図1はカラオケ店舗の機器配置を説明する図である。このカラオケ店舗には、この発明の実施形態であるカラオケ装置および無線端末装置が複数台設置されている。カラオケ店舗3には、店舗内の(有線)LAN5を介してルータ4、管理装置6、複数台のカラオケ装置7、複数台の無線アクセスポイント8が接続されており、無線アクセスポイント8を介した無線通信によって無線端末装置9がLAN5に接続されている。
ルータ4および管理装置6は、カラオケ店舗の管理室内に設置される。複数台のカラオケ装置7は、それぞれ個室(カラオケボックス)に1台ずつ設置される。また、無線端末装置9は、各個室に1台ないし複数台が設置される。
無線端末装置9は、ユーザがカラオケ曲をリクエストするためのリクエスト機能、ユーザがカラオケ曲を簡易に試聴するための試聴機能、カラオケ装置7によるカラオケ曲の演奏中にそのカラオケ曲の歌詞を表示する歌詞表示機能、ユーザのIDカードを読み取ってそのユーザをサーバにログインさせるログイン機能等の機能を有している。
各個室に設置された無線端末装置9は、後述するペアリング操作により、その個室に設置されているカラオケ装置7と対応付けられる。無線端末装置9とカラオケ装置7とが対応付けられると、ユーザがその無線端末装置9を操作して行ったリクエストは、LAN経由で対応づけられたカラオケ装置7に送信される。対応付けられたカラオケ装置7は、受信したリクエストのカラオケ曲を演奏する。また、ユーザがカラオケ曲を選出し、リクエストボタンに代えて、試聴ボタンをオンすると、試聴要求のメッセージがカラオケ装置7に送信される。カラオケ装置7は、この試聴要求に応じて、そのカラオケ曲を演奏するための楽曲データを編集して試聴用楽曲データを作成し、これを無線端末装置9に送信する。無線端末装置9は、この試聴用楽曲データをシーケンスしてカラオケ曲を演奏する。試聴用楽曲データは、無線端末装置9の演奏機能に合わせて、発音チャンネル数や音色数を減らす等の処理をしたデータである。
一方、ルータ4は、インターネット2を介してセンタ1と接続されている。センタ1は、楽曲データ、顧客データ等を蓄積記憶している。各カラオケ装置7および無線端末装置9は、LAN5、ルータ4、およびインターネット2を介してセンタ1にアクセスし、楽曲データのダウンロードや顧客データのダウンロード(顧客のログイン)等の通信を行う。
管理装置6は、このカラオケ店舗3の係員が操作する端末装置であり、各カラオケ装置7(個室)の利用時間の管理や、無線端末装置9等を利用した飲食物やチケット等の注文を受け付ける。
図2は各個室に設置されるカラオケ装置7のブロック図である。カラオケ装置7は、装置全体の動作を制御するCPU10と、このCPU10に接続された各種機器で構成されている。CPU10には、HDD11、RAM12、音源13、ミキサ(エフェクタ)14、MPEGデコーダ20、合成回路21、操作部23、LANインタフェース24、赤外線通信部25等が接続されている。
HDD11は、カラオケ曲を演奏するための楽曲データやモニタ22に背景映像として表示するための映像データ等を記憶している。映像データは動画、静止画の両方を記憶している。RAM12には、プログラムを実行するために読み出すエリアやカラオケ曲を演奏するために楽曲データを読み出すエリアなどが設定される。
CPU10は、シーケンサ30、背景映像再生処理部33、無線端末制御処理部34、楽曲データ変換処理部35、および操作入力処理部(図示せず)等の処理部を有している。シーケンサ30は、曲シーケンサ31、歌詞シーケンサ32からなっている。これらの処理部は、HDD11に記憶されているプログラムに基づいて、ソフトウェア的機能部として実現される。
