JP4454409B2 - 圧縮成形体の製造方法 - Google Patents
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ところで、固形粉末化粧料は、パフ等の化粧道具でのふき取り性及び肌への塗布性等の観点から、ソフト感(成形体のほぐれ易さ)に優れることが好ましく、粉体粒子間に適度な空隙を有することと、適度な粒子間結合力であることが必要となる。このため、ソフト感に優れるものは、成型体の平均的な強度の向上に限界があり、耐衝撃性に劣る傾向がある。ソフト感に優れつつ耐衝撃性を向上させるためには、成型体の見掛けの密度を均一にすること(空隙分布の均一性)、及びクラック等の局所的な欠陥による強度の低下を防止することが必要となる。
他の圧縮成形方法として、粉体を流動化させるために、超音波を与えながら成形する方法(特許文献2)や、振動を与えながら粉体を充填する方法(特許文献3)が提案されている。しかし、これらの方法は、超音波や振動の発生機等が必要で、設備にコストがかかり、また、騒音対策が必要となる等の問題がある。
スプリングバック量L(mm)=H1(mm)−H2(mm)・・・(1)
(但し、式中H1は、加圧部材間の距離の拡大を、少なくとも前記粉体原料に加わる圧縮荷重がゼロとなるまで継続した場合に、前記圧縮荷重がゼロとなる時点の加圧部材間の距離であり、H2は、前記所定状態のときの加圧部材間の距離である。)
で表されるスプリングバック量Lの40〜99%に相当する量拡大し、次いで、加圧部材間の距離を再度縮めて前記粉体原料を圧縮成形することを特徴とする圧縮成形体の製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
スプリングバック量L(mm)=H1(mm)−H2(mm)・・・(1)
(但し、式中H1は、加圧部材間の距離の拡大を、少なくとも前記粉体原料に加わる圧縮荷重がゼロとなるまで継続した場合に、前記圧縮荷重がゼロとなる時点の加圧部材間の距離であり、H2は、前記所定状態のときの加圧部材間の距離である。)
で表されるスプリングバック量Lの40〜99%に相当する量拡大し、次いで、加圧部材間の距離を再度縮めて前記粉体原料を圧縮成形するようになされていることを特徴とする圧縮成形体の製造装置を提供することにより前記目的を達成したものである。
本製造装置1は、円筒状の圧縮成形部11を有しており、移動して粉体原料を圧縮する加圧部材として上杵12及び下杵13が、圧縮成形部11内の成形空間16を上下から挟むように配置されている。上杵12及び下杵13は、少なくとも圧縮成形時に、圧縮成形部11内に供給された粉体原料5を挟むように配置されていれば良い。
距離測定センサとしてのレーザ変位計44は、増幅器47を介して制御演算装置43に電気的に接続されている。制御演算装置43は、中央演算装置(CPU)を中心として構成される演算部を具備しており、距離測定センサによって検知された加圧部材間距離に基づき、加圧部材間距離の拡大の終点を決める。なお、制御演算装置43は、CRTや液晶表示手段、プリンター等からなる表示部、データやプログラム等を格納する記憶部(メモリー、HDD等)、キーボードやマウス等からなる入力部及び図示しないインターフェース部を備えている。
先ず、図1に示すように、上杵12を上昇させ上方に退避させた状態(以下、退避状態という)として、容器供給装置(図示せず)により、浅底容器51を成形空間16内に配置し、次いで、粉体原料供給装置(図示せず)により、成形空間16内の浅底容器51上に粉体原料5を充填する。粉体原料5は、成形空間16内に擦り切り状態に充填される。尚、浅底容器51の配置及びそれに続く粉体原料5の供給は、下杵13を、成形空間16内の所定の高さ位置まで挿入した状態で行う。下杵13の挿入量により粉体原料5の充填量を制御できる。
