JP4439398B2 - 減数分裂組換えの標的化刺激を誘導する方法及び前記方法を実施するためのキット - Google Patents

減数分裂組換えの標的化刺激を誘導する方法及び前記方法を実施するためのキット Download PDF

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Description

あらゆる真核生物では、父性染色体と母性染色体との間の減数分裂組換えの比率は、様々な染色体遺伝子座にて数桁異なっている。サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)及びそのほかの生物では、切断を触媒すると思われる広く保存されたタンパク質であるSpo11を含む少なくとも15のタンパク質を必要とする過程である、プログラムされたDNA二本鎖切断(DSB)によって減数分裂組換えは開始される。
本発明は、細胞における減数分裂組換えの比率を高める、さらに具体的には標的化減数分裂組換えを誘導する方法及びキットに関する。本発明は、作動可能にSpo11タンパク質に連結されたDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質を細胞内で発現させることによって、減数分裂組換えの開始を標的部位に標的化することが可能であるという事実に基づく。
背景技術
両性生殖を行う生物では、減数分裂細胞周期の間で二倍体の生殖系細胞のDNA含量を半分にすることにより半数体の配偶子を生じる。この過程の間に、組換えは二重の役割:相同染色体の長さに沿った情報をシャッフルし、子孫に伝える遺伝的多様性を創出すること、及び2回の減数分裂の最初の間に確実に相同体を対極に正しく分離させることを担っている。およそ1世紀前、デ・フリースは、遺伝的に伝達される間に、相同の母性染色体と父性染色体との間で交換が起きることを予測した。その後まもなく、1905年、ベイトソンはスイートピーにおいて花弁の色と花粉の形状という形質の間に部分的な連鎖があることを発見した。組換えという新しい分野におけるこれらの及びそれに続く発見は、連鎖したマーカーの間の交換(乗換え)の頻度によって測定される遺伝的距離という概念を導き、連鎖地図を開発した。1913年、スターテバントは、「当然、描かれたこれらの距離が因子からの実際の相対的な空間的距離を表すのかどうかは分からない」と書いた。分子時代の到来以来、遺伝的距離と物理的距離の定量的な比較によって、この予知された見識が広範に検証されてきた。サッカロマイセス・セレビシアエ、アラビドプシス・サリアーナ(Arabidopsis thaliana)、ドロソフィラ・メラノガスター(Drosphila melanogastor)、ムス・ムスクルス(Mus musculus)及びヒトを含むあらゆる生物については、減数分裂組換えの比率(cM/kbで表す)は、染色体によって、数桁異なる。酵母の最近の研究では、この変動のほとんどは開始事象の頻度に関係することが示唆されているが(Baudat & Nicolas, 1997)、何故、いくつかの遺伝子座(ホットスポット)では相対的に頻度が高く、また、別の遺伝子座(不活性スポット)では相対的に頻度が低いのかは説明されないままである。
S.セレビシアエでは、減数分裂組換えは、プログラムされたDNA二本鎖の切断(DSB)の形成及び修復の結果生じる(概説については、Smith & Nicolas, 1998を参照のこと)。多数の研究によって、天然のDSB部位は均一に分布するのではなく、切断頻度は、部位ごとに10〜100倍異なる(Baudat & Nicolas, 1997; gerton et al., 2000)。特定の領域や部位がDSBを形成する(従って、組換え)傾向があるかどうかを決定する因子は完全には理解されていないが、それらは、局所的に及び全体的にの両方で作用することが分かっている。局所的には、遺伝子構成及びクロマチン構造が主要で、かつ関連する重要性を持っていると思われる。通常、天然のDSB部位はほとんどプロモーターを含有する領域にある(Baudat & Nicolas, 1997)。HIS4遺伝子座では、2種の組換えホットスポット、α(転写因子依存性であるが転写には依存しない)及びβ(転写因子非依存性)が識別されている(Petes, 2001による概説)。さらに注目すべきは、既知のDSB部位のすべてが、有糸分裂及び減数分裂双方の細胞においてDNA分解酵素I又はミクロコッカス・ヌクレアーゼ(MヌクレアーゼI)に感受性である領域に局在するということは、開放クロマチンの構成が切断に必要であることを示唆している(Ohta etal., 1994; Wu & Lichten, 1994)。しかしながら、ヌクレアーゼ超感受性の部位のすべてがDSB部位であるわけではないので、局所クロマチンの接近可能性がDSB部位の選択性の唯一の決定因子ではありえない。
全体的な決定因子もDSBの分布を制御する。酵母の第3染色体におけるDSB部位の細かなマッピング及びDSBのゲノムレベルでのマッピングの両方によってDSB形成について活性のある(hot)又は不活性(cold)の大型染色体ドメイン(subchromosomal domain)の存在が裏付けられている(Baudat & Nicolas, 1997; Gerton et al., 2000)。これらDSBに熟達した(proficient)、又はそれに不応のドメインの分子的根拠は解明されていないが、第3染色体に沿って種々の部位に挿入された組換えに熟達したレポーターが、DNA分解酵素Iへの感受性、及びDSBの形成と組換えの頻度に関して局所の特性に適応するという知見は、ドメインレベルの制御が局所の決定因に重ね合わせられることを示している(Borde et al., 1999)。すなわち、活性領域を不活性にすることはできるが、これまで、その逆は観察されておらず、不活性領域は通常不活性のままである。
DSB頻度における染色体変動を考慮するには、トランス作用因子の影響も計算に入れなければならない。Spo11、ME14、MER1、MER2/REC107、MRE2/NAM8、MRE11、RAD50、REC102、REC103/SK18、REC104、REC114及びXRS2を含む多数の遺伝子がDSBの形成に必要とされるが、ほとんどの場合、それらの分子的役割は不明である。上記遺伝子のすべてについての無発現変異体は減数分裂組換えを行うことができず、生存不能の胞子を生じる。DSBの完全なレベルには、さらに3つの減数分裂特異的遺伝子が必要である:MEK1/MRE4は、減数分裂染色体の構造成分であるRED1及びHOP1の産物の活性を調節するキナーゼをコードする。SPO11は、好熱性古細菌(アーカエバクテリウム・スルフォロブス・シバタエ(Sulfobolus shibatae)のII型トポイソメラーゼの小型サブユニット(Top6A)と配列類似性を共有するタンパク質をコードする(Bergerat et al., 1997)。通常、修復に先行するDSB末端の5’から3’へのヌクレオチド鎖切断のプロセッシングを欠損する変異体(たとえば、ra50S)では、Spo11がDSB断片の5’鎖末端に共有結合したままであるということは(Keeney et al., 1997)、それが減数分裂のDSBの切断活性の触媒成分であることを示している。真菌及び高等真核生物におけるこれらの及びさらなる分子遺伝学的研究が、Spo11オルソログは減数分裂組換えに普遍的に必要とされるようであることを明らかにしてきたということは、DSBが、すべてではないにしろほとんどの真核生物において減数分裂組換えを開始させることを示唆している。鎖切断及びDNA結合に寄与するSpo11の領域を同定するための部位特異的突然変異誘発の使用により、Spo11/Top6Aファミリー全体で保存されている構造的モチーフの機能的意味が明らかにされている(Bergerat et al., 1997; Diaz et al., 2002)。興味深いことに、spo11突然変異体の一部におけるhis4::Leu2ホットスポットでのDSBのレベルと分布の変動は、Spo11が切断活性に関与するだけでなく、少なくとも局所的にはDSB形成のための部位の選択にも寄与していることを示唆している(Diaz et al., 2002)。
発明の開示
本発明者らは、Spo11をGal4タンパク質のDNA結合ドメイン(Gal4BD)に融合させて、Gal4BD−Spo11融合タンパク質を創った。Gal4タンパク質はS.セレビシアエにおいて最もよく性状分析された転写活性化因子の1つであり、ガラクトース異化に関与する遺伝子の発現に必要とされる。該タンパク質は、N−末端ドメインを介して活性化因子配列の上流にあるコンセンサスに結合し、C末端の活性化ドメインを介して転写を刺激する。インビトロ及びインビボでの「フットプリント」解析によって、Gal4の結合に十分であるとしてUASGAL部位にて17塩基対のコンセンサス配列(CGGN11CCG)が明らかにされている。次いで、本発明者らは、実施例で説明するように、この融合タンパク質が以前は不活性であった領域で組換えを刺激できることを明らかにし、本発明に至った。
本発明の目的の1つは、分裂している細胞でDBD−Spo11タンパク質(DBDはDNA結合ドメインである)を発現する工程を含む、分裂している細胞にて相同染色体の間での組換えを増やす方法である。
本発明はまた、細胞内で同一染色体が有する2以上の多型の間で標的組換えを行い、分裂細胞において前記融合タンパク質を発現させ、その際、結合ドメインは前記多型間又はその近傍に位置するDNA配列を認識する方法に関する。
必要に応じて、Spo11に作動可能に連結されている前記DNA結合ドメインによって認識されるDNA配列は、標準的方法により細胞ゲノムに導入することができる。
本発明の方法では、分裂している細胞は有糸分裂細胞でもよく、又は減数分裂細胞でもよい。
これらの方法では、細胞は、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインによって認識される1以上のDNA配列を有する人工染色体を含むことができる。
必要に応じて、DBD−Spo11融合タンパク質をコードする核酸は安定的に細胞ゲノムに組み込まれる。
本発明のもう1つの態様は、DBD−Spo11融合タンパク質をコードする核酸の減数分裂細胞への導入を含み、その際、DNA結合ドメインは、前記人工染色体の少なくとも1つの配列を認識する、細胞において人工染色体で減数分裂組換えを誘導する方法である。
本方法の実施の1つに従って、細胞は酵母であり、人工染色体はCGGN11CGG配列を有する1以上の部位を有する酵母又は非酵母のDNAから成るYACであり、融合タンパク質はGal4BD−Spo11融合タンパク質である。
本発明はまた、減数分裂細胞で発現されるDBD−Spo11融合タンパク質を用いて減数分裂組換えを誘導する工程、及び減数分裂細胞の相同染色体にて高い比率で、及び/又は異なった遺伝子座で減数分裂組換えを起こさせる工程を含む、生物の変異体を創生する方法に関する。
本方法は、2以上の形質の存在について前記変異体をスクリーニングする工程をさらに含むことができる。
同様に、本発明は、上記方法を実施することによる前記生物の変異体を創生する工程、前記変異体の特定の形質の遺伝的解析及び表現型解析を実施する工程、並びに前記生物のゲノムを解析する工程を含む、生物のゲノムを解析する方法を包含する。
本発明に係る方法はすべて、真菌、植物及び動物等のいかなる種類の真核細胞並びに生物でも実施することができる。
