JP4440561B2 - 織物の製造方法及び繊維強化樹脂の製造方法 - Google Patents

織物の製造方法及び繊維強化樹脂の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、織物の製造方法及び繊維強化樹脂の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
繊維強化樹脂用(FRP用)の織物として、薄く、且つ、経糸と緯糸とによって形成される所謂目が可及的に小さい織物が要望されている。このような織物は、経糸や緯糸を開繊する(経糸や緯糸を構成している極細繊維をばらけさせる)ことで製造できる。
【0003】
この開繊された織物は、経糸と緯糸とを織成して織物にしてから開繊処理を施す方法か、経糸や緯糸に開繊処理を施し、この開繊処理が施された偏平な経糸と緯糸とを織成して開繊された織物を形成する方法のいずれかの方法で製造されている。前者の方法にも後者の方法にも、夫々メリットがあり、用途に応じて適宜選択される。
【0004】
ところで、後者の方法として、特許第2836457号公報に開示された方法がある(以下、従来例という)。
【0005】
この従来例は、偏平処理の施された偏平経糸の所定本数づつを昇降させ、一方、ボビンから引き出した緯糸にテンション装置で所定のテンション(張力)を加えつつ偏平処理を施すことで該緯糸を偏平緯糸とし、この偏平緯糸をレピアと呼ばれる緯糸保持体に保持し、該緯糸保持体を前記偏平経糸の昇降により形成される空隙に導出入することで該偏平緯糸を該空隙に導出入し、これらを繰り返すことで、薄く且つ目が可及的に小さい織物を製造する技術である。
【0006】
本発明は、この従来例では緯糸に作用するテンションが該緯糸の偏平化に限界を与えてしまうことを見い出し、今までの方法では達成できない程の薄く且つ目が可及的に小さい織物を製造する方法を確立して発明として完成したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
所定本数づつの経糸1を昇降させ、一方、緯糸2を緯糸保持体6に保持し、前記経糸1の昇降により生じた上下の経糸1間の空隙5に前記緯糸保持体6を導出入することで該空隙5に前記緯糸2を導入し、これらを繰り返して経糸1と緯糸2とから成る織物4を織成する方法であって、前記緯糸2を前記空隙5に導入する直前に、この緯糸2にテンション装置などにより積極的にテンションをかけない状態で、この緯糸2の通過経路に設けられる上下二枚の板体8a・8bで形成された緯糸通過間隙7を通過させて偏平緯糸3とし、この偏平緯糸3を前記緯糸保持体6に設けられた前記偏平緯糸3を挟持して該偏平緯糸3の偏平状態を保持する偏平保持機構により保持該扁平状態を保持せしめた状態で前記緯糸保持体6を前記空隙5に導入することを特徴とする織物の製造方法に係るものである。
【0009】
また、請求項記載の織物の製造方法において、前記緯糸2に偏平処理を施す前に該緯糸2をローラ9に押し付ける予備偏平処理を施すことを特徴とする織物の製造方法に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の織物の製造方法において、二本の前記経糸1と二本の前記偏平緯糸3とが交叉する綾織りを採用したことを特徴とする織物の製造方法に係るものである。
【0011】
また、請求項1〜いずれか1項に記載の織物の製造方法において、前記経糸1として、偏平処理の施された偏平経糸1を採用したことを特徴とする織物の製造方法に係るものである。
【0012】
また、請求項1〜いずれか1項に記載の織物の製造方法において、前記経糸1及び前記緯糸2として、極細繊維を収束したものを採用したことを特徴とする織物の製造方法に係るものである。
【0013】
また、請求項1〜いずれか1項に記載の織物の製造方法により製造した織物4を用いて繊維強化樹脂を製造することを特徴とする繊維強化樹脂の製造方法に係るものである。
【0014】
【発明の作用及び効果】
緯糸2にテンション装置などにより積極的にテンションをかけない状態で偏平処理を施して偏平緯糸3とするから、この緯糸2を構成する繊維がばらけることがテンション(張力)によって阻害されることは可及的に阻止され、よって、緯糸2の偏平化が、テンション装置などにより積極的にテンションをかけた場合に比し、良好に達成される。
