JP4441004B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは、使用中のタイヤの変形を効果的に抑制し、ユニフォミティーと高荷重耐久性と操縦安定性とに優れ、かつこれらのバランスの良好な高性能の空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の空気入りラジアルタイヤでは、カーカスにおけるプライのコードとして、レーヨン、ナイロン、ポリエステルなどの有機繊維コードが一般に使用されてきた。これらの有機繊維コードの場合、いずれも、そのJIS L 1017(化学繊維タイヤコード試験方法)に規定される、25℃でのデニール当り荷重(応力)と伸び率との関係を示すグラフ(S−S線図)において、ある応力とそれに対応する伸び率との比で表されるEdモジュラス(gf/d)が高い値ではない。
【0003】
このため、これらの有機繊維コードをカーカスのプライに使用した空気入りタイヤでは、使用中に、該有機繊維コードが伸び易く、伸びの量もバラツキ易く、タイヤ形状が変化(変形)するおそれがあり、ユニフォミティーが十分でなく、走行性能も低下するおそれがあり、超高速用等の厳しい条件下で使用できないという問題がある。
【0004】
コードを構成する繊維には、超高速用等の厳しい条件下での使用にも耐え得る十分な耐疲労性をコードに付与する観点から撚りが与えられるが、前記Edモジュラスの値が比較的高い、アラミド、カーボン、ガラス繊維等のいわゆる超高弾性繊維の場合、前記撚りの影響で伸びが増加しEdモジュラスが低下してしまう。このため、これらの超高弾性繊維のコードを使用した空気入りタイヤでは、使用中に操縦安定性が低下するという問題がある。また、超高弾性繊維のコードを使用した空気入りタイヤは、一般に高荷重耐久性に劣るという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。本発明は、使用中のタイヤ形状の変化(変形)を効果的に抑制し、ユニフォミティーと高荷重耐久性と操縦安定性とに優れ、かつこれらのバランスの良好な高性能の空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> トレッドの内側に配置されるベルトと、有機繊維コードが平行に配列されたプライを含んでなり、該ベルトと組み合わされるカーカスとを少なくとも備えてなり、
該有機繊維コードが、下記式で表される繰り返し単位からなるポリオレフィンケトンで実質的に形成された双撚生コードであり、接着剤が付与された後、ノルマライジングゾーンの処理温度が240〜270℃、ノルマライジングゾーンコード張力が0.03〜0.50g/dの条件で熱処理が施され、かつ、そのJIS L 1017(1983)(化学繊維タイヤコード試験方法)に規定される、25℃でのデニール当り荷重(応力)と伸び率との関係を示すグラフにおいて、0.5gf/dの応力とそれに対応する伸び率との比で表されるEdモジュラス(gf/d)が250〜400であることを特徴とする空気入りラジアルタイヤである。
【0007】
【化2】
【0008】
前記式において、(A)は、二価のオレフィン残基を表し、前記繰り返し単位において、総て同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
<2> ポリオレフィンケトンが、エチレン単位を有する前記<1>に記載の空気入りラジアルタイヤである。
<3> 前記熱処理におけるヒートセットゾーンの処理温度が240〜270℃であり、ヒートセットゾーンコード張力が0.4〜1.1g/dである前記<1>または<2>に記載の空気入りラジアルタイヤである。
【0009】
前記<1>に記載の空気入りラジアルタイヤにおいては、前記有機繊維コードが前記ポリオレフィンケトンで実質的に形成されているので、アラミド繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル等の超高弾性繊維で形成されている場合と異なり、十分な高荷重耐久性(耐疲労性)を満足する。また、前記有機繊維コードは、更に、そのJIS L 1017(1983)(化学繊維タイヤコード試験方法)に規定される、25℃でのデニール当り荷重(応力)と伸び率との関係を示すグラフにおいて、0.5gf/dの応力とそれに対応する伸び率との比で表されるEdモジュラス(gf/d)が250〜400であるので、空気入りラジアルタイヤのユニフォミティー及び操縦安定性に優れる。
【0010】
前記<2>に記載の空気入りラジアルタイヤにおいては、前記ポリオレフィンケトンがエチレン単位を有し、該ポリオレフィンケトンの繊維のコードを含むので、力学特性、耐熱性などの点で優れる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッドの内側に配置されるベルトと、特定の有機繊維コードが平行に配列されたプライを含んでなり、該ベルトと組み合わされるカーカスとを少なくとも備えてなり、その他の構造は公知のラジアルタイヤと同様である。
