時の設定回転数以下のとき作動位置を占める第1デコンプカムと、前記内燃機関に揺動自在に支持されて前記第1デコンプカムに当接する第1当接部および前記ロッカアームを押圧する押圧部を有するデコンプアームと、該デコンプアームを前記第1当接部が前記第1デコンプカムに当接するように弾性力を作用させる弾性部材とを備え、前記作動位置にある前記第1デコンプカムにより前記弾性力に抗して揺動された前記デコンプアームが、前記押圧部を介して前記ロッカアームを揺動させて前記吸気弁または前記排気弁を開弁させるように構成され、前記押圧部は、前記ロッカアームの、該押圧部と当接する当接部との間の間隙を調整可能な調整部材から構成されることを特徴とする内燃機関のデコンプ装置である。
【0006】
この請求項1記載の発明によれば、弾性部材の弾性力は、デコンプアームに対して、デコンプアームがロッカアームから離れるように作用することになるため、デコンプアームは、作動位置にある第1デコンプカムにより揺動されるときにのみ、ロッカアームを揺動させるべく該ロッカアームと共に揺動され、ロッカアームがカムにより揺動されるときには、デコンプアームがロッカアームと一緒に揺動することはない。したがって、次の効果が奏される。すなわち、デコンプアームは、デコンプ作動時にデコンプカムにより揺動されるときのみロッカアームと一緒に揺動され、カムによるロッカアームの揺動時およびデコンプ作動解除時には揺動されないので、デコンプアームを設けたことにより吸気弁または排気弁を開閉させるための動弁系の等価慣性重量が増加することがなく、カムに対する内燃機関の高回転時の吸気弁または排気弁の開閉動作の追従性が良好で、機関出力の低下を防止することができる。また、デコンプアームが揺動される機関回転数は、始動時の設定回転数以下の回転数であることから、内燃機関の運転回転域のうちの極低回転域に属する回転数であるので、デコンプアームの剛性に対する要求は厳しいものでなく、さらにロッカアームとの接触による摩耗も、ほぼデコンプ作動時のみに限られるので、耐摩耗性に対する要求も厳しいものではなく、耐久性を確保したうえで、安価な材料の使用や表面処理の省略によりデコンプ装置のコストを削減できる。
また、請求項1記載の発明によれば、デコンプアームの押圧部と、ロッカアームの当接部との間の間隙を調整できるため、デコンプ作動時に、デコンプアームによる吸気弁または排気弁の開閉時期、開弁期間およびリフト量を簡単に調整できることから、内燃機関毎に最適なデコンプ作動を行わせることができると共に、異なる種類の内燃機関に対してもデコンプ装置の共用化ができて、デコンプ装置の量産によるコストの削減ができる。
【0007】
請求項2記載の発明は、吸気弁および排気弁を備え、クランク軸の動力で回転駆動されるカム軸に設けられたカムにより揺動されるロッカアームが前記吸気弁または前記排気弁を開閉させる内燃機関において、機関回転数が始動時の設定回転数以下のとき作動位置を占める第1デコンプカムと、前記内燃機関に揺動自在に支持されて前記第1デコンプカムに当接する第1当接部および前記ロッカアームを押圧する押圧部を有するデコンプアームと、該デコンプアームを前記第1当接部が前記第1デコンプカムに当接するように弾性力を作用させる弾性部材とを備え、前記作動位置にある前記第1デコンプカムにより前記弾性力に抗して揺動された前記デコンプアームが、前記押圧部を介して前記ロッカアームを揺動させて前記吸気弁または前記排気弁を開弁させるように構成され、マニュアル操作により作動位置を占める第2デコンプカムを備え、前記デコンプアームは、前記第2デコンプカムに当接する第2当接部を有し、前記作動位置にある前記第2デコンプカムにより前記弾性力に抗して揺動された前記デコンプアームが、前記押圧部を介して前記ロッカアームを揺動させて前記吸気弁または前記排気弁を開弁させることを特徴とする内燃機関のデコンプ装置である。
【0008】
