以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[触媒劣化診断装置の構成]
まず、本発明の実施形態に係る触媒劣化診断装置について、図1を用いて説明する。図1は、触媒劣化診断装置を搭載した車両10の概略構成を示すブロック図である。
車両10は、内燃機関1と、触媒2と、ECU(Engine Control Unit)3と、吸気通路4と、排気通路5と、燃料噴射弁6と、A/Fセンサ7と、酸素センサ8と、を備える。なお、本実施形態に係る触媒劣化診断装置は、主としてECU3、燃料噴射弁6、酸素センサ8などにより構成される。
内燃機関1は、燃焼室内の混合気を爆発させて動力を発生する装置である。内燃機関1は、吸気通路4より空気9aと燃料を導入し、そして、燃料を燃焼した後の排気ガス9bを排気通路5へ排出する。内燃機関1としては、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのエンジンとすることができる。
触媒2は、排気通路5上に設けられており、内燃機関1から排出される排気ガス9bを浄化する。例えば、触媒2は、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)などを浄化する三元触媒などを用いることができる。
燃料噴射弁6は、内燃機関1に供給する燃料の量(即ち、燃料噴射量)を調整することが可能な装置である。燃料噴射弁6は、後述するECU3から供給される制御信号S3によって制御される。
A/Fセンサ7は、触媒2の上流側の排気通路5上に設けられている。A/Fセンサ7は、排気ガス9bの空燃比を検出し、検出した空燃比に相当する信号S1をECU3に出力する。一方、酸素センサ8は、触媒2の下流側の排気通路5上に設けられている。酸素センサ8は、触媒2を通過した後の排気ガス9c中の酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度に相当する信号S2をECU3に出力する。このように、A/Fセンサ7は空燃比検出手段として機能し、酸素センサ8は酸素濃度検出手段として機能する。
ECU3は、図示しないCPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インタフェイスなどを含んで構成される。ECU3は、A/Fセンサ7及び酸素センサ8から出力される信号S1及びS2に基づいて燃料噴射弁6に対して制御信号S3を供給することにより、空燃比制御(即ち、空燃比のフィードバック制御)を実行する。また、ECU3は、この空燃比制御の実行中にA/Fセンサ7から出力される空燃比、及び酸素センサ8から出力される酸素濃度などに基づいて触媒2の劣化診断を行う。このように、ECU3は、本発明において、酸素量算出手段、周期異常判定手段、及び触媒劣化診断手段として機能する。なお、ECU3が行う具体的な処理については、詳細は後述する。
次に、触媒2の劣化診断を行う際に行われる、基本的な空燃比制御について図2を用いて説明する。
図2は、ECU3が空燃比をリッチとリーンとの間で変化させる空燃比制御を実行したときに得られるセンサ出力などを示した図であり、横軸は時間を示している。なお、このような空燃比制御は、触媒2の劣化診断を行う際に実行される。
図2(a)は、A/Fセンサ7から出力される空燃比を示している。この場合、A/Fセンサ7から出力される空燃比は、内燃機関1から排出される排気ガス9b中の燃料と空気の割合を示している。A/Fセンサ7は、空燃比がストイキ(理論空燃比)にあるときに所定値を出力し、空燃比がリッチであるときは出力がその所定値より小さくなり、空燃比がリーンであるときは出力がその所定値より大きくなる。
図2(b)は、酸素センサ8から出力される酸素濃度を示している。この場合、酸素センサ8の出力は、触媒2の下流の排気ガス9c中の酸素濃度を示している。図2(b)に示すように、酸素センサ8は、排気ガス9c中の酸素濃度が大きい(即ち、空燃比がリーン)ときは出力が小さくなり、排気ガス9c中の酸素濃度が小さい(即ち、空燃比がリッチ)ときは出力が大きくなる。
次に、空燃比制御について説明する。図2(a)と図2(b)に示されるように、空燃比制御により目標空燃比がストイキ状態から酸素センサ8がリーン出力であるためリッチ状態に変更されたときには(時刻t1a)、触媒2がそれまで吸蔵していた酸素を放出するため、排気ガス9c中の酸素濃度は低下せず、酸素センサ8の出力は小さくなる。但し、触媒2の酸素吸蔵能力には限界があるので、触媒2が吸蔵していた酸素を全て放出してしまうと排気ガス9c中の酸素濃度は急激に低下し、酸素センサ8の出力は急激に増大する。即ち、酸素センサ8の出力は反転する。そして、酸素濃度の低下により酸素センサ8の出力値が所定の判定値13aまで増加すると、ECU3は目標空燃比をリッチ状態からリーン状態へと移行させる(時刻t1b)。
