JP4449282B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」という)に関し、詳しくは、特定の硬化型正孔輸送材料を用いた有機電界発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電界発光素子(以下、「EL素子」と記述する)は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。現在は無機螢光体を用いたものが主流であるが、200V以上の交流電圧が駆動に必要なため製造コストが高く、また輝度が不十分等の問題点を有している。
【0003】
一方、有機化合物を用いたEL素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、単結晶の場合、膜厚が1mm程度と厚く100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため蒸着法による薄膜化が試みられている(Thin Solid Films, Vol.94, 171(1982))。しかしながら、この方法で得られた薄膜は、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・正孔キャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られなかった。
【0004】
ところが近年、正孔輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物の薄膜を真空蒸着法により順次積層した機能分離型のEL素子において、10V程度の低電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるものが報告されており(Appl.Phys.Lett., Vol.51, 913(1987))、以来、積層型のEL素子の研究・開発が活発に行われている。これら積層型の素子は、電極から電荷輸送性の有機化合物からなる電荷輸送層を介して正孔と電子のキャリアバランスを保ちながら螢光性有機化合物からなる発光層に注入され、発光層中に閉じ込められた正孔と電子が再結合することにより高輝度の発光を実現している。
【0005】
しかしながら、このタイプのEL素子では、複数の蒸着工程において0.1μm以下の薄膜を形成していくためピン正孔を生じ易く、十分な性能を得るためには厳しく管理された条件下で膜厚の制御を行うことが必要である。従って、生産性が低くかつ大面積化が難しいという問題がある。また、このEL素子は数mA/cm2という高い電流密度で駆動されるため、大量のジュール熱を発生する。このため、蒸着によってアモルファスガラス状態で製膜された正孔輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が次第に結晶化して最後には融解し、輝度の低下や絶縁破壊が生じるという現象が多く見られ、その結果素子の寿命が低下するという問題も有していた。
【0006】
そこで、EL素子の熱安定性に関する問題の解決のために、正孔輸送材料として安定なアモルファスガラス状態が得られるスターバーストアミンを用いたり(第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a−SZK−14(1993)等)、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入したポリマーを用いたり(第42回高分子討論会予稿集20J21(1993))したEL素子が報告されている。しかし、これら単独では正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルに起因するエネルギー障壁が存在するため、陽極からの正孔注入性或いは発光層への正孔注入性を満足するものではない。また、前者のスターバーストアミンの場合、溶解性が小さいために精製が難しく純度を上げることが困難であることや、後者のポリマーの場合、高い電流密度が得られず十分な輝度が得られてない等の問題も存在する。
【0007】
一方、積層型有機EL素子における生産性と大面積化に関する問題の解決を目指し、単層構造のEL素子についても研究・開発が進められ、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いたり(Nature, Vol.357, 477(1992)等)、正孔輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素を混入した(第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31p−G−12(1991))素子が提案されているが、未だ輝度、発光効率等が有機低分子化合物を用いた積層型EL素子には及ばない。
【0008】
さらに、作製法においては、製造の簡略化、加工性、大面積化、コスト等の観点から湿式による塗布方式が望ましく、キャステイング法によっても素子が得られることが報告されている(第50回応用物理学会学術講演予稿集,29p−ZP−5(1989)、第51回応用物理学会学術講演予稿集,28a−PB−7(1990))。しかし、電荷輸送材料の溶剤や樹脂に対する溶解性や相溶性が悪いため結晶化しやすく、製造上あるいは特性上に問題があった。
【0009】
【非特許文献1】
Thin Solid Films, Vol.94, 171(1982)
【非特許文献2】
Appl.Phys.Lett., Vol.51, 913(1987)
【非特許文献3】
第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a−SZK−14(1993)
【非特許文献4】
第42回高分子討論会予稿集20J21(1993)
【非特許文献5】
Nature, Vol.357, 477(1992)
【非特許文献6】
第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31p−G−12(1991)
【非特許文献7】
第50回応用物理学会学術講演予稿集,29p−ZP−5(1989)
【非特許文献8】
