JP2008024189A - 空気入りランフラットラジアルタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】ランフラット耐久性と通常内圧時の乗り心地とを高度にバランスさせたサイド補強ゴム層を備えたランフラットタイヤを提供する。
【解決手段】カーカスプライの内面に沿って、両サイド部の全域またはほぼ全域にわたり、子午断面が三日月状のサイド補強ゴム層を備えた空気入りランフラットラジアルタイヤにおいて、カーカスプライ2が2枚積層プライ構造であり、かつ各カーカスプライ層において、タイヤ周上での該カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの箇所が2箇所以内であり、かつ、内層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置と外層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置とが、タイヤ周方向で50mm以上の間隔を持ち、カーカスプライ層のコード重ね合せジョイント部において、4本以上カーカスプライ2のコードが上下に重なることがない。
【選択図】図1
【解決手段】カーカスプライの内面に沿って、両サイド部の全域またはほぼ全域にわたり、子午断面が三日月状のサイド補強ゴム層を備えた空気入りランフラットラジアルタイヤにおいて、カーカスプライ2が2枚積層プライ構造であり、かつ各カーカスプライ層において、タイヤ周上での該カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの箇所が2箇所以内であり、かつ、内層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置と外層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置とが、タイヤ周方向で50mm以上の間隔を持ち、カーカスプライ層のコード重ね合せジョイント部において、4本以上カーカスプライ2のコードが上下に重なることがない。
【選択図】図1
Description
本発明は、タイヤ内圧の異常低下又はパンク時にランフラット走行が可能である、いわゆるサイド補強タイプの空気入りランフラットラジアルタイヤに関し、より詳細には、ランフラット耐久性と通常内圧時の乗り心地とを高度にバランスさせた空気入りランフラットラジアルタイヤ(以下「ランフラットタイヤ」とも称する)に関する。
タイヤ内圧の異常低下やパンクした場合であっても、ある程度の距離の走行が可能であるタイヤ、いわゆるランフラットタイヤは、通常の舗装路面を走行するサマータイヤ等で数多く提案されており、それを大別すると、中子タイプとサイド補強タイプの2種類のタイプに分類される。
中子タイプは、リム組みしたタイヤ内に支持体を内蔵したランフラットタイヤである。かかる支持体は、内圧の異常低下またはパンクしたときにだけ、タイヤ内面と接触して、潰れたタイヤをその内面側から支持できるように構成したものであり、これによって、ランフラット走行を可能にしたものである。
しかしながら、かかるランフラットタイヤは、タイヤのリム組み時に支持体を組み込まなければならないため、リム組み作業性が悪く、重量及びコストの上昇を招くという問題があり、加えて、製法等を含めた煩雑さの問題もあった。
このような中子タイプの問題点をすべて解消し得るサイド補強タイプのランフラットタイヤは、両サイド部の全域またはほぼ全域にわたり、タイヤのサイド部全体がほぼ均一な厚みになるように、子午断面が三日月状のサイド補強ゴム層を備えた構造のものとして提案され(例えば、特許文献1)、パンクなどによってタイヤの充填内圧が低下しても、荷重を支えてタイヤが継続して走行することが可能であり、実用化されている。
特開2000−309211号公報
しかしながら、サイド補強タイプのランフラットタイヤにおいては、内圧が低下した状態での走行、所謂ランフラット走行により、タイヤのサイドウォール部の変形が大きくなるにつれサイド補強ゴム層の変形も大きくなり、その結果、該サイド補強ゴム層の発熱が進んで、場合によっては200℃以上の高温に達することもある。このような状態では、サイド補強ゴム層がその破壊限界を超えてしまい、タイヤが故障に至る危険性がある。
このような故障に至るまでの時間を遅くする手段として、サイド補強ゴム層の最大厚さを増大するなど、サイド補強ゴム層の体積を増大させる手段があるが、このような方法を採ると、乗り心地の悪化、重量の増加及び騒音の増加等の問題が生じる。
