JP4440389B2 - 薄膜太陽電池モジュールの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に複数の単位素子が形成された集積化薄膜太陽電池モジュールの製造方法に関し、第2電極を部分的に除去して複数の単位素子に分割する工程で発生する欠陥の除去および半導体層と第2電極との接触界面を改善することにより高効率の集積化薄膜太陽電池の実現に寄与するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、太陽光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換する太陽電池が本格的に普及し始めている。すでに、単結晶シリコンや多結晶シリコン等を用いた結晶系太陽電池は、屋外の電力用太陽電池として実用化されている。これに対して、非晶質シリコン等を用いた薄膜太陽電池は、原材料が少なくて済むために低コスト太陽電池として注目されているが、総じてまだ開発段階にある。薄膜太陽電池については、すでに普及している電卓等の民生機器の電源用途での実績をもとに、屋外用途へと発展させるために研究開発が進められている。
【0003】
薄膜太陽電池は、従来の薄膜デバイスと同様に、CVDやスパッタリングなどを用いた薄膜の堆積とパターニングを繰り返して、所望の構造を構築する。通常は一枚の基板上に複数の単位素子が直列に接続された集積化構造が採用される。屋外用途のための電力用太陽電池では、その基板サイズは例えば400×800(mm)を超える大面積となる。
【0004】
図1は薄膜太陽電池の構造を示す断面図である。図2は薄膜太陽電池を概略的に示す平面図である。ガラス基板1上に、第1電極層2、アモルフアスシリコン等からなる半導体層4、および第2電極層6が順次積層されている。これらの各層は複数の単位素子11に対応するように分割されている。第2電極層6と第1電極層2とは、半導体層4に設けられた接続用開口部(スクライブライン)5を通して接続され、互いに隣り合う単位素子11が直列に接続されている。
【0005】
第1電極層5としては、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム錫(ITO)等の透明導電性酸化物が用いられる。第2電極層13としては、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、クロム(Cr)等の金属膜が用いられる。
【0006】
このような集積化薄膜太陽電池は、以下のような方法で作製される。ガラス基板1に、第1電極層2として、SnO2、ZnO、ITO等の透明導電性酸化物を堆積する。第1電極層2をスクライブライン3の位置でレーザースクライブして、複数の単位素子(発電領域)に対応させて分離する。レーザースクライブにより発生した溶断残滓を除去するために洗浄する。第1電極層2上に、プラズマCVD法により、pin接合溝造を有する非晶質シリコンからなる半導体層4を堆積する。この半導体層4の一部を、第1電極層2のスクライブライン3から数十μm〜百数十μm離れたスクライブライン5の位置でレーザースクライブする。このスクライブライン5は第2電極層と第1電極層との接続用開口部となる。半導体層4上に、第2電極層6として、Al、Ag、Cr等の金属膜を単層または複層に堆積する。第2電極層6の一部を、半導体層4のスクライブライン5から数十μm〜百数十μm離れたスクライブライン7の位置でレーザースクライブする。この際、スクライブライン7の位置では、第2電極層6とその下の半導体層4が同時に除去される。このようにして、複数の単位素子が直列に接続されて集積化された薄膜太陽電池セルが完成する。
【0007】
この薄膜太陽電池セルの裏面に、例えばEVA等の熱硬化性樹脂からなる充填材、およびフッ素樹脂(たとえば、デュポン社製テドラー)などからなる保護フィルムを積層し、真空ラミネート法等で封止する。その後、薄膜太陽電池セルの周囲にフレーム等をつけることで薄膜太陽電池モジュールが完成する。
【0008】
