JP4441863B2 - 有機el素子 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも複数の発光層を有する有機層を一対の電極間に積層形成した有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子に関する。
有機材料によって形成される自発光素子である有機EL素子は、例えば、陽極となるITO(Indium Tin Oxide)等からなる第一電極と、少なくとも発光層を有する有機層と、陰極となるアルミニウム(Al)等からなる非透光性の第二電極と、を順次積層して前記有機EL素子を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
かかる有機EL素子は、前記第一電極から正孔を注入し、また、前記第二電極から電子を注入して正孔及び電子が前記発光層にて再結合することによって光を発するものであり、所定の輝度で長時間発光させる長寿命化が望まれている。
有機EL素子を長寿命化する方法として、特許文献2には、青色発光層を含む1層または2層以上の発光層を有し、前記青色発光層はホール(正孔)輸送層および/または電子輸送層中のホール輸送性化合物および/または電子輸送性化合物をホスト材料として含有する有機EL素子が開示されている。また、特許文献2には、青色以外の発光層を有する場合は、同様のホスト材料にドーパントを加えて青色とは異なる色の光を発する発光層とすることが開示されている。
特開昭59−194393号公報 特開2001−52870号公報
しかしながら、発光色の異なる複数の発光層を備える有機EL素子において、前記各発光層にそれぞれ輸送性材料を混合させた場合、特に、前記各発光層に含有される前記輸送性材料の濃度が同等である場合には、前記各発光層内のキャリアバランスが悪くなることで発光効率が低下し、前記輸送性材料を混合しない場合の有機EL素子よりも発光寿命が短くなるという問題点があった。
本発明は、このような問題に鑑み、少なくとも複数の発光層を有する有機EL素子において、所定の輝度で長時間発光する長寿命化が可能な有機EL素子を提供することを目的とする。
本発明の有機EL素子は、前記課題を解決するために、複数の発光層を少なくとも有する有機層を一対の電極間に積層形成してなる有機EL素子であって、前記各発光層は、ホスト材料と最高占有軌道準位の異なる発光材料と正孔輸送材料とをそれぞれ混合してなり、また、前記ホスト材料と前記発光材料との最高占有軌道準位の差が大きい前記発光層に含有される前記正孔輸送材料の濃度が高くなるように形成されてなることを特徴とする。
また、前記有機層は、正孔輸送層を有し、前記発光材料のエネルギーギャップの値が小さい前記発光層が前記正孔輸送層と近接するように形成されてなることを特徴とする。
また、前記各発光層は、層内において前記正孔輸送層に近い側においては前記正孔輸送材料の濃度が高く、前記正孔輸送層から遠い側に向かって前記正孔輸送材料の濃度が低くなるように形成されてなることを特徴とする。
また、前記各発光層は、前記発光材料のエネルギーギャップの値が小さい前記発光層の膜厚が薄くなるように形成されてなることを特徴とする。
また、前記ホスト材料は、正孔移動性の有機材料からなることを特徴とする。
また、前記各発光層は、互いに異なる発光色を示してなることを特徴とする。
また、本発明の有機EL素子は、複数の発光層を少なくとも有する有機層を一対の電極間に積層形成してなる有機EL素子であって、前記各発光層は、ホスト材料と最低空軌道準位の異なる発光材料と電子輸送材料とをそれぞれ混合してなり、また、前記ホスト材料と前記発光材料との最低空軌道準位の差が大きい前記発光層に含有される前記電子輸送材料の濃度が高くなるように形成されてなることを特徴とする。
また、前記有機層は、電子輸送層を有し、前記発光材料のエネルギーギャップの値が小さい前記発光層が前記電子輸送層と近接するように積層形成されてなることを特徴とする。
また、前記各発光層は、層内において前記電子輸送層に近い側においては前記電子輸送材料の濃度が高く、前記電子輸送層から遠い側に向かって前記電子輸送材料の濃度が低くなるように形成されてなることを特徴とする。
また、前記各発光層は、前記発光材料のエネルギーギャップの値が小さい前記発光層の膜厚が薄くなるように形成されてなることを特徴とする。
また、前記ホスト材料は、電子移動性の有機材料からなることを特徴とする。
また、前記各発光層は、互いに異なる発光色を示してなることを特徴とする。