そこで本発明の目的は、このような従来技術の不具合を解消して、ランフラット耐久性と通常内圧時の乗り心地とを高度にバランスさせたサイド補強タイプのランフラットタイヤを提供することである。
本発明者は、ランフラット走行によって破壊したサイド補強タイプのランフラットタイヤを詳細に解析したところ、該カーカスプライコードのコード重ね合せジョイント部において、破壊が先行して進みやすい傾向があることを突き止めた。さらに、カーカスプライが2枚積層された積層プライ構造である場合、内層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置と外層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置との距離が近い場合に破壊が先行して進みやすい傾向があることも分かった。そこで本発明者は、これらの点に着目してさらに鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の空気入りランフラットラジアルタイヤは、左右一対のビード部に設けられたビードコアと、クラウン部から両サイド部を経て両ビード部に延び、該ビードコアに巻回されてビード部に係留された、ラジアルコード層よりなるカーカスプライと、該カーカスプライのクラウン部ラジアル方向外側に配置されたベルトおよびトレッドとを備えた空気入りランフラットラジアルタイヤにおいて、
前記カーカスプライの内面に沿って、両サイド部の全域またはほぼ全域にわたり、子午断面が三日月状のサイド補強ゴム層を備え、
前記カーカスプライが内層側カーカスプライ層と外層側カーカスプライ層とからなる2枚積層プライ構造であり、かつ各カーカスプライ層において、タイヤ周上での該カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの箇所が2箇所以内であり、
かつ、内層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置と外層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置とが、タイヤ周方向で50mm以上の間隔を持ち、
前記ジョイントの位置のいずれにおいても、4本以上カーカスプライのコードが上下に重なることがないことを特徴とするものである。
前記カーカスプライの内面に沿って、両サイド部の全域またはほぼ全域にわたり、子午断面が三日月状のサイド補強ゴム層を備え、
前記カーカスプライが内層側カーカスプライ層と外層側カーカスプライ層とからなる2枚積層プライ構造であり、かつ各カーカスプライ層において、タイヤ周上での該カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの箇所が2箇所以内であり、
かつ、内層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置と外層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置とが、タイヤ周方向で50mm以上の間隔を持ち、
前記ジョイントの位置のいずれにおいても、4本以上カーカスプライのコードが上下に重なることがないことを特徴とするものである。
本発明においては、前記カーカスプライのコードが、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%以上含み、該コードの最大熱収縮応力が0.1〜1.8cN/dtexの範囲にあり、かつ該ポリケトン繊維の150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が1%〜5%の範囲にあることが好ましく、また、前記ポリケトン繊維において、原糸の引っ張り強度が10cN/dtex以上で、かつ弾性率が200cN/dtex以上であることが好ましい。また、カーカスプライを形成する繊維コードの、下記式(I)、
(nは撚り数(回/10cm)、Dはトータル表示デシテックス数、ρは繊維の比重(g/cm3)である)で定義される撚り係数Nが下記式(II)、
0.6 ≦ N ≦ 0.9 ・・・ (II)
を満たすことが好ましい。
(nは撚り数(回/10cm)、Dはトータル表示デシテックス数、ρは繊維の比重(g/cm3)である)で定義される撚り係数Nが下記式(II)、
0.6 ≦ N ≦ 0.9 ・・・ (II)
を満たすことが好ましい。
本発明によれば、ランフラット耐久性と通常内圧時の乗り心地とを高度にバランスさせたサイド補強タイプのランフラットタイヤを提供することができる。
