JP4474817B2 - 内燃機関の触媒劣化検出装置 - Google Patents

内燃機関の触媒劣化検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の触媒劣化検出装置に係り、特に、内燃機関の排気ガスを浄化する触媒の劣化を検出するための触媒劣化検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車載用内燃機関の排気通路には、排気ガスを浄化するための触媒が配置される。この触媒は、適量の酸素を吸蔵しておく能力を有しており、排気ガス中にHCやCOなどの未燃成分が含まれている場合は、吸蔵している酸素を用いてそれらの成分を酸化する。一方、排気ガス中にNOx等の酸化物が含まれている場合、上記の触媒は、それらの物質を還元し、その結果生じた酸素を吸蔵する。
【0003】
排気通路に配置される触媒は、このようにして排気ガスの浄化を図る。このため、その浄化能力は、酸素の吸蔵能力に大きく影響される。従って、触媒の浄化能力の劣化状態は、その触媒が吸蔵し得る酸素の最大量、すなわち、酸素吸蔵容量により判断することができる。
【0004】
従来、例えば特開平5−133264号公報には、内燃機関に供給される混合気の空燃比を強制的にリッチまたはリーンとすることで、排気通路に配置された触媒の酸素吸蔵容量を検出する装置が開示されている。空燃比がリッチに制御されている間は、HCやCOなどの未燃成分を含む酸素不足の排気ガスが触媒に供給される。このような排気ガスが供給されると、触媒は、吸蔵している酸素を放出して排気ガスを浄化しようとする。このため、長期に渡ってその状態が継続されると、やがて触媒は、全ての酸素を放出して、もはやHCやCOを酸化できない状態となる。以下、この状態を「最小酸素吸蔵状態」と称す。
【0005】
一方、混合気の空燃比がリーンに制御されている間は、NOxを含む酸素過多の排気ガスが触媒に供給される。このような排気ガスが供給されると、触媒は、排気ガス中の過剰な酸素を吸蔵することで、排気ガスを浄化しようとする。このため、長期に渡ってその状態が継続されると、やがて触媒は、酸素吸蔵容量一杯に酸素を吸蔵し、もはやNOxを浄化できない状態となる。以下、この状態を「最大酸素吸蔵状態」と称す。
【0006】
上記従来の装置は、上述した最小酸素吸蔵状態と最大酸素吸蔵状態とが繰り返し実現されるように混合気の空燃比を制御する。そして、最小酸素吸蔵状態から最大酸素吸蔵状態へ状態が遷移する過程で触媒に吸蔵される酸素の量を積算することで、或いは、その逆の状態遷移が生ずる過程で触媒から放出される酸素の量を積算することで、酸素吸蔵容量を求める。そして、上記従来の装置は、このようにして求めた酸素吸蔵容量が所定の判定値より大きいか否かに基づいて、触媒が正常であるか、或いは劣化しているかを判断する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の装置において、混合気の空燃比は、触媒が最大酸素吸蔵状態となった後にリーンからリッチに切り替えられる。また、その空燃比は、触媒が最小酸素吸蔵状態になった後にリッチからリーンに切り替えられる。前者の切り替えが行われた後、ある程度の期間は、触媒に対して酸素過多の排気ガスが供給され続ける。このため、その期間中は、触媒の下流に、酸素過多の未浄化の排気ガスが流出する。同様に、後者の切り替えが行われた後、ある程度の期間は、触媒の下流に、酸素不足の未浄化の排気ガスが流出する。
【0008】
上記の如く触媒の下流に流出してくる未浄化の排気ガスが大気に放出されるのを防ぐ手法としては、例えば、その触媒の下流に下流側触媒を配置することが考えられる。このような構造をとれば、上流側の触媒から流出してくる未浄化の排気ガスを、下流側触媒で処理することで、排気エミッションの悪化を有効に防止することができる。
【0009】
しかし、下流側触媒が配置されていても、その下流側触媒がほぼ容量一杯に酸素を吸蔵しているときに上流側の触媒から酸素過多の排気ガスが流出してくれば、その排気ガスは下流側触媒を通過して大気に放出されてしまう。同様に、下流側触媒がほぼ完全に酸素を放出している状況下で、上流側の触媒から酸素不足の排気ガスが流出してくれば、その排気ガスは下流側触媒でも浄化されずに大気に放出されてしまう。
【0010】
このように、空燃比を強制的に振動させて触媒の劣化判定を行おうとした場合、その判定の対象である触媒の下流に更に下流側触媒を配置しただけでは、劣化判定の過程で排気エミッションが悪化するのを完全に防止することはできない。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、排気エミッションを大きく悪化させることなく触媒の劣化判定を完了させることのできる内燃機関の触媒劣化検出装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の触媒劣化検出装置であって、
内燃機関の排気通路に配置される上流側触媒と、
前記上流側触媒の下流に配置される下流側触媒と、
前記上流側触媒と前記下流側触媒との間で排気ガスの浄化程度を検出する浄化程度検出センサと、
前記浄化程度検出センサの出力に基づいて、前記上流側触媒の下流に酸素過多の排気ガスが流出してくる最大酸素吸蔵状態を検出する手段と、
前記浄化程度検出センサの出力に基づいて、前記上流側触媒の下流に酸素不足の排気ガスが流出してくる最小酸素吸蔵状態を検出する手段と、
前記最大酸素吸蔵状態が検出された後、前記最小酸素吸蔵状態が検出されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリッチに制御する強制リッチ手段と、
前記最小酸素吸蔵状態が検出された後、前記最大酸素吸蔵状態が検出されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリーンに制御する強制リーン手段と、
前記最大酸素吸蔵状態から前記最小酸素吸蔵状態への状態遷移の過程で前記上流側触媒が放出した酸素量、或いはその逆の状態遷移の過程で前記上流側触媒が吸蔵した酸素量を、前記上流側触媒の酸素吸蔵容量として検出する酸素吸蔵容量検出手段と、
前記酸素吸蔵容量に基づいて前記上流側触媒の劣化状態を判定する劣化判定手段と、
前記下流側触媒が、所定量以上の酸素を吸蔵することができ、かつ、所定量以上の酸素を放出することができる適正状態であるか否かを判別する適正状態判別手段と、
前記下流側触媒が前記適正状態である場合に限り、前記上流側触媒の劣化状態を判定するための一連の処理(前記強制リッチ手段または前記強制リーン手段による空燃比の制御を含む)の開始を許可する判定開始許可手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関の触媒劣化検出装置であって、前記下流側触媒が前記適正状態でない場合に、当該下流側触媒が前記適正状態となるように、内燃機関に供給する混合気の空燃比を制御する空燃比調整手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の内燃機関の触媒劣化検出装置であって、
前記適正状態判別手段は、前記下流側触媒が前記所定量以上の酸素を吸蔵することができない吸蔵限界状態を検出する吸蔵限界検出手段と、前記下流側触媒が前記所定量以上の酸素を放出することができない放出限界状態を検出する放出限界検出手段とを含み、
前記空燃比調整手段は、前記下流側触媒が前記吸蔵限界状態である場合に、前記適正状態が実現されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリッチにするリッチ側調整手段と、前記下流側触媒が前記放出限界状態である場合に、前記適正状態が実現されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリーンにするリーン側調整手段とを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の触媒劣化検出装置であって、
前記上流側触媒の酸素吸蔵容量が所定数検出されるまで、前記強制リッチ手段と前記強制リーン手段とに交互に空燃比を制御させる制御繰り返し手段を備え、前記劣化判定手段は、前記所定数の酸素吸蔵容量に基づいて前記上流側触媒の劣化状態を判定し、更に、
前記上流側触媒の劣化状態を判定するための一連の処理が開始された後、前記所定数の酸素吸蔵容量が検出される前に、前記下流側触媒が前記適正状態から外れた場合に、当該下流側触媒が前記適正状態となるように、前記強制リッチ手段の制御パラメータ、および前記強制リーン手段の制御パラメータの少なくとも一方を修正する強制空燃比修正手段を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、内燃機関の触媒劣化検出装置であって、
内燃機関の排気通路に配置される上流側触媒と、
前記上流側触媒の下流に配置される下流側触媒と、
前記上流側触媒と前記下流側触媒との間で排気ガスの浄化程度を検出する浄化程度検出センサと、
前記浄化程度検出センサの出力に基づいて、前記上流側触媒の下流に酸素過多の排気ガスが流出してくる最大酸素吸蔵状態を検出する手段と、
前記浄化程度検出センサの出力に基づいて、前記上流側触媒の下流に酸素不足の排気ガスが流出してくる最小酸素吸蔵状態を検出する手段と、
前記最大酸素吸蔵状態が検出された後、前記最小酸素吸蔵状態が検出されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリッチに制御する強制リッチ手段と、
前記最小酸素吸蔵状態が検出された後、前記最大酸素吸蔵状態が検出されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリーンに制御する強制リーン手段と、
前記最大酸素吸蔵状態から前記最小酸素吸蔵状態への状態遷移の過程で前記上流側触媒が放出した酸素量、或いはその逆の状態遷移の過程で前記上流側触媒が吸蔵した酸素量を、前記上流側触媒の酸素吸蔵容量として検出する酸素吸蔵容量検出手段と、
前記酸素吸蔵容量に基づいて前記上流側触媒の劣化状態を判定する劣化判定手段と、
前記下流側触媒が、所定量以上の酸素を吸蔵することができ、かつ、所定量以上の酸素を放出することができる適正状態であるか否かを判別する適正状態判別手段と、
