以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
図2は本発明の実施の形態1に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。また、図3は図2のIII−III線矢視図であり、図4は図2のIV−IV線矢視図である。なお、本実施の形態の半導体発光素子の発光波長は1.3μmとした。
図2から図4に示すように、n型InP基板1上にはストライプ構造10が形成されている。このストライプ構造10は、n型InP下部クラッド層3(厚み100nm)、InGaAsP/InGaAsP量子井戸活性層4(以下、単に活性層4という)、p型InP上部クラッド層5(厚み50nm)6が順に積層されて構成されている。ここで、活性層4は、5ペアーのIn0.9Ga0.1As0.2P0.8バリア層(厚み10nm、組成波長1.1μm、格子歪0%)、In0.9Ga0.1As0.5P0.5井戸層(厚み4nm、量子井戸波長1.3μm、格子歪1%)、および導波路(ガイド)層からなる歪量子井戸構造である。ストライプ構造10の端面は劈開されており、その結果活性層4はn型InP基板1に対して平行な方向の共振器として機能する。また、p型InP上部クラッド層5には、複数の円柱状の凹部9を四角格子状に配列することによって得られたフォトニック結晶構造2が形成されている。そして、隣り合う凹部9の2つの配列方向(図2中のα方向およびβ方向)のうち、何れか一方の方向(図2ではα方向)と共振器方向とが一致している。
なお、本明細書において、「共振器方向」とは、図2においてα方向として表記されている方向のことであって、すなわち、矩形の共振器の長手方向を意味する。
n型InP基板1の裏面には下部電極7が形成されている。一方、p型InP上部クラッド層5の表面であって、平面視において、フォトニック結晶構造2が形成されていない領域には、p型InP上部クラッド層5と比べて幅の狭いストライプ状の上部電極6が形成されている。ここで、フォトニック結晶構造2と上部電極6とは平面視において共振器方向に並べられている。
なお、活性層4、すなわち共振器の幅が2μm程度と狭い場合には外部微分量子効率が上昇することになるが、注入電流が増加するにしたがって出力光強度が飽和してくる。一方、このストライプ構造の幅Wを10μm程度まで広げた場合、フォトニック結晶構造2内では横方向(共振器の幅方向)にも光を閉じこめることができるので出力飽和は抑制できるが、フォトニック結晶構造2以外の領域では光のモードが不安定になる。したがって、フォトニック結晶構造2の結合係数が比較的小さい場合には、共振器の幅Wの増大には限界がある。このような事情により、共振器の幅Wは2μmから10μm程度が好ましい。
次に、以上のように構成された本実施の形態の半導体発光素子の製造方法について説明する。
図5は本発明の実施の形態1に係る半導体発光素子の製造方法を説明するための説明図であって、(a)はその半導体発光素子の構成を示す断面図、(b)から(d)はその半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図5(a)に示すように、n型InP基板1上に、Siをドーピングしたn型InP下部クラッド層3(厚み100nm)、アンドープの活性層4(厚み14nm)、およびZnをドーピングしたp型InP上部クラッド層5(厚み50nm)をMOVPE(Metalorganic vapor phase epitaxy)法などの公知の結晶成長方法によりエピタキシャル成長させる。ここで、活性層4に意図的に不純物を添加せずアンドープとしたのは、荷電子帯の吸収および自由電子の吸収を抑制するためである。
次に、SiO2膜をエッチングマスクとして、Cl2ガスおよびCH4ガスを用いて円形状にICPドライエッチングすることにより複数の円柱状の凹部9を形成する。この場合、図5(b)に示すとおり、各凹部9は四角格子状に並ぶように形成する。これらの複数の凹部9が周期的に配列された領域がフォトニック結晶構造2となる。この凹部9の周期(隣り合う凹部間の間隔)は光の波長と同程度である。したがって、本実施の形態の場合では1.3μm程度である。
次に、図5(c)に示すように、ストライプ構造を形成するために、p型InP上部クラッド層5からn型InP基板1の一部までを燐酸系エッチャントでエッチングする。そして、図5(d)に示すように、上部電極6としてストライプ状のCr/Pt/Au電極をp型InP上部クラッド層5の表面に、下部電極(図示せず)としてAu−Sn電極をn型InP基板1の裏面にそれぞれ蒸着させる。この場合、上部電極6は、p型InP上部クラッド層5の表面上に、平面視においてフォトニック結晶構造2と共振器方向に並ぶように形成させるために、リフトオフにより成形される。
前述したように複数の凹部9は四角格子状に配列されるが、図5(d)に示すように、凹部9の配列方向のうちα方向は共振器方向と一致するように配列されている。
以上の工程により本実施の形態の半導体発光素子を製造することができる。
なお、前述したように凹部9を形成する場合であって、フォトニック結晶構造2の長さ(α方向)を2μm以上とするときは、図3に示すように、活性層4をエッチングしないようにp型InP上部クラッド層5中でエッチングを停止することが好ましい。これにより、活性層4に及ぼすダメージを抑制することができるので、発光効率を向上させることが可能となる。