ところで、従来の集積化薄膜太陽電池は、その出力特性のうち特に曲線因子 (FF値)が低いことが課題になっていた。集積化薄膜太陽電池の製造においては、特性の向上のために、第1および第2の電極層2、6の膜厚や、半導体層4の膜質等、プロセス条件の最適化が図られる。ところが、基板が大面積になると、プロセス条件を最適化するための実験が煩雑となる。そこで、先行実験として簡易プロセスで小面積の薄膜太陽電池を作製して特性を評価し、最適なプロセス条件を決定し、得られた最適条件を大面積の薄膜太陽電池の製造工程に適用する。
【0009】
しかし、小面積の薄膜太陽電池の製造に最適なプロセス条件を、そのまま大面積の薄膜太陽電池の製造プロセスに適用したとしても、先行実験どおりの良好な結果が得られずにFF値が低下することが多い。従って、大面積の集積化薄膜太陽電池においては、変換効率の向上のために、上述したFF値の改善が必要不可欠かつ急務となっている。
【0010】
本発明者が検討した結果、薄膜太陽電池のFF値の低下には、2つの原因が考えられる。第1の原因は、半導体層4と第2電極層6との界面が劣悪であることである。この原因に対しては、特開平9−8337に開示されているように、半導体層上に導電体層を形成して、半導体層のスクライブ後の洗浄工程における自然酸化膜の形成を防止することで解決できる。第2の原因は、第2電極層の一部をスクライブする際に同時に除去される半導体層の部分において短絡または導通が生じることである。すなわち、第2電極層のスクライブラインの位置では、第2電極層と第1電極層との間に半導体の新規な表面が現れた状態になっている。半導体の新規表面は不安定であるため、僅かの不純物が付着しても電気抵抗が下がり、第2電極層と第1電極層との短絡または導通の原因となる。
【0011】
そこで、本発明者は、第2の原因による問題を解決するために、公知の方法を適用することを検討した。しかし、以下に示すように、これらの方法では問題を解決することが困難であることが判明した。
【0012】
例えば、特開昭61−198685号は、酸化性雰囲気中でレーザビームを照射することにより半導体層をスクライブして分離することを開示している。本発明者は、この方法を第2電極層のスクライブに応用して半導体層の露出面を酸化することを検討した。しかし、大面積の基板を酸化性雰囲気中に保持することは困難である。しかも、レーザビームを照射した際に高熱が局所的に発生して発火するおそれがあり危険ですらある。
【0013】
同様な技術として、特開昭61−156775号には、基板上に金属電極、半導体層、透明電極が積層された構造のアモルファス太陽電池を加熱水蒸気雰囲気でレーザーにより加工して分離し、分離後に150〜300℃の温度で加熱処理することを開示している。この方法では、非晶質半導体層の結晶化を防止するために、レーザーにより加工時に加熱水蒸気を吹き付けている。しかし、この方法では、基板が加熱されて膨張するので、レーザーによる加工精度が著しく低下することが判明した。また、気体を吹き付けても加工部分の残滓を除去するのは困難であり、高速加工においては特に困難になる。この場合、加工面を完全に完全に露出させることができなくなる。
【0014】
また、特開昭61−280679は、第1電極層上の、第2電極層のスクライブラインに対応する領域に、半導体層より厚い絶縁断熱層を形成する方法を開示している。この方法では、第2電極層およびその下の半導体層をスクライブした際に、半導体層の下に絶縁断熱層があるため、第1および第2の電極層の間に半導体層の断面が現れることがない。しかし、絶縁断熱層を形成するので、その分だけ発電できる素子の面積が減少する。しかも、大面積の素子に対応して精度良く絶縁断熱層を形成することは困難である。
【0015】
上記のほかに、特開昭60−85574は、第2電極のスクライビング工程において第2電極がシリコンと合金を形成するため導通が生じるという誤った認識に基づき、第2電極としてCrまたはNiを用いることを開示している。しかし、このような方法ではFF値の低下という問題を解決できないことは明らかである。
【0016】
