JP4444926B2 - 光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法 - Google Patents

光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法 Download PDF

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Description

本発明は、光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法関し、特に光通信に用いる各種の光ファイバの光損失を低減する光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法関する。
近年、アクセス系への光ファイバ網の導入展開(FTTH:Fiber To The Home)や、Ethernet(商標登録)に代表される光LAN技術の進展によって、ユーザ自身が構築するユーザ系のネットワークも大きな広がりを見せている。これらの領域では、1.3μm帯零分散単一モード光ファイバ(SMF)、マルチモード光ファイバ(MMF)が、また長距離伝送用には、1.55μm帯分散シフト単一モード光ファイバ(DSF)など石英系ガラスから作製される各種の光ファイバが用いられている。
また、複数の異なる波長の光信号を1本の光ファイバによって伝送する光波長多重(WDM)技術が進展し、光信号の通信に用いる波長領域が拡大している。今後も光通信の距離と使用波長領域を拡大するためには、信号の伝送媒体である前記光ファイバにおける光損失の低減が不可欠である。
石英系ガラスからなる光ファイバは、SiO2を主成分として構成され、通常、光を導波する構造を形成するために、GeO2やFなどが少量添加されている。このうち損失が最も低い光ファイバとして、コアに純石英ガラスが用いられた構造の光ファイバが知られている(以下、これらを総称して、石英系光ファイバと呼ぶ)。
このような石英系光ファイバの損失要因として最も支配的なものは、Rayleigh散乱(以下、レイリー散乱と称する)であり、その強度は波長の−4乗に比例しており、短波長域ほど増加する。このレイリー散乱は密度揺らぎと濃度揺らぎによって生じる。石英系光ファイバでは、密度揺らぎ成分Rdの寄与が大きいことが知られており、前記密度揺らぎ成分Rdは仮想温度Tfに比例して大きくなることが実験的にも明らかにされている(非特許文献1を参照)。また、この非特許文献1には、バルク状態の石英系ガラスでは、最適な熱処理条件にて処理すれば、前記仮想温度Tfを900℃から1000℃付近まで低減することができることについても記載されている。
なお、ガラスは高温の液体構造が凍結されたものと考えられており、仮想温度Tfは凍結された構造に対応する温度である。この構造の緩和に必要な時間(以下、緩和時間と称する)τは、ガラスの粘度が増加する低温ほど長くなる。したがって、非特許文献2にも記載される通り、石英系光ファイバは、通常、2000℃程度の高温から高速で線引きされるため、仮想温度Tfは石英系ガラスの軟化点温度である1600℃付近で高止まりしている。
上記のような観点から、非特許文献1,2では、線引き炉の下方に、別途、光ファイバを徐冷するための徐冷炉を設け、ガラスの構造の緩和を促進して、仮想温度Tfおよびレイリー散乱による光損失を低減させる方法が提案されている。
K.Saito et al., "Limit of the Rayligh scattering loss in silica faiber", Appl.Phys.Lett., vol.83, no.25, pp.5175-5177, 2003 坂口 茂樹著、 "シリカコア光ファイバの熱処理によるレイリー散乱の低減",電子情報通信学会論文誌C.,vol.J83-C,No.1,pp.30-36,2000年1月 U.C.Peak et al.,"Calculation of Cooling Rate and Induced Stresses in Drawing of Optical Fibers",Journal of The American Ceramic Society-Paek and Kurkjian., Vol.58,No.7-8,pp.330-335,Jul-Aug.1975 K.Tsujikawa et al.,"Intrinsic loss of optical fibers",Opt.Fiber.Technol.,Vol.11,pp.319-331,2005
しかしながら、上述した非特許文献1,2に記載の技術では、線引き炉と徐冷炉を併用しており、設備コストが増大してしまう、という課題がある。
