JP4449307B2 - ウエーハの熱処理方法及び熱処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエーハ等のようなウエーハに熱処理を行うための熱処理方法及び熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体単結晶シリコン(以下、単にシリコンということがある)等の単結晶インゴットからウエーハを切出した後半導体デバイスを製造するまでには、ウエーハの加工プロセスから素子の形成プロセスまで多数の工程が介在する。それらの工程の一つに熱処理工程がある。この熱処理工程は、ウエーハ表層での無欠陥層の形成、酸素析出物の形成によるゲッタリング層の形成、酸化膜の形成、不純物拡散等の目的で行われ、非常に重要なプロセスである。
【0003】
このような熱処理工程で用いられる熱処理炉、例えば、酸化や不純物拡散に用いられる拡散炉(酸化・拡散装置)としては、現在、ウエーハの大口径化に伴い、ウエーハを水平に積層した状態で複数のウエーハを同時に熱処理する縦型の熱処理炉が主に用いられている。この縦型熱処理炉では、通常複数のウエーハを保持するための熱処理用ボートが用いられている。このような複数のウエーハに同時に熱処理を行う熱処理装置は、バッチ式の熱処理炉と言われている。
【0004】
図4は、バッチ式の縦型熱処理炉の一例を示す概略説明図である。熱処理炉40の反応室41の内部には熱処理用ボート42が設置されており、この熱処理用ボート42に保持された複数のウエーハ43は、反応室41の周囲に設けられたヒータ44によって加熱される。また、反応室41にはガス導入管45を介して雰囲気ガスを導入し、熱処理炉40の上方からガスを流してウエーハ43の周囲を通過させ、ガス排気管46から外部に排出する。このとき、使用する雰囲気ガスは熱処理の目的によって異なるが、主としてH、N、O、Ar等が用いられる。また、不純物拡散の場合には、これらのガスをキャリアガスとして不純物化合物ガスを導入する。
【0005】
図5は、上記のような縦型熱処理炉に設置される熱処理用ボートの具体的な構成の一例を示した概略図である。この熱処理用ボート47は、複数の支柱48が天板49と底板50によって結合されている。また、各支柱の同じ高さにウエーハ載置部となる溝51が形成されており、これらの多数の溝にそれぞれウエーハ43を保持することができる。このように複数のウエーハを保持した熱処理用ボート47を上記のような縦型熱処理炉内に配置することにより、複数のウエーハを同時に熱処理することができる。
【0006】
また、熱処理炉の別の形態として、ウエーハを1枚ずつ熱処理する枚葉式の熱処理装置がある。例えば、この枚葉式の熱処理装置としては、RTA(Rapid Thermal Annealing)と呼ばれる急速加熱・急速冷却熱処理を行うランプ加熱式の熱処理装置等があり、ウエーハ表面における欠陥の消滅、酸素ドナーの消滅、浅い拡散層の形成、薄い酸化膜の形成等を行うための熱処理に使用されている。
【0007】
ここで、枚葉式の熱処理装置の一例として、RTA装置について図6を参照しながら説明する。この図6に示したRTA装置60は、例えば炭化珪素または石英からなる反応室61を有している。ウエーハ62の加熱は、ウエーハ62を囲繞するように反応室61に配置される加熱ヒータ64によって行われる。この加熱ヒータ64は上下方向で分割して配置されており、それぞれ独立に供給される電力を制御できるようになっている。さらに、加熱ヒータ64の外側には、熱を遮蔽するためのハウジング65が配置されている。反応室61には、雰囲気ガスの導入を行うガス導入口66と反応室61に導入された雰囲気ガスを排出するガス排出口67が設けられている。そして、反応室61内でウエーハ62をウエーハ保持部63で保持し、加熱ヒータ64で加熱することによって枚葉式で熱処理を行うことができる。尚、加熱手段は抵抗加熱ヒータに限定されるものではなく、上述のようなランプ加熱式やいわゆる輻射加熱、高周波加熱方式としてもよい。
【0008】