曲シーケンサ31は、HDD11に記憶されている楽曲データに基づいてカラオケ曲の演奏を実行するプログラムである。楽曲データは図5に示すような構成をしている。曲シーケンサ31は、このうちの楽音トラックやガイドメロディトラック等のデータに基づいて音源13を制御し、カラオケ曲の楽音を発生する。また、歌詞シーケンサ32は、カラオケ曲の楽曲データに基づいてモニタ22に歌詞テロップを表示するためのプログラムである。歌詞シーケンサ32は、図5に示す楽曲データのうち、歌詞トラックに基づいて曲の進行に同期して歌詞の文字パターンを合成し、この文字パターンを映像信号に変換して合成回路21に入力する。
音源13は、曲シーケンサ31の処理によってCPU10から入力されたデータ(楽音トラックやガイドメロディトラックのノートイベントデータ)に応じて楽音信号を形成する。形成した楽音信号はミキサ14に入力される。ミキサ14は、音源13が発生した複数の楽音信号、および、マイク17−A/Dコンバータ18を介して入力された歌唱者の歌唱音声信号に対してエコーなどの効果を付与するとともに、これらの信号を適当なバランスでミキシングする。ミキシングされたデジタルの音声信号はサウンドシステム15に入力される。サウンドシステム15はD/Aコンバータおよびパワーアンプを備えており、入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換して増幅し、スピーカ16から放音する。ミキサ14が各音声信号に付与する効果およびミキシングのバランスはCPU10によって制御される。
背景映像再生処理部33は、上記シーケンサ30による楽音の発生、歌詞テロップの生成と同期して、HDD11に記憶されている映像データ41を読み出して背景映像を再生する。動画の映像データは、MPEG2形式にエンコードされている。背景映像再生処理部33は、読み出した動画の映像データをMPEGデコーダ20に入力する。MPEGデコーダ20は、入力されたMPEGデータをNTSCの映像信号に変換して合成回路21に入力する。合成回路21には、背景映像の映像信号以外に上記歌詞テロップの文字パターン等が入力される。合成回路21は、背景映像の映像信号の上に歌詞テロップなどのOSDを合成してモニタ22に出力する。モニタ22は、合成回路21から入力された映像信号を表示する。
楽曲データ変換処理部35は、図5に示す楽曲データについて、図6に示す変換処理を行い、試聴用楽曲データを作成する。変換処理は、楽音トラックのうち重要なチャンネルの選出を行う等の処理である。詳細は後述する。変換した試聴用楽曲データはLANインタフェース24を介して無線端末装置9に送られる。
操作部23は、操作パネル面に設けられた各種のキースイッチおよびこのキースイッチの操作を検出するパネルスイッチインタフェースを有している。
また、LANインタフェース24は、LAN5を介した通信を制御するためのインタフェースである。カラオケ装置は、LAN5を介してセンタ1、管理装置6およびペアリングされた無線端末装置9と通信する。
また、赤外線通信部25は、ペアリング処理において、無線端末装置9から赤外線信号を受信する回路である。ペアリング処理については後述する。
カラオケ装置7の操作パネル面には、曲番号を入力するためのテンキー、曲のテンポを変更するためのテンポコントロールスイッチ、曲を早送り、巻き戻しするための早送りスイッチ、巻き戻しスイッチ、および、曲を移調するためのキーコントロールスイッチ等が設けられている。
また、無線端末装置9は、タッチパネル機能を有するLCDディスプレイ50(図3、図4参照)を有しており、このLCDディスプレイ50に曲番号を入力するためのテンキーや曲名から曲番号を検索するための検索画面(50音キーを含む)等が表示される。また、曲の演奏前および演奏中には、曲のテンポを変更するためのテンポコントロールスイッチ、曲を早送り、巻き戻しするための早送りスイッチ、巻き戻しスイッチ、および、曲を移調するためのキーコントロールスイッチ等が表示される。
操作部23は、パネルスイッチが操作されたことを検出して対応する操作信号をCPU10に出力する。