また、フォトニック結晶構造2の長さ(α方向)が10μm以下のときは、図6に示すように、活性層4を通り越してn型InP下部クラッド層3までエッチングすることが好ましい。このようにフォトニック結晶構造2の長さが10μm以下と比較的小さい場合には、フォトニック結晶による効果が小さくなってしまう。そのため、光がフォトニック結晶とカップリングしやすくするために、光の分布の大部分がフォトニック結晶による回折を受けるようにn型InP下部クラッド層3までエッチングする。この場合、ドライエッチングによるダメージを受けることになるが、Cl2ガスでエッチングした後に、ダメージを受けた領域をCH4またはSF6ガスでエッチングすることにより、閾値電流の増大を抑制することができる。
本実施の形態の場合、共振器方向は劈開性に優れた<110>または<−110>方向とする。しかし、ドライエッチングにより共振器を形成する場合には特に共振器方向に限定はない。ただし、エッチング端面の垂直性を良好にするためには共振器方向を<110>または<−110>方向とすることが好ましい。
また、共振器の長さは20μmから50μm程度とする。これは、フォトニック結晶構造2内で回折されて取り出される光強度が小さいために、端面コートなどによりストライプ構造10の端面における損失を抑制させることによって光損失を通常のレーザと比べて極めて小さくすることができ、短共振器にして利得が低下したとしても十分な光を外部に放出させることができるためである。ここで共振器の長さを50μmにした場合には閾値電流が20μA程度となり、同じく20μmにした場合には閾値となる電流値は存在せず、光出力が注入電流に正比例して増加することが分かった。
本実施の形態では、フォトニック結晶として円柱状の凹部を周期的に形成しているが、円柱状の凸部であってもよい。本実施の形態で円柱状の凸部ではなく凹部としたのは、凹部の方がドライエッチングする容積が小さいためにエッチングによるダメージを抑制させることができるためである。また、凸部とした場合には強度に問題があると考えられる。一方、円柱状の凸部とした場合には、等価屈折率が小さくなるため、凹部の場合と比べて配列する際の周期を大きくすることができるというメリットがある。したがって、光の波長が例えば0.85μmなどのように短くなる場合には凸部とした方が好ましい。以上の点については後述する他の実施の形態においても同様である。
なお、円柱状ではなく角柱状の凹部または凸部を周期的に形成することによってフォトニック結晶を得るようにしてもよい。しかし、形状のそろった角柱を作製することは円柱の場合と比べて困難である。このことは断面が楕円である円柱状の凹部または凸部の場合も同様で、楕円率が大きくなるほど形状のばらつきが大きくなる。したがって、本実施の形態では断面が真円の円柱状とした。以上の点については後述する他の実施の形態においても同様である。
以上のように製造された半導体発光素子の動作について説明する。上部電極6と下部電極7との間に、上部電極6を正電位とし、下部電極7を負電位とした電圧を印加することにより、活性層4に電流を流す。その結果、活性層4のn型領域からp型領域へ電子が注入され、p型領域からn型領域へホールが注入される。注入された電子とホールとは、活性層4のn型領域とp型領域との界面に形成されるp−n接合の近傍で誘導放出を起こす。これにより活性層4で光が発生する。この光は、活性層4内で増幅されると共に、フォトニック結晶構造2において、n型InP基板1に垂直な方向に回折される。その結果、フォトニック結晶構造2からn型InP基板1に垂直な方向に光8が放出される。
図7は本発明の実施の形態1に係る半導体発光素子の発光状態を説明するための説明図であり、(a)はフォトニック結晶が形成されていない領域における光の波数とエネルギーとの関係を示す図であり、(b)はフォトニック結晶構造における光の波数とエネルギーとの関係を示す図である。
図7(a)に示すように、フォトニック結晶が形成されていない領域においては、波数が大きくなるにしたがってエネルギーが直線的に上昇する。なお、図7(a)では、光のエネルギーが小さい領域におけるエネルギーと波数との関係であって、周期構造により折り返された後の関係を示している。そのため、波数が減少するにしたがってエネルギーが上昇し、その後再び折り返され、波数が大きくなるにしたがってエネルギーが上昇している。その結果、フォトニック結晶による摂動が起こらないため、波数とエネルギーとは連続的に変化しており、フォトニックバンドギャップは形成されない。また、図7(a)において光強度を横軸として波長を縦軸とした場合、自然放出光はローレンツ分布を示している。
一方、図7(b)に示すように、フォトニック結晶構造においては、フォトニック結晶による摂動が起きるため、フォトニックバンドギャップ(PBG)が形成される。このフォトニックバンドギャップ内では自然放出光は存在することができない。これに対して、フォトニックバンドギャップの高エネルギー端以上および低エネルギー端以下においては自然放出光が存在することができる。フォトニックバンドギャップの中心エネルギーに対応する光の角速度ω0は、フォトニック結晶の周期(隣り合う凹部9間の間隔)をΛとした場合、neff・ω0/c=π/Λの関係で表される。ここでneffは光の等価屈折率を、cは光速をそれぞれ示している。フォトニックバンドギャップの大きさΔωは、Δω=2kc/neffとなる。ここで、kは結合係数を表している。フォトニックバンドギャップの高エネルギー端と自然放出光のエネルギーとが一致した場合には、自然放出光を発生する電子と光との関係に加えてフォトニック結晶の摂動による関係が付加されるため、電子と光との遷移確率も摂動を受ける。その結果、図7(b)に示すように、自然放出光とフォトニックバンドギャップとがカップリングして超放射による高い自然放出光強度が得られる。この場合の自然放出光の半値幅は0.2nm以下であり、発光強度は約30倍程度となる。