経済性の観点から、線引き速度は速く、徐冷炉は小さい方が良いが、このような方法では、高速線引きに対応させるためには、その速度に応じて徐冷炉の長さを拡大しなければならなかった。
これらの点に加えて、非特許文献1には、徐冷炉の温度を一定の徐冷温度Taに設定し、光ファイバを冷却し、その温度TがT=Taとなる位置に徐冷炉を設置することが記載されている。しかし、後述するように、光ファイバの温度Tは冷却時間の関数であり、上記方法では、この徐冷炉の設置位置を線引き速度に応じて変化させるか、前記徐冷炉自体を大型化させ、その上で線引き速度に対して徐冷を行う炉内の空間的な領域を変化させるといった煩雑な制御が必要であった。また、徐冷温度Taを原理的に約1000℃以上に設定することが必要なために、徐冷炉内の特定の広い領域を前記徐冷温度Taに保持する加熱用ヒータが別途必要となり、その分電力などのエネルギー消費が増大してしまう。
また、非特許文献2に記載の技術では、線引き炉直下に徐冷炉の設置が想定されており、徐冷炉の設置位置の問題は解消されるものの、任意の線引き速度でレイリー散乱を低減するには、様々な線引き速度に対して、どのように線引き炉の長さや炉内温度分布を調整すれば良いのかについて、定量的な指針は示されていない。
そこで、本発明者らは、鋭意研究を進め、任意の線引き速度に対して上記線引き炉の長さや炉内温度分布の定量的な指針を見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は、上述した課題に鑑み提案されたものであり、製造コストの増加を抑制すると共に、レイリー散乱による光損失を低減させた光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法具体的には、付随的な徐冷炉を必要とせず、任意の長さの線引き炉に対して、小さなエネルギー消費で行える簡易な温度制御によってレイリー散乱による光損失を低減した光ファイバを製造可能な光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法提供することを目的とする。
上述した課題を解決する第の発明に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法は、
線引き炉内に配置される加熱手段の下方に炉内の温度が長手方向の距離に対して1600℃から連続的に減少する一定長の徐冷区間を設けた線引き炉を用いて、石英系の光ファイバ母材を前記加熱手段により1600℃以上の高温で加熱し線引きしてなる光ファイバ本体を室温まで冷却させて光ファイバを製造する際の、前記光ファイバ本体を室温まで冷却させる冷却過程において、
当該光ファイバ本体の温度が1600℃近傍に到達した後に前記徐冷区間に当該光ファイバ本体が滞在する時間が所定の徐冷時間t1となるように線引き速度または前記徐冷区間の全長を設定するとともに、
前記所定の徐冷時間t1後に到達する当該光ファイバ本体の温度T1900℃以上の温度となるように前記徐冷区間の最下部の設定温度Tminを設定する
光ファイバの製造における前記所定の徐冷時間t1を決定する方法であって、
前記温度T1における石英系光ファイバの緩和時間τを求め、
前記所定の徐冷時間t1を求められた前記緩和時間τの10-2倍以上2倍以下の範囲とする
ことを特徴とする。
上述した課題を解決する第2の発明に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法は、第1の発明に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法であって、
前記温度T1における石英系光ファイバの緩和時間τを求め、
前記所定の徐冷時間t1を求められた前記緩和時間τの略0.3倍とする
ことを特徴とする
本発明に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法によれば、温度の関数である石英系光ファイバの緩和時間τの温度変化から見出される、任意の徐冷時間に対して炉内の最適な温度勾配を与える指針に基づいて、炉内の最下部の温度を制御することによって行われるため、付随的な徐冷炉を用いる必要が無く、小さなエネルギー消費で簡易に光ファイバのレイリー散乱損失の低減を任意の線引き速度において行うことができる。また、一定温度の徐冷炉を用いる場合に比べて、厳密な温度条件の制御が不要になる。
さらに、一定範囲の速度で線引きを行う場合には、上記の指針に基づいて、最適な炉長を決定することが可能になるので、予め線引き速度に適したサイズの線引き炉を設計・準備することによって、効率的・経済的に低損失な光ファイバを製造することが可能になる。