リーン状態においては、排気ガス9cは酸素が過多の状態となっているが、触媒2がその酸素を吸蔵していくため、排気ガス9c中の酸素濃度は当初は増加しない。しかし、触媒2が吸蔵能力の限界まで酸素を吸蔵すると、その後は排気ガス9c中の酸素濃度が急激に増加する。即ち、酸素センサ8の出力は反転する。そして、酸素センサ8の出力値が所定の判定値13bまで減少すると、ECU3は目標空燃比をリーン状態からリッチ状態へと変更する(時刻t1c)。以後、同様の制御が繰り返される。
このように、触媒2が酸素を放出しきった際に目標空燃比をリーンに切り替えることによって、即座に触媒2に酸素を吸蔵させることができ、触媒2が酸素を吸蔵しきった際に目標空燃比をリッチに切り替えることによって即座に触媒2から酸素を放出させることができる。即ち、このような空燃比制御を行うことにより、触媒2から効果的に酸素を放出させることができると共に、触媒2に効果的に酸素を吸蔵させることができる。
図2(c)は、触媒2から放出される酸素の量(酸素放出量)と触媒2が吸蔵した酸素の量(酸素吸蔵量)を示している。酸素放出量及び酸素吸蔵量は、A/Fセンサ7からの出力や燃料噴射弁6の開度量などに基づいてECU3によって計算される量である。即ち、酸素放出量及び酸素吸蔵量は、排気ガス9b中の空燃比(A/F)と燃料噴射量などから算出される。
図2(c)に示すように、空燃比がリッチである場合には触媒2は酸素を一定の割合で放出し、空燃比がリーンである場合には触媒2は酸素を一定の割合で吸蔵する。また、酸素センサ8の出力が判定値13aに達したとき、言い換えると目標空燃比がリッチからリーンに反転される際に、触媒2は酸素放出状態から酸素吸蔵状態に切り替わる。通常は、酸素センサ8の出力が判定値13aに達したときに、触媒2は吸蔵している酸素を完全に放出している。更に、酸素センサ8の出力が判定値13bに達したとき、言い換えると目標空燃比がリーンからリッチに反転される際に、触媒2は酸素放出状態から酸素吸蔵状態に切り替わる。通常は、酸素センサ8の出力が判定値13bに達したときに、触媒2は限界まで酸素を吸蔵している。
酸素センサ8の出力が判定値13aに達したとき、即ち酸素センサ8の出力が反転したとき、算出される酸素放出量は符号11で示す量になっている。また、酸素センサ8の出力が判定値13bに達したとき、即ち酸素センサ8の出力が反転したとき、算出される酸素吸蔵量は符号12で示す量になっている。この場合、酸素放出量11は、触媒2が吸蔵している酸素を概ね完全に放出した際の酸素量であり、酸素吸蔵量12は、触媒2が概ね限界まで酸素を吸蔵したときの酸素量である。以下では、酸素放出量11を「OSAR」と表記し、酸素吸蔵量12を「OSAL」と表記し、これらをまとめて単に「酸素吸蔵量OSA」とも表記する(酸素放出量は酸素吸蔵量に相当するためである)。なお、酸素放出量OSARは、A/Fセンサ7の出力における領域14aの面積に相当し、酸素吸蔵量OSALは、A/Fセンサ7の出力における領域14bの面積に相当する。
ECU3は、酸素センサ8の出力が判定値13aに達したときに酸素放出量OSARを計算すると共に、酸素センサ8の出力が判定値13bに達したときに酸素吸蔵量OSALを計算する。詳しくは、ECU3は、A/Fセンサ7の出力に基づいて、酸素放出量OSAR及び酸素吸蔵量OSALを求める。例えば、ECU3は、時刻t1bにおいて、A/Fセンサ7の出力における領域14aの面積に基づいて酸素放出量OSARを算出し、時刻t1cにおいて、A/Fセンサ7の出力における領域14bの面積に基づいて酸素放出量OSALを算出する。
そして、ECU3は、算出された酸素放出量OSAR及び酸素吸蔵量OSALに基づいて、触媒2が吸蔵することができる酸素量(以下、この量を「酸素吸蔵能力Cmax」と表記する)を算出する。詳しくは、ECU3は、酸素放出量OSARと酸素吸蔵量OSALの平均値を酸素吸蔵能力Cmaxとする。例えば、ECU3は、時刻t1cに、領域14aの面積基づいて算出された酸素放出量OSARと、領域14bの面積に基づいて算出された酸素吸蔵量OSALとから酸素吸蔵能力Cmaxを求める。更に、ECU3は、時刻t1dに、領域14bの面積に基づいて算出された酸素放出量OSARと、領域14cの面積に基づいて算出された酸素吸蔵量OSALとから酸素吸蔵能力Cmaxを求める。即ち、ECU3は、酸素センサ8の出力が反転するごとに、酸素吸蔵量OSAを計算すると共に、前回得られた酸素吸蔵量OSAと今回得られた酸素吸蔵量OSAに基づいて酸素吸蔵能力Cmaxを算出する。
このようにして求められた酸素吸蔵能力Cmaxに基づいて、ECU3は、触媒2の劣化診断を行う。例えば、ECU3は、求められた酸素吸蔵能力Cmaxが所定値以上である場合に、触媒2が正常であると判定し、酸素吸蔵能力Cmaxが所定値未満である場合には、触媒2が劣化していると判定する。