他にFF値の低下を回復する手段として、例えば米国特許4,371,738号にはアニールする技術が開示されている。しかし、この技術は水素化アモルファスシリコンに光を照射したことにより発生した半導体内部の欠陥がアニールにより消滅するという、ステーブラー・ロンスキー効果を説明したものであり、製造時の第2電極層のスクライブに起因するFF値の低下を解決できない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、第2電極層のスクライブと同時に除去される半導体の露出面での不要な電流パスを低減して、効率の高い薄膜太陽電池モジュールを製造できる方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜太陽電池モジュールの製造方法は、基板と、基板上で直列に接続された複数の単位素子とを有し、各単位素子が基板上に積層された第1電極層、半導体層および第2電極層を含む薄膜太陽電池モジュールを製造する方法であって、基板上に形成された第1電極層の一部を除去し、複数の単位素子に対応して、第1電極層を分割する工程と、第1電極層上にシリコンを主成分とする半導体層を形成する工程と、半導体層の一部を除去し、複数の単位素子に対応して、半導体層に第1電極層との接続用開口部を設ける工程と、半導体層上に第2電極層を形成する工程と、接続用開口部の近傍において第2電極層および半導体層の一部を除去し、複数の単位素子に対応して、第2電極層および半導体層を分割する工程と、第2電極層および半導体層の残滓を除くことにより半導体層の端面を露出させる工程と、横軸を絶対温度の逆数、縦軸を時間の逆数の対数として、150℃、20分の条件に対応する点と、160℃、15分の条件に対応する点とを結ぶ直線を作成し、130℃以上の所定の熱処理温度で前記直線上の時間以上の時間にわたって、大気中で熱処理して、前の工程で露出させた半導体層の端面を酸化させる工程と順次行うことを特徴とする。
【0019】
本発明において、第1電極、半導体層、および第2電極の一部を除去するには、レーザービームを照射する。レーザービームの照射は室温付近、具体的には室温±10℃で行われる。
【0020】
【発明の実施の形態】
上述したように第2電極層のレーザースクライブ時にはその下の半導体層も除去されるため、第2電極層、半導体の新規な表面、および第1電極層が現れた部分ができる。そして、半導体の新規表面は不安定であるため、僅かの不純物が付着しても電気抵抗が下がり、この領域において短絡または導通が生じることがある。
【0021】
ところで、半導体の表面には大気などの雰囲気において自然酸化膜が生じることが知られている。この自然酸化膜の生成は活性化過程であり、加熱により急速に進行する。本発明はこのことを利用しており、第2電極層および半導体層の分割後に、130℃以上、好ましくは150℃以上の温度で熱処理することにより、半導体の新規表面を不導体化し、半導体を通しての第1−第2の電極層間の導通をなくすることができる。
【0022】
なお、本発明においては、レーザースクライブは、基板の熱膨張による加工精度の低下を避けるために、室温付近で行われるので、レーザースクライブ時に半導体の新規表面が不導体化することはない。
【0023】
本発明に係る熱処理の効果を確実に得るには、熱処理をする時点で第2電極層および半導体層のスクライブ溝において半導体層の端面を露出させる必要がある。これは、単に第2電極層および半導体層をレーザーで分割するだけでは、スクライブ溝に第2電極層および半導体層の残滓が存在して半導体層の端面を遮蔽するので、その部分に対する熱処理の効果が著しく低下するためである。したがって、熱処理前に第2電極層および半導体層の残滓を除去することが必要である。残滓を除去する方法としては、エアーの吹き付けよりも、水などの液体中での超音波洗浄や加圧水の吹き付けが有効である。
【0024】
本発明の熱処理は、例えばオーブン等を用い、大気中で実施することができる。熱処理は、たとえば150℃にて20分以上、または160℃にて15分以上行う。なお、熱処理は、130℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、半導体層の形成温度未満の任意の温度で実施できる。この熱処理は、半導体の新規表面を不導体化するのに十分な時間だけ行えばよいので、任意の温度における熱処理時間は、以下のようにして決定することができる。すなわち、横軸を絶対温度の逆数、縦軸を時間の逆数の対数として、150℃、20分の条件に対応する点と、160℃、15分の条件に対応する点とを結ぶ直線(アレニウスプロット)を作成する。この結果に基づき、熱処理時間は所定の熱処理温度における上記の直線上の時間以上の時間に決定される。
【0025】