以下に、本発明の最良の形態に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法つき、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の原理と最良の形態に係る線引き炉を説明するための模式図であり、図1(a)に線引き炉にて光ファイバを線引きした状態を示し、図1(b)にそのときの温度分布を示す。図2は、本発明の最良の形態に係る線引き炉の徐冷区間に光ファイバ本体が滞在する時間とその時の温度との関係の一例を示す図であり、図3は、石英系光ファイバの緩和時間τの温度依存性の一例を示す図である。
本発明の最良の形態に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法の原理についての説明を理論的なモデルを用いて行う。なお、以下のモデルは、非特許文献2,3でも用いられており、実際の線引き条件との良好な対応関係が期待できるものである。
本発明の最良の形態に係る線引き炉20は、図1に示すように、線引き炉本体10と、線引き炉本体10内に配置され、石英系のガラス母材(光ファイバ母材)1を1600℃以上の高温で加熱する加熱手段である加熱用ヒータ13とを有し、線引き炉本体10は、加熱された光ファイバ母材1を線引きさせそのネックダウン1aを終了させてなる光ファイバ本体2を加熱用ヒータ13の下部に温度が長手方向の距離に対して、1600℃から連続的に冷却させる一定長の徐冷区間11を有する。この光ファイバ本体2は、炉外12にて室温に急速に冷却されて光ファイバとなる。
すなわち、上記線引き炉10による光ファイバの製造方法では、線引き炉10内で光ファイバ母材1のネックダウン1aが終了し、その外径dが125μmとなる位置をZ=0とすると共に、ここでの光ファイバ本体2の温度Tを純石英ガラスの軟化点の1600℃とする。炉内温度TzもZ=0の位置でT0=1600℃とし、最下点(Z=L)での温度Tminまで、Tzが直線的に減少する徐冷ゾーン(徐冷区間)11を仮定する。線引き速度をvとすると、徐冷区間11の全長L内に時間tl(=L/v)だけ光ファイバ本体2は滞在し、その後、炉外12にて室温に急冷されて光ファイバとなる。
線引き炉10内の徐冷区間11の温度分布Tzは(1),(2)式で表される。また、線引き炉10内を光ファイバ本体2が通過するとき、この温度は長手方向の熱伝導が光ファイバ本体2の表面における対流熱伝達に比べて小さく、また、熱容量が小さいことから断面内で温度は一様となるため、光ファイバ本体2の温度Tと時間tとの関係を(3)式にて表すことができる。hは熱伝達係数であり、cとρは純石英ガラスの比熱と密度である。ただし、下記式では、c=1.0kJ/kgK、ρ=2200kg/m3として計算した。
ここで、図1に示すように、加熱用ヒータ13が線引き炉10の上方にのみ設置されている一般的な場合も、(1)式のような長手方向に直線的に変化する温度分布が、一次的な近似として良好に成立する。さらに、線引き炉の最下部や中間部に別途加熱用ヒータを設置し、適切な制御を行えば、徐冷区間の全域にわたって、ほぼ完全に直線的に変化する温度分布を実現することが可能である。Tmin=1000℃の条件で以下の(1)〜(3)式を解き、tl(s)を0.5、1、2としたときのT(t)の計算結果を図2に示す。ただし、上記熱伝達係数hとして、非特許文献2に記載の210W/m2Kを用いた。なお、前記熱伝達係数hは線引き炉内の雰囲気ガスなどの条件によって多少変化するが、光ファイバの温度Tの時間変化から実験的に決定することも可能な定数である。
Tz = T0−rt ・・・・・・・・・・(1)
r = v(T0−Tmin)/L=(T0−Tmin)/tl ・・・・・ (2)
dT/dt = −4h/cρd(T−Tz) ・・・・・・・(3)
図2には、線引き炉内のみにおける光ファイバ本体の温度変化を図示しており、この後、光ファイバ本体は炉外にて室温条件で急冷されて光ファイバとなる。線引き炉外にて光ファイバ本体の温度変化が極めて急速に起こるため、ガラス構造の緩和、すなわち仮想温度Tfの減少はほとんど生じない。このことは、10m/s程度の高速で線引きされる市販の石英系光ファイバでは、レイリー散乱による光損失がほぼ一定の値になることからも裏付けられる。そこで、以下では線引き炉内における仮想温度Tfの変化だけに限定する。
一方、緩和時間τ(T)を用いて、光ファイバ本体の仮想温度Tfと実際の光ファイバ本体の温度Tとの関係は(4)式によって近似的に記述されることが知られている。ここでTf0は仮想温度Tfの初期値の1600℃である。緩和時間τ(T)は赤外吸収スペクトルなどから決定することが可能であり、ここでは非特許文献1で示される結果を引用し、図3に示す。この図では、横軸に光ファイバ本体の温度Tを示し、縦軸に緩和時間τを示す。この図に示すように、光ファイバ本体の温度Tが低くなるほど、緩和時間τ(T)は増大する。
