JP4451077B2 - 積層型インダクタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性体層とコイル用導体パターンを積層し、磁性体層間のコイル用導体パターンを接続して積層体内にコイルが形成され、積層体に方向識別用のマーカーが形成された積層型インダクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の積層型インダクタに、図6に示す様に磁性体層61A〜61Fとコイル用導体パターン62を積層し、磁性体層間の導体パターン62を螺旋状に接続することにより、これら積層体内にコイルが形成されたものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭59−28304号
【特許文献2】
特開平3−263310号
【0004】
近年、この種の積層型インダクタで、インダクタンス値の公差の小さいものが求められている。
従来の積層型インダクタは、閉磁路構造であるため、誘電体層とコイル用導体パターンを積層して形成したものよりも外部に漏れる磁束が少ないものの、外部に漏れる磁束を完全になくすことはできない。この外部に漏れた磁束や発生する磁界に対して印加される応力の方向の差異によって、図7の(A)と(B)に示す様な実装方向の違いによりインダクタンス値に差が生じてしまう。この実装方向の違いによるインダクタンス値の差は誘電体層とコイル用導体パターンを積層して形成したものよりも小さいが、望まれているインダクタンス値の公差内に抑えることが困難であった。
本発明の発明者は、積層型インダクタが所定の方向で実装されれば、実装方向の違いによるインダクタンス値の差を考慮する必要がなくなることに着目し、特許文献3や特許文献4に示されたものと同様に積層体に方向識別用のマーカーを形成し、この方向識別用のマーカーで実装方向を判別することによりインダクタンス値を所定の公差内に抑えることができることを発見した。
【0005】
【特許文献3】
実開平5−59811号
【特許文献4】
実開平5−87915号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この様な従来の積層型インダクタは、積層体が磁性体層とコイル用導体パターンを積層して形成されるので、積層体に方向識別用のマーカーを形成した後、各素子に分割し、焼成して製造した場合にはマーカーの材料が磁性体に拡散して特性が劣化し、積層体を焼成後に方向識別用のマーカーを形成した場合には工数が増加し、コストが上昇する。また、従来の積層体型インダクタは、積層体が黒色なので、特許文献3や特許文献4に示す様に誘電体層とコイル用導体パターンを積層して形成した積層型インダクタの方向識別用マーカーの材料と同じものを用いた場合、方向識別用のマーカーの発色が悪く、方向を識別する時に方向識別用のマーカーを判別するのが困難であった。
【0007】
本発明は、実装の際の実装方向の判別を容易にすることができ、インダクタンス値の公差を小さくできる積層型インダクタを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、磁性体層とコイル用導体パターンを積層し、磁性体層間のコイル用導体パターンを接続して積層体内にコイルが形成され、積層体の少なくとも1面に方向識別用のマーカーが形成された積層型インダクタにおいて、方向識別用のマーカーが、ホウケイ酸ガラスが10wt%以上30wt%未満、TiOが50wt%以上80wt%以下で、残部にZrO、Alのいずれかの元素を含有する材料で形成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の積層型インダクタは、磁性体層とコイル用導体パターンを積層し、磁性体層間のコイル用導体パターンを螺旋状に接続して積層体内にコイルが形成される。この積層体は、少なくとも1面に、ホウケイ酸ガラスが10wt%以上30wt%未満、TiOが50wt%以上80wt%以下で、残部にZrO、Alのいずれかの元素を含有する材料を用いて方向識別用のマーカーが形成される。この積層型インダクタは、方向識別用のマーカーの材料にホウケイ酸ガラスを10wt%以上30wt%未満、TiOを50wt%以上80wt%以下、好ましくはホウケイ酸ガラスを10wt%以上20wt%以下、TiOを60wt%以上70wt%以下の範囲内で添加し、ZrO、Alのいずれかを含有させることにより、積層体とマーカーの接着強度を向上することができ、かつ、発色を向上させることができる。また、これにより方向識別用のマーカーによって実装方向を確実に決定することができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の積層型インダクタを図1乃至図5を参照して説明する。
図1は本発明の積層型インダクタの実施例を示す分解斜視図、図2は図1の断面図である。
図1、図2において、11A〜11Fは磁性体層、12A〜12Eはコイル用導体パターンである。
磁性体層11A〜11Fは、Ni−Cu−Zn系フェライト等のフェライトで形成される。
磁性体層11Aの表面には、コイル用導体パターン12Aが形成される。コイル用導体パターン12Aは、1ターン未満分が形成され、その一端が磁性体層11Aの端面まで引き出される。
磁性体層11Bの表面には、コイル用導体パターン12Bが形成される。コイル用導体パターン12Bは、コの字状に3/4ターン分が形成され、その一端が磁性体層11Bのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Aの他端に接続される。
磁性体層11Cの表面には、コイル用導体パターン12Cが形成される。コイル用導体パターン12Cは、コ字状に3/4ターン分が形成され、その一端が磁性体層11Cのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Bの他端に接続される。