ここで、酸素センサ8が周期異常を発生する場合について説明する。通常は、酸素センサ8は、周期的に出力が反転する(図2(b)参照)。しかし、酸素センサ8が、周期的に出力が反転せずに、周期的なタイミングから外れたタイミングで、物理的には酸素放出量OSARと酸素吸蔵量OSALが本来の値に到達する前に、時間幅の小さな出力(以下、「短時間幅出力」と呼ぶ。)を発生する場合がある。言い換えると、酸素センサ8が、周期的なタイミングから外れたタイミングで、出力が反転する場合がある。このような酸素センサ8の周期異常は、触媒2の酸素吸蔵及び酸素放出の作用によって生じているのではなく、酸素センサ8のガス当たり不良、又は酸素センサ8の出力特性などが原因で生じていると考えられる。即ち、酸素センサ8の周期異常は、触媒2が正常である場合にも生じる。
上記した酸素センサ8の周期異常の具体例を図3に示す。図3(a)はA/Fセンサ7の出力を示し、図3(b)は酸素センサ8の出力を示し、図3(c)は計算された酸素吸蔵能力Cmaxを示しており、それぞれ横軸は時間を示している。
図3(b)に示すように、酸素センサ8は、符号15aに示すような、周期的なタイミングから外れたタイミングで短時間幅出力を発生し、その出力が反転していることがわかる。即ち、酸素センサ8は周期異常を発生しているといえる。この場合、A/Fセンサ7の出力は、図3(a)に示すように、酸素センサ8の出力に対応して変化している。
また、酸素センサ8の周期異常が発生した場合、計算される酸素吸蔵能力Cmaxは、図3(c)中の符号15bで示すように、明らかに小さな量が計算されていることがわかる。このように、酸素センサ8の周期異常が発生した際に求められた酸素吸蔵能力Cmaxは、触媒2が酸素を吸蔵可能な量を正確に示すものではないといえるため、この量を用いて触媒2の劣化診断を行うことは好ましくない。
[周期異常の判定方法]
次に、上記のような酸素センサ8の周期異常を判定する方法について説明する。なお、周期異常判定は、ECU3が行う。
まず、周期異常の判定方法の基本概念について簡単に説明する。ECU3は、酸素センサ8の出力が反転するたびに、言い換えると、空燃比をリッチからリーン又はリーンからリッチに切り替えるごとに、A/Fセンサ7の出力に基づいて酸素吸蔵量OSA(酸素放出量OSARと酸素吸蔵量OSALを含む)を求める。ECU3は、過去に算出された酸素吸蔵量OSAの最大値を最大酸素吸蔵量OSAmaxとして記憶している。そして、ECU3は、求められた酸素吸蔵量OSAと、現在までに算出された最大酸素吸蔵量OSAmaxとを比較することによって、酸素センサ8が周期異常を発生しているか否かを判定する。
詳しくは、ECU3は、現在までに算出された最大酸素吸蔵量OSAmaxと、今回求められた酸素吸蔵量OSAとの差分を求め、求められた差分(絶対値を用いるものとする)が所定値(以下、この所定値を「周期異常判定値」と呼ぶ。)以上となった場合に、周期異常が発生していると判定する。この場合、ECU3は、「周期異常フラグ」をオンに設定する。周期異常フラグがオンになった場合には、求められた酸素吸蔵量OSAは正常値よりかなり小さい値であるため、酸素センサ8が周期異常を発生している可能性が高い。以上のように、ECU3は、酸素センサ8の周期異常判定手段として機能する。なお、周期異常判定値は、第1の所定値に対応する。
ここで、図4を用いて、酸素センサ8の周期異常判定の具体的な方法を説明する。図4(a)はA/Fセンサ7の出力を示し、図4(b)は周期異常フラグのオン/オフを示しており、それぞれ横軸は時間を示している。なお、図4は、触媒2の劣化診断を行うための空燃比制御の開始後の結果を示している。
図4(a)に示すように、A/Fセンサ7は、上記の空燃比制御の開始後、符号20a〜20fで示すような出力を示している。ECU3は、このようなA/Fセンサ7の出力に対して周期異常判定を行う。具体的には、ECU3は、空燃比をリッチからリーン又はリーンからリッチに切り替えるごとに、A/Fセンサ7の出力に基づいて算出される酸素吸蔵量OSAと、記憶している最大酸素吸蔵量OSAmaxとの差分を算出し、算出された差分が周期異常判定値以上であれば周期異常フラグをオンにする。なお、ECU3は、空燃比制御直後に得られる、A/Fセンサ7の符号20aで示す出力から求められる酸素吸蔵量OSAを周期異常判定には用いない。こうするのは、空燃比制御の開始直後は触媒2内に酸素がどの程度残留しているかが不明であるため、この場合に求められた酸素吸蔵量OSAは、触媒2が吸蔵可能な酸素量を正確に示すものではない可能性があるからである。
よって、ECU3は、A/Fセンサ7の符号20aで示す出力に対して周期異常判定を行わずに、A/Fセンサ7の符号20b〜20fで示す出力に対して順次周期異常判定を行う。具体的には、ECU3は、A/Fセンサ7の符号20b〜20fで示す出力に基づいて、詳しくは符号20b〜20fで示す出力が形成する面積に基づいて酸素吸蔵量OSAを算出する。
