JP6175467B2 - 光ファイバ母材製造方法、光ファイバ母材及び光ファイバ - Google Patents

光ファイバ母材製造方法、光ファイバ母材及び光ファイバ Download PDF

Info

Publication number
JP6175467B2
JP6175467B2 JP2015160077A JP2015160077A JP6175467B2 JP 6175467 B2 JP6175467 B2 JP 6175467B2 JP 2015160077 A JP2015160077 A JP 2015160077A JP 2015160077 A JP2015160077 A JP 2015160077A JP 6175467 B2 JP6175467 B2 JP 6175467B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
optical fiber
fiber preform
temperature
base material
preform
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015160077A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017036196A (ja
Inventor
青笹 真一
真一 青笹
恭三 辻川
恭三 辻川
中島 和秀
和秀 中島
山本 文彦
文彦 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Original Assignee
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Telegraph and Telephone Corp filed Critical Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority to JP2015160077A priority Critical patent/JP6175467B2/ja
Publication of JP2017036196A publication Critical patent/JP2017036196A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6175467B2 publication Critical patent/JP6175467B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Manufacture, Treatment Of Glass Fibers (AREA)

Description

本発明は、光ファイバを製造するための光ファイバ母材の製造方法、当該製造方法で製造した光ファイバ母材、及び当該光ファイバ母材から製造した光ファイバに関する。
現在、長距離用光ファイバ母材の製造方法は、気相法によるものが主流であり、ファイバの完成までの工程は大きく分けて、多孔質母材の製造、母材の焼結(透明化)、ファイバ紡糸線引の3工程から成る。気相法による代表的な石英系光ファイバの母材作製法として、以下の4つがある。
{1}OVD法(Outside Vaper Deposition Method)
{2}MCVD法(Modified Chemical Vapor Deposition Method)
{3}PCVD法(Plasma Chemical Vapor Deposition Method)
{4}VAD法(Vapor−phase Axial Deposition Method)
この中でも現在の主流である{4}のVAD法を例にとって、光ファイバ母材の製造方法を説明する(図1)。原料供給系から供給される原料気体(SiCl,GeCl)は、酸水素バーナの炎の中に導かれ、バーナ燃焼部で下記の火炎加水分解反応を受ける。
SiCl+2HO −> SiO+4HCl
GeCl+2HO −> GeO+4HCl
この火炎加水分解によって、石英系ガラスの微粒子(スート)が形成される。この微粒子を出発材の先端に堆積させる。ガラス微粒子は軸方向に堆積するので、この成長速度に合わせて出発材を回転させながら上方に引き上げて行き、多孔質母材が形成される。
次に多孔質母材を加熱炉に入れて高温で処理すると、焼結が進み、完全な透明ガラス体(母材)となる。この透明化工程時の高温処理の温度は典型的には1500℃前後である。冷却時は急冷によるガラスの歪みやひびなどの破損を避けるために、比較的、緩やかな速度でこの1500℃程度の高温から室温まで冷却される。特に、徐冷点と呼ばれる温度付近で徐冷処理が行われる。この徐冷点の温度は気相法で作製される石英系のガラスでは1200℃付近である。従って、従来のVAD法で作製される石英系母材の典型的な熱処理の模式図(母材温度と時間との関係)は、図2のようになる。