【0012】
<有機繊維コード>
前記有機繊維コードは、下記式で表される繰り返し単位からなるポリオレフィンケトン(以下「POK」ということがある。)で実質的に形成される。
【0013】
【化3】
【0014】
前記式において、(A)は、二価のオレフィン残基を表し、オレフィン系モノマー由来の単位であり、カルボニル単位と結合している。
前記ポリオレフィンケトンは、カルボニル単位と、前記オレフィン系モノマー由来の単位とが交互に配列された共重合体であり、該ポリオレフィンケトンにおいて、前記オレフィン系モノマー由来の単位は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0015】
前記オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、スチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、ウンデセン酸、ウンデセノール、6−クロロヘキセン、N−ビニルピロリドン、およびスルニルホスホン酸のジエチルエステルなどが挙げられる。これらの中でも、力学特性、耐熱性などの点で、エチレンが好ましい。
【0016】
前記ポリオレフィンケトンとしては、前記オレフィン系モノマー由来の単位(A)として、エチレン単位(−CH2 −CH2 −)を有するのが好ましく、エチレン単位(−CH2 −CH2 −)と他のオレフィン単位とのモル比(エチレン単位/他のオレフィン単位)が、4/1以上であるのがより好ましく、8/1以上であることが特に好ましい。
前記モル比が4/1未満であると、前記ポリオレフィンケトンの融点が200℃以下となり、耐熱性が不十分となることがある。また、前記モル比が8/1以上であると、前記ポリオレフィンケトンの耐熱性及び力学的性能に優れる点で有利である。
【0017】
前記ポリオレフィンケトンの製造については、例えば、ヨーロッパ特許公開第121965号、第213671号、第229408号、及び、米国特許第3914391号などを参照することができる。
【0018】
前記ポリオレフィンケトンの重合度としては、60℃のm−クレゾール中で測定した溶液粘度(LVN)が、1.0〜10.0dl/gであるのが好ましく、1.2〜5.0dl/gであるのがより好ましく、1.3〜4.0dl/gであるのが特に好ましい。
前記溶融粘度(LVN)が、1.0dl/g未満であると、最終的に得られるコードの力学的強度が不十分となることがあり、10.0dl/gを超えると、繊維化時の溶融粘度、溶液粘度が高くなりすぎて紡糸性が不良となることがある。一方、前記溶融粘度(LVN)が前記好ましい数値範囲内にあると、そのようなことはなく、前記特に好ましい数値範囲内にあると、製造性及び最終的に得られるコードの力学的性質の点で好ましい。
【0019】
前記有機繊維コードは、前記ポリオレフィンケトンの繊維からなる。前記ポリオレフィンケトンの繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の繊維以上に高強度、高弾性率で、かつ寸法安定性に優れており、熱収縮もナイロン繊維のように大きくなく、またレーヨン繊維のように耐水分安定性が悪くなく、同時にゴムとの接着性に優れ、ゴム中での耐アミン劣化にも優れている。
【0020】
前記ポリオレフィンケトンの繊維の製造方法としては、特に制限はなく、溶融紡糸法、溶液紡糸法などにより前記ポリオレフィンケトンを繊維化する方法が挙げられる。
【0021】
前記溶融紡糸法による場合、例えば、特開平1−124617号公報に記載の方法に従って、前記ポリオレフィンケトンを、最低(T+20)℃、好ましくは(T+40)℃で溶融紡糸し、次いで最高(T−10)℃、好ましくは(T−40)℃で、好ましくは3倍以上、より好ましくは7倍以上の延伸比で延伸することにより、容易に前記ポリオレフィンケトンの繊維を製造することができる(ただし、Tは、前記ポリオレフィンケトンの結晶融点を意味する。) 。
【0022】
前記溶液紡糸法による場合、例えば、特開平2−112413号公報に記載の方法に従って、前記ポリオレフィンケトンを、例えばヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール等に、0.25〜20重量%の濃度、好ましくは0.5〜10重量%の濃度で溶解させ、紡糸ノズルより押し出して繊維化し、次いでトルエン、エタノール、イソプロパノール、n−ヘキサン、イソオクタン、アセトン、メチルエチルケトン等の非溶剤浴、好ましくはアセトン溶中で溶剤を除去した後、洗浄して紡糸原糸を得、さらに(T−100)〜(T+10)℃、好ましくは(T−50)〜T℃で延伸することにより、容易に前記ポリオレフィンケトンの繊維を製造することができる(ただし、Tは、前記ポリオレフィンケトンの結晶融点を意味する。) 。