なお、図7(b)においてはフォトニックバンドギャップの高エネルギー端と自然放出光のエネルギーとが一致しているが、フォトニックバンドギャップの低エネルギー端と自然放出光のエネルギーとが一致している場合でも同様の結果が得られる。ただし、フォトニック結晶を構成する複数の凹部が四角格子状に配列されている場合には、フォトニックバンドギャップの高エネルギー端と自然放出光のエネルギーとを一致させる方が、バンド間隔が大きく離れているために縮退の影響が無いという利点がある。
本実施の形態の半導体発光素子の場合、特に閾値となる電流値は存在せず、注入電流に応じて光出力が増加する。波長が1.3μmの場合、外部微分量子効率は60%程度となることを明らかにした。また、注入電流が2mA以上の場合、動作速度は10GHzとなることがわかった。発光領域から同一周波数で位相のそろったコヒーレント光が得られるため、レンズのNAに対応する値までスポットを絞り込むことができる。また、TE光の偏波面はストライプ構造のストライプ方向(共振器方向)となる。比較的強い電流をパルス状に注入した場合においては、ピコ秒の強い発光が生ずる超放射現象も得られることがわかった。
なお、本実施の形態では半導体基板をInP結晶としているが、フォトニック結晶の作製精度が上がれば、GaAs、GaN、またはGaP結晶を使用することも可能である。また、半導体基板はn型としているがp型であってもよい。n型結晶の方が一般的には抵抗値が低いため、活性層までの間にフォトニック結晶がある方をn型にする方が、電流が均一に活性層に注入されることになるので好ましい。
前述したように、フォトニック結晶構造の長さ(α方向)は、図3に示す構成の場合(凹部9がp型InP上部クラッド層5内にのみ形成されている)では2μm以上、図6に示す構成の場合(凹部9がp型InP上部クラッド層5からn型InP下部クラッド層3の途中まで形成されている)では10μm以下とすることが好ましい。したがって、このフォトニック結晶構造の長さ(α方向)が2μm以上10μm以下の場合では図3に示す構成でもよく、図6に示す構成でもよいことになる。どちらが好ましいのかは、ドライエッチングによるダメージの大きさおよびエッチング表面の形状の平坦性などに依存する。例えば、ドライエッチングの際に、Cl2ガスで平坦性の良好な表面を形成し、CF4ガスでダメージ領域を除去することによって、図6に示す構成にすることが可能となる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1の場合と同様にフォトニック結晶を有しているが、共振器方向におけるフォトニック結晶の周期と、その共振器方向と直交する方向におけるフォトニック結晶の周期とが異なるように構成された半導体発光素子について示す。
図8は本発明の実施の形態2に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。図8に示すように、四角格子状に複数の凹部9を配列させることによってフォトニック結晶構造2が形成されている。ここで、共振器方向における凹部9の周期(隣り合う凹部9間の間隔)F1は、その共振器方向と直交する方向における凹部9の周期F2と比べて長くなっている。また図中の13はp型InP上部クラッド層を後述するように選択成長させたときの成長領域を示している。なお、本実施の形態の半導体発光素子のその他の構成については実施の形態1の場合と同様であるので同一符号を付して説明を省略する。
次に、以上のように構成された本実施の形態の半導体発光素子の製造方法について説明する。なお、実施の形態1ではドライエッチングを用いてフォトニック結晶を作製する方法について説明したが、本実施の形態では選択成長を用いてフォトニック結晶を作製する方法について説明する。もちろん、本実施の形態でも実施の形態1の場合と同様にしてドライエッチングを用いた方法でも作製することは可能である。本明細書において示すすべての実施の形態において、ドライエッチングを用いる方法および選択成長を用いる方法の何れの方法によってもフォトニック結晶を作製することが可能である。
図9は本発明の実施の形態2に係る半導体発光素子の製造方法を説明するための説明図であって、(a)はその半導体発光素子の構成を示す断面図、(b)から(d)はその半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図9(a)に示すように、n型InP基板1上に、Siをドーピングしたn型InP下部クラッド層3(厚み100nm)、アンドープの活性層4(厚み14nm)、およびZnをドーピングしたp型InP上部クラッド層5(厚み10nm)をMOVPE法などの公知の結晶成長方法によりエピタキシャル成長させる。また、p型InP上部クラッド層5上にSiO2膜12を形成する。
次に、図9(b)に示すように、SiO2膜12を選択成長マスクとしてp型InP上部クラッド層5(厚み100nm)を選択成長させて、四角格子状に配列された複数の円柱状の凹部9を形成することによってフォトニック結晶構造2を形成する。この場合、共振器方向と同一の方向における凹部9の周期F1が、その長さ方向と直交する方向における凹部9の周期F2と比べて長くなるように凹部9を配列する。
なお、以上のようにしてフォトニック結晶構造2を形成する場合において、選択成長のときにファセットが形成されるおそれがある。しかし、膜厚が200nm以下程度のように小さい場合にはファセットは形成されなかった。
次に、図9(c)に示すように、ストライプ構造を形成するためにn型InP基板1の一部に至るまでを燐酸系エッチャントでエッチングする。なお、図中の13は前述したようにp型InP上部クラッド層を選択成長させたときの成長領域を示している。そして、図9(d)に示すように、上部電極6としてCr/Pt/Au電極をストライプ構造10におけるp型InP上部クラッド層13の表面に蒸着させる。また、図示しないが、下部電極7としてAu−Sn電極をn型InP基板1の裏面に蒸着させる。この場合、上部電極6は、p型InP上部クラッド層5の表面上に、平面視においてフォトニック結晶構造2と共振器方向に並ぶように形成させるために、リフトオフにより成形される。
