JP4441956B2 - 車両用内装材の取付け構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は車両用内装材の取付け構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の内装材を車体のパネルに取り付けるには、図5に示すようなクリップ71が用いられる。このクリップ71は、細長形状の軸部72と、この軸部72の一端部に設けられる傘状の押さえ部73とを備えている。軸部72には、その長さ方向に沿って一定ピッチで、径方向に張り出す係止用鍔縁74が複数個設けられている。内装材75には、軸部72を挿通可能な差込み孔76が設けられている。また、パネル77には、その差込み孔76に整合する位置に、取付け孔78が開口されている。
クリップ71を取り付けるには、軸部72を内装材75の差込み孔76とパネル77の取付け孔78とに差込んで、内装材75の肉厚に合った適当な位置の係止用鍔縁74を取付け孔78の孔縁に係合させることにより行う。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の取付け構造によると、次のような欠点があった。つまり、内装材75とパネル77とを合わせた厚みと、クリップ71の軸部72に沿って係止用鍔縁74が設けられているピッチとが一致していない場合には(図5中、符号Lで示した間隔)、クリップ71の押さえ部73が内装材75の表面から浮き上がったり、クリップ71ががたついたりしており、見栄えも悪かった。
この欠点の一部を解消するために、図6に示したもののように、内装材79の差込み孔80の周囲に押さえ部73が収まるような凹部81を設けて、見かけ上、押さえ部73の浮き上がりを目立たなくしたものもあるが、クリップ71のがたつきが解消したわけではない。また、全体の見栄えは、十分に良好なものとは言い難く、さらに改良の余地があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは内装材の表面からのクリップの浮き上がりを防止できる車両用内装材の取付け構造を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1の発明に係る車両用内装材の取付け構造は、径方向に張り出し撓み変形可能な係止用鍔縁が長さ方向に沿って間隔を空けて複数形成された軸部とこの軸部の上端に設けられた大径の押さえ部とからなるクリップと、前記軸部を挿通可能でかつ前記押さえ部及び前記係止用鍔縁より小径に形成された差込み孔を有する内装材と、前記差し込み孔と整合する取付け孔を有しかつこの取付け孔の孔縁に前記係止用鍔縁が係止することで前記内装材の固定がなされる車両用パネルとからなる取付け構造であって、前記内装材と前記車両用パネルとの間には、前記内装材を前記パネルから離間させる方向に付勢するばね部が介在され、前記ばね部は、前記内装材の差込み孔周りを前記パネル側へテーパ状に弾性変形可能に膨出させて形成されているところに特徴を有する。
【0007】
【発明の作用および効果】
請求項1の発明によれば、取付け孔と差込み孔とを整合させつつ、内装材をパネルに沿わせる。その状態で、押さえ部を押し込んで軸部を差込み孔から取付け孔へと差し込む。このときの押し込みに伴い、ばね部は圧縮され内装材がパネルに接近し、いずれかの係止用鍔縁が取付け孔を通過する。その後、押さえ部に対する押圧操作を止めると、ばね部は内装材をパネルから離間させるように作用するため、クリップは、係止用鍔縁が取付け孔の孔縁に係止し、押さえ部が内装材の表面に浮き上がりを生じることなく密着した状態で取り付けられているため、クリップのがたつきも解消される。
【0008】
また、ばね部が内装材に一体に形成されているから、構造が簡単である。
【0009】
【発明の実施の形態】
〈第1実施形態〉
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、内装材10の取付け前の状態を示している。本発明の車両用内装材の取付け構造は、内装材10と、この内装材10が固定されるパネル20と、内装材10を固定するクリップ30とから構成される。
【0010】
クリップ30は、合成樹脂材等により形成されており、先端の尖った細長形状の軸部31と、この軸部31の上端に傘状に設けられた円形の押さえ部32とを備えている。また、軸部31には、その長さ方向に沿って一定のピッチで、径方向に張り出す係止用鍔縁33が複数個形成されている。各係止用鍔縁33は、軸部31の長さ方向に撓み変形可能とされている。
【0011】
一方、パネル20は、金属板よりなり、所定箇所に円形の取付け孔21が開口されている。この取付け孔21の孔径は、軸部31の外径よりも大きく、かつ係止用鍔縁33の外径よりも小さくされており、各係止用鍔縁33が取付け孔21の孔縁に係止可能とされている。
【0012】
さて、内装材10は、例えばポリプロピレン等のように、ある程度の弾力性を備えた材料からなる硬質のボードである。この内装材10には、取付け孔21と整合する位置に、軸部31を挿通可能な差し込み孔11が開口されている。この差し込み孔11の周囲は、パネル20側へテーパ状に膨出されてばね部12が形成されている。このばね部12は、パネル20から離間する方向へ弾性変位可能とされており、その撓み代(図1中、符号Aにて示す)は係止用鍔縁33の配列ピッチ(図1中、符号Xにて示す)と同程度またはそれよりも大きくされている。また、ばね部12の外径(ばね部12がパネル20から折れ曲がる基端部を結んだ円の直径に該当する。第1図中、符号Bにて示す)は、押さえ部32の外径(図1中、符号Cにて示す)よりやや小径とされている。
【0013】
本実施形態は以上の構成であり、次に内装材10の取付け方法を説明する。