図1は、本発明の好適実施形態に係るランフラットタイヤの代表的な幅方向半断面を示すものである。図1に示すランフラットタイヤは、対をなすビード部にそれぞれ埋設されたビードコア1間で略ラジアル配列(具体的には、タイヤ赤道面Eに対し70〜90°の角度で配列)されたコードを有する2枚のプライを一方はビードコア1及びビードフィラー5の周りに内側から外側へ、他方は外側から内側へ折り返して形成したカーカスプライ2(21,22)を有する。
また、このタイヤにおいては、カーカスプライ2のクラウン部の外周側に、タイヤ赤道面Eに対し傾斜して延びるコードを平行配列した少なくとも2層の傾斜ベルト層(図示例では、2層の傾斜ベルト層31,32)からなる主ベルト3によって補強されたトレッド部4が配設されている。
主ベルト3は、それを構成する傾斜ベルト層のうち、少なくとも2層の傾斜ベルト層31,32が、コードが互いにタイヤ赤道面Eを挟んで交差するように積層した交差ベルトを構成することが好ましい。
尚、トレッド部4には、図示は省略したが、一般タイヤと同様、タイヤ周方向に沿って延びる複数本の周方向溝、及び/又は、該周方向溝を横断する方向に延びる複数本の横断溝等のトレッド溝や、複数本のサイプなどが用途に応じて適宜配設されている。
また、図1では、主ベルト3とトレッド部4の間に、コードがタイヤ赤道面Eと実質的に平行に配列されたベルト保護層7を主ベルト3のほぼ全幅を覆うように設けた場合を示してある。このベルト保護層7は、ベルト端セパレーションに起因するタイヤ故障を防止するために設けられ、必要に応じて適宜配設することができ、少なくとも主ベルト3の両端部に配設されていればよい。
トレッド部4の両端部とビード部との間には、これらを連結するサイドウォール部が設けてあり、少なくともサイドウォール部にわたるカーカスプライ2の内面側には、略三日月状の断面形状を有するサイド補強ゴム層6が配設されており、いわゆるサイド補強タイプのランフラットタイヤの構造となっている。
カーカスプライ2は、繊維コードと該繊維コードを被覆するコーティングゴムとからなる。すなわち、繊維に一定の撚りを加え、2〜3本撚り合せ、これを経糸として多本数引き揃え、それに細く弱い緯糸を荒く打ち込み、スダレ状とし、更にゴムとの接着を行なう為の接着剤処理を行う。しかる後、一定厚さのトッピングゴムを被覆し、ゴム被覆コードとする。
次に、このゴム被覆コードの経糸が一定の長さとなる様に裁断し、裁断面以外の両縁部を接合し、ラジアルタイヤのカーカス材料とする。タイヤ成型時には、かかるカーカス材料をドラム成型機(又は類似設備)上で経糸と同一方向に切断し接合することにより筒状にする。この裁断・成型工程における接合には、コードとコードを重ね合せるオーバーラップジョイント(図2)、あるいはコードとコードを突き合わせる突き合せジョイント(図3)がある。特に、突き合せジョイントの場合、コードとコード間(図3:A)が他の部分とできるだけ同一になるよう耳部分のゴム量はコードとコード間の約1/2量(図3:A/2)と設定することが重要である。コードとコード間の1/2量耳ゴムを付けたトッピングシートを突き合せ、両側よりシートゴムを引きよせる機構のツメを有するジョイント機械により突き合せジョイントを形成することができる。
本発明においては、上述のようにして形成されたカーカスプライ2のタイヤ周上での該カーカスプライのコード重ね合せジョイントの箇所が2箇所以内、好ましくは1箇所、さらに好ましくはコード重ね合せジョイントがない構造が望ましい。コード重ね合せジョイントの箇所が3箇所以上の場合、ランフラット走行耐久性が著しく低下してしまうことになる。
また、内層側カーカスプライ層21のコード重ね合せジョイントの位置と外層側カーカスプライ層22のコード重ね合せジョイントの位置とが、タイヤ周方向で50mm以上、より好ましくは100mm以上、さらに好ましく300mm以上の間隔を持つことが望ましい。この間隔が50mm未満の場合、やはりランフラット走行耐久性が著しく低下してしまうことになる。
さらに、カーカスプライ2のコード重ね合せジョイント位置において、4本以上、好ましくは3本以上はカーカスプライコードが上下に重ならないようにする。4本以上重なると、やはりランフラット走行耐久性の低下を招くことになる。
本発明においては、カーカスプライ2のコードは、好ましくはポリケトン繊維を少なくとも50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは100質量%含むことが望ましい。50質量%未満だと、タイヤとしての強度、耐熱性、ゴムとの接着性のいずれかの性能が不十分となる。