【0023】
前記ポリオレフィンケトンの繊維には、熱、酸素等に対して十分な耐久性を付与する目的で酸化防止剤を添加することが好ましく、また必要に応じて艶消し剤、顔料、帯電防止剤などの公知の添加剤を添加してもよい。
【0024】
以上により得られた前記ポリオレフィンケトンの繊維(ポリマーフィラメント)は、その引張強度が、通常10.0g/デニール以上であり、12.0g/デニール以上が好ましい。また、その初期弾性率が、通常100g/デニール以上であり、120g/デニール以上が好ましく、150g/以上が好ましい。
【0025】
前記有機繊維コードは、前記ポリオレフィンケトンの繊維が2本以上から形成された双撚生コードであり、その場合、例えば、前記ポリオレフィンケトンの繊維に下撚りをかけ、次いでこれを2本乃至3本合わせて、逆方向に上撚りを施し、双撚生コードとして得ることができる。
【0026】
前記有機繊維コードを双撚生コードとした場合、下記撚り係数(R)が、1600〜2800であることが好ましい。
撚り係数(R)=N×√D
前記式において、Nは、コードの撚り数(回/10cm)を表し、Dは、コードの総表示デニール数を表す。
前記撚り係数(R)が前記数値範囲内にあると、該有機繊維コードに適度な集束性が与えられ、耐久性を向上させることができる。一方、前記撚り係数(R)が、1600未満であると、有機繊維コード−ゴムマトリッス間の接着性が悪くなり、2800を超えると、該有機繊維コードの伸びが増大し、後述のEdモジュラスが低下するため、空気入りタイヤの走行中の変形を生ずることがある。
【0027】
前記有機繊維コードは、そのJIS L 1017(1983)(化学繊維タイヤコード試験方法)に規定される、25℃でのデニール当り荷重(応力)と伸び率との関係を示すグラフにおいて、0.5gf/dの応力とそれに対応する伸び率との比で表されるEdモジュラス(「初期引張抵抗度」と称することがある。)(gf/d)が、250〜400程度である。
また、本発明においては、前記Edモジュラス(gf/d)の数値範囲として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例におけるEdモジュラス(gf/d)のいずれか値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例におけるEdモジュラス(gf/d)のいずれか値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0028】
前記Edモジュラス(gf/d)の値が、250未満であると、得られる空気入りラジアルタイヤのユニフォミティー及び操縦安定性に劣り、250である場合に比し著しく伸びが大きく、400を超えると、得られる空気入りラジアルタイヤの高荷重耐久性に劣り、空気入りタイヤヘの入力に対してのコードの歪みが、小さくなりすぎるため、ゴムとの剛性段差が著しく増大し、タイヤ疲労耐久性が悪化し、いずれも好ましくない。一方、前記Edモジュラス(gf/d)の値が前記数値範囲内にあると、そのようなことはなく、ユニフォミティー、高荷重耐久性及び操縦安定性に優れ、かつこれらのバランスに優れた空気入りラジアルタイヤが得られる点で有利である。
【0029】
前記Edモジュラス(gf/d)は、例えば、以下のようにして求められる。即ち、供試タイヤのクラウンセンター部を中心にしてカーカスのプライからコード試験片を採取する。このコード試験片を、25±2℃の各恒温下において、引張試験機(例えば、島津製作所(株)製のオートグラフなど)によって、JISL 1017(化学繊維タイヤコード試験方法)に従って、荷重−伸長曲線(S−S線、引張特性曲線)を描く。そして、応力(gf/d)の目盛で0.5(gf/d)と対応する該荷重−伸長曲線上の点における接線の傾きとして求められる。
【0030】
前記有機繊維コードは、例えば、以下のように平行に配列されてプライとされ、カーカスが形成される。
即ち、双撚生コードとして得た前記有機繊維コードを、綿、ポリノジック等の細手の緯糸とスダレ織物に製織した後、接着剤を付与し、乾燥加熱緊張処理し、ディップ処理反としたプライを得る。尚、上記乾燥加熱緊張処理の際、ノルマライジングゾーンの処理温度を240〜270℃に、ノルマライジングゾーンコード張力を0.03〜0.50g/dに設定する。また、ヒートセットゾーンの処理温度を240〜270℃に、ヒートセットゾーンコード張力を0.4〜1.1g/dに設定することがより好ましい。そして、これをゴムマトリックス層に埋設することにより、カーカスが形成される。