前記下流側触媒が前記適正状態から外れている場合に、当該下流側触媒が前記適正状態となるように、前記強制リッチ手段の制御パラメータ、および前記強制リーン手段の制御パラメータの少なくとも一方を修正する強制空燃比修正手段と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5の何れか1項記載の内燃機関の触媒劣化検出装置であって、
前記適正状態判別手段は、
前記下流側触媒の下流で排気ガスの浄化程度を検出する第2浄化程度検出センサと、
前記第2浄化程度検出センサの出力と、排気ガスが酸素過多であることを表す第1判定値とを比較する第1判定手段と、
前記第2浄化程度検出センサの出力と、排気ガスが酸素不足であることを表す第2判定値とを比較する第2判定手段と、
前記第2浄化程度検出センサの出力が、前記第1判定値と前記第2判定値とを両端値とする適正範囲に収まる場合に、前記下流側触媒が前記適正状態であると判別する判別手段と、
を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至5の何れか1項記載の内燃機関の触媒劣化検出装置であって、
前記適正状態判別手段は、
前記浄化程度検出センサの出力に基づいて、前記下流側触媒に吸蔵される酸素量、または前記下流側触媒から放出される酸素量を推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された酸素量を積算することで、前記下流側触媒に吸蔵されている酸素吸蔵積算量を算出する酸素吸蔵積算量算出手段と、
前記酸素吸蔵積算量が、第1積算値と第2積算値とを両端値とする適正範囲に収まる場合に、前記下流側触媒が前記適正状態であると判別する判別手段と、を備え、
前記第1積算値は、前記下流側触媒が前記所定量以上の酸素を吸蔵することのできる酸素吸蔵積算量の上限値であり、
前記第2積算値は、前記下流側触媒が前記所定量以上の酸素を放出することのできる酸素吸蔵積算量の下限値であることを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の内燃機関の触媒劣化検出装置であって、
内燃機関のフューエルカットを検出するフューエルカット検出手段と、
前記フューエルカットの際に前記下流側触媒に吸蔵される酸素量を推定する第2推定手段と、を備え、
前記酸素吸蔵積算量算出手段は、前記推定手段により推定された酸素量と、前記第2推定手段により推定された酸素量とを積算することで、前記下流側触媒に吸蔵されている酸素吸蔵積算量を算出することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0020】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の触媒劣化検出装置を搭載する内燃機関10およびその周辺の構造を説明するための図である。内燃機関10には、吸気通路12および排気通路14が連通している。吸気通路12は、上流側の端部にエアフィルタ16を備えている。エアフィルタ16には、吸気温THA(すなわち外気温)を検出する吸気温センサ18が組み付けられている。
【0021】
エアフィルタ16の下流には、エアフロメータ20が配置されている。エアフロメータ20は、吸気通路12を流れる吸入空気量Gaを検出するセンサである。エアフロメータ20の下流には、スロットルバルブ22が設けられている。スロットルバルブ22の近傍には、スロットル開度TAを検出するスロットルセンサ24と、スロットルバルブ22が全閉となることでオンとなるアイドルスイッチ26とが配置されている。
【0022】
スロットルバルブ22の下流には、サージタンク28が設けられている。また、サージタンクの更に下流には、内燃機関10の吸気ポートに燃料を噴射するための燃料噴射弁30が配置されている。
【0023】
排気通路14には、上流側触媒32と下流側触媒34とが直列に配置されている。これらの触媒32,34は、ある程度の酸素を吸蔵することができ、排気ガス中にHCやCOなどの未燃成分が含まれている場合は、吸蔵している酸素を用いてそれらを酸化し、また、排気ガス中にNOxなどの酸化成分が含まれている場合は、それらを還元し、放出された酸素を吸蔵することができる。内燃機関10から排出される排気ガスは、触媒32,34の内部で上記の如く処理されることにより浄化される。
【0024】
排気通路14には、また、上流側触媒32の上流に空燃比センサ36が、上流側触媒32と下流側触媒34との間に第1Oセンサ38が、更に、下流側触媒34の下流に第2Oセンサ40がそれぞれ配置されている。空燃比センサ36は、排気ガス中の酸素濃度を検出するセンサである。一方、第1Oセンサ38および第2Oセンサ40は、排気ガス中の酸素濃度が所定値を越える前後で大きく出力を変化させるセンサである。空燃比センサ36によれば、上流側触媒32に流入する排気ガス中の酸素濃度に基づいて、内燃機関10で燃焼に付された混合気の空燃比を検出することができる。また、第1Oセンサ38によれば、上流側触媒32で処理された後の排気ガスが燃料リッチであるか(HC、COを含むか)、或いは燃料リーンであるか(NOxを含むか)を判断することができる。更に、第2Oセンサ40によれば、下流側触媒34を通過してきた排気ガスが燃料リッチであるか(HC、COを含むか)、或いは燃料リーンであるか(NOxを含むか)を判断することができる
【0025】
本実施形態の触媒劣化検出装置は、図1に示すように、ECU(Electronic Control Unit)42を備えている。ECU42には、上述した各種センサおよび燃料噴射弁30に加えて、内燃機関10の冷却水温THWを検出する水温センサ44などが接続されている。
【0026】
図1に示すシステムにおいて、内燃機関10から排出される排気ガスは、先ず、上流側触媒32で浄化される。そして、下流側触媒34では、上流側触媒32で浄化し切れなかった排気ガスの浄化処理が行われる。上流側触媒32は、内燃機関10に近い位置に配置されていることから、内燃機関10の始動後、早期に活性温度にまで昇温する。このため、上流側触媒32は、内燃機関10の始動直後から、高い排気ガス浄化能力を発揮する。このシステムにおいて、常に適正な排気ガス浄化能力を発揮させるためには、上流側触媒32の劣化を速やかに検知することが必要である。
【0027】
上流側触媒32は、上記の如く、燃料リッチな排気ガス中に酸素を放出し、また、燃料リーンな排気ガス中の過剰酸素を吸蔵することで排気ガスの浄化を図る。このため、上流側触媒32の浄化能力は、上流側触媒32が最大限吸蔵することのできる酸素量、すなわち、上流側触媒32の酸素吸蔵容量OSCが減少するに連れて低下する。そこで、本実施形態の触媒劣化検出装置は、上流側触媒32の酸素吸蔵容量OSCを検出し、その検出値に基づいて上流側触媒32の劣化を判定することとしている。
【0028】
図2は、本実施形態のシステムおいて、ECU42が、上流側触媒32の酸素吸蔵量OSCを検出するために実行する空燃比強制制御ルーチンのフローチャートである。
図2に示すルーチンでは、先ず、酸素吸蔵容量OSCの検出指令が生じているか否かが判別される(ステップ80)。
【0029】
その結果、酸素吸蔵容量OSCの検出指令が生じていないと判別された場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のサイクルが終了される。一方、OSCの検出指令が生じていると判別された場合は、次に、リーンフラグXleanがOFFからONに切り替わったかが判別される(ステップ82)。
【0030】
リーンフラグXleanは、第1Oセンサ38が、リーン判定値を越える出力(以下、「リーン出力」と称す)を発生している間ONとなるフラグである(図4、ステップ114参照)。従って、上記ステップ82の条件は、前回の処理サイクルから今回の処理サイクルにかけて、第1Oセンサ38の出力が、リーン判定値を下回る値からその判定値以上の値に変化した場合に成立する。図2に示すルーチンでは、この条件が成立すると、次に、混合気の空燃比をリッチ側の所定値に固定する制御が行われる(ステップ84)。
【0031】
一方、上記ステップ82において、リーンフラグXleanがOFFからONに切り替わっていないと判別された場合は、次に、リッチフラグがOFFからONに切り替わったかが判別される(ステップ86)。
【0032】
リッチフラグXrichは、第1Oセンサ38が、リッチ判定値を下回る出力(以下、「リッチ出力」と称す)を発生している間ONとなるフラグである(図4、ステップ118参照)。従って、上記ステップ86の条件は、前回の処理サイクルから今回の処理サイクルにかけて、第1Oセンサ38の出力が、リッチ判定値を上回る値からその判定値以下の値に変化した場合に成立する。図2に示すルーチンでは、この条件が成立すると、次に、混合気の空燃比をリーン側の所定値に固定する制御が行われる(ステップ88)。
【0033】
一方、上記ステップ86において、リッチフラグXrichがOFFからONに切り替わっていないと判別された場合は、従前用いられていた空燃比に合わせて、リッチ固定制御、或いはリーン固定制御が実行される。より具体的には、現在までの空燃比がリッチである場合は、上記ステップ84の場合と同様に、空燃比をリッチ側の所定値に固定する制御が行われる。一方、現在までの空燃比がリーンである場合は、上記ステップ88の場合と同様に、空燃比をリーン側の所定値に固定する制御が実行される(ステップ90)。
【0034】
図3は、ECU42が上述した図2に示すルーチンを実行することで実現される動作を説明するためのタイミングチャートである。より具体的には、図3(A)は、酸素吸蔵容量OSCの検出中に空燃比センサ36の出力に生ずる変化を示す。また、図3(B)は、その際に第1Oセンサ38の出力に生ずる変化を示す。
【0035】
上述した図2に示すルーチンによれば、酸素吸蔵容量OSCの検出指令が生ずると、その後ステップ90の処理により、混合気の空燃比がリッチ側或いはリーン側の所定値に固定される。図3は、時刻t0まで、その空燃比がリッチ側の所定値に固定されていた場合を示している。混合気の空燃比が燃料リッチに固定されている間、空燃比センサ36の出力は図3(A)に示すようにリッチ側に偏った値となる。この間、上流側触媒32は、吸蔵している酸素を排気ガス中に放出して、排気ガスの浄化を図っている。
【0036】