本発明は、少なくとも複数の発光層を有する有機層を一対の電極間に積層形成した有機EL素子に関するものであり、所定の輝度で長時間発光する長寿命化を可能とするものである。
以下、セグメント型の有機ELパネルに本発明の有機EL素子を適用した第一の実施形態を添付の図面に基いて説明する。
図1において、有機ELパネルは、有機EL素子1を透光性の支持基板2上に配設してなるものである。有機EL素子1は、透光性の第一電極3と、絶縁層4と、有機層5と、第二電極6と、から主に構成されている。また、支持基板2上には有機EL素子1を気密的に覆うように封止部材7が配設されている。かかる有機ELパネルは、有機EL素子1の発光を支持基板2側から取り出し、後述する第一の発光層の黄色発光と第二の発光層の青色発光との補色によって白色の表示を行うものである。
支持基板2は、長方形形状からなる透光性のガラス基板である。
第一電極3は、陽極となるものであり、支持基板2上にITO等の導電性材料を蒸着法やスパッタリング法等の手段によって膜厚50〜200nmの層状に形成し、フォトリソグラフィー法等によって例えば日の字型の表示意匠に応じてパターニングしてなるもので、日の字型の表示セグメント部3aと、個々のセグメントからそれぞれ引き出し成形されたリード部3bと、リード部3bの終端部に設けられる電極部3cとを備えている。尚、電極部3cは、支持基板2の一辺に集中的に配設されている。
絶縁層4は、ポリイミド系やフェノール系等の絶縁材料からなるもので、スパッタリング法等の手段によって層状に形成し、フォトリソグラフィー法等の手段によって支持基板2上の非発光個所に所定の形状にて形成される。絶縁層4は、表示セグメント3aに対応した窓部4aと、第二電極6の後述する電極部に対応する切り欠き部4bとを有し、発光領域の輪郭を鮮明に表示するため、第一電極3の表示セグメント3aの周縁部と若干重なるように窓部4aが形成され、また、第一電極3と第二電極6との絶縁を確保するためにリード部3b上を覆うように配設される。
有機層5は、第一電極3及び絶縁層4上に絶縁層4における窓部4aの形成箇所に対応するように所定の大きさをもって形成されるものであり、図2に示すように、正孔輸送層5a,第一の発光層5b,第二の発光層5c,電子輸送層5d及び電子注入層5eを蒸着法等の手段によって順次積層形成してなるものである。
正孔輸送層5aは、第一電極3から正孔を取り込むとともに正孔を発光層5cへ伝達する機能を有し、例えばアリールアミン誘導体(NPD)等の正孔輸送材料を蒸着法等の手段によって膜厚10〜60nmの層状に形成してなるものである。
第一の発光層5bは、正孔及び電子の輸送が可能であり、正孔移動度が電子移動度よりも高い正孔移動性の特性を有する有機材料である例えば出光興産株式会社製のIDE120からなる第一のホスト材料に、正孔輸送層5aを構成する前記正孔輸送材料と、電子と正孔との再結合に反応して発光する機能を有し、黄色発光を示す例えばナフタセン誘導体からなる第一の発光材料とを共蒸着等の手段によって混合し、例えば膜厚20nm程度の層状に形成してなる。前記第一のホスト材料は最高占有軌道準位(以下、HOMO準位という)が5.7eVであり、また、前記第一の発光材料はHOMO準位が5.4eVであり、両者のHOMO準位の差は0.3eVとなっている。また、第一の発光層5bは、層全体における前記正孔輸送材料の濃度が例えば70パーセントとなっている。また、第一の発光層5bは、前記正孔輸送材料の濃度が正孔輸送層5a近傍にあっては高く、正孔輸送層5aから遠い側である第二の発光層5d近傍に向かって徐々に低くなるように形成されている。なお、第一の発光層5b内における前記正孔輸送材料の濃度の変化は段階的なものであってもよい。また、前記第一の発光材料は、最低空軌道準位(以下、LUMO準位という)が3.2eVであり、エネルギーギャップの値が2.2eVとなっている。なお、第一の発光層5b及び後述する各層を構成する各材料のHOMO準位は理研計器株式会社製のAC−2によって測定されたものであり、第一の発光層5b及び後述する各層を構成する各材料のLUMO準位は、光学的に見積もられたものである。