さらに、この母材を光ファイバ線引装置に挿入し、線引が実施される(非特許文献1)。一般的な光ファイバの線引装置は非特許文献2に示すように、加熱炉、ファイバ外径測定器、ダイス(被覆(樹脂)塗布)、被覆(樹脂)硬化器(加熱炉、UV照射器等)、キャプスタン、巻き取り装置、母材を保持し、母材を加熱炉へ送り出す母材送り装置等から構成される(図3)。母材は電気炉内にて紡糸温度Tdに加熱され、局所的に軟化したガラスは、所望のファイバ外径(一般的には125μm)まで細径化される。紡糸張力Fで引っ張られ、加熱炉の下端口から引き出された光ファイバは、外径測定器を通過し、樹脂塗布器で樹脂がファイバ表面をコーティングし、樹脂硬化器(UV光源)で樹脂が硬化される。外径測定器の測定結果を基に、ファイバ外径が一定となるようにキャプスタンの速度が調整される。
このようにして作製される石英系光ファイバについては、光学特性だけでなく、機械強度の向上が重要な課題である。特に近年、曲げ損失の小さい光ファイバの開発が急速に進展し、伝送用の装置内のボード上の配線など、極端に小さい曲げ半径などの過酷な条件での使用が検討されている。また、複数のコアを持つため次世代の大容量伝送用のファイバなどへの適用を目指して、マルチコア光ファイバ(MCF)の研究も急速に進んでいる。MCFでは複数のコアを1本のファイバ中に用いるため、ファイバの外径が増加する傾向がある。しかし、ファイバの外径の増加は機械強度の劣化の大きな要因の一つとなる。
光ファイバの機械強度を改善する方法としてTiO添加SiOガラスやフッ素添加SiOガラスをSiOファイバ母材の表面に構築する方法がある(特許文献1,2)。このファイバ母材を溶融線引きすると、線引き時において外層の粘度がクラッドよりも小さいことから線引張力がクラッドに多くかかり、張力解放後に外層に圧縮応力が残留する。その結果、この残留圧縮応力がファイバ表面にかかる引張応力を緩和し、耐傷性や疲労特性、つまり機械強度が改善される。また、光ファイバの機械強度を改善する方法として、一度固化して形成した光ファイバを再加熱した上で急冷し表面に圧縮応力を印加する方法も考えられる。
特開平4−65327号公報 特開平5−124831号公報
川上彰二郎、白石和男、大橋正治著、「光ファイバとファイバ形デバイス」1996年7月10日発行、P.11 三木哲也、須藤昭一編、「光通信技術ハンドブック」、オプトロニクス社、平成14年1月30日発行、p.244 AGC website, http://www.agc−automotive.com/english/products/temper.html U. C. Paek, et. al.,"Calculation of cooling rate and induced stresses in drawing of optical fibers", J. Am. Ceram. Soc., Vol. 58, No. 7−8, pp. 330−335, 1975. 轟,"構造緩和に関係するシリカガラスファイバの物性", NEW GLASS, Vol. 15, No. 3, pp. 19−24, 2000. K. Saito, et. al.,"Control of glass−forming process during fiber−drawing to reduce the Rayleigh scattering loss", J. Am. Ceram. Soc., Vol. 89, No. 1, pp. 65−69, 2006.
しかしながら、特許文献1,2では、母材の表面のクラッドの外周領域に高価なドーパント材料であるFなどを適切な一定量ドープする必要があり、経済性の問題とともに母材の作製プロセスが複雑化するという問題がある。またクラッドの外周領域のドープによって、屈折率が変化し、各種の光学特性に影響を及ぼす点にも考慮が必要となり、母材作製前の構造の設計も複雑化する。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、表面のクラッドの外周領域へのドーパント添加や、光ファイバ紡糸に関する設備の追加を必要とせず光ファイバの機械強度を改善でき、且つ様々な種類の光ファイバの製造に適用できる光ファイバ母材、これを経済的に形成できる光ファイバ母材製造方法、並びにその光ファイバ母材から製造した光ファイバを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る光ファイバ母材製造方法は、光ファイバ母材を線引き紡糸する前に加熱および急冷処理を行うこととした。
具体的には、本発明に係る光ファイバ母材製造方法は、気相法で形成した多孔質母材を所定温度で加熱する加熱処理の後に、前記所定温度より低い徐冷点温度で徐冷処理を行い、さらに室温まで冷却する冷却処理を行い、光ファイバ母材を形成する母材形成工程と、
前記母材形成工程で形成した前記光ファイバ母材を前記所定温度以上に再加熱する再加熱処理を行い、前記母材形成工程での前記冷却処理の冷却速度より速い急冷速度で前記光ファイバ母材を急冷処理する表面改善工程と、
を行う。
本光ファイバ母材製造方法は、母材にドーパント添加をせず、熱処理の温度制御のみで光ファイバの機械強度を改善する光ファイバ母材を製造する。このため、ドーパント添加による経済性の問題や作製プロセスの複雑化という課題を解決できる。また、温度制御だけなので、光ファイバ紡糸に関する設備の追加が不要としながら、様々な種類の光ファイバに適用できる光ファイバ母材を製造できる。さらに、光ファイバ母材は微細な構造の光ファイバと比べて圧倒的に大きく、熱処理時の取扱いが容易であり、この点も経済的な製造に資する。なお前述の通り、この徐冷点温度は、気相法で作製される石英系のガラスでは1200℃付近である。
