図1は、本発明の実施例1に係るヘッドランプの断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。同図に示すヘッドランプ1は、リフレクタ10と、光源としての放電バルブ15と、リフレクタ10の前方に設けられ、リフレクタ10からの反射光を所定の方向に照射する集光レンズ20と、放電バルブ15と集光レンズ20との間に設けられた固定シェード30及び可動シェード40と、これらを一体に固定するフレーム60とから形成されている。また、前記可動シェード40は、可動手段となる可動ユニット50に固定され、当該可動ユニット50は前記フレーム60に固定されている。また、固定シェード30は、直接フレーム60に固定されている。
前記リフレクタ10の内面には、アルミ蒸着等によって反射面11が形成されている。また、当該リフレクタ10の後端付近には前記放電バルブ15用の挿通孔12が形成されており、放電バルブ15は挿通孔12より挿通してリフレクタ10に固定する。また、この放電バルブ15には、電源(図示省略)と電気的に接続されているバルブソケット(図示省略)が接続される。
前記反射面11の形状は、中心線(光軸)70上に第1焦点F1及び第2焦点F2の2つの焦点を有し、前記中心線70を中心軸とする回転楕円を基調とする形状の一部となっている。前記放電バルブ15の発光部16は、前記第1焦点F1付近に位置する。前記第2焦点F2付近には、前記固定シェード30の上端付近が位置しており、前後方向における固定シェード30の位置は、第2焦点F2とほぼ同じ位置となっている。この第1焦点F1及び第2焦点F2は、当該反射面11の形状を決める基準である光学基準点となっている。前記可動シェード40は、この固定シェード30の近傍で、固定シェード30よりも若干前方に位置している。
前記リフレクタ10の前方にはフレーム60が設けられており、その前端、つまり第2焦点F2の前方には集光レンズ20が設けられている。また、フレーム60の下部には、前記可動ユニット50を固定する可動ユニット固定部61が設けられている。前記可動シェード40は、上記のように固定シェード30よりも若干前方、即ち集光レンズ20の方向に位置するように可動ユニット50に固定され、可動ユニット50は前記可動ユニット固定部61に固定される。また、集光レンズ20は非球面レンズであって透明の物質、例えばガラス等から形成されている。その形状は、ほぼ円形の凸レンズ状の形状となっており、凸側の面を前方に向けて設けられている。上記の固定シェード30及び可動シェード40は、2枚とも上方から見ると後方に凸となって湾曲した板状の形状で形成されている。その湾曲の大きさは、固定シェード30よりも可動シェード40の方が小さいため、可動シェード40は固定シェード30の前方或いは湾曲の径方向の内側方向に位置している。
図3は、図1のB−B断面図である。前記固定シェード30を後方から見た場合には、上部の形状が中央部34付近から左側の方が、右側よりも高く、即ち、上方側に形成されている。この上部の形状の左側部分は対向車線側水平エッジ部31として形成されており、当該対向車線側水平エッジ部31よりも低く、即ち、下方側に形成されている右側部分は走行車線側水平エッジ部32として形成されている。固定シェード30のこの上部の部分は、固定エッジ33として形成されており、この固定エッジ33が前記第2焦点F2に位置するようにして、前記放電バルブ15と前記集光レンズ20との間に当該固定シェード30は設けられている。この固定エッジ33は、詳細には、対向車線側水平エッジ部31が中央部34付近まで形成されており、中央部34から右下方に向けて斜めに形成された固定シェード傾斜エッジ部35が形成されており、この固定シェード傾斜エッジ部35は中央部34より右側の所定の位置で、対向車線側水平エッジ部31より低く形成された走行車線側水平エッジ部32に接続されている。この固定シェード傾斜エッジ部35により対向車線側水平エッジ部31及び走行車線側水平エッジ部32の段差はつながれ、固定エッジ33として連続した形状で形成されている。
図4は、図1のC−C断面図である。前記可動シェード40を後方から見た場合には、前記固定シェード30と同様に上部の形状が中央部44付近から左側の方が、右側よりも高く、即ち、上方側に形成されている。可動シェード40の上部も固定シェード30と同様に、上部の左側部分が対向車線側水平エッジ部41、右側部分が走行車線側水平エッジ部42として形成されている。また、可動シェード40のこの上部の部分は可動エッジ43として形成されている。この可動エッジ43は前記固定エッジ33と同様に、詳細には、対向車線側水平エッジ部41が中央部44付近まで形成されており、中央部44から右下方に向けて斜めに形成された可動シェード傾斜エッジ部45が形成されている。この可動シェード傾斜エッジ部45は中央部44より右側の所定の位置で、対向車線側水平エッジ部41より低く形成された走行車線側水平エッジ部42に接続されている。この可動シェード傾斜エッジ部45により対向車線側水平エッジ部41及び走行車線側水平エッジ部42の段差はつながれ、可動エッジ43として連続した形状で形成されている。
当該可動エッジ43の対向車線側水平エッジ部41と走行車線側水平エッジ部42の上下方向の差は、前記固定エッジ33の対向車線側水平エッジ部31と走行車線側水平エッジ部32との上下方向の差よりも大きく形成されている。また、前記固定シェード傾斜エッジ部35が、固定エッジ33の走行車線側水平エッジ部32に接続される部分と、前記可動シェード傾斜エッジ部45が、前記可動エッジ43の走行車線側水平エッジ部42に接続される部分とは、当該ヘッドランプ1の左右方向における位置がほぼ同じ位置となっている。これらのため、前記固定シェード傾斜エッジ部35は、前記可動シェード傾斜エッジ部45よりも、上下方向における傾斜が緩やかな傾斜で形成されている。
また、固定シェード30及び可動シェード40の下部は、左右にかけてほぼ水平に形成されており、左右方向の両端部は垂直方向に形成されているので、固定シェード30及び可動シェード40を前後方向に見た場合には、上部に固定エッジ33或いは可動エッジ43が形成された略矩形状の形状に近い形状で形成されている。