また、(4)式から、仮に非特許文献1のように、一定温度Tkで光ファイバを時間t保持する場合、保持温度Tkとしては、緩和時間τ(Tk)がtと同程度になるような温度を選ぶ必要がある。
f = T+(Tf0−T)exp(−t/τ(T)) ・・・・(4)
一方、本発明においては、一定温度での保持・徐冷は行わず、光ファイバ本体には、概略として図2に示すような温度変化が与えられる。この時、tlが長いほど光ファイバの徐冷が可能となり、その一方で光ファイバ本体の温度TはTminに近づく。しかし、tl(=L/v)は徐冷区間長Lと線引き速度vによって決定されるので、前記徐冷区間長Lが一定の条件で、任意の線引き速度vの値に対して効果的に仮想温度Tfの低減を行うには、tl秒後の光ファイバ本体の温度T(tl)を最適化する必要がある。そのためには、上記の場合と同様に、tlと緩和時間τ(T(tl))とを同程度に設定することが目安になる。実施例1で述べるように、その条件は、一定温度で保持・徐冷する場合よりも大幅に緩和され、その結果、厳密な温度制御が本発明では不要となる。
本発明において、上記条件を、線引き炉の最下点の温度Tminを適切な値Tpに設定することで実現する。その際にはTpは(3)式のパラメータh,c,ρ,dとτ(T)、さらにtlの値から与えられる。よって、徐冷区間長Lが一定の時は、線引き速度vに応じてTminを変化させることで、最小限の設備で経済的に低損失な光ファイバの製造が可能となる。また、線引き速度vが一定の線引き条件を予め想定している際には、徐冷区間に光ファイバ本体が滞在する時間に応じて、最適な徐冷区間長Lをもつ線引き炉を設計・準備し、Tminを適切な値に設定することが可能となる。
したがって、本発明の最良の形態に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法によれば、温度の関数である石英系光ファイバの緩和時間τの温度変化から見出される、任意の徐冷時間に対して炉内の最適な温度勾配を与える指針に基づいて、炉内の最下部の温度を制御することによって行われるため、付随的な徐冷炉を用いる必要が無く、小さなエネルギー消費で簡易に光ファイバのレイリー散乱損失の低減を任意の線引き速度において行うことができる。また、一定温度の徐冷炉を用いる場合に比べて、厳密な温度条件の制御が不要になる。
さらに、一定範囲の速度で線引きを行う場合には、上記の指針に基づいて、最適な炉長を決定することが可能になるので、予め線引き速度に適したサイズの線引き炉を設計・準備することによって、効率的・経済的に低損失な光ファイバを製造することが可能になる。
また、上述した線引き炉によれば、付随的な徐冷炉を用いる必要が無いため、設備コストの増加を抑制することができ、光ファイバの仮想温度Tfを低減させ、そのレイリー散乱を低減させることで、低損失な光ファイバを低コストにて製造することができる。
以下に、本発明の第1の実施例に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法について、図面を用いて説明する。本実施例は、徐冷時間tl後の光ファイバ本体の温度T(tl)の具体的な設定値と設定方法に関するものである。
図4は、後述する関係式(5)のパラメータmと徐冷時間t1後の光ファイバ本体の温度T(tl)およびこの時の炉の最下点の温度Tminの設定値Tpの関係を示す図であり、図5は、パラメータmと仮想温度Tfの関係を示す図であり、図6は、線引き炉の最下点の温度Tminの設定値Tpと仮想温度Tfの関係を示す図である。
tlと緩和時間τ(T(tl))を同程度の値に設定した場合のT(t1)とTpを決定するために(5)式を仮定し、mを0.0001〜5の範囲で変化させた。
tl=m×τ(T(tl)) ・・・・・・(5)
上記(5)式において、一例としてtl=1(s)とし、パラメータmを変化させた時の、T(tl)と、この時に必要となる最下点の温度Tminの設定値Tpを図4に示し、(4)式から得られるTfを図5に示す。さらに、TpとTfとの関係を図6に示す。なお、緩和時間τの値については、図3(非特許文献1)から見積もった。