従って、本発明は、表面のクラッドの外周領域へのドーパント添加や、光ファイバ紡糸に関する設備の追加を必要とせず光ファイバの機械強度を改善でき、且つ様々な種類の光ファイバの製造に適用できる、光ファイバ母材を経済的に形成できる光ファイバ母材製造方法を提供することができる。
さらに具体的には、本発明に係る光ファイバ母材製造方法は、次のような特徴を持つ。
前記表面改善工程での前記再加熱処理で、前記光ファイバ母材の表面温度が前記光ファイバ母材の軟化点温度以上となるように加熱することを特徴とする。なお、この軟化点温度は、気相法で作製される石英系のガラスでは1600℃付近である。
前記表面改善工程での前記急冷処理の前記急冷速度が、前記光ファイバ母材の表面の仮想温度を前記光ファイバ母材の略軟化点温度とする速度であることを特徴とする。
τを前記光ファイバ母材の構造緩和時間として、前記急冷速度が、
Vc=100/τ(℃/秒)
以上であることを特徴とする。
前記光ファイバ母材が石英系ガラスであり、前記光ファイバ母材の表面の仮想温度が1400℃以上であることを特徴とする。
前記表面改善工程の前に、空孔構造を前記光ファイバ母材の長手方向に形成する空孔形成工程を行うことを特徴とする。光ファイバ母材がひび割れや破損することを防ぐことができる。
本発明は、前記光ファイバ母材製造方法で形成された光ファイバ母材であって、表面の仮想温度が前記表面改善工程での前記再加熱処理で加熱されたときの表面温度に略等しいことを特徴とする。従って、本発明は、表面のクラッドの外周領域へのドーパント添加や、光ファイバ紡糸に関する設備の追加を必要とせず光ファイバの機械強度を改善でき、且つ様々な種類の光ファイバの製造に適用できる、光ファイバ母材を提供することができる。
本発明は、前記光ファイバ母材製造方法で形成された光ファイバ母材を線引して形成された光ファイバである。従って、本発明は、表面のクラッドの外周領域へのドーパント添加や、光ファイバ紡糸に関する設備の追加を必要とせず光ファイバの機械強度を改善でき、且つ様々な種類の光ファイバの製造に適用できる、光ファイバ母材から製造した光ファイバを提供することができる。
本発明は、表面のクラッドの外周領域へのドーパント添加や、光ファイバ紡糸に関する設備の追加を必要とせず光ファイバの機械強度を改善でき、且つ様々な種類の光ファイバの製造に適用できる光ファイバ母材、これを経済的に形成できる光ファイバ母材製造方法、並びにその光ファイバ母材から製造した光ファイバを提供することができる。
一般的なVAD法による光ファイバ母材作製に関する説明図である。 一般的なVAD法による光ファイバ母材作製時の熱処理に関する説明図である。 一般的な光ファイバ紡糸装置の構成図である。 本発明に係る光ファイバ母材製造方法の熱処理に関する説明図である。 本発明に係る光ファイバ母材の断面内の仮想温度Tの分布の一例である。なお、簡略化のためコア部分の表記は省略している。 本発明に係る光ファイバ母材製造方法に関する説明図である。 本発明に係る光ファイバ母材に関する説明図である。 本発明に係る光ファイバの残留応力分布特性に関する説明図である。
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
(発明原理)
まず、本発明における光ファイバの機械強度を改善する原理を具体的に説明する。
本発明の原理は、光ファイバの表面領域(光ファイバ表面から深さ3〜5μmの領域)へ圧縮方向の残留応力を付与することで高強度化を実現するというものである。この原理自体は、一般のガラスの強度の強化方法(強化ガラス:非特許文献3)として従来から知られているものではあるが、発明者は、光ファイバの出発材料である母材に適切な熱処理を加え、その後、紡糸線引きすることによって、この原理を光ファイバにも適用可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
次に、本発明によって光ファイバ表面に圧縮応力が誘起される理由を説明する。非特許文献4のFig.8に示されているように、光ファイバに誘起される残留応力のうち、「Mechanically induced stress」の大きさは、紡糸張力Fに比例して増大する。また、母材および光ファイバの断面内で相対的に粘度が低い領域では、「Mechanically induced stress」の方向は、圧縮方向に働く。従って、母材表面付近の領域の粘度を何らかの手段で低くし、その母材を紡糸すれば、高強度の光ファイバを作製できる。なお、「母材表面付近の領域」とは母材表面から母材外径の10%以内の領域を指す。
本発明においては、熱処理によって母材の表面付近の領域の粘度を低減し、高強度化を実現するが、その物理的なメカニズムは、概略下記の通りである。
石英系のガラスを含め、ガラスの物性は一般に仮想温度Tに依存して変化する。石英系のガラスおよび光ファイバの粘度は、Tが高いほど低くなることが、非特許文献5に示されている。非特許文献5によれば、VAD法で作製されたT=1600℃の光ファイバの粘度は、温度領域にもよるが、(Tが1600℃よりも十分に低い)母材の粘度の1/10から1/1000程度である。VAD法などで作製された石英系母材の仮想温度Tの典型的な値は、1100℃程度である。従って、石英系母材に、加熱および急冷処理を加え、表面付近の仮想温度Tを1200℃以上にすれば、母材表面付近の粘度はクラッド内部の領域よりも低くなる。従って、この熱処理後の母材を、紡糸線引きすることによって、ファイバの表面付近に圧縮応力を誘起し、高強度化を実現できる。