以上の工程により本実施の形態の半導体発光素子を製造することができる。
ところで、図6に示すように凹部9がn型InP下部クラッド層3の途中まで形成されている構成を得るためには、まずn型InP下部クラッド層3の一部までエピタキシャル成長させておき、その後に前述したようにSiO2膜を選択成長マスクとしてn型InP下部クラッド層3、活性層4、およびp型InP上部クラッド層5を選択成長させるようにすればよい。この場合、選択成長マスクの近傍ではファセットが形成されるために各層の膜厚が薄くなって耐圧が低下し、リーク電流が生ずるおそれがある。そこで、膜厚が小さい領域をエッチングして除去する工程を設けることが好ましい。具体的には、選択成長工程が終了した後にCH4またはSF6ガスで膜厚が小さい領域をエッチングする。これにより、閾値電流の増大を防止することができる。
なお、本実施の形態では円柱状の凹部9を設けているが、円柱状の凸部を設けるようにしてもよい。しかし、凸形状の場合では、孤立した円柱状の結晶を選択成長させることになる。この場合、各凸部の成長は独立に進行する。その結果、各凸部の高さがそれぞれ異なる事態が容易に生ずるため、選択成長時の安定性の確保という観点から問題があった。また、成長速度が比較的大きい場合においては凸部の先端にファセットが形成されることになるため、平坦にならないという問題があった。そこで、選択成長条件を注意深く選択し、例えば成長温度の低下などの成長条件の最適化により円柱状の凸部を有するフォトニック結晶構造を作製しなければならない。
以上のようにして製造された半導体発光素子において、実施の形態1の場合と同様に、上部電極6と下部電極7との間に電圧を印加すると活性層4において誘導放出が起きる。これにより活性層4で光が発生する。この光は、活性層4内で増幅されると共に、フォトニック結晶構造2において、n型InP基板1に垂直な方向に回折される。その結果、フォトニック結晶構造2からn型InP基板1に垂直な方向に光が放出される。
図10は本発明の実施の形態2に係る半導体発光素子の発光状態を説明するための説明図であり、(a)は共振器方向におけるフォトニック結晶構造の光の波数とエネルギーとの関係を示す図であり、(b)はその共振器方向と直交する方向におけるフォトニック結晶構造の光の波数とエネルギーとの関係を示す図である。
本実施の形態の場合、共振器方向においては、フォトニック結晶の周期Λを、自然放出光の波長とフォトニックバンドギャップの高エネルギー端とが一致するように設定してある。ここで、共振器方向と直交する方向においては、共振器方向と同一の方向の場合と比べてフォトニック結晶の周期Λを小さくしてあるため、neff・ω/c=π/Λより、図10(a)および(b)に示すようにフォトニックバンドギャップの中心エネルギー(ωと等価)は増加することになる。
図10(a)および(b)に示すように、共振器方向では自然放出光とバンド端とがカップリング(結合)しているが、共振器方向と垂直な方向では自然放出光の波長はフォトニックバンドギャップ内部に位置することになる。したがって、共振器方向と垂直な方向には自然放出光が伝播しないことになる。その結果、ストライプ構造の外部への光の染み出しが減少するため、共振器方向およびその共振器方向と垂直な方向におけるフォトニック結晶の周期が等しい場合と比べて、低閾値電流での発振を実現することができる。
また、本実施の形態の半導体発光素子では、断面が真円の円柱状の凹部を用いたとしても偏波面の制御が可能となる。実施の形態1においては、共振器方向にTEモードが形成されることを示したが、このストライプ構造の幅が大きくなるとモードの安定性が低下するという問題があった。本実施の形態の場合、フォトニック結晶のピッチを変化させて共振器方向に垂直な方向においてフォトニックバンドギャップを形成することによって、この垂直な方向においてはTEモードが存在できなくなる。これにより、ストライプ構造の幅が大きい場合であっても、安定して共振器方向にTEモードを誘起することが可能になる。
ところで、選択成長をさせる場合では、成長時にファセットが形成されるために矩形の構造を再現性良く作製することができる。特に、凸部を選択成長させるような場合には、ファセット成長を行うことにより形状均一性に優れた凸部を作製することができる。したがって、成長条件を最適化することにより凸部を選択成長で作製する場合には、角柱状の凸部からなるフォトニック結晶構造を容易に得ることができる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、ストライプ構造の端面に光を反射させる反射膜を形成することによって自然放出光および誘導放出光が共振器方向で漏れることを防止することができる半導体発光素子について示す。
図11は本発明の実施の形態3に係る半導体発光素子の構成を示す図であって、(a)はその構成を示す平面図、(b)は(a)のA−A線矢視図である。図11(a)および(b)に示すように、ストライプ構造10の両端面にはアルミナとチタニアとからなる絶縁体多層薄膜11が形成されている。なお、本実施の形態の半導体発光素子のその他の構成については実施の形態1の場合と同様であるので同一符号を付して説明を省略する。
次に、以上のように構成された本実施の形態の半導体発光素子の製造方法について説明する。