また、カーカスプライ2のコードの最大熱収縮応力は、好ましくは0.1〜1.8cN/dtex、より好ましくは0.4〜1.6cN/dtex、さらにより好ましくは0.6〜1.4cN/dtexの範囲にあることが望ましい。最大熱収縮応力が0.1cN/dtex未満の場合には、ランフラット走行耐久性を十分に向上させることができない。一方、最大熱収縮応力が1.8cN/dtexを超える場合には、タイヤ製造時の加熱によりコードが著しく収縮するため、出来上がりのタイヤ形状が悪化する懸念がある。
さらに、カーカスプライ2のコードに含まれるポリケトン繊維として、引っ張り強度は、好ましくは10cN/dtex以上、より好ましくは15cN/dtex以上である。この引っ張り強度が10cN/dtex未満の場合、タイヤとしての強度が不十分となる。
さらにまた、カーカスプライ2のコードに含まれるポリケトン繊維として、弾性率は、好ましくは200cN/dtex以上、より好ましくは250cN/dtex以上である。この弾性率が200cN/dtex未満の場合、ランフラット走行耐久性を十分に向上させることができない。
さらにまた、カーカスプライ2のコードに含まれるポリケトン繊維として、150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が、好ましくは1%〜5%の範囲、より好ましくは2%〜4%の範囲である。150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が1%未満の場合には、タイヤ製造時の加熱による引き揃え効率が著しく低下し、タイヤとしての強度が不十分となる。一方、150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が5%を超える場合には、タイヤ製造時の加熱によりコードが著しく収縮するため、出来上がりのタイヤ形状が悪化する懸念がある。
次に、カーカスプライ2のコードの、下記式(I)、
(nは撚り数(回/10cm)、Dはトータル表示デシテックス数、ρは繊維の比重(g/cm3)である)で定義される撚り係数Nが下記式(II)、
0.6 ≦ N ≦ 0.9 ・・・ (II)
を満たすことが好ましく、さらには下記式(III)、
0.7 ≦ N ≦ 0.85 ・・・ (III)
を満たすことがより好ましい。この上撚り係数が0.6未満の場合にはカーカスプライコードに要求される耐疲労性が低下し、結果としてタイヤ耐久性が低下するという問題が生じる。一方、0.9より大きい場合には撚糸の撚り戻りが大きく、作業性が著しく悪化する。
(nは撚り数(回/10cm)、Dはトータル表示デシテックス数、ρは繊維の比重(g/cm3)である)で定義される撚り係数Nが下記式(II)、
0.6 ≦ N ≦ 0.9 ・・・ (II)
を満たすことが好ましく、さらには下記式(III)、
0.7 ≦ N ≦ 0.85 ・・・ (III)
を満たすことがより好ましい。この上撚り係数が0.6未満の場合にはカーカスプライコードに要求される耐疲労性が低下し、結果としてタイヤ耐久性が低下するという問題が生じる。一方、0.9より大きい場合には撚糸の撚り戻りが大きく、作業性が著しく悪化する。
次に、本発明に使用し得る、ポリケトン繊維(以下「PK繊維」と略記する)を少なくとも50質量%以上含む繊維について詳述する。
本発明に使用し得るPK繊維以外の繊維は、ナイロン、エステル、レーヨン、ポリノジック、リヨセル、ビニロン等を挙げることができる。
なお、本発明におけるPK繊維の乾熱収縮率は、オーブン中で150℃、30分の乾熱処理を行ない、熱処理前後の繊維長を、1/30(cN/dtex)の荷重をかけて計測して下式により求められる値である。
乾熱収縮率(%)=(Lb−La)/Lb×100
但し、Lbは熱処理前の繊維長、Laは熱処理後の繊維長である。また、PK繊維における引張強度および引張弾性率は、JIS−L−1013に準じて測定することにより得られる値であり、引張弾性率は伸度0.1%における荷重と伸度0.2%における荷重から算出した初期弾性率の値である。
乾熱収縮率(%)=(Lb−La)/Lb×100
但し、Lbは熱処理前の繊維長、Laは熱処理後の繊維長である。また、PK繊維における引張強度および引張弾性率は、JIS−L−1013に準じて測定することにより得られる値であり、引張弾性率は伸度0.1%における荷重と伸度0.2%における荷重から算出した初期弾性率の値である。