この場合、符号20b〜20eで示す出力から各々求められた酸素吸蔵量OSAは、最大酸素吸蔵量OSAmaxとの差分が周期異常判定値未満であるため、ECU3は、周期異常フラグをオンにしない。しかし、符号20fで示す出力に基づいて求められる酸素吸蔵量OSAと、最大酸素吸蔵量OSAmaxとの差分は周期異常判定値以上となるため、ECU3は、符号20fで示す出力に基づく酸素吸蔵量OSAを計算した後に周期異常フラグをオンにする(時刻t2)。なお、ECU3は、基本的には、時刻t2以降に算出された酸素吸蔵量OSAと最大酸素吸蔵量OSAmaxとの差分が周期異常判定値以下となっても、周期異常フラグをオンからオフに切り替えない。一度周期異常が発生した場合には、続けて周期異常が発生する可能性が高いからである。
以上のように、ECU3は、現在までに算出された最大酸素吸蔵量OSAmaxを用いて、酸素センサ8が周期異常を発生しているか否かを判定する。これにより、ECU3は、過去の結果に基づいて酸素センサ8の周期異常を適切に検出することが可能となる。更に、ECU3は、一度周期異常が発生した場合には、その後も続けて周期異常が発生することを想定して、周期異常フラグをオンに切り替えた後は周期異常フラグをオンに設定し続ける。そして、ECU3は、この周期異常フラグがオンであるかオフであるかに基づいて、後述する触媒劣化診断方法を実行する。これにより、ECU3は、周期異常フラグをオンに切り替えた以降に得られる複数の出力などが酸素センサ8の周期異常の影響を受けていることを考慮に入れて、適切な触媒2の劣化診断を行うことが可能となる。よって、触媒2の劣化診断を正確に行うことが可能となる。
上記した最大酸素吸蔵量OSAmaxは、基本的には、前回のトリップ(「トリップ」とは、内燃機関1の始動時から停止時までの期間をいう。)において得られた最大の酸素吸蔵量OSAが用いられる。即ち、ECU3は、最大酸素吸蔵量OSAmaxを図示しないメモリなどに記憶している。
なお、本発明は、最大酸素吸蔵量OSAmaxを、前回のトリップにおいて得られた最大酸素吸蔵量に設定することに限定はされず、この代わりに、過去の複数のトリップにおいて得られた最大酸素吸蔵量の平均値に設定してもよい。
更に、本発明においては、現在のトリップ中に最大酸素吸蔵量OSAmaxを変更せずに継続して用いる、即ち最大酸素吸蔵量OSAmaxを固定値として用いることに限定はされない。最大酸素吸蔵量OSAmaxを固定値として用いないで、記憶している最大酸素吸蔵量OSAmax以上の酸素吸蔵量OSAが得られた場合に、この得られた酸素吸蔵量OSAを新たな最大酸素吸蔵量OSAmaxとして記憶することとしてもよい。即ち、最大酸素吸蔵量OSAmaxを、現在のトリップ中に得られた酸素吸蔵量OSAによって更新してもよい。この場合、空燃比制御の開始時に用いられる最大酸素吸蔵量OSAmaxは、前回のトリップにおける最大酸素吸蔵量OSAmax、又は過去の複数のトリップにおいて得られた最大酸素吸蔵量OSAmaxの平均値が用いられる。具体的には、ECU3は、酸素吸蔵量OSAを求めるごとに、その値を、既に記憶している最大酸素吸蔵量OSAmaxと比較し、求められた酸素吸蔵量OSAが最大酸素吸蔵量OSAmax以上となったときに最大酸素吸蔵量OSAmaxを更新し、更新された最大酸素吸蔵量OSAmaxを用いて以後の周期異常判定を行う。
最大酸素吸蔵量OSAmaxは、いわゆるバッテリクリア時(例えば、車両10内の図示しないバッテリを入れ替えた時)にリセットされる。即ち、ECU3内に記憶された最大酸素吸蔵量OSAmaxは、バッテリクリア時には消去されることとなる。
なお、周期異常判定値は、劣化している触媒2においては取り得ない値、具体的には少なくとも劣化している触媒2から算出され得る値よりも大きい値に設定される。一例としては、実験的に複数の劣化している触媒2から酸素吸蔵量OSAと最大酸素吸蔵量OSAmaxとの差分を算出して、これらの差分が取り得る範囲を求め、周期異常判定値は、この範囲よりも大きな値に設定される。周期異常判定値をこのような値に設定するのは、劣化している触媒2におけるA/Fセンサ7の出力などに対して、不当に周期異常フラグをオンにしてしまうことを防止するためである。これにより、劣化している触媒2に対する劣化診断精度の低下を防止することが可能となる。
更に、上記の周期異常判定値は、定数に設定することに限定はされず、内燃機関1内の状態に応じて変更される変数としてもよい。例えば、周期異常判定値は、触媒2の温度又は吸入空気量のいずれか一方、若しくは触媒2の温度及び吸入空気量の両方に基づいて変化する変数に設定することができる。
上記では、触媒2の酸素吸蔵量OSAに基づいて酸素センサ8の周期異常判定を行う実施形態について示したが、他の実施形態では、酸素吸蔵量OSAの代わりに、酸素センサ8の出力が反転するまでの間における積算吸入空気量に基づいて、酸素センサ8の周期異常判定を行うことができる。更に他の実施形態では、酸素センサ8の出力が反転するまでの時間(反転時間)に基づいて、酸素センサ8の周期異常判定を行うことができる。
[触媒劣化診断方法]
次に、酸素センサ8の周期異常フラグに基づいて行われる、触媒劣化診断方法について説明する。
(第1実施例)
まず、触媒劣化診断方法の第1実施例について説明する。第1実施例に係る触媒劣化診断方法は、ECU3によって実行される。