磁性体層11Dの表面には、コイル用導体パターン12Dが形成される。コイル用導体パターン12Dは、3/4ターン分が形成され、その一端が磁性体層11Dのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Cの他端に接続される。
磁性体層11Eの表面には、コイル用導体パターン12Eが形成される。コイル用導体パターン12Eは、一端が磁性体層11Eのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Dの他端に接続され、他端が磁性体層11Eの端面まで引き出される。
このコイル用導体パターン12Eが形成された磁性体層11Eの表面には、磁性体層11Fが形成される。この磁性体層11Fの表面全体には、方向識別用のマーカー13が形成される。方向識別用のマーカー13は、ホウケイ酸ガラスが10wt%以上30wt%未満、TiOが50wt%以上80wt%以下で、残部にZrO、Alのいずれかの元素を含有する材料で形成されるが、例えば、ホウケイ酸ガラスが20wt%、TiOが60wt%、Alが20wt%の材料で形成される。
この様にしてコイル用導体パターン12A〜12Eによって積層体内に螺旋状のコイルが形成され、積層体のコイルの巻軸と垂直な面に方向識別用のマーカー13が形成される。コイルは、積層体の両端面に形成された外部端子間に接続される。
【0011】
この様な積層型インダクタは以下の様にして製造される。まず、印刷積層法又はシート積層法により磁性体層とコイル用導体パターンを積層した後、最上層の全面にホウケイ酸ガラスが10wt%以上30wt%未満、TiOが50wt%以上80wt%以下で、残部にZrO、Alのいずれかの元素を含有する材料をペースト状にしたものを印刷するか又は、最上層にホウケイ酸ガラスが10wt%以上30wt%未満、TiOが50wt%以上80wt%以下で、残部にZrO、Alのいずれかの元素を含有する材料を備えたグリーンシートを積層することにより積層体の上面に方向識別用のマーカーが形成される。そして、これらの積層体は、所定の素子形状に切断後、脱脂、焼成を行い、この焼成体の両端面に外部電極が形成される。
【0012】
この様に形成された積層型インダクタは、磁性体層をNi−Cu−Zn系フェライトで形成した場合、図3に示す様に、ZrOやAlを含有していなかったり、ホウケイ酸ガラスの添加量が10wt%よりも小さくなると、積層体と方向識別用のマーカーの接着力が低下し、焼成後のバレル研磨等の外部応力によって方向識別用のマーカーが積層体から剥離してしまう。また、ホウケイ酸ガラスの添加量が30wt%以上になると、方向識別用のマーカーの発色が悪くなったり、ホウケイ酸ガラスの積層体への拡散が激しくなることにより、焼成時に積層体が異常収縮して素子の形状が変形する。従って、本発明の積層型インダクタは、ホウケイ酸ガラスの添加量を10wt%以上30wt%未満、TiOを50wt%以上80wt%以下、好ましくはホウケイ酸ガラスを10wt%以上20wt%以下、TiOを60wt%以上70wt%以下の範囲内で添加し、ZrO、Alのいずれかを含有させることにより、方向識別用のマーカーが積層体から剥離することなくマーカの発色を良くでき、また、素子の形状が変形することもない。
【0013】
以上、本発明の積層型インダクタの実施例を述べたが、この実施例に限られるものではない。例えば、方向識別用のマーカーは、積層体の上面、下面のいずれか一方に形成されてもよい。また、図4に示す様に積層体の対向する2面に方向識別用のマーカー43A、43Bを形成してもよいし、図5に示す様に積層体の面の一部分に方向識別用のマーカー53を形成してもよい。さらに、方向識別用のマーカーは、コイルの巻軸と水平な面に形成されてもよい。
また、コイル用導体パターンは、その特性に応じてターン数や形状を様々に変えることができる。
【0014】
【発明の効果】
以上述べた様に本発明の積層型インダクタは、磁性体層とコイル用導体パターンを積層し、磁性体層間のコイル用導体パターンを接続して積層体内にコイルが形成され、積層体の少なくとも1面に、ホウケイ酸ガラスが10wt%以上30wt%未満、TiOが50wt%以上80wt%以下で、残部にZrO、Alのいずれかの元素を含有する材料を用いて方向識別用のマーカーが形成されるので、実装の際の実装方向の判別を容易にすることができると共に、従来10%あったインダクタンス値の公差を5%よりも小さくできた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の積層型インダクタの実施例を示す分解斜視図である。
【図2】 図1の断面図である。
【図3】 本発明の積層型インダクタの方向識別用のマーカーの組成とその組成による方向識別用のマーカーの状態を示す表である。
【図4】 本発明の積層型インダクタの別の実施例を示す断面図である。
【図5】 本発明の積層型インダクタのさらに別の実施例を示す上面図である。
【図6】 従来の積層型インダクタの分解斜視図である。
【図7】 従来の積層型インダクタの断面図である。
【符号の説明】
11A〜11F 磁性体層
12A〜12E コイル用導体パターン

Claims (1)

  1. 磁性体層とコイル用導体パターンを積層し、磁性体層間のコイル用導体パターンを接続して積層体内にコイルが形成され、該積層体の少なくとも1面に方向識別用マーカーが形成された積層型インダクタにおいて、
    該方向識別用マーカーは、ホウケイ酸ガラスが10wt%以上30wt%未満、TiOが50wt%以上80wt%以下で、残部にZrO、Alのいずれかの元素を含有する材料を用いてNi−Cu−Zn系フェライトで形成された該積層体の1面に形成されることを特徴とする積層型インダクタ。
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