前記可動シェード40は、第1位置と第2位置との間を上下する。この可動シェード40は、その下方の後方側に、作動軸固定部46が形成されている。また、前記可動ユニット50の上部には作動軸51が設けられており、この作動軸51の先端である最上部には、可動シェード固定部52が設けられている。また、当該可動ユニット50の内部にはソレノイド(図示省略)が設けられており、さらに、前記作動軸51は、スプリング(図示省略)によって上方向に付勢力が与えられている。この前記作動軸51は、当該ソレノイドの作動とスプリングの付勢力によって上下方向に作動する。また、当該可動ユニット50には、ストッパー(図示省略)が設けられており、前記作動軸51を上下方向に作動させた際に、このストッパーによって所定位置に正確に停止する。前記可動シェード40は、前記作動軸固定部46と、前記作動軸51に設けられた可動シェード固定部52とを固定することにより、作動軸51に固定されている。また、この可動ユニット50は、フレーム60に設けられた可動ユニット固定部61にスクリュー62によって固定される。このように、作動軸51に可動シェード40が固定された可動ユニット50をフレーム60の可動ユニット固定部61に固定することにより、可動シェード40は、上記のように固定シェード30の近傍で、固定シェード30の若干前方の位置になるように固定される。
このように固定された可動シェード40は、前記固定シェード30の上端付近、即ち、固定エッジ33付近が前記第2焦点F2付近に位置しているため、固定シェード30よりも若干前方に位置する当該可動シェード40は、第2焦点F2よりも若干前方となる位置に設けられている。
この実施例1にかかるヘッドランプは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。前記ヘッドランプ1ですれ違いビームを照射する際には、前記可動ユニット50の作動軸51が上方に移動するように当該作動軸51を作動させる(図1参照)。作動軸51をこのように移動させる際には、当該可動ユニット50内設されるソレノイドに対して無通電にし、ソレノイドを非作動にする。作動軸51は、スプリングによって上方向に不勢力が与えられているので、ソレノイドへの電気を無通電にすることにより、このスプリングの不勢力によって上方に移動する。
図5は、図1の固定シェード及び可動シェードを併せてB−B断面方向から見た状態を示す図である。作動軸51をこのように上方に移動させた場合には、当該作動軸51に固定されている可動シェード40も上方に移動し、可動ユニット50に設けられる前記ストッパーによって上方の所定の位置、即ち第1位置に停止する。この状態の可動シェード40を、図5の符号41、42、43の実線で示す。可動シェード40が第1位置に位置している場合の可動シェード40の詳細な位置は、当該可動シェード40を前後方向から見た場合に、当該可動シェード40の走行車線側水平エッジ部42が、前記固定シェード30の走行車線側水平エッジ部32と上下方向、即ち、当該可動シェード40の作動方向における位置が同一の位置となっている。また、可動シェード40の走行車線側水平エッジ部42と対向車線側水平エッジ部41との上下方向の差は、固定シェード30の走行車線側水平エッジ部32と対向車線側水平エッジ部31との差よりも大きいため、可動シェード40の走行車線側水平エッジ部42と固定シェード30の走行車線側水平エッジ部32との上下方向の位置が同一となっている場合には、可動シェード40の対向車線側水平エッジ部41は、固定シェード30の対向車線側水平エッジ部31よりも上方に位置する。これにより、可動シェード40の走行車線側水平エッジ部42と固定シェード30の走行車線側水平エッジ部32との上下方向の位置が同一になりつつ、可動エッジ43は固定エッジ33よりも上方に位置している。
この状態で当該ヘッドランプ1を点灯すると、まず、前記放電バルブ15内の発光部16が点灯をする。発光部16が点灯をすると、発光部16からの光のうちの一部の光は前記リフレクタ10の反射面11方向に向かい、当該反射面11によって反射される。反射面11の形状は、第1焦点F1と第2焦点F2とを光学基準点とする回転楕円を基調とした形状の一部で形成されているため、第1焦点F1付近に位置している前記発光部16からの光が反射面11で反射した場合には、反射したこの光は第2焦点F2の方向に向かう。
反射面11は上記のように回転楕円を基調として形成されているため、反射面11で反射した光は、第2焦点F2で交差する。例えば、反射面11の上半側の部分で反射した光は下部方向に向けて反射され、反射面11の下半側の部分で反射した光は上部方向に向けて反射されるため、これらの光のうち反射後に第2焦点F2の方向に向かう光は、第2焦点F2を通過する際に交差する。第2焦点F2通過後は、反射面11の上半側の部分で反射した光は下部の方向に進み、反射面11の下半側の部分で反射した光は上部の方向に進む。
ここで、第2焦点F2近傍には固定シェード30が設けられており、さらにその前方には可動シェード40が設けられている。また、固定シェード30及び可動シェード40は上部に固定エッジ33或いは可動エッジ43が設けられており、この固定エッジ33や可動エッジ43が第2焦点F2付近に位置しているため、固定シェード30と可動シェード40の大部分は第2焦点F2の下方に位置している。このため、反射面11の下半側の部分で反射した光は、この固定シェード30或いは可動シェード40で遮られる。
上記のように反射面11で反射した光のうちの一部を固定シェード30或いは可動シェード40で遮る際には、前記可動エッジ43が上記のように固定エッジ33よりも上側にあるため、前記反射面11で反射した光は、当該光が遮られる部分との境界部が可動エッジ43の形状に沿った形状となって遮られる。その際に、可動エッジ43は、第2焦点F2よりも前方に若干前方に位置しているため、その境界部は若干ぼやけた状態となる。
前記反射面11で反射した光はこのように遮られた後、前記集光レンズ20の方向に向かう。前記反射面11で反射した光は、前記第2焦点F2までは集光しながら当該第2焦点F2まで進み、第2焦点F2を通過後は拡散しながら前記集光レンズ20の方向に進む。そして集光レンズ20に到達し、集光レンズ20を透過する際にこれらの光は向きを変えられ、略平行な光となって前方を照射する。