また、無線端末装置9は、LCDディスプレイ50(図3参照)に表示しているキースイッチの操作をタッチパネルで検出し、この操作に対応する操作信号をLAN5経由で対応する(ペアリングされた)カラオケ装置7に送信する。LANインタフェース24は、無線端末装置9から受信した操作信号をCPU10に入力する。
CPU10は、操作部23またはLANインタフェース24から入力された操作信号に基づいて対応する処理を実行する。
例えば、パネルスイッチや無線端末装置9からリクエストの曲番号が入力されると、この曲番号がシーケンサ30に入力され、各プログラムは以下の処理を実行する。
シーケンサ30は、これに応じて、この曲番号で識別されるカラオケ曲の曲データをHDD11の曲データ記憶エリア40から読み出す。曲シーケンサ31は曲データ中の演奏データトラック、ガイドメロディトラックなどのトラックのデータを読み出し、このデータで音源13を制御することによってカラオケ曲の演奏音を発生させる。また、歌詞シーケンサ32は、曲データ中の歌詞トラックのデータを読み出し、このデータに基づいて歌詞テロップの画像パターンを作成して合成回路21に出力する。また、背景映像再生処理部33は、シーケンサ30からの指示に応じて所定の映像データを読み出してMPEGデコーダ20に入力する。
また、パネルスイッチや無線端末装置9からテンポコントロール信号や早送り、巻き戻しの信号が入力されると、この曲番号がシーケンサ30に入力され、演奏のテンポや歌詞表示の進行がこの信号の内容に応じて設定変更される。
図3は、前記無線端末装置9の外観図である。この無線端末装置9は、カラオケ曲の予約や曲のテンポ・キーをコントロールする機能を備えた所謂リモコン装置として機能するほか、カラオケ曲の試聴機能、顧客のログイン機能、各種課金清算機能、カメラによる撮影機能、歌詞表示機能等種々の機能を備えている。
無線端末装置9は、カラオケ店舗においては、無線LAN端末として機能するが、後述するペアリング処理をすることにより、ペアリングで対応づけられたカラオケ装置と専ら通信する。
無線端末装置9は、同図に示すように、略五角形(ホームベース状)の形状をしており、中央部にLCDディスプレイ50を備えている。このLCDディスプレイ50の下方中央にカードリーダ部52、その左右にステレオスピーカ51が設けられている。また、LCDディスプレイ50の上端部には、カメラ53,ストロボフラッシュ54が設けられている。
LCDディスプレイ50は、タッチパネル機能を有している。動作モードに応じてLCDディスプレイ50には、各種のタッチキーが表示され、利用者によるタッチキーの操作をタッチパネルスイッチ69(図4参照)が検出する。表示されるタッチキーには、曲番号を入力するためのテンキースイッチ、曲名を入力するための50音キーボード,パソコン配列のキーボード等があり、動作モードに対応したものが表示される。
また、カラオケ曲の演奏中には、LCDディスプレイ50にカラオケ曲の歌詞テロップが、カラオケ装置7によるカラオケ曲の演奏と同期して表示される。
カードリーダ52には、顧客のIDカードがセットされる。IDカードは無線通信機能を備えたICカードである。カードリーダ部52の内部には、非接触カードインタフェース65(図4参照)のアンテナが埋め込まれている。顧客のIDカードがカードリーダ部52にセットされると、非接触カードインタフェース65が無線通信でIDカードと通信し、このIDカードに記憶されている顧客IDを読み取る。無線端末装置9は、読み取ったIDをLAN5−(ペアリングされているカラオケ装置7)−ルータ4−インターネット2を介してセンタ1に送信する。センタ1は、無線端末装置9またはカラオケ装置7から顧客IDを受信することにより、当該顧客の利用履歴を更新するとともに、当該無線端末装置9またはカラオケ装置7に対してこの顧客の顧客情報を送信する。無線端末装置9またはカラオケ装置7は、センタ1から顧客情報を受信して、たとえば、カラオケ曲のスタート時に顧客の名前を表示する等の顧客個別対応を行う。