【0015】
この偏平緯糸3の偏平状態を緯糸保持体6で保持して経糸1の昇降により生じた上下の経糸1間の空隙5に導出入するから、偏平緯糸3は良好な偏平状態のまま該空隙5に導入されることになり、それだけ偏平な織物4を製造することができる。
【0016】
また、前記偏平処理は、緯糸2、実際には偏平緯糸3を緯糸保持体6に保持する直前に行うから、この偏平緯糸3の偏平状態は緯糸保持体6によって迅速に保持されることになり、よって、偏平緯糸3の偏平状態は元に戻ったりせず、この点からも極めて偏平な織物4を製造することができる。
【0017】
本発明は上述のようにするから、極めて薄く且つ経糸と緯糸とによって形成される所謂目が可及的に小さい偏平な織物を製造することができる。
【0018】
また、この偏平な織物を用いて良好な繊維強化樹脂を製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図面は本発明の一実施例を図示したものであり、以下に説明する。
【0020】
本実施例は、所定本数づつの経糸1を昇降させ、一方、緯糸2を緯糸保持体6に保持し、前記経糸1の昇降により生じた上下の経糸1間の空隙5に前記緯糸保持体6を導出入することで該空隙5に前記緯糸2を導入し、これらを繰り返して経糸1と緯糸2とから成る織物4を織成する方法であって、前記緯糸2を前記空隙5に導入する直前に該緯糸2に該緯糸2を前記空隙5に導入する際に必然的にかかるテンション以外にテンションをかけない状態で偏平処理を施して偏平緯糸3とし、この偏平緯糸3を該偏平状態を保持せしめた状態で前記緯糸保持体6に保持させて該緯糸保持体6を該空隙5に導出入することで、極めて薄く且つ偏平な繊維強化樹脂用の織物4を製造する方法である。
【0021】
経糸1及び緯糸2は、極細繊維を収束したもの(偏平になり易い、即ち、開繊され易いという観点から、撚りのないものが良い。)を夫々採用する。
【0022】
極細繊維は、炭素繊維やガラス繊維等の繊維強化樹脂に使用されるものを用途に応じて適宜選択して採用する。
【0023】
また、経糸1は、偏平処理(開繊処理)の施された偏平経糸1を採用する。
【0024】
所定本数づつの経糸1の昇降は、織物を織成する為の一般的な織機と同様であり、本実施例の場合は、二本の綜絖体22の昇降により行われる。この二本の綜絖体22は、一方の綜絖体22が上昇した際に他方の綜絖体22が降下するという作動を繰り返す。
【0025】
図中符号21はバックロール、23はイージングロール、24は筬、27は経糸整経玉、32は布受ロール、33はニップロール、36は筺体、38は複巻ロール、48は巻き取りロールである。
【0026】
経糸1の昇降により生じた上下の経糸1間の空隙5、具体的には、上下の経糸1と織物4と前記筬24とによって囲まれた空間部Aには、レピアと呼ばれる公知の緯糸保持体6が導出入される。尚、緯糸保持体6の構成については後述する。
【0027】
緯糸2は、ボビン25に巻回され、ボビン25から一対の第一ガイドロール43間及び複数の第二ガイドロール44を介して繰り出しロール45によって引き出され、緯糸2がテンションフリー状態で貯留される貯留部26に導入される。
【0028】
この貯留部26は、図7に図示したように、対向する回転体49間に帯体50を懸環し、この帯体50の上面に緯糸2を、該帯体50の表側から裏側へ、裏側から表側へと連続して掛け渡すことで、緯糸2をテンションフリー状態とする例えば特開平6−116837号に開示されたものであり、緯糸2は該貯留部26から導出される。尚、図中符号51は基体である。
【0029】
また、本実施例は、前記複数の第二ガイドロール44を夫々適宜移動させて緯糸2の引き出し量を制御できるように構成されており、緯糸2の引き出し量を調整して貯留部26に貯まる緯糸2の量を制御できるように設定されている。
【0030】
また、本実施例は、ボビン25からの緯糸2の引き出し速度を確知する糸貯留センサ35が設けられており、この糸貯留センサ35で確知された緯糸2の引き出し速度に応じて繰り出しロール45の回転速度が制御されるように構成されている。
【0031】