図6は、図1のヘッドランプの配光パターンを示す図である。前記反射面11で照射した光は、前記固定シェード30や可動シェード40が無い部分のみの光が前記集光レンズ20に向かい、集光レンズ20から前方に照射されるため、この前方に照射される照射光は、前記固定シェード30や可動シェード40の形状と逆の形状で照射される。また、この照射光は、上記のように可動エッジ43の形状で遮光されているため、照射光は可動シェード40の形状の逆の形状で照射される。即ち、照射光は自動車前方の上下方向の中心であるH−H線よりも下方を照射するので、配光パターンはH−H線よりも下方となり、照射光がこの範囲に照射されることにより、当該ヘッドランプ1の照射光はすれ違いビームとなるので、配光パターンはすれ違い用配光パターン80となる。
このすれ違い用配光パターン80の上部の形状、つまりカットオフライン81は、可動エッジ43の形状と同様に、カットオフライン81の右側部分である対向車線側水平カットオフライン83が、カットオフライン81の左側部分である走行車線側水平カットオフライン82よりも低く形成されている。また、走行車線側水平カットオフライン82は、H−H線上に位置している。対向車線側水平カットオフライン83の左側の端部であるエルボ点85は自動車前方の左右方向の中央に位置し、これにより、このエルボ点85は、自動車前方の左右方向の中心であるV−V線上に位置する。これらの走行車線側水平カットオフライン82と対向車線側水平カットオフライン83とは、前記可動シェード傾斜エッジ部45に対応し、上記の対向車線側水平カットオフライン83の左側の端部であるエルボ点85から走行車線側水平カットオフライン82の所定の位置にかけて形成された傾斜部である傾斜カットオフライン84によってつながれている。また、これにより、対向車線側水平カットオフライン83と傾斜カットオフライン84とは、V−V線上に位置するエルボ点85でつながれている。前記ヘッドランプ1ですれ違いビームを照射する場合には、可動ユニット50によって可動シェード40を第1位置に位置させることにより、配光パターンは上記のようなすれ違い用配光パターン80となる。また、このすれ違い用配光パターン80のカットオフライン81は、上記可動エッジ43による光の遮蔽が、境界部が若干ぼやけた状態で遮蔽するため、当該カットオフライン81も若干ぼやけた状態となる。
図7は、図1のヘッドランプの可動シェードが第2位置に位置した状態を示す図である。前記ヘッドランプ1で高速走行用ビームを照射する際には、前記可動ユニット50の作動軸51が上記とは逆に下方に移動するように当該作動軸51を作動させる。作動軸51を下方に移動させる際には、可動ユニット50内設される前記ソレノイドに通電することによりを作動させるが、このソレノイドは、当該ヘッドランプ1を制御するAFS−ECU(図示省略)によってPWM制御されている。これにより、作動軸51を下方に移動させる際には、電流を間引かない、或いは間引く時間を減らしてソレノイドに電流を流す。また、作動軸を所定の位置で停止させる場合には、電流を間引く時間を増加させることにより電圧を下げたのと同様の状態で、作動軸を停止させる。
作動軸51をこのようにして下方に移動させた場合には、当該作動軸51に固定されている可動シェード40も下方に移動し、可動ユニット50に設けられている前記ストッパーによって下方の所定の位置である第2位置に停止する。その際、作動軸51を下方位置で停止させる前記ストッパーは、ゴムやばね等の緩衝材を用いた緩衝構造で形成されているため、作動軸51が当該ストッパーで停止をする際に、小さい作動音で停止をする。この状態の可動シェード40の詳細な位置は、可動エッジ43の全ての部分が、前記固定エッジ33よりも下方に位置している。この状態の可動シェード40を、図5の符号41、42、43の二点鎖線で示す。具体的には、可動シェード40の対向車線側水平エッジ部41と走行車線側水平エッジ部42との段差は、固定シェード30の対向車線側水平エッジ部31と走行車線側水平エッジ部32との段差よりも大きいので、可動シェード40の対向車線側水平エッジ部41を固定シェード30の対向車線側水平エッジ部31よりも下方に位置させることにより、可動エッジ43の全ての部分は、固定エッジ33よりも下方に位置する。このように可動シェード40が第2位置に位置した場合の固定シェード30の走行車線側水平エッジ部32は、可動シェード40が第1位置に位置している場合の当該可動シェード40の走行車線側水平エッジ部42の位置と上下方向における位置が同一となっている。
また、固定シェード30の対向車線側水平エッジ部31と走行車線側水平エッジ部32との段差は、可動シェード40の対向車線側水平エッジ部41と走行車線側水平エッジ部42との段差よりも小さいので、可動シェード40が第1位置に位置している場合の対向車線側水平エッジ部41の上下方向における位置よりも、可動シェード40が第2位置に位置した場合の固定シェード30の対向車線側水平エッジ部31の方が下方に位置している。これらにより、可動シェード40が第2位置に位置した場合と、可動シェード40が第1位置に位置した場合と比較すると、上部の右側部分は、常に可動シェード40の走行車線側水平エッジ部42或いは固定シェード30の走行車線側水平エッジ部32が位置している。これに対し、上部の左側部分は、可動シェード40が第1位置に位置している場合の可動シェード40の対向車線側水平エッジ部41よりも、可動シェード40が第2位置に位置した場合の固定シェード30の対向車線側水平エッジ部31の方が下方に位置する。つまり、可動シェード40が第2位置に位置した場合には、上部の左側部分のみが可動シェード40が第1位置に位置している場合と比較して下方に位置することになる。
図8は、図7のヘッドランプの配光パターンを示す図である。前記放電バルブ15が点灯し、発光部16で照射された光は、前記反射面11で反射して上記のように第2焦点F2の方向に向かい、この光のうち、前記反射面11の下半側の部分で反射した光は、固定シェード30或いは可動シェード40で遮られる。その際、前記可動エッジ43は全ての部分が前記固定エッジ33よりも下側に位置しているため、前記反射面11で反射した光は、当該光が遮られる部分との境界部が固定エッジ33の形状に沿った形状となって遮られる。その際に、固定エッジ33は、前後方向における位置が第2焦点F2とほぼ同じ位置となっているので、その境界部ははっきりと明暗が分かれるようにして遮られる。前記反射面11で反射した光は、上記と同様に集光レンズ20の方向に向かい、集光レンズ20を透過する際に略平行な光となって前方を照射する。この照射光は、前記固定シェード30によって遮光されているため、当該固定シェード30の形状の逆の形状で照射される。詳細には、照射光は自動車前方のH−H線よりも下方を照射する。