この無線端末装置9はカラオケ装置7よりも簡略な音源63(図4参照)を内蔵している。無線端末装置9のCPUは、カラオケ装置7よりも少ないチャンネル数の楽音トラックで、カラオケ装置7から受信した楽音トラックをシーケンスして内蔵音源を用いてカラオケ曲の試聴演奏をする機能を備えている。この試聴演奏された楽音がステレオスピーカ51から出力される。
図4は、同無線端末装置9のブロック図である。無線端末装置9を制御するCPU60には、内部バスを介してROM61,RAM62,音源63,非接触カードインタフェース65,無線LANインタフェース66,周辺機器コントローラ68が接続されている。
ROM61には、この無線端末装置9の動作を制御する各種プログラムが記憶されている。ROM61は、フラッシュメモリで構成されており、USBインタフェースを介して接続される外部装置によってプログラムの書き換えが行われる。RAM62には、顧客情報等の各種データが記憶される。また、後述する試聴モードの場合には、カラオケ装置7からLAN5を介して送られてくる楽曲データを記憶する。
音源63は、カラオケ装置7に内蔵されているものよりも簡略な(音色数が少ない)ものであるが、カラオケ曲の楽曲データに基づいて楽音を発生することができるものである。音源63はカラオケ曲の演奏を行うが、同時に発音できる楽音トラック(チャンネル数)はカラオケ装置7よりも少ないものである。
この音源63は、試聴モード時に使用される。試聴モードでは、ユーザによって選択されたカラオケ曲について、カラオケ装置7で主要チャンネルのみ抽出してチャンネル数を減らすとともに、音色指定を発音可能なものに変換をした試聴用楽曲データをカラオケ装置7からダウンロードし、この楽曲データを音源63で再生する。図6(A)に示すように、無線端末装置9の音源63で同時発音できるチャンネル数は16chであり、カラオケ装置7のCPU10は、指定された楽曲データについて32chの中から重要なトラックの選出をし、16chの楽曲データとして変換する。
図4において、音源63にはアンプ64が接続されている。アンプ64は、音源63が生成した試聴用の楽音を増幅してステレオスピーカ51に出力する。
なお、この試聴モード時に歌詞トラックのデータをダウンロードして、LCDディスプレイ50に歌詞テロップを表示するようにもできる。カラオケ装置7は、図5に示す楽曲データのうち、歌詞トラックを抽出して試聴用楽曲データに含めて無線端末装置9に送信する。無線端末装置9は、独自のシーケンス動作によって、試聴用楽曲データの再生と同期して歌詞を表示する。さらに、試聴演奏の曲の進行に合わせて歌詞テロップ表示色がスクロールようにすることも可能である。
また、歌詞テロップに加えて背景映像も同時にダウンロードして表示することができる。カラオケ装置7は、HDD11に記憶されている映像データ41を読み出して無線端末装置9に送信する。無線端末装置9は、上記試聴用楽曲データの再生、歌詞テロップの生成と同期して、受信した映像データを読み出して背景映像を再生する。背景映像の映像信号の上に歌詞テロップを合成してLCDディスプレイ50に表示する。
これらの処理は、ROM61に記憶されているプログラムに基づいてソフトウェアで実現される。
非接触カードインタフェース65は、カードリーダ部52にセットされた非接触媒体であるIDカードと通信するためのインタフェースである。この非接触カードインタフェース65は、電磁波で非接触カードに電源を供給する機能および無線で非接触カードと通信する機能を備えている。
無線LANインタフェース66は、アンテナ67を内蔵し、無線アクセスポイント8を介してこの無線端末装置9をLAN5に接続するためのインタフェースである。
周辺機器コントローラ68には、前記LCDディスプレイ50、タッチパネルスイッチ69、カメラ53、ストロボフラッシュ54のほか、赤外線リモコン信号をカラオケ装置7に対して送信する赤外線リモコン送信部70、他の装置と赤外線通信をするためのIrDA71、USBインタフェース72等が接続されている。