圧縮応力の大きさは前述のように、紡糸張力Fに比例して増大するため、Fの値は、より大きい方が好ましい。ただし、Fが大きくなりすぎると紡糸自体が困難になったり、光ファイバの構造パラメータ(カットオフ波長やモードフィールド径)が設計値からずれてくることが知られている。従って、これらのデメリット要因を考慮して、最適な紡糸張力Fを決定すれば良い。紡糸温度Tdに関しては、Tdが高温すぎると、母材の粘度が下がるとともに粘度の断面内分布が均一化されるため、本発明の効果が低下する。ただし、Tdが低温すぎると、紡糸張力Fが増大しすぎるため、前述の問題が発生する。以上を考慮すると、通常の単一モード光ファイバ(純石英クラッドSMF)を紡糸する際は、紡糸張力Fの範囲は30〜100g程度、紡糸温度Tdの範囲は1870〜1920℃程度が好ましい。
以下に、本発明に係る光ファイバ母材の製造方法の実施例について、図を用いて具体的に説明する。
(実施形態1)
本実施形態の光ファイバ母材製造方法は、
気相法で形成した多孔質母材を所定温度で加熱する加熱処理の後に、前記所定温度より低い徐冷点温度で徐冷処理を行い、さらに室温まで冷却する冷却処理を行い、光ファイバ母材を形成する母材形成工程と、
前記母材形成工程で形成した前記光ファイバ母材を前記所定温度以上に再加熱する再加熱処理を行い、前記母材形成工程での前記冷却処理の冷却速度より速い急冷速度で前記光ファイバ母材を急冷処理する表面改善工程と、
を行う。
本光ファイバ母材製造方法は、熱処理に特徴を有する。図4は本光ファイバ母材製造方法での光ファイバ母材の熱処理(母材表面温度と時間との関係)を模式的に示した図である。図中の(A)の段階(母材形成工程)は、従来のVAD法で作製される石英系母材の典型的な熱処理(図2)と同様である。本光ファイバ母材製造方法は、その後に図中の(B)の段階(表面改善工程)の熱処理(加熱および急冷処理)が加わり、母材表面付近の仮想温度Tを上昇させる。
図4において、加熱温度Thは石英系の母材の徐冷点温度である1200℃以上が好ましく、さらに軟化点温度である1600℃付近もしくはそれ以上であることが好ましい。ただし、Thを軟化点温度以上とした場合、母材の変形が生じる可能性があり、これが生じないように留意する必要がある。
一方、急冷処理時の冷却速度については、母材の表面温度Tとすると、以下の(1)式で与えられるVc(℃/秒)を目安として急冷することが好ましい。
[式(1)]
Vc = 100 / τ(T)
ここで、τはガラス母材の構造の緩和時間であり、Tの関数として与えられる。
母材の表面温度がTの時に、Vcの速度で冷却すれば、ガラスの構造緩和が追い付けず、母材の表面の仮想温度T(=T)をT付近の値にすることが可能になる。石英系母材のτとTとの関係は、例えば、下記の非特許文献6に示されている。例えば仮想温度Tを1400℃近傍としたい場合、非特許文献6のFig.1より、T=1400℃の時にτは約1秒なので、Vcは100℃/秒と見積もられる。つまり、T=1400℃の時に100℃/秒程度の冷却速度で急冷処理することで、母材表面の仮想温度Tを1400℃近傍の値に設定することができる。
また、石英系ガラスのTは赤外波長領域の吸収スペクトルや反射スペクトルによって測定評価できるので、適宜、ガラス試験片などを用いて冷却速度と仮想温度との関係をあらかじめ定量化することで、目標とする仮想温度に対して必要な冷却速度Vcを実験的に見積もることもできる。
(実施形態2)
本実施形態は、光ファイバ母材の断面内の仮想温度Tの分布とその実現手段に関する。
図5は、本発明に係る光ファイバ母材の断面内の仮想温度Tの分布の一例である(簡略化のため本発明に関係しないコア部分の表記は省略)。既述のように、従来のVAD法で作製されるSMF用母材を例に取ると、実施形態1の光ファイバ母材製造方法の表面改善工程前の段階(図4の(A)後の段階)では、純石英クラッド部全体のTは均一な分布となり(図5(a))、1100℃付近の値である(図5(c)の線{a})。これに表面改善工程(図4の(B)の段階)を行うことで、母材のクラッド部の表面付近に選択的にT=Tの高い領域を形成することができる(図5(b))。
図5(c)の点線{b}で示したように、このTの分布は、理想的には、より変化が急激な階段状の分布となることが好ましい。また、Tの値は、より高い方が、母材表面の粘度が低くなるため好ましい。
しかしながら、母材の表面と比較すると、内部ほど冷却速度が遅いため、図5(c)の点線{b}のような階段状分布とすることは困難で、現実的には、より緩やかな実線{b’}のような分布になる。点線{b}のような階段状分布に近づけるためには、加熱領域を表面近傍に限定し、加熱がクラッド内部まで及ばないようにすることが好ましい。
例えば、電気炉等により加熱を行う場合は、加熱時間を適宜設定することにより、これを実現することが可能である。具体的には、表面の仮想温度T=1400℃とするときは、表面改善工程での再加熱処理で1400℃に加熱し、母材の熱伝導率から計算した時間後、急冷処理を行う。