本発明のそのほかの態様は、上記方法を実施するためのキットであり、Spo11に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸を含有し、その際、前記融合タンパク質は、以前は不活性であった領域で減数分裂組換えを誘導することが可能である。そのようなキットはさらに、Spo11に作動可能に連結されている前記DNA結合ドメインにより認識される標的配列を持つ核酸を含むことができる。
本発明に係るキットの核酸は、たとえば、プラスミド、又は複製可能なDNA、必要に応じて形質移入剤と複合体化したもの、又はファージ又はウイルスのようないかなるベクターであってもよいベクターに含有されることができる。
本発明はまた、Spo11に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を発現する真核細胞に関するものであり、ここで、前記融合タンパク質は前記真核細胞のゲノムのかつて不活性の領域で減数分裂組換えを誘導することが可能である。
本真核細胞は、真菌細胞、植物細胞、動物細胞又は昆虫細胞であることができる。
本発明のもう1つの態様は、前記Spo11タンパク質がたとえば、アラビドプシス・サリアーナのAtSpo11タンパク質又はマウスのSpo11タンパク質である、それに作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸に関する。
図面の簡単な説明
図1.GAL4BD−SPO11の構造及び発現
(A)実験方法に記載したように、ADH1のプロモーター(pADH1)及びターミネーター(tADH1)の制御のもとでGAL4BD−SPO11融合体を含有するプラスミドpAP1を構築した。Gal4BD及びSpo11に由来するアミノ酸残基はそれぞれ上と下に示す。
(B)ノーザン解析のために、単調な増殖中(Y)又は胞子形成培地に移した後様々な時間で、SPO11(ORD5740)細胞及びGAL4BD−SPO11(ORD5806)細胞から全RNAを調製し、SPO11プローブとハイブリダイゼーションさせた。比較のために、ブロットをACT1プローブと再びハイブリダイゼーションさせた。
(C)減数分裂の経過中にわたるACT1のmRNAレベルに比べたSPO11(○)及びGAL4BD−SPO11(■)の転写レベルの定量。
(D)抗Gal4(DBD)抗体を用いたウエスタンブロット解析により検出されたGal4BD−Spo11タンパク質。各レーンには同一量のタンパク質を負荷、減数分裂周期を通してORD5806細胞には同レベルで融合タンパク質が存在する。減数分裂ではspo11Δ二倍体(ORD5805)についてシグナルは検出されなかった。
図2. SPO11及びGAL4BD−SPO11の二倍体における天然のYCR043c−YCR048w、ARG4及びCYS3のホットスポットでの減数分裂DSBの形成
胞子形成培地に移した後、示した時間に採取したSPO11(ORD1181)及びGAL4BD−SPO11(ORD5807)の二倍体からゲノムDNAを調製し、DSBはサザン解析により検出した。これらの株は、rad50S::URA3対立遺伝子についてホモ接合体であり、DSBの形成はできるが、切除及び修復を妨害する(Alani et al., 1990)。各ゲルの右側で、領域地図によって、ORF(白抜きの矢印は転写センスを示す)、DSB部位(矢印)及びプローブの位置を示す。
(A)YCR043c−YCR048w領域におけるDSBの形成。AseIでDNAを消化し、YCR048wの内部断片をプローブとした。YCR048wORFにおける推定Gal4コンセンサス結合配列を黒棒として示す。
(B)図2Aで示したSPO11及びGAL4BD−SPO11における顕著なDSBの定量。YCR046cプロモーター(1)、YCR047c−YCR048wプロモーター(2)及びYCR048wORF(3)におけるDSB形成頻度の合計をヒストグラムとして表す。これらの合計は、YCR043c−YCR048w領域で検出された合計DSBの99%以上を説明する。
(C)ARG4遺伝子座におけるDSBの形成。SnaBIでDNAを消化し、ARG4の内部断片をプローブとした。星印は交差ハイブリダイゼーションのバンドを示す。
(D)CYS3遺伝子座におけるDSB形成。HindIIIでDNAを消化し、EUN36の内部断片をプローブとした。
図3. UASGAL配列のある遺伝子座におけるGAL4BD−SPO11が促進するDSB
SPO11(ORD1181)及びGAL4BD−SPO11(ORD5807)の二倍体からゲノムDNAを調製し、図2に記載したように解析した。UASGAL配列は四角で示す。(A)GAL2遺伝子座におけるDBA形成。XbaI/NcoIでDNAを消化し、GAL2内部断片をプローブとした。
(B)GAL1、7、10遺伝子座におけるDSBの形成。ClaI/AatIIでDNAを消化し、GAL1内部断片をプローブとした。
図4.GAL4BD−SPO11株におけるGAL2遺伝子座で組換えは刺激される
(A)RAD50株(ORD5806)におけるGAL2遺伝子座でのDSBの形成。ゲノムDNAをXbaI/NcoIで消化し、GAL2内部断片をプローブとした。左の矢印は、同質遺伝子系統のrad50S(ORD5807)におけるGAL2UASGALでのDSBを示す;右の棒は、DSB断片の「スメア」の程度を示す。
(B)GAL4BD−SPO11二倍体(ORD6626)の子孫におけるGAL2及びgal2−Bspの対立遺伝子の分離。四分子をYPD上で分析し、コロニーYPGalした。gal2−Bsp対立遺伝子は遅い増殖表現型を付与する。この例では、遺伝子の変換(3+:1−及び1+:3−)並びにメンデル式(2+:2−)の分離パターンを見ることができる。
(C)GAL2及びgal2−Bspの対立遺伝子ついて二倍体ヘテロ接合体であるGAL4BD−SPO11(ORD6626)及びSPO11(ORD6632)におけるGAL2遺伝子座での減数分裂遺伝子変換の頻度。
図5.GAL2遺伝子座は不活性領域に位置する
GAL2遺伝子座を中心とした20kb区間におけるDSB形成のサザンブロット解析。SPO11(ORD1181)及びGAL4BD−SPO11(ORD5807)二倍体の減数分裂DNAを、示した制限酵素で消化し、GAL2の内部断片をプローブとした。模式図は、遺伝子の転写センス及び関連する制限部位を示す。矢印はDSB部位を示す。
図6.SPO11及びGAL4BD−SPO11の株におけるDSB形成に対する遺伝的必要条件
野生型及び変異型(x軸上に示すように)の背景においてSPO11又はGAL4BD−SPO11の構築物(それぞれ、黒又は白の棒)を有する二倍体におけるGAL2遺伝子座、YCR048wORF及びYCR048wプロモーター(y軸)での減数分裂頻度(z軸)を測定するために、図2及び3のようにサザンブロット解析を行った。アッセイした株すべての遺伝子型を表1に列記する。胞子形成培地に移した後8時間又は10時間でDSB頻度を測定した。
図7.YCR048w領域(A)及びGAL2領域(B)における減数分裂DSBの形成
減数分裂DSBはさらに短いバンドにより検出される。固有のDSB部位及びUAS部位依存性のDSB部位をそれぞれ、実線及び点線の矢印で示す。双方の構築物(これらによってGal4BD−Spo11融合タンパク質は、減数分裂の前期(prophase)に極めて早期に(IME1プロモーター)及び早期に(RECプロモーター)発現される)によってUAS部位にてDSBを標的とすることができる。
図8.YCR048w領域及びGAL2領域における減数分裂DSBの形成
減数分裂DSBはさらに短いバンドにより検出された。固有のDSB部位及びUAS部位依存性のDSB部位をそれぞれ、実線及び点線の矢印で示す。構築物(それにより、Gal4BD−Rec104融合タンパク質が構成的に発現される)によって、UAS部位においてDSBを標的とすることができる。
図9.PIME1−Gal4BD−Spo11構築物の配列
IME1プロモーターの配列に下線を引き、Gal4結合ドメインをコードする配列を太字で、Gal4BD−Spo11融合タンパク質の中でSpo11部分をコードする配列をイタリック体で示す。
図10.PREC8−Gal4BD−Spo11構築物の配列
REC8プロモーターの配列に下線を引き、Gal4結合ドメインをコードする配列を太字で、Gal4BD−Spo11融合タンパク質の中でSpo11部分をコードする配列をイタリック体で示す。
図11.PADH1−QQR−Spo11構築物の配列
ADH1プロモーターの配列に下線を引き、QQR結合ドメインをコードする配列を太字で、QQR−Spo11融合タンパク質の中でSpo11部分をコードする配列をイタリック体で示す。
図12.PADH1−Gal4BD−REc104構築物の配列
ADH1プロモーターの配列に下線を引き、Gal4結合ドメインをコードする配列を太字で、Gal4BD−Rec104融合タンパク質の中でRec104をコードする配列をイタリック体で示す。
図13.PAtSPO11−Gal4BD−AtSpo11−1構築物の配列
AtSPO11プロモーターの配列に下線を引き、Gal4結合ドメインをコードする配列を太字で、Gal4BD−AtSpo11−1融合タンパク質の中でAtSpo11をコードする配列をイタリック体で示す。
好ましい形態の詳細な説明
この出願を通して、幾つかの用語を採用するが、その意味は、以下の定義に従って理解すべきである:
「融合タンパク質」は、異なった起源に由来する少なくとも2つの部分を含むキメラタンパク質である。それは通常、異なった起源に由来するコーディング配列を含み、前記コーディング配列がインフレームである融合遺伝子の産物である。
本発明は、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質に関与する。これらの融合において、DNA結合ドメイン、即ちDBDは、この結合が配列特異的であろうとなかろうと、DNAに結合する特性を有する任意のタンパク質の任意のドメインである。非特異的DBDの例は、TopoI及びTopoIIのようなトポイソメラーゼ類並びにRad51のような鎖交換タンパク質であり、配列特異的なDBDの例として、Gal4DBD(以下、Gal4BDとする)、QQR(Smith, Bibikova et al., 2000)又はlexAレプレッサーがあげられる。当然、これらの例は純粋に指示的であり、そのほかのDBDを用いて本発明を実施することができる。Gal4BD−Spo11タンパク質の例の配列は、図9及び10に記載され、QQR−Spo11の例の配列は図11に示されている。
本発明に係る融合タンパク質の第2の部分はSpo11タンパク質である。この用語は、S.セレビシアエ(Esposito & Esposito, 1969)で同定されたSPO11遺伝子のタンパク質産物を指すが、Spo11のオルソログタンパク質、すなわちSPO11遺伝子のオルソログ遺伝子の産物も指し、オルソログ遺伝子は2つの異なった分類群で見い出され、各分類群で同一の機能を実行すると理解されている。Spo11タンパク質のそのほかの例は、アラビドプシス・サリアーナのAtSpo11(Grelon et al., 2001)、及びその配列がBaudat & Keeney, 2000に記載されているマウスのmSpo11である。
あるいは、融合タンパク質の第2の部分はSpo11とは異なるタンパク質であることができ、それは、DSBの形成に関与するSpo11のパートナーであり、Spo11を動員することができる。「動員すること」によって、DBDとパートナーとの融合タンパク質がSpo11と複合体を形成し、DBDによって標的とされる部位にてDSBの形成を招くという事実を意味する。以下に用いられる用語「パートナー」は、Spo11を動員することが可能であるSpo11のパートナーを指す。本発明に係る融合タンパク質で第2の部分として使用することができるタンパク質の例は、Keeney(2001)及びSmith & Nicolas (1998)による概説に引用されている。