第二の発光層5cは、正孔及び電子の輸送が可能であり、第一の発光層5bと同様の前記第一のホスト材料に、正孔輸送層5aを構成する前記正孔輸送材料と、電子と正孔との再結合に反応して発光する機能を有し、青色発光を示す例えば出光興産株式会社製のBD102からなる第二の発光材料とを共蒸着等の手段によって混合し、例えば膜厚30nm程度の第一の発光層5bよりも厚い層状に形成してなる。前記第二の発光材料は、HOMO準位が5.5eVであり、前記第一のホスト材料とのHOMO準位の差が0.2eVとなっており、前記第一の発光材料よりも前記第一のホスト材料とのHOMO準位の差が小さくなっている。そのため、第二の発光層5cは、層全体における前記正孔輸送材料の濃度が第一の発光層5bよりも低い例えば50パーセントとなっている。また、第二の発光層5cは、前記正孔輸送材料の濃度が正孔輸送層5aに近い側である第一の発光層5b近傍にあっては高く、正孔輸送層5aから遠い側である電子輸送層5d近傍に向かって徐々に低くなるように形成されている。なお、第二の発光層5c内における前記正孔輸送材料の濃度の変化は段階的なものであってもよい。また、前記第二の発光材料は、LUMO準位が2.7eVであり、エネルギーギャップの値が2.8eVとなっており、前記第一の発光材料よりも大きい値となっている。
電子輸送層5dは、電子を発光層5cへ伝達する機能を有する例えばキレート系化合物であるアルミキノリノール(Alq3)等の電子輸送材料を蒸着法等の手段によって膜厚20〜60nmの層状に形成してなる。
電子注入層5eは、第二電極6から電子を注入する機能を有し、例えばフッ化リチウム(LiF)等を蒸着法等の手段によって膜厚略1nmの層状に形成してなる。
第二電極6は、アルミニウム(Al)やマグネシウム銀(Mg:Ag)等の導電性材料を蒸着法等の手段によって膜厚50〜200nmの層状に形成してなるものであり、支持基板2の一辺に設けられるリード部6aと電気的に接続してなる。なお、リード部6aの終端部には、電極部(引き出し部)6bが設けられ、リード部6a及び電極部6bは第一電極3と同材料により形成される。
封止部材7は、例えばガラス材料からなる平板部材に凹部7aをサンドブラスト、切削及びエッチング等の適宜方法で形成してなるものである。封止部材7は、凹部7aを取り囲むようにして形成される支持部7bを例えば紫外線硬化性エポキシ樹脂からなる接着剤(図示しない)を介し支持基板2上に気密的に配設することで、封止部材7と支持基板2とで有機EL素子1を封止する。封止部材7は、第一電極3の電極部3cおよび第二電極6の電極部6bが外部に露出するように支持基板2よりも若干小さめに構成されている。
本第一の実施の形態である有機EL素子1は、発光色の異なる第一,第二の発光層5b,5cが、それぞれ前記第一のホスト材料とHOMO準位の異なる前記第一,第二の発光材料と前記正孔輸送材料とを混合してなり、また、前記第一のホスト材料と前記第一,第二の発光材料とのHOMO準位の差が大きい順に前記正孔輸送材料の濃度が高くなるように形成されてなるものである。すなわち、前記第一のホスト材料とのHOMO準位の差が大きい前記第一の発光材料を含有する第一の発光層5bは、前記第一のホスト材料とのHOMO準位の差が前記第一の発光材料よりも小さい前記第二の発光材料を含有する第二の発光層5cよりも前記正孔輸送材料の濃度が高くなるように形成されている。
かかる構成により、前記第一のホスト材料と前記第一の発光材料とのHOMO準位の差が大きい第一の発光層5bにおいては、前記正孔輸送材料を高濃度で混合させることによって、第一の発光層5b内で正孔を移動させるための抵抗値を低減させることができ、発光に要する駆動電圧を低減可能なことから第一,第二の発光層5b,5cを構成する各材料の劣化を抑制することが可能となる。また、前記第一のホスト材料と前記第二の発光材料とのHOMO準位の差が小さい第二の発光層5cにおいては、前記正孔輸送材料の濃度を第一の発光層5bよりも低くすることで、正孔が前記第二の発光材料のトラップに捉えられにくくなることがなく、発光効率を向上させることができ、発光に要する電流量を低減可能なことから第一,第二の発光層5b,5cを構成する各材料の劣化を抑制することが可能となる。したがって、有機EL素子1は、発光時間の経過による第一,第二の発光層5b,5cにおける発光輝度の低下を抑制することができ、長寿命化が可能となる。
また、有機EL素子1は、第一,第二の発光層5b,5cが、それぞれ含有する前記第一,第二の発光材料のエネルギーギャップが小さい順に正孔輸送層5aと近接するように積層形成されてなるものである。すなわち、前記正孔輸送材料の濃度が高い第一の発光層5bが、第一の発光層5bよりも前記正孔輸送材料の濃度が低い第二の発光層5cよりも正孔輸送層5aに近接して形成されることとなり、正孔輸送層5aから効率よく正孔を移動させることが可能となる。また、第一,第二の発光層5b,5cを前記正孔輸送材料の濃度が正孔輸送層5aに近い側においては高く、正孔輸送層5aから遠い側に向かって徐々に低くなるように形成することによって、正孔輸送層5aから第一の発光層5bへの正孔の移動及び第一の発光層5bから第二の発光層5cへの正孔の移動をより円滑にすることが可能となる。