また、バーナ等による火炎加熱による場合も、火炎温度と加熱時間を適宜設定することにより、加熱がクラッド内部まで及ばないようにすることが可能である。一般的には短い時間で所定温度に達することが望ましい。なお、火炎加熱の場合、加熱むらが生じやすいため、母材を一定速度で回転させたり、バーナ本数を増やすなどの手段により、加熱の均一化を図ることが好ましい。
さらに、図6のように母材11の上部と下部に母材と同等な外径の放冷用のガラス管13を融着接続し、クラッド内部の加熱を妨げるとともに、母材表面付近の冷却速度を増すことにより、Tの分布を階段状の分布に近づけることができる。なお、本実施形態で述べた手段は組み合わせて実施することも可能であり、適宜、これらの手段を用いることで、図5(c)の点線{b}のような均一で階段状分布に近いTの分布を実現することができる。またガラス管は金属等を添加することで熱伝導性をさらに向上することが可能である。
(実施形態3)
本実施形態は、光ファイバ母材の構造に関する。実施形態1及び2で述べたように、本光ファイバ母材製造方法においては、図4における加熱温度Thからの急冷によって、図5における母材の表面の仮想温度Tを上昇させ、粘度を低減する。その際、急冷速度Vcが速いほど、Tを上昇するので、必要に応じて冷却用ガスや水などの冷却材を用いてVcの値を大きくすることが好適となる。
しかしながら、急冷の際に、母材の表面近傍が急激に収縮するため、母材にひびが入ったり、破損を生じる危険性がある。その対策としては、図7のように、母材11の表面近傍に適当な個数と大きさの空孔12を長手方向に開けておくことが好適である。具体的には、前記表面改善工程の前に、空孔構造を前記光ファイバ母材の長手方向に形成する空孔形成工程を行うことを特徴とする。
空孔は断熱部として働き、加熱領域を母材の表面近傍に限定するとともに、急冷処理時に生じる母材の歪みを吸収して母材の破損の可能性を軽減する。そして、空孔は図5(c)の点線{b}のような均一で階段状分布に近いTの分布を実現することができる。ただし、空孔は表面に発生する圧縮応力を緩和する可能性もあり、適切な空孔数・空孔位置・空孔サイズを決定する必要がある。また空孔の位置はコアの光学特性に影響を及ぼさない範囲で適宜選択することも可能であり、コアの光学特性への影響をあらかじめ見込んだ上で、適宜選択することも可能である。
(実施形態4)
本実施形態は、実施形態2で説明した光ファイバ母材から線引作業を行い製造した光ファイバの機械強度特性に関する。図8は、加熱温度Th=1800℃とし、急冷速度Vc=1000℃/秒で急冷処理した単一モード光ファイバ用の母材を、紡糸温度Td=1900℃、紡糸張力F=100gで紡糸した光ファイバの残留応力分布である。図に示したように、作製した単一モード光ファイバ(SMF1)の表面に約7Mpaの圧縮応力が発生しており、疲労係数nが28であった。比較用に、上記の熱処理を加えていない同一構造の母材を、同一の紡糸条件で、線引きしてSMF2を作製したところ、光ファイバの表面での圧縮応力は観測されず、ほぼ0Mpaであり、疲労係数nが25であった。従って、本発明により、SMFのnが3向上し、機械強度の改善を確認した。
[付記]
以下は、本実施形態の光ファイバ母材製造方法、光ファイバ母材及び光ファイバを説明したものである。
(目的)
光ファイバの線引き紡糸においてプロセスを追加することなく、効率的かつ容易に高強度な光ファイバを製造すること。
(1):気相法によって合成された母材を線引き紡糸することによって実現される光ファイバ母材および光ファイバの製造方法であって、
気相法によって母材を作製後、当該の母材を、表面付近の温度が母材の徐冷点温度以上の温度に到達するように加熱処理を行い、その後に急冷処理し、その後に線引き紡糸することを特徴とする光ファイバ母材および光ファイバの製造方法。
(2):上記(1)に記載の光ファイバ母材および光ファイバの製造方法であって、
母材の加熱処理時に、母材の表面付近の温度が母材の軟化点温度付近もしくはそれ以上の温度に到達するように加熱を行うことを特徴とする光ファイバ母材および光ファイバの製造方法。
(3):上記(1)または(2)に記載の光ファイバ母材および光ファイバの製造方法であって、母材表面付近の仮想温度が母材の軟化点温度付近であることを特徴とする光ファイバ母材および光ファイバの製造方法。
(4):上記(1)から(3)のいずれかに記載の光ファイバ母材および光ファイバの製造方法であって、石英系の母材表面付近の仮想温度が1400℃以上であることを特徴とする光ファイバ母材および光ファイバの製造方法。
(5):上記(1)から(4)のいずれかに記載の光ファイバ母材および光ファイバの製造方法であって、加熱処理および急冷処理の前に、空孔構造を母材の長手方向に付与することを特徴とする光ファイバ母材および光ファイバの製造方法。
(6):上記(1)から(5)のいずれかに記載の光ファイバ母材および光ファイバの製造方法によって製造されたことを特徴とする光ファイバ母材および光ファイバ。
(効果)
本発明は、微細なサイズの光ファイバそのものではなく、その出発材料の母材に熱処理を加えることによって実現されるため、多種多様な構造の光ファイバ全般について機械強度を向上させることができる。さらに、光ファイバの線引き紡糸プロセスについては、設備やプロセスを追加する必要がなく、熱処理のプロセスの制御も容易である。従って、効率的かつ経済的に高強度な光ファイバを製造することが可能になる。
11:光ファイバ母材
12:空孔
13:ガラス管