しかしながら、上記のようなバッチ式や枚葉式の熱処理装置を用いたウエーハの熱処理工程では、スリップやウエーハ裏面にキズが発生するといった問題がある。
特に、近年、ウエーハの直径が150mmから200mm、そして300mmへとウエーハの大口径化が進むにつれて、ウエーハに上記のような熱処理を行なった場合、例えばウエーハ裏面から表面に貫通するスリップが顕著に発生してしまう。このようなスリップはその後のデバイス工程等で更に成長し、デバイス作製の際に不良の原因となる。したがって、熱処理によってウエーハに発生するスリップは、デバイス歩留りを低下させる要因の一つであり、無視できない問題である。
【0009】
このようなスリップの発生を抑制する方法として、様々な形状の熱処理用ボートが考案されている。例えば、支柱の本数を増やしたものや、ウエーハを保持するための櫛状のウエーハ保持部を形成したもの、そのウエーハ保持部の形状を直線状から曲線状に変更したもの、さらに近年では支柱に形成した溝に円形板状やリング状のサセプタを載せ、このサセプタでウエーハを支持するタイプの熱処理用ボートも開発されている(例えば、特開平6−260438号公報)。
【0010】
しかしながら、半導体デバイスの量産にも使用されるようになってきた直径300mm、またはそれ以上の直径を有するシリコンウエーハ等では、ウエーハの自重による内部応力が著しく増大するとともに、熱処理工程の際の昇温・降温時にウエーハ面内の温度の不均一に起因して発生する熱歪応力も増大するため、上記のようなボート形状の改良だけではスリップの発生を抑えきれない状況にある。そのため、従来では昇温・降温速度を極端に緩やかにしたり、熱処理用ボートにおける溝の間隔を拡張したりする等の対策を講じているが、スリップの発生を完全に抑えることができず、その上生産性が悪化するという問題も併発していた。
【0011】
さらに、熱処理の際にウエーハに施す熱処理温度が高くなるほどスリップが発生しやすくなる。特に、シリコンウエーハに、表層無欠陥層形成、酸素析出物形成、不純物拡散等に用いられる1200℃程度の熱処理や、SOI(Silicon on insulator)ウエーハの製造方法のひとつであるSIMOX(Separation by implanted oxygen)法で用いられる1300℃を越える熱処理を行った場合では、降伏応力の低下のためにシリコンウエーハにスリップが発生しやすい状況であった。
【0012】
また、ランプ加熱式の熱処理装置等を用いて急速加熱・急速冷却を行なう場合等では、熱処理中にウエーハに温度分布が生じやすいため、ウエーハに反りが生じてスリップが発生しやすいという問題がある。
【0013】
また一方で、半導体デバイスの高集積化によりそのデザインルールが0.10μmに近付くにつれて、ウエーハ裏面に生じるキズの問題も深刻になってきている。つまり、半導体デバイスのデザインルールが0.10μmとその仕様が厳しくなると、デバイス作製の際に露光工程において焦点深度が著しく浅くなるため、ウエーハ裏面に発生した微小なキズが露光機のピンチャックに接するだけで露光不良を起こし、デバイス歩留まりの低下を招いてしまう。しかしながら、上記のような従来の熱処理ではウエーハを裏面で保持しているため、このようなウエーハ裏面のキズの発生を防止することは極めて困難であった。
【0014】
このような問題を解決する為、特開平9−330935号公報では、半導体ウエーハとの接触部に気体噴出口を備えたウエーハ支持手段を有する熱処理用ボートが開示されている。しかしながら、このような熱処理用ボートを用いてウエーハに熱処理を行っても、熱処理の際に気体噴出口から噴出する気体の影響によりウエーハ面内に温度分布を生じさせるため、スリップの発生を十分に抑制することはできなかった。
【0015】
さらに、従来の熱処理工程では、上述のようなウエーハの品質的な問題の他に、熱処理装置に設けられたヒータやランプ等の加熱手段によってウエーハの加熱を行うため、ウエーハの直径が大きくなるに従い、加熱手段に大型のものを用いたりまた加熱手段を複数設置することが必要とされ、熱処理装置の大型化を招いていた。そのため、設備コストへの負担が非常に大きく、さらに消費電力も大きくなるという問題もあった。