さらに、可動シェード40が第1位置に位置している場合の可動エッジ43の対向車線側水平エッジ部41よりも、可動シェード40が第2位置に位置している場合の固定エッジ33の対向車線側水平エッジ部31の方が、上下方向における位置が低いので、配光パターンの上部の右側部分は、すれ違い用配光パターン80の対向車線側水平カットオフライン83よりも高くなる。また、可動シェード40が第1位置に位置している場合の可動エッジ43の走行車線側水平エッジ部42と、可動シェード40が第2位置に位置している場合の固定エッジ33の走行車線側水平エッジ部32とは、上下方向における位置がほぼ同一となっているので、配光パターンの上部の左側部分は、すれ違い用配光パターン80の走行車線側水平カットオフライン82とほぼ同一の位置になる。配光パターンがこのように形成されることにより、可動シェード40を第2位置に位置させた場合の配光パターンは、高速走行用配光パターン90となる。
この高速走行用配光パターン90の上部の形状、つまりカットオフライン91は、すれ違い用配光パターン80のカットオフライン81と同様に、対向車線側水平カットオフライン93が、走行車線側水平カットオフライン92よりも低く形成されている。また、走行車線側水平カットオフライン92は、H−H線上に位置している。さらに、対向車線側水平カットオフライン93の左側の端部であるエルボ点95は、前記V−V線上に位置する。また、走行車線側水平カットオフライン92と対向車線側水平カットオフライン93とは、前記固定シェード傾斜エッジ部35に対応し、上記の対向車線側水平カットオフライン93の左側の端部であるエルボ点95から走行車線側水平カットオフライン92の所定の位置にかけて形成された傾斜部である傾斜カットオフライン94によってつながれている。これにより、対向車線側水平カットオフライン93と傾斜カットオフライン94とは、V−V線上に位置するエルボ点95でつながれている。前記ヘッドランプ1で高速走行用ビームを照射する場合には、可動ユニット50によって可動シェード40を第2位置に位置させることにより、配光パターンは上記のような高速走行用配光パターン90となる。また、この高速走行用配光パターン90のカットオフライン91は、上記固定エッジ33による光の遮蔽が、境界部がはっきりと明暗が分かれた状態で遮蔽するため、当該カットオフライン91もはっきりした状態となる。
このように、すれ違い用配光パターン80の走行車線側水平カットオフライン82に対する対向車線側水平カットオフライン83の上下方向の段差αは、高速走行用配光パターン90の走行車線側水平カットオフライン92に対する対向車線側水平カットオフライン93の上下方向の段差βよりも大きくなっている。この段差の差を角度で表すと、すれ違い用配光パターン80は、対向車線側水平カットオフライン83は走行車線側水平カットオフライン82に対して0.57度の角度差で下方を照射しているのに対し、高速走行用配光パターン90は、対向車線側水平カットオフライン93は走行車線側水平カットオフライン92に対して0.27度の角度差で下方を照射している。つまり、高速走行用配光パターン90の対向車線側水平カットオフライン93は、すれ違い用配光パターン80の対向車線側水平カットオフライン83よりも、0.3度上方を照射している。
図9は、コンピュータのシミュレーションで得られたスクリーン上の配光パターンを簡略化して示す等光度曲線の説明図で、(A)は、すれ違い用配光パターンを示す図、(B)は、高速走行用配光パターンを示す図である。図9の配光パターンの中央の等光度曲線は、20000cdを示し、その他の曲線は外に行くに従って10000cd、5000cd、2000cd、1000cd、500cd、200cdをそれぞれ示す。前記ヘッドランプ1を備えた自動車で前方の路面を照射すると、すれ違い用配光パターン100では、自動車前方の中心線であるH−H線付近の下方、即ち、H−H線よりも若干手前側の、自動車前方中央であるV−V線付近が最も光度が高くなる。また、V−V線の右側よりも、左側の方が、よりH−H線に近い位置を高い光度で照射している。すれ違い用配光パターン100は、この最も光度が高い部分から手前側及び水平方向外側にいくに従って、光度は低下していく。高速走行用配光パターン110では、すれ違い用配光パターン100と同様に、H−H線よりも若干手前側のV−V線付近が最も光度が高くなり、この最も光度が高い部分から手前側及び水平方向外側にいくに従って、光度は低下していく。この高速走行用配光パターン110では、すれ違い用配光パターン100と異なり、V−V線を中心として光度の分布は略左右対称となっている。
図10は、コンピュータのシミュレーションで得られた道路上の配光パターンを簡略化して示す等光度曲線の説明図で、(A)は、すれ違い用配光パターンを示す図、(B)は、高速走行用配光パターンを示す図である。図10の配光パターンの中央の等光度曲線は、20000cdを示し、その他の曲線は外に行くに従って10000cd、5000cdをそれぞれ示す。前記ヘッドランプ1を備えた自動車での夜間の実際の走行では、当該ヘッドランプ1からすれ違いビームを照射すると、すれ違い用配光パターン100は自車レーンのみでなく、左側レーン102及び右側レーン103に対しても分布する。上記の最も光度が高い部分は主に自車レーン101を照射し、またすれ違い用配光パターン100ではV−V線よりも左側の方がH−H線に近く、右側はH−H線よりも手前側に離れているので、V−V線よりも右側のH−H線付近にはすれ違いビームが照射されない非照射部120がある。すれ違いビームでは、前記カットオフライン81が上記のように走行車線側水平カットオフライン82よりも対向車線側水平カットオフライン83の方が低く形成されているので、このように非照射部120がある。右側レーン103が対向車線であった場合でも、すれ違い用配光パターン100ではこの非照射部120があるので、右側レーン103を走行する対向車の運転席付近には照射せず、対向車に対して眩光とはならない。また、すれ違い用配光パターン100は、H−H線付近が最も遠方、或いは最も上方を照射している部分である。さらに、先行車ドアミラー105は、先行車が自車に対してどのような車間距離でも常にH−H線よりも上方になり、すれ違い用配光パターン100の範囲外になるので、すれ違いビームは先行車に対して眩光とはならない。
