JP4442453B2 - 電子制御液圧ブレーキシステム - Google Patents

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Description

本発明は、車両用の液圧ブレーキシステムに関するものであり、特に、ホイールシリンダの液圧を電子制御により制御する形式のブレーキシステムに関するものである。
車輪の回転を抑制するブレーキを作動させるホイールシリンダの液圧を、動力液圧源の液圧に基づいて、電子制御により、運転者のブレーキ操作部材の操作に応じた大きさに制御する電子制御液圧ブレーキシステムは、既によく知られている。
この種の電子制御液圧ブレーキシステムにおいて、電子制御装置はイグニッションスイッチのオン操作に応じて起動されるのが普通であるが、イグニッションスイッチがオフの状態でブレーキ操作が行われることがある。この場合には、電子制御装置が作動しないため、マスタシリンダの液圧に基づいてホイールシリンダが作動させられることになる。しかも、ホイールシリンダの全部は作動させられず、一部のもののみが作動させられる場合が多い。
それでは車両全体として、制動力が不足する場合があるため、下記特許文献1には、イグニッションスイッチがオフの状態にあっても、ブレーキ操作部材の操作が行われれば、コンピュータを主体とする電子制御装置が起動させられるようにすることが提案されている。このようにすれば、十分な制動力が得られるのであるが、ブレーキ操作部材の操作感が悪くなる場合がある。ブレーキ操作部材の操作は、ブレーキを作動させるために行われるものであるから、電子制御装置を起動させるのみでは不十分であって、電子制御装置を起動させるのと同じブレーキ操作によりブレーキが作動状態にされることが必要である。一方、電子制御装置は、起動されれば直ちにホイールシリンダの液圧を制御し得る状態になるわけではない。起動時には種々の初期設定が行われることが必要であって液圧の制御までには一定の時間がかかり、故障の自己診断等が行われる場合には一層時間がかかるのである。そのため、電子制御装置起動の原因となったブレーキ操作の途中から電子制御装置がホイールシリンダの液圧を制御する状態となり、その結果生じる液圧急変の影響がブレーキ操作部材に伝達されて運転者に違和感を抱かせるのである。
例えば、下記特許文献2には、ホイールシリンダの液圧が動力液圧源の液圧に基づいて制御される場合には、マスタシリンダとホイールシリンダとの連通がマスタシリンダ遮断弁により遮断される一方、マスタシリンダの一部として構成されたストロークシミュレータ部からリザーバへブレーキ液が流出することが常閉の電磁開閉弁により許容されるとともに、ブレーキ操作部材たるブレーキペダルに徐々に増大する操作反力が加えられるようにすることが記載されている。この電子制御液圧ブレーキシステムにおいて、ブレーキ操作に対応して電子制御装置が起動される場合には、ホイールシリンダの液圧制御開始に際して、マスタシリンダ遮断弁が遮断状態とされるとともに常閉の電磁開閉弁が開かれてストロークシミュレータ部が機能状態とされるため、ブレーキペダルの操作反力が急に小さくなり、踏込みストロークが急増して、運転者に違和感を抱かせる。
上記違和感発生の問題を解決するために、ブレーキ操作に応じて電子制御装置が起動される場合には、上記ストロークシミュレータ部等のストロークシミュレータ装置が機能状態とされないようにすることが、下記特許文献3に記載されている。
特開平6−127317号公報 特開平11−255107号公報 特開2004−268868号公報
しかし、上記のように、ストロークシミュレータ装置が不機能状態に保たれ、かつ、マスタシリンダ遮断弁が遮断状態に保たれるなどにより、マスタシリンダからのブレーキ液の流出が殆ど不可能とされれば、ブレーキ操作部材の操作ストロークが著しく小さく制限されて、これまた運転者に違和感を抱かせることになる。
本発明は、以上の事情を背景として、ブレーキ操作に応じて電子制御装置が起動(ブレーキ操作対応起動と称する)される電子制御液圧ブレーキシステムであって、ブレーキ操作対応起動時に運転者に違和感を抱かせることが少ないものを得ることを課題としてなされたものである。
上記課題を解決するために、本発明に係る電子制御液圧ブレーキシステムは、(a)ブレーキ操作部材の操作に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、(b)そのマスタシリンダに接続され、複数の車輪の回転をそれぞれ抑制するブレーキを作動させる複数のホイールシリンダと、(c)動力により液圧を発生させる動力液圧源と、(d)少なくともそれらマスタシリンダ,複数のホイールシリンダおよび動力液圧源の間に設けられ、少なくともそれらの連通状態を切り換える切換装置と、(e)その切換装置を、少なくとも、前記複数のホイールシリンダの少なくとも一部のものを前記マスタシリンダと連通させる第一状態と、その少なくとも一部のホイールシリンダを前記マスタシリンダから遮断し、前記動力液圧源の液圧に基づいてその少なくとも一部のホイールシリンダの液圧を前記ブレーキ操作部材の操作に応じた大きさに制御する第二状態とに制御する電子制御装置と、(f)前記ブレーキ操作部材が操作されたことを検出するブレーキスイッチがオン状態となることに基づいて、前記電子制御装置を起動させるブレーキ操作対応起動部と、(g)そのブレーキ操作対応起動部による電子制御装置起動の原因となった前記ブレーキ操作部材の操作に伴って前記マスタシリンダから前記少なくとも一部のホイールシリンダの少なくとも1つへのブレーキ液の流出を許容する状態に、前記切換装置を制御する流出許容部とを含み、かつ、前記流出許容部が、前記ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達するまでは前記電子制御装置が前記切換装置に前記少なくとも1つのホイールシリンダを前記マスタシリンダから遮断させることを禁止し、第一設定操作量を超えれば遮断させることを許容する遮断禁止部を含むように構成される。
本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、ブレーキ操作部材が操作されたことを検出するブレーキスイッチがオン状態となることに基づいて、ブレーキ操作対応起動部により電子制御装置が起動させられる。しかし、前述のように、直ちにホイールシリンダの液圧を制御し得る状態、すなわち、切換装置を制御し得る状態になるわけではない。そこで、本システムにおいては、電子制御装置の起動時には、まず、流出許容部により、切換装置が、マスタシリンダから複数のホイールシリンダの少なくとも1つへの流出を許容する状態に制御されるようにしたのである。マスタシリンダと接続されたホイールシリンダが複数ある場合には、それらのうち少なくとも1つのホイールシリンダのマスタシリンダからの遮断と動力液圧源の液圧に基づく液圧制御とが禁止されれば、その少なくとも1つのホイールシリンダにストロークシミュレータ装置の機能を果たさせることができ、ブレーキ操作部材を操作可能にできる。前述のようにブレーキ操作の途中に液圧の急変が生じて運転者に違和感を抱かせることを良好に回避しつつ、適切な操作ストロークを生じさせることができるのである。
なお、複数のホイールシリンダのうち、上記のようにストロークシミュレータ装置の機能を果たさせられないものについては、電子制御装置が動力液圧源の液圧に基づく液圧制御が可能な状態になれば、直ちに液圧制御が開始されるようにすることができ、そのようにすれば、車両全体としての制動力の不足も良好に回避することができる。
しかも、本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、流出許容部が、ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達するまでは電子制御装置が切換装置に前記少なくとも1つのホイールシリンダをマスタシリンダから遮断させることを禁止し、第一設定操作量を超えれば遮断させることを許容する遮断禁止部を含むものとされるため、ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達した後は、電子制御液圧ブレーキシステム全体通常の制御状態に移行させることができる。すなわち、マスタシリンダに連通させられてストロークシミュレータ装置の機能を果たしていたホイールシリンダが、マスタシリンダから遮断され、電子制御装置による液圧制御が可能な状態とし得るのである。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(2)項が請求項1に相当し、(3)項が請求項2に、(4)項が請求項3に、(10)項が請求項4にそれぞれ相当する。
(1)ブレーキ操作部材の操作に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、
そのマスタシリンダに接続され、複数の車輪の回転をそれぞれ抑制するブレーキを作動させる複数のホイールシリンダと、
動力により液圧を発生させる動力液圧源と、
少なくともそれらマスタシリンダ,複数のホイールシリンダおよび動力液圧源の間に設けられ、少なくともそれらの連通状態を切り換える切換装置と、
その切換装置を、少なくとも、前記複数のホイールシリンダの少なくとも一部のものを前記マスタシリンダと連通させる第一状態と、その少なくとも一部のホイールシリンダを前記マスタシリンダから遮断し、前記動力液圧源の液圧に基づいてその少なくとも一部のホイールシリンダの液圧を前記ブレーキ操作部材の操作に応じた大きさに制御する第二状態とに制御する電子制御装置と、
前記ブレーキ操作部材が操作されたことを検出するブレーキスイッチがオン状態となることに基づいて、前記電子制御装置を起動させるブレーキ操作対応起動部と、
そのブレーキ操作対応起動部による電子制御装置起動の原因となった前記ブレーキ操作部材の操作に伴って前記マスタシリンダから前記少なくとも一部のホイールシリンダの少なくとも1つへのブレーキ液の流出を許容する状態に、前記切換装置を制御する流出許容部と
を含む電子制御液圧ブレーキシステム。
電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、電子制御装置の故障時にはホイールシリンダがマスタシリンダの液圧によって作動可能とされることが多い。つまり、通常は、マスタシリンダと複数のホイールシリンダの少なくとも一部のものとが連通状態に保たれることが多いのである。この場合には、ブレーキ操作対応起動部により電子制御装置が起動された場合には、少なくともそのブレーキ操作の前期においては電子制御装置による切換装置の制御が禁止されるようにすれば、目的を達し得る。この場合には、流出許容部を制御禁止部と称することができる。
また、電子制御液圧ブレーキシステムには、イグニッションスイッチ等駆動源起動装置のオン操作に応じて電子制御装置を起動させる起動部が設けられるのが普通であり、その第一起動部あるいは主起動部との対比において、ブレーキ操作対応起動部を第二あるいは副起動部と称することも可能である。しかし、主起動部の存在は不可欠ではない。例えば、電子制御装置は、イグニッションスイッチの状態とは無関係にブレーキ操作対応起動部により起動され、一旦起動されてもブレーキ操作が行われることなく一定時間が経過した場合には自動的に作動を停止させられるようにすることも可能なのである。
なお、本電子制御液圧ブレーキシステムはストロークシミュレータ装置を備えないか、備えている場合は不機能状態に保たれるものとする。
(2)前記流出許容部が、前記ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達するまでは前記電子制御装置が前記切換装置に前記少なくとも1つのホイールシリンダを前記マスタシリンダから遮断させることを禁止し、第一設定操作量を超えれば遮断させることを許容する遮断禁止部を含む(1)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
ブレーキ操作部材の操作ストロークを操作量と考えることも、操作力を操作量と考えることも可能である。いずれにしても、操作量が第一設定操作量に達するまで、少なくとも1つのホイールシリンダのマスタシリンダからの遮断が禁止されれば、マスタシリンダから複数のホイールシリンダの少なくとも1つへのブレーキ液の流出が許容され、ブレーキ操作部材の適切なストロークの操作が可能となる。