まず、実施の形態1の場合と同様にしてフォトニック結晶構造2を作製する。次に、ストライプ構造の両端面をドライエッチングで垂直に成形した後、図11(a)および(b)に示すように、その両端面にアルミナとチタニアとからなる絶縁体多層薄膜11をそれぞれ積層させる。その後、ドライエッチングした溝に沿って素子を分離する。本実施の形態においては、絶縁体多層薄膜11をストライプ構造10の垂直な端面に堆積(デポ)させるために、ECRスパッタ法を用いて高反射多層膜を積層させることによって絶縁体多層薄膜11を形成した。絶縁体多層薄膜11の層数を4とした場合、98%の反射率を得た。このような高反射の絶縁体多層薄膜11を形成することにより、ストライプ構造10の端面における反射損失を大きく低減することが可能となる。これにより、実施の形態1にも示したとおり、長さ50μm程度の短共振器において閾値電流を20μm程度とすることが可能となる。
しかしながら、垂直な面に絶縁体多層薄膜11を形成した場合、各層のデポ時において絶縁体薄膜の膜厚が不均一となり、反射損失が増大するおそれがあるという問題があった。そこで、次のような構成とすることが好ましい。
図12は本発明の実施の形態3に係る半導体発光素子の変形例の構成を示す図であって、(a)はその構成を示す平面図、(b)は(a)のB−B線矢視図である。この変形例では絶縁体多層薄膜に代えてフォトニック結晶により反射鏡を構成している。
図12(a)および(b)に示すように、p型InP上部クラッド層5からn型InP基板1に至るまで、平面視でストライプ状になるように分離溝18が形成されている。この分離溝18で囲まれた領域17内のp型InP上部クラッド層5の表面にはフォトニック結晶構造2および上部電極6が形成されている。一方、分離溝18で囲まれた領域17を取り囲むように、当該領域17の外側のp型InP上部クラッド層5には円柱状の反射用凹部15が四角格子状に形成されている。ここで、α方向およびβ方向の何れの方向においても、反射用凹部15の周期(隣り合う反射用凹部15間の間隔)は、凹部9の周期よりも短くなっている。この反射用凹部12は、上部クラッド層5から下部クラッド層3の途中に至るまで形成されている。このようにして反射用凹部12が形成されている領域が反射鏡領域となる。領域17と反射鏡領域とを分離溝18により分離させているのは、領域17から反射鏡領域への電流のリークを抑制するためである。
前述した例のようにストライプ構造の端面に絶縁体多層薄膜を形成して反射鏡を構成した場合には、共振器方向と同一の方向の光しか反射することができないため、レーザ用の反射鏡としては問題ない。しかし、本発明のように自然放出光を制御する場合には、共振器方向からわずかにずれた方向の自然放出光を十分に反射できないという問題があった。これに対して、本変形例の場合、反射鏡領域において反射用凹部12を片側に4周期程度設けた場合には98%の反射率が得られ、図12(a)に示すように同じく片側に2周期設けた場合であっても95%程度の反射率が得られることがわかった。その結果、実施の形態1にも示したとおり、長さ20μm程度の短共振器において閾値電流のないレーザ発振を実現することが可能となる。
(実施の形態4)
実施の形態4では、ストライプ構造の全体に亘ってフォトニック結晶構造を形成することにより、反射面における光の位相の揺らぎによってモードが不安定になることを防止することができる半導体発光素子を示す。
図13は本発明の実施の形態4に係る半導体発光素子の構成を示す図であって、(a)はその構成を示す平面図、(b)は(a)のC−C線矢視図である。
図13(a)および(b)に示すように、ストライプ形状をなしているp型InP上部クラッド層5の全体に亘って円柱状の凹部9が四角格子状に形成されている。なお、本実施の形態の半導体発光素子のその他の構成は実施の形態3の場合と同様であるので同一符号を付して説明を省略する。
次に、以上のように構成された本実施の形態の半導体発光素子の製造方法について説明する。
まず、実施の形態1の場合と同様にしてフォトニック結晶構造2を作製するが、この際に円柱状の凹部9をドライエッチングによりストライプ構造10の上面の全体に亘って形成する。次に、フォトニック結晶構造2の一部の表面上にストライプ状の上部電極6を蒸着する。そして、共振器を形成するためにストライプ構造10の両端面をドライエッチングで垂直に成形した後、その両端面にアルミナとアモルファスシリコンとからなる絶縁体多層薄膜11を積層させる。その後、ドライエッチングした溝に沿って素子を分離する。これにより、図13(a)および(b)に示す本実施の形態の半導体発光素子を得ることができる。
なお、上部電極を形成する工程においては、凹部9の内部に電極金属が回り込むのを防止するために、全ての電極材料を蒸着させるのではなく、フォトニック結晶構造2上に薄くCr/Ptを堆積させてコンタクト抵抗を低下させた後にPt/Auからなる金属箔を接着させることにより上部電極を形成する。ところで、図6に示したように凹部9を下部クラッド層3の途中まで形成する場合においては、電極材料が回り込むことによるリーク電流の増大が著しい。そこで、この場合においては、フォトニック結晶構造2の表面に薄くSiO2膜を堆積させ、CHF3を用いたICPドライエッチングで当該SiO2膜の平坦部表面のみをエッチングで除去した後に上部電極6を蒸着させることが好ましい。
以上のようにして製造された半導体発光素子において、実施の形態1の場合と同様に、上部電極6と下部電極7との間に電圧を印加すると活性層4において誘導放出が起きる。これにより活性層4で光が発生する。この光は、活性層4内で増幅されると共に、フォトニック結晶構造2において、n型InP基板1に垂直な方向に回折される。その結果、フォトニック結晶構造2の上部電極6と平面視において重ならない領域からn型InP基板1に垂直な方向に光が放出される。