図4に示すように、最下点の温度Tpの値を制御することにより、所望のT(tl)を得ることが可能になる。また、図5に示すように、パラメータmが10-5以上10以下の範囲にて、仮想温度の変化が非常に緩やかであることが分かった。すなわち、図5および(5)式から、t1を光ファイバの緩和時間τ(T)の10-5倍以上10倍以下の範囲とし、好適には10-2倍以上2倍以下の範囲とすることで、適切な仮想温度Tfを得られることができることが分かった。また、図6に示すように、Tpに対する仮想温度Tfの変化は非常に緩やかであり、Tpが500℃変化しても、Tfは極小値から20℃程度しか変化しないことが分かった。よって、Tpの制御の条件は非常に容易なものであることが分かった。
これは、図2と図3から理解できるように、本発明では、緩和時間τの値が非常に小さな高温域から徐冷を開始し、最終的に光ファイバ本体の温度がT(tl)に至るためTpの値の変化がTfへ及ぼす影響が小さくなるからである。非特許文献1に示されるように、光ファイバ本体を一定の温度にて保持する場合、最適な徐冷炉の温度が50℃程度の狭い範囲に限られることと比べると、これは本発明の大きな優位点である。なお、Tpの制御については線引き炉の大きさに応じて、線引き炉の最下部や、さらには徐冷区間の中間部への加熱用ヒータの設置、もしくは線引き炉の外側からの強制的な冷却によって適宜行うことができる。
したがって、本発明の第1の実施例に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法によれば、当該光ファイバ本体の温度が1600℃近傍に到達した時間をt=0とした時に、前記所定の徐冷時間t1がT1における当該の光ファイバの構造を緩和に要する時間τの10-5倍以上10倍以下の範囲とし、好適には10-2倍以上2倍以下の範囲とすることにより、付随的な徐冷炉を必要とせず、任意の長さの線引き炉に対して、小さなエネルギー消費で行える簡易な温度制御によってレイリー散乱による光損失を低減した光ファイバを製造することができる。
以下に、本発明の第2の実施例に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法について、図面を用いて具体的に説明する。本実施例は、異なるtlの値に対して最適な温度条件で光ファイバの線引きを行った際の光損失の低減効果に関するものである。
図7は、単一モード光ファイバおよびマルチモード光ファイバの徐冷時間とレイリー散乱係数との関係を示す図である。
本発明の第2の実施例に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法では、図5の結果から、パラメータmの最適値として、0.5を用いた。ここで、(5)式でm=0.5とした時の、tlとT(tl)とTpを表1に示す。ただし、Tpの制限条件を室温25℃以上に限定したことにより、tl=0.1の場合についてだけm=2とした。
Figure 0004444926
本発明者らは、非特許文献4において、GeO2をドープした石英ガラスをコアに用いた光ファイバのレイリー散乱係数Rが、以下の(6)式によって良好に近似できることを見出している。ここで、Δは純石英ガラスとの比屈折率差(%)である。
R(dB/km/μm4) = 4.1 × 10-4( Tf + 273.1 )( 1 + 0.62Δ ) ・・・・(6)
表1の温度条件で、(6)式を用いてGeO2ドープ石英コアの単一モード光ファイバSMF(Δ=0.35%)とマルチモード光ファイバMMF(Δ=1.0%)のレイリー散乱係数Rをそれぞれ計算し、その結果を図7に示す。なお、市販の光ファイバは、一般に10m/s程度の高速で線引きされ、線引き炉の最下部の温度制御も行われていないので、徐冷されない時(tl=0,Tf=1600℃)の値にほぼ対応していると考えられる。実際に、SMFのtl=0の時のレイリー散乱係数Rの計算値0.93は、市販のSMFのレイリー散乱係数Rの平均的な値とほとんど一致する。また、MMFのt1=0の時のレイリー散乱係数Rの計算値は、1.24であった。また、図7に示すように、SMFおよびMMFのレイリー散乱係数Rはlog(tl)に対して直線的に減少する。各光ファイバでは、図中の点線で示した徐冷されない(t1=0)時の値からの減少量は8〜18%程度である。
既に述べたように、本発明では、Tpを制御することで、各種の石英系光ファイバに対して、任意の線引き速度で損失の低減効果を得ることができる。
例えば、徐冷区間長Lが50cmの場合を想定し、レイリー散乱係数Rの値から短波長側でのレイリー散乱損失(=R/λ4,λ:波長)に換算すると、v=5m/sの時はtl=0.1sとなり、tl=0の時の値と比較して、SMFでは波長1.3μmで約0.03dB/kmの損失低減効果を得ることができ、v=0.5m/sの時はtl=1sとなり、同様にMMFでは波長0.8μmで約0.4dB/kmの損失低減効果を得ることができる。