また、有機EL素子1は、第一,第二の発光層5b,5cが、それぞれ含有する前記第一,第二の発光材料のエネルギーギャップが小さい順に膜厚が薄くなるように形成されるものである。すなわち、エネルギーギャップの値が小さい前記第一の発光材料を含有する第一の発光層5bの膜厚が、前記第一の発光材料よりもエネルギーギャップの値が大きい前記第二の発光材料を含有する第二の発光層5cの膜厚よりも薄くなるように、第一,第二の発光層5b,5cが形成される。したがって、発光効率が高い第一の発光層5bの膜厚を第二の発光層5cよりも薄くすることによって、第一,第二の発光層5b,5cの発光輝度を調整することができ、補色による所定の表示色(白色)を良好に得ることが可能となる。
また、有機EL素子1は、第一,第二の発光層5b,5cの前記第一のホスト材料として、正孔の移動度が電子の移動度よりも大きい正孔移動性の特性を有する有機材料を用いるものである。すなわち、第一の発光層5bにおいて前記正孔輸送材料を高濃度で混合し、また、第二の発光層5cにおいて前記正孔輸送材料を第一の発光層5bよりも低い濃度で混合することによって、第一,第二の発光層5b,5cへの正孔の移動量が増加すると考えられるが、第一,第二の発光層5b,5cには前記第一のホスト材料の酸化または還元反応が安定な反応に寄与するキャリアである正孔の移動量が増加することとなるため、第一,第二の発光層5b,5cへの正孔の移動量が増加しても前記第一のホスト材料の劣化が促進されることはなく、長寿命化が可能となる。
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。なお、前述の第一の実施形態と同一もしくは相当個所には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本第二の実施形態が前述の第一の実施形態と相違する点は、有機EL素子1の有機層5が、図3に示すように、正孔輸送層5a,第三の発光層5f,第四の発光層5g,電子輸送層5d及び電子注入層5eを蒸着法等の手段によって順次積層形成してなる点である。なお、かかる有機ELパネルは、有機EL素子1の発光を支持基板2側から取り出し、第三の発光層5fの青色発光と第四の発光層の黄色発光との補色によって白色の表示を行うものである。
第三の発光層5fは、正孔及び電子の輸送が可能であり、電子移動度が正孔移動度よりも高い電子移動性の特性を有する有機材料である例えばイーストマン・コダック社製のBH2からなる第二のホスト材料に、電子輸送層5dを形成する前記電子輸送材料と、電子と正孔との再結合に反応して発光する機能を有し、青色発光を示す例えば出光興産株式会社製のBD102からなる第三の発光材料とを共蒸着等の手段によって混合し、例えば膜厚30nm程度の層状に形成してなる。前記第二のホスト材料はLUMO準位が2.3eVであり、前記第三の発光材料はLUMO準位が2.7であり、両者のLUMO準位の差が0.4eVとなっている。また、第三の発光層5fは、層全体における前記電子輸送材料の濃度が例えば50パーセントとなっている。また、第三の発光層5fは、層内における前記電子輸送材料の濃度が電子輸送層5dに近い側である第四の発光層5g近傍にあっては高く、電子輸送層5dから遠い側である正孔輸送層5a近傍に向かって徐々に低くなるように形成されている。なお、第三の発光層5f内における前記電子輸送材料の濃度の変化は段階的なものであってもよい。また、前記第三の発光材料は、HOMO準位が5.5eVであり、エネルギーギャップの値が2.8eVとなっている。
第四の発光層5gは、正孔及び電子の輸送が可能であり、第三の発光層5fと同様の前記第二のホスト材料に、電子輸送層5dを形成する前記電子輸送材料と、電子と正孔との再結合に反応して発光する機能を有し、黄色発光を示す例えば出光興産株式会社製のYD103からなる第四の発光材料とを共蒸着等の手段によって混合し、例えば膜厚20nm程度の第三の発光層5fよりも薄い層状に形成してなる。前記第四の発光材料は、LUMO準位が3eVであり、前記第二のホスト材料とのLUMO準位の差が0.7eVとなっており、前記第三の発光材料よりも前記第二のホスト材料とのLUMO準位の差が大きくなっている。そのため、第四の発光層5gは、層全体における前記電子輸送材料の濃度が第三の発光層5fよりも高い例えば70パーセントとなっている。また、第四の発光層5gは、層内において前記電子輸送材料の濃度が電子輸送層5d近傍にあっては高く、電子輸送層5dから遠い側である第三の発光層5f近傍に向かって徐々に低くなるように形成されている。なお、第四の発光層5g内における前記電子輸送材料の濃度の変化は段階的なものであってもよい。また、前記第四の発光材料は、HOMO準位が5.6eVであり、エネルギーギャップの値が2.6eVとなっており、前記第三の発光材料よりも小さい値となっている。