Claims (5)

  1. 気相法で形成した多孔質母材を所定温度で加熱する加熱処理の後に、前記所定温度より低い徐冷点温度で徐冷処理を行い、さらに室温まで冷却する冷却処理を行い、光ファイバ母材を形成する母材形成工程と、
    前記母材形成工程で形成した前記光ファイバ母材を前記所定温度以上に再加熱する再加熱処理を行い、前記母材形成工程での前記冷却処理の冷却速度より速い急冷速度で前記光ファイバ母材を急冷処理する表面改善工程と、
    を行う光ファイバ母材製造方法であって、
    前記表面改善工程での前記再加熱処理で、
    前記光ファイバ母材の表面温度が前記光ファイバ母材の軟化点温度以上、且つ前記光ファイバ母材の内部温度が前記光ファイバ母材の軟化点温度未満となるように加熱することを特徴とする光ファイバ母材製造方法。
  2. 前記表面改善工程での前記急冷処理の前記急冷速度が、
    前記光ファイバ母材の表面の仮想温度を前記光ファイバ母材の略軟化点温度とする速度であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材製造方法。
  3. τを前記光ファイバ母材の構造緩和時間として、前記急冷速度が、
    Vc=100/τ(℃/秒)
    以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ母材製造方法。
  4. 前記光ファイバ母材が石英系ガラスであり、前記光ファイバ母材の表面の仮想温度が1400℃以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ母材製造方法。
  5. 前記表面改善工程の前に、空孔構造を前記光ファイバ母材の長手方向に形成する空孔形成工程を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光ファイバ母材製造方法。
JP2015160077A 2015-08-14 2015-08-14 光ファイバ母材製造方法、光ファイバ母材及び光ファイバ Active JP6175467B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015160077A JP6175467B2 (ja) 2015-08-14 2015-08-14 光ファイバ母材製造方法、光ファイバ母材及び光ファイバ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015160077A JP6175467B2 (ja) 2015-08-14 2015-08-14 光ファイバ母材製造方法、光ファイバ母材及び光ファイバ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017036196A JP2017036196A (ja) 2017-02-16
JP6175467B2 true JP6175467B2 (ja) 2017-08-02