以上のように、ストライプ構造10の上面の全体に亘ってフォトニック結晶を設けることによって、半導体発光素子を高速で変調させる場合においても共振器内に形成される定在波が安定する。これは、半導体発光素子に変調電流を注入した場合、共振器内部におけるキャリア密度の変動により屈折率が変化するため、フォトニック結晶が存在していない領域では定在波が乱れるためである。本実施の形態においては、ストライプ構造10の上面の全体に亘ってフォトニック結晶構造2を形成することによって、フォトニック結晶の周期に光の摂動を強制的に同期させている。これにより、40GHz程度の変調速度の場合においても安定した発光モードを得ることができることがわかった。しかし、共振器(活性層4)の長さが100μm以上と大きくなった場合には、共振器内の光密度に共振器方向の分布が生じることになるため、動作速度が制限されるという問題が生じる。したがって、本実施の形態では共振器の長さを100μm以下にすることが好ましい。
ところで、閾値電流を低下させることよりもモードの安定性が要求されるような場合では、図14(a)に示すように、円柱状の凹部9の一部を平板状の凹部16とすることが好ましい。図14(a)では、上部電極6が形成されている領域に複数の平板状の凹部16が形成されている。なお、ここでモードの安定性の評価指標としては偏波面の安定性までを含めることとする。図13(a)に示すような円柱状の凹部9を四角格子状に配列してある二次元フォトニック結晶の場合では、β方向(共振器方向と直交する方向)へも光が結合しているためにβ方向の光分布の変動によって偏波面が回転することとなり、偏波面が不安定となる。これに対して、平板状の凹部16を設けた場合では、β方向への自然放出光の摂動は生じず、α方向(共振器方向)に進行する波動しか結合しない。そのため、自然放出光を十分に利用することができず、閾値電流は上昇することになる。しかしながら、ストライプ構造の厚み方向において一様な位相で光が摂動を受けることになるため、偏波面の回転は生じない。その結果、閾値電流は0.1mA程度となるが、光出力強度によらず一定の偏波面を有する出力光を得ることができる。
一方、光強度よりもモードの安定性が要求される場合には、図14(b)および(c)に示すように、上部電極6を2つに分け、ストライプ構造10の中央部を除く両端部に形成する。これにより、ストライプ構造10の中央部が光出力領域となる。図14(e)に示すように強い出力光を得るためには、共振器内の光強度が大きくなる反射面の近傍から光を取り出すことが望ましい。しかしながら、端面の近傍では、端面に近づくにしたがって光強度が急激に大きくなるためにホールバーニングが生じて偏波面が不安定になるという問題があった。そこで、図14(b)および(c)に示すように発光領域を共振器(活性層4)の中央に設けることによって、フォトニック結晶が存在する領域は光強度の弱い領域となるが、ホールバーニングが生じないためにモードが安定化する。
さらに、偏波面の安定性を向上させるために、図14(d)に示すようにストライプ構造の上面の全体に亘って平板状の凹部16を設けるようにしてもよい。しかしながら、このような構成の場合では偏波面は一定となるが、出力光が共振器内の光と十分に結合することができず、しかも自然放出光を有効に利用することができないため、光出力は低下する。
本実施の形態では、円柱状または平板状の凹部によりフォトニック結晶構造を構成しているが、円柱状または平板状の凸部によりフォトニック結晶構造を構成するようにしてもよい。本実施の形態で凸部ではなく凹部としたのは、凹部の方がドライエッチングによるダメージを抑制することができ、しかもフォトニック結晶の上に電極を形成する場合に凹部とした方が結晶の表面が連続しているためにより平坦となって電極を容易に形成できるためである。特に本実施の形態の場合は、凸部によりフォトニック結晶構造を構成することとすると、下部クラッド層までエッチングしたり、活性層を選択成長させたりしたときに、凸部の周辺にも電極金属が蒸着されてしまい短絡を起こすおそれがあるため、凹部とすることが好ましい。
(実施の形態5)
実施の形態5では、フォトニック結晶構造に位相シフト構造を導入することにより発光モードをより一層安定させることができる半導体発光素子を示す。
図15は本発明の実施の形態5に係る半導体発光素子の構成を示す図であって、(a)はその構成を示す平面図、(b)は変形例の構成を示す断面図、(c)はその半導体発光素子のストライプ構造内部における光強度の変化を示す図である。
図15(a)に示すように、上部電極6は、上部クラッド層5の両端部の上面に形成されており、上部クラッド層5の中央部には形成されていない。したがって、本実施の形態の場合はストライプ構造10(共振器)の中央部から光が出射することになる。
共振器の中央部以外の領域に位置する共振器方向において隣り合う凹部9間の間隔をLとする。一方、共振器の中央部に位置する共振器方向において隣り合う凹部9間の間隔をL+λ/4nに広げる。ここでλは光の波長、nは等価屈折率である。以下では、このようにλ/4nだけ凹部9間の間隔を広げた構造のことをλ/4nシフト構造と呼ぶ。
なお、本実施の形態の半導体発光素子のその他の構成については実施の形態3の場合と同様であるので同一符号を付して説明を省略する。
以上のように共振器方向においてλ/4nシフト構造を導入することによって左向きの波動と右向きの波動とがカップリングし、図15(c)に示すように、共振器の中央部における光強度が増大することになる。その結果、光は出射する領域の対称性が良くなるため、光ファイバとの接合が容易になるという利点がある。また、光を出射する領域が共振器の中央部に位置することによってより強い光出力を得ることができる。