第51回応用物理学会学術講演予稿集,28a−PB−7(1990)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、且つ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため正孔輸送材料に関し鋭意検討した結果、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と、イソシアネート基を3個以上有するイソシアネート化合物と、の少なくとも2種を三次元的に架橋重合させたものが、有機EL素子として好適な正孔注入特性、正孔移動度、薄膜形成能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成されるものであって、有機化合物層の少なくとも一層が、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と、イソシアネート基を3個以上有するイソシアネート化合物と、の少なくとも2種を三次元的に架橋重合させた正孔輸送高分子化合物を含有することを特徴とする有機EL素子である。
【0013】
このヒドロキシ基を有する正孔輸送物質としては、下記構造式(B)および(C)で表される化合物から選択される。
【0014】
【化3】
[構造式(B)中、Arは、置換もしくは未置換の1価のベンゼン環、を表し、Xは、ターフェニル基を表し、Tは脂肪族部分の炭素数1〜10の枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表し、mは1、nは0又は1である。]
【0015】
[構造式(C)中、Rは水素原子を表す。X1は水素原子:炭素数1〜5の範囲のアルキル基:フェニル基:置換基として、ハロゲン原子、炭素数1〜5の範囲のアルキル基若しくはハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は、炭素数1〜5の範囲のアルコキシ基で置換されたフェニル基:を表す。Tは脂肪族部分の炭素数が1〜10で枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表す。Ar1、Ar2、Ar3はそれぞれ独立にフェニル基を表し、複数個のハロゲン基、炭素数1〜5の範囲の複数個のアルキル基、炭素数1〜5の範囲の複数個のアルコキシ基で置換されていてもよい。]
【0016】
また、前記イソシアネート化合物の少なくとも一つは、下記構造式(D)で表されるヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット変性体である。
【0017】
【化4】
【0018】
本発明の有機EL素子において、有機化合物層は、機能分離型のもの、例えば、少なくとも正孔輸送層および発光層から構成され、該正孔輸送層が前記ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と、イソシアネート基を3個以上有するイソシアネート化合物と、の少なくとも2種を三次元的に架橋重合させた正孔輸送性高分子化合物を含有してなるものや、キャリア輸送能と発光能を兼ね備えたもの、すなわち、有機化合物層が発光層のみから構成されてなり、該発光層が前記ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と、イソシアネート基を3個以上有するイソシアネート化合物と、の少なくとも2種を三次元的に架橋重合させた正孔輸送性高分子化合物を含有してなるもののいずれでもよい。
【0019】
本発明の有機EL素子において、有機化合物層が発光層のみから構成される場合、該発光層には、他の正孔輸送性材料(上記正孔輸送性高分子化合物以外の正孔輸送材料、電子輸送材料)を含んでもよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成され、該有機化合物層の少なくとも一層が、前記ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と、官能基数が3以上のイソシアネート化合物と、の少なくとも2種を三次元的に架橋重合させた正孔輸送性高分子化合物(以下、単に「正孔輸送性高分子化合物」ということがある。)を含有する。
【0021】
本発明の有機EL素子は、前記正孔輸送性高分子化合物を含有してなる層を有することで、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れる。さらに、前記正孔輸送性高分子化合物を用いることで、大面積化可能であり、容易に製造可能である。また、前記正孔輸送性高分子化合物を含む有機化合物層は、耐溶剤性に優れており、当該有機化合物層上に層形成する場合でも、幅広い溶剤種を用いることができる点でも有利である。
【0022】
正孔輸送性高分子化合物について説明する。
前記ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質としては、下記構造式(A)、(B)、および(C)で示される化合物であることが好適である。但し、本発明では、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質としては、下記構造式(B)および(C)で表される化合物から選択される。
【0023】
【化5】
【0024】
前記構造式(A)、(B)および(C)中、Tは脂肪族部分の炭素数1〜10で枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表す。Tとして具体的には下記(T−1)〜(T−29)に示す構造が好適に挙げられる。
【0025】
【化6】
【0026】
前記構造式(A)、(B)中、Arは、置換もしくは未置換の1価のベンゼン環、置換もしくは未置換の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の縮合環芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の複素環または置換もしくは未置換の1価の複素環含有芳香族炭化水素を表す。但し、本発明では、構造式(B)中、Arは、置換もしくは未置換の1価のベンゼン環を表す。
【0027】
Arを表す構造として選択される多核芳香族炭化水素および縮合環芳香族炭化水素を構成する芳香環数は特に限定されないが、芳香環数が1〜3のものが好ましく、縮合環芳香族炭化水素においては、全縮合環芳香族炭化水素が好ましい。なお、当該多核芳香族炭化水素および縮合環芳香族炭化水素とは、本発明においては、具体的には以下に定義される多環式芳香族のことを意味する。
【0028】
即ち、「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、炭素―炭素の単結合によって結合している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。
また、「縮合環芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、1対の隣接して結合する炭素原子を共有している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等が挙げられる。