貯留部26に貯留する緯糸2は、噴出ノズル34により噴出されて導出される。導出された緯糸2は前記繰り出しロール45,ガイドロール46及びガイド用スリット28を通じて複数のローラ9が上下方向に交互に設けられた予備偏平処理部31に導入される。
【0032】
この予備偏平処理部31では、前記緯糸2が前記複数のローラ9に押し付けられることで予備偏平処理が施される。この予備偏平処理により、前記緯糸2を一層偏平度合いの高い偏平緯糸3とすることができる。
【0033】
予備偏平処理が施された緯糸2は、緯糸保持体6に保持される直前の位置で次に説明する偏平処理が施されることにより偏平緯糸3となり、この偏平緯糸3が直ちに緯糸保持体6に保持されて前記空隙5に導出入される。
【0034】
尚、図中符号47はガイドロールである。
【0035】
この偏平処理について詳述する。
【0036】
偏平処理は、緯糸2が通過する経路に緯糸通過間隙7を設け、この緯糸通過間隙7を緯糸2が通過することで該緯糸2を構成する極細繊維がばらけ、該緯糸2が偏平となる偏平処理を採用している(図3参照)。
【0037】
この緯糸通過間隙7は、上下二枚の板体8a・8b間に形成されている。即ち、この上下二枚の板体8a・8b間の隙間(緯糸通過間隙7)を緯糸2が通過することで該緯糸2が偏平となるように構成されている。
【0038】
この上下二枚の板体8a・8bにして緯糸2の進行方向前後両端部には、該上下二枚の板体8a・8b間の緯糸通過間隙7に緯糸2を導入し易いように、端部側程間隔が拡がる形状の広がり部29が設けられている。
【0039】
また、緯糸通過間隙7は、緯糸2の進行方向に二か所設けられている。この二か所の緯糸通過間隙7により、緯糸2は段階的に偏平とされる。この段階的な偏平処理により、緯糸2を極めて偏平度合いの高い偏平緯糸3にすることができる。
【0040】
緯糸通過間隙7にして緯糸2の進行方向前後位置には、緯糸2及び偏平緯糸3の移動をガイドするガイド部30が設けられている。
【0041】
上述の偏平処理を施された偏平緯糸3は、綜絖体22によって昇降される前記経糸1近傍に設けられた緯糸供給体41に保持される。
【0042】
具体的には、図6に図示したように緯糸供給体41は断面視略四角形の筒状体であって、前記経糸1の一側に設けられており、上下両面に前記偏平緯糸3を挿通する挿通孔39が設けられ、更に、内部に偏平な押し板40を設けた構成である。
【0043】
即ち、この緯糸供給体41において、前記偏平緯糸3は前記上方の挿通孔39から挿通され、偏平な押し板40により押し付けられることで偏平状態が崩れず(偏平緯糸3の偏平状態を保持する偏平保持機構)、そのまま下方の挿通孔39から導出されることになる。尚、図中符号42は、偏平緯糸3を前記挿通孔39に挿通するためのガイドである。
【0044】
この緯糸供給体41に保持された前記偏平緯糸3は、該緯糸供給体41と経糸1とを挟んで反対側から前記上下の経糸1と織物4と前記筬24とによって囲まれた空間部Aに導出入される前記緯糸保持体6により係止され、該偏平緯糸3は前記空間部Aに導入される。尚、図6中の符号Y部は爪37が係止される部位であり、爪37により該部位が紙面表方向へ引動される。
【0045】
この緯糸保持体6は、一般的なレピアであり具体的には、図5に図示したような先端部に偏平緯糸3に係止される爪37が設けられた棒状体である。この緯糸保持体6は、前記緯糸供給体41内部に導入され、該緯糸供給体41に保持された前記偏平緯糸3を偏平状態を保持したまま係止し、該偏平緯糸3をこの緯糸供給体41から導出し、前記空間部Aに導入するように構成されている。
【0046】
緯糸保持体6の爪37は、一方側へ移動する際には前記偏平緯糸3を係止して該偏平緯糸3を搬送するように構成され、他方側へ移動する際には偏平緯糸3の係止を解除して移動する。
【0047】
具体的には、前記緯糸供給体41から導出する方向(図2中左方向)へ移動する際には前記偏平緯糸3を係止して搬送し、緯糸供給体41に導入される方向(図2中右方向)に移動する際には偏平緯糸3の係止を解除して移動する。
【0048】
この空間部Aに偏平緯糸3が導入された状態において、綜絖体22の作動により、上昇していた経糸1が降下し且つ降下していた経糸1が上昇し、これにより前記空間部Aに配設されていた緯糸2が上下の経糸1によって挟持され、この繰り返しにより織物4が織成されていく。
【0049】