赤外線リモコン送信部70は、後述のペアリング処理時に用いられる。USBインタフェース72は、この装置にパーソナルコンピュータ等のメンテナンス装置を接続してROM(フラッシュメモリ)61に記憶されているプログラム(ファームウェア)を書き換えるときに使用される。
図5は、HDD11に記憶されている楽曲データの構成を示す図である。
楽曲データは、同図(A)左欄に示すように、ヘッダ、カラオケ曲を演奏するための楽音トラック、ガイドメロディを発生するためのガイドメロディトラック、歌詞テロップを表示するための歌詞トラック等からなっている。
各トラックは、MIDIフォーマットに従って記述されている。たとえば、楽音トラックやガイドメロディトラックは、同図(B)左欄に示すように、ノートオンイベントデータ、ノートオフイベントデータなどのイベントデータと、各イベントデータの読み出しタイミングを示すタイミングデータと、発音する音色を指定するプログラムチェンジデータからなっている。ノートオンイベントデータは音高データを含み、このノートオンによって発生する楽音の音高や音量を指定する。この楽音は、対応するノートオフイベントデータが読み出されるまで継続する。
タイミングデータは、各イベントデータ間の時間的間隔を示すデュレーションデータや曲のスタート時刻からの絶対時間を示す絶対時間データなどで構成することができる。
プログラムチェンジデータは、MIDI音源(音源13、音源63)にプログラムされている音色の番号を記述したデータで構成する。この記述が読み出されることで発音する音色を指定することができる。
楽音トラック、ガイドメロディトラックのイベントデータは、上記のように楽音の音高、音量、オン/オフなどを示すノートイベントデータなどで構成され、このノートイベントデータを音源13に入力することにより、音源13はプログラムチェンジデータに記載された楽音(音色)を発音したり消音したりする。楽音トラックは、多数の楽器の楽音を同時発生するために複数トラック(チャンネル)のMIDIデータで構成されており、ガイドメロディトラックは、歌唱旋律をガイドするための単旋律のMIDIデータで構成されている。
楽音トラックは、図5(A)右欄に示すように32チャンネルで構成されている。各チャンネルは主伴奏、サブ伴奏、ベース音等の演奏パートによって分けられている。また、カラオケ装置7の音源13は、同図(B)右欄に示すように744種類の音色を備えており、楽音トラックは、各チャンネルのプログラムチェンジデータ(音色選択データ)によって744種類の中から1または複数の音色を指定するように構成されている。
歌詞トラックは、カラオケ曲の曲名や歌詞を表示するための各種データをインプリメントしたシーケンスデータである。カラオケ装置7の歌詞シーケンサ32は、歌詞トラックのデータを読み出し、このデータに基づいて歌詞テロップの画像パターンを作成する。また、試聴モード時には、この歌詞トラックをカラオケ装置7から無線端末装置9に送信し、無線端末装置9のCPU60は、独自のシーケンス動作によって、歌詞トラックのデータを読み出し、このデータに基づいて歌詞テロップの画像パターンを作成する。
図6は、楽曲データの変換処理を説明する図である。この処理は、無線端末装置9から試聴要求が送信された場合に楽曲データ変換処理部35が行うものである。
同図(A)は、上述した楽音トラックのチャンネル数の変換処理を示した図である。楽曲データ変換処理部35は、楽音トラックのうち、重要なチャンネルの選出を行う。同図(A)の左欄に示すように、カラオケ装置7のHDD11に記憶している各楽曲データの楽音トラックは、チャンネル毎に主伴奏、サブ伴奏、ベース音等の演奏パートの記載がなされている。
楽曲データ変換処理部35は、各チャンネルの演奏パートを読み出して重要チャンネルを選出する。重要チャンネルは、主伴奏(メインの旋律)、ドラム、ベース等、楽曲の雰囲気を形成するために欠かせない演奏パートである。各チャンネルには演奏パートの記載がなされているので、楽曲データ変換処理部35は重要チャンネルに該当すると判断したチャンネルを選出する。