上流側触媒32に吸蔵されていた全ての酸素が放出されると、上流側触媒32の内部で排気ガスが浄化されなくなり、その下流側に、HCやCOを含む酸素不足の排気ガスが流出し始める。上流側触媒32の下流に酸素不足の排気ガスが流出し始めると、第1Oセンサ38の出力は、排気ガスが燃料リッチであることを表すリッチ判定値Vrより小さな値となる。このため、第1Oセンサ38の出力を監視すれば、上流側触媒32の下流に酸素不足の排気ガスが流出し始める時期、すなわち、上流側触媒32中の酸素が使い果たされた時期を検知することができる。図3(B)においては、時刻t0がその時期に相当している。
【0037】
第1Oセンサ38の出力がリッチ判定値Vrより小さくなると、その時点でリッチフラグXrichがONとなり、上記図2に示すステップ88の処理が実行される。その結果、混合気の空燃比は、強制的にリーン側の所定値に固定される。混合気の空燃比がリーン側の所定値に固定されると、空燃比センサ36の出力は、その後やがてリーン側に偏った値となる。図3(A)に示す波形は、時刻t1にその出力がリーン側に偏った値に反転した状態を示している。
【0038】
空燃比センサ36の出力が燃料リーン側に偏っている間、すなわち、上流側触媒32に酸素過多の排気ガスが流入している間、上流側触媒32は、排気ガス中の過剰な酸素を吸蔵することでその浄化を図る。この状態が継続すると、やがて上流側触媒32に酸素吸蔵容量OSC一杯の酸素が吸蔵され、上流側触媒32が排気ガスを浄化できない事態が生ずる。
【0039】
この事態が生ずると、以後、上流側触媒32の下流側にはNOxを含む酸素過多の排気ガスが流出し始める。上流側触媒32の下流に酸素過多の排気ガスが流出し始めると、第1Oセンサ38の出力は、排気ガスが燃料リーンであることを表すリーン判定値Vlより大きな値となる。このため、第1Oセンサ38の出力を監視すれば、上流側触媒32の下流に酸素過多な排気ガスが流出し始める時期、すなわち、上流側触媒32に酸素吸蔵容量OSC一杯の酸素が吸蔵された時期を検知することができる。図3(B)においては、時刻t2がその時期に相当している。
【0040】
第1Oセンサ38の出力がリーン判定値Vlより大きくなると、その時点でリーンフラグがONとなり、上記図2に示すステップ84の処理が実行される。その結果、混合気の空燃比は、強制的にリッチ側の所定値に固定される。混合気の空燃比がリッチ側の所定値に固定されると、空燃比センサ36の出力は、その後やがてリッチ側に偏った値となる。図3(A)に示す波形は、時刻t3にその出力がリーン側に偏った値に反転した状態を示している。
【0041】
以後、触媒劣化検出装置は、第1Oセンサ38の出力が再びリッチ判定値Vrより小さくなるまで混合気の空燃比を燃料リッチに維持する。そして、第1Oセンサ38の出力がVrより小さくなると(時刻t4)、上述した時刻t0以降の処理が繰り返し実行される。その結果、上流側触媒32が酸素を放出し切った状態(最小酸素吸蔵状態)と、上流側触媒32が酸素吸蔵容量OSC一杯に酸素を吸蔵した状態(最大酸素吸蔵状態)とが繰り返し実現される。
【0042】
上流側触媒32が単位時間当たりに吸蔵する酸素量、或いは上流側触媒32が単位時間当たりに放出する酸素量は、排気ガスの空燃比と吸入空気量Gaとに基づいて求めることができる。以下、酸素が吸蔵される場合を正、酸素が放出される場合を負として、それらの量をいずれも酸素吸蔵量O2ADと称する。本実施形態の触媒劣化検出装置は、最小酸素吸蔵状態から最大酸素吸蔵状態に移行する過程、或いはその逆の過程において、酸素吸蔵量O2ADを積算することで酸素吸蔵容量OSCを算出する。
【0043】
図4は、酸素吸蔵容量OSCを求めるために、その前提としてECU42が実行する吸蔵量演算ルーチンのフローチャートを示す。図4に示すルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行される定時割り込みルーチンである。
【0044】
図4に示すルーチンでは、先ず、空燃比ずれ量ΔA/Fが算出される(ステップ100)。
空燃比ずれ量ΔA/Fは、空燃比センサ36により検出される空燃比A/F、すなわち、上流側触媒32に流入する排気ガスの空燃比A/Fと理論空燃比A/Fstとの差であり、次式により算出される。
ΔA/F=A/F−A/Fst ・・・(1)
【0045】
次に、エアフロメータ20の出力に基づいて、吸入空気量Gaが検出される(ステップ102)。
【0046】
次いで、空燃比ずれ量ΔA/Fと吸入空気量Gaとに基づいて、単位時間当たりに上流側触媒32に吸蔵される、または上流側触媒32から放出される酸素の量、すなわち、酸素吸蔵量O2ADが求められる(ステップ104)。
酸素吸蔵量O2ADは、ECU42に記憶されているマップ、或いは演算式に従って算出される。酸素吸蔵量O2ADの値は、上流側触媒32に流入する排気ガスの空燃比がリーンである場合(A/F>A/Fstの場合、すなわち、ΔA/F>0の場合)は正の値となり、一方、上流側触媒32に流入する排気ガスの空燃比がリッチである場合(A/F<A/Fstの場合、すなわち、ΔA/F<0の場合)は負の値となる。
【0047】
次に、リーンフラグXlean=ON、かつ、空燃比ずれ量ΔA/F>0なる条件が成立するか否かが判別される(ステップ106)。
リーンフラグXleanは、上記の如く、第1Oセンサ38がリーン出力を発する場合にONとされるフラグである。従って、本ステップ106では、上流側触媒32の上流および下流の双方で排気ガスがリーン(酸素過多)になっているか、が判別されている。
【0048】
上記ステップ106の条件は、例えば、図3に示す時刻t2〜t3の間に成立する。すなわち、その条件は、上流側触媒32に酸素吸蔵容量OSC一杯の酸素が吸蔵されており、その吸蔵量に変化が生じない状況下で成立する条件である。図4に示すルーチンでは、この条件が成立する場合、以後速やかにステップ112以降の処理が実行される。
【0049】
一方、上記ステップ106の条件が成立しないと判別された場合は、次に、リッチフラグXrich=ON、かつ、空燃比ずれ量ΔA/F<0なる条件が成立するか否かが判別される(ステップ108)。
リッチフラグXrichは、上述した通り、第1Oセンサ38がリッチ出力を発する場合にONとされるフラグである。従って、本ステップ108では、上流側触媒32の上流および下流の双方で排気ガスがリッチになっているか、が判別されている。
【0050】
上記ステップ108の条件は、例えば、図3に示す時刻t0〜t1の間に成立する。すなわち、上記の条件は、上流側触媒32が酸素を放出し切っており、その吸蔵量に変化が生じない状況下で成立する条件である。図4に示すルーチンでは、この条件が成立する場合、以後速やかにステップ112以降の処理が実行される。
【0051】
上記ステップ108が成立しないと判別された場合は、上流側触媒32が現に酸素を吸蔵し、または放出しており、上流側触媒32に吸蔵されている酸素の量が時々刻々変化していると判断できる。この場合、図4に示すルーチンでは、前回の処理サイクルで演算された酸素吸蔵積算量O2SUMに、今回の処理サイクルで算出された酸素吸蔵量O2ADを加えることで、酸素吸蔵積算量O2SUMを更新する処理が行われる(ステップ110)。本ステップ110の処理によれば、上流側触媒32に現実に吸蔵されている酸素の量に合わせて、酸素吸蔵積算量O2SUMを増減させることができる。
【0052】
図4に示すルーチンでは、次に、上流側触媒32の下流に、空燃比のリーンな排気ガスが流出しているか、より具体的には、第1Oセンサ38がリーン出力を発しているかが判別される(ステップ112)。
【0053】
第1Oセンサ38がリーン出力を発するのは、上流側触媒32が最大酸素吸蔵状態にあり、かつ、内燃機関10に対して燃料リーンな混合気が供給されている場合に限られる。上記ステップ112において、第1Oセンサ38がリーン出力を発していると判別された場合、図4に示すルーチンでは、その時点で算出されている酸素吸蔵積算量O2SUMを最大酸素吸蔵積算量O2SUMmaxとして記憶し、更に、リーンフラグXleanをON、リッチフラグXrichをOFFとする処理が実行される(ステップ114)。
【0054】
上記ステップ112において、上流側触媒32の下流側に空燃比のリーンな排気ガスが流出していないと判別された場合は、次に、その触媒32の下流に、空燃比のリッチな排気ガスが流出しているか、つまり、第1Oセンサ38がリッチ出力を発しているかが判別される(ステップ116)。
【0055】
第1Oセンサ38がリッチ出力を発するのは、上流側触媒32が最小酸素吸蔵状態にあり、かつ、内燃機関10に対して燃料リッチな混合気が供給されている場合に限られる。上記ステップ116で第1Oセンサ38がリッチ出力を発していると判別された場合、図4に示すルーチンでは、その時点で算出されている酸素吸蔵積算量O2SUMを最小酸素吸蔵積算量O2SUMminとして記憶し、更に、リーンフラグXleanをOFF、リッチフラグXrichをONとする処理が実行される(ステップ118)。
【0056】
上記ステップ116において、上流側触媒32の下流側に空燃比のリッチな排気ガスは流出していないと判別された場合は、上流側触媒32が排気ガスを適正に浄化している、つまり、上流側触媒32は、最大酸素吸蔵状態でも最小酸素吸蔵状態でもないと判断できる。この場合、リーンフラグXleanおよびリッチフラグXrichがいずれもOFFとされる(ステップ120)。
【0057】
以上説明した通り、図4に示すルーチンによれば、上流側触媒32に現実に吸蔵されている酸素の量の増減に合わせて酸素吸蔵積算量O2SUMを増減させることができる。そして、最大酸素吸蔵状態に対応する酸素吸蔵積算量O2SUMを最大酸素吸蔵積算量O2SUMmaxとして記憶し、また、最小酸素吸蔵状態に対応する酸素吸蔵積算量O2SUMを最小酸素吸蔵積算量O2SUMminとして記憶することができる。これらの値が求まると、ECU42は、最大酸素吸蔵積算量O2SUMmaxから最小酸素吸蔵積算量O2SUMminを減ずることで、上流側触媒32の酸素吸蔵容量OSCを算出することができる。
【0058】
ところで、本実施形態のシステムにおいて、上流側触媒32が最大酸素吸蔵状態となった後、ある程度の期間は、上流側触媒32の下流にNOxを含む酸素過多の排気ガスが流出してくる。また、上流側触媒32が最小酸素吸蔵状態となった後、ある程度の期間は、上流側触媒32の下流にHCやCOを含む酸素不足の排気ガスが流出してくる。
【0059】