操作量として操作ストロークを採用すれば、ブレーキ操作対応起動部による電子制御装置の起動時におけるブレーキ操作部材の操作ストロークの確保を特に確実に行うことが可能となる。
ホイールシリンダのマスタシリンダからの遮断が許容されれば、マスタシリンダからのブレーキ液の流出が制限され、ブレーキ操作部材の操作ストロークが制限されるが、ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達しており、その後、さらにブレーキ操作部材が操作されるにしても、その量は少ないことが多く、操作ストロークが制限されても運転者が違和感を抱くことは少ない。
ホイールシリンダのマスタシリンダからの遮断が許容された後、次項におけるように、ホイールシリンダの液圧が動力液圧源の液圧に基づいて高められるようにすることが望ましいが、不可欠ではない。電子制御装置がブレーキ操作部材の操作に応じて起動される場合、車両は停止していて、ブレーキ操作部材の操作により生じさせられる車両全体の制動力が小さくて済む場合が多く、マスタシリンダから遮断されたホイールシリンダの液圧がそれ以後増大しなくてもよいのが普通であるからである。
(3)前記流出許容部が、前記ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達するまでは、前記電子制御装置が、前記切換装置を、前記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧を前記動力液圧源の液圧に基づいて制御する状態とすることを禁止し、第一設定操作量を超えれば許容する液圧制御禁止部を含む(2)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
上記液圧制御禁止部により許容される上記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧の制御は、前記第二状態における制御と同じ制御であってもよいが、異なった制御であってもよい。後者の場合には、例えば、少なくとも1つのホイールシリンダの液圧がブレーキ操作部材の操作量に対応する大きさとされる点では第二状態における制御と同じであるが、操作量とホイールシリンダの液圧との関係が異なる制御とすることができる。
上記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧が動力液圧源の液圧に基づいて制御されるようにすれば、ストロークシミュレータとして機能するホイールシリンダの液圧を、その機能を終えた後さらに高めることが可能となり、必要に応じて、マスタシリンダの液圧より高くすることも可能となって、車両全体としての制動力を大きくすることが可能となる。
(4)前記液圧制御禁止部により前記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧の制御が許容された後、前記ブレーキ操作部材の操作量が第二設定操作量まで減少させられた際、前記電子制御装置が、前記切換装置に、前記少なくとも1つのホイールシリンダを前記マスタシリンダから遮断させること、および、その少なくとも1つのホイールシリンダの液圧を前記動力液圧源の液圧に基づいて制御させることを再び禁止する再禁止部と、
その再禁止部による再禁止の前に前記少なくとも1つのホールシリンダの実際の液圧を前記マスタシリンダの実際の液圧に漸近させる漸近制御部と
を含む(3)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
流出許容部が液圧制御禁止部を含む場合に、ブレーキ解除操作時に運転者が違和感を抱く場合がある。その理由は以下のように推測される。ブレーキ解除操作が迅速に行われる場合には、それに伴ってマスタシリンダ圧は迅速に低下するが、ホイールシリンダ圧には制御遅れに起因する低下遅れが生じ、ホイールシリンダとマスタシリンダとが連通させられる際に、両者の間に液圧差が存在し、この液圧差の影響がブレーキ操作部材に伝達されて運転者に違和感を抱かせると推測されるのである。それに対し、漸近制御部を設ければ、再禁止部による再禁止の前に、すなわち、マスタシリンダとホイールシリンダとが連通させられる前に、ホイールシリンダの実際の液圧がマスタシリンダの実際の液圧に漸近させられるため、再禁止時に運転者に違和感を抱かせることを防止し、あるいは違和感を軽減することができる。
漸近制御部は、ブレーキ操作部材の操作量が第二設定操作量まで減少させられる間は常にホイールシリンダの実際の液圧をマスタシリンダの実際の液圧に漸近させる態様とすることも、第二設定操作量の近傍においてのみ漸近させる態様とすることもできる。
ここにおいて「マスタシリンダの実際の液圧」には、ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達して少なくとも1つのホイールシリンダがマスタシリンダから遮断された際のマスタシリンダ圧と、現時点でのマスタシリンダ圧とが含まれる。
(5)前記切換装置が、
前記マスタシリンダと前記複数のホイールシリンダの少なくとも一部のものとの間に設けられ、その少なくとも一部のホイールシリンダとマスタシリンダとの連通を遮断する1つ以上のマスタシリンダ遮断弁と、
その1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の少なくとも1つが開かれた状態では前記マスタシリンダから前記複数のホイールシリンダ以外へのブレーキ液の流出を阻止する不機能状態となり、前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁が閉じられた状態では許容するとともに、前記ブレーキ操作部材に、そのブレーキ操作部材の操作ストロークの増大に伴って増大する反力を作用させる機能状態となるストロークシミュレータ装置と
を含み、かつ、前記流出許容部が、前記ストロークシミュレータ装置が前記マスタシリンダからのブレーキ液の流出を阻止する状態で、前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の少なくとも1つが遮断状態となることを禁止する遮断禁止部を含む(1)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
ストロークシミュレータ装置は、マスタシリンダの加圧室から排出されるブレーキ液を収容しつつマスタシリンダの液圧を増加させるストロークシミュレータと、そのストロークシミュレータとマスタシリンダとの間に設けられて両者の連通,遮断を制御するシミュレータ制御弁とを含むものとされることが多いが、不可欠ではない。例えば、マスタシリンダの一部として構成されたストロークシミュレータ部と、それのシミュレータ室とリザーバとの連通,遮断を制御するシミュレータ制御弁とを含むものとしてもよいのである。ストロークシミュレータ部は、例えば前記特許文献2に記載されているように、マスタシリンダのハウジング内に加圧室とシミュレータピストンにより仕切られたシミュレータ室を形成したものとすることができる。シミュレータ室のブレーキ液の流出が許容されれば、シミュレータピストンが移動可能であり、加圧室自体からはブレーキ液が流出しなくても、加圧ピストンが作動可能であってブレーキ操作部材に操作ストロークを発生させることができるのである。この場合には、シミュレータ室からのブレーキ液の流出もマスタシリンダからの流出とみなすこととする。
いずれにしても、ストロークシミュレータ装置は、マスタシリンダと複数のホイールシリンダの少なくとも1つとの連通がマスタシリンダ遮断弁により遮断されない状態では不機能状態とされる一方、マスタシリンダ遮断弁が遮断状態とされ、ホイールシリンダの液圧が動力液圧源の液圧に基づいて制御される状態では機能状態とされる。
この形式のシステムにおいては、流出許容部を、ストロークシミュレータ装置の不機能状態で、マスタシリンダ遮断弁が閉じることを禁止する遮断禁止部を含むものとすれば、マスタシリンダから複数のホイールシリンダの少なくとも1つへの流出を許容することができる。
(6)前記切換装置が、前記複数のホイールシリンダの各々とリザーバおよび前記動力液圧源との間にそれぞれ設けられ、少なくとも、動力液圧源から各ホイールシリンダへのブレーキ液の流入を許容する状態と、各ホイールシリンダからリザーバへのブレーキ液の流出を許容する状態とに切り換え可能な複数の液圧制御弁装置を含み、前記流出許容部が、前記遮断禁止部が前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の少なくとも1つが閉じることを禁止する状態で前記液圧制御弁装置による前記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧の制御を禁止する液圧制御禁止部を含む(5)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
前記複数のホイールシリンダの各々に対する液圧制御弁装置は、例えば、1つの方向切換弁により構成したり、2つの開閉弁の組み合わせで構成したりすることができる。いずれにしても、マスタシリンダ遮断弁が遮断禁止部により遮断を禁止され、マスタシリンダから上記少なくとも1つのホイールシリンダへのブレーキ液の流出が許容された状態では、液圧制御弁装置も液圧制御禁止部により作動を禁止され、動力液圧源のブレーキ液が同じホイールシリンダへ流入しないようにされることが望ましい。
なお、液圧制御弁装置は、上記2つの状態の他に、例えばホイールシリンダへのブレーキ液の流入もホイールシリンダからのブレーキ液の流出も許容しない状態とすることができるものであることが望ましい。
(7)前記流出許容部が、前記マスタシリンダから、前記複数の車輪のうち、左車輪の回転を抑制するブレーキを作動させるホイールシリンダと、右車輪の回転を抑制するブレーキを作動させるホイールシリンダとのいずれか一方へのブレーキ液の流出を許容するものである(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
他方のホイールシリンダについては、ブレーキ操作部材の操作開始当初から電子制御装置により液圧が制御されるようにすることができ、左右の車輪について、マスタシリンダからのホイールシリンダへのブレーキ液の流出を許容する場合に比較して、大きい制動力を得ることができる。
(8)前記流出許容部が、前記マスタシリンダから、前記複数の車輪のうち、前輪の回転を抑制するブレーキを作動させるホイールシリンダへのブレーキ液の流出を許容するものである(1)項ないし(7)項のいずれかに記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
本項が(7)項に従属する態様では、左前輪の回転を抑制するブレーキを作動させるホイールシリンダと、右前輪の回転を抑制するブレーキを作動させるホイールシリンダとのいずれか一方についてマスタシリンダからのブレーキ液の流出が許容される。
(7)項および(8)項の各特徴は、(9)項ないし(20)項のいずれかに記載の電子制御液圧ブレーキシステムにも採用することが可能である。
(9)ブレーキ操作部材の操作に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、
そのマスタシリンダに接続され、複数の車輪の回転をそれぞれ抑制するブレーキを作動させる複数のホイールシリンダと、
動力により液圧を発生させる動力液圧源と、
ブレーキ液を貯蔵するリザーバと、
前記マスタシリンダと前記複数のホイールシリンダの少なくとも一部のものとの間に設けられ、その少なくとも一部のホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させる連通状態と、遮断する遮断状態とに切り換え可能な1つ以上のマスタシリンダ遮断弁と、
その1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の少なくとも1つの連通状態では前記マスタシリンダから前記複数のホイールシリンダ以外へのブレーキ液の流出を阻止する不機能状態となり、前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁のすべてが閉じられた状態では前記流出を許容するとともに、前記ブレーキ操作部材に、そのブレーキ操作部材の操作ストロークの増大に伴って増大する反力を作用させる機能状態となるストロークシミュレータ装置と、