この請求項2記載の発明によれば、弾性部材の弾性力は、デコンプアームに対して、デコンプアームがロッカアームから離れるように作用することになるため、デコンプアームは、作動位置にある第1デコンプカムにより揺動されるときにのみ、ロッカアームを揺動させるべく該ロッカアームと共に揺動され、ロッカアームがカムにより揺動されるときには、デコンプアームがロッカアームと一緒に揺動することはない。したがって、次の効果が奏される。すなわち、デコンプアームは、デコンプ作動時にデコンプカムにより揺動されるときのみロッカアームと一緒に揺動され、カムによるロッカアームの揺動時およびデコンプ作動解除時には揺動されないので、デコンプアームを設けたことにより吸気弁または排気弁を開閉させるための動弁系の等価慣性重量が増加することがなく、カムに対する内燃機関の高回転時の吸気弁または排気弁の開閉動作の追従性が良好で、機関出力の低下を防止することができる。また、デコンプアームが揺動される機関回転数は、始動時の設定回転数以下の回転数であることから、内燃機関の運転回転域のうちの極低回転域に属する回転数であるので、デコンプアームの剛性に対する要求は厳しいものでなく、さらにロッカアームとの接触による摩耗も、ほぼデコンプ作動時のみに限られるので、耐摩耗性に対する要求も厳しいものではなく、耐久性を確保したうえで、安価な材料の使用や表面処理の省略によりデコンプ装置のコストを削減できる。
そして、請求項2記載の発明では、さらに、第1デコンプカムによるデコンプ作動が解除された運転回転域においても、マニュアル操作により操作される第2デコンプカムでデコンプ作動を行わせることができ、さらに、機関回転数に応じた自動操作によるデコンプ作動解除時においても、マニュアル操作によるデコンプ作動が可能であり、第1デコンプカムによるデコンプ作動が解除された内燃機関の運転時に、例えば始動時に供給される濃混合気により失火が生じたときなど、燃焼室内に未燃混合気が存する状態が生じたとき、第2デコンプカムによるデコンプ作動により、その未燃混合気を速やかに掃気できて、再度の始動等の正常な運転状態に速やかに回復できるようになる。しかも、自動操作およびマニュアル操作において、デコンプアームが共用化されるのでデコンプ装置がコンパクトになる。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の内燃機関のデコンプ装置において、前記カム軸に摺動自在に嵌合された回転部材に前記第1デコンプカムが設けられ、前記カム軸、前記ロッカアームを揺動可能に支持するロッカ軸、および前記デコンプアームを揺動可能に支持する支持軸を支持するようにカムホルダが設けられ、内燃機関の側面視で、前記第1当接部と前記押圧部との間に前記支持軸が配置されることを特徴とする。
【0010】
この請求項3記載の発明によれば、デコンプアームの小型化、シリンダヘッドの小型化、軽量化が可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図1ないし図4を参照して説明する。
本発明のデコンプ装置が適用される内燃機関Eは、自動2輪車に搭載される頭上カム軸型の単気筒往復動式4サイクル内燃機関である。図1を参照すると、ピストン(図示されず)が往復動自在に嵌合するシリンダを有するシリンダブロック(図示されず)の上端面に結合されるシリンダヘッド1にヘッドカバー2が結合されて、後述する動弁装置が収容される動弁室3が形成される。シリンダヘッド1には、その車体後側(図1で左側)に、ピストンとシリンダヘッド1との間に形成される燃焼室4に開口する1対の吸気口5aを有する吸気ポート5が形成され、その車体前側(図1で右側)に、燃焼室4に開口する1対の排気口6aを有する排気ポート6が形成され、両吸気口5aおよび両排気口6aをそれぞれ開閉する1対の吸気弁7および1対の排気弁8が、シリンダヘッド1に圧入された弁スリーブ9,10にそれぞれ摺動自在に嵌合され、各弁ばね11,12のばね力により、各吸気弁7が対応する吸気口5aを、また各排気弁8が対応する排気口6aを閉じるように付勢される。そして、吸気ポート5の上流側開口5bには、燃焼室4に供給される混合気を形成するための気化器が取り付けられる吸気管が接続され、排気ポート6の下流側開口には、燃焼室4からの燃焼ガスを排出するための排気管が接続される。
【0012】