熱処理の時期は、第2電極および半導体層を分離加工した後であれば、特に限定されない。また、熱処理は、半導体層の端面を酸化するだけの酸化剤(酸素など)が存在する環境であれば実施できる。
【0026】
したがって、本発明の熱処理工程は、太陽電池モジュールの裏面における充填材樹脂および保護フィルムをラミネートして封止する工程と同時に行ってもよい。特に、充填材がEVAである場合は、重合開始剤として過酸化物が用いられているので、真空ラミネートであっても酸化が促進される。この処理においても、熱処理時間は充填材樹脂の硬化時間ではなく、熱処理効果が十分発揮できる時間に設定する必要がある。具体的には、ファーストキュアと呼ばれるEVAは150℃、2分で硬化するが、本発明に係る熱処理は約20分以上行う必要がある。ただし、市販されているEVAを用いて、本発明に係る熱処理を長時間行うと、分解などの好ましくない現象が起こる可能性があるため、実際には封止とアニールとを別工程で行うのが好ましい。
【0027】
なお、太陽電池モジュールの製造プロセス中に、単位素子に逆バイアス電圧を印加して半導体層の欠陥を除去する工程に組み込む場合、逆バイアス処理の前に本発明の熱処理を行うことが好ましい。これは以下のような理由による。すなわち、第2電極層および半導体層のスクライブ時に発生した欠陥は、線状に発生していることが多い。逆バイアス処理は点状の欠陥を除去するには適しているが、線状の欠陥を補修することは困難である。したがって、本発明の熱処理により第2電極層および半導体層を除去した領域に生じた導通または短絡欠陥を除去した後に、逆バイアス処理を行うことが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0029】
実施例
図1に示される太陽電池モジュールを以下のようにして製造した。
【0030】
面積92cm×46cm、厚さ4mmのソーダーライムガラスからなるガラス基板1上に、熱CVD法により酸化錫膜(厚さ8000オングストローム)2を形成した。この酸化錫膜2を室温(25℃)でレーザースクライバーによりスクライブライン3の位置で分割し、複数の単位素子に対応する透明電極とした。具体的には、基板1をX−Yテーブル上にセットし、QスイッチYAGレーザーを用いて、波長532nmの第2高調波を、周波数3kHz、平均出力500nw、パルス幅10nsecの条件で照射した。分離幅(スクライブライン3の幅)を50μm、単位素子を構成するストリングの幅を約10mmに設定した。その後、レーザースクライブにより発生した溶断残滓を除去するために洗浄した。
【0031】
上記の基板1をマルチチャンバーのプラズマCVD装置に入れ、200℃でプラズマCVDを行い、パターニングされた酸化錫膜2上にa−Si層4を形成した。このa−Si層4は、p型a−SiC:H層、i型a−Si:H層、およびn型微結晶Si:H層からなり、pin接合を形成している。これらの各半導体層の製膜条件は以下の通りであった。
【0032】
p型a−SiC:H層は、SiH4を流量100sccm、水素で1000ppmに希釈されたB26を流量2000sccm、炭素合金化のためのCH4を流量30sccmで、それぞれ供給して、圧力を1torrに設定した後、200Wのパワーを投入してプラズマを発生させることにより製膜した。
【0033】
i型a−Si:H層は、SiH4を流量500sccmで供給して圧力を0.5torrに設定した後、500Wのパワーを投入してプラズマを発生させることにより製膜した。
【0034】
n型微結晶Si:H層は、SiH4を流量100sccm、水素で1000ppmに希釈されたPH3を流量2000sccmで、それぞれ供給して、圧力を1torrに設定した後、3kWのパワーを投入してプラズマを発生させることにより製膜した。
【0035】
この際、p型a−SiC:H層の厚さが150オングストローム、i型a−Si:H層の厚さが3200オングストローム、n型微結晶Si:H層が300オングストロームとなるように、製膜時間を調整した。
【0036】
基板1をプラズマCVD装置から取り出し、上記の各層からなるa−Si層4を室温(25℃)でレーザースクライバーによりパターニングした。この際、a−Si層4のスクライブライン5は酸化錫層2のスクライブラインから100μmずらした。具体的には、基板1をX−Yテーブル上にセットし、QスイッチYAGレーザーを用いて、波長532nmの第2高調波を、周波数3kHz、平均出力500nw、パルス幅10nsecの条件で照射した。なお、レーザービームの焦点位置をずらすことで分離幅を100μmに設定した。再度洗浄して溶断残滓を除いた。