本第二の実施の形態である有機EL素子1は、発光色の異なる第三,第四の発光層5f,5gが、前記第二のホスト材料とLUMO準位の異なる前記第三,第四の発光材料と前記電子輸送材料とを混合してなり、また、前記第二のホスト材料と前記第三,第四の発光材料とのLUMO準位の差が大きい順に前記電子輸送材料の濃度が高くなるように形成されてなるものである。すなわち、前記第二のホスト材料とのLUMO準位の差が大きい前記第四の発光材料を含有する第四の発光層5gは、前記第二のホスト材料とのLUMO準位の差が前記第四の発光材料よりも小さい前記第三の発光材料を含有する第三の発光層5fよりも前記正孔輸送材料の濃度が高くなるように形成されている。
かかる構成により、前記第二のホスト材料と前記第四の発光材料とのLUMO準位の差が大きい第四の発光層5gにおいては、前記電子輸送材料を高濃度で混合させることによって、第四の発光層5g内で電子を移動させるための抵抗値を低減させることができ、発光に要する駆動電圧を低減可能なことから第三,第四の発光層5f,5gを構成する各材料の劣化を抑制することが可能となる。また、ホスト材料である前記第二のホスト材料と前記第三の発光材料とのLUMO準位の差が小さい第三の発光層5fにおいては、前記電子輸送材料の濃度を第四の発光層5gよりも低くすることで、電子が前記第三の発光材料のトラップに捉えられにくくなることがなく、発光効率を向上させることができ、発光に要する電流量を低減可能なことから第三,第四の発光層5f,5gを構成する各材料の劣化を抑制することが可能となる。したがって、有機EL素子1は、発光時間の経過による第三,第四の発光層5f,5gにおける発光輝度の低下を抑制することができ、長寿命化が可能となる。
また、有機EL素子1は、第三,第四の発光層5f,5gが、それぞれ含有する前記第三,第四の発光材料のエネルギーギャップの値が小さい順に電子輸送層5dと近接するように積層形成されてなるものである。すなわち、前記電子輸送材料の濃度が高い第四の発光層5gが、第四の発光層5gよりも前記電子輸送材料の濃度が低い第三の発光層5fよりも電子輸送層5dに近接して形成されることとなり、電子輸送層5dから効率よく電子を移動させることが可能となる。また、第三,第四の発光層5f,5gを前記電子輸送材料の濃度が電子輸送層5dに近い側においては高く、電子輸送層5dから遠い側に向かって徐々に低くなるように形成することによって、電子輸送層5dから第四の発光層5gへの電子の移動及び第四の発光層5gから第三の発光層5fへの電子の移動をより円滑にすることが可能となる。
また、有機EL素子1は、第三,第四の発光層5f,5gが、それぞれ含有する前記第三,第四の発光材料のエネルギーギャップが小さい順に膜厚が薄くなるように形成されるものである。すなわち、エネルギーギャップの値が小さい前記第四の発光材料を含有する第四の発光層5bの膜厚が、前記第四の発光材料よりもエネルギーギャップの値が大きい前記第三の発光材料を含有する第三の発光層5cの膜厚よりも薄くなるように、第三,第四の発光層5f,5gが形成される。したがって、発光効率が高い第四の発光層5gの膜厚を第三の発光層5fよりも薄くすることによって、第三,第四の発光層5f,5gの発光輝度を調整することができ、補色による所定の表示色(白色)を良好に得ることが可能となる。
また、有機EL素子1は、第三,第四の発光層5f,5gの前記第二のホスト材料として、電子の移動度が正孔の移動度よりも大きい電子移動性の特性を有する有機材料を用いるものである。すなわち、第四の発光層5gにおいて前記電子輸送材料を高濃度で混合し、また、第三の発光層5fにおいて前記電子輸送材料を第四の発光層5gよりも低い濃度で混合することによって、第三,第四の発光層5f,5gへの電子の移動量も増加すると考えられるが、第三,第四の発光層5f,5gには前記第二のホスト材料の酸化または還元反応が安定な反応に寄与するキャリアである電子の移動量が増加することとなるため、第三,第四の発光層5f,5gへの電子の移動量が増加しても前記第二のホスト材料の劣化が促進されることはなく、長寿命化が可能となる。