図2を併せて参照すると、動弁装置は、シリンダヘッド1にボルトにより締結されるカムホルダ13に、玉軸受からなる左右(図2で上下)一対の軸受14,15により回転自在に支持されるカム軸16と、1対の吸気弁7をそれぞれ開閉させる1対のリフタ(図示されず)と、1対の排気弁8をそれぞれ開閉させる単一のロッカアーム17と、カム軸16の回転軸線L1と平行な軸線を有してカムホルダ13に固定されてロッカアーム17を揺動自在に支持するロッカ軸18とを備える。
【0013】
カム軸16は、前記ピストンにより回転駆動されるクランク軸の回転軸線と平行な回転軸線を有し、該クランク軸に結合された駆動スプロケットとカム軸16の左端部に結合されたカムスプロケット19との間に掛け渡されタイミングチェーンを介して伝達されるクランク軸の動力により、クランク軸の1/2の回転数で回転駆動される。
【0014】
カム軸16には、同一の所定のカム面を有する1対の吸気カム20と、両吸気カム20間のほぼ中央位置に所定のカム面を有する単一の排気カム21とが形成される。そして、1対の吸気カム20は、カムホルダ13に形成されたガイド筒22内に摺動自在に嵌合された前記リフタの頂面に摺接し、該リフタを前記カム面に応じて摺動させて、両吸気弁7を所定の開閉時期およびリフト量で開閉する。
【0015】
ロッカアーム17の、ロッカ軸18が挿通される支持部17aに対して、一方の側には、排気カム21に転がり接触するローラ23が回転自在に保持され、他方の側には、U字状に二股に分岐した第1,第2分岐部17b,17cが形成されて、各分岐部17b,17cの先端部17b1,17c1が排気弁8の弁ステム8aの端面と当接する。そして、排気カム21は、当接するローラ23を介してロッカアーム17を前記カム面に応じて揺動させて、両排気弁8を所定の開閉時期およびリフト量で開閉する。
【0016】
次に、キック式始動装置(図示されず)を備えた内燃機関Eに設けられるデコンプ装置について説明する。デコンプ装置は、カム軸16の右端部を構成すると共に、カム軸本体16aにボルト24により締結される回転部材16bと、回転部材16bに回動自在に支持される第1作動部材Aと、第1作動部材Aの作動を制御する制御部材と、カムホルダ13に揺動自在に支持されるデコンプアーム40と、弾性部材と、第2作動部材Mとを備える。
【0017】
回転部材16bには、デコンプアーム40の一方の端部に形成されたスリッパ47が当接する面であって、回転軸線L1と一致する中心軸線を持った円柱面を有する休止カム部16b1が形成され、円柱面上の一部に、軸方向に離間して径方向に突出する1対の突出部16b2,16b3が形成される。そして、休止カム部16b1には、両突出部16b2,16b3にその一部が位置する形態で、回転軸線L1と平行な中心軸線を有する軸受孔25が形成される。それゆえ、軸受孔25の、両突出部16b2,16b3の間に位置する部分は、径方向外方に開放する開口部26となる。そして、軸受孔25の周壁面のうち、開口部26と径方向内方で対向する部分には、後述する制御ばね34を受け入れるための凹部が形成される。
【0018】
第1作動部材Aは、軸受孔25に摺動自在に嵌合されて、軸受孔25の中心軸線と一致する回動軸線を有する円柱状の軸部30と、遠心ウエイト部31とから構成される。軸部30の軸方向での移動は、軸部30の左端面と当接可能な軸受15、および軸部30の右端面と当接可能であってボルト24により固定されるプレート32により規制されて、第1作動部材Aが回転部材16bから抜け出すことが防止される。
【0019】