本発明に使用し得るカーカスプライコードは、具体的には、以下に詳述するPK繊維コードが好適である。即ち、コード1本あたりの総デシテックスが1000〜20000デシテックスであるマルチフィラメント撚りのPK繊維である。1本あたりの総デシテックスが1000〜20000デシテックスの範囲内であるコードであれば、高剛性で、かつ、有機繊維のメリットであるスチールコード対比の軽量化が達成できる。総デシテックスが1000デシテックス未満ではカーカスプライとして十分な高剛性を得ることができず、一方、20000デシテックスを超えると、プライのゲージが厚くなってしまい、タイヤ質量増加やタイヤ品質の劣化を招いてしまう。
また、かかるコードの最大熱収縮応力は、一般的なディップ処理を施した加硫前のPK繊維コードの、25cmの長さ固定サンプルを5℃/分の昇温スピードで加熱して、177℃時にコードに発生する最大応力(単位:cN/dtex)である。
上記PK繊維の原料のポリケトンとしては、下記一般式(IV)、
(式中、Aは不飽和結合によって重合された不飽和化合物由来の部分であり、各繰り返し単位において同一であっても異なっていてもよい)で表される繰り返し単位から実質的になるものが好適であり、その中でも、繰り返し単位の97モル%以上が1−オキソトリメチレン[−CH2−CH2−CO−]であるポリケトンが好ましく、99モル%以上が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが更に好ましく、100モル%が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが最も好ましい。
(式中、Aは不飽和結合によって重合された不飽和化合物由来の部分であり、各繰り返し単位において同一であっても異なっていてもよい)で表される繰り返し単位から実質的になるものが好適であり、その中でも、繰り返し単位の97モル%以上が1−オキソトリメチレン[−CH2−CH2−CO−]であるポリケトンが好ましく、99モル%以上が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが更に好ましく、100モル%が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが最も好ましい。
かかるポリケトンは、部分的にケトン基同士、不飽和化合物由来の部分同士が結合していてもよいが、不飽和化合物由来の部分とケトン基とが交互に配列している部分の割合が90質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
また、上記式(IV)において、Aを形成する不飽和化合物としては、エチレンが最も好ましいが、プロピレン、ブテン、ペンテン、シクロペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、スチレン、アセチレン、アレン等のエチレン以外の不飽和炭化水素や、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、アクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ウンデセン酸、ウンデセノール、6−クロロヘキセン、N−ビニルピロリドン、スルニルホスホン酸のジエチルエステル、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルピロリドンおよび塩化ビニル等の不飽和結合を含む化合物等であってもよい。
さらに、上記ポリケトンの重合度としては、下記式(V)、
(上記式中、tおよびTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールおよび該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間であり、cは、上記希釈溶液100mL中の溶質の質量(g)である)で定義される極限粘度[η]が、1〜20dL/gの範囲内にあることが好ましく、3〜8dL/gの範囲内にあることがより一層好ましい。極限粘度が1dL/g未満では、分子量が小さ過ぎて、高強度のポリケトン繊維コードを得ることが難しくなる上、紡糸時、乾燥時および延伸時に毛羽や糸切れ等の工程上のトラブルが多発することがあり、一方、極限粘度が20dL/gを超えると、ポリマーの合成に時間およびコストがかかる上、ポリマーを均一に溶解させることが難しくなり、紡糸性および物性に悪影響が出ることがある。