【0016】
【特許文献1】
特開平6−260438号公報
【特許文献2】
特開平9−330935号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ウエーハに熱処理を行う際に、大口径のウエーハであってもスリップの発生を抑制して熱処理を行うことができ、さらには、ウエーハ裏面に発生するキズの防止、熱処理時間の短縮、熱処理装置の小型化、コストの削減、消費電力の低減を図ることができるウエーハの熱処理方法及び熱処理装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、ウエーハを熱処理する熱処理方法において、前記ウエーハに加熱した気体を吹き付けながらウエーハに熱処理を行うことを特徴とするウエーハの熱処理方法が提供される。
【0019】
このように、ウエーハに加熱した気体を吹き付けながらウエーハの熱処理を行うことによって、熱処理中のウエーハ面内の温度分布を均一にしてウエーハに生じる熱歪応力を低減することができるので、大口径のウエーハを熱処理する場合や1200℃以上の高温で熱処理を行う場合であっても、スリップの発生を抑制してウエーハに熱処理を行うことができる。
【0020】
このとき、前記ウエーハの主面が水平になるように保持し、前記加熱した気体をウエーハの表面及び裏面に吹き付けながら熱処理を行うことが好ましい。
このようにウエーハの主面が水平になるように保持し、そのウエーハの表面及び裏面に加熱した気体を吹き付けながら熱処理を行うことによって、ウエーハ全体を均一に加熱することができるため、ウエーハに生じる熱歪応力を一層低減して、スリップや反りをウエーハに発生させずに安定した熱処理を行うことができる。
【0021】
また、前記加熱した気体をウエーハ表面及び裏面の全面に吹き付けることが好ましい。
このように、加熱した気体をウエーハ表面及び裏面の全面に吹き付けることによって、熱処理時のウエーハ面内での温度分布をさらに均一にすることができ、ウエーハに発生する熱歪応力を極めて小さくすることができる。
【0022】
さらに、前記気体の温度をウエーハの熱処理温度に加熱して吹き付けることが好ましい。
このように、気体の温度をウエーハの熱処理温度に加熱して吹き付けることによって、別途ウエーハを加熱するためのウエーハ加熱手段を用いずにウエーハに熱処理を行うことが可能となるため、熱処理装置を小型化、簡素化することができ、またコストの削減、消費電力の低減を図ることができる。
【0023】
また本発明では、前記ウエーハを枚葉式で熱処理することが好ましい。
本発明はウエーハの熱処理を枚葉式またバッチ式のどちらの方法で行うこともできるが、枚葉式で熱処理することによって、ウエーハ毎に熱処理条件を設定して所望の品質を有するウエーハを製造することが可能となる。また、例えば上述のように別個にウエーハ加熱手段を用いずに熱処理を行う場合では、断熱性や熱処理装置の大きさ等を考慮するとウエーハを枚葉式で熱処理する方が良い。
【0024】
また、本発明によれば、上記本発明のウエーハの熱処理方法により熱処理されたアニールウエーハを提供することができる。
前記のような本発明のウエーハの熱処理方法により熱処理されたアニールウエーハであれば、大口径のウエーハであっても、また1200℃以上の高温熱処理が施された場合であっても、スリップが発生してないアニールウエーハとすることができる。
【0025】
そして、本発明によれば、ウエーハを熱処理する熱処理装置であって、少なくとも、前記ウエーハを投入して外部と雰囲気を遮断する反応室と、前記ウエーハを保持するウエーハ保持部と、前記ウエーハに吹き付ける気体を加熱する気体加熱装置と、前記ウエーハに加熱した気体を吹き付ける気体供給手段とを具備することを特徴とするウエーハの熱処理装置が提供される。
【0026】