なお、本第一,第二の実施形態はセグメント型の有機ELパネルに本発明の有機EL素子1を適用したが、本発明の有機EL素子は、ドットマトリクス型の有機ELパネルにも適用可能である。また、本第一,第二の実施形態である有機ELパネルは、透光性の第一電極3を備え、有機EL素子1の発光を支持基板2側から取り出し、所定の表示を行うものであったが、本発明の有機EL素子は、有機層上の第二電極を透光性の導電材料で形成し、封止部材側から光を採りだして所定の表示を行ういわゆるトップエミッション型の有機ELパネルにも適用可能である。
また、本第一,第二の実施形態において、有機EL素子1は、第一,第二の発光層5b,5cあるいは第三,第四の発光層5f,5gの2つの発光層を備える構成であったが、本発明における有機EL素子は、三層以上の発光層を備えるものであってもよい。
本発明の有機EL素子が適用された第一の実施形態である有機ELパネルを示す図。 同上の有機層を示す拡大断面図。 本発明の有機EL素子が適用された第二の実施形態である有機ELパネルの有機層を示す拡大断面図。
符号の説明
1 有機EL素子
2 支持基板
3 第一電極
4 絶縁層
5 有機層
5a 正孔輸送層
5b 第一の発光層
5c 第二の発光層
5d 電子輸送層
5e 電子注入層
5f 第三の発光層
5g 第四の発光層
6 第二電極

Claims (12)

  1. 複数の発光層を少なくとも有する有機層を一対の電極間に積層形成してなる有機EL素子であって、
    前記各発光層は、ホスト材料と最高占有軌道準位の異なる発光材料と正孔輸送材料とをそれぞれ混合してなり、また、前記ホスト材料と前記発光材料との最高占有軌道準位の差が大きい前記発光層に含有される前記正孔輸送材料の濃度が高くなるように形成されてなることを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記有機層は、正孔輸送層を有し、前記発光材料のエネルギーギャップの値が小さい前記発光層が前記正孔輸送層と近接するように形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 前記各発光層は、層内において前記正孔輸送層に近い側においては前記正孔輸送材料の濃度が高く、前記正孔輸送層から遠い側に向かって前記正孔輸送材料の濃度が低くなるように形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の有機EL素子。
  4. 前記各発光層は、前記発光材料のエネルギーギャップの値が小さい前記発光層の膜厚が薄くなるように形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  5. 前記ホスト材料は、正孔移動性の有機材料からなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  6. 前記各発光層は、互いに異なる発光色を示してなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  7. 複数の発光層を少なくとも有する有機層を一対の電極間に積層形成してなる有機EL素子であって、
    前記各発光層は、ホスト材料と最低空軌道準位の異なる発光材料と電子輸送材料とをそれぞれ混合してなり、また、前記ホスト材料と前記発光材料との最低空軌道準位の差が大きい前記発光層に含有される前記電子輸送材料の濃度が高くなるように形成されてなることを特徴とする有機EL素子。
  8. 前記有機層は、電子輸送層を有し、前記発光材料のエネルギーギャップの値が小さい前記発光層が前記電子輸送層と近接するように形成されてなることを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子。
  9. 前記各発光層は、層内において前記電子輸送層に近い側においては前記電子輸送材料の濃度が高く、前記電子輸送層から遠い側に向かって前記電子輸送材料の濃度が低くなるように形成されてなることを特徴とする請求項8に記載の有機EL素子。
  10. 前記各発光層は、前記発光材料のエネルギーギャップの値が小さい前記発光層の膜厚が薄くなるように形成されてなることを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子。
  11. 前記ホスト材料は、電子移動性の有機材料からなることを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子。
  12. 前記各発光層は、互いに異なる発光色を示してなることを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子。
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