圧縮準備工程後に圧縮成形工程を実施する。圧縮成形工程は、圧縮開始から成形終了までの工程である。
本実施形態における圧縮成形工程は、図2に示すように、第1圧縮工程S1及びそれに続く第2圧縮工程S2からなる。
第1及び第2圧縮工程は、それぞれ、加圧部材間の距離を縮めて、粉体原料5に対する圧縮荷重を漸次増大させる工程(以下、負荷工程という)、及び加圧部材間の距離を増大させて、粉体原料5に対する圧縮荷重を漸次減少させる工程(以下、除荷工程という)とからなる。
以下、図2を参照して、本実施形態における圧縮成形工程について説明する。
圧縮成形工程の開始点Aにおける、粉体原料5の圧縮荷重は、圧縮準備工程における上杵12の固定位置によるが、本実施形態では、ほぼゼロとした。
第1圧縮工程S1の負荷工程(図2中のA点からB点まで)は、圧縮準備工程完了時の加圧部材間の距離を初期状態として、図2に示すように、加圧部材間の距離を減少させて、上杵12と下杵13との間で粉体原料5を圧縮する。上述したように、本実施形態では、上杵12の停止状態を維持したまま下杵13を上昇(前進)させており、圧縮開始から同時間後の下杵13の総変位量と加圧部材間の距離の総減少量とは一致する。
第1圧縮工程S1の負荷工程は、粉体原料が所定の状態(後述)に達した時点で終了し、その直後から加圧部材間の距離を拡大させる除荷工程を開始する。即ち、下杵13の駆動を上昇から下降に切り替える。
第1圧縮工程S1の除荷工程(図2中のB点からC点まで)は、図2に示すように、加圧部材間の距離を拡大させる。
第1圧縮工程S1の除荷工程においては、加圧部材間の距離を、下記式(1)
スプリングバック量L(mm)=H1(mm)−H2(mm)・・・(1)
〔但し、式中H1は、加圧部材間の距離の拡大を、少なくとも前記粉体原料に加わる圧縮荷重がゼロとなるまで継続した場合に、前記圧縮荷重がゼロとなる時点の加圧部材間の距離(以下、荷重ゼロ時距離H1ともいう)であり、H2は、除荷工程開始点Bにおける加圧部材間の距離である。〕
で表されるスプリングバック量Lの40〜99%に相当する量拡大させる。
即ち、第1圧縮工程S1の除荷工程における加圧部材間の距離の拡大量L1(図2参照,本実施形態では下杵13の後退量と同じ)は、前記式(1)で表されるスプリングバック量L(図2参照)の40〜99%とする。
但し、予備実験においては、図2中のB点からD点までに示されるように、加圧部材間の距離の拡大を、少なくとも粉体原料に加わる圧縮荷重がゼロとなるまで継続する(図2中のG点)。そして、その圧縮荷重がゼロになった時点の加圧部材間の距離を荷重ゼロ時距離H1とする。
前記加圧部材間の距離の拡大量L1が前記スプリングバック量Lを超えると、粉体原料5の表面から上杵12が離れ、上杵12に付着した原料粉体5を噛み込んだりする等、圧縮成形体の仕上がりが悪化する。
第1圧縮工程の除荷工程は、加圧部材間の距離を上述した特定の範囲内の値まで拡大させた時点で終了させ、その直後から加圧部材間の距離を再度縮小させて、第2圧縮工程S2の負荷工程を開始させる。即ち、下杵13の駆動を下降から上昇へと切り替える。
第2圧縮工程S2の負荷工程は、第1圧縮工程の負荷工程と同様に、粉体原料が所定の状態(前述)に達した時点で終了し、その直後から加圧部材間の距離を拡大させる第2圧縮工程S2の除荷工程を開始する。即ち、下杵13の上昇を停止し、上杵12を上昇させる。
空隙率(%)= 100×(V1−V2)/V1 ・・・(2)
(ここで、V1は成形体の見掛けの体積、V2は粉体(固体)及び液体が占める体積)で示される。
成形体の見掛けの体積は、成形体の断面積と厚みから得られる。粉体及び液体の体積は、市販の密度測定器(例えば島津製作所製の乾式自動密度計「アキュピック1330」)で測定される密度と充填量から計算できる(体積=充填量/密度)。
