JP4453957B2 - 水性混合廃液処理装置及び水性混合廃液の濃縮方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、水性混合廃液即ち少なくとも一種の水溶性物質、若しくは少なくとも一種の水溶性物質及び少なくとも一種の油溶性物質を含む、水を主たる媒質とする水性混合廃液の処理装置及び該水性混合廃液の濃縮方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多種の物質が混合している水性混合廃液で、混合物中熱に弱い物質を含むなど加熱して濃縮することのできない水性混合廃液の濃縮には凍結濃縮法が利用されている(例えば特許文献1参照)。しかし、水溶性塩濃度が高い系では、凍結濃縮での、濃縮倍率が著しく低く実用にならないという難点がある。また、特に加熱を嫌わない系であって、例えば減圧濃縮法により高濃度で含まれる水溶性塩の分離をすると、減圧釜内壁面に当該塩の結晶が付着し、伝熱面積移の低下を来たしかつ清掃などの作業を必要とすることになった。そこで、例えば、凍結濃縮前の精密ろ過膜を用いた膜分離による前段処理で、溶液中の大部分の高濃度物質を除去してから、その後段で凍結濃縮を行う方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、精密ろ過膜による方法では、溶液中の溶質に応じてろ過膜の細孔径を限定する必要があるし、他の油脂など水不溶性の混合物、固体粒子などが存在すると、ろ過膜の目詰まりを起こしたりして実用とならないなど、利用範囲の極めて狭い濃縮方法(前段濃縮方法)であった。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−334204公報
【特許文献2】
特開2001−9243公報
【特許文献3】
特開平11−28304号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、凍結濃縮の前段処理用とは限らないが、多種物質が混在する水性混合廃液の処理方法であって、該水性混合廃液中に高濃度で存在する水溶性塩を効率的に除去する装置の提供を目的とする。また、前記装置を利用した方法を凍結濃縮の前段処理として利用した多段凍結濃縮方法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数種の物質が混在する水性混合廃液であって、該水性混合廃液中に水溶性塩が存在する水性混合廃液の処理装置において、
前記水性混合廃液を保留するための、容器円筒部分の底部が円錐につながる容器と、容器円筒部分に設けられた冷媒伝熱面及び水性混合廃液導入手段と、該水性混合廃液から晶析した前記水溶性塩の結晶スラリを抜き取るための、容器底部の円錐の頂点に設けられた結晶スラリ抜き取り手段と、前記容器の円筒部分の上部と下部に空間を残しかつ円筒とほぼ同心に配置した整流筒と、前記整流筒の残した容器の円筒部分の下部であって、整流筒断面内に微細空気気泡が発生上昇するような位置に設けられた微細空気気泡の発生手段と、前記容器円筒部分に設けた冷媒伝熱面を通して、前記容器内に保留されている前記水性混合廃液を前記水溶性塩の飽和点以下に冷却可能に、前記伝熱面を介して冷媒により冷却させる冷却手段と、容器内部下方外側の最も塩濃度が低くなっている部分に排出液取り出し口とを設け、前記水溶性塩の結晶を、前記微細空気気泡を核として晶析成長させて、除去することを特徴とする。
【0006】
容器の底部が円錐となっているのは、析出した結晶スラリーが沈降分離して、底部先端(円錐の頂点)に取り付けられた抜き取り手段から分離抜き取りし易い構造だからである。なお、下層の結晶スラリーと上層の水性混合廃液との界面を検出して抜き取り手段を制御する方式にすればなお至便性が高まる。抜き取り手段は例えばロータリバルブ、スクリューコンベアなどを使う事ができる。