また、発音時間の長いチャンネルも選択するようにする。前述のように、楽音トラックは、ノートオンイベントデータが読み出されてからノートオフイベントデータが読み出されるまで発音を継続するものである。そこで、各チャンネルについてノートオンイベントデータからノートオフイベントデータまでの間の時間を累算し、各チャンネルの発音時間の長さを計算する。発音時間の長いチャンネルから順に所定のチャンネル数を選出する。なお、所定の時間以上の発音時間を有するチャンネルをすべて選択するようにしてもよい。
また、音量に応じてチャンネル数を選択するようにしてもよい。ノートイベントデータには音量を示す記載がなされているので、この音量を読み取り、所定のレベル以上の音量を発音するチャンネルを選出するようにすればよい。
なお、カラオケ装置7は、各楽曲データで選出するべきチャンネルが記載されたデータである変換指定データをセンタ1から楽曲データとは別にダウンロードするようにしてもよい。ダウンロードした変換指定データは、HDD11に記憶し、変換処理を行うときに、この変換指定データの記述に従って楽曲データを変換すればよい。
以上のようにして、チャンネル数を選出し、無線端末装置9の同時発音数である16チャンネルにチャンネル数を変換する。本実施形態においては、無線端末装置9のチャンネル数が16チャンネルであるため、32チャンネルの発音数を16チャンネルに選出しているが、これに限るものではなく、ペアとなる無線端末装置の同時発音数に適合するようにチャンネル数を選出すればよい。カラオケ装置7は、この変換処理を行うときに、ペアとなる無線端末装置の同時発音数を問い合わせるようにしてもよい。
次に、図6(B)は、上述した音色の変換処理を示した図である。楽曲データ変換処理部35は、所定の変換テーブルに従ってプログラムチェンジデータの指定音色の変換を行う。変換テーブルは、似たような発音をする音色を1種類にまとめるように規定したテーブルである。例えば同図(B)に示すように、アコースティックグランドピアノ、ブライトアコースティックピアノ、およびエレクトリックグランドピアノの音色は、ピアノの音色として1種類にまとめる。
カラオケ装置7の音源13は、同図(B)左欄に示すように744種類の音色を備えており、楽音トラックは、各チャンネルのプログラムチェンジデータ(音色選択データ)によって744種類の中から1または複数の音色を指定するように構成されている。これに対し、同図(B)右欄に示すように無線端末装置9の音源63の音色数は128種類である。変換テーブルは、744種類の音色のそれぞれについて、128種類のどの音色番号に該当するか記載されており、楽曲データ変換処理部35は、この変換テーブルに従ってプログラムチェンジデータの指定音色番号の変換を行う。なお、音色数の変換においても、ペアとなる無線端末装置の音色数に適合するように変換テーブルを規定しておき、これに応じて変換すればよい。例えば、無線端末装置の音色数が64種類である場合は、744種類の音色を64種類の音色に変換する変換テーブルを記憶しておけばよい。
以上のようにして、HDD11に記憶されている楽曲データを試聴用楽曲データとして変換する。
図7、図8は、カラオケ装置本体および無線端末装置の動作を示すフローチャートである。
図7は、ペアリング処理動作を示すフローチャートである。ペアリングとは、互いにLAN5に接続される複数台のカラオケ装置7と複数台の無線端末装置9を、それぞれ個別に対応づける動作である。ただし、1台のカラオケ装置7に対して、複数台の無線端末装置9がペアリング処理を行う場合があり、この場合には、1台のカラオケ装置に対して複数台の無線端末装置9が対応づけられる。
以下の説明では、1台のカラオケ装置7と1台の無線端末装置9との相互動作について説明するが、1台のカラオケ装置7に複数台の無線端末装置9が対応づけられる場合には、以下の動作が各無線端末装置9ごとに実行される。