図16は本発明の実施の形態5に係る半導体発光素子の発光状態を説明するための説明図であり、(c)は図15(a)のα方向(共振器方向)におけるフォトニック結晶構造の光の波数とエネルギーとの関係を示す図であり、(b)は同じくβ方向(共振器方向と直交する方向)におけるフォトニック結晶構造の光の波数とエネルギーとの関係を示す図である。
前述したように左向きの波動と右向きの波動とがカップリングして得られる光のエネルギーは、図16(a)に示すようにλ/4nシフトを起源とする格子欠陥が導入された場合と等価となり、フォトニックバンドギャップ内に、欠陥順位と対応する光のエネルギーレベルが形成される。λ/4nシフト構造を導入した場合、格子欠陥に対応するエネルギーはneff・ω0/c=π/Λにより求められる値となる。したがって、このエネルギーは、フォトニックバンドギャップエネルギーの中心のエネルギーに対応することになる。また、フォトニックバンドギャップのエネルギーは、実施の形態4において図14(b)に示したような凹部9が等間隔に四角格子状に配列された場合のΔω=2kc/neffの2倍となる。このように等間隔に四角格子状に配列された場合では、図10(a)に示すように高エネルギー端と低エネルギー端とで発光する可能性があるが、λ/4nシフト構造を導入することにより最も発光しやすいフォトニックバンドギャップの中央で発光することになる。また、λ/4nシフト構造の場合、欠陥の高エネルギー側も低エネルギー側もフォトニックバンドギャップ内に位置するため、図7(b)に示した片側にフォトニックバンドギャップが形成されないような均一格子構造の場合と比べてより強く光が摂動を受けることになる。したがって、大きなQ値を持ち、半値幅が小さく、大きな強度の自然放出光の特定モードによる増幅が可能となる。
本実施の形態において自然放出光の波長と欠陥準位とが一致した場合には、強い摂動による発光が実現されることが分かった。α方向およびβ方向における周期(隣り合う凹部間の間隔)を調整することによって、横方向(共振器方向と直交する方向)にはフォトニックバンドギャップ内に自然放出光レベルを存在させることができるようになる。その結果、横方向における光の伝播が不可能となり、共振器方向に単一モードの発光が観測されることになる。
なお、フォトニック結晶構造2は、前述したように円柱状の凹部9で構成されてもよいが、図15(b)に示すように平板状の凹部16で構成されていてもよい。平板状の凹部を用いた場合、閾値電流が大きく光出力の強度が大きくなるとともに、偏波面の安定性が高くなるという特徴がある。
(実施の形態6)
実施の形態6では、フォトニック結晶構造を有したストライプ構造を直交させて設けることにより発光モードをより一層安定させることができる半導体発光素子を示す。
図17は本発明の実施の形態6に係る半導体発光素子について説明するための図であって、(a)はその半導体発光素子の構成を示す平面図、(b)はその半導体発光素子の動作原理を示す図、(c)は電界の挙動を示す図である。
本実施の形態の場合、他の実施の形態におけるストライプ構造と同様な構造が2つ設けられ、それらの構造は直交して配置されている。より具体的には、図17(a)に示すように、他の実施の形態と同様にフォトニック結晶構造を有しているストライプ構造10Aおよびストライプ構造10Bを備えており、これらのストライプ構造10Aとストライプ構造10Bとは直交するようにα方向、β方向(α方向と直交する方向)にそれぞれ配置されている。また、ストライプ構造10Aとストライプ構造10Bとが交差している領域Bには上部電極6が形成されておらず、それ以外の領域A上に上部電極6が形成されている。
なお、本実施の形態のその他の構成については実施の形態1の場合と同様であるので同一符号を付して説明を省略する。
次に本実施の形態の半導体発光素子の製造方法について説明する。図19は本発明の実施の形態6に係る半導体発光素子の製造方法を説明するための説明図であって、(a)はその半導体発光素子の構成を示す断面図、(b)から(d)はその半導体発光素子の構成を示す平面図である。
実施の形態1において図5(a)を参照して前述したように、n型InP基板1上に、Siをドーピングしたn型InP下部クラッド層3(厚み100nm)、アンドープの活性層4(厚み14nm)、およびZnをドーピングしたp型InP上部クラッド層5(厚み50nm)をMOVPE法などの公知の結晶成長方法によりエピタキシャル成長させる(図19(a))。
次に、実施の形態1と同様に、SiO2膜をエッチングマスクとして、Cl2ガスおよびCH4ガスを用いて円形状にICPドライエッチングすることにより複数の円柱状の凹部9を形成する。この場合、図19(b)に示すとおり、各凹部9は四角格子状に並ぶように形成され、しかもそれらの凹部9が十字状となるように配列される。これらの複数の凹部9が配列された領域がフォトニック結晶構造となる。
次に、実施の形態1と同様に、ストライプ構造を形成するために、p型InP上部クラッド層5からn型InP基板1の一部までを燐酸系エッチャントでエッチングする(図19(c))。そして、図19(d)に示すように、上部電極6としてCr/Pt/Au電極をp型InP上部クラッド層5の表面に、下部電極(図示せず)としてAu−Sn電極をn型InP基板1の裏面にそれぞれ蒸着させる。この場合、上部電極6は、p型InP上部クラッド層5の表面であって、十字の交差部分以外の領域に形成させるために、リフトオフにより成形される。これによりストライプ構造10Aおよびそのストライプ構造10Aと直交するストライプ構造10Bが作製される。
以上の工程により本実施の形態の半導体発光素子を製造することができる。