【0007】
容器の中央部分には円筒形の整流筒が配置されており、これにより、水性混合廃液は微細空気気泡とともに、先ず、整流筒内を上部へ、整流筒上端部から整流筒外部へ、続いて整流筒外壁を沿って下方へと押し出し流れを形成し、微細空気気泡を擬晶核として結晶化を開始する過程から、結晶の成長・増殖過程を経て、沈降堆積するまでのプロセスを順次行わせることができる。
【0008】
前記整流筒下方には冷却された微細空気気泡の発生手段が設けられており、発生させた微細空気気泡は該水性混合廃液の循環、冷却及び擬晶核としての役割をする。この微細空気気泡発生手段は圧縮空気導入管とこれに接続したノズルにより構成され、ノズルの形状及びサイズにより種々の空気気泡を発生させることができる。又空気噴出口と、容器内に導入する水性混合廃液の噴出口とを組み合わせたノズルを有する微細空気気泡の発生手段とすることも可能である。
【0009】
更に本発明の水性混合廃液処理装置は、前記冷却手段が、冷凍機、該冷凍機によって冷却される冷媒を循環する循環経路、該循環経路中にあって、前記容器中の水性混合廃液に接触する伝熱面によって構成されているのがよい。
【0010】
容器中の水性混合廃液に接触する伝熱面は、容器の外壁に構成したジャケットによる容器壁を利用する方法も一つであり、内部に伝熱コイルを浸漬した構造とする方法も一つである。
【0011】
更に本発明の水性混合廃液処理装置は、前記水性混合廃液導入手段の経路中に導入する水性混合廃液を予備冷却するための冷却器を有することを特徴とする。
【0012】
更に本発明の水性混合廃液処理装置は、前記微細空気気泡発生手段は、前記容器内に配置された気泡発生ノズルと、それに連結された加圧空気導入経路と、該経路中の容器外部に配置された空気圧縮機と空気冷却器と圧力調整弁とを有することを特徴とする。
【0013】
更に本発明の水性混合廃液処理装置は、前記容器内に導入・保留した水性混合廃液を外部経路に接続して循環する循環手段を有することを特徴とする。
【0014】
更に本発明の水性混合廃液処理装置は、前記微細空気気泡発生手段と水性混合廃液導入手段とは容器内に配置された共通のノズルを有することを特徴とする。
【0015】
更に本発明の他の側面としての水性混合廃液の濃縮方法は、複数種の物質が混在する水性混合廃液であって、該水性混合廃液中に水溶性塩が存在する水性混合廃液の濃縮方法において、
容器円筒部分の底部が円錐につながる容器と、容器円筒部分に設けた冷媒伝熱面を通して、前記容器内に保留されている前記水性混合廃液を冷却する冷却手段とを具え、前記容器内に水性混合廃液を導入且つ保留した状態で、前記容器の円筒部分の上部と下部に空間を残しかつ円筒とほぼ同心に配置した整流筒の下部から微細空気気泡を送り込み、該気泡を整流筒内部に沿って上昇させ、整流筒上縁部からはその外部に沿って下降させて、ほぼ乱流のない気液の流れを発生させるとともに、前記冷媒伝熱面を通して前記冷媒により水性混合廃液を飽和点以下に冷却することによって、該水性混合廃液の大部分の水溶性塩を前記微細空気気泡を核として晶析させて容器内部下方外側の最も塩濃度が低くなっている部分に設けた排出液取り出し口より水性混合廃液を除去する水性混合廃液処理工程と、前記工程で生成した低濃度水性混合廃液を凍結氷にして凍結濃縮する凍結濃縮工程を有することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0017】
(実施例1)