前記ヘッドランプ1を備えた自動車での夜間の実際の走行で、当該ヘッドランプ1から高速走行用ビームを照射すると、高速走行用配光パターン110は、V−V線から右側部分もH−H線付近を照射するので、高速走行用配光パターン110は、V−V線を中心とした略左右対称の分布となる。これにより、高速走行用ビームは、すれ違いビームでの前記非照射部120も高速走行用配光パターン110の範囲内となる。この非照射部120は、自車からみて遠方部分だったので、この非照射部120も高速走行用配光パターン110の範囲内となることにより、高速走行用ビームをすれ違いビームよりも遠方を照射でき、遠方を視認し易くなる。また、この高速走行用配光パターン110でも、H−H線付近が上限となるので、先行車ドアミラー105を照射することがなく、先行車に対して眩光とはならない。
図11は、コンピュータのシミュレーションで得られた道路上の配光パターンを簡略化して示す等照度曲線の説明図で、(A)は、すれ違い用配光パターンを示す図、(B)は、高速走行用配光パターンを示す図である。図11の配光パターンの中央の等照度曲線は、100lxを示し、その他の曲線は外に行くに従って70lx、50lx、30lx、20lx、10lx、5lx、3lxをそれぞれ示す。自車150が自車レーン101をすれ違いビームで照射した場合には、すれ違い用配光パターン100は、自車150の前方で、自車150から所定の距離をおいた部分の照度が最も高く、主にこの部分から前方の遠方に向かうに従って、照度が低くなる。また、その際に、前方の左側の方が、右側よりも遠方まで照射している。つまり、左側レーン102の方が右側レーン103よりも遠方を照射している。また、自車150が自車レーン101を高速走行用ビームで照射した場合には、高速走行用配光パターン110は、自車の前方の所定の距離までは、すれ違い用配光パターンと同様に、自車150の前方で、自車150から所定の距離をおいた部分の照度が最も高く、主にこの部分から前方の遠方に向かうに従って、照度が低くなる。自車150の遠方では、すれ違い用配光パターン100とは異なり、左側レーン102と右側レーン103とは同様に遠方まで照射している。また、高速走行用配光パターン110は、自車150の前方付近が最も遠方まで照射した、概ね左右対称の配光パターンになっている。しかし、高速走行用配光パターン90のカットオフライン91では、走行車線側水平カットオフライン92よりも対向車線側水平カットオフライン93の方が若干低いので、前記高速走行用配光パターン110でも、前方右側よりも前方左側の方が若干遠方を照射している。
以上のヘッドランプ1は、可動ユニット50の作動軸51に可動エッジ43を形成した可動シェード40を固定し、当該可動ユニット50を作動させることにより、可動シェード40を動かしている。また、この可動シェード40の近傍に、固定エッジ33を形成した固定シェード30を設けている。これらにより、可動ユニット50により可動シェード40を動かすことによって、可動シェード40での配光パターンであるすれ違い用配光パターン80と、固定シェード30での配光パターンである高速走行用配光パターン90とを切替えることができる。この結果、自動車の低速走行に最適なすれ違い用配光パターンと、自動車の高速走行に最適な高速走行用配光パターンとを確実に得ることができる。
また、可動ユニット50の作動軸51を上下方向に作動させるのみで、上記のように配光パターンを切替えることができる。このような可動ユニット50の作動軸51の上下方向の作動は、反射面11で反射した光を遮蔽する、或いは遮蔽しないことにより、すれ違いビーム或いは走行ビームを切替える従来のヘッドランプの可動ユニットの作動と同様なので、可動ユニットに新たな作動をさせることなく、上記のように配光パターンを切替えることができる。この結果、異なる配光パターンを形成する複数のシェードを、簡単な構造で切り替えることができる。
また、可動シェード40が第1位置に位置している場合の可動シェード40の走行車線側水平エッジ部42と、固定シェード30の走行車線側水平エッジ部32との上下方向における位置が同一となっている。可動シェード40が第1位置に位置している場合の可動シェード40の走行車線側水平エッジ部42はすれ違い用配光パターン80の走行車線側水平カットオフライン82に対応し、可動シェード40が第2位置に位置している場合の固定シェード30の走行車線側水平エッジ部32は高速走行用配光パターン90の走行車線側水平カットオフライン92に対応する。すれ違い用配光パターン80の走行車線側水平カットオフライン82と高速走行用配光パターン90の走行車線側水平カットオフライン92とは、自動車前方の水平線であるH−H線よりも上にあげると、前走車のインナーミラー或いはアウトサイドミラーに入ってしまい、前走車に対して眩光となる虞がある。また、これらの位置が低過ぎると、遠方の視認性が低下する。このため、すれ違い用配光パターン80の走行車線側水平カットオフライン82と高速走行用配光パターン90の走行車線側水平カットオフライン92とは、双方がH−H線上になるように位置を合わせる必要がある。
これらの位置を合わせるには、可動シェード40の走行車線側水平エッジ部42と固定シェード30の走行車線側水平エッジ部32とが、可動シェード40が第1位置に位置している場合に上下方向において同一の位置になる様にすることにより、すれ違い用配光パターン80の走行車線側水平カットオフライン82と高速走行用配光パターン90の走行車線側水平カットオフライン92との位置を合わせることができる。これにより、複数の配光パターンのカットオフラインのうちの、位置を合わせる必要がある部分のみの位置を合わせ、カットオフラインのそれ以外の部分は、自動車の状況に応じて光を照射することによって視認し易いような配光パターンにすることができる。従って、異なる配光パターンを形成する複数のシェードを切り替える際に、シェードの一部の位置を合わせることにより、配光パターンのうち変化させない部分は変化させずに、変化させたい部分のみを容易に変化させることができる。この結果、異なる配光パターンを形成する複数のシェードを切り替えることによって配光パターンを任意の形状にする際の容易性が向上し、より実用的なヘッドランプにすることができる。