【0031】
なお、前記有機繊維コード(乃至前記プライ)と前記ゴムマトリックスとの接着は、以下のような公知の方法、例えば、前記有機繊維コード(乃至前記プライ)を、エポキシ化合物あるいはブロックドイソシアネート化合物を含む第一液で処理した後、レゾルシンとホルマリンと各種ラテックスと苛性ソーダ及び/又はアンモニア水を含む第二液(RFL液)で処理する二浴型の接着方法;トリアリルシアヌレートとレゾルシンとホルマリンとアンモニア水とから生成する通称N3と呼称される液と、RFL液との混合液で処理する一浴型の接着方法;p−クロルフェノールとホルマリンとから生成する2,6−ビス(2' ,4' −ジヒドキシフェニルメチル) −4−クロルフェノールを主成分とする反応生成物と、レゾルシンとホルマリンとアンモニア水とからなる通称PEXULと呼称される液を、RFL液と混合した液で処理する一浴型の接着方法;特開昭60−72972号等に開示されている、多価フェノールポリサルファイドと、レゾルシン及びホルマリンの縮合物とをアルカリ下で熟成した液と、RFL液とを混合した液で処理する一浴型の接着方法;などにより行うことができる。
【0032】
以上のようにして得られた前記カーカスは、そのまま用いてもよいし、あるいは、これを適当な寸法に裁断してから用いてもよい。
前記カーカスは、1層あればよいが、通常2〜3層を重ね合わせて用いてもよく、そのうちの少なくとも1層は、通常、タイヤ内側から外側(軸方向外側)にビードリングの周りに折返して係止される。後者の場合において、例えば、2層によるアップダウン構造とした場合においては、上層(アッププライ)のビードコアのまわりにおける折返しに対応する保護やビード部補強に慣用のフリッパーやチェーファー配置とすることもできる。
【0033】
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいては、前記有機繊維コードが平行に配列されたプライを含んでなり、前記ベルトと組み合わされるカーカスを除く、他の構成、材質、形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知のものと同様に構成することができる。
【0034】
例えば、前記有機繊維コードが平行に配列されたプライを含むカーカスに組み合わせるベルトとしては、1×5×0.23mmφのスチールコードによるものを2枚、トレッドの内側に配置したものなどが挙げられる。また、該ベルトの外周には、キャップ、レイヤなどが適宜配置され、これらとしては、例えば66ナイロンの1260D/2のコードによるものなどが挙げられる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
(実施例1〜3及び比較例1〜6)
タイヤサイズ235/45ZR17の供試タイヤ(空気入りラジアルタイヤ)におけるカーカスのプライを、表1及び2に示した繊維によるコードで構成した。具体的には、実施例1〜3ではポリオレフィンケトン繊維のコードを用い、比較例1ではポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)繊維のコードを用い、比較例2ではポリビニルアルコール繊維のコードを用い、比較例3及び4ではアラミド繊維のコードを用い、比較例5〜6ではポリオレフィンケトン繊維を用いた。いずれのタイヤにおいても該カーカスを、1500D/2にてアップダウン配列で適用し、ベルトには通常のスチールコードを補強素子とする2枚重ね(タイヤの赤道面に対する傾斜角26°での交差積層) とし、このベルトの外周に1260D/2の6.6ナイロンコードよりなる2枚のキャップを用いた。
【0037】
なお、実施例1〜3におけるコードとしては、ポリエチレンケトン繊維のコードを用いた。このコードは、ポリエチレンケトンの原糸を下撚りし、これを2本合わせて、逆方向に上撚りして、双撚生コードを得る。この双撚生コードにおける前記撚り係数(R)は、1800〜2600とした。
この双撚生コードには、次の条件にて接着剤付与と熱処理とを施した。即ち、この双撚生コードを、接着剤に浸漬し、乾燥ゾーンの処理温度を170℃、処理時間を60〜160秒間とし、またヒートセットゾーン及びノルマライジングゾーンの処理温度を240〜270℃、処理時間を60〜160秒間とし、更にヒートセットゾーンコード張力を0.4〜1.1g/d(コードで、1.3〜3.6kg)、ノルマライジングゾーンコード張力を0.03〜0.50g/d(コードで、0.1〜1.65kg)に設定した。
前記接着剤としては、トリアリルシアヌレートとレゾルシンとホルマリンとアンモニア水から生成する通称N3と呼称される液とRFLの混合液で処理する一浴型の接着剤を用いた。
【0038】
各実施例及び比較例の供試タイヤ(空気入りタイヤ)におけるカーカスのプライに用いた有機繊維コードの物性と、各供試タイヤ(空気入りタイヤ)の下記の性能評価の結果を表1及び2に示した。