(上記式中、tおよびTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールおよび該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間であり、cは、上記希釈溶液100mL中の溶質の質量(g)である)で定義される極限粘度[η]が、1〜20dL/gの範囲内にあることが好ましく、3〜8dL/gの範囲内にあることがより一層好ましい。極限粘度が1dL/g未満では、分子量が小さ過ぎて、高強度のポリケトン繊維コードを得ることが難しくなる上、紡糸時、乾燥時および延伸時に毛羽や糸切れ等の工程上のトラブルが多発することがあり、一方、極限粘度が20dL/gを超えると、ポリマーの合成に時間およびコストがかかる上、ポリマーを均一に溶解させることが難しくなり、紡糸性および物性に悪影響が出ることがある。
さらにまた、PK繊維は、結晶化度が50〜90%、結晶配向度が95%以上の結晶構造を有することが好ましい。結晶化度が50%未満の場合、繊維の構造形成が不十分であって十分な強度が得られないばかりか加熱時の収縮特性や寸法安定性も不安定となるおそれがある。このため、結晶化度としては50〜90%が好ましく、より好ましくは60〜85%である。
上記ポリケトンの繊維化方法としては、(1)未延伸糸の紡糸を行った後、多段熱延伸を行い、該多段熱延伸の最終延伸工程で特定の温度および倍率で延伸する方法や、(2)未延伸糸の紡糸を行った後、熱延伸を行い、該熱延伸終了後の繊維に高い張力をかけたまま急冷却する方法が好ましい。上記(1)または(2)の方法でポリケトンの繊維化を行うことで、上記ポリケトン繊維コードの作製に好適な所望のフィラメントを得ることができる。
ここで、上記ポリケトンの未延伸糸の紡糸方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、特開平2−112413号、特開平4−228613号、特表平4−505344号に記載されているようなヘキサフルオロイソプロパノールやm−クレゾール等の有機溶剤を用いる湿式紡糸法、国際公開第99/18143号、国際公開第00/09611号、特開2001−164422号、特開2004−218189号、特開2004−285221号に記載されているような亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液を用いる湿式紡糸法が挙げられ、これらの中でも、上記塩の水溶液を用いる湿式紡糸法が好ましい。
例えば、有機溶剤を用いる湿式紡糸法では、ポリケトンポリマーをヘキサフルオロイソプロパノールやm−クレゾール等に0.25〜20質量%の濃度で溶解させ、紡糸ノズルより押し出して繊維化し、次いでトルエン、エタノール、イソプロパノール、n−ヘキサン、イソオクタン、アセトン、メチルエチルケトン等の非溶剤浴中で溶剤を除去、洗浄してポリケトンの未延伸糸を得ることができる。
一方、水溶液を用いる湿式紡糸法では、例えば、亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液に、ポリケトンポリマーを2〜30質量%の濃度で溶解させ、50〜130℃で紡糸ノズルから凝固浴に押し出してゲル紡糸を行い、さらに脱塩、乾燥等してポリケトンの未延伸を得ることができる。ここで、ポリケトンポリマーを溶解させる水溶液には、ハロゲン化亜鉛と、ハロゲン化アルカリ金属塩またはハロゲン化アルカリ土類金属塩とを混合して用いることが好ましく、凝固浴には、水、金属塩の水溶液、アセトン、メタノール等の有機溶媒等を用いることができる。
また、得られた未延伸糸の延伸法としては、未延伸糸を該未延伸糸のガラス転移温度よりも高い温度に加熱して引き伸ばす熱延伸法が好ましく、さらに、かかる未延伸糸の延伸は、上記(2)の方法では一段で行ってもよいが、多段で行うことが好ましい。熱延伸の方法としては、特に制限はなく、例えば、加熱ロール上や加熱プレート上に糸を走行させる方法等を採用することができる。ここで、熱延伸温度は、110℃〜(ポリケトンの融点)の範囲内が好ましく、総延伸倍率は、好適には10倍以上とする。
上記(1)の方法でポリケトンの繊維化を行う場合、上記多段熱延伸の最終延伸工程における温度は、110℃〜(最終延伸工程の一段前の延伸工程の延伸温度−3℃)の範囲が好ましく、また、多段熱延伸の最終延伸工程における延伸倍率は、1.01〜1.5倍の範囲が好ましい。一方、上記(2)の方法でポリケトンの繊維化を行う場合、熱延伸終了後の繊維にかける張力は、0.5〜4cN/dtexの範囲が好ましく、また、急冷却における冷却速度は、30℃/秒以上であることが好ましく、更に、急冷却における冷却終了温度は、50℃以下であることが好ましい。熱延伸されたポリケトン繊維の急冷却方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、ロールを用いた冷却方法が好ましい。なお、こうして得られるポリケトン繊維は、弾性歪みの残留は大きいため、通常、緩和熱処理を施し、熱延伸後の繊維長よりも繊維長を短くすることが好ましい。ここで、緩和熱処理の温度は、50〜100℃の範囲が好ましく、また、緩和倍率は、0.980〜0.999倍の範囲が好ましい。