前記複数のホイールシリンダの各々と、前記動力液圧源および前記リザーバとの間にそれぞれ設けられ、少なくとも、動力液圧源から各ホイールシリンダへのブレーキ液の流入を許容する状態と、各ホイールシリンダからリザーバへのブレーキ液の流出を許容する状態とにそれぞれ切り換え可能な複数の液圧制御弁装置と、
前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁,前記ストロークシミュレータ装置および前記複数の液圧制御弁装置に接続され、少なくとも、前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の少なくとも1つを前記連通状態とするとともに前記ストロークシミュレータ装置を前記不機能状態とする第一状態と、前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁のすべてを前記遮断状態とするとともに前記ストロークシミュレータ装置を前記機能状態とし、かつ、前記複数の液圧制御弁装置を制御して前記複数のホイールシリンダの液圧を前記ブレーキ操作部材の操作量に応じた大きさに制御する第二状態とをとり得る電子制御装置と、
前記ブレーキ操作部材が操作されたことを検出するブレーキスイッチがオン状態となることに基づいて、前記電子制御装置を起動させるブレーキ操作対応起動部と、
そのブレーキ操作対応起動部による電子制御装置起動の原因となった前記ブレーキ操作部材の操作の間は、前記ストロークシミュレータ装置を前記不機能状態に保つ不機能状態保持部と、
前記ブレーキ操作対応起動部による電子制御装置起動の原因となった前記ブレーキ操作部材の操作の少なくとも前期に、前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の少なくとも1つの前記遮断状態への切換えと、前記複数の液圧制御弁装置のうちその1つ以上のマスタシリンダ遮断弁に対応するものの制御とを禁止することにより、前記マスタシリンダから前記少なくとも一部のホイールシリンダの少なくとも1つへのブレーキ液の流出を許容する流出許容部と
を含む電子制御液圧ブレーキシステム。
流出許容部と不機能状態保持部とは電子制御装置に設けられてもよく、少なくとも一方が電子制御装置とは別個に設けられてもよい。例えば、電子制御装置と切換装置とを接続する接続線の途中に設けられ、前者から後者への駆動電流の供給を制御する回路が後者の一例である。
(10)前記流出許容部が、前記ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達するまでは前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の前記遮断状態への切換えと、前記複数の液圧制御弁装置のうちその1つ以上のマスタシリンダ遮断弁に対応するものの制御とを禁止する液圧制御禁止部を含む(9)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
ブレーキ操作部材の操作ストロークを操作量と考えることも、操作力を操作量と考えることも可能である。いずれにしても、操作量が設定操作量に達するまで、1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の遮断状態への切換えとその1つ以上のマスタシリンダ遮断弁に対応する液圧制御弁装置の制御とが禁止されれば、マスタシリンダから複数のホイールシリンダの少なくとも1つへのブレーキ液の流出が許容され、ブレーキ操作部材の適切なストロークの操作が可能となる。
マスタシリンダと接続されたホイールシリンダが複数ある場合には、それらの少なくとも1つのものに対応するマスタシリンダ遮断弁の遮断状態への切換えと液圧制御装置の制御とが禁止されれば、その少なくとも1つのホイールシリンダにストロークシミュレータ装置の機能を果たさせることができ、ブレーキ操作部材を操作可能にできる。
複数のホイールシリンダのうち一部のものはマスタシリンダと接続され、他のものはマスタシリンダと接続されないようにすることが可能であり、その場合には、少なくとも上記他のものの液圧は、ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達しない状態でも液圧制御弁装置により制御されるようにすることができ、また、それが望ましい。
(11)前記電子制御装置が、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記第一設定操作量を超えた場合に、前記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧を少なくとも前記ブレーキ操作部材の操作量に対応する大きさに制御する操作量対応制御部を含む(10)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
操作量対応制御部は、少なくとも1つのマスタシリンダ遮断弁を遮断状態に切り換えるとともに液圧制御装置を制御して、上記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧をブレーキ操作部材の操作量に対応する大きさに制御する。
上記少なくとも1つのホイールシリンダについては、操作量が第一設定操作量に達した後も液圧制御装置による液圧制御が行われないようにすることも可能であるが、本項のシステムにおいては、操作量対応制御部により液圧制御が行われる。動力液圧源の液圧に基づく液圧制御が行われなくても、前記少なくとも1つのホイールシリンダはマスタシリンダの液圧により作動させられるが、動力液圧源の液圧に基づく液圧制御が行われれば、一層大きな液圧をホイールシリンダに作用させることが可能となる。
(12)前記電子制御装置が、
前記操作量対応制御部により前記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧が制御され、前記ブレーキ操作部材の操作量が第二設定操作量まで減少させられた際、当該電子制御液圧ブレーキシステムを、前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の前記遮断状態への切換えとそのマスタシリンダ遮断弁に対応する前記液圧制御弁装置の制御とが禁止された禁止状態に復帰させる禁止状態復帰部と、
その禁止状態復帰部による禁止状態への復帰の前に前記少なくとも1つのホールシリンダの実際の液圧を前記マスタシリンダの液圧に漸近させる漸近制御部と
を含む(11)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
電子制御液圧ブレーキシステムが禁止状態復帰部により禁止状態に復帰させられると、上記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁が連通状態となる。その際、そのマスタシリンダ遮断弁のマスタシリンダ側とホイールシリンダ側とに液圧差が存在すると、その液圧差解消時の液圧変化の影響がブレーキ操作部材に伝達されて、運転者に違和感を抱かせることがあるが、漸近制御部を設ければ、上記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁が連通状態にされる前に、液圧差が減少させられ、上記違和感がなくなり、あるいは小さくなる効果が得られる。
(13)前記第一設定操作量が前記第二設定操作量であって、かつ、
前記漸近制御部が、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記第一設定操作量に達した際の前記マスタシリンダの液圧である遮断時マスタシリンダ圧を記憶する遮断時マスタシリンダ圧記憶部を含み、前記操作量が一旦前記第一設定操作量を超えた後、その第一設定操作量まで減少させられる間に、前記少なくとも1つのホイールシリンダの実際の液圧を前記遮断時マスタシリンダ圧に漸近させるものである(12)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
「一旦前記第一設定操作量を超えた後、その第一設定操作量まで減少させられる間に」とは、「操作量が減少させられ始めてから第一設定操作量になるまでの間ずっと」でもよく、「その期間の少なくとも一時期に」でもよい。次項は後者の一例である。
操作量が第一設定操作量まで減少させられたとき、本項の漸近制御部による制御によりホイールシリンダ圧が遮断時マスタシリンダ圧になっていれば、マスタシリンダ遮断弁が連通状態になる際のホイールシリンダとマスタシリンダとの液圧差が殆どないこととなり、連通時におけるブレーキ操作部材に対する悪影響や、異音の発生等が良好に回避される。
本項および(14)項の各特徴は、(1)項ないし(8)項にそれぞれ記載の電子制御液圧ブレーキシステムにも適用することができる。
(14)前記漸近制御部が、前記操作量が一旦前記第二設定操作量より大きい第三設定操作量を超えた後、第三設定操作量まで減少させられてから前記第二設定操作量まで減少させられる間に、前記少なくとも1つのホイールシリンダの実際の液圧を前記遮断時マスタシリンダ圧に漸近させるものである(13)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
(15)前記漸近制御部が、前記操作量が一旦前記第一および第二設定操作量より大きい第三設定操作量を超えた後、第三設定操作量まで減少させられてから前記第二設定操作量まで減少させられる間に、前記少なくとも1つのホイールシリンダの実際の液圧を前記マスタシリンダの実際の液圧に漸近させるものである(12)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
本項の漸近制御部は、操作量が一旦第一および第二設定操作量より大きい第三設定操作量を超えた後減少させられる場合は、第三設定操作量まで減少させられてから第二設定操作量まで減少させられる間に、上記少なくとも1つのホールシリンダの実際の液圧をマスタシリンダの実際の液圧に漸近させる。操作量が第三設定操作量を超えないで減少させられる場合は漸近制御部が作動しないようにすることも、作動するようにすることも可能である。
第一設定操作量と第二設定操作量とは同じ大きさとすることも、互いに異なる大きさとすることも可能である。
(16)前記漸近制御部が、前記ブレーキ操作部材の操作量が前記第三設定操作量まで減少させられた際の前記少なくとも1つのホイールシリンダの実際の液圧とマスタシリンダの実際の液圧との差が大きいほど、前記操作量対応制御部の制御ゲインを大きい値に変更する制御ゲイン変更部を含む(15)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
液圧制御装置の制御ゲイン自体を大きくすれば前記ホイールシリンダ圧の制御遅れに起因する問題は解消できるが、ホイールシリンダ圧の制御精度が低下する場合があるという別の問題が生じる。それに対し、制御ゲイン変更部は、ブレーキ操作部材の操作量が第三設定操作量まで減少させられた際の上記少なくとも1つのホイールシリンダの実際の液圧マスタシリンダの実際の液圧との差が大きいほど、操作量対応制御部の制御ゲインを大きい値に変更するものであるため、ブレーキ解除操作速度が大きく、ホイールシリンダ圧の制御遅れが大きいほど制御ゲインが大きくされることとなり、ホイールシリンダ圧の制御精度の低下を良好に回避しつつブレーキ解除操作時の違和感を軽減あるいは消滅させることができる。
(17)前記漸近制御部が、前記操作量が前記第三設定操作量から前記第二設定操作量まで減少させられるにつれて、前記操作量対応制御部により決定される目標液圧を前記マスタシリンダの実際の液圧に漸近するように修正する目標液圧修正部を含む(15)項または(16)項に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
電子制御装置は、通常は上記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧を操作量対応制御部により決定される目標液圧に制御し、第三設定操作量から第二設定操作量までの間では目標液圧修正部により修正された目標液圧に制御する。
(18)前記操作量対応制御部が、前記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧を前記ブレーキ操作部材の操作量としての操作ストロークと予め定められている制御規則とに基づいて制御する操作ストローク対応制御部を含む(11)項ないし(17)項のいずれかに記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