軸受孔25に支持された状態の軸部30において、開口部26から露出する部分には、図3に示すように、スリッパ47が当接する第1デコンプカム33が形成される。この第1デコンプカム33は、休止カム部16b1におけるスリッパ47の摺接経路上に位置して、軸部30の円柱面からなる外周面の一部を、前記摺接経路に沿って、かつ前記摺接経路の軸方向での幅よりも大きい軸方向での幅を有するように切り欠くことで形成される切欠溝の底面からなる解除部33aと、開口部26の周方向範囲で円柱面よりも径方向外方に所定突出量だけ突出する軸部30の前記円柱面からなる作動部33bとから構成されるカム面を有す。そして、解除部33aは、軸部30の回動軸線を中心線として、軸部30の円柱面とほぼ同一の曲率を持つ面として形成される。したがって、第1作動部材Aの回動位置に応じて、第1デコンプカム33の作動部33bは、開口部26から休止カム部16b1の円柱面よりも径方向外方に突出する一方で、解除部33aは、作動部33bの円柱面と同一面上に位置する。そして、カム軸16でもある回転部材16bにおける第1デコンプカム33の周方向での位置、すなわち位相は、圧縮行程にある前記ピストンが上死点に達するまでの所定の角度範囲で、第1デコンプカム33にスリッパ47が当接するように設定される。
【0020】
遠心ウエイト部31は、軸部30の、突出部16b3よりもプレート32寄りの右端部で、径方向外方に突出して、軸部30との一体成形により形成される。遠心ウエイト部31は、この実施例では、軸部30の軸方向から見て扇形の形状をしており、その回動方向の一側面は、軸部30の、両突出部16b2,16b3の間に位置する部分の外周に嵌められた捩りコイルばねからなる制御ばね34の捩りばね力により、回転部材16bに形成された低回転側ストッパ35に当接するように付勢される。そして、遠心ウエイト部31の回動方向の他側面は、機関回転数が上昇して、内燃機関Eの始動時の機関回転数である設定回転数を越えて、第1作動部材Aが回動軸線を中心に回動した後、遠心ウエイト部31寄りに位置する右側の突出部16b3に形成された高回転側ストッパ36に当接する。
【0021】
制御ばね34は、第1作動部材Aがカム軸16の一部である回転部材16bと共に回転して、遠心ウエイト部31に発生する遠心力により、第1作動部材Aが制御ばね34の捩りばね力に抗して回動を開始する機関回転数を設定するものであり、制御ばね34の捩りばね力を調整することにより、デコンプ装置のデコンプ作動を解除するときの機関回転数である前記設定回転数が設定される。したがって、制御ばね34は、デコンプ装置のデコンプ作動を制御する制御部材である。。
【0022】
デコンプアーム40は、カムホルダ13において、ロッカ軸18の上方位置に形成された軸受孔41に摺動自在に嵌合されて、回転軸線L1と平行な揺動中心軸を有する支持軸42と、支持軸42の右端部に、軸方向での位置決めを行うために装着されたカラー43と、ねじ部に螺合されるナット44との間に挟持されて固定されたL字形の板状の第1アーム45と、支持軸42の左端部に圧入されて固定された板状の第2アーム46とを備える。第1アーム45において、支持軸42に対して両分岐部17b,17cがある側とは反対側で休止カム部16b1に向かって延びる第1アーム片45aの先端部には、休止カム部16b1および第1デコンプカム33との当接部であるスリッパ47が形成され、第1アーム片45aに対してほぼ直角に屈曲して、支持軸42から径方向にシリンダヘッド1に向かって延びる第2アーム片45bの先端部には、第2作動部材Mの後述する第2デコンプカム61と当接する当接部48が形成される。
【0023】
一方、第2アーム46は、支持軸42から径方向にロッカアーム17の第2分岐部17cに沿って排気弁8の弁ステム8aに向かって延び、その先端部46aが、第2分岐部17cの先端部17c1よりも弁ステム8aの先端から離れた位置、この実施例では、上方位置で、かつ弁ステム8aの中心軸線L2方向で見て先端部17c1と重なる位置を占めるように屈曲され、両先端部17c1,46aの間には、中心軸線L2方向での間隙Gが形成される。先端部46aには、ねじ孔に螺合する調整ねじ49がその軸方向の位置が調整可能に螺合され、該調整ねじ49は、設定位置に調整された後、ナット50により固定される。前記設定位置は、デコンプアーム40が後述する戻しばね51により休止カム部16b1および第1デコンプカム33の解除部33aに押し付けられている状態でかつ排気弁8が閉弁状態にあるとき、調整ねじ49と、第2分岐部17cの上面の、調整ねじ49との当接部17c2との間に微小な所定の大きさの間隙Gが形成されるように、または両者の間の間隙Gが丁度なくなるように設定される。