Family

ID=58047100

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015160077A Active JP6175467B2 (ja) 2015-08-14 2015-08-14 光ファイバ母材製造方法、光ファイバ母材及び光ファイバ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6175467B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6887207B2 (ja) * 2018-08-10 2021-06-16 古河電気工業株式会社 光ファイバの製造装置および光ファイバの製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS52149134A (en) * 1976-06-04 1977-12-12 Fujikura Ltd Preparation of mother material for optical fiber
JPH09124338A (ja) * 1995-08-28 1997-05-13 Asahi Glass Co Ltd 強化ガラス

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017036196A (ja) 2017-02-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN113009619B (zh) 具有氟和氯共掺杂芯区域的低损耗光纤
JP6048031B2 (ja) 光ファイバ製造方法
JP2971373B2 (ja) 径方向で熱伝導率変化を有する光ファイバ母材の製法
US8687936B2 (en) Optical fiber, optical transmission system, and method of making optical fiber
JP5559164B2 (ja) 曲げに強い光ファイバーを形成するための方法
RU2736023C2 (ru) Легированное бромом оптическое волокно
KR20060033861A (ko) 점도 불일치를 감소시킨 광섬유
EP1571133A1 (en) Apparatus and method for manufacturing optical fiber including rotating optical fiber preforms during draw
JP2001192228A (ja) 線引き中の光ファイバーの冷却方法
JP2007197273A (ja) 光ファイバ素線及びその製造方法
JP5949016B2 (ja) 光ファイバ製造方法
US10710924B2 (en) Optical fiber production method
WO2020181788A1 (zh) 一种基于套管法的光纤预制棒制造方法
JP2006131444A (ja) 光学部品用光ファイバ母材およびその製造方法、並びに光ファイバ
EP3305735B1 (en) Optical fiber production method
JP6295234B2 (ja) 光ファイバの製造方法
JP6175467B2 (ja) 光ファイバ母材製造方法、光ファイバ母材及び光ファイバ
JP6916235B2 (ja) 光ファイバの製造方法
WO2020177352A1 (zh) 一种基于连熔石英套管的光纤预制棒及其制造方法
US8341979B2 (en) Method of heat treating a porous optical fiber preform
CN115490419B (zh) 光纤及其制备方法
JP4459720B2 (ja) 光ファイバ素線の製造方法
CN116589174B (zh) 石英预制件、光纤及光纤制备方法
JP6174092B2 (ja) 光ファイバ製造装置、光ファイバ製造方法、および光ファイバ
RU2764240C1 (ru) Способ изготовления анизотропных одномодовых волоконных световодов

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161129

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170125

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20170404

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170608

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20170616

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170704

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170710

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6175467

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150