ペアリング処理は、無線端末装置9を個室に持ち込み、その個室に設置されているカラオケ装置7の子機として使用しようとする場合に、係員によって行われる。
係員が無線端末装置を個室に持ち込み、無線端末装置9の赤外線リモコン信号送信機能を用いて、自己の端末IDをカラオケ装置本体に送信する(s1)。端末IDは、無線端末装置9のROM(フラッシュメモリ)62に記憶されている。カラオケ装置7は、赤外線通信部25でこの端末IDを含むメッセージを受信すると(s10)、この端末IDを有する無線端末装置を検索するために、この端末IDの装置を検索する旨の端末検索メッセージを作成し(s11)、この端末検索メッセージをLAN経由でブロードキャスト送信する(s12)。したがって、この端末検索メッセージは、LAN5上に接続されている(無線アクセスポイント8を介して接続されているものを含む)全ての装置によって読み取られる。
なお、端末検索メッセージには、検索対象である無線端末装置の端末IDとともに、送信元であるカラオケ装置の装置IDも含まれている。
ステップS2で端末検索メッセージを受信した各端末装置は、このメッセージが自装置宛のものであるかを判断し(s3)、自装置宛のものでなければ、このメッセージを破棄する。自装置宛のメッセージであれば、すなわち、端末検索メッセージに含まれている端末IDと自己のIDとが一致した場合には、このメッセージは、s1において、赤外線信号を送信した送信先のカラオケ装置からのメッセージであるとして、このメッセージに含まれている装置IDをペアの(親機として対応する)カラオケ装置のIDとして記憶する(s4)。この装置IDは、RAM62に設定されている装置ID記憶エリアに記憶される。
そして、この装置IDのカラオケ装置に対して確認メッセージを作成して(s5)、LAN経由で送信する(s6)。対応するカラオケ装置7が、この確認メッセージを受信すると(s13)、この無線端末装置9の端末IDをペアの(子機として対応する)無線端末装置9として記憶するとともに、この無線端末装置9に対する端末管理テーブルを作成する(s14)。端末管理テーブルは、HDD11に設定され、端末IDを記憶するテーブルである。
以上のペアリング処理によって、カラオケ装置7および無線端末装置9の双方が相手装置を認識してそのIDを記憶することができ、以後LANを介して相互に1対1の通信をすることができる。
図8は、無線端末装置9による選曲動作を示すフローチャートである。
無線端末装置9の選曲操作は、LCDディスプレイ50に表示されたモード選択画面で選曲モードを選択するとともに、選曲方法を選択して行う。すなわち、曲番号を直接入力して選曲する方法、50音タッチパネルから曲名または歌手名を入力して選曲する方法等がある。このとき、タッチパネルにはリクエストボタン、試聴ボタンが表示される。
なお、無線端末装置9は、この選曲に用いるために、カラオケ装置7または管理装置6から、「曲番号−曲名−歌手名−歌詞の一部」を対応づけて記憶した選曲テーブルをダウンロードして所持している。
上記の操作でカラオケ曲が選曲され(s20)、続いてリクエストボタンがオンされると(s21)、そのカラオケ曲の曲番号を含む選曲メッセージを作成して(s22)、対応する(ペアの)カラオケ装置7に対して送信する(s23)。この選曲メッセージの送信は、LAN経由で行われる。また、選曲操作(s20)に続いて試聴ボタンがオンされると、s40以降の試聴動作にすすむ。いずれのボタンもオンされなければ選曲操作に戻る。
カラオケ装置7が、選曲メッセージを受信すると(s30)、この選曲メッセージに含まれている曲番号を読み出して、予約リストに登録する(s31)。