また、前記固定エッジ33を、前記反射面11の光学基準点の1つである第2焦点F2に位置させている。固定エッジ33をこのように第2焦点F2に位置させることにより、上記のように、高速走行用配光パターン90のカットオフライン91をはっきりさせることができる。また、固定エッジ33がこのように第2焦点F2に位置しているので、固定シェード30の近傍に設けられる可動シェード40は、第2焦点から離れた位置に設けられる。これにより、可動エッジ43によって形成されるすれ違い用配光パターン80のカットオフライン81は、上記のように若干ぼやけた状態になる。
高速走行用配光パターン90では、カットオフライン91がすれ違い用配光パターン80のカットオフライン81よりも上方に位置している。このため、カットオフライン91は他車の運転席付近を照射する場合があり、その場合、カットオフライン91がぼやけていると、その他車に対して眩光となる虞がある。そのような場合でも、上記のようにカットオフライン91をはっきりさせることにより、カットオフライン91の配光パターンがはっきりするので、他車に対して眩光となることを抑制することができる。
また、すれ違い用配光パターン80では、カットオフライン81がはっきりしてカットオフライン81付近の明暗がはっきりし過ぎると、暗い部分が見え難くなる。このような状況で路面に凹凸があり、自動車が上下に傾くことにより照射方向が上下した場合で、自動車前方の一部がすれ違い用配光パターン80の照射範囲外となった場合には、その部分が見え難くなる虞がある。また、カットオフライン81がはっきりしている場合で、前記ヘッドランプ1が左右方向に照射方向が移動するヘッドランプ1である場合には、照射方向が移動した際に、明暗の境界がはっきりした傾斜カットオフライン84も左右に移動するので、運転手の視線が傾斜カットオフライン84に誘導され、他の部分へ注意が散漫になる虞がある。このため、すれ違い用配光パターン80のカットオフラインはぼやけていた方が、自動車を運転する際の安全性の向上に貢献することができる。
従って、高速走行用配光パターン90のカットオフライン91の明暗をはっきりさせるために、固定エッジ33を第2焦点F2に位置させ、すれ違い用配光パターン80のカットオフライン81は明暗をぼやけさせるために、可動エッジ43を第2焦点F2から若干離れた部分に位置させている。この結果、複数の配光パターンのカットオフラインのはっきり具合を異ならせたい場合でも対応でき、また、自動車を運転する際の安全性の向上に貢献することができる、より実用的なヘッドランプとすることができる。
また、高速走行用配光パターン90は、すれ違い用配光パターン80で照射されていなかったカットオフライン91の右側部分を上げることにより、すれ違いビームでは照射されない遠方の非照射部120を照射することができ、且つ、照射光が前走車等に対して眩光となることを抑制している。この結果、自動車を運転する際の安全性の向上に貢献しつつ、他車に対する眩光を抑制することができる。また、高速走行用配光パターン90は、走行車線側水平カットオフライン92と対向車線側水平カットオフライン93との上下方向における段差が小さいので、すれ違い用配光パターン80と比較して配光パターンが左右対称に近くなる。また、高速走行用配光パターン110では、自車150の前方付近が、もっとも遠方まで照射されている。この結果、遠方の視認性が向上し、高速走行に適した配光パターンになる。
また、上記の高速走行用配光パターン90は、すれ違い用配光パターン80では照射されていない右側の上部或いは遠方を照射することにより、高速走行用配光パターン90としている。つまり、すれ違い用配光パターン80の対向車線側水平カットオフライン83を0.3度上にあげることにより、高速走行用配光パターン90としている。この結果、容易に高速走行用配光パターン90を形成することができる。
また、1枚のシェードで配光パターンを変化させる場合、例えば、シェードを可動手段で上下方向に移動させることにより、そのシェードの上下の移動に合わせて配光パターンのカットオフラインを上下させるヘッドランプの場合には、シェードの上下方向の両方の位置での精度を高くする必要がある。このため、シェードを所定の位置で停止させるために、硬質のストッパーを用いる事が多い。この場合、可動手段でシェードを移動させ、ストッパーに当接した際に作動音が出てしまう。しかし、前記ヘッドランプ1では、固定シェード30と可動シェード40との2種類のシェードを用いて、可動シェード40が第1位置に位置している場合には可動シェード40で配光パターンのカットオフラインを形成し、可動シェード40が第2位置に位置している場合には固定シェード30で配光パターンのカットオフラインを形成する。このため、可動シェード40が第2位置に位置している場合には、当該可動シェード40は全ての部分が上記にように固定エッジ33より下方に位置するので、位置精度を高める必要がない。従って、可動シェード40が第2位置に位置する場合のストッパーは、上記のように緩衝構造にすることができる。この結果、配光パターンを切替える際の作動音を小さくすることができる。
また、可動ユニット50に内設されているソレノイドをPWM制御で作動させているので、ソレノイドの作動時には、電流を間引かない、或いは間引く時間を減らすことにより、大きな電力を供給することができる。また、可動シェード40が第2位置で停止するように作動軸51を停止させる場合には、電流を間引く時間を増加させることにより、ソレノイドに供給する電力を小さくすることができる。ソレノイドは、作動時に大きな電力を必要とし、また、停止状態を維持する際には小さな電力で停止状態を維持させることができるので、上記にようにソレノイドをPWM制御で作動させることにより、ソレノイドを確実に作動させつつ、電力消費量を低減させることができる。また、電力消費量が低減するので、ソレノイドに電気が流れる際の発熱を抑制することができる。これらの結果、前記ヘッドランプ1が装備される自動車に搭載される電源への負担を低減し、また、作動時の発熱が抑制されることにより発熱に起因する作動不良等も抑制できるので、作動の安定化を図ることができる。