本実施形態の触媒劣化検出装置は、上流側触媒32の下流に下流側触媒34を備えているため、上流側触媒32の下流に流出してくる未浄化の排気ガスは、通常は大気に放出されることはない。しかし、下流側触媒34が、最大酸素吸蔵状態或いは最小酸素吸蔵状態にあり、本来の浄化能力を発揮できないような場合は、上流側触媒32の下流に未浄化の排気ガスが流出すると、その未浄化の排気ガスが下流側触媒34を通り抜けて大気に放出されることがある。そこで、本実施形態では、上流側触媒32の劣化を検出するための一連の処理、すなわち、上流側触媒32を強制的に最大酸素吸蔵状態や最小酸素吸蔵状態とする処理を含む一連の処理を、下流側触媒34が適正に浄化能力を発揮できる場合に限り実行させることとしている。
【0060】
以下、図5および図6を参照して、本実施形態の触媒劣化検出装置が上記の機能を実現するために実行する具体的処理の内容について説明する。
図5は、ECU42が、上述した制限の下に上流側触媒32の劣化検出を行うべく実行するルーチンのフローチャートである。図5に示すルーチンでは、先ず、劣化検出の基本的な実行条件が成立しているかが判別される(ステップ130)。
本ステップ130では、具体的には、吸入空気量が所定の範囲に収まっているか、或いは、上流側触媒32の触媒温度が所定の範囲に収まっているかが判別される。それらの範囲は、正常な触媒の酸素吸蔵容量OSCと、劣化した触媒のそれとの間に判別可能な差が生ずる範囲として予め決められた範囲である。本ステップ130の条件が成立しないと判別された場合は、以後、何ら処理が進められることなく速やかに今回のルーチンが終了される。
【0061】
一方、上記ステップ130において、劣化検出の基本実行条件が成立していると判別された場合は、次に、下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正であるか、すなわち、下流側触媒34の酸素吸蔵状態が、所定量以上の酸素を更に吸蔵することができ、かつ、所定量以上の酸素を放出することができる状態であるかが判別される(ステップ131)。
ここで、前者の所定量は、劣化検出の過程で上流側触媒32が強制的に最大酸素吸蔵状態とされた後に、下流側触媒34に流入してくる酸素過多の排気ガスを、適正に浄化するに足る酸素量として予め定められた量である。また、後者の所定量は、劣化検出の過程で上流側触媒32が強制的に最小酸素吸蔵状態とされた後に、下流側触媒34に流入してくる酸素不足の排気ガスを、適正に浄化するに足る酸素量として予め定められた量である。
【0062】
上記ステップ131の条件の成立性は、具体的には、下流側触媒34の下流に配置されている第2Oセンサ40の出力がリーン出力またはリッチ出力に張り付いていないか、換言すると、その出力がリーン判定値Vlとリッチ判定値Vrの間の値であるか、により判断される。そして、第2Oセンサ40の出力が、リーン判定値Vlとリッチ判定値Vrの間の値である場合は、下流触媒34の酸素吸蔵状態が適正であると判断され、次に、上流側触媒32の酸素吸蔵容量OSCの検出や、その検出状況を特定するパラメータの算出などが行われる(ステップ132)。
【0063】
上記ステップ132の処理は、具体的には、図6に示す一連の処理により実現される。図6に示す一連の処理によれば、上流側触媒32の酸素吸蔵容量OSCが検出されると共に、その検出状況を特定するパラメータとして、検出中平均触媒温度と、検出中平均吸入空気量とが算出される。ここで、検出中平均触媒温度とは、酸素吸蔵容量OSCが検出される間の上流側触媒32の温度の平均値である。また、検出中平均吸入空気量とは、酸素吸蔵容量OSCが検出される間に生じた吸入空気量Gaの平均値である。
【0064】
図6に示す一連の処理では、先ず、空燃比ずれ量ΔA/Fの符号が反転したか、つまり、空燃比センサ36により検出される空燃比A/Fが、燃料リッチを表す値から燃料リーンを表す値に反転したか、或いはその逆の反転が生じたかが判別される(ステップ134)。
【0065】
図3を参照して説明した通り、本実施形態のシステムでは、第1Oセンサ38がリッチ出力またはリーン出力を発した後(例えば、時刻t0またはt2)、空燃比ずれ量ΔA/Fの符号が反転するまで(例えば、時刻t1またはt3)、上流側触媒32は最大酸素吸蔵状態、或いは最小酸素吸蔵状態を維持する。そして、空燃比ずれ量ΔA/Fの符号が反転すると、その後、上流側触媒32に吸蔵されている酸素量を表す酸素吸蔵積算量O2SUMが更新され始める。従って、上記ステップ134の処理によれば、酸素吸蔵積算量O2SUMが更新され始める時期を検知することができる。
【0066】
上記ステップ134の処理は、空燃比ずれ量ΔA/Fの符号が反転したと判別されるまで、すなわち、酸素吸蔵積算量O2SUMの更新が開始されたと判別されるまで、繰り返し実行される。そして、ΔA/Fの符号が反転したと判別されると、次に、後述する触媒温度積算値THCSUMおよび吸入空気量積算値GASUMがクリアされ、更に、後述する積算回数計数値nが0にリセットされる(ステップ136)。
【0067】
次に、触媒温度THCが検出され、更に、その検出値に基づいて触媒温度積算値THCSUMが更新される(ステップ138)。
触媒温度THCは、実測または推定による上流側触媒32の実温度である。触媒温度THCは、実測の場合には、上流側触媒32に触媒温度センサを組み付けることで検出することができる。また、触媒温度THCは、推定の場合には、点火時期、混合気の空燃比A/F、吸入空気量Ga、車速SPD、および吸気温THAなどに基づいて、予め準備されているマップや演算式に従って検出することができる。触媒温度積算値THCSUMは、前回の処理サイクル時の値に、今回の処理サイクルにより検出された触媒温度THCを加えた値である。
【0068】
次に、吸入空気量Gaが検出され、更に、その検出値に基づいて吸入空気量積算値GASUMが更新される(ステップ140)。
吸入空気量Gaは、エアフロメータ20により実測された値である。また、吸入空気量積算値GASUMは、前回の処理サイクル時の値に、今回の処理サイクルで検出された吸入空気量Gaを加えた値である。
【0069】
次に、積算回数計数値nがインクリメントされる(ステップ142)。
積算回数計数値nは、このように処理されることにより、上記ステップ138および140の処理が繰り返された回数を表す値となる。
【0070】
図6に示す一連の処理では、次に、リーンフラグXleanがOFFからONに変化したか、或いは、リッチフラグがOFFからONに変化したかが判別される(ステップ144)。
【0071】
図4を参照して説明した通り、本実施形態のシステムでは、第1Oセンサ38がリーン出力を発した時点でリーンフラグXleanがOFFからONに変化する(ステップ114参照)。また、第1Oセンサ38がリッチ出力を発した時点でリッチフラグがOFFからONに変化する(ステップ118参照)。そして、これらの変化は、上流側触媒32が最大酸素吸蔵状態或いは最小酸素吸蔵状態に至った直後に生ずる。従って、上記ステップ144の処理によれば、上流側触媒32が最大酸素吸蔵状態或いは最小酸素吸蔵状態に至った時期を検知することができる。
【0072】
図6に示す一連の処理において、上記ステップ144の条件が成立しないと判別された場合は、再び上記ステップ138以降の処理が実行される。そして、その条件が成立すると判別されるまで、繰り返し上記ステップ138〜144の処理が実行される。
【0073】
上記ステップ144において、リーンフラグXleanがOFFからONに変化した、或いは、リッチフラグXrichがOFFからONに変化したと判別されると、次式に従って酸素吸蔵容量OSCが算出される(ステップ146)。
OSC=O2SUMmax−O2SUMmin ・・・(2)
【0074】
図4を参照して説明した通り、本実施形態のシステムでは、リーンフラグXleanがOFFからONに変化した時点で最大酸素吸蔵積算量O2SUMmaxが算出される(ステップ114参照)。また、リッチフラグXrichがOFFからONに変化した時点で最小酸素吸蔵積算量O2SUMminが算出される(ステップ118参照)。上記ステップ146の処理によれば、O2SUMmaxおよびO2SUMminの一方が最新の値に更新される毎に、その最新の値を用いて酸素吸蔵容量OSCを算出することができる。
【0075】
図6に示す一連の処理では、上記ステップ146の処理に次いで、検出中平均触媒温度THCAVが算出される。検出中平均触媒温度THCAVは、具体的には、次式に示す通り、上記ステップ138で演算される触媒温度積算値THCSUMを、積算回数計数値nで割ることにより算出される(ステップ148)。
THCAV=THCSUM/n ・・・(3)
【0076】
次に、検出中平均吸入空気量GAAVが算出される。検出中平均吸入空気量GAAVは、具体的には、次式に示す通り、上記ステップ140で演算される吸入空気量積算値GASUMを、積算回数計数値nで割ることにより算出される(ステップ150)。
GAAV=GASUM/n ・・・(4)
【0077】
以上説明した通り、図6に示す一連の処理によれば、上流側触媒32が最大酸素吸蔵状態、或いは最小酸素吸蔵状態となった直後に、最新のデータに基づいて酸素吸蔵容量OSCを算出することができると共に、その最新の酸素吸蔵容量OSCが求められる過程で生じていた触媒温度の平均値THCAV、および吸入空気量の平均値GAAVを求めることができる。
【0078】
図6に示す一連の処理は、上記の如く、図5に示すルーチン中、ステップ132において実行される。
図5に示すルーチンでは、ステップ132の処理が終了すると、次に、検出中平均触媒温度THCAV、および検出中平均吸入空気量GAAVに基づいて、劣化判定のしきい値A(x)が決定される(ステップ152)。
ECU42は、劣化した触媒の酸素吸蔵容量OSCと、正常な触媒の酸素吸蔵容量OSCとを切り分けるためのしきい値を、触媒温度と吸入空気量との関係で定めたマップを記憶している。本ステップ152では、そのマップを参照して上記のしきい値A(x)が決定される。
【0079】
図5に示すルーチンでは、次に、今回の処理サイクルにおいて検出された酸素吸蔵容量OSCが、上記ステップ152で決定されたしきい値A(x)に比して大きいか否かが判別される(ステップ154)。
【0080】
その結果、OSC>A(x)が成立すると判別された場合は、上流側触媒32が正常であると判断される(ステップ156)。
一方、OSC>A(x)が成立しないと判別された場合は、上流側触媒32に劣化が生じていると判断される(ステップ158)。
【0081】