【0024】
そして、調整ねじ49は、第1デコンプカム33の作動部33bおよび後述するように第2デコンプカム61の作動部61bによりデコンプアーム40が揺動されたとき、第2分岐部17cの当接部17c2に当接して押圧し、ロッカアーム17を排気弁8の開弁方向に揺動させる部分であることから、デコンプアーム40の、ロッカアーム17を押圧する押圧部を構成すると共に、ロッカアーム17の当接部17c2との間隙Gを調整する調整部材である。
【0025】
そして、デコンプアーム40は、カラー43の外周に嵌められた捩りコイルばねからなる弾性部材としての戻しばね51の捩りばね力により、スリッパ47が休止カム部16b1および第1デコンプカム33に当接するように付勢される。そして、スリッパ47が第1デコンプカム33の作動部33bに当接するときは、戻しばね51の捩りばね力に抗してデコンプアーム40が揺動されて、ロッカアーム17が調整ねじ49に押圧されて排気弁8を開弁する方向に揺動され、スリッパ47が解除部33aまたは休止カム部16b1に当接するときは、戻しばね51の捩りばね力によりデコンプアーム40が反対方向に揺動する。
【0026】
第2作動部材Mは、シリンダヘッド1のカム軸16の軸方向で回転部材16b寄りの壁である右壁に形成された貫通孔を通して動弁室3内まで延びる円柱状のデコンプ軸60と、デコンプ軸60の動弁室3内に位置する先端部に設けられた第2デコンプカム61とから構成される。デコンプ軸60は、シリンダヘッド1の外部で、図示されない連動機構を介して運転者により操作される操作部に連結される。第2デコンプカム61は、デコンプ軸60の端面からデコンプ軸60の軸線に平行な平面に沿ってデコンプ軸60の一部を切り欠くことで形成される平面からなる解除部61aと、デコンプ軸60の円柱面からなる作動部61bとから構成される。そして、第2デコンプカム61は、前記操作部がデコンプ作動解除位置にあって、スリッパ47が休止カム部16b1または第1デコンプカム33の解除部33aに接触しているデコンプ作動解除時において、第2デコンプカム61の解除部61aが間隙を介して第2アーム片45bの当接部48と対向しており、前記操作部がデコンプ作動位置に操作されると、図1において二点鎖線で示されるように、デコンプ軸60が回動されて作動部61bが当接部48に当接して、戻しばね51の捩りばね力に抗してデコンプアーム40が揺動され、ロッカアーム17がデコンプアーム40の調整ねじ49に押圧されて揺動されて、排気弁8が開弁されるデコンプ作動がなされる。
【0027】
次に、前述のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
図1において実線で示されるように、内燃機関Eの停止時は、制御ばね34の捩りばね力により遠心ウエイト部31は低回転側ストッパ35に当接した第1位置にあって、第1デコンプカム33は、その作動部33bが開口部26に位置する作動位置にあり、また第2デコンプカム61は、その解除部61aが間隙を介して第2アーム片45bの当接部48に対向する解除位置にある。そして、戻しばね51の捩りばね力によりデコンプアーム40のスリッパ47が休止カム部16b1に当接した状態にあるため、デコンプアーム40の調整ねじ49が排気弁8を開弁方向に押圧することはなく、排気弁8は弁ばね12のばね力により排気口6aを閉じている。
【0028】
内燃機関Eの始動に当たり、キック式始動装置が操作されると、クランク軸の動力がタイミングチェーンを介してカム軸16に伝達されて、カム軸16が回転駆動され、第1作動部材Aもカム軸16と一体に回転する。機関回転数が前記設定回転数以下であるとき、カム軸16の回転により遠心ウエイト部31に発生する遠心力は小さく、遠心ウエイト部31、したがって第1作動部材Aは制御ばね34の捩りばね力により内燃機関Eの停止時の状態のままとなっている。
【0029】