なお、全ての芳香環が縮合環構造のより連続的に隣接してなる縮合環芳香族炭化水素を「全縮合環芳香族炭化水素」という。一方、これ以外の縮合環芳香族炭化水素を「部分縮合環芳香族炭化水素」という。
【0029】
Arを表す構造のひとつとして選択される複素環は、その環骨格を構成する原子数(Nr)は、Nr=5および/又は6が好ましく用いられる。また、環骨格を構成するC以外の原子(異種原子)の種類および数は特に限定されないが、例えば、S、N、O等が好ましく用いられ、前記環骨格中には2種類以上および/又は2個以上の異種原子が含まれていてもよい。特に5員環構造を持つ複素環として、チオフェン、チオフィンおよびフランの3位および4位の炭素を窒素で置き換えた複素環、ピロールの3位および4位の炭素を窒素で置き換えた複素環が好ましく用いられ、6員環構造をもつ複素環として、ピリジンが好ましく用いれる。
【0030】
Arを表す構造のひとつとして選択される複素環含有芳香族炭化水素は、この芳香族化合物を構成する個々の、複素環と、芳香環との数は特に限定されるものではないが、複素環数が1〜5、芳香環数が1〜5であり、さらに、少なくとも1環以上の複素環と1環以上の芳香環が縮合環構造を形成していることが好ましい。また、各々の複素環の構造は記述した複素環と同様であることが好ましい。
【0031】
Arを表す構造として選択されるベンゼン環、多核芳香族炭化水素、縮合環芳香族炭化水素、複素環、または複素環含有芳香族炭化水素の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルコキシル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体的例は前述の通りである。
【0032】
前記構造式(A)、(B)中、Xは、置換もしくは未置換の芳香族基、置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の縮合環芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の複素環含有多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環、または置換もしくは未置換の2価の複素環含有芳香族炭化水素を表す。但し、本発明では、構造式(B)中、Xは、ターフェニルを表す。
【0033】
Xを表す構造として選択される前記多核芳香族炭化水素および前記縮合環芳香族炭化水素を構成する芳香環数は、芳香環数が2〜6のものが好ましい。また、前記縮合環芳香族炭化水素がその芳香環数が5ないし6であるときには、部分縮合環芳香族炭化水素がその芳香環数が5ないし6であるときには、部分縮合環芳香族炭化水素が好ましく用いられる。
【0034】
Xを表す構造として選択される前記複素環含有多核芳香族炭化水素を構成する複素環数は特に限定されないが、複素環数が2〜13が好ましく、さらに、複素環が直鎖状に結合しているものがより好ましい。また各々の複素環の構造は、記述したArを表す構造のひとつとして選択される複素環と同様であることが好ましい。
【0035】
Xを表す構造として選択される前記芳香族複素環は、この芳香族化合物を構成する個々の複素環数および芳香環数は特に限定されるものではないが、複素環数が1〜11、芳香環数が2であり、さらに、複素環が直鎖状に結合した2価の多核複素族炭化水素の両末端に芳香環が結合しているものが好ましい。また、各々の複素環の構造は記述したArを表す構造のひとつとして選択される複素環と同様であることが好ましい。
【0036】
Xを表す構造として選択される前記複素環含有芳香族炭化水素は、この芳香族化合物を構成する個々の、複素環と、芳香環との数は特に限定されるものではないが、複素環数が1〜5、芳香環数が1〜5であり、さらに、少なくとも1環以上の複素環と1環以上の芳香環が縮合環構造を形成していることが好ましい。また各々の複素環の構造は記述したArを表す構造のひとつとして選択される複素環と同様であることが好ましい。
【0037】
Xを表す構造として選択される多核芳香族炭化水素、縮合環芳香族炭化水素、多核複素族炭化水素、芳香族複素環または複素環含有芳香族炭化水素の置換基としては、前述のArの置換基と同様のものが用いることができる。
【0038】
なお、本発明において、複素環含有多核芳香族炭化水素、芳香族複素環および複素環含有芳香族炭化水素とは、以下に定義される構造を有する有機化合物のことを言う。
「複素環含有多核芳香族炭化水素」とは、多核芳香族炭化水素を構成する芳香環を、全て複素環で置換した構造を有する複素環数が2以上の複素環化合物を意味する。
「芳香族複素環」とは、多核芳香族炭化水素を構成する芳香環のうち、一部の芳香環を複素環に置換した芳香族化合物を意味する。
「複素環含有芳香族炭化水素」とは、縮合環芳香族炭化水素を構成する芳香環のうち、一部の芳香環を複素環に置換した芳香族化合物を意味する。
【0039】
Xの具体例としては、例えば、下記式(X−a)〜(X−m)から選択された基が挙げられる。
【0040】
【化7】
【0041】
式(X−a)〜(X−m)中、R1は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、a、bはそれぞれ独立に0〜10の整数を意味する。なお、式(X−d)および(X−k)中に示されたVは下記式(1)〜(18)から選択された基を表す。
【0042】
【化8】
【0043】
なお、式(1)(10)(15)(16)(17)(18)において、b〜gは0〜10の整数を意味する。
前記構造式(A)および(B)中、m、nは0又は1である。
【0044】
前記構造式(C)中、Rは水素原子、又は炭素数1〜5の範囲のアルキル基を表す。ここで、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。但し、本発明では、Rは、水素原子を表す。
【0045】
前記構造式(C)中、X1は水素原子:炭素数1〜5の範囲のアルキル基:フェニル基:置換基として、ハロゲン原子、炭素数1〜5の範囲のアルキル基若しくはハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は、炭素数1〜5の範囲のアルコキシ基で置換されたフェニル基:を表す。
ここで、ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。上記アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基が挙げられる。
【0046】