本発明に含まれる融合タンパク質の2つの部分−DBD及びSpo11又はそのパートナーの1つ−は「作動可能に連結され」、このことは、融合タンパク質がDBD部分を介してDNAに結合する能力を保持し(DBDが配列特異的であれば、配列特異的な方式で)、かつ、Spo11の当初の機能(二本鎖切断を生じる)を保持することを意味する。DBD及びSpo11に依存して、DBD部分は、融合のN末端又はC末端の先端に位置することができる。あるいは、タンパク質の各先端で2つのDBD(おそらく異なったもの)をSpo11に融合することができる。
そのほかの定義は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明で見られるであろう。
興味深いことに、実施例に記載するように、本発明は、減数分裂の間の相同組換えの頻度を実質的に高め、Spo11タンパク質の単純な改変によりこの組換えを標的とする新規の方法を提供する。以前の報告では、減数分裂の相同組換えを局所的に刺激するための、たとえば、I−SceI、HO又はVDEのような部位特異的ヌクレアーゼの使用が記載されている。Spo11に非相同のDNA結合ドメインを加える本方法は、識別可能な特徴及び実用的な利点を持つ別の戦略を提供する。たとえば、このアプローチは複雑さの少ない天然に生じる染色体部位を活用し、それによって、特異的な配列を予め導入する必要も常在のSPO11遺伝子を欠失させる必要もなく、多数の可能性のある標的を複製する。また、切断が、シス及びトランスで作用する決定因子に関して正常な生理的条件下にあるままであり、その結果、相同組換え経路によってDSBが修復されるので、生存可能な配偶子を生じ、新規の組換え体を得ることができる。
本発明は、分裂している細胞において相同染色体間の組換えを高める方法に関するものであり、該方法は、
(i)Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入する工程;及び
(ii)前記細胞において相同染色体間の組換えが増すように細胞を分裂させる工程を含む。
実際、実施例1にて以下で記載するように、本発明者らは、Gal4BD−Spo11タンパク質が、天然のホットスポット、さらにはGalBDのコンセンサス配列のレベルで、たとえ、ゲノムの不活性領域に位置していても、二本鎖切断を誘導できた事を明らかにした。必要に応じて、上記方法は、工程(ii)の前に、Spo11に作動可能に連結されているDNA結合ドメインによって認識されるDNA配列を前記細胞のゲノムに導入する工程をさらに含むことができる。多数のそのような配列の導入は、細胞における相同組換えの比率を高めるであろう。さらに、これらの配列を特定の位置に導入し、それによって、以下にさらに詳細に記載するように、組換えのターゲティングを可能にする。
あるいは、DNA結合タンパク質と、Spo11を動員することが可能であるDSB形成に関与するSpo11のパートナーとの間の融合タンパク質をコードする核酸を導入することによって上記方法を実施することができる。上ですでに述べたように、本出願のこの具体的な実施形態に従って使用できるタンパク質は、たとえば、Kenney(2001)及びSmith & Nicolas (1998)による概説論文に引用されているタンパク質の間で、さらに具体的には、哺乳類におけるREC102、REC103/SK18、REC104、REC114、MEI4、MRE2/NAM8、MER2/REC107、MRE11、RAD50、XRS2/NBS1、並びにHOP1、RED1、SAE2/COM1、MER1及びMEK1を含む群で選択することができる。本発明のこの実施形態は、実施例1.10においてGal4BD−Rec104タンパク質により説明される。以下の本文を通して、用語「Spo11」は、以後、Spo11タンパク質自体又はSpo11を動員可能であるSpo11のパートナーのいずれかとして理解すべきである。
本方法は、Spo11タンパク質に作動可能に連結されている前記DNA結合ドメインにより認識される1以上の配列を有する人工染色体を含む細胞の内部で実施することができる。実施例5で説明するように、人工染色体は減数分裂の間、必ず組換えを生じるとは限らないが、それは、分離の問題を招くので、娘細胞の一部ではこれらの染色体の喪失を招く。
上述の方法では、DBD−Sop11融合タンパク質をコードする、工程(i)で細胞に導入した核酸が細胞ゲノムに安定して組み込まれうる。あるいは、この核酸は、一時的な又は安定的なエピソームのいずれかでエピソームになる。一時的なエピソームは細胞ゲノムの外側に残るDNA分子であり、細胞分裂で必ずしも娘細胞に伝えられるとは限らない。それは、たとえば、宿主細胞によって、プラスミド又はアデノウイルスのベクターゲノムであることができる。安定的なエピソームは、複製され、娘細胞に伝えられるものであり、たとえば、EBウイルスのoriP−EBNA−1系を有するレプリコンである。重要なことに、本発明者らは、細胞に導入されたプラスミドにコードされたGal4BD−Spo11により、常在のSpo11遺伝子を変更することなく、標的とする減数分裂二本鎖切断を誘導できることを明らかにした。
本発明に従って細胞に導入された核酸では、DBD−Spo11(又はパートナー)タンパク質をコードする配列は、構成的なプロモーター(たとえば、ADH1のプロモーター)、又はSpo11プロモーターのような減数分裂特異的なプロモーター、又はたとえばIME1プロモーター(Guttman-Raviv et al., 2001)若しくはREC8プロモーター(実施例1.9に記載)のような異種プロモーターの制御下に置かれる。
実施例1で説明する上記方法の具体的実施形態では、細胞は酵母であり、工程(i)で導入される核酸は、Gal4BD−Spo11融合タンパク質をコードする。
興味深いことに、本発明者らは、酵母ゲノムからの常在Gal4配列の欠損は、UAS部位にてDSBが介在するGAL4BD−Spo11の上昇を招く(実施例1.11)ことを示した。
本発明はまた、細胞において同一染色体が有する2以上の多型の間で標的組換えを行う方法に関するものであり、それは、以下の工程を含む:
(i)Spo11に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入し、ここで、前記DNA結合ドメインは、前記2以上の多型の間に位置する配列を認識する工程;及び
(ii)前記細胞において前記2以上の多型の間で組換えを生じるように細胞を分裂させる工程。
細胞において遺伝子の変換、すなわち、1又は数個の多型の局所転移を標的とし、結果として染色体による前記多型の一方向性の取得を生じる方法も本発明の一部である。実際、本発明は、乗換えと同様に遺伝子変換によって異なったハプロタイプの獲得を可能にする。この後者の方法は以下の工程を含む:
(i)Spo11に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入し、ここで、前記DNA結合ドメインが、転移されるべき2以上の多型の近傍に位置する配列を認識する工程;及び
(ii)遺伝子変換を生じるように細胞を分裂させる工程。
これらの方法は、通常一緒に分離する遺伝子の、特にホットスポットを含まないDNA領域に位置する遺伝子の間の相互作用を研究するのに特に有用であることができる。必要に応じて、これらの方法は、工程(ii)の前に、前記細胞のゲノムの前記多型の間又は近傍にSpo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインにより認識されるDNA配列を導入する工程をさらに含むことができる。
本発明に従って標的組換えを行う方法では、細胞は、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDBDにより認識される1以上の配列を有する人工染色体を含むことができる。従って、本方法は、人工染色体に沿った特異的な位置での標的化相同組換えをするのに役立つ。
上記方法の好ましい実施形態では、細胞は、酵母であり、Spo11部分は、S.セレビシアエに由来する。あるいは、及び上述のように、いわゆるSpo11部分は、Spo11を動員することが可能であるSpo11パートナーであることができ、たとえば、REC104である。場合により、DBDはGal4BDである。
本発明の方法の好ましい実施形態では、工程(ii)で行われる細胞分裂は減数分裂である。酵母のようなある種の細胞は、減数分裂を開始し、次いで、「増殖回帰」又はRTGと呼ばれる過程によって有糸分裂に戻る。そのような細胞では、減数分裂の早期工程で組換えを誘導することにより該方法を行うことができ、次いで細胞を増殖に戻すことができる。本発明のこの実施形態では、Spo11のプロモーターのような減数分裂特異的なプロモーター又はIME1若しくはREC8プロモーターのような異種プロモーターが、DBD−Spo11融合タンパク質の発現を有利に駆動する。
本発明のもう1つの態様は、細胞において人工染色体で減数分裂組換えを誘導する方法であり、以下の工程を含む:
(i)Spo11に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入し、ここで、前記DNA結合ドメインが、前記人工染色体が有する1以上の配列を認識する工程;及び
(ii)人工染色体間で減数分裂組換えを生じるように細胞を分裂させる工程。
上述のように、人工染色体は減数分裂の間、必ずしも組換えるとは限らず、それによって分離問題を被ることになる。これは、人工染色体の使用を限定する主な欠点である。本明細書では、用語「人工染色体」は、完全な人工染色体(たとえばYACs)だけでなく、他の株由来の同質及び非相同の染色体も指す。たとえば、酵母では、異なった野生型の株を起源とする染色体を含む雑種株を入手することができる。そのような染色体は、相対的に高い比率の同一性を有する場合、前記「同質」であり、配列があまり近くない場合、「非相同」である。雑種の酵母では、非相同の染色体及び程度は少ないが同質の染色体は減数分裂の間、組換えることができない。
細胞において人工染色体間での減数分裂組換えを可能にすることによって、本発明は、新しい興味深い見通しを開いている。たとえば、醸造の分野では、熟練者が様々な野生型の株に由来する幾つかの有利な形質を同じ株で組み合わせるので、酵母は雑種株であることが多い。特に、これらの株は上述の理由によって胞子形成できないために、最適な株の選抜は容易ではない。
本発明の方法は一般に、細胞におけるハプロタイプを組換えるのに役立つ。本方法によって得られる組換えは、それが相同染色体の同一の位置間で生じる場合、対立遺伝子的であり、局所でのみ相同の領域で生じる場合、異所性である。従って、本方法は染色体間の転座を創出できる。その結果、本発明の方法は、細胞分裂の間に細胞中で異なる染色体間での組換えを可能にすることにより、上述の酵母株、さらに一般的には当分野で使用されるいかなる株の能力も明らかに高め得る。興味深いことに、上述のように、減数分裂の早期工程に組換えを誘導し、次いでRTG過程によって細胞を有糸分裂に戻すことができる。
細胞が酵母であるとき、人工染色体で組換えを誘導する本発明の具体的な実施形態では、人工染色体は、CGGN11CGG配列を伴う1以上の部位を有するYACであり、融合タンパク質は、Gal4BD−Spo11融合タンパク質である。
人工染色体の組換えは、たとえば医薬分野における、真核細胞の培養におけるタンパク質合成において、このツールのさらに広い利用をも導くことができる。
本発明はまた、生物の変異体を創生する方法に関するものであり、以下の工程を含む:
(i)Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸を前記生物の細胞に導入し、ここで前記DNA結合ドメインが前記細胞のゲノムが有する1以上の配列を認識する工程;
(ii)前記細胞に減数分裂を行わせて、前記生物の天然の減数分裂に比べ高い比率、及び/又はそれとは異なった遺伝子座で、前記細胞の相同染色体間で減数分裂組換えが生じさせる工程;及び
(iii)工程(ii)において得られた細胞によって前記生物の変異体を創生する工程。
本方法では、用語「変異体」は、広く理解されるべきであり、その親を考慮して少なくとも1つの表現型又は遺伝子型の差異を提示する生物を指す。相同染色体間の組換えの結果生じる変異体は、遺伝子間又は遺伝子内で生じ、DNA配列によって定義される遺伝子多型の再会合の結果生じる。さらに一般的には、ここでの変異体は、そのハプロタイプが親のハプロタイプと異なる生物を指す。
前に記載したように、Spo11は、古細菌のトポイソメラーゼと相同である(Bergerat, de Massy, 1997)。しかしながら、本発明の方法は好ましくは真核細胞の中で実施する。たとえば真菌細胞、植物細胞、哺乳類細胞及び昆虫細胞より成る群から、これらの細胞を選択することができる。以下に記載される実験部分では、真菌についてはS.セレビシアエ、植物についてはA.サリアータ、哺乳類についてはマウス、昆虫についてはドロソフィラにより、こうした細胞の例を説明する。いずれにしても、生物の変異体を創生する上記方法では、この生物は真菌、植物、非ヒト哺乳類及び昆虫より成る群から選択することができる。
本発明に従って生物の変異体を創生する方法は、2以上の形質の存在について、得られた変異体をスクリーニングする工程をさらに含むことができる。本方法は、組換え率を高めることおよび/又は標的化減数分裂組換えを誘導することにより親細胞とは異なる形質を兼ね備える変異体の迅速入手を可能にする。従って、それは、対立遺伝子の特定の組み合わせを提示するものを見い出すためにスクリーニングしなければならない個体の量を劇的に減らすことができる。
上述の方法は本発明のもう1つの態様を導き、それは、生物のゲノムの解析方法であり、以下の工程を含む:
(i)本発明の方法に従って、前記生物の変異体を創生する工程;
(ii)前記変異体の特定の形質の遺伝子解析及び表現型解析を行う工程;及び
(iii)前記生物のゲノムを解析する工程。
実際、所望の対立遺伝子を有するものを見い出すためにスクリーニングしなければならない生物(たとえば、マウス)の量が減るので、大量の変異体の迅速な入手によって遺伝子型と表現型との間の相関を確立することが容易になる。
本発明の方法によって入手可能な変異体は、任意の種類の化合物の作用を、たとえば、薬剤開発の過程においてスクリーニングするために、又は組換え遺伝子の発現に好適な、適当な宿主細胞を入手するために、実験モデルで使用することができる。
本発明はまた、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸を含有し、ここで、前記融合タンパク質が以前不活性であった領域で二本鎖切断を誘導することが可能であることを特徴とする、上記方法を実施するためのキットに関する。
本キットでは、Spo11は、真菌、植物細胞、哺乳類細胞及び昆虫細胞より成る群から選択される細胞由来のSpo11タンパク質の配列を有する。そのような配列の例は、S.セレビシアエ(酵母)のspo11、A.サリアーナ(植物)のAtspo11、マウス(哺乳類)のspo11、及びドロソフィラ(Drosophila, 昆虫)のspo11である。当然、これらの例に制限されるものではなく、他のいかなる生物由来のいかなるspo11オルソログも使用することができる。
本発明のキットは、Spo11タンパク質に作動可能に連結されている前記DNA結合ドメインにより認識される標的配列を有する核酸をさらに含むことができる。所望の染色体の所望の遺伝子座にこの標的配列を挿入するための構築を容易にするように、この標的配列は、いかなる種類のベクター、たとえば、多数の制限部位を含むクローニングベクターを含むことができる。
DBD−spo11配列を含む核酸をベクターに含ませることができる。上述のように、本発明の方法は、細胞のゲノムにDBD−spo11遺伝子を組み込まずに実施することができる。従って、細胞の種類により、たとえば、プラスミド、複製可能なDNA類、任意の形質移入剤との複合体形成した核酸、ファージ及びウイルスのような、多種多様なベクターが適当である。様々なウイルスをベクターとして使用し、DBD−spo11配列を含む核酸を哺乳類細胞に導入するが、そのうちのいくつかは細胞ゲノムに組み込まれ(たとえば、レトロウイルス)、一部は組み込まれない(たとえば、アデノウイルス)。
また、本発明の一部は、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を発現する真核細胞であり、ここで、前記融合タンパク質は、前記真核細胞のゲノムの以前は不活性であった領域において二本鎖切断を誘導することが可能である。当然、この文脈における、語句「不活性な領域」は、減数分裂組換えについて不活性な領域を指す。この細胞で、DBD−spo11遺伝子は、減数分裂特異的であっても、そうでなくてもよいプロモーターの制御下にある。減数分裂特異的なタンパク質が、実施例6で説明されるように改変されるように、本発明に基づいた細胞を工学操作することができる。本細胞は、たとえば、真菌、植物細胞、哺乳類細胞又は昆虫細胞であることができる。
本発明のさらに別の態様は、Spo11部分及びそれに作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸に関するものであり、ここで前記Spo11タンパク質は、たとえば、A.サリアーナのAtSpo11タンパク質又はマウスのSpo11タンパク質である。
以下に記載する実験方法を用いて、以下の実施例を実施することができる。
実験方法
プラスミドの構築
Gal4BD−Spo11融合体をコードする組込み型プラスミドpAP1を創出するために、PCRによりSPO11のORFを作製し、2ハイブリッドベクターpAS2ΔΔ(Fromont-Racine, Rain et al., 1997)においてGal4DNA結合ドメイン(Gal4BD)をコードする配列の下流にBamHI/PatI断片として導入した。配列決定によって、Gal4BDのSpo11へのインフレームN末端融合及び完全なORFを検証した。kanMX4薬剤耐性カセット(Wach, 1996)を唯一のNruI部位に挿入し、pRS304(Sikorski & Hieter, 1989)から相当する断片でBpmI−Bsu36Iを置き換えることにより複製開始点2μを除いてpAP1を作製した。。pICM99を創出するために、ゲノムDNA及びプロモーター領域を含むサブクローンからGAL2遺伝子座を増幅し、GAL2のORFの最初の655bpを、クイックチェンジ部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン)で変異誘発した。このフレームシフト突然変異は、BspHI制限部位を生じさせ、66アミノ酸の短縮タンパク質を生じた。当該断片を配列決定し、突然変異を確認し、最終的にpRS306(Sikorski & Hieter, 1989)にサブクローニングしてpICM99を得た。
酵母株
酵母株はすべてSK1(Kane & Roth, 1974)の同質遺伝子的誘導体である。形質転換又は交配によりそれらを得たが、関連する遺伝子型を表1に示す。酢酸リチウム/ポリエチレングリコール法(Ausubel et al., 1988)を用いて形質転換により、XbaIで消化したpAP1をtrp1遺伝子座に組み込んだ。G418(200μg/mL)耐性形質転換体を選択し、トリプトファン原栄養性についてチェックした。サザン解析により正しいターゲティングを検証した。URA3を選択可能なマーカー(Ausubel et al., 1988)として、2段階置換法によりgal2−BspHI突然変異をGAL2遺伝子座に導入した。形質転換のために、GAL2のORFにおいて唯一のBaglII部位にてpICM99を線状化し、ターゲティングをPCRとサザン解析により検証した。増幅したGAL2断片のBspHI制限解析により、5−フルオロオロチン酸耐性として出現するクローンの中に所望の点突然変異の保持を確認した。
培地及び遺伝的手法
単調な増殖には、必要な場合適当な栄養素(Sherman et al., 1983)を補完した、標準培地(YPD)及びSD(アミノ酸なしで0.67%の酵母窒素ベース、2%グルコース)を用いた。減数分裂の培養は記載されている(Alani et al., 1990)ように調製した。グルコースがガラクトース(20g/L)に置き換えられている完全ガラクトース培地、YPGalによってgal2−BspHI対立遺伝子の分離をモニターすることができる。48時間後、胞子形成培地において生じた4胞子の子嚢を分析することにより胞子の生存率を決定した。
分子技術
DSBの検出及び定量のために、胞子形成細胞からゲノムDNAを調製し、サザン解析の対象とした。親型のバンド及びDSBのバンドはPhosphorImagerにより視覚化し、記載されているような(Vedel & Nicolas, 1999)ImageQuant ソフトウエア(モレキュラー・ダイナミクス)を使用することによって定量した。ノーザン解析は記載されている(Smith et al., 2001)ように行った。全細胞の抽出物を調製し、常法(Ausubel et al., 1988)を用いて、抗Gal4(DBD)抗体(サンタクルーズ・バイオテクノロジー)によるウエスタンブロットによって解析した。
プラスミド構築体の説明
プロモーターIME1−GAL4BD−SPO11構築体:pAP111と命名されたプラスミド
pAP1(Pecina et al., 2002)のSac1−Sac1断片(1891〜3330位)の欠失によってpAP11プラスミドを構築した。pAP11の1216bpのXhoI断片を含有するpBSデルタ1プラスミドをpBlueScriptのSmaI−HincII断片の欠失によって予め得られたpBSデルタ0プラスミドにサブクローニングした。SphIで切断し、次いでクレノウ処理し、HindIIIで切断することによりプラスミドp2053(Guttmann-Raviv et al., 2001)からIME1プロモーターを単離した。EcoRV及びHindIIIで切断したpBSデルタ1ベクターにこの断片を挿入した。それによってプラスミドpBSデルタ11を創出した。pBSデルタ11のIME1プロモーター含有領域をXhoIで切断し、pAP11のXhoI部位にサブクローニングしてプラスミドpAP111を創った。
プロモーターREC8−GAL4BD−SPO11構築体:pAP118と命名されたプラスミド
プラスミドpAP11の1471bpのSacI−BamHI断片をpBSデルタ0プラスミドにサブクローニングしてpBSデルタ2を創った。2つのプライマー、REC8UP(5’−CGATATCTATACATTACCAATCCTTCCT−3’)及びREC8LO(5’−CAAGCTTTGCAGAATATTTGTAATATT−3’)により、S.セレビシアエ株ORD7254−25D(SK1バックグラウンド)のゲノムDNAからREC8プロモーターを増幅し、pGEMT−easy(プロメガ)にクローニングして配列決定した。次いで、EcoRV−HindIII断片(REC8プロモーターを含有する)を、やはりEcoRV−HindIIIで切断したプラスミドpBSデルタ2にサブクローニングした。これによってプラスミドpBSデルタ28を創出した。最後に、pBSデルタ28のSacI−BamHI断片(REC8プロモーターを含有する)を、SacI−BamHI部位で切断したプラスミドpAP11にサブクローニングしてpAP118を創った。