【0037】
上記の基板1をスパッタリング装置に入れ、ZnOターゲットを用いてRFマグネトロンスパッタにより、パターニングされたa−Si層4上に膜厚1000オングストロームのZnO層(図示せず)を形成した。スパッタ条件は、アルゴンガス圧力2mtorr、放電パワー200W、製膜温度200℃とした。次に、Agターゲットを用い、DCマグネトロンスパッタにより、ZnO層上に膜厚2000オングストロームのAg層6を形成した。スパッタ条件は、アルゴンガス圧力2mtorr、放電パワー200W、製膜温度室温であった。
【0038】
基板1をマグネトロンスパッタ装置から取り出して、Ag層6、ZnO層およびその下のa−Si層4を室温(25℃)でレーザースクライバーによりパターニングした。この際、Ag層6のスクライブライン7はa−Si層4のスクライブライン5から100μmずらした。このときの加工条件は、a−Si層4の加工条件と同様であった。分離幅は70μm、ストリング幅は約10mmに設定した。
【0039】
なお、基板1の全周にわたって太陽電池活性部を外部と電気的に分離するために、基板1の周囲から5mm内側の領域の透明電極、半導体層および裏面電極をレーザーにより除去した。参照符号13は、この操作によって形成されたレーザー絶縁分離線を示す。また、両端にあるストリング11a,11bの外側の半導体層および裏面電極を3.5mmの幅で除去し、電極取り出し用の配線を形成するための領域14を形成した。その後、レーザースクライバーによりパターニングされた半導体層および裏面電極の残滓を除去するために、純水中で2分間超音波洗浄した。その結果、全ての加工部分で残滓が除去されているのを確認した。
【0040】
次いで、配線用の領域14に半田を付け、その上に半田メッキ銅箔からなるバスバー電極16を形成して、電極取り出しのための配線を行った。このバスバー電極16は太陽電池活性部のストリングと平行に配置されている。
【0041】
この後、本発明の方法に従い、基板をクリーンオーブンに入れ、160℃にて20分間熱処理した。
【0042】
この熱処理後、逆バイアス処理を行い、各単位素子の欠陥を除去した。さらに、それまでの処理で発生した汚れを除去するために、太陽電池モジュールを純水で洗浄した。バスバー電極16に配線を接続した。この太陽電池モジュールの裏面にEVAシート8とフッ素系樹脂からなる保護フィルム9を重ね、真空ラミネータを用いて封止した。また、配線の取り出し部にシリコーン樹脂を充填した。最後に、端子の取り付けとフレームの取り付けを行った。
【0043】
このようにして得た太陽電池モジュールについて、100mW/cm2のAM1.5ソーラーシミュレーターを用いて、電流電圧特性を測定した。その結果、短絡電流1240mA、開放電圧44.2V、曲線因子0.70、最大出力38.4Wであった。
【0044】
比較例1
本発明の熱処理の工程を行わなかった以外は上記と同様のプロセスで太陽電池モジュールを製造し、電流電圧特性を測定した。その結果、短絡電流1240mA、開放電圧42.9V、曲線因子0.67、最大出力35.6Wであった。このように、比較例1は実施例と比べて最大出力が約2W低かった。
【0045】
また、実施例のように第2電極層のスクライブ後に熱処理を行った場合、逆バイアス処理によりすべての単位素子で特性の回復がみられた。これに対して、比較例1では、逆バイアス処理を行っても半分の単位素子でリーク電流が観測された。このようにリーク電流が生じる単位素子が存在することも、開放電圧と曲線因子の低下の原因になっていると考えられる。
【0046】
比較例2
第2電極層および半導体層のレーザースクライブ後に逆バイアス処理を行い、その後に基板をクリーンオーブンに入れて160℃にて20分間熱処理して太陽電池モジュールを製造し、電流電圧特性を測定した。その結果、短絡電流1240mA、開放電圧43.2V、曲線因子0.676、最大出力36.2Wであった。このことから、逆バイアス処理後に熱処理を行った場合には、欠陥を回復することが困難であることが判明した。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の方法を用いれば、第2電極層および半導体層のレーザースクライブ後に130℃以上で熱処理を施すことにより、第2電極層と同時に除去される半導体の露出面での不要な電流パスを低減して、効率の高い薄膜太陽電池モジュールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る薄膜太陽電池モジュールの断面図。