前記構造式(C)中、Ar1、Ar2、Ar3はそれぞれ独立にフェニル基、ナフチル基、又は、アントラセン基を表し、複数個のハロゲン基、炭素数1〜5の範囲の複数個のアルキル基、炭素数1〜5の範囲の複数個のアルコキシ基で置換されていてもよい。Ar1として具体的には、下記(Ar1−1)〜(Ar1−18)で示す構造が好適に挙げられる。また、Ar2、Ar3として具体的には、(ArX−1)〜(ArX−21)に示す構造が好適に挙げられる。なお、Ar1の結合方向は、T、N原子のいずれでもよい。但し、本発明では、Ar 1 、Ar 2 、Ar 3 はそれぞれ独立にフェニル基を表し、複数個のハロゲン基、炭素数1〜5の範囲の複数個のアルキル基、炭素数1〜5の範囲の複数個のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0047】
【化9】
【0048】
【化10】
【0049】
構造式(C)中、nは0又は1を表す。
【0050】
前記構造式(C)中、特に好ましくは、Rは水素原子:炭素数1〜3の範囲のアルキル基を表す。X1は炭素数1〜3の範囲のアルコキシ基:フェニル基:ハロゲン原子で置換された炭素数1〜3の範囲のアルキル基又は炭素数1〜3の範囲のアルコキシ基で置換されたフェニル基:ハロゲン原子で置換されたフェニル基:ハロゲン原子で置換されたアルキル基で置換されたフェニル基:を表す。Tは脂肪族部分の炭素数が1〜5で枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表す。Ar1は、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、又はピレン基を表し、これらはハロゲン原子、炭素数1〜3の範囲のアルキル基、炭素数1〜3の範囲のアルコキシ基で置換されていてもよい。Ar2、Ar3は、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、又はビフェニル基を表し、これらはハロゲン原子、炭素数1〜3の範囲のアルキル基、炭素数1〜3の範囲のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0051】
また、構造式(A)で表される化合物としては、下記構造式(A’)および(B’)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0052】
【化11】
【0053】
前記構造式(A’)および(B’)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の範囲のアルキル基、炭素数1〜5の範囲のアルコキシ基、又は、炭素数1〜2の範囲のアルキル基で置換されたアミノ基を表す。
R4は水素原子:ハロゲン原子:炭素数1〜5の範囲のアルキル基:炭素数1〜5の範囲のアルコキシ基:フェニル基:置換基として、ハロゲン原子、炭素数1〜5の範囲のアルキル基若しくはハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は、炭素数1〜5の範囲のアルコキシ基で置換されたフェニル基:を表す。
ここで、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基としては、前述と同様なものが挙げられる。
【0054】
前記構造式(A’)および(B’)中、中、Tは脂肪族部分の炭素数が1〜10で枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表す。Tとして具体的には、前述と同様な(T−1)〜(T−29)に示す構造が好適に挙げられる。
【0055】
前記構造式(A’)中、特に好ましくは、R1、R2、R3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3の範囲のアルキル基、炭素数1〜3の範囲のアルコキシ基を表す。Tは脂肪族部分の炭素数が1〜5で枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表す。nは0又1を表す。
前記構造式(B’)中、特に好ましくは、R4は水素原子:炭素数1〜3の範囲のアルキル基:炭素数1〜3の範囲のアルコキシ基:フェニル基:ハロゲン原子で置換された炭素数1〜3の範囲のアルキル基又は炭素数1〜3の範囲のアルコキシ基で置換されたフェニル基:ハロゲン原子で置換されたフェニル基:ハロゲン原子で置換されたアルキル基で置換されたフェニル基:を表す。Tは脂肪族部分の炭素数が1〜5で枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表す。nは0又は1を表す。
【0056】
以下、構造式(A)で表される化合物の具体例を示す。本発明は、これら具体例に限定されるわけではない。なお、Tの欄は、上記Tの具体例として構造番号を示す。以下、各番号を付した具体例、例えば、構造番号15の番号を付した具体例は例示化合物(15)という。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
【表10】
【0067】
【表11】
【0068】
【表12】
【0069】
【表13】
【0070】
【表14】
【0071】
【表15】
【0072】
【表16】
【0073】
【表17】
【0074】
【表18】
【0075】
【表19】
【0076】
【表20】
【0077】
【表21】
【0078】
【表22】
【0079】
【表23】
【0080】
【表24】
【0081】
【表25】
【0082】
【表26】
【0083】
【表27】
【0084】
【表28】
【0085】
【表29】
【0086】
【表30】
【0087】
【表31】
【0088】
【表32】
【0089】
【表33】
【0090】
【表34】
【0091】
【表35】
【0092】
【表36】
【0093】
【表37】
【0094】
【表38】
【0095】
【表39】
【0096】
【表40】
【0097】
【表41】
【0098】
【表42】
【0099】
【表43】
【0100】
【表44】
【0101】
【表45】
【0102】
【表46】
【0103】
【表47】
【0104】
【表48】
【0105】
【表49】
【0106】
【表50】
【0107】
【表51】
【0108】
【表52】
【0109】
【表53】
【0110】
【表54】
【0111】
【表55】
【0112】
【表56】
【0113】
【表57】
【0114】
【表58】
【0115】
【表59】
【0116】
【表60】
【0117】
【表61】
【0118】
【表62】
【0119】
【表63】
【0120】
【表64】
【0121】