この状態で、内燃機関Eの圧縮行程時には、図3に図示されるように、作動位置にある第1デコンプカム33の作動部33bにスリッパ47が当接して、デコンプアーム40が揺動され、調整ねじ49が上方から第2分岐部17cの当接部17c2を押圧する。これによって、ロッカアーム17が揺動されて、第1デコンプカム33の作動部33bの前記所定突出量に対応すると共に、調整ねじ49により設定される前記間隙Gに対応した開閉時期、開弁期間およびリフト量で両排気弁8が開弁されて、シリンダ内の圧縮圧力が抜けて減圧されるデコンプ作動がなされる。一方、排気カム21は、デコンプアーム40とは無関係に、ロッカアーム17を介して両排気弁8を前記カム面に応じた開閉時期およびリフト量で開閉する。
【0030】
機関回転数が前記設定回転数を越えると、遠心ウエイト部31に発生する遠心力が、制御ばね34の捩りばね力に打ち勝つため、該捩りばね力に抗して、遠心ウエイト部31、したがって第1作動部材Aが図3において反時計方向に回動し、図4に図示されるように、遠心ウエイト部31が高回転側ストッパ36に当接する第2位置を占める。
【0031】
このとき、第1デコンプカム33は、その解除部33aが開口部26に位置する解除位置にあり、スリッパ47は解除部33aに当接するため、内燃機関Eの圧縮行程時にデコンプアーム40が揺動されることはなく、したがってデコンプアーム40がロッカアーム17を揺動させて排気弁8を開弁させることがないデコンプ作動解除がなされる。このときも、排気カム21は、デコンプアーム40とは無関係に、ロッカアーム17を介して両排気弁8を前記カム面に応じた開閉時期およびリフト量で開閉する。
【0032】
また、前記設定回転数を越える状態での内燃機関Eの始動時であって、燃焼室4に供給される濃混合気により、点火栓に燃料が付着して失火することが発生し得る。そのようなときは、第1作動部材Aの第1デコンプカム33はデコンプ作動解除状態にあるため、第2作動部材Mを操作して、第2デコンプカム61を、その作動部61bが第2アーム片45bの当接部48に当接する作動位置に回動させることにより、デコンプアーム40を揺動させ、さらには調整ねじ49を介してロッカアーム17を揺動させて、両排気弁8を開弁させるデコンプ作動がなされることにより、迅速にシリンダ内の未燃混合気が掃気されて、再度の始動が可能となる正常な運転状態に速やかに回復できるようになる。
【0033】
そして、戻しばね51の弾性力である捩りばね力は、デコンプアーム40に対して、デコンプアーム40がロッカアーム17から離れるように、すなわち図4において反時計方向にデコンプアーム40を揺動させるように作用することになるため、デコンプアーム40は、作動位置にある第1デコンプカム33により揺動されるときにのみ、ロッカアーム17を揺動させるべく該ロッカアーム17と共に揺動され、ロッカアーム17が排気カム21により揺動されるときには、デコンプアーム40がロッカアーム17と一緒に揺動することはない。したがって、デコンプアーム40は、デコンプ作動時に第1,第2デコンプカム33,61により揺動されるときのみロッカアーム17と一緒に揺動され、排気カム21によるロッカアーム17の揺動時およびデコンプ作動解除時には揺動されないので、デコンプアーム40を設けたことにより排気弁8を開閉させるための、ロッカアーム17等から構成される動弁系の等価慣性重量が増加することがなく、排気カム21に対する内燃機関Eの高回転時の排気弁8の開閉動作の追従性が良好で、機関出力の低下を防止することができる。
【0034】
また、デコンプアーム40が揺動される機関回転数は、内燃機関Eの始動時の設定回転数以下の回転数であることから、内燃機関Eの運転回転域のうちの極低回転域に属する回転数であるので、デコンプアーム40の剛性に対する要求は厳しいものでなく、さらにロッカアーム17との接触による摩耗も、ほぼデコンプ作動時のみに限られるので、耐摩耗性に対する要求も厳しいものではなく、耐久性を確保したうえで、安価な材料の使用や表面処理の省略によりデコンプ装置のコストを削減できる。
【0035】
第1デコンプカム33によるデコンプ作動が解除された運転回転域においても、運転者によりマニュアル操作される第2デコンプカム61でデコンプ作動を行わせることができ、前述のように、失火などにより燃焼室4内に未燃混合気が存する状態が生じたとき、第2デコンプカム61によるデコンプ作動により、シリンダ内からその未燃混合気を速やかに掃気できて、再度の始動等の正常な運転状態に速やかに回復できる。