ECU3は、基本的には、酸素放出量OSARと酸素吸蔵量OSALに基づいて酸素吸蔵能力Cmaxを算出し、酸素吸蔵能力Cmaxによって触媒2の劣化診断を行う。詳しくは、ECU3は、この酸素吸蔵能力Cmaxが所定回数得られたところで、複数の酸素吸蔵能力Cmaxの平均値を算出し、この平均値が所定値(以下、この所定値を「劣化判定値」と呼ぶ。)以上であるか否かを判定することによって触媒2の劣化診断を行う。なお、周期異常フラグがオフである場合には、基本的には、算出された全ての酸素吸蔵能力Cmaxが劣化診断に用いられる。
第1実施例に係る触媒劣化診断方法においては、ECU3は、酸素センサ8に係る周期異常フラグがオンであり、且つ、求められた酸素吸蔵能力Cmaxが所定値(以下、この所定値を「過小判定値」と呼ぶ。)未満である場合には、この酸素吸蔵能力Cmaxを触媒2の劣化診断に用いない、即ち、その酸素吸蔵能力Cmaxを破棄する。言い換えると、酸素センサ8に係る周期異常フラグがオンである場合には、過小判定値以上である酸素吸蔵能力Cmaxのみを触媒2の劣化診断に採用する。このように、ECU3は、周期異常フラグがオンである場合には、求められた酸素吸蔵能力Cmaxを破棄するか又は採用するかを判定し、判定によって採用された酸素吸蔵能力Cmaxのみを用いて触媒2の劣化診断を行う。なお、過小判定値は、第2の所定値に対応する。
ここで、図5を用いて、第1実施例に係る触媒劣化診断方法について具体的に説明する。図5(a)はA/Fセンサ7の出力を示し、図5(b)は周期異常フラグのオン/オフを示し、図5(c)は有効Cmaxカウンタ(劣化診断に採用された酸素吸蔵能力Cmaxの数)を示しており、それぞれ横軸は時間を示している。
図5(a)に示すように、A/Fセンサ7は符号25a〜25hで示すような出力を発生している。前述したように、ECU3は、A/Fセンサ7の符号25a〜25hで示す出力に基づいて、詳しくは符号25a〜25hで示す出力が形成する面積に基づいて、各々の酸素吸蔵量OSAを算出する。この場合、符号25aで示す出力に基づいて求められる酸素吸蔵量OSAと、最大酸素吸蔵量OSAmaxとの差分が周期異常判定値以上となるため、ECU3は、周期異常フラグをオンにする(時刻t3a)。
次に、ECU3は、時刻t3bにおいて、符号25aで示す出力に対応する酸素吸蔵量OSAと符号25bで示す出力に対応する酸素吸蔵量OSAとに基づいて、酸素吸蔵能力Cmaxを算出する。この場合、算出された酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値未満であるため、ECU3は、この酸素吸蔵能力Cmaxを破棄する。同様に、ECU3は、時刻t3cにおいて、符号25bで示す出力に対応する酸素吸蔵量OSAと符号25cで示す出力に対応する酸素吸蔵量OSAとに基づいて、酸素吸蔵能力Cmaxを算出する。ECU3は、時刻t3cにおいて算出される酸素吸蔵能力Cmaxも過小判定値未満であるため、これを破棄する。一方、時刻t3dでは、符号25dで示す出力に対応する酸素吸蔵量OSAが大きいために算出される酸素吸蔵能力Cmaxも大きな値となり、酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値以上となるため、ECU3は、この酸素吸蔵能力Cmaxは有効であるとして採用する。この場合、図5(c)に示すように、有効Cmaxカウンタがカウントアップされる。
ECU3は、このような手順によって、酸素吸蔵能力Cmaxの破棄又は採用の決定を繰り返し行う。これにより、ECU3は、時刻t3f、t3gにおいて算出された酸素吸蔵能力Cmaxを破棄し、時刻t3e、t3hにおいて算出された酸素吸蔵能力Cmaxを採用する。
そして、ECU3は、酸素吸蔵能力Cmaxが採用された回数が所定回数に達した時点で、得られた複数の酸素吸蔵能力Cmaxに基づいて触媒2の劣化診断を行うと共に、周期異常フラグをオンからオフに切り替える。例えば所定回数を3回と設定した場合、時刻t3hにおいて有効Cmaxカウンタが「3」となるため、ECU3は、時刻t3hにおいて、触媒2の劣化診断を行うと共に、周期異常フラグをオンからオフに切り替える。詳しくは、ECU3は、時刻t3hにおいて、時刻t3d、t3e、t3hにおいて採用された酸素吸蔵能力Cmaxに基づいて触媒2の劣化診断を行う。
以上のように、第1実施例に係る触媒劣化診断方法では、酸素センサ8が周期異常を発生している場合に、算出された酸素吸蔵能力Cmaxが破棄すべきものなのか採用すべきものなのかを、過小判定値を用いて判定して触媒2の劣化診断を行う。これにより、破棄すべき酸素吸蔵能力Cmaxを用いて劣化診断が行われないので、触媒2に対して誤った判定を下すことを防止することができる。更に、酸素センサ8が周期異常を発生していても、採用すべき酸素吸蔵能力Cmaxを用いて劣化診断を行うので、結果的に、触媒2の劣化診断に要する時間を短縮することが可能となる。このように、第1実施例に係る触媒劣化診断方法によれば、酸素センサ8が周期異常を発生していても、正確且つ迅速に触媒2の劣化診断を行うことができる。これにより、触媒2を劣化診断するために、酸素センサ8の周期異常が発生しないような状態に変化させる(例えば、内燃機関1を高負荷域に設定する)必要がない。言い換えると、第1実施例に係る触媒劣化診断方法によれば、触媒2の劣化診断実行範囲は、周期異常が発生し難い高負荷域などに限定されることはない。