以下、構造式(B)で表される化合物の具体例を示す。本発明は、これら具体例に限定されるわけではない。なお、Tの欄は、上記Tの具体例として構造番号を示す。以下、各番号を付した具体例、例えば、構造番号15の番号を付した具体例は例示化合物(15)という。但し、本発明において、構造式(B)で表される化合物の具体例に該当するものは、例示化合物(B−1)〜(B−19)である。
【0122】
【表65】
【0123】
【表66】
【0124】
【表67】
【0125】
【表68】
【0126】
【表69】
【0127】
【表70】
【0128】
【表71】
【0129】
【表72】
【0130】
【表73】
【0131】
【表74】
【0132】
【表75】
【0133】
【表76】
【0134】
【表77】
【0135】
【表78】
【0136】
【表79】
【0137】
【表80】
【0138】
【表81】
【0139】
【表82】
【0140】
【表83】
【0141】
【表84】
【0142】
【表85】
【0143】
【表86】
【0144】
【表87】
【0145】
【表88】
【0146】
【表89】
【0147】
【表90】
【0148】
【表91】
【0149】
【表92】
【0150】
【表93】
【0151】
【表94】
【0152】
【表95】
【0153】
【表96】
【0154】
【表97】
【0155】
【表98】
【0156】
【表99】
【0157】
【表100】
【0158】
【表101】
【0159】
【表102】
【0160】
【表103】
【0161】
【表104】
【0162】
【表105】
【0163】
【表106】
【0164】
【表107】
【0165】
【表108】
【0166】
【表109】
【0167】
【表110】
【0168】
【表111】
【0169】
【表112】
【0170】
【表113】
【0171】
【表114】
【0172】
【表115】
【0173】
【表116】
【0174】
【表117】
【0175】
【表118】
【0176】
【表119】
【0177】
【表120】
【0178】
【表121】
【0179】
以下、構造式(C)で表される化合物の具体例を示す。本発明は、これら具体例に限定されるわけではない。なお、Tの欄は、上記Tの具体例として挙げた構造番号を示す。Ar1、Ar2、Ar3の欄は、上記Ar1、Ar2、Ar3の具体例として挙げた構造番号を示す。Ar1の結合方向は、T、N原子のいずれでもよい。以下、各番号を付した具体例、例えば、構造番号15の番号を付した具体例は例示化合物(15)という。但し、本発明において、構造式(C)で表される化合物の具体例に該当するものは、例示化合物(C−1)〜(C−3)、(C−20)である。
【0180】
【表122】
【0181】
このような、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質は、従来公知の方法により、容易に合成することができる。
【0182】
官能基数が3以上のイソシアネート化合物について説明する。
官能基数が3以上のイソシアネート化合物は、架橋して三次元網目構造を形成するため、イソシアネート化合物として3官能以上、即ち、反応可能なイソシアネート基を3個以上有する化合物である。
【0183】
官能基数が3個以上のイソシアネート化合物としては、イソシアネート単量体から得られる誘導体やプレポリマなどのポリイソシアネート変性体を用いることが好適である。具体例としては、官能基数が3以上のポリオールにイソシアネートを付加したアダクト変性体、ウレア結合を有する化合物をイソシアネート化合物で変成したビューレット変性体、ウレタン基にイソシアネートを付加したアロファネート変性体、ウレタン基にイソシアネートを付加したイソシアヌレート変性体、および、カルボジイミド変性体などが挙げられる。中でも、官能基数が3以上のポリオールにイソシアネートを付加したアダクト変性体、ウレア結合を有する化合物をイソシアネート化合物で変性したビューレット変性体、ウレタン基にイソシアネートを付加したアロファネート変性体、ウレタン基にイソシアネートを付加したイソシアヌーレト変性体が好ましく、特に好ましくは、下記構造式(D)で表されるヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット変性体、および下記構造式(E)で表されるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体である。これらの構造式(D)、(E)を用いると、正孔輸送性の面で特に優れた特性を示す。また、これら以外の変性体の具体例としては構造式(i)〜(iii)等も好適に挙げられる。但し、本発明において、イソシアネート化合物の少なくとも一つが、下記構造式(D)で表されるヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット変性体である。
【0184】
【化12】
【0185】
【化13】
【0186】
官能基数が3以上のイソシアネート化合物と共に補助的に用いることができるイソシアネート化合物として、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソソアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、リジンイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−イイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートなどの一般的なイソシアネート単量体を挙げることができる。
【0187】
なお、上述したポリイソシアネート変性体に含まれるが、イソシアネート基の活性を一時的にマスクするためのブロッキング剤を反応させたブロックイソシアネートも好ましく用いることができる。これは、塗布液のポットライフを延長させる点からも好ましいものである。
【0188】
以上、説明したヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と官能基数が3以上のイソシアネート化合物との少なくとも2種を三次元的に架橋重合させた正孔輸送性高分子化合物は、通常、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と、官能基数が3以上のイソシアネート化合物との少なくとも2種を、層形成塗液に混合し、加熱することで、三次元的に架橋重合され、有機化合物層に含まれる。
【0189】
次に、本発明の有機EL素子の層構成について詳記する。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極と、それら電極間に挾持された発光層を含む一つまたは複数の有機化合物層より構成され、該有機化合物層の少なくとも1層に前記正孔輸送性高分子化合物を含有してなる。