操作ストロークは、ブレーキ操作部材の操作ストローク自体が検出されてもよく、ブレーキ操作部材の操作力をマスタシリンダに入力する入力ロッドのストローク等、ブレーキ操作部材の操作ストロークに比例する量の検出により取得されてもよい。上記予め定められた規則としては、上記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧が、制御開始時におけるマスタシリンダ圧から、操作ストロークに対して予め定められている勾配で増大させられるものが好適であるが、それに限定されるものではない。
なお、操作量対応制御部による上記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧の制御時にはそのホイールシリンダに対応するマスタシリンダ遮断弁が遮断状態にされ、ストロークシミュレータ装置が不機能状態にされるため、マスタシリンダにおける加圧ピストンのストロークは構成部材の弾性変形に基づくものとなり、ブレーキ操作部材の操作ストロークも小さく制限される。この問題を軽減するために、上記ストロークシミュレータ装置とは別に、ブレーキ操作部材とマスタシリンダの加圧ピストンとの間に、機械的なストロークシミュレータを設けることも可能である。
(19)前記操作量対応制御部が、前記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧を前記ブレーキ操作部材の操作量としての操作力と予め定められている制御規則とに基づいて制御する操作力対応制御部を含む(11)項ないし(18)項のいずれかに記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
本項が(18)項に従属する場合には、操作ストローク対応制御部と操作力対応制御部との両方が設けられることになる。例えば、状況に応じて、いずれか一方が選択的に作動させられ、あるいは一方が他方に対するフェイルセーフ部とされる場合に有効な態様である。
操作力は、ブレーキ操作部材に加えられる操作力自体が検出されてもよく、マスタシリンダの液圧等、操作力に比例する量の検出により取得されてもよい。
操作量対応制御部による上記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧の制御時には、前述のように、ブレーキ操作部材の操作ストロークが比較的小さく制限される。前述の機械的ストロークシミュレータを設ければ制御開始許容後の操作ストロークをある程度大きくすることも可能であるが限度がある。したがって、操作ストローク対応制御部においては、操作ストロークの微小な変化に対応して上記少なくとも1つのホイールシリンダ圧の制御を行うことが必要となり、制御精度を高くすることが比較的困難なのであるが、操作力対応制御部を採用すれば、容易に上記少なくとも1つのホイールシリンダ圧の制御精度を高めることができる。
(20)前記電子制御装置を、予め定められた条件が満たされた場合に自動で停止させる自動停止部を含む(1)項ないし(19)項のいずれかに記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
自動停止部は、イグニッションスイッチがオフの状態で予め定められた条件が満たされた場合に電子制御装置を自動停止させるものとすることも、イグニッションスイッチのオン,オフの状態いかんを問わず、予め定められた条件が満たされた場合に電子制御装置を自動停止させるものとすることもできる。また、上記「予め定められた条件」は、近い将来に液圧ブレーキを作用状態とすることが必要になる可能性が低いことを示す条件、あるいは、少なくとも大きな制動力を発生させることが必要になる可能性が低いことを示す条件であり、例えば、(a)イグニッションスイッチがオフにされてから設定時間以上経過したこと、(b)ブレーキ作用操作が行われない状態が設定時間以上継続したこと、(c)ブレーキの不作用状態が設定時間以上継続したこと(液圧ブレーキが自動で作用状態とされることがあるシステムにおいて(b)との間に違いが生じる)、(d)電子制御液圧ブレーキシステムが搭載された車両の停止状態が設定時間以上継続したこと、(e)パーキングブレーキが作用状態にあること、(f)トランスミッションのシフトレバーがニュートラルポジションあるいはパーキングポジションにあること等の少なくとも1つ、あるいはそれらの2つ以上の組合わせとすることができる。
以下、請求可能発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
図1に、請求可能発明の一実施例である車両の電子制御液圧ブレーキシステムが概念的に図示されている。本電子制御液圧ブレーキシステムは、ブレーキ操作部材たるブレーキペダル10,マスタシリンダ12,ホイールシリンダ14,16,18,20,ブレーキアクチュエータ22,リザーバ24,ストロークシミュレータ装置26および電子制御装置28(図2参照)を備えている。
マスタシリンダ12は、本実施例では2つの加圧室30,32を備えている。これら加圧室30,32はそれぞれ、マスタシリンダ通路34,36によって左前輪38,右前輪40の回転をそれぞれ抑制するブレーキを作動させるホイールシリンダ14,16に接続され、ブレーキペダル10の踏込みに基づいて加圧室30,32にそれぞれ発生させられた液圧は、ホイールシリンダ14,16に供給される。以後、ホイールシリンダ14,16を必要に応じてフロントシリンダ14,16と称する。また、マスタシリンダ12と共に前記リザーバ24が設けられ、加圧室30,32との連通を許容,遮断される。リザーバ24には、ブレーキ液が大気圧で蓄えられる。
マスタシリンダ12の一方の加圧室30には、前記ストロークシミュレータ装置26が接続されている。本実施例においてストロークシミュレータ装置26は、ストロークシミュレータ42およびシミュレータ制御弁44を含む。ストロークシミュレータ42は、加圧室30から排出されるブレーキ液を収容しつつマスタシリンダ12の液圧を増加させる構成とされている。シミュレータ制御弁44は、本実施例では、常閉の電磁開閉弁により構成されており、ストロークシミュレータ42と加圧室30との間に設けられ、常には閉じられて両者の連通を遮断しているが、ソレノイドへの電流の供給により開かれて両者を連通させる。
ブレーキアクチュエータ22を説明する。
ブレーキアクチュエータ22は、前記ホイールシリンダ14,16および左後輪46および右後輪48の回転をそれぞれ抑制するブレーキを作動させるホイールシリンダ18,20の各液圧を制御する。以後、必要に応じてホイールシリンダ18,20をリヤシリンダ18,20と称する。ブレーキアクチュエータ22は、図1に示すように、2つのマスタシリンダ遮断弁56,58,動力液圧源60,4つの液圧制御弁装置62,2つのマスタシリンダ圧センサ64および4つのホイールシリンダ圧センサ66を備えている。これらブレーキアクチュエータ22の構成要素は図示を省略するボックス状の本体部材に互いに一体的に組み付けられている。
動力液圧源60は、リザーバ通路68を経てリザーバ24からブレーキ液を汲み上げるポンプ70と、ポンプ70を駆動するポンプモータ72と、ポンプ70から吐出されたブレーキ液を加圧下に蓄えるアキュムレータ74と、ポンプ70の吐出圧を設定値以下に規制するリリーフ弁76とを含み、動力により液圧を発生させる。
動力液圧源60には、4つの液圧制御弁装置62の各々を介して前記4つのホイールシリンダ14,16,18,20が接続されている。4つの液圧制御弁装置62はそれぞれ、ポンプ70あるいはアキュムレータ74から各ホイールシリンダ14,16,18,20へのブレーキ液の流入を制御するリニア増圧弁80,82,84,86と、ホイールシリンダ14,16,18,20からリザーバ24へのブレーキ液の流出を制御するリニア減圧弁90,92,94,96とを含んでおり、ポンプ70およびアキュムレータ74とリニア増圧弁80〜86とは増圧通路98により接続され、リニア減圧弁90〜96とリザーバ24とは減圧通路100およびリザーバ通路68により接続されている。4つのホイールシリンダ14,16,18,20のそれぞれについて、リニア増圧弁とリニア減圧弁とを1つずつ含む液圧制御弁装置62が設けられ、それぞれ液圧が互いに独立して制御されるのであり、4組のリニア増圧弁およびリニア減圧弁はそれぞれ、ホイールシリンダ通路102,104,106,108によってホイールシリンダ14,16,18,20に接続されている。4つの液圧制御装置62はそれぞれ、ホイールシリンダ14,16,18,20の各々と、動力液圧源60およびリザーバ24との間に設けられているのである。
ポンプ70とリニア増圧弁80〜86との間に液圧源液圧センサ110が設けられて動力液圧源60の液圧が検出され、ホイールシリンダ14,16,18,20の各液圧がホイールシリンダ圧センサ66により検出される。また、マスタシリンダ12の2つの加圧室30,32とフロントシリンダ14,16との間にそれぞれ前記マスタシリンダ遮断弁56,58が設けられ、マスタシリンダ遮断弁56,58と加圧室30,32との間にそれぞれ前記マスタシリンダ圧センサ64が設けられ、加圧室30,32にそれぞれ発生させられる液圧が検出される。マスタシリンダ遮断弁56,58は、本実施例では常開の電磁開閉弁とされており、常には開かれて加圧室30,32とフロントシリンダ14,16とを連通させる連通状態に切り換えられているが、ソレノイドへの電流供給により閉じられて加圧室30,32とフロントシリンダ14,16との連通を遮断する遮断状態に切り換えられる。前記ストロークシミュレータ装置26は、通常制動時には、マスタシリンダ遮断弁56,58が開かれ、連通状態に切り換えられた状態ではシミュレータ制御弁44が閉じられ、マスタシリンダ12からフロントシリンダ14,16以外へのブレーキ液の流出を阻止する不機能状態となり、マスタシリンダ遮断弁56,58が閉じられ、遮断状態に切り換えられた状態では、シミュレータ制御弁44が開かれ、マスタシリンダ12からフロントシリンダ14,16以外へのブレーキ液の流出を許容し、マスタシリンダ12の加圧室30から排出されるブレーキ液をストロークシミュレータ42に収容しつつ、ブレーキペダル10に、その踏込力の増大に伴って増大する反力を作用させる機能状態となる。
リニア弁は、その上流側と下流側との液圧差と供給電流との間に予め定められた一定の関係があり、供給電流の増減に応じて開弁圧が変えられる電磁制御弁であり、電磁開閉弁の一種である。したがって、リニア増圧弁80〜86およびリニア減圧弁90〜96は、供給電流の制御により、ホイールシリンダの液圧であるホイールシリンダ圧を任意の高さに制御可能であり、ホイールシリンダ圧を連続的に変化させることができる。本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、リニア増圧弁80〜86はいずれも常閉弁とされ、フロントシリンダ14,16について設けられたリニア減圧弁90,92はそれぞれ常閉弁とされ、リヤシリンダ50,52について設けられたリニア減圧弁94,96はそれぞれ常開弁とされている。そのため、リニア増圧弁80〜86は、ソレノイドに電流が供給されない状態では閉じられ、電流が供給されれば、開かれて動力液圧源60からホイールシリンダ14,16,18,20へのブレーキ液の流入を許容し、ホイールシリンダ圧を増大させる。また、リニア減圧弁90,92は、ソレノイドに電流が供給されない状態では閉じられてホイールシリンダ14,16とリザーバ24とを遮断し、電流が供給されれば開かれて、ホイールシリンダ14,16からリザーバ24へのブレーキ液の流出を許容し、ホイールシリンダ圧を減少させる。リニア減圧弁94,96は、ソレノイドに電流が供給されない状態では開かれてホイールシリンダ18,20からリザーバ24へのブレーキ液の流出を許容し、ホイールシリンダ圧を減少させ、ソレノイドに電流が供給されれば閉じられて、ホイールシリンダ18,20からのブレーキ液の流出を阻止する。リニア減圧弁94,96は供給電流の減少によっても開かれる。4つの液圧制御弁装置62はそれぞれ、リニア増圧弁の制御とリニア減圧弁の制御との組み合わせにより、動力液圧源60から各ホイールシリンダへのブレーキ液の流入を許容する状態と、各ホイールシリンダからリザーバ24へのブレーキ液の流出を許容する状態と、動力液圧源60からホイールシリンダへのブレーキ液の流入もホイールシリンダからリザーバ24へのブレーキ液の流出も許容しない状態とに切り換え可能である。