プロモーターADHI−QQR−SPO11構築体:pAP119と命名されたプラスミド
2つのプライマーQQR UP(5’−AAGCTTATGGAAAAACTGCGGA−3’)及びQQR LO(TGGCCATAAATTCCGGACTAGTTGCTTCTTAT−3’)によって、pET15biQQR(Lo)FN(米国ユタ大学ダナ・キャロール博士より供与、Smith, Bibikova et al., 2000)のプラスミドDNAからQQR断片を増幅した。増幅した断片をpGEMT−easyベクター(プロメガ)にクローニングして配列決定した。次いで、HindIIIとMscIで切断したpBSデルタ2ベクターにQQRをサブクローニングしてpBSデルタ29を作った。最後に、pBSデルタ29のSacI−BamHI断片(QQR配列を含有する)を、SacI−BamHI部位で切断したプラスミドpAP11にサブクローニングしてプラスミドpAP119を創った。
プロモーターADH1−GAL4BD−REC104構築体:pXP3と命名されたプラスミド
2つのプライマー、REC104UP(5’−GAGATGGCCATGGAGGCCATGTCCATCGAGGAGGAAGAT−3’)及びREC104LO(5’−GGATCCCCGGGGCTCAGGGACTACTAAACTGAAA−3’)により、S.セレビシアエ株ORD7254−25D(SK1のバックグラウンド)からPCRによってREC104のコーディング領域を増幅した。増幅した断片をpCR2.1ベクターにクローニングし、検証した。次いで、SfiIとXma1で切断した組込み型ベクターpASINにREC104断片をサブクローニングした。それによってプラスミドpXP3を創出した。pASINプラスミド(プロモーターADH1−GAL4BD、AmpR、TRP1)は、複製開始点2μの除去により、pAS2ΔΔ(Fromont-Racine, Rain et al., 1997)に由来する。
cphs−gal4bd−meiw68プラスミド
mei−W68(Spo11のドロソフィラオルソログ)のcDNAをプラスミドpAH69(Kim McKim & Aki Hayashi-Hagihara, 1998)から単離した。
−SmaIにより消化したpASΔΔにpAH69由来のXmnI−DraIをクローニングする。これによりプラスミドpAPAP1を創出する。
−PCRによる増幅及びmei−W68断片のpGemT−easy:pGEMT−easy(mei5)へのクローニング。プライマー:
5’meiW68:5’−ggaatggccacaatggatgaattttcgg−3’
3’meiW68:5’−ggtgaaacttcctccgcggac−3’
−pGEMT−easy(mei5)のMscI−SacII断片のpAPAP1へのクローニング。これによりプラスミドpAPAP2を創出する。このプラスミドは、複製可能な、Amp及びTRP1のマーカーを有するプラスミド中への、ADH1プロモーターの下に融合タンパク質Gal4BD−meiW68を含有する。
−HsP70プロモーターを含有するドロソフィラのベクターpCasper−hs(Hpal)への、pAPAP2がBsgI−SalIのクローニング。これによってcphs−qal4bd−meiw68プラスミドを創出する。
構築体の組込み及び株
pXP3をXbaIにより線状化し、ORD7254−25D(α、ura3、leu2、trp1、his4)の形質転換に使用した。酢酸リチウム法で形質転換を行い、トリプトファン欠損プレートに細胞を播いた。サザンブロット解析によって形質転換した細胞を検証した。形質転換細胞を交配させ、胞子形成させ、分離したものを交配してORD7770株を創った。
pAP111をBsu36Iにより線状化し、ORD7254−25D(α、ura3、leu2、trp1、his4)の形質転換に使用した。酢酸リチウム法で形質転換を行い、トリプトファン枯渇プレートに細胞を播いた。サザンブロット解析によって形質転換した細胞を検証した。形質転換細胞を交配させ、胞子形成させ、分離したものを交配してORD8016株を創った。
pAP118をXbaIにより線状化し、ORD7254−25D(α、ura3、leu2、trp1、his4)の形質転換に使用した。酢酸リチウム法で形質転換を行い、トリプトファン枯渇プレートに細胞を播いた。サザンブロット解析によって形質転換した細胞を検証した。形質転換細胞を交配させ、胞子形成させ、分離したものを交配してORD8050株を創った。
DNAの単離及びDSBの検出
減数分裂培養物10mLを各時点で回収し、無菌水で1回洗浄した。チモリアーゼ20T(Chemical Credential、ICN)と共に30℃にて30分インキュベートすることによりスフェロプラストを生じた。65℃にて30分、溶解液(50mMのEDTA、200ng/mLのプロテイナーゼK、0.4%のSDS)500μLでスフェロプラストを溶解した。次いで、5Mの酢酸カリウム200μLを加え、氷上で1時間を超えてインキュベートした。速度1300rpmで15分間の遠心分離の後、上清を新しいエッペンドルフチューブに移し、イソプロパノール500μLを加えて核酸を沈殿させた。沈殿させた核酸を70%エタノールで洗浄し、RNA分解酵素Aで37℃にて1時間処理した。エタノールでDNAを沈殿させ、最終的に無菌水に再懸濁した。
YCR048W領域でDSBを検出するにはAseIで、GAL2(YLR081W)領域で検出するにはXbaIでDNA約1μgを消化した。これらの試料を1%アガロースゲルでの電気泳動にかけ、ナイロン膜(ハイボンド−N;アマシャム(登録商標))上にブロットした。YCR048W及びGAL2の領域でDSBを検出するには、それぞれ、YCR048W及びGAL2のオープンリーディングフレームのDNAをプローブとして用いた。
実施例1:サッカロマイセス・セレビシアエにおける減数分裂組換えの標的刺激
1.1.Gal4BD−SPO11融合タンパク質は減数分裂中に発現される
Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4BD,アミノ酸1〜147)をS.セルビシアエの完全長のSpo11のN末端とともにコードする融合体を構成的ADH1プロモーターの制御下に置き(図1A)、spo11Δ株にてTRP1遺伝子座に組み込んだ。遺伝子交配によりホモ接合性二倍体を誘導した(表1)。
Figure 0004439398

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発現を検証するために、単調な増殖又は胞子形成培地に移した後様々な時間で全RNAを分析し、ノーザンブロット解析の対象とした。野生型二倍体では、SPO11のmRNAは、胞子形成培地に移した後蓄積し始め、それまでに子嚢胞子の形成が始まる7時間後に、低下する(図1B)。対照的に、GAL4BD−SPO11のmRNAは、栄養細胞及び減数分裂細胞の双方で検出されるが、SPO11のmRNAのように、あとの時点(6〜7時間)で減少する。転写レベルの定量(図1C)は、融合体が単調に増殖する細胞で高度に発現されること、及びGAL4BD−SPO11のmRNAのレベルが減数分裂前期(2〜6時間)中のSPO11のmRNAのレベルよりもほんの少し高いにすぎないことを示していた。そのもっともらしい理由は、SPO11プロモーターは強く誘導される一方、ADH1プロモーターの活性は、有糸分裂細胞よりも減数分裂細胞で低いことである。最後に、ウエスタンブロット解析では、融合タンパク質は、有糸分裂及び減数分裂中のGAL4BD−SPO11細胞で発現され、予想通りのサイズ、6305kDa(図1D)であることが示された。
1.2.Gal4BD−Spo11は、spo11Δ株の胞子形成欠損を補完する
二倍体spo11Δ細胞は、減数分裂組換えが開始されない場合、染色体が異常に分離するので、胞子形成はできるが、生存不能の子孫を生じる。本発明者らは、Gal4BD−Spo11タンパク質が、spo11Δ二倍体の胞子形成欠損を補完するかどうかを調べた。野性型SPO11(CRD5740)株及びspo11Δ(ORD5805)株と同様に、GAL4BD−SPO11spo11Δ二倍体(ORD5806)も効率的に胞子形成を行い(およそ80%)、主として四胞子子嚢を生じた。四分子解析は、予想通り、spo11Δ二倍体により生じた胞子は発芽しなかった(0/512)。対照的に、Gal4BD−Spo11融合タンパク質は、SPO11二倍体の子孫で見られた(505/526、96%)と同様に、spo11Δの胞子に対して完全な生存性を回復した(531/552、96%)。胞子の高い生存性は、GAL4BD−SPO11及びSPO11(ORD5817)の双方を含有する二倍体でも同様に見い出された。要するに、これらの結果は、GAL4BD−SPO11構築体は、機能的であり、有害な効果を付与することはないことを明らかにしている。
1.3.Gal4BD−Spo11は、天然の部位でDSBの形成を促進する
胞子の生存性が各対の相同染色体対のそれぞれの間での減数分裂組換えに依存するので、GAL4BD−SPO11によるspo11Δ欠損の補完は、該融合タンパク質がspo11ΔのDSB欠損をも救済する可能性があることを示唆した。この考えを試すために、減数分裂DSBが通常形成するゲノムの数箇所の領域を調べた。第3染色体のYCR043c〜YCR048wの領域は、YCR047c〜YCR048w遺伝子間領域における強力なホットスポットを含む多数のDSBを含有しいる(Baudat & Nicolas, 1997)。図2Aに示すように、SPO11及びGAL4BD−SPO11の減数分裂細胞の双方において、これらのDSBは形成される。GAL4BD−SPO11株では、YCR048wのコーディング領域に2つの新たなDSB部位を見ることができ、それは、天然のDSBが一般にプロモーター含有領域に制約されているので、注目に値する(図2A、及び以下を参照のこと)。DSBバンド強度の定量的解析は、この9.6kbの染色体領域における減数分裂DSBの累積度数が、双方の株で類似することを示した(およそ13±2%)。ほとんどの場合、DSBは、SPO11二倍体よりもGAL4BD−SPO11二倍体中のYCR047c48w遺伝子間領域において、より低い頻度で形成されるが(それぞれ11±1%対5±1%)、任意の部位でのDSB頻度も近似していた(図2B)。興味深いことに、この部位でのDSB頻度の低下は、YCR048wのORFにおける新しいDSBの出現によって局所的には相殺され(4±1%);この再分布は、SPO11が開始させるDSBについて以前報告されたように(Wu & Lichten, 1995)、隣接するDSB部位間の競合について示唆している。そのほかの2つのよく性状分析された領域、ARG4遺伝子座(第8染色体)及びCYS3遺伝子座(第1染色体)(Vedel & Nicolas, 1999)も調べた。いずれの場合も、位置決め及び強度に関して、SPO11細胞及びGAL4BD−SPO11細胞において、近似した減数分裂DSBのプロフィールが検出された(図2C及び2D)。要するに、これらの結果は、Gal4BD−Spo11タンパク質は、野生型Spo11により促進されるものに匹敵する頻度で天然の部位にてDSB形成を促進し、それによってspo11Δの胞子の生存不能を完全に補完する能力を説明しうることを明らかにしている。
1.4.Gal4BD−Spo11は、コンセンサスGal4DNA結合部位の近傍でDSB形成を促進する