このように、少なくとも、反応室と、ウエーハ保持部と、ウエーハに吹き付ける気体を加熱する気体加熱装置と、加熱した気体を吹き付ける気体供給手段とを具備するウエーハの熱処理装置であれば、熱処理の際にウエーハを均一に加熱してウエーハ内の熱歪応力を低減することができるため、ウエーハにスリップを生じさせずに熱処理できる熱処理装置とすることができる。また、加熱した気体をウエーハに吹き付けるので、ウエーハを加熱するためのウエーハ加熱手段が別個になくてもウエーハの熱処理が可能となるため、熱処理装置の小型化を図ることができる。
【0027】
このとき、前記気体供給手段が、ウエーハの表面側と裏面側の両方に形成されていることが好ましい。
このように、気体供給手段が、ウエーハの表面側と裏面側の両方に形成されていれば、加熱した気体をウエーハ表面及び裏面の全面に吹き付けて、熱処理時のウエーハの温度をより均一にできるので、スリップや反りを発生させずにウエーハを熱処理できる熱処理装置とすることができる。
【0028】
また本発明の熱処理装置は、前記ウエーハを枚葉式で熱処理するものであることが好ましい。
このように本発明の熱処理装置がウエーハを枚葉式で熱処理するものであれば、バッチ式に比べて装置が小型のものとなり、またウエーハ毎に熱処理条件を設定して所望の品質を有するウエーハを製造することができる装置となる。
【0029】
さらに、前記反応室が断熱材で覆われているものであることが好ましい。
このように、反応室が断熱材で覆われているものであれば、別個の加熱手段がなくてもウエーハの加熱を均一に、また効率的に行うことができる。
【0030】
また、前記気体加熱装置は、石英またはSiCからなる細管が屈折させて配置され、加熱手段を用いて前記ウエーハに吹き付ける気体を屈折させて配置した細管に通過させながら加熱するものであることが好ましい。
本発明の熱処理装置における気体加熱装置がこのようにして気体を加熱するものであれば、気体加熱装置自体の構成が簡便で小型のものとすることができ、また長期の使用に耐え得るものとなり、さらにウエーハに吹き付ける気体の加熱を容易かつ瞬時に行うことができるものとなる。
【0031】
このとき、前記気体供給手段に、ウエーハに吹き付ける加熱した気体の圧力及び温度を制御する気体制御手段が備えられていることが好ましい。
このように、気体供給手段に、ウエーハに吹き付ける加熱した気体の圧力及び温度を制御する気体制御手段が備えられていれば、ウエーハの熱処理条件を高精度に制御して熱処理を行うことができ、より品質の優れたアニールウエーハを製造できる熱処理装置となる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
従来、ウエーハに品質向上等の様々な目的で熱処理を行うと、ウエーハにスリップが発生してしまい、その後のデバイス作製工程等で歩留まりを低下させるといった問題があった。
【0033】
そこで、本発明者は、熱処理の際にウエーハにスリップを発生させないようにするために、鋭意検討を重ねた結果、ウエーハの熱処理をウエーハに加熱した気体を吹き付けながら行うことによって、ウエーハにスリップを発生させる要因であるウエーハ面内の温度の不均一による熱歪応力を低減して熱処理を行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0034】
先ず、本発明のウエーハの熱処理装置について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係るウエーハの熱処理装置は、図1に示したように、少なくとも、ウエーハ2をシャッター7から投入して外部と雰囲気を遮断する反応室3と、ウエーハ2を保持するウエーハ保持部4と、ウエーハ2に吹き付ける気体を加熱する気体加熱装置5と、加熱した気体をウエーハ2に吹き付ける気体供給手段6とを具備する熱処理装置1である。さらに、反応室3には、気体供給手段6から加熱した気体をウエーハに吹き付けた後、最終的に気体を外部に排気するための気体排気管14が形成されている。
【0035】