図5に示すルーチン中、上記ステップ131において、下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正ではない、すなわち、第2Oセンサ40の出力はリッチ出力或いはリーン出力に張り付いていると判別された場合は、下流側触媒34が最大酸素吸蔵状態または最小酸素吸蔵状態にあると判断できる。つまり、下流側触媒34が、未浄化の排気ガスを浄化できる状態にないと判断できる。図5に示すルーチンでは、この場合、上流側触媒32の劣化を検出するための処理、すなわち、上流側触媒32を強制的に最大酸素吸蔵状態や最小酸素吸蔵状態とする処理が禁止される。そして、下流側触媒34の酸素吸蔵状態を適正にするための調整処理の開始が指示される(ステップ160)。
【0082】
上記の調整処理は、図5に示すルーチンとは異なる他のルーチンにより実行される。その調整処理では、先ず、第2Oセンサ40の出力に基づいて、下流側触媒34が最大酸素吸蔵状態にあるのか、或いは最小酸素吸蔵状態にあるのかが判別される。その結果、下流側触媒34が最大酸素吸蔵状態にあると判別された場合は、内燃機関10に供給する混合気の空燃比を強制的にリッチ側の所定値とする処理が行われる。この状態が継続されると、やがて、下流側触媒34に酸素不足の排気ガスが供給されるようになり、下流側触媒34の最大酸素吸蔵状態を解消することができる。一方、下流側触媒34が最小酸素吸蔵状態にあると判別された場合は、内燃機関10に供給する混合気の空燃比を強制的にリーン側の所定値とする処理が行われる。この状態が継続されると、やがて、下流側触媒34に酸素過多の排気ガスが供給されるようになり、下流側触媒34の最小酸素吸蔵状態を解消することができる。
【0083】
上記の調整処理により、下流側触媒34の最大酸素吸蔵状態または最小酸素吸蔵状態が解消されると、その後図5に示すルーチンが起動された際に、ステップ131において、下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正であると判断される。そして、ステップ132〜158の処理により、未浄化の排気ガスを大気に放出することなく、上流側触媒32が正常であるか、或いは劣化しているかが判別される。
【0084】
以上説明した通り、本実施形態の触媒劣化検出装置によれば、上流側触媒32の劣化検出のための一連の処理を、下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正である場合に限り実行することができる。そして、下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正でない場合には、積極的に、適正な酸素吸蔵状態を作り出すことができる。このため、本実施形態の触媒劣化検出装置によれば、排気エミッションを悪化させることなく、高い頻度で、上流側触媒32の劣化検出を行うことができる。
【0085】
ところで、上述した実施の形態1においては、上流側触媒32と下流側触媒34との間、および下流側触媒34の下流に配置するセンサをOセンサとしているが、それらのセンサは、排気ガスの空燃比に対してほぼリニアな変化を示す空燃比センサであってもよい。
【0086】
尚、上述した実施の形態1においては、第1Oセンサ38が前記請求項1記載の「浄化程度検出センサ」に相当していると共に、ECU42が、上記ステップ112の処理を実行することにより前記請求項1記載の「最大酸素吸蔵状態を検出する手段」が、上記ステップ116の処理を実行することにより前記請求項1記載の「最小酸素吸蔵状態を検出する手段」が、上記ステップ82〜90の処理を実行することにより前記請求項1記載の「強制リッチ手段」および「強制リーン手段」が、上記ステップ132の処理を実行することにより前記請求項1記載の「酸素吸蔵容量検出手段」が、上記ステップ154の処理を実行することにより前記請求項1記載の「劣化判定手段」が、上記ステップ131の処理を実行することにより前記請求項1記載の「適正状態判別手段」および「判定開始許可手段」が、それぞれ実現されている。
【0087】
また、上述した実施の形態1においては、ECU42が上記ステップ160の処理を実行することにより前記請求項2記載の「空燃比調整手段」が実現されている。
【0088】
また、上述した実施の形態1においては、ECU42が、上記ステップ160における調整処理において、下流側触媒34が最大酸素吸蔵状態にあるのか、或いは最小酸素吸蔵状態にあるのかを判別することにより前記請求項3記載の「吸蔵限界検出手段」および「放出限界検出手段」が、その判別結果に応じて混合気の空燃比を強制的にリッチ側の所定値或いはリーン側の所定値とすることにより前記請求項3記載の「リッチ側調整手段」および「リーン側調整手段」が、それぞれ実現されている。
【0089】
更に、上述した実施の形態1においては、第2Oセンサ40が前記請求項6記載の「第2浄化程度検出センサ」に相当していると共に、ECU42が、上記ステップ131において、第2Oセンサ40の出力がリーン判定値Vlとリッチ判定値Vrの間の値であるかを判断することにより前記請求項6記載の「第1判定手段」、「第2判定手段」、および「判別手段」が実現されている。
【0090】
実施の形態2.
次に、図7を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態の触媒劣化検出装置は、ECU42が、上述した図5に示すルーチンに代えて、図7に示すルーチンを実行する点を除き、実施の形態1の装置と同様である。実施の形態1の装置は、単一の酸素吸蔵容量OSCに基づいて上流側触媒32の劣化状態を判定している。これに対して、本実施形態の触媒劣化検出装置は、上流側触媒32が劣化しているか否かを、複数の酸素吸蔵容量OSCに基づいて判定する。
【0091】
図7に示すルーチンは、上記の機能を実現すべく本実施形態においてECU42が実行するルーチンのフローチャートである。尚、図7において、上記図5に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0092】
図7に示すルーチンでは、ステップ154において酸素吸蔵容量OSCがしきい値A(x)より大きいと判別された段階では、仮正常判定がなされる(ステップ200)。
また、ステップ154でOSC>A(x)が成立しないと判別された場合は、仮異常判定がなされる(ステップ202)。
【0093】
それらの処理が終了すると、次に、上記ステップ154の判定回数が所定回数Nに達したかが判別される(ステップ204)。
その結果、判定回数が未だNに達していないと判別された場合は、以後速やかに今回の処理サイクルが終了され、所定時間の後に、再びステップ130以降の処理が実行される。一方、判定回数がNに達していると判別された場合は、次に、仮正常と判定された回数と、仮異常と判定された回数との多数決により、上流側触媒32が正常であるか、或いは異常であるかが判定される(ステップ206,156,158)。
【0094】
上記の処理によれば、複数の酸素吸蔵容量OSCに基づいて上流側触媒32の状態を判定することができる。このため、本実施形態の装置によれば、その状態判定が単一の酸素吸蔵容量OSCに基づいて行われる実施の形態1の装置に比して、高い精度で上流側触媒32の劣化検出を行うことができる。
【0095】
また、上述した処理によれば、N個の酸素吸蔵容量OSCが検出される前に下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正な状態から外れた場合には、酸素吸蔵容量OSCの検出処理が一時的に中断され、下流側触媒34を適正な状態に戻すための調整処理が実行される(ステップ131,160参照)。このため、本実施形態の触媒劣化検出装置によれば、排気エミッションを何ら悪化させることなく、劣化判定の精度を高めることができる。
【0096】
実施の形態3.
次に、図8を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態の触媒劣化検出装置は、ECU42が、上述した図5または図7に示すルーチンに代えて、図8に示すルーチンを実行する点を除き、実施の形態1または2の装置と同様である。実施の形態2の装置は、個々の酸素吸蔵容量OSCに基づく複数の仮判定の多数決により上流側触媒32の劣化状態を判定している。これに対して、本実施形態の触媒劣化検出装置は、複数の酸素吸蔵容量OSCの平均値がしきい値A(x)を越えているか否かに基づいて上流側触媒32が正常であるか否かを判定する。
【0097】
図8に示すルーチンは、上記の機能を実現すべく本実施形態においてECU42が実行するルーチンのフローチャートである。尚、図8において、上記図5または図7に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0098】
図8に示すルーチンでは、ステップ132および134の処理に次いで、酸素吸蔵容量OSCの検出回数が所定回数Nに達したか否かが判別される(ステップ210)。
その結果、検出回数が未だNに達していないと判別された場合は、以後速やかに今回の処理サイクルが終了され、所定時間の後に、再びステップ130以降の処理が実行される。一方、検出回数がNに達していると判別された場合は、次に、検出された全ての酸素吸蔵容量OSCの積算値OSCSUMを検出回数Nで除することにより、酸素吸蔵容量平均値OSCAVが算出される(ステップ212)。
【0099】
その結果、OSCAV>A(x)が成立すると判別された場合は、上流側触媒32が正常であると判定される(ステップ156)。
一方、OSCAV>A(x)が成立しないと判別された場合は、上流側触媒32が異常であると判定される(ステップ158)。
【0100】
上記の処理によれば、複数の酸素吸蔵容量OSCに基づいて、より具体的には、それらの平均値OSCAVに基づいて上流側触媒32の状態を判定することができる。更に、上述した処理によれば、N個の酸素吸蔵容量OSCが検出される前に下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正な状態から外れた場合には、酸素吸蔵容量OSCの検出処理を一時的に中断し、下流側触媒34を適正な状態に戻すための調整処理を行うことができる(ステップ131,160参照)。このため、本実施形態の触媒劣化検出装置によれば、実施の形態2の場合と同様に、排気エミッションを何ら悪化させることなく、高い精度で上流側触媒32の劣化を検出することができる。
【0101】
実施の形態4.