まず、取付け孔21と差し込み孔11とを整合させつつ、内装材10をパネル20に沿わせる。そして、クリップ30の押さえ部32を押し込んで、軸部31を差し込み孔11から取付け孔21内へと差し込む。係止用鍔縁33のうちの一つが差し込み孔11の孔縁に突き当たると、その係止用鍔縁33が押さえ部32側に撓み変形しつつ取付け孔21を通過し、パネル20の内側(図1においてパネル20の右側)で復帰変形する。
【0014】
こうして、押し込み操作によっていくつかの係止用鍔縁33を取付け孔21に通過させていくうちに、押さえ部32が内装材10の表面に突き当たる。その状態で、さらに押さえ部32を押圧すると、ばね部12が圧縮されて、内装材10がパネル20に接近する(図2参照)。そこで、押さえ部32に対する押圧操作を止めると、ばね部12の復帰変形力が内装材10をパネル20から離間させるように作用するため、内装材10が押さえ部32に密着した状態で、クリップ30が外側へ付勢され、パネル20の取付け孔21を通過した係止用鍔縁33のうち最もパネル20に近接したものが、取付け孔21の孔縁に係止する(図3参照)。
【0015】
以上のようにして、本実施形態によれば、クリップ30は、係止用鍔縁33が取付け孔21の孔縁に係止し、押さえ部32が内装材10の表面に浮き上がりを生じることなく密着した状態で取り付けられる。このため、クリップ30及び内装材10のがたつきも解消される。
【0016】
また、ばね部12が内装材10に一体に形成されているから、構造が簡単である。加えて、ばね部12は、押さえ部32の内側に隠れるため、見栄えが悪くなることがない。
【0017】
〈参考例〉
以下、本発明の参考例を図4を参照して説明する。なお、本参考例と第1実施形態とにおいて、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
本参考例では、パネル40の取付け孔41の孔縁に、径方向へ複数のスリット42を設けるとともに、各スリット42間に形成される突出部43を外側(図4において、パネル40の左側)へ折り曲げることによって、ばね部44を形成している。このばね部44の撓み代は、各係止用鍔縁33の配列ピッチと同程度とされている。また、ばね部44の内径(図4中の符号Dで示す)は、差込孔51の内径よりもやや大きくされており、ばね部44の外径(図4中の符号Eで示す)は、係止用鍔縁33の外径よりやや小さくされている。一方、内装材50の差し込み孔51の周囲は平坦となっている。なお、クリップ30は、第1実施形態と同様のものである。
【0018】
上記のように構成された本参考例の組み付け方法について説明すると次のようである。
まず、第1実施形態と同様にして、押さえ部32を押し込んで軸部31を差込み孔51から取付け孔41へと差込んでゆくと、内装材50が突出部43の先端に突き当たる。さらに、押さえ部32を押圧すると、ばね部44が図4において右側へ押圧・圧縮される。
そこで、押さえ部32に対する押圧操作を止めると、ばね部44は内装材50をパネル40から離間させるように作用するため、内装材50が押さえ部32に密着するとともに、クリップ30が外側へ付勢され、係止用鍔縁33の一つが取付け孔41の孔縁に係止する。
このように、本参考例によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本参考例によれば、内装材50には、第1実施形態のばね部12のような特別な加工を施さなくて良い。
【0019】
なお、本発明は種々の変更が可能であり、次のような変形例も本発明の技術的範囲に含まれる。
▲1▼上記した実施形態では、ばね部12,44は、内装材10あるいはパネル40と一体に成形されているが、本発明によれば、ばね部を内装材あるいはパネルと一体に成形する必要はなく、例えばスプリングワッシャのような、別体のものから構成してもよい。
要するに、本発明のばね部は、内装材とパネルとの間に介在して、内装材をパネルから離間させる方向に作用するものであればよく、そのような条件が満たされればクリップに一体に形成されるものであってもよい。
【0020】
▲2▼上記した実施形態では、内装材10,50は硬質のボードを例示したが、本発明によれば、内装材は、所定のばね性を備えているものであれば、例えば成形天井の如く、ある程度のクッション性を備えたものを使用してもよい。
▲3▼上記した実施形態では、クリップ30に複数の係止用鍔縁33が備えられているが、本発明によれば、クリップに備えられる係止用鍔縁は一個のみであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態における取付け構造の取付け前の状態を示す断面図
【図2】 取付け作業の途上の状態を示す断面図
【図3】 取付け完了後の状態を示す断面図
【図4】 参考例における取付け構造を示す断面図
【図5】 従来の取付け構造を示す断面図
【図6】 クリップの浮き上がり対策の一例を示す断面図
【符号の説明】
10,50…内装材
11,51…差込み孔
12,44…ばね部
20,40…パネル
21,41…取付け孔
30…クリップ
31…軸部
32…押さえ部
33…係止用鍔縁
Claims (1)
- 径方向に張り出し撓み変形可能な係止用鍔縁が長さ方向に沿って間隔を空けて複数形成された軸部とこの軸部の上端に設けられた大径の押さえ部とからなるクリップと、前記軸部を挿通可能でかつ前記押さえ部及び前記係止用鍔縁より小径に形成された差込み孔を有する内装材と、前記差し込み孔と整合する取付け孔を有しかつこの取付け孔の孔縁に前記係止用鍔縁が係止することで前記内装材の固定がなされる車両用パネルとからなる取付け構造であって、
前記内装材と前記車両用パネルとの間には、前記内装材を前記パネルから離間させる方向に付勢するばね部が介在され、
前記ばね部は、前記内装材の差込み孔周りを前記パネル側へテーパ状に弾性変形可能に膨出させて形成されていることを特徴とする車両用内装材の取付け構造。
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