なお、酸素吸蔵能力Cmaxの破棄/採用の決定に用いる過小判定値は、触媒2の劣化診断に用いる劣化判定値よりも大きな値を用いる。言い換えると、過小判定値は、少なくとも、劣化している触媒2から算出され得る酸素吸蔵能力Cmaxよりも大きな値を用いる。これにより、周期異常により劣化している触媒2から得られる値と同等未満まで縮小した酸素吸蔵能力Cmaxを用いて、触媒2の劣化診断が行われてしまうことを防止することができる。
なお、上記のように過小判定値を劣化判定値よりも大きな値に設定すると、酸素吸蔵能力Cmaxを破棄する可能性が高くなるため、触媒2の劣化判定に用いる酸素吸蔵能力Cmaxを所定回数採用するまでに時間がかかってしまう場合がある。この場合、触媒2の劣化診断のために行う空燃比制御を長時間実行すると、エミッションの低下やドライバビリティーの悪化などを招く可能性がある。したがって、触媒2の劣化判定を迅速に行いたい場合などには、酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値未満であっても、酸素吸蔵能力Cmaxが劣化判定値よりも大きな値である場合には、当該酸素吸蔵能力Cmaxを破棄せずに用いることもできる。例えば、酸素センサ8の周期異常が発生しているが、触媒2が正常である場合には、算出される酸素吸蔵能力Cmaxは、必ず実際に触媒2が吸蔵可能な酸素量よりも小さな値が算出されるはずであり、これよりも大きな値が算出されることはありえない。そのため、酸素センサ8の周期異常が発生していても、酸素吸蔵能力Cmaxが劣化判定値よりも大きな値である場合には、当該酸素吸蔵能力Cmaxに基づいて触媒2が劣化していない(正常である)との判定を下すこともできる。以上のように酸素吸蔵能力Cmaxの採用/破棄を決定することにより、周期異常により劣化している触媒2から得られる値と同程度の酸素吸蔵能力Cmaxを採用してしまうことなく、触媒2に対する劣化診断の機会を増加させることができる。即ち、酸素吸蔵能力Cmaxを採用した回数が所定回数に達するまでの時間を短縮することができる。
また、上記のように過小判定値を劣化判定値よりも大きな値に設定する代わりに、過小判定値を劣化判定値と概ね同一の値に設定してもよい。これによっても、劣化している触媒2から算出される酸素吸蔵能力Cmaxが採用されてしまうことなく、酸素吸蔵能力Cmaxを採用した回数が所定回数に達するまでの時間を短縮することができる。
(第2実施例)
次に、第2実施例に係る触媒劣化診断方法について説明する。第2実施例に係る触媒劣化診断方法は、ECU3によって実行される。また、第2実施例に係る触媒劣化診断方法は、基本的には、前述した第1実施例に係る触媒劣化診断方法に基づいて実行される。
前述の第1実施例に係る触媒劣化診断方法によれば、基本的には、周期異常フラグがオフである場合に算出された酸素吸蔵能力Cmaxが破棄されることはない。しかしながら、最大酸素吸蔵量OSAmaxが比較的小さい値に設定されていた場合(例えばバッテリクリア後に触媒2の劣化診断を行う場合)には、得られた酸素吸蔵量OSAが小さくても周期異常フラグがオンとならないため、求められた酸素吸蔵能力Cmaxは破棄されずに採用されてしまう。このような場合に得られた酸素吸蔵能力Cmaxは、正確に触媒2の能力を示すものではない可能性があるため、これに基づいて触媒2の劣化診断を行うのは好ましくない。
したがって、第2実施例に係る触媒劣化診断方法では、周期異常フラグがオフであるときに算出された、触媒2の劣化診断に用いるべきでない酸素吸蔵能力Cmaxを、周期異常フラグがオンに切り替わった際に破棄する。具体的には、ECU3は、周期異常フラグがオフであるときに算出された、上記の過小判定値未満である酸素吸蔵能力Cmaxを、周期異常フラグがオフからオンに切り替わった際に破棄する。なお、周期異常フラグがオフからオンに切り替わった際に酸素吸蔵能力Cmaxを破棄する理由は、周期異常フラグがオフであるときに、過小判定値未満である酸素吸蔵能力Cmaxが算出されるような小さな酸素吸蔵量OSAが得られていても、この後に正確な酸素吸蔵量OSAが得られたときには、当該酸素吸蔵量OSAと最大酸素吸蔵量OSAmaxとの差分が周期異常判定値以上となるので、周期異常フラグがオフからオンに切り替わるためである。
ここで、第2実施例に係る触媒劣化診断方法について、図6を用いて具体的に説明する。図6(a)はA/Fセンサ7の出力を示し、図6(b)は周期異常フラグのオン/オフを示し、図6(c)は有効Cmaxカウンタを示しており、それぞれ横軸は時間を示している。