また逆に、線引き速度vの範囲が決まっている時は、目標とするレイリー散乱係数Rおよび損失の値からtlが決定できるので、予め最適な徐冷区間長Lを算出することが可能になり、線引き炉の設計準備・製造に役立てることができる。
以下に、本発明の第3の実施例に係る光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法について、図面を用いて具体的に説明する。本実施例は、徐冷ゾーン長Lと徐冷時間t1の値に対する仮想温度Tfの変化とレイリー散乱係数Rの低減効果に関するものである。
図8は、炉内での徐冷時間tに対する光ファイバ本体の温度Tおよび仮想温度Tfの関係を示す図である。
実際に徐冷区間長L=30cm、線引き速度v=1m/s、t1=0.3sの条件を満たす線引き炉で、比屈折率差Δ=0.33%のGeO2ドープ石英コアのSMFを線引きし、その損失波長特性からレイリー散乱係数Rを計算したところ、0.8dB/km/μm4であった。一方、線引き炉内の温度分布を測定したところ、高温領域では、長手方向に約100℃/cmの割合で温度が低下していた。
そこで、図8に示すように、線引き炉内温度分布Tzを仮定して、光ファイバ本体の徐冷時間t(位置Z)に対する光ファイバの温度Tと仮想温度Tfをそれぞれ計算した。この図に示すように、Tfの値は約1400℃となった。このとき、(6)式から得られるレイリー散乱係数Rの値は0.83となり、実際に得られた値は0.8とほとんど一致した。
本発明は、光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法利用可能であり、特に光通信に用いる各種の光ファイバの光損失を低減する光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法利用することが可能である。
本発明の原理と最良の形態に係る線引き炉を説明するための模式図である。 本発明の最良の形態に係る線引き炉の徐冷区間に光ファイバ本体が滞在する時間とその時の温度との関係の一例を示す図である。 石英系光ファイバの緩和時間τの温度依存性の一例を示す図である。 光ファイバ本体の徐冷時間t1とそのときの緩和時間τとの関係式のパラメータmと徐冷時間t1後の光ファイバ本体の温度T(tl)およびこの時の最下点の温度Tminの設定値Tpの関係を示す図である。 光ファイバ本体の徐冷時間t1とそのときの緩和時間τとの関係式のパラメータmと仮想温度Tfの関係を示す図である。 線引き炉の最下点の温度Tminの設定値Tpと仮想温度Tfの関係を示す図である。 単一モード光ファイバSMFおよびマルチモード光ファイバMMFの徐冷時間とレイリー散乱係数との関係を示す図である。 光ファイバの徐冷時間tに対する光ファイバ本体の温度Tおよび仮想温度Tfの関係を示す図である。
符号の説明
1 光ファイバ母材
2 光ファイバ
10 線引き炉本体
11 徐冷区間
12 炉外
13 加熱用ヒータ
20 線引き炉

Claims (2)

  1. 線引き炉内に配置される加熱手段の下方に炉内の温度が長手方向の距離に対して1600℃から連続的に減少する一定長の徐冷区間を設けた線引き炉を用いて、石英系の光ファイバ母材を前記加熱手段により1600℃以上の高温で加熱し線引きしてなる光ファイバ本体を室温まで冷却させて光ファイバを製造する際の、前記光ファイバ本体を室温まで冷却させる冷却過程において、
    当該光ファイバ本体の温度が1600℃近傍に到達した後に前記徐冷区間に当該光ファイバ本体が滞在する時間が所定の徐冷時間t1となるように線引き速度または前記徐冷区間の全長を設定するとともに、
    前記所定の徐冷時間t1後に到達する当該光ファイバ本体の温度T1900℃以上の温度となるように前記徐冷区間の最下部の設定温度Tminを設定する
    光ファイバの製造における前記所定の徐冷時間t1を決定する方法であって、
    前記温度T1における石英系光ファイバの緩和時間τを求め、
    前記所定の徐冷時間t1を求められた前記緩和時間τの10-2倍以上2倍以下の範囲とする
    ことを特徴とする光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法。
  2. 請求項1に記載された光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法であって、
    前記温度T1における石英系光ファイバの緩和時間τを求め、
    前記所定の徐冷時間t1を求められた前記緩和時間τの略0.3倍とする
    ことを特徴とする光ファイバの製造における徐冷時間の決定方法。
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