ここで、予約リストとは、無線端末装置9または装置本体のパネルスイッチから入力された曲番号を入力順に記憶しておくリストである。シーケンサ30は、先に入力された曲番号のカラオケ曲から順次演奏する。予約リストの先頭からカラオケ曲の曲番号を読み出し(s32)、この曲番号で識別される楽曲データをHDD11から読み出し(s33)、演奏をスタートする(s34)。
s40以降に示す処理は試聴モードを表したものである。試聴モードとは、無線端末装置9で選択した曲について、ユーザがタッチパネルに表示された試聴ボタンをオンする(s21)、無線端末装置9でカラオケ曲の試聴演奏するモードである。この試聴モードでカラオケ曲を演奏する場合、カラオケ装置7においては、楽曲データから楽音トラックのデータを抽出して、重要なチャンネルの選出を行い、さらに音色の変換を行った試聴用楽曲データを無線端末装置9に送信する。無線端末装置9は、カラオケ装置7から試聴用楽曲データを受信して、独自のシーケンス動作によって、試聴用楽曲データを再生して演奏を行う。
ユーザが試聴ボタンをオンすると、そのカラオケ曲の曲番号を含む試聴メッセージを作成する(s21→s40)。作成した試聴メッセージを対応する(ペアの)カラオケ装置7に対して送信する(s41)。この試聴メッセージの送信は、LAN経由で行われる。このとき、この無線端末装置の同時発音数(チャンネル数)をカラオケ装置7に送信するようにしてもよい。
カラオケ装置7が、試聴メッセージを受信すると(s50)、この試聴メッセージに含まれている曲番号を読み出して(s51)、この曲番号で識別される楽曲データをHDD11から読み出す(s52)。読み出した楽曲データについて、チャンネル数の選出と音色変換を行う(s53)。上述のように、重要なチャンネルを選択し、似た発音をする音色を1種類の音色に変換する。ここで、無線端末装置9からチャンネル数を受信している場合は、そのチャンネル数に適合するように選出する。変換指定データを記憶している場合は、対応する変換指定データを読み出して、この変換指定データに従って楽曲データの変換をする。なお、カラオケ装置7は、無線端末装置9にチャンネル数の問い合わせをしてもよい。変換した楽曲データである試聴用楽曲データは、無線端末装置9に送信する(s54)。
無線端末装置9は、試聴用楽曲データを受信し(s42)、音源63で独自にシーケンスして演奏を開始する(s43)。ユーザは手元でカラオケ曲を試聴することができる。この試聴演奏中にユーザがリクエストボタンをオンすると、無線端末装置9はこれを検出し(s44)、試聴演奏を途中終了する(s45)。リクエストボタンがオンされ、試聴演奏を途中終了した場合は、s22の処理にすすむ。
リクエストボタンがオンされなければ、曲が終了するまでカラオケ曲の再生を継続し、リクエストを受け付ける(s46)。曲が終了した場合、選曲操作から処理を繰り返す(s46→s20)。なお、試聴演奏中にタッチパネルに試聴中止ボタンを表示し、ユーザがこの試聴中止ボタンをオンしたとき、試聴演奏を途中終了して選曲操作から処理を繰り返すようにしてもよい。
なお、ステップs42において、無線端末装置9は、歌詞トラックのデータを受信して、LCDディスプレイ50に歌詞テロップを表示するようにしてもよい。この場合、カラオケ装置7は、ステップs52で読み出した楽曲データから歌詞トラックを抽出して試聴用楽曲データに含めて無線端末装置9に送信する。無線端末装置9は、独自のシーケンス動作によって、試聴用楽曲データの再生と同期して歌詞を表示する。さらに、試聴演奏の曲の進行に合わせて歌詞テロップ表示色がスクロールするようにすることも可能である。
また、歌詞テロップに加えて背景映像も同時にダウンロードして表示することができる。この場合、カラオケ装置7は、ステップs52で楽曲データを読み出すときに、HDD11に記憶されている映像データも読み出してステップs54で無線端末装置9に送信する。無線端末装置9は、上記試聴用楽曲データの再生、歌詞テロップの生成と同期して、受信した映像データを読み出して背景映像を再生する。背景映像の映像信号の上に歌詞テロップを合成してLCDディスプレイ50に表示する。