【0190】
本発明の有機EL素子においては、有機化合物層が1つの場合は、有機化合物層はキャリア輸送能を持つ発光層を意味し、該発光層が前記ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質、および、官能基数が3以上のイソシアネート化合物の少なくとも2種類の化合物を三次元的に架橋重合させたもの含有してなる。また、有機化合物層が複数の場合(機能分離型の場合)は、その少なくとも一つが発光層であり、他の有機化合物層は、キャリア輸送層、すなわち、正孔輸送層、電子輸送層、または正孔輸送層と電子輸送層よりなるものを意味し、これらの少なくとも一層が前記正孔輸送性高分子化合物を含有してなる。具体的には、例えば、有機化合物層が少なくとも正孔輸送層および発光層から構成され、該正孔輸送層が前記正孔輸送性高分子化合物を含有してなるものや、有機化合物層が発光層のみから構成されてなり、該発光層が前記正孔輸送性高分子化合物を含有してなるもの等が挙げられる。
【0191】
以下、図面を参照しつつ、より詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の有機EL素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1の場合は、有機化合物層が複数の場合の一例であり、図2の場合は、有機化合物層が1つの場合の例を示す。なお、図1および2において、同様の機能を有するものは同じ符号を付して説明する。
【0192】
図1に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層3、発光層4、および背面電極6を順次積層してなる。一方、図2に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、キャリア輸送能を持つ発光層5、および背面電極6を順次積層してなる。以下、各々を詳しく説明する。
【0193】
なお、前記正孔輸送性化合物が含有してなる有機化合物層は、図1に示される有機EL素子の層構成の場合、正孔輸送層3として作用し、また、図2に示される有機EL素子の層構成の場合、キャリア輸送能を持つ発光層5として作用する。
【0194】
図1〜2に示される有機EL素子の層構成の場合、透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが好ましく、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられる。透明電極2は、透明絶縁体基板と同様に発光を取り出すため透明であって、かつ正孔の注入を行うため仕事関数の大きなものが好ましく、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、および蒸着或いはスパッタされた金、白金、パラジウム等が用いられる。
【0195】
図1に示される有機EL素子の層構成の場合、正孔輸送層3は前記正孔輸送性高分子化合物単独で形成されていてもよいが、正孔移動度を調節するために前記正孔輸送性高分子化合物以外の正孔輸送材料を1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。このような正孔輸送材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられるが、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質、および、官能基数が3以上のイソシアネート化合物の少なくとも2種類の化合物を三次元的に架橋重合させたものとの相容性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が好ましい。また、他の汎用の樹脂等との混合でもよい。
【0196】
図1に示される有機EL素子の層構成の場合、発光層4には、固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が発光材料として用いられる。発光材料が有機低分子の場合、真空蒸着法もしくは低分子と結着樹脂を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。また、高分子の場合、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。好適には、有機低分子の場合、キレート型有機金属錯体、多核または縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が、高分子の場合、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(IV−1)〜(IV−15)が用いられるが、これらに限定されたものではない。なお、構造式(IV−13)〜(IV−15)中、nおよびxは1以上の整数を示す。
【0197】
【化14】
【0198】
【化15】
【0199】
また、有機EL素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を目的として、上記の発光材料中にゲスト材料として発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。真空蒸着によって発光層を形成する場合、共蒸着によってドーピングを行い、溶液または分散液を塗布・乾燥することで発光層を形成する場合、溶液または分散液中に混合することでドーピングを行う。発光層中における色素化合物のドーピングの割合としては0.001重量%〜40重量%程度、好ましくは0.01重量%〜10重量%程度である。このようなドーピングに用いられる色素化合物としては、発光材料との相容性が良く、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、好適にはDCM誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(V−1)〜(V−4)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0200】
【化16】
【0201】
また、発光材料として、真空蒸着や溶液または分散液を塗布・乾燥することが可能であるが良好な薄膜とならないものや、明確な電子輸送性を示さないものを用いる場合には、有機EL素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を目的として、発光層4と背面電極6の間に電子輸送層を挿入してもよい。このような電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、真空蒸着法により良好な薄膜形成が可能な有機化合物が用いられ、好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VI−1)〜(VI−3)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0202】