また、PK繊維コードの高い熱収縮特性を最も効果的に活用するには、加工時の処理温度や使用時の成型品の温度が、最大熱収縮応力を示す温度(最大熱収縮温度)と近い温度であることが望ましい。具体的には、必要に応じて行われる接着剤処理におけるRFL処理温度や加硫温度等の加工温度が100〜250℃であること、また、繰り返し使用や高速回転によってタイヤ材料が発熱した際の温度は100〜200℃にもなることなどから、最大熱収縮温度は、好ましくは100〜250℃の範囲内、より好ましくは150〜240℃範囲内である。
本発明に係るカーカスプライコードを被覆するコーティングゴムは、種々の形状からなることができる。代表的には、被膜、シート等である。また、コーティングゴムは、既知のゴム組成物を適宜採用することができ、特に制限されるべきものではない。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
(PK繊維の調製例)
常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度5.3のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、ポリマー濃度8重量%のドープを得た。
(PK繊維の調製例)
常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度5.3のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、ポリマー濃度8重量%のドープを得た。
このドープを80℃に加温し、20μm焼結フィルターでろ過した後に、80℃に保温した紡口径0.10mmφ、50ホールの紡口より10mmのエアーギャップを通した後に5重量%の塩化亜鉛を含有する18℃の水中に吐出量2.5cc/分の速度で押出し、速度3.2m/分で引きながら凝固糸条とした。
引き続き凝固糸条を濃度2重量%、温度25℃の硫酸水溶液で洗浄し、さらに30℃の水で洗浄した後に、速度3.2m/分で凝固糸を巻取った。
この凝固糸にIRGANOX1098(Ciba Specialty Chemicals社製)、IRGANOX1076(Ciba Specialty Chemicals社製)をそれぞれ0.05重量%ずつ(対ポリケトンポリマー)含浸せしめた後に、該凝固糸を240℃にて乾燥後、仕上剤を付与して未延伸糸を得た。
この凝固糸にIRGANOX1098(Ciba Specialty Chemicals社製)、IRGANOX1076(Ciba Specialty Chemicals社製)をそれぞれ0.05重量%ずつ(対ポリケトンポリマー)含浸せしめた後に、該凝固糸を240℃にて乾燥後、仕上剤を付与して未延伸糸を得た。
仕上剤は以下の組成のものを用いた。
オレイン酸ラウリルエステル/ビスオキシエチルビスフェノールA/ポリエーテル(プロピレンオキシド/エチレンオキシド=35/65:分子量20000)/ポリエチレンオキシド10モル付加オレイルエーテル/ポリエチレンオキシド10モル付加ひまし油エーテル/ステアリルスルホン酸ナトリウム/ジオクチルリン酸ナトリウム=30/30/10/5/23/1/1(重量%比)。
オレイン酸ラウリルエステル/ビスオキシエチルビスフェノールA/ポリエーテル(プロピレンオキシド/エチレンオキシド=35/65:分子量20000)/ポリエチレンオキシド10モル付加オレイルエーテル/ポリエチレンオキシド10モル付加ひまし油エーテル/ステアリルスルホン酸ナトリウム/ジオクチルリン酸ナトリウム=30/30/10/5/23/1/1(重量%比)。
得られた未延伸糸を1段目を240℃で、引き続き258℃で2段目、268℃で3段目、272℃で4段目の延伸を行った後に、引き続き5段目に200℃で1.08倍(延伸張力1.8cN/dtex)の5段延伸を行い、巻取機にて巻取った。未延伸糸から5段延伸糸までの全延伸倍率は17.1倍であった。この繊維原糸は強度15.6cN/dtex、伸度4.2%、弾性率347cN/dtexと高物性を有していた。
(実施例1〜10、比較例1〜3)
タイヤサイズが225/60R17のタイヤを下記の表1および表2に示す仕様により試作し、下記試験方法による、ランフラット耐久性および乗り心地の実車評価を実施した。
タイヤサイズが225/60R17のタイヤを下記の表1および表2に示す仕様により試作し、下記試験方法による、ランフラット耐久性および乗り心地の実車評価を実施した。