図1は本発明の水性混合廃液処理装置の一例を示す概要図である。底部に円錐部を持つ円筒容器1は底部先端(円錐の頂点)が抜き取り手段(ロータリバルブ)10で封じられている。円筒部にはジャケット7を備えておりジャケット内に冷凍機5で冷却された冷媒を循環経路6により循環し、ジャケット内壁の伝熱面8を通して、内部の水性混合廃液を冷却する。容器内中央部に円筒状の整流筒4が宙吊りになるように支持し、その下部円筒断面内にノズル(微細空気気泡発生手段2)を配置した。ノズルには配管により外部の循環ポンプを含む導入・循環経路が接続され、新たな水性混合廃液の導入と容器内部の水性混合廃液の循環がノズルを通しておこなわれる。該循環ポンプのサクション側には新規の水性混合廃液を調節弁13で流量を調節し、その後冷却器11で予備冷却して注入するよう配管接続をする。ノズル(微細空気気泡発生手段2)には前記水性混合廃液とともに、圧縮機14で圧縮した圧縮空気を冷却器19で予備冷却し調節弁で流量を調節して導入するよう接続し、圧縮機14のサクション側は容器1の上部の気体排出口に接続する。これにより、空気は循環使用され、該循環経路6で圧力及び温度を調節することができる。容器1の円筒部下方には濃縮後の排出液取り出し口20が設けられ、ここから濃縮後の排出液を取り出す。
【0018】
以上説明した装置を用いて、本実施例では高い濃度で溶解している芒硝、少量の油分、その他不明物質を共に含んだ食品化学工程の水性混合廃液を用いて、試験を行った。この水性混合廃液は、前記導入・循環経路を通じて、冷却器11で予備冷却しながら、前記容器の一定レベルまでチャージする。冷凍機5を運転して、冷媒を循環経路6に流して、容器内容物温度を1℃から5℃の範囲に保つよう調節する。循環ポンプ12を運転し、内容物の水性混合廃液を循環モードに維持する。ついで、圧縮機14、冷却器19を運転して、調節弁18により空気量を調節しながら、ノズル(微細空気気泡発生手段2)に温度調節した空気も共に送入し、気泡を発生させる。発生した微細空気気泡3は円筒状整流筒内部を上昇し、ここで擬晶核となって結晶化開始成長ゾーン16を形成する。芒硝の結晶は水性混合廃液の流れ15とともに、筒内を上昇しつつ数を増やし、一つ一つは大きく成長する。ついで、筒の上端から内容物は下降流を形成し、結晶の成長・増殖ゾーン17で更に数と量を増やして、結晶は沈降していく。沈降した結晶は、溶液部分との境界面を形成して結晶スラリ9となってスラリー状にコニカル部に溜まる。
【0019】
容器内では、筒内下部から筒内上端部を経て、筒外下部に向けて押し出し流れを形成して、晶析が進行するので、容器内部下方外側付近は最も塩濃度が低くなっている。そこで、前記排出液取り出し口20から、芒硝が除かれた排出液を取りだす。そして、図示はしていないが、前記芒硝スラリ境界面を検出するレベルゲージで境界面を監視しつつ、ロータリーバルブ(抜き取り手段10)でスラリを切り出していく。水性混合廃液の新たな注入は、先の排出液の抜き出し及びスラリの切り出しとの物質収支がバランスするように注入し、容器1内のレベルを一定に保つ。以上により、高濃度の芒硝を混合廃液から首尾よく分離することができ、塩濃度の希薄な排出液が得られた。
【0020】
(実施例2)
図2は実施例1で説明した水性混合廃液処理工程の次段に凍結濃縮工程を行う濃縮方法を示すブロック線図である。図2に示すように、実施例1で得られた排出液、即ち、塩濃度の希薄な低濃度水性混合廃液を、従来公知の凍結氷にして凍結濃縮する凍結濃縮工程を行った。これによって、塩濃度の高い水性混合廃液でも、凍結濃縮を行うことが可能となり、純度の高い水が分離できた。
【0021】
【発明の効果】
以上、詳しく説明したように、本発明により、複数種の物質が混在する水性混合廃液の処理方法であって、該水性混合廃液中に存在する水溶性塩を効率的に除去する装置の提供を可能にした。また、前記装置を利用した方法を凍結濃縮の前段処理として利用した多段凍結濃縮方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の水性混合廃液処理装置の一例を示す概要図。