【化17】
【0203】
図2に示される有機EL素子の層構成の場合、キャリア輸送能を持つ発光層5は少なくとも上記ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質、および、官能基数が3以上のイソシアネート化合物の少なくとも2種類の化合物を三次元的に架橋重合させたものの中に発光材料を50重量%以下分散させた有機化合物層であり、発光材料としては前記化合物(IV−1)ないし化合物(IV−12)が好適に用いられるが、有機EL素子に注入される正孔と電子のバランスを調節するために電子輸送材料を10重量%〜50重量%分散させてもよく、或いはキャリア輸送能を持つ発光層5と背面電極6の間に、電子輸送材料よりなる電子輸送層を挿入してもよい。このような電子輸送材料としては、上記ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質、および、官能基数が3以上のイソシアネート化合物の少なくとも2種類の化合物を三次元的に架橋重合させたものと強い電子相互作用を示さない有機化合物が用いられ、好適には下記の化合物(VII)が用いられるが、これに限定されるものではない。同様に正孔移動度を調節するために、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質以外の正孔輸送材料、好ましくはテトラフェニレンジアミン誘導体を適量同時に分散させて用いてもよい。また、発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。
【0204】
【化18】
【0205】
図1〜2に示される有機EL素子の層構成の場合、背面電極6には、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に好ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウムおよびこれらの合金である。
【0206】
図1〜2に示される有機EL素子において、正孔輸送層3およびキャリア輸送能を持つ発光層5は、上記各組成に従った材料を有機溶媒中に溶解或いは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極上にスピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することによって形成される。正孔輸送層3或いはキャリア輸送能を持つ発光層5の膜厚は、0.03〜0.2μm程度が好ましい。発光材料の分散状態は分子分散状態でも微粒子分散状態でも構わない。分子分散状態とするためには、分散溶媒は前記正孔輸送性高分子化合物、発光材料、電子輸送材料、正孔輸送材料の共通溶媒を用いる必要があり、微粒子分散状態とするために分散溶媒は発光材料の分散性と、電子輸送材料、正孔輸送材料および前記正孔輸送性高分子化合物の溶解性を考慮して選択する必要がある。微粒子状に分散するためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ボールミル、ホモジェナイザー、超音波法等が利用できる。
【0207】
次いで、上記のようにして形成された前記正孔輸送性高分子化合物を含む層の上に、各有機EL素子の層構成に応じて、それぞれ、発光層4や背面電極6、必要に応じて電子輸送層を真空蒸着法により形成する。これにより容易に有機EL素子を作製することが可能である。形成される発光層4および電子輸送層の膜厚は、各々0.1μm以下、特に0.03〜0.08μmの範囲であることが好ましい。
【0208】
以上、説明した本発明の有機EL素子は、一対の電極間に、例えば、4〜20Vで、電流密度1〜200mA/cm2の直流電圧を印加することによって発光させることができる。
【0209】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0210】
(参考例1)
ヒドロキシ基を有する電荷輸送物質として、例示化合物(A−4)1部、上記構造式(D)で表されるビューレット変性ポリイソシアネート溶液(固形分67重量%)1部をジクロロエタン40部に溶解して調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布し、膜厚約0.1μmの正孔輸送層を形成した。十分乾燥させた後、発光材料として昇華精製した前記例示化合物(IV−1)をタングステンボートに入れ、真空蒸着法により蒸着して、正孔輸送層上に膜厚0.05μmの発光層を形成した。この時の真空度は10-5Torr、ボート温度は300℃であった。続いてMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0211】
(参考例2)
参考例1に用いた例示化合物(A−4)1部、上記構造式(D)で表されるビューレット変性ポリイソシアネート溶液(固形分67重量%)1部、発光材料として、前記例示化合物(IV−1)1重量部を混合し、ジクロロエタン40部に溶解して調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。充分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0212】
(参考例3)
参考例1に用いた例示化合物(A−4)1部、上記構造式(D)で表されるビューレット変性ポリイソシアネート溶液(固形分67重量%)1部、発光材料として前記例示化合物(IV−1)を0.1重量部、電子輸送材料として前記例示化合物(VI−1)を1重量部を混合し、ジクロロエタン40部に溶解して調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。十分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0213】
(実施例4)
例示化合物(A−4)1部の代わりに例示化合物(B−2)1部を用いた以外は、参考例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0214】
(実施例5)
例示化合物(A−4)1部の代わりに例示化合物(B−2)1部を用いた以外は、参考例2と同にして有機EL素子を作製した。
【0215】
(実施例6)