【0039】
<性能評価>
−ユニフォミティー−
前記ユニフォミティーは、自動車規格JASO C 607「自動車タイヤのユニフォミティ試験方法」に準拠してラジアルフォースバリエーションを測定することにより評価した。
なお、前記ユニフォミティーの評価は、比較例1の供試タイヤの成績を100として、指数で示した。したがって、100よりも大きい程、良好であることを示す。
【0040】
−高荷重耐久性−
前記高荷重耐久性は、ドラム表面が平滑な網製でかつ直径が1.707mであるドラム試験機を使用して、周辺温度を30±3℃に制御し、リムサイズ8JJ×17、試験内圧3.0kg/cm2 、荷重/1300kgの条件にて故障発生まで走行させた。
この走行距離が長いほどタイヤの耐久性は高いことを意味する。比較例1の供試タイヤの故障発生までの走行距離を100として、指数で示した。したがって、100よりも大きい程、良好であることを示す。
なお、比較例1のタイヤでも本試験での走行距離は1000kmを超えているため過去の実績より、市場で問題となるレベルではないが、故障発生までの距離が長いほど安全に対してのマージンが大きいことを意味する。
【0041】
−操縦安定性−
前記操縦安定性は、各供試タイヤを3000ccクラスのスポーツタイプの乗用車に装着して、まず3分間の80kmにわたる予備走行を行った後に、60〜200km/時の速度で実車フィーリングテストを実施し、(i)直進安定性、(ii)旋回安定性、(iii)剛性感、(iv)ハンドリング等の項目について1〜10点の評点をつけ、各項目を平均して操縦安定性の評点とした。
なお、前記操縦安定性の評価は、専門のドライバー2名で行い、2名の評点の平均を求め、比較例1の供試タイヤの結果を100として、指数で示した。したがって、100よりも大きい程、良好であることを示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
表1及び表2の結果から、実施例1〜3の本発明の空奇異入りラジアルタイヤの場合には、ユニフォミティーと高荷重耐久性と操縦安定性とに優れ、かつこれらのバランスが良好であり、高性能であることが明らかである。
これに対し、比較例1〜4のように、有機繊維コードとしてポリオレフィンケトン繊維のコードを用いなかった場合には、ユニフォミティーと高荷重耐久性と操縦安定性とのバランスが悪く、特に高荷重耐久性が十分でなかった。また、有機繊維コードとしてポリオレフィンケトン繊維のコードを用いたが、該コードの前記Edモジュラスが250〜400の範囲外である比較例5及び6の場合には、本発明に比べてユニフォミティーと高荷重耐久性と操縦安定性とのバランス及びこれらのレベルが悪かった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によると、使用中のタイヤ形状の変化を効果的に抑制し、ユニフォミティーと高荷重耐久性と操縦安定性とに優れ、かつこれらのバランスの良好な高性能の空気入りラジアルタイヤを提供することができる。

Claims (3)

  1. トレッドの内側に配置されるベルトと、有機繊維コードが平行に配列されたプライを含んでなり、該ベルトと組み合わされるカーカスとを少なくとも備えてなり、
    該有機繊維コードが、下記式で表される繰り返し単位からなるポリオレフィンケトンで実質的に形成された双撚生コードであり、接着剤が付与された後、ノルマライジングゾーンの処理温度が240〜270℃、ノルマライジングゾーンコード張力が0.03〜0.50g/dの条件で熱処理が施され、かつ、そのJIS L 1017(1983)(化学繊維タイヤコード試験方法)に規定される、25℃でのデニール当り荷重(応力)と伸び率との関係を示すグラフにおいて、0.5gf/dの応力とそれに対応する伸び率との比で表されるEdモジュラス(gf/d)が250〜400であることを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
    前記式において、(A)は、二価のオレフィン残基を表し、前記繰り返し単位において、総て同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
  2. ポリオレフィンケトンが、エチレン単位を有する請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  3. 前記熱処理におけるヒートセットゾーンの処理温度が240〜270℃であり、ヒートセットゾーンコード張力が0.4〜1.1g/dである請求項1または請求項2に記載の空気入りラジアルタイヤ。
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