【0036】
さらに、第1作動部材Aによる機関回転数に応じた自動操作によるデコンプ作動と第2作動部材Mによるマニュアル操作によるデコンプ作動において、デコンプアーム40が共用されることで、自動操作およびマニュアル操作されるデコンプ装置がコンパクト化および軽量化され、しかもそのコストが削減される。
【0037】
また、デコンプアーム40は、戻しばね51の捩りばね力により常時休止カム部16b1および第1デコンプカム33に当接するように付勢されて、デコンプアーム40がほぼ固定された状態にあること、そして第2デコンプカム61が解除位置にあるときは、第2デコンプカム61とデコンプアーム40の当接部48との間に間隙が形成されることにより、内燃機関Eの振動による両者の接触に起因する騒音の発生が防止される。
【0038】
デコンプアーム40に設けられた位置調整可能な調整ねじ49により、該調整ねじ49とロッカアーム17の当接部17c2との間の間隙Gを調整できるため、デコンプ作動時に、デコンプアーム40による排気弁8の開閉時期、開弁期間およびリフト量を簡単に調整できることから、内燃機関E毎に最適なデコンプ作動を行わせることができると共に、異なる種類の内燃機関に対してもデコンプ装置の共用化ができて、デコンプ装置の量産によるコストの削減ができる。
【0039】
さらに、調整ねじ49の設定位置が、デコンプアーム40が休止カム部16b1および第1デコンプカム33の解除部33aに押し付けられている状態でかつ排気弁8が閉弁状態にあるとき、調整ねじ49と第2分岐部17cの当接部17c2との間に微小な間隙Gが形成されるように設定されるときは、デコンプ作動解除時には、ロッカアーム17がデコンプアーム40に接触することはないので、デコンプアーム40において、ロッカアーム17との接触による摩耗の発生が防止されて、その耐久性が一層向上する。
【0040】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
前記実施例では、休止カム部16b1に対してデコンプアーム40のスリッパ47が接触するようにされたが、スリッパ47の代わりに、休止カム部16b1の円柱面に転がり接触するローラが、デコンプアーム40に回転自在に設けられてもよい。また、1対の排気弁8は単一のロッカアーム17により開閉されたが、1対の排気カムによりそれぞれ揺動される1対のロッカアームにより、両排気弁8がそれぞれ開閉されるものであってもよく、その場合には、一方の排気弁8のみがデコンプアーム40により開閉されることになる。また、カム軸本体16aと回転部材16bとは一体成形により形成されてもよい。
【0041】
前記実施例では、デコンプアーム40により排気弁8を開閉させたが、吸気弁を開閉するための吸気ロッカアームを設けて、該吸気ロッカアームをデコンプアームにより押圧して吸気弁を開閉して、デコンプ作動を行うこともできる。その際、吸気ロッカアームは、前記実施例のロッカアーム17のように2つの分岐部を有する単一のロッカアームとし、排気弁をリフタにより開閉するようにしてもよい。
【0042】
前記実施例では、押圧部は調整ねじ49から構成されたが、調整ねじ49を設けることなく、第2アーム46の先端部自体がロッカアーム17に当接するようにしてもよい。また、デコンプアーム40は、第1アーム45に設けられたスリッパ47が第1デコンプカム33に当接するスリッパタイプのものであったが、第1アーム45にローラが回転自在に設けられて、該ローラが第1デコンプカム33に当接するようにしたローラタイプのものであってもよい。
【0043】
始動装置は、前記実施例では、マニュアル式の始動装置であるキック式始動装置であったが、スタータモータを使用した始動装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のデコンプ装置が適用される内燃機関の右側から見たときの縦断面図である。