本実施例では、切換装置がストロークシミュレータ装置26,マスタシリンダ遮断弁56,58および液圧制御弁装置62を含み、マスタシリンダ遮断弁56,58が連通状態とされるとともにストロークシミュレータ装置26が不機能状態とされる状態が第一状態であり、マスタシリンダ遮断弁56,58が遮断状態とされるとともにストロークシミュレータ装置26が機能状態とされ、かつ、複数の液圧制御弁装置62が制御されてホイールシリンダ14,16,18,20の液圧をブレーキペダル10の踏込量に応じた大きさに制御される状態が第二状態である。
本電子制御液圧ブレーキシステムは、前記電子制御装置28の指令に基づいて制御される。電子制御装置28は、図2に示すように、コンピュータ152および入出力部154を含む制御部と、複数の駆動回路156とを含む。コンピュータ152は、CPU160,ROM162,RAM164およびそれらを接続するバスを含み、入出力部154には、前記マスタシリンダ圧センサ64等の他、ブレーキスイッチ170,ストロークセンサ172等、各種センサ等が入力側に接続され、前記リニア増圧弁80〜86およびリニア減圧弁90〜96等のソレノイド等が出力側に接続されている。
ブレーキスイッチ170はブレーキ操作検出装置の一種であり、ブレーキペダル10が原位置から設定踏込ストローク以上、踏み込まれたことを検出し、ブレーキペダル10が原位置から設定踏込ストローク以上踏み込まれてオン状態となればオン信号を出力し、設定踏込ストローク以上、踏み込まれていないオフ状態ではオフ信号を出力する。原位置は、例えば、図示を省略するストッパにより規定される。ストロークセンサ172は、ブレーキペダル10の踏込量である踏込ストロークを検出する。踏込量は操作量の一種であり、踏込ストロークは操作ストロークの一種であって、ストロークセンサ172は、ブレーキ操作部材操作量検出装置の一種であるブレーキ操作部材操作ストローク検出装置の一態様であり、ペダル踏込量検出装置としてのペダル踏込ストローク検出装置を構成する。また、本電子制御液圧ブレーキシステムでは、マスタシリンダ12の液圧の検出に基づいて、ブレーキペダル10の踏込力が取得される。踏込力は、操作量の一種である操作力の一態様であり、マスタシリンダ圧センサ64および電子制御装置28のマスタシリンダ圧に基づいて踏込力を取得する部分がブレーキ操作部材操作力検出装置の一種であるペダル踏込量検出装置としてのペダル踏込力検出装置を構成している。マスタシリンダ圧センサ64は2つ設けられており、マスタシリンダ圧は2つ得られるが、例えば、いずれか一方、例えば、大きい方のマスタシリンダ圧に基づいて踏込力を取得してもよく、2つの平均値をマスタシリンダ圧とし、踏込力を取得してもよい。
本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、ブレーキペダル10が踏み込まれてブレーキスイッチ170がON状態になると、ブレーキランプ176が点灯されるとともに、電源回路178,180が駆動され、電源回路178より各センサへ駆動電流が供給され、電源回路180よりコンピュータ152および駆動回路156へ駆動電流が供給される。電源回路180は、イグニッションスイッチ182がオン状態に切り換えられることによっても駆動される。イグニッションスイッチ182がオン操作されなくても、電子制御装置28は、ブレーキペダル10が踏み込まれれば作動可能となるのであり、このようにブレーキペダル10の踏込みにより電子制御装置28が起動させられることをラピッドスタートと称する。電源回路180は、ブレーキスイッチ170およびイグニッションスイッチ182のいずれによって駆動された場合にも、コンピュータ152および駆動回路156への駆動電流の供給は、イグニッションスイッチ182がオフに切り換えられるまで継続される。
また、ROM162には、図示を省略するメインルーチン,電気制動制御ルーチン,アンチロック制御ルーチン,トラクション制御ルーチン,ビークルスタビリティ制御ルーチン,図3,図4および図5にそれぞれフローチャートで示すラピッドスタート判定ルーチン,ホイールシリンダ圧制御ルーチンおよび電子制御装置自動停止判定ルーチン等、種々のプログラムが格納されている。これらルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行される。電子制御装置28は、ホイールシリンダ圧制御ルーチンの実行により、前記第一状態と第二状態とをとる。
本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、イグニッションスイッチ182がオン状態に切り換えられ、電気制動制御等、ブレーキアクチュエータ22の作動によるいずれの制御が行われる際にも、電子制御装置28は、マスタシリンダ圧センサ64等、各種センサの検出信号に基づいて車両状態を取得し、それに基づいて、4つのホイールシリンダ14,16,18,20のそれぞれについて目標液圧を決定し、その目標液圧が得られるようにリニア増圧弁80〜86およびリニア減圧弁90〜96の各ソレノイド等に供給される電流を決定し、供給を制御する。この決定された電流の供給により液圧制御弁装置62が作動させられ、ホイールシリンダ14,16,18,20の各液圧が目標液圧に制御されつつ、ブレーキが作動させられる。リニア増圧弁80〜86およびリニア減圧弁90〜96の作動によるホイールシリンダの液圧の制御時にはマスタシリンダ遮断弁56,58が閉じられる。ブレーキペダル10の踏込みに基づいてホイールシリンダ圧が電気的に制御される場合には更に、後述するラピッドスタート時を除いて、シミュレータ開閉弁40が開かれ、加圧室30からストロークシミュレータ42にブレーキ液が排出され、踏力に応じた操作感が運転者に付与される。
本電子制御液圧ブレーキシステムにおいてラピッドスタートにより電子制御装置28が起動させられた場合、リヤシリンダ18,20についてはそれぞれ、液圧制御弁装置62により液圧が制御されるが、フロントシリンダ14,16については、ブレーキペダル10の踏込ストロークが設定操作ストロークである設定踏込ストローク以上になるまでの間は、液圧制御弁装置62は非作動状態とされ、運転者のブレーキペダル10の踏込操作に基づいて液圧が発生させられる。この間、マスタシリンダ遮断弁56,58は開かれたままとされ、シミュレータ制御弁44は閉じられたままの状態であって不機能状態とされ、フロントシリンダ14,16がマスタシリンダ12に連通させられ、マスタシリンダ12の加圧室30,32の各ブレーキ液のフロントシリンダ14,16への流出が許容される。そのため、運転者によるブレーキペダル10の踏込ストロークは制限されず、適切な踏込ストロークを生じさせることができる。そして、踏込ストロークが設定踏込ストローク以上になれば、フロントシリンダ14,16の液圧が液圧制御弁装置62によりブレーキペダル10の踏込みに応じた大きさに制御される。そのため、マスタシリンダ遮断弁56,58が閉じられ、フロントシリンダ14,16がマスタシリンダ12から遮断され、加圧室30,32からフロントシリンダ14,16へのブレーキ液の流出が禁止されるが、ストロークシミュレータ装置26は、電子制御装置28の起動の原因となったブレーキペダル10の踏込みの間は、不機能状態に保たれ、シミュレータ制御弁44は閉じられ、ストロークシミュレータ装置26は不機能状態のままとされ、液圧制御弁装置62によるフロントシリンダ圧の制御により制動力を確保しつつ、ブレーキペダル10の踏込みにより液圧が発生した状態において加圧室30がストロークシミュレータ42に連通させられて運転者が違和感を感じることが回避される。踏込ストロークが設定踏込ストロークに達するまでが、ブレーキペダル10の踏込み操作の前期であり、本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、操作前期にマスタシリンダ12からフロントシリンダ14,16へのブレーキ液の流出が許容される。
図3ないし図5にそれぞれ示すフローチャートに基づいてホイールシリンダ圧の制御を説明する。
まず、図3に示すラピッドスタート判定ルーチンを説明する。ブレーキペダル10の踏込みにより、あるいはイグニッションスイッチ182がオン操作されることにより、電源回路180から電流が供給されて電子制御装置28が起動されれば、ラピッドスタート判定ルーチンが実行され、ステップ1(以後、S1と略記する)においてフラグFがセットされているか否かが判定される。フラグFは、ラピッドスタートが行われたか否かの判定が行われたことを記憶し、例えば、初期設定においてリセットされており、S1の判定結果はNOになってS2が実行され、フラグFがセットされる。次いでS3が実行され、イグニッションスイッチ182がオン状態に切り換えられているか否かが判定される。イグニッションスイッチ182がオフであれば、S3の判定結果はNOになってS4が実行され、ラピッドスタートにより電子制御装置28が起動されたことが記憶される。例えば、RAM164に設けられたラピッドスタート実行フラグがセットされるのである。それに対し、S3が実行されるとき、イグニッションスイッチ182がオン状態に切り換えられていれば、S3の判定結果はYESになり、S4がスキップされてルーチンの実行が終了する。そのため、ラピッドスタート実行フラグはセットされず、リセットされたままである。
フラグFがセットされることにより、電子制御装置28が何によって起動させられたかを問わず、次にS1が実行されるとき、その判定結果はYESになり、S2〜S4がスキップされる。ラピッドスタート判定ルーチンは、電子制御装置28が起動されてから停止するまでの間、繰り返し実行されるが、ラピッドスタートが行われたか否かの判定は、電子制御装置28の起動時に1回のみ行われるのである。そのため、例えば、本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、イグニッションスイッチ182がオフ状態に切り換えられた後も、設定時間の間、電子制御装置28には駆動電流が供給され、ブレーキペダル10の踏込みに備えるようにされているが、そのブレーキペダル10の踏込み時にラピッドスタートと判定されることが回避される。電子制御装置28がイグニッションスイッチ182がオン操作されることにより起動され、その後、イグニッションスイッチ182がオフ操作された状態でブレーキペダル10が踏み込まれても、フラグFはセットされており、S3が実行されることはなく、イグニッションスイッチ182がオフ操作された状態でブレーキペダル10が踏み込まれてもラピッドスタートとされることがないのである。
図4に示すホイールシリンダ圧制御ルーチンは、イグニッションスイッチ182がオン操作されることによる電源投入と、ブレーキペダル10が踏み込まれることによる電源投入とのいずれによっても開始され、S11においてはラピッドスタートが行われたか否かが判定される。この判定は、ラピッドスタートが記憶されているか否かにより行われ、電子制御装置28がラピッドスタートではなく、イグニッションスイッチ182がオン操作されることにより起動されたのであれば、S11の判定結果がNOになってS20が実行され、通常の制動制御が行われる。
通常の制動制御は、電子制御装置28が起動され、初期設定が済み、ブレーキペダル10の踏込みに基づいて各種電磁弁等を制御し、液圧を制御し得る状態における制御であり、ブレーキペダル10の踏込量、例えば、踏込力に基づいて4つのホイールシリンダ14,16,18,20についてそれぞれ目標液圧が設定され、その目標液圧が得られるようにリニア増圧弁80〜86およびリニア減圧弁90〜96の各ソレノイドへの供給電流が設定され、4つの液圧制御弁装置62がそれぞれ作動させられる制御である。通常制動制御においてはブレーキペダル10が踏み込まれているか否かが判定され、踏み込まれている場合に目標液圧が設定されて制動制御が行われる。この際、マスタシリンダ遮断弁56,58は閉じられ、シミュレータ制御弁44は開かれてストロークシミュレータ装置26が機能状態とされる。ブレーキペダル10が踏み込まれていない場合には制動制御は行われず、既に制動制御が行われている場合には制御終了処理が行われる。
ラピッドスタートが行われ、ラピッドスタート判定ルーチンにおいてラピッドスタートの実行が記憶されていれば、S11の判定結果がYESになってS12が実行され、リヤシリンダ18,20の液圧制御が行われる。リヤシリンダ18,20はマスタシリンダ12に接続されておらず、その液圧は液圧制御弁装置62のみにより制御されるため、その液圧は、ラピッドスタート時でも、ブレーキペダル10の踏込みにより通常の制動時と同様に制御される。