例示化合物(A−4)1部の代わりに例示化合物(B−2)1部を用いた以外は、参考例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0216】
(実施例7)
例示化合物(A−4)1部の代わりに例示化合物(C−1)1部を用いた以外は、参考例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0217】
(実施例8)
例示化合物(A−4)1部の代わりに例示化合物(C−1)1部を用いた以外は、参考例2と同にして有機EL素子を作製した。
【0218】
(実施例9)
例示化合物(A−4)1部の代わりに例示化合物(C−1)1部を用いた以外は、参考例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0219】
(比較例1)
下記構造式(VIII)で示される正孔輸送材料を1重量部、発光材料として前記例示化合物(IV−1)を1重量部、結着樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を1重量部混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。十分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0220】
【化19】
【0221】
(比較例2)
正孔輸送性材料としてポリビニルカルバゾール(PVK)を2重量部、発光材料として前記例示化合物(V−1)を0.1重量部、電子輸送材料として前記化合物(VI−1)を1重量部混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布して膜厚0.1μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。十分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0222】
(評価)
以上のように作製した有機EL素子を、真空中(1.33.3×10-3Pa(10-3Torr))でITO電極側をプラス、Mg−Ag背面電極をマイナスとして直流電圧を印加し、発光について測定を行い、このときの最高輝度、および発光色を評価した。それらの結果を表123に示す。また、乾燥窒素中で有機EL素子の発光寿命の測定を行った。発光寿命の評価は、初期輝度が50cd/m2となるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命(hour)とした。この時の駆動電流密度を素子寿命と共に表123に示す。
【0223】
【表123】
【0224】
表123の結果から、有機化合物層の少なくとも一層に、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と、官能基数が3以上のイソシアネート化合物と、の少なくとも2種を三次元的に架橋重合させ正孔輸送性高分子化合物を含有したものは、有機EL素子に好適なイオン化ポテンシャルおよび正孔移動度を持ち、また、スピンコーティング法、ディップ法等を用いて良好な薄膜を形成することが可能であることがわかる。また、当該正孔輸送性高分子化合物を用いて形成された本発明の有機EL素子は、十分に高い輝度を示し、また、膜厚を比較的厚く設定できるため、ピン正孔等の不良も少なく、大面積化も容易であり、しかも向上した耐久性を有することがわかる。
【0225】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、且つ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の有機EL素子の一例の模式的断面図である。
【図2】 本発明の有機EL素子の他の一例の模式的断面図である。
【符号の説明】
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 正孔輸送層
4 発光層
5 キャリア輸送能を持つ発光層
6 背面電極
Claims (4)
- 少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成される電界発光素子において、該有機化合物層の少なくとも一層が、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と、イソシアネート基を3個以上有するイソシアネート化合物と、の少なくとも2種を三次元的に架橋重合させた正孔輸送性高分子化合物を含有し、
前記ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質の少なくとも1つが、下記構造式(B)および(C)で表される化合物から選択され、
前記イソシアネート化合物の少なくとも一つが、下記構造式(D)で表されるヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット変性体であることを特徴とする有機電界発光素子。
[構造式(C)中、Rは水素原子を表す。X1は水素原子:炭素数1〜5の範囲のアルキル基:フェニル基:置換基として、ハロゲン原子、炭素数1〜5の範囲のアルキル基若しくはハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は、炭素数1〜5の範囲のアルコキシ基で置換されたフェニル基:を表す。Tは脂肪族部分の炭素数が1〜10で枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表す。Ar1、Ar2、Ar3はそれぞれ独立にフェニル基を表し、複数個のハロゲン基、炭素数1〜5の範囲の複数個のアルキル基、炭素数1〜5の範囲の複数個のアルコキシ基で置換されていてもよい。]
- 前記有機化合物層が少なくとも正孔輸送層および発光層から構成され、該正孔輸送層が、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と、イソシアネート基を3個以上有するイソシアネート化合物と、の少なくとも2種類を三次元的に架橋重合させた正孔輸送性高分子化合物を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が発光層のみから構成され、該発光層が、ヒドロキシ基を有する正孔輸送物質と、イソシアネート基を3個以上有するイソシアネート化合物と、の少なくとも2種類を三次元的に架橋重合させた正孔輸送性高分子化合物を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光素子。
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