【図2】図1の内燃機関のヘッドカバーを外したときの、一部を断面で示す平面図である。
【図3】図1のデコンプ装置のデコンプ作動時の説明図である。
【図4】図1のデコンプ装置のデコンプ作動解除時の説明図である。
【符号の説明】
1…シリンダヘッド、2…ヘッドカバー、3…動弁室、4…燃焼室、5…吸気ポート、6…排気ポート、7…吸気弁、8…排気弁、9,10…弁スリーブ、11,12…弁ばね、13…カムホルダ、14,15…軸受、16…カム軸、16b…回転部材、16b1…休止カム部、17…ロッカアーム、18…ロッカ軸、19…カムスプロケット、20…吸気カム、21…排気カム、22…ガイド筒、23…ローラ、24…ボルト、25…軸受孔、26…開口部、
30…軸部、31…遠心ウエイト部、32…プレート、33…第1デコンプカム、34…制御ばね、35,36…ストッパ、
40…デコンプアーム、41…軸受孔、42…支持軸、43…カラー、44…ナット、45,46…アーム、47…スリッパ、48…当接部、49…調整ねじ、50…ナット、51…戻しばね、
60…デコンプ軸、61…第2デコンプカム、
E…内燃機関、L1…回転軸線、L2…中心軸線、A…第1作動部材、M…第2作動部材、G…間隙。

Claims (3)

  1. 吸気弁および排気弁を備え、クランク軸の動力で回転駆動されるカム軸に設けられたカムにより揺動されるロッカアームが前記吸気弁または前記排気弁を開閉させる内燃機関において、
    機関回転数が始動時の設定回転数以下のとき作動位置を占める第1デコンプカムと、前記内燃機関に揺動自在に支持されて前記第1デコンプカムに当接する第1当接部および前記ロッカアームを押圧する押圧部を有するデコンプアームと、該デコンプアームを前記第1当接部が前記第1デコンプカムに当接するように弾性力を作用させる弾性部材とを備え、前記作動位置にある前記第1デコンプカムにより前記弾性力に抗して揺動された前記デコンプアームが、前記押圧部を介して前記ロッカアームを揺動させて前記吸気弁または前記排気弁を開弁させるように構成され、
    前記押圧部は、前記ロッカアームの、該押圧部と当接する当接部との間の間隙を調整可能な調整部材から構成される
    ことを特徴とする内燃機関のデコンプ装置。
  2. 吸気弁および排気弁を備え、クランク軸の動力で回転駆動されるカム軸に設けられたカムにより揺動されるロッカアームが前記吸気弁または前記排気弁を開閉させる内燃機関において、
    機関回転数が始動時の設定回転数以下のとき作動位置を占める第1デコンプカムと、前記内燃機関に揺動自在に支持されて前記第1デコンプカムに当接する第1当接部および前記ロッカアームを押圧する押圧部を有するデコンプアームと、該デコンプアームを前記第1当接部が前記第1デコンプカムに当接するように弾性力を作用させる弾性部材とを備え、前記作動位置にある前記第1デコンプカムにより前記弾性力に抗して揺動された前記デコンプアームが、前記押圧部を介して前記ロッカアームを揺動させて前記吸気弁または前記排気弁を開弁させるように構成され、
    マニュアル操作により作動位置を占める第2デコンプカムを備え、前記デコンプアームは、前記第2デコンプカムに当接する第2当接部を有し、前記作動位置にある前記第2デコンプカムにより前記弾性力に抗して揺動された前記デコンプアームが、前記押圧部を介して前記ロッカアームを揺動させて前記吸気弁または前記排気弁を開弁させる
    ことを特徴とする内燃機関のデコンプ装置。
  3. 前記カム軸に摺動自在に嵌合された回転部材に前記第1デコンプカムが設けられ、
    前記カム軸、前記ロッカアームを揺動可能に支持するロッカ軸、および前記デコンプアームを揺動可能に支持する支持軸を支持するようにカムホルダが設けられ、
    内燃機関の側面視で、前記第1当接部と前記押圧部との間に前記支持軸が配置されることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関のデコンプ装置。
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