次いでS13が実行され、ブレーキペダル10の踏込ストロークであるペダルストロークが設定踏込ストロークST0以上であるか否かが判定される。ストロークセンサ172の検出信号に基づいてペダルストロークが取得され、その取得されたペダルストロークである今回のペダルストロークが設定踏込ストロークST0以上であるか否かが判定されるのである。S13ではさらに、今回のS13の実行時に取得されたペダルストロークと、前回のS13の実行時に取得されたペダルストロークとの両方が記憶される。S13において新たにペダルストロークが取得される毎に、現に記憶されている2つのペダルストロークのうち、前回のペダルストロークとして記憶されているペダルストローク(前々回のS13の実行時に取得されたペダルストローク)は消去され、今回のペダルストロークとして記憶されているペダルストローク(前回のS13の実行時に取得されたペダルストローク)が前回のペダルストロークとされ、S13において新たに取得されたペダルストロークが今回のペダルストロークとして記憶されるのである。
ブレーキペダル10の踏込み開始当初は、ペダルストロークは設定踏込ストロークST0より小さく、S13の判定結果はNOになってS14が実行され、マスタシリンダ遮断弁56,58を開状態とする指令が出力される。それにより、マスタシリンダ遮断弁56,58が閉じられていれば開かれ、開かれていれば、開かれたままとされる。ブレーキペダル10の踏込み開始当初は、常開のマスタシリンダ遮断弁56,58は開かれており、開状態のままとされる。S14においてはまた、液圧制御弁装置62による液圧制御の終了処理が行われる。例えば、リニア増圧弁80,82およびリニア減圧弁90,92のソレノイドへの電流供給が断たれ、ノーマル状態に復帰させられるのである。ただし、液圧制御弁装置62により液圧制御が行われていないのであれば、何も行われない。ペダルストロークが設定踏込ストロークより小さい状態では、マスタシリンダ遮断弁56,58を開き、液圧制御弁装置62の制御を行わないことにより、マスタシリンダ遮断弁56,58の遮断状態への切換えと、マスタシリンダ遮断弁56,58に対応するフロントシリンダ14,16について設けられた液圧制御弁装置62の制御とが禁止されることとなる。なお、S13の判定結果がNOになった後、ペダルストロークの前回値が設定踏込ストロークST0以上であるか否かの判定を行い、設定踏込ストロークST0以上である場合にマスタシリンダ遮断弁56,58が開かれるとともに、液圧制御弁装置62による液圧制御の終了処理とが行われ、設定踏込ストロークST0より小さい場合には、単にマスタシリンダ遮断弁56,58が開かれるようにしてもよい。
次いでS15が実行され、ブレーキペダル10の踏込みが解除されたか否かが判定される。この判定は、例えば、ブレーキスイッチ170がオフであるか否かにより行われ、踏込みが解除されていなければ、S15の判定結果がNOになってルーチンの実行は終了する。
ブレーキペダル10が踏み込まれている限り、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0以上になるまでS11ないしS15が繰り返し実行される。ペダルストロークが設定踏込ストロークST0以上になれば、S13の判定結果がYESになってS16が実行され、ペダルストロークの前回値が設定踏込ストロークST0より小さいか否かが判定される。ペダルストロークの前回値は、S13において記憶された2つのペダルストロークのうち、前回のペダルストロークとして記憶されているペダルストロークであり、S16では、ブレーキペダル10の作用操作中、S13の判定結果がYESになった今回のペダルストロークが、初めて設定踏込ストロークST0以上になったペダルストロークであるか否かが判定される。作用操作は、ブレーキペダル10の踏込量を増加させ、ブレーキを作用させる向きの操作である。
ペダルストロークの前回値が設定踏込ストロークより小さいのであれば、S13の判定結果がYESになった今回のペダルストロークが初めて設定踏込ストロークST0以上になったのであり、S16の判定結果がYESになってS17が実行され、マスタシリンダ12の液圧、例えば、加圧室30の液圧がRAM164に記憶される。加圧室30,32の各液圧の平均値をマスタシリンダ圧としてもよく、いずれか一方、例えば、小さい方の液圧をマスタシリンダ圧としてもよい。このマスタシリンダ12の液圧をマスタシリンダ遮断時のマスタシリンダ圧である遮断時マスタシリンダ圧PM0と称する。以下に説明するように、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0に達すれば、マスタシリンダ遮断弁56,58が閉じられ、フロントシリンダ14,16がマスタシリンダ12から遮断されるからである。
ブレーキペダル10の作用操作時には、ペダルストロークが一旦、設定踏込ストロークST0以上になれば、前回のペダルストロークも設定踏込ストロークST0以上になり、S16の判定結果がNOになってS18が実行され、フロントシリンダ14,16の液圧が液圧制御弁装置62によって制御されるようにされる。マスタシリンダ遮断弁56,58が閉じられるとともに、フロントシリンダ14,16について目標液圧が設定され、その目標液圧が得られるように、フロントシリンダ14,16について設けられた液圧制御弁装置62の各リニア増圧弁80,82およびリニア減圧弁90,92の各ソレノイドへの供給電流が設定されるのである。
上記目標液圧は、本実施例では、マスタシリンダ圧および制御開始時のマスタシリンダ圧に基づいて設定される。制御開始時のマスタシリンダ圧は、先にS17において記憶された遮断時マスタシリンダ圧PM0であり、目標液圧は、図6に示すように、遮断時マスタシリンダ圧PM0から、踏込力の増大に対して予め定められている勾配で増大させられるように設定される。この勾配は、本実施例では、通常制動制御における液圧制御弁装置62によるホイールシリンダ圧の制御勾配と同じ勾配とされている。そのため、フロントシリンダ14,16の各液圧は、ブレーキペダル10の踏込開始当初から液圧制御弁装置62により制御されているリヤシリンダ18,20の各液圧よりは低いが、同じ勾配で増大させられ、ブレーキペダル10の踏込みのみにより発生させられた液圧より高く制御され、大きい制動力が得られる。
フロントシリンダ14,16の液圧が液圧制御弁装置62により制御される間、マスタシリンダ遮断弁56,58は作動させられ、閉じられてマスタシリンダ12とホイールシリンダ14,16との連通を遮断するが、シミュレータ制御弁44は作動させられず、閉じられて不機能状態のままとされ、マスタシリンダ12の加圧室30はストロークシミュレータ42に連通させられない。加圧室30からストロークシミュレータ42へのブレーキ液の流出が禁止されるのであり、運転者によるブレーキペダル10の踏込みは、液通路34,36等の構成部材の弾性変形により許容され、ペダルストロークは小さく制限されるが、踏力は、マスタシリンダ12からフロントシリンダ14,16あるいはストロークシミュレータ42へのブレーキ液の流出が許容される場合と同様に発生し、精度良くフロントシリンダ圧の制御が行われる。
このように本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、ラピッドスタート時にはブレーキペダル10が踏み込まれるとき、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0に達するまではマスタシリンダ遮断弁56,58が遮断状態とされず、また、ストロークシミュレータ装置26が不機能状態とされたままであり、マスタシリンダ12からホイールシリンダ14,16へのブレーキ液の流出が許容され、それによりブレーキペダル10の踏込みが許容される。したがって、踏込みの途中でホイールシリンダ14,16がマスタシリンダ12から遮断されるとともに、マスタシリンダ12がストロークシミュレータ42に連通させられて液圧が急変する場合のように、踏込み操作に運転者が違和感を抱くことはない。ペダルストロークが設定踏込ストロークST0に達すれば、マスタシリンダ遮断弁56,58が閉じられ、マスタシリンダ12からフロントシリンダ14,16へのブレーキ液の流出が許容されなくなり、踏込ストロークが小さく制限されるが、そのときには既にブレーキペダル10が設定踏込ストロークST0踏み込まれており、運転者が違和感を抱くことは少ない。
運転者がブレーキペダル10の踏込みを緩め、ブレーキの作動を解除する場合、ペダルストロークが減少する。この間も、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0以上である間は、フロントシリンダ14,16の液圧が液圧制御弁装置62により制御されつつ減少させられる。
そして、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0より小さくなれば、S13の判定結果がNOになってS14が実行され、マスタシリンダ遮断弁56,58が開かれるるとともに、液圧制御弁装置62による制御の終了処理が行われる。それにより、ホイールシリンダ14,16が加圧室30,32に連通させられ、以後は、ペダルストロークの減少に伴ってホイールシリンダ圧が減少させられる。
ペダルストロークが減少させられるとき、マスタシリンダ圧は、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0以下になるまでの間は、作用操作時に弾性変形させられた構成部材等の弾性変形のない状態への復元により作用操作時と同様の勾配で減少させられ、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0より小さくなり、マスタシリンダ遮断弁56,58が開かれるとき、マスタシリンダ圧は遮断時マスタシリンダ圧であり、フロントシリンダ14,16の目標液圧も遮断時マスタシリンダ圧PM0となる。目標液圧は、遮断時マスタシリンダ圧PM0から、マスタシリンダ圧の増減に対して設定勾配で増減するように設定されるからである。その後は、ブレーキペダル10の踏込み解除操作に伴って、フロントシリンダ14,16と加圧室30,32とが連通させられた状態でフロントシリンダ圧およびマスタシリンダ圧が減少させられる。
ブレーキペダル10の踏込みが解除されれば、S15の判定結果がYESになってS19が実行され、ラピッドスタートが行われたことの記憶がRAM164から消去される。そのため、次にS11が実行されるとき、その判定結果はNOになってS20が実行される。ブレーキペダル10の踏込みにより電子制御装置28が起動され、ラピッドスタート時のホイールシリンダ圧制御が行われても、ブレーキペダル10の踏込みが解除されれば、次にブレーキペダル10が踏み込まれるときには、既に電子制御装置28が踏込開始当初から液圧を制御し得る状態になっており、ラピッドスタート時のホイールシリンダ圧制御が行われなくても支障はないのである。
本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、電子制御装置28がブレーキペダル10の踏込みにより起動された場合にも、イグニッションスイッチ182がオン操作されて起動された場合にも、図5に示す電子制御装置自動停止判定ルーチンが実行される。このルーチンは、イグニッションスイッチ182がオフ操作されるとともに、ブレーキペダル10が踏み込まれていない状態が設定時間続けば、電子制御装置28を停止させるように構成されている。これらが電子制御装置28の自動停止条件である。この条件成立時には、運転者が制動を行う意思がないと見なしてよく、電子制御装置28への電流供給を停止して支障がないからである。
そのため、電子制御装置自動停止判定ルーチンのS31においてイグニッションスイッチ182がオフ状態にあるか否かが判定され、S32においてブレーキペダル10が踏み込まれているか否かが判定され、S33において設定時間が経過したか否かが判定される。イグニッションスイッチ182がオフ操作され、かつ、ブレーキペダル10が踏み込まれていない状態が設定時間継続すれば、S31,S32,S33の各判定結果がYESになってS34が実行され、電子制御装置28への電流供給が遮断され、停止させられる。また、フラグFがリセットされる。