このようなウエーハの熱処理装置1において、気体加熱装置5としては、瞬間湯沸し器の原理を利用したものを用いることができ、例えば、石英またはSiCからなる細管8が屈折させて配置され、加熱手段9を用いてウエーハに吹き付ける気体を屈折させて配置した細管に通過させながら加熱する装置であることが好ましい。気体加熱装置5をこのようにして構成することによって、小型でかつ長期の使用に耐え得る気体加熱装置となり、またウエーハに吹き付ける気体の加熱を容易に行うことができる。このとき、加熱手段9として、カンタル線やMoSi線等の抵抗加熱装置や、ランプ加熱装置等を用いることができる。
【0036】
また、この気体加熱装置5の前段には圧力センサー10とコントロールバルブ11が設けてあり、また気体加熱装置5の後段には加熱されたガスの温度を測定する熱電対12を設置している。そして、この圧力センサー10の情報を気体制御手段13に送ることにより、気体制御手段13でコントロールバルブ11を調節して気体の圧力、流量等を制御し、ウエーハに吹き付ける気体の圧力を調整することができる。さらに、熱電対12の情報を気体制御手段13に送ることにより加熱手段9の温度を調節して加熱する気体の温度も制御することができる。
【0037】
気体供給手段6の材質は、石英やSiC等を用いることができる。ウエーハの熱処理温度が1000℃程度の温度であれば石英を用いることができ、また1000℃を超える高温領域の場合はSiCを用いることが好ましい。SiC素材を用いる場合には、CVD−SiC膜のみで形成されたものを用いることができる。
【0038】
この気体供給手段6には、加熱したガスを吹き出すための複数の貫通孔が形成されている。この貫通孔の数や大きさは特に限定されるものではないが、例えば、直径が0.2〜2.0mm程度の貫通孔を1.0〜5.0mm間隔で設けることによって、ウエーハ2の表面全体に加熱した気体を均一に吹き付けることができる。
【0039】
このような枚葉式の熱処理装置1は、気体加熱装置5でウエーハの熱処理温度に加熱した気体を気体供給手段6からウエーハ2の表面全体に吹き付ける熱処理装置であるため、ウエーハ2を加熱するためのウエーハ加熱手段を別途設置していなくても、例えば反応室3の周りに断熱材15を配置することにより、ウエーハを均一に熱処理することができる。したがって、従来の熱処理装置より小型のものとすることができ、設備コストや消費電力の低減を図ることができる。さらに、複数の枚葉式の熱処理装置を重ね合わせ、例えば一つの気体加熱装置によって同時に操業させることが可能となり、生産性を向上させることができる。
【0040】
尚、上記熱処理装置1は、本発明のウエーハの熱処理装置の一例であって、例えば、設置スペースなどに余裕があればこの熱処理装置1にさらにランプ加熱手段や高周波コイル等のウエーハ加熱手段を補助的に設けてウエーハの加熱を行っても良い。
【0041】
さらに、本発明の熱処理装置において、加熱した気体をウエーハに吹き付けるための気体供給手段は、上記のようにウエーハの表面側に設置されているものに限定されるものではなく、例えば、この気体供給手段をウエーハの裏面側に設置してウエーハの裏面に加熱した気体を吹き付けるようにした熱処理装置としても良く、さらには、気体供給手段をウエーハの表面側と裏面側の両方に設置してウエーハの両面に加熱した気体を吹き付けるようにしても良い。
【0042】
特に、図2に示したように、ウエーハの表面側と裏面側にそれぞれ上部気体供給手段と下部気体供給手段が形成されたウエーハの熱処理装置20であれば、加熱した気体をウエーハ表面及び裏面の全面に吹き付けてウエーハの加熱をより均一にできるので、例えば、急速加熱・急速冷却を行う熱処理の場合でも、ウエーハに反りを発生させず、またスリップの発生もより抑制してウエーハに熱処理を行うことができる熱処理装置となる。
【0043】
尚、この図2に示した熱処理装置では、ウエーハ保持部と下部気体供給手段とが一つの熱処理用ボート21で構成されている例を示したものである。熱処理装置がこのようなボートを用いるものであれば、装置の構成を複雑にすることなく、ウエーハを保持するとともに容易にウエーハの裏面に加熱した気体を吹き付けることのできる熱処理装置とすることができる。
【0044】