次に、図9を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。本実施形態の触媒劣化検出装置は、ECU42が、上述した図5、図7または図8に示すルーチンに代えて、図9に示すルーチンを実行する点を除き、実施の形態1乃至3の何れかの装置と同様である。
【0102】
図9に示すルーチンは、上流側触媒32の劣化を検出するために本実施形態においてECU42が実行するルーチンのフローチャートである。このルーチンは、ステップ131に次いで、ステップ200および222の処理が実行されることがある点を除き、実施の形態2で実行される図7に示すルーチンと同様である。
【0103】
すなわち、図9に示すルーチンでは、ステップ131において、下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正でないと判別された場合、次に、上流側触媒32の劣化判定が既に開始されているかが判別される(ステップ220)。
【0104】
本ルーチンでは、上記図7に示すルーチンと同様に、酸素吸蔵容量OSCに基づく複数の仮判定の多数決により上流側触媒32の劣化が判定される。上記ステップ220では、最初の酸素吸蔵容量OSCの検出が既に開始されているか否かが判別される。最初のOSCを検出すべき段階で下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正でない場合は、上記ステップ220において、劣化判定は開始されていないと判別される。この場合、以後、ステップ160の処理が実行され、下流側触媒34の酸素吸蔵状態を適正にするための調整処理が開始される。そして、下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正な状態になると、その時点で、上流側触媒32の酸素吸蔵容量OSCを検出するための処理(ステップ132以降の処理)が開始される。
【0105】
酸素吸蔵容量OSCを検出するための最初の処理が開始された後、所定数NのOSCが検出されるまでの間には、下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正な状態から外れることがある。このような事態が生ずると、図9に示すルーチンでは、ステップ131に次いでステップ220が実行され、ここで、上流側触媒32の劣化判定は既に開始されていると判別される(ステップ220)。
【0106】
上記ステップ220において、上流側触媒32の劣化判定が既に開始されていると判別されると、次に、リッチ固定制御、およびリーン固定制御のパラメータが修正される(ステップ222)。
【0107】
本実施形態の触媒劣化検出装置は、実施の形態1の装置と同様に、上流側触媒32の酸素吸蔵量OSCを検出する際に、空燃比を強制的にリッチ側の所定値に固定するリッチ固定制御と、空燃比を強制的にリーン側の所定値に固定するリーン固定制御とを交互に繰り返して強制的に空燃比を振動させる(図2参照)。上記ステップ222では、それらの制御でそれぞれ用いられるパラメータが、下流側触媒32の酸素吸蔵状態に応じて修正される。
【0108】
具体的には、上記ステップ222では、先ず、第2Oセンサ40の出力に基づいて、下流側触媒34が最大酸素吸蔵状態にあるのか、或いは最小酸素吸蔵状態にあるのかが判別される。その結果、下流側触媒34が最大酸素吸蔵状態にあると判別された場合は、リッチ固定制御で目標とされるリッチ側の空燃比が、理論空燃比に比して十分にリッチ側に偏った値に設定され、かつ、リーン固定制御で目標とされるリーン側の空燃比が理論空燃比に比して僅かにリーン側に偏った値に設定される。このような設定によれば、上流側触媒34が最小酸素吸蔵状態となった後には、酸素不足の顕著な排気ガスが下流側触媒34に流入する。一方、上流側触媒34が最大酸素吸蔵状態となった後には、僅かに酸素過多の排気ガスが下流側触媒34に流入する。従って、この状態でリッチ固定制御とリーン固定制御が繰り返されれば、最大酸素吸蔵状態を解消して下流側触媒34を適正な酸素吸蔵状態に復帰させることができる。
【0109】
上記ステップ222において、下流側触媒34が最小酸素吸蔵状態にあると判別された場合は、リッチ固定制御で目標とされるリッチ側の空燃比が、理論空燃比に比して僅かにリッチ側に偏った値に設定され、かつ、リーン固定制御で目標とされるリーン側の空燃比が理論空燃比に比して十分にリーン側に偏った値に設定される。この場合、リッチ固定制御とリーン固定制御が繰り返されることにより、下流側触媒34の最小酸素吸蔵状態が解消され、適正な酸素吸蔵状態が復元される。
【0110】
図9に示すルーチンでは、上記ステップ222の処理に次いで、ステップ132の処理が実行される。その結果、上記ステップ220で設定された条件でリッチ固定制御とリーン固定制御とが繰り返し実行され、下流側触媒34は、未浄化の排気ガスを殆ど大気側に流出させることなく適正な状態に復帰する。
【0111】
このように、図9に示すルーチンによれば、所定数N酸素吸蔵容量OSCが検出される過程で下流側触媒34が不適正な状態となっても、排気エミッションを悪化させることなく、酸素吸蔵容量OSCの検出を継続することができる。このため、本実施形態の触媒劣化検出装置によれば、良好な排気エミッション特性を損なうことなく、短時間で、かつ正確に、上流側触媒32の劣化検出を行うことができる。
【0112】
ところで、上述した実施の形態4では、上記ステップ222において、リッチ固定制御で目標とすべき空燃比、およびリーン固定制御で目標とすべき空燃比を修正することとしているが、上記ステップ222で修正するパラメータはこれに限定されるものではない。すなわち、上記ステップ222では、第1Oセンサ38がリッチ出力またはリーン出力を発した後、混合気の空燃比を反転させるまでの時間などを修正することとしてもよい。
【0113】
具体的には、下流側触媒34が最大酸素吸蔵状態である場合は、第1Oセンサ38がリッチ出力を発した後、空燃比をリーンにするまでの時間を比較的長時間とし、かつ、第1Oセンサ38がリーン出力を発した後、空燃比をリッチにするまでの時間を短時間としてもよい。また、下流側触媒34が最小酸素吸蔵状態である場合、上記と逆の設定を施すこととしてもよい。前者の設定によれば、下流側触媒34に酸素不足の排気ガスを多量に供給することができ、下流側触媒34の最大酸素吸蔵状態を速やかに解消することができる。また、後者の設定によれば、下流側触媒34に酸素過多の排気ガスを多量に供給することができ、下流側触媒34の最小酸素吸蔵状態を速やかに解消することができる。
【0114】
また、上述した実施の形態4では、下流側触媒34の酸素吸蔵状態を適正な状態に調えたうえで最初の酸素吸蔵容量OSCの検出を開始し、その検出が開始された後に下流側触媒34が不適正な状態となった場合に、リッチ固定制御およびリーン固定制御のパラメータを修正することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、最初の酸素吸蔵容量OSCを検出すべき段階で下流側触媒34が不適正な状態である場合には、その段階で、リッチ固定制御およびリーン固定制御のパラメータを修正することとしてもよい。
【0115】
尚、上述した実施の形態4においては、ECU42が、上記ステップ204の処理を実行することにより前記請求項4記載の「制御繰り返し手段」が、上記ステップ206の処理を実行することにより前記請求項4記載の「劣化判定手段」が、上記ステップ220および222の処理を実行することにより前記請求項4記載の「強制空燃比修正手段」が、それぞれ実現されている。
【0116】
また、上述した実施の形態4においては、第1Oセンサ38が前記請求項5記載の「浄化程度検出センサ」に相当していると共に、ECU42が、上記ステップ112の処理を実行することにより前記請求項5記載の「最大酸素吸蔵状態を検出する手段」が、上記ステップ116の処理を実行することにより前記請求項5記載の「最小酸素吸蔵状態を検出する手段」が、上記ステップ82〜90の処理を実行することにより前記請求項5記載の「強制リッチ手段」および「強制リーン手段」が、上記ステップ132の処理を実行することにより前記請求項5記載の「酸素吸蔵容量検出手段」が、上記ステップ154の処理を実行することにより前記請求項5記載の「劣化判定手段」が、上記ステップ131の処理を実行することにより前記請求項5記載の「適正状態判別手段」が、また、上記ステップ220,222の処理を実行することにより前記請求項5記載の「強制空燃比修正手段」が、それぞれ実現されている。
【0117】
実施の形態5.