ラピッドスタートにより電子制御装置28が起動された場合であっても、ブレーキペダル10の踏込みが行われれば、電子制御装置28が起動されたままとされ、ホイールシリンダ圧が制御されるようにされるが、電子制御装置28が起動されたものの、イグニッションスイッチ182がオン操作されず、ブレーキペダル10の踏込みも解除されたままであれば、停止条件の成立により電子制御装置28を自動停止させることができる。そして、この状態でブレーキペダル10が踏み込まれれば、電子制御装置28がラピッドスタートさせられ、ラピッドスタート時のホイールシリンダ圧制御が行われる。
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、ブレーキペダル10の踏込みに基づいてブレーキスイッチ170がオン状態となり、それにより電源回路180がコンピュータ152等に駆動電流を供給する状態となる構成がブレーキ操作対応起動部を構成し、電子制御装置28のS13,S14を実行する部分が流出許容部としての液圧制御禁止部を構成し、S13,S14,S16,S18を実行する部分が流出許容部としての遮断禁止部および液圧制御禁止部を構成している。流出許容部によりマスタシリンダ12からホイールシリンダ14,16へのブレーキ液の流出が許容される状態がブレーキ操作対応電子制御装置起動時ブレーキ液流出許容状態である。この流出許容状態は第三状態であり、本実施例では、電子制御装置28は前記第一,第二状態に加えて第三状態を取る。また、ラピッドスタート時のホイールシリンダ圧制御時には常閉のシミュレータ制御弁44を開状態に切り換えず、閉状態のままとし、ストロークシミュレータ装置26を不機能状態に保つ電子制御装置28の構成が不機能状態保持部を構成している。さらに、電子制御装置28のS18を実行する部分が操作量対応制御部としての操作力対応制御部たる踏込力対応制御部を構成し、S31〜S34を実行する部分が自動停止部を構成している。また、RAM164が遮断時マスタシリンダ圧記憶部を構成している。さらに、電子制御装置28のS13およびS16を実行する部分が、ブレーキペダル10の踏込ストロークが設定踏込ストロークに達したことを検出する第一設定操作量到達検出部を構成している。
請求可能発明の別の実施例を図7ないし図9に基づいて説明する。
本実施例の電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、ラピッドスタート時にブレーキペダル10の踏込みが解除されるとき、フロントシリンダ14,16の実際の液圧が遮断時マスタシリンダ圧PM0に漸近させられる制御が行われる。その他の構成は、上記実施例と同じであり、同じ作用を成す構成要素には同一の符号を付して対応関係を示し、説明を省略する。
ラピッドスタート時にフロントシリンダ圧が液圧制御弁装置62により制御されている状態でブレーキペダル10の踏込みが解除されるとき、運転者が違和感を抱く場合がある。その原因は、ブレーキ解除操作が迅速に行われた場合には、それに伴ってマスタシリンダ圧は迅速に低下するが、ホイールシリンダ圧の制御遅れに起因する低下遅れにより、ペダルストロークが設定踏込ストロークに達してマスタシリンダ遮断弁56,58が開かれる際、フロントシリンダ圧がマスタシリンダ圧より大きく、この液圧差の影響がブレーキペダル10に伝達されることによると推測される。フロントシリンダ圧は、遅れがなければ、図8に太い点線で示すように低下させられるが、低下遅れにより二点鎖線で示すように低下させられ、マスタシリンダ遮断弁56,58が開かれる際、フロントシリンダ圧が遮断時マスタシリンダ圧より大きくなるのである。
そのため、本実施例の電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、ブレーキペダル10の踏込みが解除されるとき、マスタシリンダ圧が遮断時マスタシリンダ圧PM0より大きい設定マスタシリンダ圧PM1まで減少するまでは、作用操作時と同様に、遮断時マスタシリンダ圧および予め設定された勾配に基づいて目標液圧が設定されるが、設定マスタシリンダ圧PM1まで低下した後は、図8に太い破線で示すように、フロントシリンダ14,16の実際の液圧が遮断時マスタシリンダ圧に漸近するように目標液圧が設定される。
図7に示すホイールシリンダ圧制御ルーチンに基づいて、ホイールシリンダ圧の制御を説明する。前記実施例のホイールシリンダ圧制御と同じ部分については、説明を省略する。
電子制御装置28がラピッドスタートにより起動され、ブレーキペダル10の踏込ストロークが設定踏込ストロークST0以上になるとともに、ペダルストローク前回値も設定踏込ストロークST0以上になれば、S51以下のステップが実行される。
ブレーキペダル16の作用操作時には、ペダルストロークが一旦設定踏込ストロークST0以上になった後は、前回のペダルストロークも設定踏込ストロークST0以上になり、S16の判定結果がNOになってS51が実行される。S51においては、ブレーキペダル10の踏込みが、ブレーキを作動させるための作用操作であるか否かが判定される。この判定は、例えば、マスタシリンダ圧が増加しているか否かにより行われる。踏込力が増加しているか否かにより判定が行われるのである。S51が実行されるとき、例えば、加圧室30の液圧を検出するマスタシリンダ圧センサ64の検出値が読み込まれ、記憶される。ここでは、S13における相前後する2つのペダルストロークの記憶と同様に、前回のS51の実行により取得されたマスタシリンダ圧と、今回のS51の実行により取得されたマスタシリンダ圧とが記憶され、今回のマスタシリンダ圧が前回のマスタシリンダ圧より大きいか否かが判定される。マスタシリンダ圧は2つのマスタシリンダ圧センサ64により得られ、例えば、2つのマスタシリンダ圧の平均値が今回のマスタシリンダ圧とされる。2つのマスタシリンダ圧のいずれか一方を今回のマスタシリンダ圧としてもよい。今回のマスタシリンダ圧が前回のマスタシリンダ圧より大きいのであれば、ブレーキペダル10の作用操作中であり、S51の判定結果はYESになってS18が実行され、フロントシリンダ14,16の目標液圧が設定される。
運転者がブレーキペダル10の踏込みを緩め、ブレーキの作用を解除する場合、ペダルストロークが減少する。この間も、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0以上である間は、S18,S53の実行により、ホイールシリンダ14,16の液圧が液圧制御弁装置62によって制御されつつ減少させられる。ブレーキ解除操作時には、今回のマスタシリンダ圧が前回のマスタシリンダ圧より小さくなり、S51の判定結果がNOになってS52が実行され、マスタシリンダ圧が設定マスタシリンダ圧PM1まで減少したか否かが判定される。設定マスタシリンダ圧PM1は、遮断時マスタシリンダ圧PM0に設定圧を加えることにより設定される。マスタシリンダ圧PMが設定マスタシリンダ圧PM1を超えて減少していなければ、S52の判定結果はNOになってS18が実行され、フロントシリンダ14,16の目標液圧が作用操作時と同様に設定されるのである。
マスタシリンダ圧PMが設定マスタシリンダ圧PM1より小さくなれば、S52の判定結果がYESになってS53が実行され、フロントシリンダ14,16の実際の液圧が遮断時マスタシリンダ圧PM0に近づくように目標液圧Prefが設定される。目標液圧Prefは、本実施例においては、次式に従って設定される。
Pref=α・Pref0+(1−α)・PM0
α=(PM−PM0)/(PM1−PM0)
Pref0は、本実施例では、作用操作時と同様に設定される目標液圧であり、PMは実際のマスタシリンダ圧である。したがって、マスタシリンダ圧PMが設定マスタシリンダ圧PM1より小さくなれば、係数αは、0より大きく、1より小さい値になり、目標液圧Prefは、作用操作時と同様に設定される目標液圧Pref0と、遮断時マスタシリンダ圧PM0との両方に基づいて設定されることとなる。
ブレーキペダル10の踏込解除操作が行われる間、マスタシリンダ圧の低下によりS52の判定結果がYESになってS53が実行される。S53の実行時にもマスタシリンダ遮断弁56,58は閉じられたままである。実際のマスタシリンダ圧PMが遮断時マスタシリンダ圧PM0に近づくほど係数αが小さくなり、目標液圧Prefは遮断時マスタシリンダ圧PM0に漸近させられ、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0まで減少してマスタシリンダ遮断弁56,58が開かれるときには、実際のマスタシリンダ圧PMが遮断時マスタシリンダ圧PM0と等しくなり、目標液圧Prefが遮断時マスタシリンダ圧PM0に設定される。本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、前述のように、目標液圧は遮断時マスタシリンダ圧PM0から液圧が設定勾配で増大し、増大時と同じ設定勾配で減少するように設定されるため、実際のマスタシリンダ圧PMの減少に伴って目標液圧は遮断時マスタシリンダ圧PM0に近づくが、係数αの設定により、目標液圧の減少勾配が大きくされ、図9のグラフに太い破線で示すように、低下遅れが吸収されて実際のフロントシリンダ圧が遮断時マスタシリンダ圧PM0に近づけられる。そのため、マスタシリンダ遮断弁56,58が開かれるとき、フロントシリンダ14,16の液圧とマスタシリンダ12の液圧との液圧差が小さく、開弁時のブレーキペダル10への衝撃や異音の発生が少なくて済む。ブレーキペダル10の迅速な解除操作により、図9においては図示は省略するが、マスタシリンダ遮断弁56,58が開かれた後は、図8に示すように、マスタシリンダ圧は急速に減少し、フロントシリンダ圧は緩やかに減少する。
そして、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0より小さくなれば、S13の判定結果がNOになってS14が実行され、マスタシリンダ遮断弁56,58が開かれるとともに、液圧制御弁装置62による制御の終了処理が行われる。ブレーキペダル10の踏込みが解除されるまでS14,S15が実行され、フロントシリンダ14,16をマスタシリンダ12から遮断すること、および液圧制御弁装置62によるフロントシリンダ圧の制御が再度禁止される。
このように本電子制御液圧ブレーキシステムにおいては、設定踏込ストロークST0が第二設定操作量であり、第一設定操作量と第二設定操作量とが同じである。また、ブレーキ解除操作時には、マスタシリンダ圧は、マスタシリンダ遮断弁56,58が開かれるまでの間は、液通路等の構成部材の弾性変形の復元により作用操作時と同様の勾配で低下させられ、ペダルストロークが設定踏込ストロークST0に減少したときのマスタシリンダ圧は遮断時マスタシリンダ圧PM0となり、遮断時マスタシリンダ圧PM0は第二設定操作量でもあり、遮断時マスタシリンダ圧PM0に設定圧を加えたマスタシリンダ圧PM1が第三設定操作量である。
なお、マスタシリンダ圧が設定マスタシリンダ圧PM1を超えることなく、ブレーキ解除操作が為された場合、S18は実行されず、S53のみが実行され、フロントシリンダ圧が遮断時マスタシリンダ圧PM0に漸近させられる。
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、電子制御装置28のS13,S14を実行する部分が再禁止部ないし禁止状態復帰部を構成し、S17を実行する部分が遮断時マスタシリンダ圧記憶部を構成するとともに、S53を実行する部分と共に漸近制御部を構成している。また、電子制御装置28のS13を実行する部分が第二設定操作量到達検出部を構成し、S52を実行する部分が第三設定操作量到達検出部を構成している。
なお、ラピッドスタート時における制御は、ブレーキ操作部材の操作開始から解除まで、全部ブレーキ操作部材の操作ストロークに基づいて行ってもよく、全部操作力に基づいて行ってもよい。これらの場合、第一,第二,第三の各設定操作量はそれぞれ、操作ストロークのみあるいは操作力のみにより設定することができる。
また、ラピッドスタート時に、ブレーキ操作部材の操作量が設定操作量に到達した後に、ホイールシリンダの液圧が動力液圧源の液圧に基づいて制御されるようにすることは不可欠ではなく、ブレーキ操作部材の操作が解除されるまで、ホイールシリンダをマスタシリンダに連通させたままとし、運転者によるブレーキ操作部材の操作によりマスタシリンダに発生させられた液圧がホイールシリンダに供給されてブレーキが作動させられるようにしてもよい。