上述のように、YCR048wのコーディング領域内で2つの追加のDSB部位が認められた:YCR048wのORFの5’末端近傍の強力な部位及びさらに下流のずっと弱い部位である(図2A)。これらの新しい部位は、Spo11タンパク質ドメイン自体、少なくともSpo11がすでに活性化されているYCR048w遺伝子座のような領域のターゲティング特異性における異常の結果生じた可能性があり、又はそれらは、Gal4コンセンサス結合部位の偶然の存在を反映する可能性がある。実際、YCR048w配列の検討は、ORFの内部、翻訳開始部位からそれぞれ+295nt及び+1320ntの位置でそのような2つの部位を示し、この遺伝子座における2つの新しいGal4BD−Spo11に特異的なDSBの推定位置に相関していた。この所見は、Gal4BD−Spo11タンパク質が少なくともこのDSB豊富なドメイン(Baudat & Nicolas, 1997)で特異的な配列に対してDSBを標的化することができることを示している。
Gal4DNA結合ドメインをSpo11につなぐことによって、よく性状分析されたGal4結合部位に減数分裂DSBを標的化できるかどうかを確定するために、本発明者らは、ガラクトースの異化に関与しているUASGAL部位を含有する幾つかの遺伝子座を調べた。GAL2プロモーター領域は4つのCCG(N)11GGC配列を含有し(ORD6632のGAL2プロモーターの配列決定で検証)、そのうち2つは、インビボで構成的にGal4に結合している(Huibregtse et al., 1993)。SPO11株では、DSBはGAL2遺伝子座ではほとんど検出可能ではないということは、この領域が頻繁な天然のDSB部位ではないことを示している。対照的に、GAL4BD−SPO11株ではUASGAL部位の近傍のGAL2プロモーター又はUASGAL部位にて顕著なDSBを観察することができた(図3A)。YCR043c〜YCR048w区間で認められたものと同様に、DSBは、細胞を胞子形成培地に移して2時間以内にGAL4BD−SPO11減数分裂細胞におけるGAL2遺伝子座に現れ、その強度は減数分裂過程を通して増加し、8〜10時間で最大に達した(図3A)。幾つかの別々の実験の定量的解析は、GAL4BD−SPO11株におけるGAL2 DSBの頻度がおよそ12±2%であるのに対して、野生型株では0.6%以下しか認められず、20倍の刺激であることを示した(図3)。
これらの所見を一般化するために、本発明者らは、GAL2のようにガラクトースの存在下でGal4タンパク質により転写が誘導されるGAL7、GAL10及びGAL1遺伝子の近傍でのDSBの標的化を調べた。これらの遺伝子座では、SPO11二倍体においては減数分裂DSBは形成されなかったが、対照的に、GAL4BD−SPO11二倍体において関連するUASGAL部位又はその近傍でそれは容易に検出可能だった(図3B)。定量的解析は、GAL7上流領域については4±1%、広範に転写されたGAL1〜GAL10の遺伝子間領域については2±1%の頻度をもってDSB形成の実質的刺激を示した。これは、GAL2プロモーターで見られた(図3A)12±2%の頻度よりも顕著に低い。要するに、これらの結果は、Gal4BD−Spo11タンパク質が、Gal4DNA結合部位に対して減数分裂特異的DSBを標的化することができ、種々の強度の新規のゲノムDSB部位を創出することを示している。
最後に、Gal4BD−Spo11融合タンパク質が単独でこれらの新しいDSBの出現を担当することを数種の対照株によって検証した。第1に、Spo11の触媒チロシン残基が触媒として不活性のフェニルアラニン残基に置換された(Bergerat et al., 1997)Gal4BD−Spo11Y135F融合タンパク質を発現するspo11Δ株は、YCR043c〜YCR048w領域又はGAL2遺伝子座のいずれにおいても減数分裂DSBを示さなかった。第2に、Gal4結合ドメインを単独で、又はRbp5タンパク質(その機能が組換えの開始とは無関係であるRNAポリメラーゼのサブユニット)との融合で発現しているSPO11株及びpADH1::SPO11構築体(Gal4BDなし)を発現している株は、YCR043c〜YCR048w領域でDSBを示したが、GAL2遺伝子座では示さなかった。まとめると、これらの対照実験は、Gal4結合部位近傍でのGal4BD−Spo11依存性DSBの刺激には、キメラタンパク質のGal4BD成分及びSpo11成分の双方が必要とされることを明らかにしている。
1.5.Gal4BD−Spo11融合物は、GAL2遺伝子座での組換えを強く刺激する
それからは生存可能な組換え体を回収することができないrad50S株において上記のDSB実験を行った。GAL4BD−SPO11が促進した新しいDSBが組換え可能かどうかを確定するために、RAD50バックグラウンドでのGAL2領域における減数分裂DSB断片をまず調べて、Spo11で誘導したDSBのようにそれらがプロセッシングを受けているがどうかを見た。DSBは、個々のrad50Sのバンドよりも大きな移動度の断片のスメアとして検出されたということは、新しいGAL2のDSBはプロセッシングを受けていることを示している。さらに、スメアの一過性の形質(3時間までに出現し、7〜9時間の間に消失する)は、これらのDSBが正常の動態により修復されていることを示唆している。
次いで、Gal4BD−Spo11依存性DSBが相同組換えによって修復されるかどうかを評価するために、GAL2遺伝子座における減数分裂の遺伝子変換の頻度を測定した。この目的で、変異対立遺伝子、gal2−Bspを構築した。この変異対立遺伝子はGAL2のORFでの197位にフレームシフトを含有し、SPO11及びGAL4BD−SPO11の双方のバックグラウンドでのGAL2/gal2−Bspへテロ接合体を導き出した。SPO11二倍体により生じた218の四胞子四分子からは、たった5つの変換事象しか見い出せなかった。対照的に、GAL4BD−SPO11株については、解析した212の四分子の中で双方向(3:1及び1:3)で55の変換事象が観察され(26%)、SPO11株で見られたレベルの10倍増加した(図4C)。Gal4BD−Spo11促進DSBは、他の遺伝子座での組換えも開始することができ:四分子解析は、ARG4天然ホットスポットにおける減数分裂の遺伝子変換のレベルは、SPO11二倍体とGAL4BD−SPO11二倍体で類似していた。これらの結果は、GAL4BD−SPO11株におけるGAL2プロモーターで形成されるDSBは、組換え可能であり、Spo11が誘導切断のように挙動することを示している。
1.6.Gal4BD−Spo11はDSB形成に関して通常不活性である大きな領域内での切断を促進する
8つの遺伝子間プロモーター含有領域を含有するGAL2を中心としたおよそ20kbの大きな区間(第12染色体上のYLR072w〜YLR084cの間のORF)に対するGal4BD−Spo11活性の解析(図5A)。SPO11株ではこの区間にDSBは認められなかった。GAL4BD−SPO11株では、GAL2プロモーター領域がDSBを検出できた唯一の部位であった。この区間には他にGal4コンセンサス配列はないので、これらの結果は、Gal4BD−Spo11のDSB活性の3つの重要な特徴を強調している。第1に、GAL2近傍におけるDSBの刺激は特異的に標的化されていた。第2に、GAL2における切断は、そのほかのDSBのすぐ近傍での形成を促進しなかった。第3に、第3染色体のYCR048wにおけるDSBについて認められたものとは対照的に、新しいGAL2のDSBは天然では不活性である染色体の領域で生じた。
1.7.Gal4BD−Spo11によるDSBの形成には、他の既知のDSB遺伝子の活性を必要とする
S.セレビシアエにおける天然部位での野生型レベルのDSBの形成には、SPO11に加えて14の他の遺伝子を必要とすることが知られている。将来のDSB部位にSpo11を動員するのに1以上の産物を必要とするのなら、Spo11に対してGal4DNA結合ドメインを追加することは、少なくともGal4結合部位でのDSBについてはこの必要条件を迂回する可能性がある。サザンブロット解析によれば、SPO11又はGAL4BD−SPO11のバックグラウンドのいずれかでのrec102、rec103/ski8、rec104、rec114、mei4、mer2/rec107、mre2/nam8、mre11、rad50及びxrs2の無発現変異は、YCR043c〜YCR048wの区間又はGAL2での減数分裂DSBを示さなかったが、red1、mre4/mek1、hop1及びmer1の無発現変異は、低下したが検出可能なレベルのDSBを示した。量的には、GAL2遺伝子座では、red1変異は、Gal4BD−Spo11が促進するDSBの頻度を約3倍低下させ、mre4/mek1及びhop1変異は10倍低下し、mer1変異はDSBの形成をほぼ完全に失っていた。YCR047c〜48w領域(YCR048wプロモーター+ORF)では、幾分異なって、mre4/mek1変異は、SPO11又はGAL4BD−SPO11の株いずれでも影響がなく、red1、mer1及びhop1の変異は、双方の株でますます抑制的な効果を有した。これら突然変異の第3染色体及びGAL2への差次的影響は、遺伝子座特異的な変動を反映している可能性がある。結局のところ、SPO11株においてDSB形成に必須又は重要であるこれらの遺伝子すべては、GAL4BD−SPO11株においても同様に必要であるので、それらは標的部位の選択においてSpo11を補佐しないと結論付けることができる。
1.8.Gal4BD−Spo11の切断はClb5Clb6の活性も必要とする
B型のサイクリンであるCLB5及びCLB6は減数分裂の複製及び減数分裂DSBの形成に必要とされる。Gal4BD−Spo11が促進するDSBもClb5及びClb6の活性に依存しているかどうかを確定するために、GAL4BD−SPO11構築体を含有するclb5及びclb6の二倍体(それぞれ、ORD6534及びORD6551)でDSBの形成を測定した。図6に示すように、これらの株ではYCR048w又はGAL2遺伝子座のいずれにおいてもDSB形成が検出されなかった。これは、Spo11への非相同のDNA結合ドメインの追加がClb5及びClb6の活性の要求を迂回せず、したがって、DSBの誘導に関連する減数分裂複製の欠損を克服できないことを示している。そのほかのDSB遺伝子についての明らかにされた要求と併せて、この結果は、天然ドメイン及び標的化ドメインの双方におけるDSBの形成について、Gal4BD−Spo11タンパク質がSpo11タンパク質と同じ(トランスに作用する)遺伝制御を受けていることを示している。
1.9.非相同の減数分裂特異的プロモーターを用いたGal4BD−Spo11の切断
GAL4BD−SPO11の構築体を、減数分裂の極めて早期に発現するIME1プロモーター(Guttmann-Raviv et al., 2001)、又は減数分裂の早期に発現するREC8プロモーターの制御下に置いた。プロモーター−GAL4BD−SPO11構築体の得られた配列をそれぞれ、図9及び図10に示す。図7は、これらの構築体の両方がYCR048w領域(図7A)又はGAL2領域(図7B)のいずれかにおいてUAS部位でDSB形成を誘導したことを示す。
1.10.DSB形成に要求される別のタンパク質によってSpo11を動員することができる
Rec104は、酵母においてDSBを誘導するのに要求されるタンパク質である。Gal4BD配列と同じオープンリーディングフレームでそのコーディング配列をクローニングし、Gal4BD−Rec104融合タンパク質の配列を作製し、構成的なADH1プロモーターの制御下に置いた。得られた配列を図12に示す。