また、フレーム60と固定シェード30とを一体に形成したことにより、部品点数が減少し、組立て工数も低減する。この結果、シェードを2枚で形成した場合でも、製造コストの上昇を抑えることができ、コストの低減を図ることができる。
このヘッドランプは、実施例1に係るヘッドランプと略同様の構成であるが、可動シェードが2枚の板で形成されている点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略するとともに、同一の符号を付す。図12は、本発明の実施例2に係るヘッドランプの断面図である。図13は、図12のヘッドランプの可動シェード及び固定シェードの斜視図である。実施例2のヘッドランプ200に設けられる可動シェード210は、実施例1の可動シェード40と同様に上方から見ると後方に凸となって湾曲した形状で形成されているが、実施例1の可動シェード40が1枚の板で形成されているのに対し、実施例2の可動シェード210は、2枚の薄い板によって形成されている。
この2枚の板が共に上方から見ると後方に凸となって湾曲した形状で形成されており、2枚の板のうち前方に位置する板は前部可動シェード211、後方に位置する板は後部可動シェード212として形成されている。また、前部可動シェード211と後部可動シェード212とは、間に空間を有して形成されている。この前部可動シェード211及び後部可動シェード212は、2枚とも両端にカシメ部213が設けられており、2枚を重ねてカシメ部213をカシメることにより、前部可動シェード211と後部可動シェード212とは、一体となって形成される。なお、この前部可動シェード211と後部可動シェード212との間隔は、3mm以内で形成するのが好ましい。
この可動シェード210を後方から見た場合には、前部可動シェード211及び後部可動シェード212共に実施例1の可動シェード40と同様に、上部の形状が中央部217付近から左側の方が右側よりも高く、即ち、上方側に形成されている。この部分は実施例1の可動シェード40と同様に可動エッジ216として形成されており、この可動エッジ216には、実施例1の可動エッジ43と同様な形状で対向車線側水平エッジ部214、走行車線側水平エッジ部215、可動シェード傾斜エッジ部218が形成されている。
また、後部可動シェード212には、実施例1の可動シェード40に設けられる作動軸固定部46と同様な作動軸固定部219が設けられている。可動シェード210は、この作動軸固定部219が可動ユニット50の作動軸51に設けられる可動シェード固定部52に固定されることにより、可動ユニット50に固定される。前記可動シェード210は、このように可動シェード210が固定された可動ユニット50をフレーム60に固定することにより、固定シェード30の付近に位置するように固定される。この固定シェード30は固定エッジ33が第2焦点F2に位置するようにフレーム60に固定されている。前記可動シェード210が固定される際には、固定シェード30の前側に前記前部可動シェード211が位置し、当該固定シェード30の後ろ側に後部可動シェード212が位置するように、可動シェード210は位置している。つまり、前部可動シェード211と後部可動シェード212との間に前記固定シェード30は位置しており、可動シェード210は固定シェード30をまたぐようにして形成されている。このため、前部可動シェード211は第2焦点F2の若干前側に位置しており、後部可動シェード212は第2焦点F2の後ろ側に位置している。
また、このように前記固定シェード30は、前部可動シェード211と後部可動シェード212との間に位置しているため、当該固定シェード30には可動シェード210のカシメ部213に相当する部分に逃げ部230が形成されている。この逃げ部230の部分で、前記カシメ部213によって前部可動シェード211と後部可動シェード212とを上記のようにカシメてつなげることより、可動シェード210は固定シェード30をまたいで一体となって形成される。
この実施例2にかかるヘッドランプは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。前記ヘッドランプ200ですれ違いビームを照射する際には、実施例1のヘッドランプ1と同様に可動ユニット50を作動させて、可動シェード210を第1位置に位置させる(図12参照)。可動シェード210を第1位置に位置させた場合には、前部可動シェード211の走行車線側水平エッジ部215及び後部可動シェード212の走行車線側水平エッジ部215と、固定シェード30の走行車線側水平エッジ部32との上下方向の位置が同一となる。この場合、前部可動シェード211の対向車線側水平エッジ部214及び後部可動シェード212の対向車線側水平エッジ部214は、固定シェード30の対向車線側水平エッジ部31よりも上方に位置する。
この関係は実施例1のヘッドランプ1のすれ違いビームの照射時の状態と同じなので、この状態で放電バルブ15を発光させると、実施例1のヘッドランプ1と同様にすれ違い用配光パターン80の配光パターンで前方に照射される。その際、前部可動シェード211の可動エッジ216及び後部可動シェード212の可動エッジ216は、第2焦点F2から若干離れているため、すれ違い用配光パターン80のカットオフライン81は若干ぼやけた状態となる。
また、前記ヘッドランプ200で高速走行用ビームを照射する際には、可動ユニット50を作動させて、上記とは逆に可動シェード210を実施例1の可動シェード40の第2位置と同様に第2位置に位置させる。可動シェード210を第2位置に位置させた場合には、前部可動シェード211と後部可動シェード212の可動エッジ216の全ての部分が、固定シェード30の固定エッジ33より下方に位置する。