さらに、上記各実施例においては、全部のフロントシリンダについてラピッドスタート時の液圧制御が行われるようにされていたが、一部のフロントシリンダのみについて行い、残りのフロントシリンダについては、リヤシリンダと同様に液圧制御弁装置により液圧が制御されるようにしてもよい。マスタシリンダの加圧室に接続された全部のホイールシリンダについてラピッドスタート時の液圧制御を行うことは不可欠ではなく、一部についてのみ行ってもよいのである。この場合、例えば、上記各実施例においては、ホイールシリンダ圧制御ルーチンのS12においてリヤシリンダ圧制御が行われるとともに、左右フロントシリンダの一方について、その一方に対応するマスタシリンダ遮断弁を閉じ、液圧制御弁装置62に一方のフロントシリンダの液圧をブレーキペダル10の踏込力に応じた大きさに制御させる。S14では、他方のフロントシリンダに対応するマスタシリンダ遮断弁が開かれ、S18で閉じられることとなる。左右フロントシリンダのいずれについて液圧制御弁装置62による液圧制御が行われる場合でも、電子制御装置起動の原因となったブレーキペダルの踏込みの間は、ストロークシミュレータ装置は不機能状態に保たれる。
また、ブレーキ操作部材の操作を解除する場合、第三設定操作量を設定することなく、解除開始当初から、ホイールシリンダの液圧をマスタシリンダの液圧に漸近させる制御を行ってもよい。
さらに、後輪の回転を抑制するブレーキを作動させるホイールシリンダがマスタシリンダに接続されている場合、流出許容部は、マスタシリンダから、後輪のブレーキのホイールシリンダへのブレーキ液の流出を許容するものとしてもよい。
また、通常制動制御時におけるホイールシリンダの目標液圧は、ブレーキ操作部材の操作ストロークに基づいて設定してもよく、操作ストロークおよび操作力に基づいて設定してもよい。前者の場合、ラピッドスタート時にブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量を超えた後、ホイールシリンダ圧を動力液圧源の液圧に基づいて制御するのであれば、ホイールシリンダ圧の目標液圧は操作ストロークに基づいて設定され、後者の場合、操作ストロークおよび操作力の両方に基づいて設定されてもよく、操作力に基づいて設定されてもよい。
さらに、ストロークシミュレータおよびシミュレータ制御弁は、マスタシリンダの2つの加圧室のそれぞれについて設けてもよい。この場合にも、ストロークシミュレータ装置は、ブレーキ操作対応起動部による電子制御装置起動の原因となったブレーキ操作部材の操作の間は、不機能状態に保たれる。
また、請求可能発明は、マスタシリンダとホイールシリンダとの接続が別の態様で為される電子制御液圧ブレーキシステムに適用することができる。例えば、マスタシリンダの複数、例えば、2つの加圧室の一方が左右前輪の各ブレーキを作動させるホイールシリンダに接続され、他方が左右後輪の各ブレーキを作動させるホイールシリンダに接続される電子制御液圧ブレーキシステムや、2つの加圧室の一方が左前輪および右後輪の各ブレーキのホイールシリンダに接続され、他方が右前輪および左後輪の各ブレーキのホイールシリンダに接続される電子制御液圧ブレーキシステムに請求可能発明を適用することができる。これらの場合、一方の系統については、ラピッドスタート時にも、ブレーキ操作部材の操作開始によりホイールシリンダをマスタシリンダから遮断し、動力液圧源の液圧に基づいて液圧が制御されるようにすれば、高い制動力を得ることができる。2系統のうちの一方についてはラピッドスタート時の液圧制御を行い、他方については通常制動時の液圧制御を行うのである。また、2系統のうちの一方に属する2つのブレーキの両方のホイールシリンダについて、ラピッドスタート時の制御を行ってもよく、一方のみについて行ってもよい。
請求可能発明の一実施例である電子制御液圧ブレーキシステムを示す回路図である。 上記電子制御液圧ブレーキシステムの電子制御装置を概念的に示すブロック図である。 電子制御装置の主体を成すコンピュータのROMに記憶されたラピッドスタート判定ルーチンを示すフローチャートである。 上記コンピュータのROMに記憶されたホイールシリンダ圧制御ルーチンを示すフローチャートである。 上記コンピュータのROMに記憶された電子制御装置自動停止判定ルーチンを示すフローチャートである。 上記ホイールシリンダ圧制御ルーチンによりラピッドスタート時のホイールシリンダ圧制御が行われる際のブレーキペダル踏込量とホイールシリンダの目標液圧との関係を示すグラフである。 請求可能発明の別の実施例である電子制御液圧ブレーキシステムの電子制御装置の主体を成すコンピュータのROMに記憶されたホイールシリンダ圧制御ルーチンを示すフローチャートである。 図7に示すホイールシリンダ圧制御ルーチンによりラピッドスタート時のホイールシリンダ圧制御が行われる際のフロントシリンダ圧およびマスタシリンダ圧の時間に対する変化を示すグラフである。 図7に示すホイールシリンダ圧制御ルーチンによりラピッドスタート時のホイールシリンダ圧制御が行われる際のブレーキペダル踏込量とマスタシリンダ圧およびフロントシリンダ圧との関係を示すグラフである。
符号の説明
10:ブレーキペダル 12:マスタシリンダ 14,16:フロントシリンダ 26:ストロークシミュレータ装置 28:電子制御装置 42:ストロークシミュレータ 44:シミュレータ制御弁 56,58:マスタシリンダ遮断弁 60:動力液圧源 62:液圧制御弁装置 80,82,84,86:リニア増圧弁 90,92,94,96:リニア減圧弁 182:イグニッションスイッチ

Claims (4)

  1. ブレーキ操作部材の操作に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、
    そのマスタシリンダに接続され、複数の車輪の回転をそれぞれ抑制するブレーキを作動させる複数のホイールシリンダと、
    動力により液圧を発生させる動力液圧源と、
    少なくともそれらマスタシリンダ,複数のホイールシリンダおよび動力液圧源の間に設けられ、少なくともそれらの連通状態を切り換える切換装置と、
    その切換装置を、少なくとも、前記複数のホイールシリンダの少なくとも一部のものを前記マスタシリンダと連通させる第一状態と、その少なくとも一部のホイールシリンダを前記マスタシリンダから遮断し、前記動力液圧源の液圧に基づいてその少なくとも一部のホイールシリンダの液圧を前記ブレーキ操作部材の操作に応じた大きさに制御する第二状態とに制御する電子制御装置と、
    前記ブレーキ操作部材が操作されたことを検出するブレーキスイッチがオン状態となることに基づいて、前記電子制御装置を起動させるブレーキ操作対応起動部と、
    そのブレーキ操作対応起動部による電子制御装置起動の原因となった前記ブレーキ操作部材の操作に伴って前記マスタシリンダから前記少なくとも一部のホイールシリンダの少なくとも1つへのブレーキ液の流出を許容する状態に、前記切換装置を制御する流出許容部と
    を含み、かつ、前記流出許容部が、前記ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達するまでは前記電子制御装置が前記切換装置に前記少なくとも1つのホイールシリンダを前記マスタシリンダから遮断させることを禁止し、第一設定操作量を超えれば遮断させることを許容する遮断禁止部を含むことを特徴とする電子制御液圧ブレーキシステム。
  2. 前記流出許容部が、前記ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達するまでは、前記電子制御装置が、前記切換装置を、前記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧を前記動力液圧源の液圧に基づいて制御する状態とすることを禁止し、第一設定操作量を超えれば許容する液圧制御禁止部を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
  3. 前記液圧制御禁止部により前記少なくとも1つのホイールシリンダの液圧の制御が許容された後、前記ブレーキ操作部材の操作量が第二設定操作量まで減少させられた際、前記電子制御装置が、前記切換装置に、前記少なくとも1つのホイールシリンダを前記マスタシリンダから遮断させること、および、その少なくとも1つのホイールシリンダの液圧を前記動力液圧源の液圧に基づいて制御させることを再び禁止する再禁止部と、
    その再禁止部による再禁止の前に前記少なくとも1つのホールシリンダの実際の液圧を前記マスタシリンダの実際の液圧に漸近させる漸近制御部と
    を含むことを特徴とする請求項2に記載の電子制御液圧ブレーキシステム。
  4. ブレーキ操作部材の操作に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、
    そのマスタシリンダに接続され、複数の車輪の回転をそれぞれ抑制するブレーキを作動させる複数のホイールシリンダと、
    動力により液圧を発生させる動力液圧源と、
    ブレーキ液を貯蔵するリザーバと、
    前記マスタシリンダと前記複数のホイールシリンダの少なくとも一部のものとの間に設けられ、その少なくとも一部のホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させる連通状態と、遮断する遮断状態とに切り換え可能な1つ以上のマスタシリンダ遮断弁と、
    その1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の少なくとも1つの連通状態では前記マスタシリンダから前記複数のホイールシリンダ以外へのブレーキ液の流出を阻止する不機能状態となり、前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁のすべてが閉じられた状態では前記流出を許容するとともに、前記ブレーキ操作部材に、そのブレーキ操作部材の操作ストロークの増大に伴って増大する反力を作用させる機能状態となるストロークシミュレータ装置と、
    前記複数のホイールシリンダの各々と、前記動力液圧源および前記リザーバとの間にそれぞれ設けられ、少なくとも、動力液圧源から各ホイールシリンダへのブレーキ液の流入を許容する状態と、各ホイールシリンダからリザーバへのブレーキ液の流出を許容する状態とにそれぞれ切り換え可能な複数の液圧制御弁装置と、
    前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁,前記ストロークシミュレータ装置および前記複数の液圧制御弁装置に接続され、少なくとも、前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の少なくとも1つを前記連通状態とするとともに前記ストロークシミュレータ装置を前記不機能状態とする第一状態と、前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁のすべてを前記遮断状態とするとともに前記ストロークシミュレータ装置を前記機能状態とし、かつ、前記複数の液圧制御弁装置を制御して前記複数のホイールシリンダの液圧を前記ブレーキ操作部材の操作量に応じた大きさに制御する第二状態とをとり得る電子制御装置と、
    前記ブレーキ操作部材が操作されたことを検出するブレーキスイッチがオン状態となることに基づいて、前記電子制御装置を起動させるブレーキ操作対応起動部と、
    そのブレーキ操作対応起動部による電子制御装置起動の原因となった前記ブレーキ操作部材の操作の間は、前記ストロークシミュレータ装置を前記不機能状態に保つ不機能状態保持部と、
    前記ブレーキ操作対応起動部による電子制御装置起動の原因となった前記ブレーキ操作部材の操作量が第一設定操作量に達するまでは前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁の前記遮断状態への切換えと、前記複数の液圧制御弁装置のうちその1つ以上のマスタシリンダ遮断弁に対応するものの制御とを禁止することにより、前記マスタシリンダから前記複数のホイールシリンダのうちの前記1つ以上のマスタシリンダ遮断弁に対応するものへのブレーキ液の流出を許容する流出許容部と
    を含むことを特徴とする電子制御液圧ブレーキシステム。
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