図8は、酵母におけるGAL4BD−REC104構築体の存在が、UAS部位において二本鎖切断を誘導し、従ってGAL4BD−REC104はこれらの部位でSpo11を動員できることを示すという事実を説明する。
1.11.常在GAL4遺伝子の欠失はUAS特異的二本鎖切断を増やす
酵母のゲノムから常在のGAL4配列を欠失させ、それにGAL4BD−SPO11構築体を導入した。依然としてGAL4BDコーディング配列を抱える酵母と比較すると、UAS部位で誘導されたDSBの数は多かった。このことはおそらくGal4BD−Spo11タンパク質と常在Galタンパク質との間のUAS部位で競合がないことによった。
実施例2:植物における減数分裂組換えの標的刺激
2つのオリゴヌクレオチド、MG133(5’−GAAACTCGGGATCCATGGAGGGAAAATTC−3’)及びMG134(5’−GGAGACTCGCTCGAGGCTCAAGGAGA−3’)を用いて、AtSPO11タンパク質(Grelon, Vezon et al., 2001)をコードするcDNAをPCRにより増幅し、pCR−BluntII−Topo(インビトロゲン)にクローニングし、配列決定してプラスミド、pVeCM2を得た。pVeCM2からcDNAをpBluescriptKSのBamHI及びSpeI部位の間に再クローニングし、プラスミド、pVeCM12を得た。2つのオリゴヌクレオチド、CM1(5’−gaCTGCAgaaagagATGAAGCTACTGTCTTCTAT−3’)及びCM2(5’−CGGGGCCTCCATGGCCATAAA−3’)を用いて、pAPIプラスミドからPCRにて、Gal4DNA結合ドメイン(GAL4BD)をコードするDNA断片を増幅した。GAL4BDのATG−NcoI断片(455bp)に相当するこのPCR断片をpCR−BluntII−Topoにクローニングしてプラスミド、pVeCM15を得、配列決定した。Gal4BDを含有するpVeCM15からの、及びAtSPO11−1ATGの上流の−8〜−1の塩基に相当するATG8塩基の5’及びPst1部位における(CTGCAgaaagagATG)Pst1−Nco1のDNA断片をpVeCM12のPst1とNco1の部位の間にクローニンフしてプラスミド、pVeCM20を得た。pVe20は後にAtSPO11−1の−8〜−1の塩基が続くPst1を含有し、その後にAtSPO11−1の完全なcDNA(1089bp)が融合で続くGAL4BDを含有する。2つのオリゴヌクレオチド、CM3(5’−ccatctctttcTGCAGtcaaaactgaaaaatg−3’)及びCM4(5’−ATGGGCCCgcctttgttttatctctcctcaccgta−3’)を用いて、Mathilde Grelonが単離したAtSPO11−1プロモーター(ジーンバンク、AP000375)の断片をPCRにより増幅し、pCR−BluntII−Topoにクローニングし、プラスミドpVeCM14を得て、配列決定した。AtSPO11−1プロモーターの−1352〜−8の塩基を含有するpVeCM14からのApa1−Pst1断片をApa1とPst1の間でpVeCM20にクローニングして、プラスミドpVeCM22を得た。次いで、AtSPO11−1の−2266〜−1324の領域を含有するApa1−BseR1の断片をApa1とBseR1の部位の間でpVeCM20にクローニングして、プラスミドpVeCM25を得た。AtSPO11−1プロモーター/GAL4BD−AtSPO11−1のcDNAの構築体を含有するpVeCM25からのApa1−Spe1断片を再び配列決定した。11のヌクレオチド(CCCATCTCTTT)の挿入が、Pst1クローニング部位の5’にまさに存在した。従って、プロモーターは、Pst1クローニング部位のまさに5’にて11ヌクレオチドの挿入を伴った、Atプロモーターの−2266〜−1の塩基に相当する。pVeCM25からのApa1−Spe1断片をApa1とSpe1の部位の間でpCambia1380(オーストラリア、キャンビアから市販)にクローニングし、プラスミド、pVeCM26を得た。形質転換によりpVeCM26をアグロバクテリウム株、C58C1pMP90に導入した。この株を使用して、AtSPO11−1−1突然変異についてヘテロ接合体であるアラビドプシス・サリアーナ系統DYK209(Grelon et al., 2001)を形質転換した。ハイグロマイシンによりインビトロで形質転換植物T1を選抜し、土壌に移し、PCRで解析した。1つの植物、Atspo11−1変異についてホモ接合体であり、AtSPO11−1プロモーター−GAL4BD−AtSPO11−1のcDNA導入遺伝子を含有するAtpVeCM26.9は、Atspo11−1ホモ接合体植物で通常見られるよりも長い種子の鞘を有していた。ハイグロマイシンで選抜し、土壌に移し、PCRで遺伝子型を決定したこのAtpVeCM26.9の子孫の中で、9つがAtspo11−1−1変異についてホモ接合体であり、AtSPO11−1プロモーターを含有していた。GAL4BD−AtSPO11−1のcDNA導入遺伝子は、鞘当たり平均3.7±0.7の種子を有したが、それは、Atspo11−1−1変異についてホモ接合体である植物で検出される鞘当たりの種子数(Grelon et al., 2001)よりもおよそ2倍多かった。
上述のように観察された11ヌクレオチドの挿入を回避するために、別のプロトコールを用いてPAtSPO11−GAL4BD−AtSPO11−1構築体を再び作成し、図13に示す配列を得た。次いで上述のようにアラビドプシス・サリアーナの形質転換を行った。
次いで、ホモ接合体の変異体及び野生型の株において、アラビドプシスのゲノムに存在するGAL4BDに対する天然の標的の上流及び下流に存在するマイクロサテライトのマーカー(40を超えるさらに厳密なコンセンサス配列、及び数百までの最も変性させた、すなわち、UASの各側たったの3bp)を解析することによって減数分裂組換えの刺激を確定した。
2つのマーカーの間の乗換えを検討するために、1つのGAL4BD認識配列によって分離される、マーカーとしての2つの耐性遺伝子を示す細胞株を構築した。
実施例3:マウスにおける部位特異的及び/又は増加した減数分裂組換えの誘導
マウスのシナプトネマ構造をコードするSycp1遺伝子は、減数分裂の接合期及びパテキン期の双方で発現される(Sage, Martin et al., 1999)。従って、減数分裂早期でSPO11遺伝子を発現させるのにそれを使用することができる。減数分裂早期でGal4BD−mSpo11融合タンパク質を発現させることには3つの利点がある:それは、新しい部位での減数分裂組換えの標的化を可能にし、関連した染色体の変化及びマウスの発生における組換えを開始することの影響を追跡するのを助けることを可能にする。
Gal4BD−mSpo11キメラDNAを細菌プラスミドで、Sycp1コーディング配列の上流の領域又は早期減数分裂に機能的な別のプロモーター断片の制御下に置いた。
Gal4BDコーディング配列を、Metzler-Guillemain C. 及びB. de Massy (2000)により記載されたマウスのcDNA SPO11配列と同位相に置くことによって、mSpo11タンパク質がマウスのSpo11タンパク質であるGal4BD−mSpo11の融合タンパク質をコードする配列を構築した。たとえば、以下のマルチステップクローニング方法:プライマー、APG4up(5’−GAGATTAATTAAGGCCATATGAAGCTACTGTCTTCTATCGAA)及びAPG4LO(5’−AATCCTGTTAACAATGCTTTT)を用いPCRにより、pAP1のGal4BD断片増幅し、pGEM−TEasy(プロメガ)にクローニングし、配列決定して、Gal4BD配列のATG翻訳開始部位を重ね合うNdeI部位を含有するpAP15を創出することにより、これを行うことができる。
次に、pAP15をPacI−HpaIにより切断し、5’Gal4BD(NdeI含有部位)配列を含有する断片をpAP1ベクターにクローニングし、PacI−HpaIにより切断してpADH1プロモーターを外し、プラスミドpAP16を創出した。
次に、PacI−SacIでpAP16を切断し、KanMXマーカー(G418耐性)を外し、平滑化し、再連結してpAP17を創出した。
次いで、S.セレビシアエのSpo11断片を含有するpAP17のBamHI−PstI断片をSV40のポリアデニル化部位を含有するpCMVβ(クロンテック)のBglII−PstI断片に置き換えて、プラスミドpAP3を創出した。
次に、SyCP1のプロモーターを含有するpTAg0.8のEcoRI−SalIの平滑化して埋めた断片を平滑化して埋め、pAP3のEcoRI部位にクローニングしてpAP18を創出した。
次いで、マウスSPO11のcDNAを含有するプラスミド、pGEM−tSPO11sのEcoRI断片をプライマーでPCRにより増幅し、隣接するSfiI及びXmaI制限部位を加え、pGEM−tEasyベクター(プロメガ)にクローニングして、プラスミド、pAP19を得、配列決定した。
最後に、pSycp1プロモーター(TaqI−EcoRI断片)続いてGal4BD断片(EcoRI−SfiI)を含有するpAP19のSfiI−XmaI断片をマウスSPO11のcDNA(SfiI−XmaI断片)に融合させ、ポリA断片(XmaI−PstI)で終結させ、細菌中で複製できるベクターによって運ばれる、種々の成分の交換に好都合な基準寸法のカセットを創出した。
このpGal4BD−mSpo11プラスミドを線状化し、微量注入法によりマウスの卵に導入した。次いで、Sycp1/Gal4BD−mSpo11導入遺伝子に特異的なプローブによるゲノムDNAの解析によりマウスを選抜した。次いで正常なマウスと特徴解析されたマウスの交配を介して独立したSycp1/Gal4BD−mSpo11導入遺伝子のファミリーを確立した。
次いで、野生型及びmSPO11遺伝子(Baudat, Manova et al., 2000)を不活化した変異型のマウスにおいて、動物における繁殖性に対する影響を観察し、及びGal4タンパク質に対するコンセンサス認識部位を含有する染色体領域をプローブとしたサザンブロット又はPCRにより、子孫、配偶子、又は減数分裂細胞の調製物において多型マーカー間の減数分裂組換え頻度をモニターすることによって導入遺伝子発現の減数分裂における機能性を確定した。この標的部位は、天然の配列、又はGALUASモチーフの1以上のコピーを有するトランスジェニック配列のいずれかである。
実施例4:ショウジョウバエにおける相同組換えの改善
ドロソフィラは、実験用生物として多数の利点を提供している。しかしながら、2つの他の広く使用されている真核生物のモデル系である酵母やマウスと比べて、ドロソフィラでは、導入DNAと相当する染色体上の遺伝子座との間で相同組換えを生じることができない。酵母やマウスのゲノムを特異的に改変する能力によって、そのDNAクローンや配列が利用可能である、遺伝子における突然変異を生じる又は救う迅速で簡便な方法が提供されている。最近、Rong及びGolicは、DNAのflipリコンビナーゼ切り出しから生じるDNAの直鎖状分子における二本鎖切断の誘導剤として、イントロン限定酵素、I−Scelを用いた標的化相同組換えのための新しい技術を開発した(Rong & Golic, 2000)。この方法で、彼らは黄色突然変異を救済し(Rong & Golic, 2000)、pugilist遺伝子を破壊し、より最近、NlacZ、GC、p53及びCG11305の遺伝子を破壊した。このノックアウト技術は極めて効率が低く、突然変異は2工程で生じる。