図6(a)に示すように、A/Fセンサ7は符号28a〜28hで示すような出力を発生している。この場合、符号28a、28b、28cで示すA/Fセンサ7の出力から求められる酸素吸蔵量OSAは比較的小さい値であるにも拘らず、最大酸素吸蔵量OSAmaxが小さいために、ECU3は、周期異常フラグをオフからオンに切り替えない(時刻t4a、t4b)。したがって、ECU3は、算出された酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値未満であっても、酸素吸蔵能力Cmaxを採用する。
しかし、時刻t4cでは、符号28dで示すA/Fセンサ7の出力から求められる酸素吸蔵量OSAが最大酸素吸蔵量OSAmaxを超え、酸素吸蔵量OSAと最大酸素吸蔵量OSAmaxとの差分が周期異常判定値以上となるため、ECU3は、周期異常フラグをオフからオンに切り替える。この際に、ECU3は、時刻t4c以前(即ち、周期異常フラグがオフであるとき)において採用された酸素吸蔵能力Cmaxを、このまま触媒2の劣化診断に用いても良いか否かを判定する。この場合には、時刻t4a、t4bで得られた酸素吸蔵能力Cmaxは過小判定値未満であるため、ECU3は、これらの2回分の酸素吸蔵能力Cmaxを破棄し、有効Cmaxカウンタを「0」にする。同時に、ECU3は、時刻t4cで算出された酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値以上であるため、この酸素吸蔵能力Cmaxを採用する。よって、図6(c)に示すように、有効Cmaxカウンタは、「0」から「1」にカウントアップされる(時刻t4c)。
そして、ECU3は、時刻t4d、t4gにおいて算出された酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値以上となるため、これらの酸素吸蔵能力Cmaxを採用する。更に、時刻t4gにおいて、有効Cmaxカウンタが所定回数(3回)に達するため、ECU3は、触媒2の劣化診断を行う。具体的には、ECU3は、時刻t4c、t4e、t4gにおいて採用された酸素吸蔵能力Cmaxに基づいて触媒2の劣化診断を行う。
以上のように、第2実施例に係る触媒劣化診断方法によれば、周期異常フラグがオフであるときに得られた過小判定値未満の酸素吸蔵能力Cmaxを、周期異常フラグがオンに切り替わったときに破棄するため、触媒2の劣化診断を正確に行うことができる。
(第3実施例)
次に、第3実施例に係る触媒劣化診断方法について説明する。第3実施例に係る触媒劣化診断方法は、ECU3によって実行される。また、第3実施例に係る触媒劣化診断方法も、基本的には、前述した第1実施例及び第2実施例に係る触媒劣化診断方法に基づいて行われる。
上記の第1実施例に係る触媒劣化診断方法によれば、周期異常フラグがオンである場合には、得られた酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値未満であれば、この酸素吸蔵能力Cmaxは破棄される。しかしながら、得られた酸素吸蔵能力Cmaxが連続して過小判定値未満である場合には、酸素吸蔵能力Cmaxが破棄され続けるため、所定回数分の酸素吸蔵能力Cmaxを得るまでに時間がかかってしまう。特に、例えば前回のトリップで正常であると診断された後、触媒2が異常劣化(例えば、溶損)した場合には、酸素吸蔵能力Cmaxが連続して破棄される可能性が高い。そのため、酸素吸蔵能力Cmaxを破棄し続けてしまうと、劣化している触媒2に対して、劣化しているとの判定を下すのに時間がかかってしまう場合がある。
そこで、第3実施例では、酸素吸蔵能力Cmaxが破棄され続けた場合には、触媒2の劣化診断が促進されるような触媒劣化診断方法を行う。詳しくは、ECU3は、酸素吸蔵能力Cmaxを連続して破棄した回数が所定回数に達した際に、周期異常フラグをオフにすると共に、その他の変数をリセット(クリア)する。これにより、触媒2に対して劣化診断を行う機会が増加するため、劣化している触媒2を検出する頻度が高くなる。
ここで、第3実施例に係る触媒劣化診断方法について、図7を用いて具体的に説明する。図7(a)はA/Fセンサ7の出力を示し、図7(b)は周期異常フラグのオン/オフを示し、図7(c)は有効Cmaxカウンタを示しており、それぞれ横軸は時間を示している。
図7(a)に示すように、A/Fセンサ7は符号30a〜30gで示すような出力を発生している。この場合、ECU3は、時刻t5aにおいて、符号30aで示すA/Fセンサ7の出力から算出された酸素吸蔵量OSAと最大酸素吸蔵量OSAmaxとの差分が周期異常判定値以上となるため、周期異常フラグをオフからオンに切り替える。更に、ECU3は、時刻t5aにおいて算出された酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値未満であるため、当該酸素吸蔵能力Cmaxを破棄する。