次に本実施の形態の半導体発光素子の動作原理について図17(b)を参照して説明する。図17(b)において縦軸はエネルギーを、横軸は波数をそれぞれ示している。ストライプ構造10Aおよび10Bが交差している領域B以外の領域Aにおいては、共振器方向にモードが局在するため、縮退が解けて、高エネルギー端が2つのバンドにスプリットする。一方、ストライプ構造10Aおよび10Bが交差している領域Bにおいては、α方向とβ方向とが対称であるため、1つのエネルギー準位に縮退する。ここで、領域Aにおける光が領域Bに入射した場合、領域Aの低エネルギー側の光A1は領域Bのバンドギャップ内に位置するために伝播できず、その結果放射モードとなる。一方、高エネルギー側の光A2は領域Bを通過するために増幅される。領域Bの回折効率κおよび周期Λを調節することによって得られた領域B’において、領域Aの光A2と領域Bの高エネルギー端のエネルギーとが一致するようにすると、領域Aの光A2のみが増幅され、外部に取り出されることになる。この場合の電界の挙動は、図17(c)に示すようにα方向の電場の変動とβ方向の電場の変動とが直交することにより、光の周波数で偏波面が回転することになる。通常の観測では、電場が直交しており、磁場と電場とが重なって観測されることになる。その結果、電場の方向は共振器方向、すなわちフォトニック結晶構造の周期ポインティングベクトルの方向となる。通常のフォトニック結晶素子の場合には、電場が周期ポインティングベクトルからずれることが問題となっているが、本実施の形態の場合ではポインティングベクトルの方向に直交する電場が存在することが分かった。
なお、本実施の形態の半導体発光素子は、実施の形態3において図14(a)から(d)を参照して前述したような種々の構成を応用することができる。
図18は、本発明の実施の形態6に係る半導体発光素子の変形例の構成を示す図であって、(a)はその変形例の構成を示す平面図、(b)は他の変形例の構成を示す平面図である。図18(a)に示す変形例では、ストライプ構造10Aおよび10Bの領域Aにおけるフォトニック結晶構造が平板状の凹部16によって構成されている。また、図18(b)に示す変形例では、ストライプ構造10Aの領域Aにおけるフォトニック結晶構造は円柱状の凹部9によって構成されており、ストライプ構造10Bの領域Aにおけるフォトニック結晶構造は平板状の凹部16によって構成されている。このように構成した場合、領域Aにおける光(図17(b)におけるA1)の発光が抑制されることになる。
また、図20(a)から(d)は、本発明の実施の形態6に係る半導体発光素子の他の変形例の構成を示す平面図である。図20(a)に示す変形例では、光出力領域となる領域Bにおいて、平面視で平方格子状の凹部19が形成されている。また、図20(b)に示す変形例では、同じく領域Bにおいて、平面視で四角管状の凹部20が入れ子状に形成されている。このような構成の場合でもポインティングベクトルの回転が抑制されることが分かった。特に、共振器構造を形成するストライプ構造の外部に漏れ出す自然放出光を抑制するために、ストライプ構造の外部に発光波長がフォトニックバンドギャップ内になるように周期を調整した円柱状の凹部を形成することによって、発光効率を増大することができた。
また、図20(c)に示す変形例においては、発光波長がフォトニックバンドギャップ内に存在するフォトニック結晶構造が共振器(ストライプ構造10Aおよび10B)の周囲に形成されている。この場合には共振器端面に高反射膜を形成する必要がないという利点がある。図21にこのような変形例の製造方法を示している。
図21は本発明の実施の形態6に係る半導体発光素子の変形例の製造方法を説明するための説明図であって、(a)はその変形例の構成を示す断面図、(b)から(d)はその変形例の構成を示す平面図である。
実施の形態1において図5(a)を参照して前述したように、n型InP基板1上に、Siをドーピングしたn型InP下部クラッド層3(厚み100nm)、アンドープの活性層4(厚み14nm)、およびZnをドーピングしたp型InP上部クラッド層5(厚み50nm)をMOVPE法などの公知の結晶成長方法によりエピタキシャル成長させる(図21(a))。
次に、十字状となるように、複数の平板状の凹部16および円柱状の凹部9を並べて形成する。具体的には、図21(b)に示すように、十字状の交差領域には円柱状の凹部9を四角格子状に配列し、その他の領域には平板状の凹部16を所定の間隔で配列する。そして、このようにして得られた十字状の領域の周囲には、当該十字状の領域を取り囲むように、円柱状の反射用凹部21が四角格子状に形成されている。
次に、図21(c)に示すように、平板状の凹部16および円柱状の凹部9により構成される十字状の領域を取り囲むように、分離溝22を形成する。そして、図21(d)に示すように、十字状の交差領域以外の領域に上面電極を蒸着させる。
以上の工程により、図20(c)に示すような本実施の形態の半導体発光素子の変形例を製造することができる。
以上で説明した本実施の形態およびその変形例におけるフォトニック結晶は、凹部を平方格子または長方格子状に配列することにより構成されているが、図20(d)に示すように凹部を三角格子状に配列することにより構成するようにしてもよい。この場合には3つのストライプ構造10A、10B、10Cが設けられることになり、各ストライプ構造10A、10B、10Cは60°の角度で交差することになる。そのため、交差領域は六角形状となる。ところで、この場合、共振器方向が3つあるために3重縮退していることになる。そのため、フォトニックバンドギャップの構造が複雑となり、設計が困難であるという問題がある。ただし、発光領域の大部分からの自然放出光を利用することができるため、高出力発光素子を実現できるという利点がある。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。