第2圧縮工程S2の除荷工程(図2中のE点からF点まで)においては、図2に示すように、加圧部材間の距離を再び拡大させる。
第2圧縮工程S2の除荷工程では、上杵12を、少なくとも、その下端面が粉体原料5から離れるまで上昇させる。本実施形態における、第2圧縮工程の除荷工程の終了点、及び圧縮成形工程の終了点は、何れも上杵12が粉体原料5から離れた時点である。
成形体取出搬送工程においては、圧縮成形工程にて粉体原料5を圧縮して得られた圧縮成形体を成形空間16から取り出し、次の圧縮成形に支障がないように、他の場所に移動させる。具体的には、先ず、除荷工程における上杵12の上昇を、上杵12が粉体原料5から離れた後も継続し、上杵12を、上述した退避状態とし、下杵13を、浅底容器51の全体が、圧縮成形部11の上端面上に位置するまで上昇させる。そして、浅底容器51に収容された状態の圧縮成形体を、成形体搬送装置(図示せず)により、成形空間16上から他の場所に移動させる。
また、前記除荷工程における、加圧部材間の距離の増大速度は、圧縮成形体のスプリングバックによるクラックの発生防止とサイクルタイム短縮の観点から5〜200mm/秒であることが好ましく、10〜100mm/秒であることがより好ましい。
粉体としては、固形粉末化粧料の製造に通常用いられる各種の粉体を用いることができ、その形状は、板状、球状、棒状、針状等の何れであっても良い。
これらの粉体は、1種のみを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
液状成分は、粉体原料と予め混合されているものが好ましく、粉体の表面が液状成分で被覆されているものがさらに好ましい。また、液状成分を圧縮成形後に揮発させ、空隙率と粒子間結合力を調整しても良い。
表1に示す組成の粉体原料を調整した。始めに、粉体原料中の粉体成分を混合し、粉砕機を通して粉砕した。次に粉体成分を高速ブレンダーに移し、液状成分を添加し混合した。これを粉砕機で粉砕し粉体原料を得た。この粉体原料を、上述した製造装置1を用いて圧縮成形し、ファンデーションを得た。圧縮成形工程は、図2中のA点からB点までの負荷工程及びB点からD点までの除荷工程からなる単一の圧縮工程で行った。圧縮準備工程は、上述した実施形態と同様とした。
圧縮工程における負荷工程から除荷工程への切り替えは、ファンデーションの厚みが1.43mm(空隙率は10.5%)となった時点で行った。
除荷工程に切り替えた後は、加圧部材間の距離の拡大を、粉体原料に加わる圧縮荷重がゼロとなっても継続して圧縮成形を終了した。製品取出工程を経て製品を取り出した。
除荷工程に切り替えた時点Bの加圧部材間の距離H2と、粉体原料に加わる圧縮荷重がゼロとなった時点Gの加圧部材間の距離H1とから求めたスプリングバック量L(L=H1−H2)は、1.7mmであった。
圧縮成形工程を、上記の実施形態と同様にして行った。即ち、第1圧縮工程の負荷工程及び除荷工程、第2圧縮工程の負荷工程及び除荷工程をこの順に行った。加圧部材間の距離は、図2中に実線で示されるように変化させた。
第1圧縮工程の負荷工程から除荷工程への切り替えは、加圧部材間の距離が、比較例1の切り替え時点と同じ距離となった時点で行った。
第1圧縮工程の除荷工程から第2圧縮工程の負荷工程への切り替えは、第1圧縮工程の除荷工程開始点Bにおける加圧部材間の距離から、加圧部材間の距離が、比較例1で得られたスプリングバック量Lの50%(実施例1)又は70%(実施例2)に相当する量拡大した時点Cで行った。
第2圧縮工程の負荷工程から除荷工程への切り替えは(図2中E点)、加圧部材間の距離が、第1圧縮工程の負荷工程から除荷工程への切り替え時点(図2中B点)と同じ距離となった時点で行った。
除荷工程に切り替えた後は、加圧部材間の距離の拡大を、粉体原料に加わる圧縮荷重がゼロとなっても継続して圧縮成形を終了した。
これら以外は、比較例1と同様にして圧縮成形体を得た。