この関係は実施例1のヘッドランプ1の高速走行用ビームの照射時の状態と同じなので、この状態で放電バルブ15を発光させると、実施例1のヘッドランプ1と同様に高速走行用配光パターン90の配光パターンで前方に照射される。その際、固定シェード30の固定エッジ33は、第2焦点F2に位置しているため、高速走行用配光パターン90のカットオフライン91ははっきりした状態となる。
以上のヘッドランプ200は、可動シェード210が2枚の薄い板によって形成されているため、可動シェード210の剛性を確保しつつ軽量化を図ることができる。この結果、ヘッドランプ200全体の軽量化を図ることができる。また、可動シェード210が軽いので、当該可動シェード210を移動させる、或いは所定位置に停止させる際に電気によって作動する可動ユニット50の電気消費量を低減させることができる。この結果、前記ヘッドランプ200が装備される自動車に搭載される電源への負担を低減させることができる。
また、可動シェード210が固定シェード30をまたぐようにして形成されているため、可動シェード210を作動させる際に、固定シェード30が可動シェード210の作動のガイドになり、可動シェード210がブレることなく作動する。この結果、可動シェード210が安定して作動するので、作動の確実性が向上する。
また、通常のヘッドランプのようにシェードが1枚で形成されている場合には、配光パターンのカットオフライン上に色が発生し易いが、前記可動シェード210は2枚で形成されているので、この色を抑制することができる。即ち、前部可動シェード211の可動エッジ216及び後部可動シェード212の可動エッジ216が、第2焦点F2をまたぐようにして形成されているため、双方の可動エッジ216で発生した色を互いに打ち消しあうことができる。この結果、すれ違い用配光パターン80のカットオフライン81上に色が発生し難くなり、すれ違いビーム照射時の視認性の向上を図ることができる。
図14は、実施例1のヘッドランプの変形例を示す図である。図15は、図14のヘッドランプの可動シェード、固定シェード及び可動ユニットの斜視図である。なお、上記の実施例1では、固定シェード30をフレーム60に固定しているが、図14に示すように、固定シェード250を可動ユニット260に固定して設けてもよい。固定シェード250を可動ユニット260に固定する際には、可動ユニット260のヨーク261に固定シェード250を固定し、固定シェード250の前方に可動シェード270が位置するように、可動ユニット260の作動軸262に当該可動シェード270を固定する。
同様に、実施例2のように可動シェードが2枚の板で形成している場合の固定シェードも、可動ユニットに固定して設けてもよい。この場合は、可動シェードの前部可動シェードと後部可動シェードとの間に固定シェードが入るようにして、可動ユニットの作動軸に可動シェードを固定する。これらのように固定シェード250を可動ユニット260に固定することにより、固定シェード250及び可動シェード270の双方が可動ユニット260に固定されるので、双方のシェードの位置関係の調整が容易になる。この結果、すれ違い用配光パターン80の走行車線側水平カットオフライン82の位置と高速走行用配光パターン90の走行車線側水平カットオフライン92との位置を容易に合わせることができるので、より容易にすれ違い用配光パターン80と高速走行用配光パターン90とを切替えることの出来るヘッドランプにすることができる。また、固定シェード250及び可動シェード270の双方が固定された可動ユニット260をフレーム60に固定することにより固定シェード250及び可動シェード270の双方をヘッドランプに固定することができるので、組立てが容易になる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。また、固定シェード250をフレーム60と別体に設けることにより、フレーム60を樹脂で形成することができる。この結果、放電バルブ15の点灯時に発生するノイズのシールドの効果を得ることができる。
図16は、実施例1のヘッドランプ変形例の可動シェード、固定シェード及びストッパーブラケットの斜視図である。また、実施例1の固定シェード30は、リフレクタ10に固定されるストッパーブラケット310と一体に形成してもよい。この場合も上記と同様に、ストッパーブラケット310を介してリフレクタ10に固定された固定シェード300の前方に、可動シェード320を位置させる。同様に、実施例2のように可動シェードが2枚の板で形成している場合の固定シェード300も、リフレクタ10に固定されるストッパーブラケット310と一体に形成してもよい。この場合も上記と同様に、可動シェードは、固定シェードを前部可動シェードと後部可動シェードとでまたいで形成するようにして設ける。これらの場合、ストッパーブラケット310はリフレクタ10に直接固定されるものなので、このストッパーブラケット310と一体に形成することにより、固定エッジ301を反射面11の第2焦点F2に位置させる際の精度を向上させることができる。この結果、高速走行用ビームを照射する際に、より確実に高速走行用配光パターン90の配光パターンで照射することができ、さらに、高速走行用配光パターン90のカットオフライン91を、よりはっきりさせることができる。また、この場合も上記と同様に、固定シェード300をフレーム60と別体で形成しているので、フレーム60を樹脂で形成することができ、これにより、ノイズシールドの効果を得ることができる。
また、上記のヘッドランプでは、配光パターンを切り替える際に、可動シェードを上下方向に作動させているが、可動シェードは回動させてもよい。即ち、可動シェードはすれ違い用配光パターンで照射する時に使用するものであるため、高速走行用配光パターンで照射する際には、その位置は、高速走行用配光パターンでの光路を妨げない位置であればどこでもよい。これにより、配光パターンの切替え時の可動シェードの作動方向は、回動など上下方向以外の方向で作動してもよい。
また、上記の説明では、左側通行の道路で走行をする自動車に装備されるヘッドランプついて説明しているが、右側通行の道路を走行する自動車に装備する自動車に本発明のヘッドランプを装備する際には、各シェードのエッジ部の形状を、左右逆の形状にするとよい。これにより、配光パターンのカットオフラインの形状が左右逆となるので、右側走行に適した配光パターンとなり、右側走行の道路を走行する場合でも、上記の効果を得ることができる。