このとき、熱処理用ボート21には、上部気体供給手段6と同様に加熱したガスを吹き出すための複数の貫通孔が形成されていることが好ましく、それによって、加熱した気体をウエーハ裏面に均一に吹き付けることができる。さらに、このボート21には、ウエーハに吹き付けた気体の流通を容易に行うため、排気孔22が設けられていることが好ましい。この排気孔の数や大きさは特に限定されるものではないが、例えば直径0.1〜0.5mm程度の排気孔が形成されていれば、加熱した気体の流通がスムーズになり、またこの排気孔の数や大きさを調節することによって、ウエーハ裏面側の気圧を制御することも可能となる。
【0045】
さらに、図3に示したように、上部気体供給手段と下部気体供給手段(熱処理用ボート)のそれぞれに気体を加熱する気体加熱装置5が設置された熱処理装置30であれば、ウエーハの表面及び裏面のそれぞれに吹き付ける気体の温度及び圧力を制御することができるため、所望の品質を有するアニールウエーハをより容易に得ることが可能となる。
【0046】
尚、本発明の熱処理装置では、上部気体供給手段及び下部気体供給手段にそれぞれ気体加熱装置を複数設置して、温度や圧力、また種類の異なる気体を必要に応じて切り替えてウエーハに熱処理を行うようにしても良い。
【0047】
続いて、本発明のウエーハの熱処理方法について、図3に示した熱処理装置30を用いる場合を例に挙げて説明する。
先ず、例えば鏡面研磨された被熱処理ウエーハをシャッター7から反応室3に投入し、熱処理用ボート21にウエーハ外周部のみで接触するようにして水平に保持する。ウエーハの移載方法は特に限定するものではないが、例えば移載ロボット等を用いてウエーハを汚染させること無く実施することが好ましい。
【0048】
次に、ウエーハの両面に気体を吹き付けるために、ウエーハ表面側と裏面側とでそれぞれコントロールバルブ11を介して気体を気体加熱装置5に導入し、気体加熱装置5に配置した細管8を通過させて上部気体供給手段6からウエーハ表面に、またボート21からウエーハ裏面に気体を吹き付ける。
前述のように、上部気体供給手段6とボート21とには複数の貫通孔がそれぞれ形成されているため、気体をウエーハ2の表面及び裏面の全面に均一に吹き付けることができる。
【0049】
このとき、ウエーハ表面側と裏面側の圧力センサ10の情報を気体制御手段13に送り、その情報に基づいて気体制御手段13でコントロールバルブ11を調整することによって、ウエーハに吹き付ける気体の圧力を制御することができる。
【0050】
続いて、ウエーハに吹き付ける気体を気体加熱装置5で加熱することによって、ウエーハに熱処理を行うことができる。このとき、気体加熱装置5で加熱する気体の温度を制御手段13で制御することによって、ウエーハに熱処理を行う際の昇温速度や熱処理温度を調節することができる。
【0051】
このようにしてウエーハに吹き付ける気体の温度を制御すれば、ランプ加熱手段等のようなウエーハを加熱するウエーハ加熱手段を別途設けなくても、例えば、500〜600℃に加熱した気体を各気体供給手段からウエーハに吹き付け、900℃〜1000℃までは10℃/min程度の速度で昇温し、温度が上昇するにつれて、昇温速度を下げつつ、1200℃程度の温度まで昇温し、一定時間高温熱処理を行った後、昇温の場合と同じ程度の速度で降温を行い、600℃程度まで降温したところで、上部気体供給手段から200〜300℃程度にまで下げた気体を流量を上げてウエーハに吹き付けてウエーハの温度を下げるといった熱処理を容易に行うことができる。
【0052】
このようにしてウエーハを枚葉式で熱処理することによって、ウエーハ面内の温度均一性を向上させて熱歪応力を低減することができ、さらにはウエーハの自重によるウエーハの内部応力も低減できるため、ウエーハにスリップを発生させずに熱処理を行うことができる。また、裏面からのガスの供給により、ウエーハ裏面がボートと接触する時にかかる自重による応力が小さくなり、ウエーハの裏面にキズを発生させることもないし、ウエーハに急速加熱・急速冷却を行っても、ウエーハ全体の温度を均一にできるため反りを生じさせることもない。したがって、昇温速度や降温速度を速くすることができ、熱処理時間を短縮して生産性を向上させることが可能となる。