【図2】図1に示す薄膜太陽電池モジュールの平面図。
【符号の説明】
1…ガラス基板
2…酸化錫膜
3…スクライブライン
4…a−Si層
5…スクライブライン
6…Ag層
7…スクライブライン
8…EVAシート
9…保護フィルム
11a,11b…ストリング
13…レーザー絶縁分離線
14…配線用の領域
16…バスバー電極

Claims (9)

  1. 基板と、基板上で直列に接続された複数の単位素子とを有し、各単位素子が基板上に積層された第1電極層、半導体層および第2電極層を含む薄膜太陽電池モジュールを製造する方法であって、
    基板上に形成された第1電極層の一部を除去し、複数の単位素子に対応して、第1電極層を分割する工程と、
    第1電極層上にシリコンを主成分とする半導体層を形成する工程と、
    半導体層の一部を除去し、複数の単位素子に対応して、半導体層に第1電極層との接続用開口部を設ける工程と、
    半導体層上に第2電極層を形成する工程と、
    接続用開口部の近傍において第2電極層および半導体層の一部を除去し、複数の単位素子に対応して、第2電極層および半導体層を分割する工程と、
    第2電極層および半導体層の残滓を除くことにより半導体層の端面を露出させる工程と、
    横軸を絶対温度の逆数、縦軸を時間の逆数の対数として、150℃、20分の条件に対応する点と、160℃、15分の条件に対応する点とを結ぶ直線を作成し、130℃以上の所定の熱処理温度で前記直線上の時間以上の時間にわたって、大気中で熱処理して、前の工程で露出させた半導体層の端面を酸化させる工程と
    順次行うことを特徴とする薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
  2. 前記熱処理は、150℃以上、半導体層の形成温度未満の温度で行われることを特徴とする請求項1記載の薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
  3. さらに、前記単位素子の裏面に、樹脂を充填し熱硬化させて封止する工程を有することを特徴とする請求項1記載の薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
  4. 前記熱処理は、封止処理の際の熱硬化過程で行われることを特徴とする請求項1記載の薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
  5. さらに、前記熱処理後に前記単位素子に逆バイアス電圧を印加して欠陥を除去する工程を有することを特徴とする請求項1記載の薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
  6. 前記第1電極、半導体層、および第2電極の一部は、レーザービームの照射により除去されることを特徴とする請求項1記載の薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
  7. 前記レーザービームの照射は室温付近で行われることを特徴とする請求項6記載の薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
  8. 前記第1電極は、透明導電性酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載の薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
  9. 前記第2電極は、金属、2種以上の金属の積層体、または透明導電性酸化物と金属との積層体を含むことを特徴とする請求項1記載の薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
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