次に、図10を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。本実施形態の触媒劣化検出装置は、ECU42が、上述した図5、図7、図8または図9に示すルーチンに代えて、図10に示すルーチンを実行する点を除き、実施の形態1乃至4の何れかの装置と同様である。
【0118】
図10に示すルーチンは、ステップ131に次いで、ステップ200および222の処理が実行されることがある点を除き、上述した実施の形態3で実行される図8に示すルーチンと同様である。また、図10に示すステップ200および222の処理は、上述した実施の形態4において実行される処理と同じである。
【0119】
図10に示すルーチンによれば、図9に示すルーチンが実行される場合と同様に、下流側触媒34の酸素吸蔵状態を適正な状態に調えた後に、酸素吸蔵容量OSCを検出するための最初の処理を開始することができる。そして、所定数NのOSCが検出される前に下流側触媒34が不適正な状態となったら、OSCの検出を継続させながら、未浄化の排気ガスを殆ど大気中に流出させることなく、下流側触媒34を適正な状態に復帰させることができる。このため、本実施形態の触媒劣化検出装置によれば、実施の形態4の場合と同様に、良好な排気エミッション特性を損なうことなく、短時間で、かつ正確に、上流側触媒32の劣化検出を行うことができる。
【0120】
ところで、上述した実施の形態5では、上記ステップ222において、リッチ固定制御で目標とすべき空燃比、およびリーン固定制御で目標とすべき空燃比が修正されているが、上記ステップ222で修正するパラメータはこれに限定されるものではない。すなわち、実施の形態4の説明でも述べた通り、上記ステップ222では、第1Oセンサ38がリッチ出力またはリーン出力を発した後、混合気の空燃比を反転させるまでの時間を修正することとしてもよい。
【0121】
また、上述した実施の形態5では、下流側触媒34の酸素吸蔵状態を適正な状態に調えたうえで最初の酸素吸蔵容量OSCの検出を開始することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、最初の酸素吸蔵容量OSCを検出すべき段階で下流側触媒34が不適正な状態である場合には、その段階で、リッチ固定制御およびリーン固定制御のパラメータを修正することとしてもよい。
【0122】
尚、上述した実施の形態5においては、ECU42が、上記ステップ210の処理を実行することにより前記請求項4記載の「制御繰り返し手段」が、上記ステップ214の処理を実行することにより前記請求項4記載の「劣化判定手段」が、上記ステップ220および222の処理を実行することにより前記請求項4記載の「強制空燃比修正手段」が、それぞれ実現されている。
【0123】
また、上述した実施の形態5においては、第1Oセンサ38が前記請求項5記載の「浄化程度検出センサ」に相当していると共に、ECU42が、上記ステップ112の処理を実行することにより前記請求項5記載の「最大酸素吸蔵状態を検出する手段」が、上記ステップ116の処理を実行することにより前記請求項5記載の「最小酸素吸蔵状態を検出する手段」が、上記ステップ82〜90の処理を実行することにより前記請求項5記載の「強制リッチ手段」および「強制リーン手段」が、上記ステップ132の処理を実行することにより前記請求項5記載の「酸素吸蔵容量検出手段」が、上記ステップ214の処理を実行することにより前記請求項5記載の「劣化判定手段」が、上記ステップ131の処理を実行することにより前記請求項5記載の「適正状態判別手段」が、また、上記ステップ220,222の処理を実行することにより前記請求項5記載の「強制空燃比修正手段」が、それぞれ実現されている。
【0124】
実施の形態6.
次に、図11を参照して、本発明の実施の形態6について説明する。
本実施形態の触媒劣化検出装置は、図1に示すシステム構成から第2Oセンサ40を除去した構成を有しており、上述した実施の形態1乃至5の何れかにおいて実行されるルーチンに加えて、図11に示すルーチンを更にECU42に実行させることにより実現することができる。
【0125】
上述した実施の形態1乃至5において、ECU42は、下流側触媒34の酸素吸蔵状態が適正であるか否かを、第2Oセンサ40の出力に基づいて判断している(上記ステップ131参照)。これに対して、本実施形態の触媒劣化検出装置は、下流側触媒34に吸蔵されている酸素の量を所定の規則により推定し、下流側触媒34が適正な状態であるか否かを、その推定値に基づいて判断することとしている。
【0126】
図11は、上記の機能を実現すべく、ECU42が実行するルーチンのフローチャートを示す。図11に示すルーチンでは、先ず、下流側触媒34の触媒温度が検出される(ステップ302)。
下流側触媒34の触媒温度は、その触媒34に触媒温度センサを組み付けることで実測することができる。また、下流側触媒34の触媒温度は、点火時期、混合気の空燃比A/F、吸入空気量Ga、車速SPD、および吸気温THAなどに基づいて、予め準備されているマップや演算式に従って検出することができる。本ステップ302では、これらの手法で触媒温度が検出される。
【0127】
図11に示すルーチンでは、次に、第1Oセンサ38がリッチ出力を発しているか、すなわち、下流側触媒34に、酸素不足の排気ガスが流入しているかが判別される(ステップ302)。
【0128】
その結果、第2Oセンサ38がリッチ出力を発していると判別された場合は、下流側触媒34に吸蔵されている酸素の積算量O2SUMが、所定の規則に従って減量される(ステップ304)。
所定の規則としては、例えば、酸素吸蔵積算量O2SUMを推定するための公知のモデルを用いることができる。また、より簡単には、第1Oセンサ38を空燃比センサ或いはHCセンサに変更して本ステップ304の処理をおこなってもよい。すなわち、この場合、空燃比センサやHCセンサの出力と吸入空気量Gaとに基づいて単位時間当たりの酸素放出量を算出することができる。そして、その算出値を、前回の処理サイクル時における酸素吸蔵積算量O2SUMから減ずることにより、O2SUMを適正に更新することができる。
【0129】
図11に示すルーチン中、上記ステップ302において、第1Oセンサ38がリッチ出力を発していないと判別された場合は、次に、第1Oセンサ38がリーン出力を発しているかが判別される(ステップ306)。
【0130】
その結果、第2Oセンサ38がリーン出力を発していると判別された場合は、更に、フューエルカットが行われているか否かが判別される(ステップ308)。
そして、フューエルカットが行われていないと判別された場合は、下流側触媒34に吸蔵されている酸素の積算量O2SUMが、通常の規則に従って増量される(ステップ310)。
一方、フューエルカットが行われていると判別された場合は、下流側触媒34に吸蔵されている酸素の積算量O2SUMが、フューエルカット時を想定した規則に従って増量される(ステップ312)。
【0131】
上記ステップ310および312の処理は、上述したステップ304の場合と同様に、公知のモデルを用いて行うことができる。また、それらの処理は、第1Oセンサ38を空燃比センサやHCセンサに変更したうえで、単位時間当たりの酸素吸蔵量を算出し、その算出値を、前回の処理サイクル時における酸素吸蔵積算量O2SUMに加算することによっても実現することができる。
【0132】
フューエルカット中は、排気通路14中を空気が流通するため、通常の運転時に比して、単位時間当たりの酸素吸蔵量が多量となる。このため、本実施形態では、上記の如く、フューエルカット中と、非フューエルカット中とを分けて酸素吸蔵積算量O2SUMを更新することとしている。このため、本実施形態のシステムによれば、下流側触媒34の酸素吸蔵積算量O2SUMを精度良く推定することができる。
【0133】
図11に示すルーチン中、上記ステップ306で、第1Oセンサ38がリーン出力を発していないと判別された場合は、下流側触媒34に、酸素の過不足のない排気ガスが流入していると判断できる。この場合、酸素吸蔵積算量O2SUMに大きな増減は生じないため、O2SUMの更新処理は省略される。
【0134】
上述した一連の処理が終了すると、次に、下流側触媒34の酸素吸蔵積算量O2SUMが読み込まれる(ステップ314)。
【0135】
次に、その積算量O2SUMが、下流側触媒34にとって適正な酸素吸蔵量であるかが判別される。より具体的には、下流側触媒34が、上流側触媒32の劣化検出に伴って下流側触媒34に流入してくる酸素過多或いは酸素不足の排気ガスを適正に浄化できる状態にあるかが判別される(ステップ316)。
【0136】
酸素吸蔵積算量O2SUMが適正な吸蔵量であるか否かは、下流側触媒34の酸素吸蔵容量との関係で判断すべき事項である。ここで、下流側触媒34の酸素吸蔵容量は、その触媒温度に応じて変化する。このため、上記ステップ316では、先ず、上記ステップ300で検出された触媒温度に基づいて下流側触媒34の酸素吸蔵容量が推定される。そして、その推定の後に、上記ステップ314で読み込まれた積算量O2SUMが、流出してくる可能性のある酸素不足の排気ガスを浄化するに足る第1の積算値以上であり、かつ、流出してくる可能性のある酸素過多の排気ガスを浄化する余裕を有する第2の積算量以下であるかが判断される。
【0137】
上記の判別結果、下流側触媒34の酸素吸蔵積算量O2SUMが適量である場合は、下流側触媒34が適正な状態にあると判断される(ステップ318)。
一方、下流側触媒34の酸素吸蔵積算量O2SUMが適量でない場合は、下流側触媒34が適正な状態から外れていると判断される(ステップ320)。
【0138】
以上説明した通り、図11に示すルーチンによれば、第2Oセンサ40の出力を用いることなく、下流側触媒34が適正な状態にあるのか、或いは適正な状態から外れているのかを判断することができる。このため、本実施形態の触媒劣化検出装置によれば、第2Oセンサ40を備えていないにも関わらず、上述した実施の形態1乃至5の装置と同等の機能を実現することができる。
【0139】
尚、上述した実施の形態6においては、ECU42が、上記ステップ302〜312の処理を実行することにより前記請求項7記載の「推定手段」および「酸素吸蔵積算量算出手段」が、上記ステップ316の処理を実行することにより前記請求項7記載の「判別手段」が、それぞれ実現されている。
【0140】
また、上述した実施の形態6においては、ECU42が、上記ステップ308の処理を実行することにより前記請求項8記載の「フューエルカット検出手段」が、上記ステップ312の処理を実行することにより前記請求項8記載の「第2推定手段」が、それぞれ実現されている。
【0141】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
請求項1記載の発明によれば、下流側触媒が、排気ガス浄化能力を発揮し得る適正な状態にある場合にのみ、劣化判定に必要な一連の処理の開始を許可することができる。つまり、本発明によれば、上流側触媒の下流に未浄化の排気ガスが流出しても、その排気ガスを下流側触媒が適正に浄化できる場合にのみ劣化判定の処理を開始させることができる。このため、本発明によれば、上流側触媒の劣化判定過程における排気エミッションの悪化を有効に防止することができる。
【0142】
請求項2記載の発明によれば、下流側触媒が適正状態でない場合には、空燃比を制御することで、積極的にその適正状態を実現することができる。このため、本発明によれば、上流側触媒の劣化判定の頻度を高めることができる。
【0143】
請求項3記載の発明によれば、下流側触媒が吸蔵限界状態である場合には、空燃比をリッチとして、下流側触媒から酸素を放出させることができる。また、下流側触媒が放出限界状態である場合には、空燃比をリーンとして、下流側触媒に酸素を吸蔵させることができる。
【0144】