【0053】
その後、ウエーハの温度が100℃以下になったところで、移載ロボットにより、ウエーハをアンロードしてウエーハを回収する。
このようにして製造されたアニールウエーハであれば、大口径のウエーハであっても、スリップが発生してなく、さらにはウエーハ裏面のキズもまた反りも生じてないアニールウエーハとすることができる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
実施例として、図3に示す本発明の熱処理装置30を用いて、直径300mmのシリコンウエーハにDZ層を形成することを目的として、アルゴン雰囲気中、1200℃で1時間の熱処理を行った。
【0055】
先ず、シリコンウエーハをシャッター7から反応室3内に投入してボート21に保持し、シャッター7を閉じた。次に、室温のアルゴンガスを上部気体供給手段6とボート21とからウエーハの表面及び裏面の全面に吹き付けるとともに、制御手段13によりウエーハ裏面側の気圧と表面側の気圧が同じとなるようにコントロールバルブ11を調節した。
【0056】
その後、気体加熱装置5で600℃に加熱した気体を上部気体供給手段6とボート21からウエーハの表面及び裏面に吹き付け、続いて1000℃までは10℃/min、1100°Cまで5℃/min、1200℃までは3℃/minで加熱していき、続いて1200°Cで1時間保持した後、600℃まで昇温と同じ速度で降温した。アルゴンガスの温度を600℃まで降温した後、上部気体供給手段6から吹き付けるアルゴンガスの温度を200℃まで下げるとともにその流量を上げてウエーハを冷却した。冷却後、ウエーハを回収した。
【0057】
(比較例)
比較例として、図6に示す従来の枚葉式の熱処理炉60を用いて、直径300mmのシリコンウエーハにDZ層を形成することを目的として、アルゴン雰囲気中、1200℃で1時間の熱処理を行った。
【0058】
先ず、シリコンウエーハを600℃に加熱された反応室61内に投入し、ウエーハ保持部63で保持した。このとき、反応室61にはガス導入管66からアルゴンガスが流されている。続いて、加熱ヒータ64を用いて、600℃から1000℃までは5℃/min、1000℃から1100℃までは3℃/min、1100℃から1200℃までは2℃/minで昇温し、1200℃で1時間保持することによてウエーハの熱処理を行った。その後、昇温過程と同じ速度で降温してウエーハを冷却した後、ウエーハを回収した。
【0059】
上記実施例及び比較例で得られたアニールウエーハに目視検査を行いスリップの発生の有無について調査を行った。
その結果、実施例で得られたアニールウエーハにはスリップが発生してなく、またウエーハの裏面にもキズがほとんど観察されなかった。しかしながら、比較例で得られたアニールウエーハは、昇降温速度が実施例に比べて遅かったにも関わらず、長さ2mm〜15mmのスリップがウエーハの外周部に数十本発生しているのが確認された。また、この比較例のウエーハの裏面にはスリップとは別にキズが発生していた。
【0060】
また、作製した各アニールウエーハのDZ層の幅を測定した結果、実施例のウエーハでは26μm、比較例では18μmであった。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0062】
例えば、本発明は、上述のような枚葉式の熱処理装置に限定されるものではなく、バッチ式の熱処理装置にも適用することも可能であり、それによって、従来のバッチ式の熱処理装置に比べてより均一にウエーハに熱処理を行うことができ、スリップの発生を抑制することができる。
【0063】