【図2】 本発明の水性混合廃液の濃縮方法の一例を示すブロック線図。
【符号の説明】
1 容器
2 微細空気気泡発生手段(ノズル)
3 微細空気気泡
4 整流筒
5 冷凍機
6 冷媒循環経路
7 ジャケット
8 伝熱面
9 結晶スラリ
10 抜き取り手段(ロータリバルブ)
11 冷却器
12 循環ポンプ
13 調節弁
14 圧縮機
15 水性混合廃液の流れ
16 空気擬晶核による結晶化開始・成長ゾ−ン
17 結晶の成長・増殖ゾーン
18 調節弁
19 冷却器
Claims (7)
- 複数種の物質が混在する水性混合廃液であって、該水性混合廃液中に水溶性塩が存在する水性混合廃液の処理装置において、
前記水性混合廃液を保留するための、容器円筒部分の底部が円錐につながる容器と、容器円筒部分に設けられた冷媒伝熱面及び水性混合廃液導入手段と、該水性混合廃液から晶析した前記水溶性塩の結晶スラリを抜き取るための、容器底部の円錐の頂点に設けられた結晶スラリ抜き取り手段と、前記容器の円筒部分の上部と下部に空間を残しかつ円筒とほぼ同心に配置した整流筒と、前記整流筒の残した容器の円筒部分の下部であって、整流筒断面内に微細空気気泡が発生上昇するような位置に設けられた微細空気気泡の発生手段と、前記容器円筒部分に設けた冷媒伝熱面を通して、前記容器内に保留されている前記水性混合廃液を前記水溶性塩の飽和点以下に冷却可能に、前記伝熱面を介して冷媒により冷却させる冷却手段と、容器内部下方外側の最も塩濃度が低くなっている部分に排出液取り出し口とを設け、前記水溶性塩の結晶を、前記微細空気気泡を核として晶析成長させて、除去することを特徴とする水性混合廃液処理装置。 - 前記水性混合廃液導入手段の経路中に導入する水性混合廃液を予備冷却するための冷却器を有することを特徴とする請求項1記載の水性混合廃液処理装置。
- 前記微細空気気泡の発生手段は、前記容器内に配置された気泡発生ノズルと、それに連結された加圧空気導入経路と、該経路中の容器外部に配置された空気圧縮機と空気冷却器と圧力調整弁とを有することを特徴とする請求項1記載の水性混合廃液処理装置。
- 前記容器内に導入・保留した水性混合廃液を外部経路に接続して循環する循環手段を有することを特徴とする請求項1記載の水性混合廃液処理装置。
- 前記微細空気気泡発生手段と水性混合廃液導入手段とは容器内に配置された共通のノズルを有することを特徴とする請求項1記載の水性混合廃液処理装置。
- 前記水性混合廃液が、芒硝と油分とを含んだ食品化学工程の水性混合廃液であることを特徴とする請求項1記載の水性混合廃液処理装置。
- 複数種の物質が混在する水性混合廃液であって、該水性混合廃液中に水溶性塩が存在する水性混合廃液の濃縮方法において、
容器円筒部分の底部が円錐につながる容器と、容器円筒部分に設けた冷媒伝熱面を通して、前記容器内に保留されている前記水性混合廃液を冷却する冷却手段とを具え、前記容器内に水性混合廃液を導入且つ保留した状態で、前記容器の円筒部分の上部と下部に空間を残しかつ円筒とほぼ同心に配置した整流筒の下部から微細空気気泡を送り込み、該気泡を整流筒内部に沿って上昇させ、整流筒上縁部からはその外部に沿って下降させて、ほぼ乱流のない気液の流れを発生させるとともに、前記冷媒伝熱面を通して前記冷媒により水性混合廃液を飽和点以下に冷却することによって、該水性混合廃液の大部分の水溶性塩を前記微細空気気泡を核として晶析させて容器内部下方外側の最も塩濃度が低くなっている部分に設けた排出液取り出し口より水性混合廃液を除去する水性混合廃液処理工程と、前記工程で生成した低濃度水性混合廃液を凍結氷にして凍結濃縮する凍結濃縮工程を有することを特徴とする水性混合廃液の濃縮方法。
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