特に、この織物4を、二本の経糸1と二本の偏平緯糸3とが交叉する綾織りで織成した場合には、極めて良好なドレープ性を発揮できる。
【0050】
本実施例は、上述のようにしたから、緯糸2にテンション装置などにより積極的にテンションをかけない状態で偏平処理を施して偏平緯糸3とするから、この緯糸2を構成する繊維がばらけることがテンション(張力)によって阻害されることは可及的に阻止され、よって、緯糸2の偏平化が、テンション装置などにより積極的にテンションをかけた場合に比し、良好に達成される。
【0051】
この偏平緯糸3の偏平状態を緯糸保持体6で保持して経糸1の昇降により生じた上下の経糸1間の空隙5に導出入するから、偏平緯糸3は良好な偏平状態のまま該空隙5に導入されることになり、それだけ偏平な織物4を製造することができる。
【0052】
また、前記偏平処理は、緯糸2、実際には偏平緯糸3を緯糸保持体6に保持する直前に行うから、この偏平緯糸3の偏平状態は緯糸保持体6によって迅速に保持されることになり、よって、偏平緯糸3の偏平状態は元に戻ったりせず、この点からも極めて偏平な織物4を製造することができる。
【0053】
更に、経糸1及び緯糸2として(偏平になり易い)極細繊維を収束したものを夫々採用しているから、一層良好に偏平化を図ることができる。
【0054】
しかも、緯糸3に予備偏平処理を施した上で緯糸通過間隙7を通過させることで偏平化させるから、この点からもより一層良好な偏平化を図ることができる。
【0055】
従って、本実施例は、極めて薄く且つ経糸と緯糸とによって形成される所謂目が可及的に小さい偏平な織物を製造することができる。
【0056】
また、この偏平な織物を用いて良好な繊維強化樹脂を製造することができる。
【0057】
本実施例により製造した織布が従来品に比し、極めて薄くなっていることは実験により確認済みである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例の概略説明図である。
【図2】 本実施例の概略説明図である。
【図3】 本実施例の拡大説明斜視図である。
【図4】 本実施例の説明側面図である。
【図5】 本実施例の緯糸保持体6(爪37が視認できるように一部切り欠いて図示)及び緯糸供給体41の説明側面図である。
【図6】 本実施例の緯糸供給体41の説明断面図である。
【図7】 本実施例の貯留部26の概略説明図である。
【符号の説明】
1 経糸,偏平経糸
2 緯糸
3 偏平緯糸
4 織物
5 空隙
6 緯糸保持体
7 緯糸通過間隙
8a・8b 板体
9 ローラ

Claims (6)

  1. 所定本数づつの経糸を昇降させ、一方、緯糸を緯糸保持体に保持し、前記経糸の昇降により生じた上下の経糸間の空隙に前記緯糸保持体を導出入することで該空隙に前記緯糸を導入し、これらを繰り返して経糸と緯糸とから成る織物を織成する方法であって、前記緯糸を前記空隙に導入する直前に、この緯糸にテンション装置などにより積極的にテンションをかけない状態で、この緯糸の通過経路に設けられる上下二枚の板体で形成された緯糸通過間隙を通過させて偏平緯糸とし、この偏平緯糸を前記緯糸保持体に設けられた前記偏平緯糸を挟持して該偏平緯糸の偏平状態を保持する偏平保持機構により保持該扁平状態を保持せしめた状態で前記緯糸保持体を前記空隙に導入することを特徴とする織物の製造方法。
  2. 請求項記載の織物の製造方法において、前記緯糸に偏平処理を施す前に該緯糸をローラに押し付ける予備偏平処理を施すことを特徴とする織物の製造方法。
  3. 請求項1,2いずれか1項に記載の織物の製造方法において、二本の前記経糸と二本の前記偏平緯糸とが交叉する綾織りを採用したことを特徴とする織物の製造方法。
  4. 請求項1〜いずれか1項に記載の織物の製造方法において、前記経糸として、偏平処理の施された偏平経糸を採用したことを特徴とする織物の製造方法。
  5. 請求項1〜いずれか1項に記載の織物の製造方法において、前記経糸及び前記緯糸として、極細繊維を収束したものを採用したことを特徴とする織物の製造方法。
  6. 請求項1〜いずれか1項に記載の織物の製造方法により製造した織物を用いて繊維強化樹脂を製造することを特徴とする繊維強化樹脂の製造方法。
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