(ランフラット耐久性)
試供タイヤを、リム(17×7JJ)、内圧0kgf/cm2の状態でFR車の右前輪に装着して速度80km/hで走行させ、該タイヤが破壊するまでの走行距離(km)で比較し、実施例10のタイヤを100として指数にて表示した。数値が大なる程、結果が良好である。なお、走行時の該タイヤへの負荷荷重は525kgであった。
(乗り心地性)
各試作タイヤを乗用車に装着し、専門のドライバー2名により乗心地性のフィーリングテストを行い、1〜10の評点をつけ、その平均値を求めた。
試供タイヤを、リム(17×7JJ)、内圧0kgf/cm2の状態でFR車の右前輪に装着して速度80km/hで走行させ、該タイヤが破壊するまでの走行距離(km)で比較し、実施例10のタイヤを100として指数にて表示した。数値が大なる程、結果が良好である。なお、走行時の該タイヤへの負荷荷重は525kgであった。
(乗り心地性)
各試作タイヤを乗用車に装着し、専門のドライバー2名により乗心地性のフィーリングテストを行い、1〜10の評点をつけ、その平均値を求めた。
1 ビードコア
2 カーカスプライ
3 ベルト
4 トレッド部
5 ビードフィラー
6 サイド補強ゴム層
7 ベルト保護層
2 カーカスプライ
3 ベルト
4 トレッド部
5 ビードフィラー
6 サイド補強ゴム層
7 ベルト保護層
Claims (4)
- 左右一対のビード部に設けられたビードコアと、クラウン部から両サイド部を経て両ビード部に延び、該ビードコアに巻回されてビード部に係留された、ラジアルコード層よりなるカーカスプライと、該カーカスプライのクラウン部ラジアル方向外側に配置されたベルトおよびトレッドとを備えた空気入りランフラットラジアルタイヤにおいて、
前記カーカスプライの内面に沿って、両サイド部の全域またはほぼ全域にわたり、子午断面が三日月状のサイド補強ゴム層を備え、
前記カーカスプライが内層側カーカスプライ層と外層側カーカスプライ層とからなる2枚積層プライ構造であり、かつ各カーカスプライ層において、タイヤ周上での該カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの箇所が2箇所以内であり、
かつ、内層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置と外層側カーカスプライ層のコード重ね合せジョイントの位置とが、タイヤ周方向で50mm以上の間隔を持ち、
前記ジョイントの位置のいずれにおいても、4本以上カーカスプライのコードが上下に重なることがないことを特徴とする空気入りランフラットラジアルタイヤ。 - 前記カーカスプライのコードが、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%以上含み、該コードの最大熱収縮応力が0.1〜1.8cN/dtexの範囲にあり、かつ該ポリケトン繊維の150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が1%〜5%の範囲にある請求項1記載の空気入りランフラットラジアルタイヤ。
- 前記ポリケトン繊維において、原糸の引っ張り強度が10cN/dtex以上で、かつ弾性率が200cN/dtex以上である請求項2記載の空気入りランフラットラジアルタイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006200079A JP2008024189A (ja) | 2006-07-21 | 2006-07-21 | 空気入りランフラットラジアルタイヤ |
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JP (1) | JP2008024189A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011063071A (ja) * | 2009-09-15 | 2011-03-31 | Bridgestone Corp | ランフラットタイヤ |
CN107415591A (zh) * | 2017-05-08 | 2017-12-01 | 安徽佳通乘用子午线轮胎有限公司 | 一种提升耐久力性能的充气子午线轮胎 |
-
2006
- 2006-07-21 JP JP2006200079A patent/JP2008024189A/ja not_active Withdrawn
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