実施例1において、第1圧縮工程の除荷工程から第2圧縮工程の負荷工程への切り替えを、比較例1で得られたスプリングバック量Lの30%に相当する量拡大した時点Cで行う以外は、実施例1と同様にして圧縮成形体を得た。
〔比較例3〕
実施例1において、第1圧縮工程の除荷工程から第2圧縮工程の負荷工程への切り替えを、比較例1で得られたスプリングバック量Lの105%に相当する量拡大した時点Cで行う以外は、実施例1と同様にして圧縮成形体を得た。
以下の方法にて、得られた製品のスプリングバックの程度、製品の空隙率、耐衝撃性、ソフト感及び表面性状を評価した。結果を表2に示す。
ここでいう、スプリングバックの程度は、上述したスプリンブバック量ではなく、最終圧縮工程の除荷工程での厚み回復量を示した。
スプリングバックの程度=(製品の厚み−図2中B点又はE点の厚み)
但し、比較例1の場合は単一の圧縮工程であるので、B点の厚みを採用し、その他の比較例及び全実施例では、E点の厚みを採用してスプリングバックの程度を算出した。
(2)製品の空隙率は、前記式(2)により算出して表2に記載した。
耐衝撃性は、上記製品を、50cmの高さから、厚み25mmのラワン材ベニヤ板上に繰り返し落下させ、欠けや割れ等の異常が生じるまでの回数を評価した。
ソフト感は、4段階のスコアで実使用評価した。評価基準は、4(優秀)、3(良好)、2(やや劣る)、1(劣る)とした。
(5)表面性状
表面性状は、製品表面の、粉噛みによる付着物を目視で確認し、評価基準は、粉噛み付着物なし(○)、粉噛み付着物あり(×)とした。
11 圧縮成形部
12 上杵
13 下杵
16 成形空間
5 粉体原料
51 浅底容器
Claims (3)
- 粉体原料を加圧部材間で圧縮して圧縮成形体を製造する圧縮成形体の製造方法であって、前記加圧部材間の距離を縮めて、前記粉体原料を所定状態に圧縮した後、前記加圧部材間の距離を、下記式(1)
スプリングバック量L(mm)=H1(mm)−H2(mm)・・・(1)
(但し、式中H1は、加圧部材間の距離の拡大を、少なくとも前記粉体原料に加わる圧縮荷重がゼロとなるまで継続した場合に、前記圧縮荷重がゼロとなる時点の加圧部材間の距離であり、H2は、前記所定状態のときの加圧部材間の距離である。)
で表されるスプリングバック量Lの40〜99%に相当する量拡大し、次いで、加圧部材間の距離を再度縮めて前記粉体原料を圧縮成形することを特徴とする圧縮成形体の製造方法。 - 粉体原料を加圧部材間で圧縮して圧縮成形体を製造する圧縮成形体の製造装置であって、前記加圧部材間の距離を縮めて前記粉体原料を所定状態に圧縮した後、前記加圧部材間の距離を、下記式(1)
スプリングバック量L(mm)=H1(mm)−H2(mm)・・・(1)
(但し、式中H1は、加圧部材間の距離の拡大を、少なくとも前記粉体原料に加わる圧縮荷重がゼロとなるまで継続した場合に、前記圧縮荷重がゼロとなる時点の加圧部材間の距離であり、H2は、前記所定状態のときの加圧部材間の距離である。)
で表されるスプリングバック量Lの40〜99%に相当する量拡大し、次いで、加圧部材間の距離を再度縮めて前記粉体原料を圧縮成形するようになされていることを特徴とする圧縮成形体の製造装置。 - 粉体原料を圧縮して圧縮成形体を製造する圧縮成形体の製造装置であって、
前記粉体原料が供給される成形空間を有する圧縮成形部と、該圧縮成形部に収容された該粉体原料を加圧する加圧部材と、該加圧部材を移動させる加圧部材移動手段と、該加圧部材の移動を制御する加圧部材移動制御部と、加圧部材間の距離を検知する距離検知手段と、加圧部材間の距離を基に、所定状態に圧縮された後の加圧部材間の距離の拡大を終了する機能を持つ制御演算装置、とを具備する請求項2記載の圧縮成形体の製造装置。
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