請求項4記載の発明によれば、複数の酸素吸蔵容量に基づいて、上流側触媒の劣化判定を精度良く行うことができる。また、本発明によれば、劣化判定の過程で下流側触媒が適正状態から外れた場合には、その適正状態が復元されるように、空燃比が強制的に制御される際のリッチの程度、或いはリーンの程度が修正される。このため、本発明によれば、複数の酸素吸蔵容量に基づく高精度な劣化判定を、排気エミッションを大きく悪化させることなく完了させることができる。
【0145】
請求項5記載の発明によれば、下流側触媒が適正状態から外れている場合には、その適正状態が実現されるように、空燃比が強制的に制御される際のリッチの程度、或いはリーンの程度が修正される。このため、本発明によれば、排気エミッションを大きく悪化させることなく上流側触媒の劣化判定を完了させることができる。
【0146】
請求項6記載の発明によれば、下流側触媒の下流に設けられた第2浄化程度検出センサの出力に基づいて、下流側触媒が、酸素を吸蔵・放出し得る状態であるか、すなわち、十分な浄化能力を発揮し得る適正状態であるかを、容易かつ精度良く判断することができる。
【0147】
請求項7記載の発明によれば、下流側触媒に吸蔵されている酸素吸蔵積算量を精度良く推定すると共に、その推定値に基づいて、下流側触媒が、酸素を吸蔵・放出し得る状態であるか、すなわち、十分な浄化能力を発揮し得る適正状態であるかを、容易かつ精度良く判断することができる。
【0148】
請求項8記載の発明によれば、フューエルカットの影響をも考慮して下流側触媒に吸蔵されている酸素吸蔵積算量を推定することができる。そして、その推定値に基づいて、下流側触媒が、酸素を吸蔵・放出し得る状態であるか、すなわち、十分な浄化能力を発揮し得る適正状態であるかを、容易かつ精度良く判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1の触媒劣化検出装置の構成を説明するための図である。
【図2】 本発明の実施の形態1において実行される空燃比強制制御ルーチンのフローチャートである。
【図3】 本発明の実施の形態1において触媒の酸素吸蔵容量を算出する手法を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】 本発明の実施の形態1において実行される酸素吸蔵積算量演算ルーチンのフローチャートである。
【図5】 本発明の実施の形態1において上流側触媒の劣化を検出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【図6】 本発明の実施の形態1において酸素吸蔵容量等を求めるために実行される一連の処理のフローチャートである。
【図7】 本発明の実施の形態2において上流側触媒の劣化を検出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【図8】 本発明の実施の形態3において上流側触媒の劣化を検出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【図9】 本発明の実施の形態4において上流側触媒の劣化を検出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【図10】 本発明の実施の形態5において上流側触媒の劣化を検出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【図11】 本発明の実施の形態6において下流側触媒が適正状態であるか否かを判断するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
10 内燃機関
14 排気通路
32 上流側触媒
34 下流側触媒
36 空燃比センサ
38 第1Oセンサ
40 第2Oセンサ
42 ECU(Electronic Control Unit

Claims (8)

  1. 内燃機関の排気通路に配置される上流側触媒と、
    前記上流側触媒の下流に配置される下流側触媒と、
    前記上流側触媒と前記下流側触媒との間で排気ガスの浄化程度を検出する浄化程度検出センサと、
    前記浄化程度検出センサの出力に基づいて、前記上流側触媒の下流に酸素過多の排気ガスが流出してくる最大酸素吸蔵状態を検出する手段と、
    前記浄化程度検出センサの出力に基づいて、前記上流側触媒の下流に酸素不足の排気ガスが流出してくる最小酸素吸蔵状態を検出する手段と、
    前記最大酸素吸蔵状態が検出された後、前記最小酸素吸蔵状態が検出されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリッチに制御する強制リッチ手段と、
    前記最小酸素吸蔵状態が検出された後、前記最大酸素吸蔵状態が検出されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリーンに制御する強制リーン手段と、
    前記最大酸素吸蔵状態から前記最小酸素吸蔵状態への状態遷移の過程で前記上流側触媒が放出した酸素量、或いはその逆の状態遷移の過程で前記上流側触媒が吸蔵した酸素量を、前記上流側触媒の酸素吸蔵容量として検出する酸素吸蔵容量検出手段と、
    前記酸素吸蔵容量に基づいて前記上流側触媒の劣化状態を判定する劣化判定手段と、
    前記下流側触媒が、所定量以上の酸素を吸蔵することができ、かつ、所定量以上の酸素を放出することができる適正状態であるか否かを判別する適正状態判別手段と、
    前記下流側触媒が前記適正状態である場合に限り、前記上流側触媒の劣化状態を判定するための一連の処理(前記強制リッチ手段または前記強制リーン手段による空燃比の制御を含む)の開始を許可する判定開始許可手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の触媒劣化検出装置。
  2. 前記下流側触媒が前記適正状態でない場合に、当該下流側触媒が前記適正状態となるように、内燃機関に供給する混合気の空燃比を制御する空燃比調整手段を備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の触媒劣化検出装置。
  3. 前記適正状態判別手段は、前記下流側触媒が前記所定量以上の酸素を吸蔵することができない吸蔵限界状態を検出する吸蔵限界検出手段と、前記下流側触媒が前記所定量以上の酸素を放出することができない放出限界状態を検出する放出限界検出手段とを含み、
    前記空燃比調整手段は、前記下流側触媒が前記吸蔵限界状態である場合に、前記適正状態が実現されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリッチにするリッチ側調整手段と、前記下流側触媒が前記放出限界状態である場合に、前記適正状態が実現されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリーンにするリーン側調整手段とを含むことを特徴とする請求項2記載の内燃機関の触媒劣化検出装置。
  4. 前記上流側触媒の酸素吸蔵容量が所定数検出されるまで、前記強制リッチ手段と前記強制リーン手段とに交互に空燃比を制御させる制御繰り返し手段を備え、
    前記劣化判定手段は、前記所定数の酸素吸蔵容量に基づいて前記上流側触媒の劣化状態を判定し、更に、
    前記上流側触媒の劣化状態を判定するための一連の処理が開始された後、前記所定数の酸素吸蔵容量が検出される前に、前記下流側触媒が前記適正状態から外れた場合に、当該下流側触媒が前記適正状態となるように、前記強制リッチ手段の制御パラメータ、および前記強制リーン手段の制御パラメータの少なくとも一方を修正する強制空燃比修正手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の触媒劣化検出装置。
  5. 内燃機関の排気通路に配置される上流側触媒と、
    前記上流側触媒の下流に配置される下流側触媒と、
    前記上流側触媒と前記下流側触媒との間で排気ガスの浄化程度を検出する浄化程度検出センサと、
    前記浄化程度検出センサの出力に基づいて、前記上流側触媒の下流に酸素過多の排気ガスが流出してくる最大酸素吸蔵状態を検出する手段と、
    前記浄化程度検出センサの出力に基づいて、前記上流側触媒の下流に酸素不足の排気ガスが流出してくる最小酸素吸蔵状態を検出する手段と、
    前記最大酸素吸蔵状態が検出された後、前記最小酸素吸蔵状態が検出されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリッチに制御する強制リッチ手段と、
    前記最小酸素吸蔵状態が検出された後、前記最大酸素吸蔵状態が検出されるまで、内燃機関に供給する混合気の空燃比を強制的にリーンに制御する強制リーン手段と、
    前記最大酸素吸蔵状態から前記最小酸素吸蔵状態への状態遷移の過程で前記上流側触媒が放出した酸素量、或いはその逆の状態遷移の過程で前記上流側触媒が吸蔵した酸素量を、前記上流側触媒の酸素吸蔵容量として検出する酸素吸蔵容量検出手段と、
    前記酸素吸蔵容量に基づいて前記上流側触媒の劣化状態を判定する劣化判定手段と、
    前記下流側触媒が、所定量以上の酸素を吸蔵することができ、かつ、所定量以上の酸素を放出することができる適正状態であるか否かを判別する適正状態判別手段と、
    前記下流側触媒が前記適正状態から外れている場合に、当該下流側触媒が前記適正状態となるように、前記強制リッチ手段の制御パラメータ、および前記強制リーン手段の制御パラメータの少なくとも一方を修正する強制空燃比修正手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の触媒劣化検出装置。
  6. 前記適正状態判別手段は、
    前記下流側触媒の下流で排気ガスの浄化程度を検出する第2浄化程度検出センサと、
    前記第2浄化程度検出センサの出力と、排気ガスが酸素過多であることを表す第1判定値とを比較する第1判定手段と、
    前記第2浄化程度検出センサの出力と、排気ガスが酸素不足であることを表す第2判定値とを比較する第2判定手段と、
    前記第2浄化程度検出センサの出力が、前記第1判定値と前記第2判定値とを両端値とする適正範囲に収まる場合に、前記下流側触媒が前記適正状態であると判別する判別手段と、
    を含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の内燃機関の触媒劣化検出装置。
  7. 前記適正状態判別手段は、
    前記浄化程度検出センサの出力に基づいて、前記下流側触媒に吸蔵される酸素量、または前記下流側触媒から放出される酸素量を推定する推定手段と、
    前記推定手段により推定された酸素量を積算することで、前記下流側触媒に吸蔵されている酸素吸蔵積算量を算出する酸素吸蔵積算量算出手段と、
    前記酸素吸蔵積算量が、第1積算値と第2積算値とを両端値とする適正範囲に収まる場合に、前記下流側触媒が前記適正状態であると判別する判別手段と、を備え、
    前記第1積算値は、前記下流側触媒が前記所定量以上の酸素を吸蔵することのできる酸素吸蔵積算量の上限値であり、
    前記第2積算値は、前記下流側触媒が前記所定量以上の酸素を放出することのできる酸素吸蔵積算量の下限値であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の内燃機関の触媒劣化検出装置。
  8. 内燃機関のフューエルカットを検出するフューエルカット検出手段と、
    前記フューエルカットの際に前記下流側触媒に吸蔵される酸素量を推定する第2推定手段と、を備え、
    前記酸素吸蔵積算量算出手段は、前記推定手段により推定された酸素量と、前記第2推定手段により推定された酸素量とを積算することで、前記下流側触媒に吸蔵されている酸素吸蔵積算量を算出することを特徴とする請求項7記載の内燃機関の触媒劣化検出装置。
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