そして、ECU3は、時刻t5b〜t5gにおいても同様に、算出された酸素吸蔵能力Cmaxを破棄する。これにより、時刻t5gにおいて、連続して酸素吸蔵能力Cmaxを破棄した回数が所定回数(この場合、「7回」)に達するため、ECU3は、周期異常フラグをオンからオフに切り替える。更に、ECU3は、時刻t5gにおいて、記憶している最大酸素吸蔵量OSAmaxをリセットして、現在のトリップにおいて得られた最大の酸素吸蔵量OSAによって更新する。その他にも、ECU3は、有効Cmaxカウンタなどもリセットする(「0回」とする)。
このように、第3実施例に係る触媒劣化診断方法では、酸素吸蔵能力Cmaxを連続して破棄し続けた場合には、周期異常フラグをオンからオフに切り替える。これにより、算出された酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値未満であっても、当該酸素吸蔵能力Cmaxを採用することが可能となる。以上により、第3実施例に係る触媒劣化診断方法によれば、前述のように急激に劣化した触媒2も即座に検出することが可能となる。
なお、上記では、酸素吸蔵能力Cmaxを連続して破棄した回数に基づいて行う触媒劣化診断方法について示したが、連続して破棄した回数の代わりに、周期異常フラグがオンであるときに酸素吸蔵能力Cmaxを破棄した回数の積算値に基づいて触媒劣化診断を行ってもよい。この場合も、酸素吸蔵能力Cmaxを破棄した回数の積算値が所定回数に達したら、周期異常フラグなどをリセットする。
(第4実施例)
次に、第4実施例に係る触媒劣化診断方法について説明する。第4実施例に係る触媒劣化診断方法は、ECU3によって実行される。また、第4実施例に係る触媒劣化診断方法も、基本的には、前述した第1実施例乃至第3実施例に係る触媒劣化診断方法に基づいて行われる。
第4実施例に係る触媒劣化診断方法は、主に、バッテリクリア後に行われる。バッテリクリア直後には、ECU3は最大酸素吸蔵量OSAmaxを記憶していないため、ECU3は、以下のような処理を行う。
第4実施例に係る触媒劣化診断方法について、図8を用いて具体的に説明する。図8(a)はA/Fセンサ7の出力を示し、図8(b)は周期異常フラグのオン/オフを示し、図8(c)は有効Cmaxカウンタを示しており、それぞれ横軸は時間を示している。
図8(a)に示すように、A/Fセンサ7は符号32a〜32gで示すような出力を発生している。この場 合、時刻t6aにおいて、触媒2の劣化診断のための空燃比制御が開始されている。したがって、ECU3は、時刻t6bでは、符号32aで示す出力から酸素吸蔵量OSAを算出しない。更に、ECU3は、時刻t6bでは、酸素吸蔵能力Cmaxも算出しない。
時刻t6cでは、ECU3は、符号32bで示す出力から酸素吸蔵量OSAを算出する。本例では、空燃比制御はバッテリクリア後に行われているため、ECU3は、最大酸素吸蔵量OSAmaxを未だ記憶していないので、時刻t6cにおいて算出された酸素吸蔵量OSAを最大酸素吸蔵量OSAmaxとして記憶する。よって、ECU3は、時刻t6cでは、最大酸素吸蔵量OSAmaxと、得られた酸素吸蔵量OSAとを比較する処理、即ち酸素センサ8の周期異常の判定処理を行わない。更に、時刻t6cでは、時刻t6bにおいて酸素吸蔵量OSAが求められていないため、ECU3は、酸素吸蔵能力Cmaxを算出しない。
時刻t6d、t6eにおいて算出される酸素吸蔵量OSAは小さいが、時刻t6cにおいて算出された最大酸素吸蔵量OSAmaxが小さいために、ECU3は、周期異常フラグをオフからオンに切り替えない。よって、ECU3は、時刻t6d、t6eでは、算出した酸素吸蔵能力Cmaxを採用する。
時刻t6fでは、その時点で記憶している最大酸素吸蔵量OSAmaxを超える酸素吸蔵量OSAが算出され、酸素吸蔵量OSAと最大酸素吸蔵量OSAmaxとの差分が周期異常判定値以上となるため、ECU3は、周期異常フラグをオフからオンに切り替える。これと同時に、時刻t6d、t6eで得られた酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値未満であるため、ECU3は、これらの2回分の酸素吸蔵能力Cmaxを破棄し、有効Cmaxカウンタを「0」にする。同時に、時刻t6fにおいて、ECU3は、時刻t6fで算出した酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値以上となるため、この酸素吸蔵能力Cmaxを採用する。よって、有効Cmaxカウンタは、「0」から「1」にカウントアップされる。
そして、時刻t6g、t6hにおいて算出した酸素吸蔵能力Cmaxが過小判定値以上となるため、ECU3は、これらの酸素吸蔵能力Cmaxを採用する。更に、ECU3は、時刻t6hにおいて有効Cmaxカウンタが所定回数(3回)に達するため、触媒2の劣化診断を実行する。
以上のように、第4実施例に係る触媒劣化診断方法によれば、バッテリクリア後においても、触媒2の劣化診断に用いるべき酸素吸蔵能力Cmaxを適切に採用することによって、触媒2の劣化診断を正確に行うことができる。