また、上記実施例では、シリコンウエーハにDZ層を形成することを目的として熱処理が行われているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ゲッタリング層の形成や酸化膜の形成、エピタキシャル成長等の種々の目的で行う熱処理に適用することができ、スリップの発生を抑制することができる。特に、本発明は、1200℃以上の熱処理が必要なアニールウエーハの製造やSIMOXウエーハを製造する際の熱処理に対して非常に有効である。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、熱処理中のウエーハに生じる熱歪応力を低減することができるので、大口径のウエーハを熱処理する場合や1200℃以上の高温で熱処理を行う場合であっても、スリップの発生を抑制してウエーハに熱処理を行うことができる。また、本発明のように加熱された気体をウエーハに吹き付けることにより、ヒーター等のウエーハを直接加熱するためのウエーハ加熱手段を別途用いなくても熱処理が行なえ、熱処理装置を小型化、簡素化することができ、コストの削減や消費電力の低減につながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るウエーハの熱処理装置の一例を示す構成概略図である。
【図2】本発明に係るウエーハの熱処理装置の別の例を示す構成概略図である。
【図3】本発明に係るウエーハの熱処理装置のさらに別の例を示す構成概略図である。
【図4】従来のバッチ式の熱処理炉の構成を示す概略図である。
【図5】(a)は、従来のバッチ式の熱処理炉に用いられる熱処理用ボートの構成を示す構成概略図であり、(b)は、熱処理用ボートの断面を示す概略断面図である。
【図6】従来の枚葉式の熱処理装置の構成を示す構成概略図である。
【符号の説明】
1…ウエーハの熱処理装置、 2…ウエーハ、
3…反応室、 4…ウエーハ保持部、
5…気体加熱装置、 6…(上部)気体供給手段
7…シャッター、 8…細管、
9…加熱手段、 10…圧力センサー、
11…コントロールバルブ、 12…熱電対、 13…気体制御手段、
14…気体排気管、 15…断熱材、
20…ウエーハの熱処理装置、 21…熱処理用ボート
22…排気孔、 30…ウエーハの熱処理装置。

Claims (8)

  1. ウエーハを熱処理する熱処理方法において、気体を、屈折させて配置した、石英またはSiCからなる細管に通過させながら加熱手段を用いて加熱し、気体を吹き出すための複数の貫通孔が形成されている気体供給手段によって前記ウエーハの主面が水平になるように保持し、前記加熱した気体をウエーハの表面及び裏面に加熱した気体を吹き付けながらウエーハに熱処理を行うことを特徴とするウエーハの熱処理方法。
  2. 前記加熱した気体をウエーハ表面及び裏面の全面に吹き付けることを特徴とする請求項に記載のウエーハの熱処理方法。
  3. 前記気体の温度をウエーハの熱処理温度に加熱して吹き付けることを特徴とする請求項1または請求項に記載のウエーハの熱処理方法。
  4. 前記ウエーハを枚葉式で熱処理することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のウエーハの熱処理方法。
  5. ウエーハを熱処理する熱処理装置であって、少なくとも、前記ウエーハを投入して外部と雰囲気を遮断する反応室と、前記ウエーハを保持するウエーハ保持部と、石英またはSiCからなる細管が屈折させて配置され、加熱手段を用いて前記ウエーハに吹き付ける気体を屈折させて配置した細管に通過させながら加熱する気体加熱装置と、前記加熱した気体を吹き出すための複数の貫通孔が形成されており、前記ウエーハに加熱した気体を吹き付ける、ウエーハの表面側と裏面側の両方に形成されている気体供給手段とを具備することを特徴とするウエーハの熱処理装置。
  6. 前記ウエーハを枚葉式で熱処理するものであることを特徴とする請求項に記載のウエーハの熱処理装置。
  7. 前記反応室が断熱材で覆われているものであることを特徴とする請求項5または請求項に記載のウエーハの熱処理装置。
  8. 前記気体供給手段に、ウエーハに吹き付ける加熱した気体の圧力及び温度を制御する気体制御手段が備えられていることを特徴とする請求項ないし請求項のいずれか一項に記載のウエーハの熱処理装置。
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