ドロソフィラにおいて「ノックアウト」を生じ、標的化相同組換えの効率を高める新しいアプローチを開発するためにI−Scel酵素の代わりに実施例1で記載したGal4BD−Spo11融合タンパク質を使用することができる。この目的で、Gal4BD−Spo11をコードする配列をドロソフィラ用の発現ベクター(P(Casper−hs)、Pirrotta, 1988)に挿入した。このベクターでは、Gal4BD−Spo11配列は熱ショックプロモーターの制御下に置いた。ドロソフィラでは、この転移因子の5つの異なった挿入物が得られた。
配偶子が生じる発生期にGal4BD−Spo11の誘導により、Spo11相同ドロソフィラにおけるmeiW68不稔表現型(McKim & hayashi-Hagihara, 1998)の救済を調べた。
yellow遺伝子に対するI−Scel認識配列をGAL4結合ドメインに認識されるUAS配列で置き換え(P要素を用いて)、gal4−meiW68株を構築した。Rong及びGolicの黄色救済(yellow rescue)を繰り返し、2つの方法の効率を比較した。
これらの実験を行うために以下のプラスミドを使用した:
−発現ベクター:pCasper−hs(Pirrotta, 1988)
−熱ショックプロモーターhs70(Pirrotta, 1988)
−標的p(UAS):UAS配列(5)によるI−Scel部位の置換により改変されたy−ドナー(Rong & Golic, 2000)
この実験で使用したショウジョウバエの系統は、Canton−Special(CS)yであった。
上述のように、Gal4−Spo11の効果をアッセイする方法は、meiW68の表現型の救済及びy(正常な体色)の救済である。
実施例5:組換えの少ない染色体間の減数分裂組換えの刺激
相同染色体間の効率的な遺伝子組換えは、実施例1で例示したようにSpo11タンパク質によって形成されるDNA二本鎖の切断のような、開始するための損傷の形成を必要とする。従って、Spo11標的部位を欠く染色体の組換えは乏しい。実施例1で記載したGal4Bd−Spo11融合タンパク質を用いて、酵母又は非酵母のDNAから成る天然の又は人工の(YAC)染色体に沿った、天然の又は人為的に導入されたGal4結合部位で組換えの開始を刺激することができる。同様に、組換えに乏しいバクテリオファージλDNAの主鎖を持つ酵母の直鎖状プラスミド間で組換えを刺激してもよい。
効率的な遺伝子組換えはまた、関与する分子間でほぼ完全な相同性を必要とする。多様性の程度に従って、相同染色体が減数分裂で多様に組換え、乗換えのレベルが低下した結果、配偶子の生存性が低下し、減数分裂I又はIIの相同体の不分離と一致して異数体産物の割合が増す。サッカロマイセス・セレビシアエ及びサッカロマイセス・カールベルゲンシスの相同な第5染色体は、減数分裂で事実上組み換えないが、人工的に創った相同性の短い領域は、おそらく隣接する部位で開始されるヘテロ二本鎖の中間体形成の促進によって減数分裂での乗換えを誘導することが見い出された。実施例1に記載したGal4BD−Spo11融合タンパク質を用いて、酵母又は非酵母の同質DNAから成る天然の又は人工的な(YAC)染色体に沿った、天然の又は人工的に導入したGal4結合部位で組み換えの開始を刺激することができる。
実施例6:有糸分裂細胞における相同組換えの刺激
減数分裂の間の高レベルの相同組換えは、Spo11依存性の二本鎖切断の形成による減数分裂の間のSpo11−高レベルの相同組換えの形成によって誘導されるが、それは、また、少なくとも14のその他のタンパク質(実施例1ではDSB遺伝子と呼ばれる)の発現を必要とする。それらの一部は減数分裂の誘導で発現されるだけである。Spo11を標的部位にもたらすトランスに作用する因子に対する要求を迂回することができるGal4BD−SPO11融合タンパク質の新規なDNA結合特性を利用して、有糸分裂細胞においてDSBの形成に必要とされる追加の遺伝子を発現させることによって、有糸分裂細胞においてSpo11依存性のDNA切断活性を得る試みを達成した。幾つかのアプローチ:有糸分裂で発現されるプロモーターを背景にした個々の遺伝子及び/又はcDNA遺伝子ライブラリの非相同発現、又は有糸分裂で増殖している細胞での発現を抑える転写因子の突然変異による変更によってこれを達成することができる。
Figure 0004439398

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GAL4BD−SPO11の構造及び発現を示す図である。 GAL4BD−SPO11の構造及び発現を示す図である。 GAL4BD−SPO11の構造及び発現を示す図である。 GAL4BD−SPO11の構造及び発現を示す図である。 SPO11及びGAL4BD−SPO11の二倍体における天然のYCR043c−YCR048w、ARG4及びCYS3のホットスポットでの減数分裂DSBの形成を示す図である。 SPO11及びGAL4BD−SPO11の二倍体における天然のYCR043c−YCR048w、ARG4及びCYS3のホットスポットでの減数分裂DSBの形成を示す図である。 SPO11及びGAL4BD−SPO11の二倍体における天然のYCR043c−YCR048w、ARG4及びCYS3のホットスポットでの減数分裂DSBの形成を示す図である。 SPO11及びGAL4BD−SPO11の二倍体における天然のYCR043c−YCR048w、ARG4及びCYS3のホットスポットでの減数分裂DSBの形成を示す図である。 UASGAL配列のある遺伝子座におけるGAL4BD−SPO11が促進するDSBを示す図である。 UASGAL配列のある遺伝子座におけるGAL4BD−SPO11が促進するDSBを示す図である。 GAL4BD−SPO11株におけるGAL2遺伝子座で組換えは刺激されることを示す図である。 GAL4BD−SPO11株におけるGAL2遺伝子座で組換えは刺激されることを示す図である。 GAL4BD−SPO11株におけるGAL2遺伝子座で組換えは刺激されることを示す図である。 GAL2遺伝子座は不活性領域に位置することを示す図である。 SPO11及びGAL4BD−SPO11の株におけるDSB形成に対する遺伝的必要条件ことを示す図である。 YCR048w領域における減数分裂DSBの形成を示す図である。 GAL2領域(図7B)における減数分裂DSBの形成を示す図である。 YCR048w領域及びGAL2領域における減数分裂DSBの形成を示す図である。 IME1−Gal4BD−Spo11構築体の配列を示す図である。 REC8−Gal4BD−Spo11構築体の配列を示す図である。 ADH1−QQR−Spo11構築体の配列を示す図である。 ADH1−Gal4BB−REc104構築体の配列を示す図である。 AtSPO11−Gal4BD−AtSpo11−1構築体の配列を示す図である。

Claims (37)

  1. 減数分裂時の分裂する細胞における相同染色体の間の組換えを増やす方法であって、ヒト細胞を除き、
    (i)プロモーターの制御下で、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含み、DNAの二本鎖切断を誘導する、融合タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入する工程、及び
    (ii)前記細胞における相同染色体の間の組換えを増やすように細胞を分裂させる工程を含む方法。
  2. 工程(ii)の前に、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインによって認識されるDNA配列を前記細胞のゲノムに導入する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記プロモーターが、減数分裂特異的なプロモーターある、請求項に記載の方法。
  4. 前記減数分裂特異的なプロモーターが、IME1プロモーター又はREC8プロモーターである、請求項に記載の方法。
  5. 前記細胞が真核細胞である、請求項1〜のいずれか一項記載の方法。
  6. 前記細胞が、真菌、植物細胞、哺乳類細胞及び昆虫細胞より成る群から選択される請求項に記載の方法。
  7. 前記細胞が、Spo11タンパク質に作動可能に連結されている前記DNA結合ドメインによって認識される1以上の配列を有する人工染色体を含む、請求項1〜のいずれか一項記載の方法。
  8. 工程(i)において、細胞に導入される核酸が細胞ゲノムに安定して組み込まれる請求項1〜のいずれか一項記載の方法。
  9. 前記細胞が酵母であり、そして工程(i)で導入される核酸がGal4BD−Spo11融合タンパク質をコードする、請求項1〜のいずれか一項記載の方法。
  10. 減数分裂時の細胞において同一染色体が有する2以上の多型の間で標的組換えを行う方法であって、ヒト細胞を除き、
    (i)プロモーターの制御下で、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含み、DNAの二本鎖切断を誘導する、融合タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入し、ここで前記DNA結合ドメインが前記2以上の多型の間に置かれた配列を認識する工程、及び
    (ii)前記細胞において前記2以上の多型の間で組換えが生じるように細胞を分裂させる工程
    を含む方法。
  11. 工程(ii)の前に、Spo11タンパク質に作動可能に連結されている前記DNA結合ドメインによって認識されるDNA配列を、前記2以上の多型の間で、前記細胞のゲノムに導入する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
  12. プロモーターが、減数分裂特異的なプロモーターある、請求項10に記載の方法。
  13. 前記減数分裂特異的なプロモーターが、IME1プロモーター又はREC8プロモーターである、請求項12に記載の方法。
  14. 前記細胞が真核細胞である、請求項1013のいずれか一項記載の方法。
  15. 前記細胞が、真菌、植物細胞、哺乳動物細胞及び昆虫細胞より成る群から選択される請求項10に記載の方法。
  16. 前記細胞が、Spo11タンパク質に作動可能に連結されている前記DNA結合ドメインによって認識される1以上の配列を有する人工染色体を含む請求項1015のいずれか一項記載の方法。
  17. 前記細胞が真菌であり、そして工程(i)で導入される核酸がGal4BD−Spo11融合タンパク質をコードする、請求項1016のいずれか一項記載の方法。
  18. ヒト細胞を除く、減数分裂時の細胞において遺伝子変換を誘導する方法であって、
    (i)減数分裂特異的なプロモーターの制御下で、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含み、DNAの二本鎖切断を誘導する、融合タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入し、ここで、前記DNA結合ドメインが多型の近傍に置かれた配列を認識する工程、及び
    (ii)遺伝子変換が生じるように細胞を分裂させる工程
    を含む方法。
  19. ヒト細胞を除く、減数分裂時の細胞において人工染色体に減数分裂組換えを誘導する方法であって、
    (i)減数分裂特異的なプロモーターの制御下で、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含み、DNAの二本鎖切断を誘導する、融合タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入し、ここで前記DNA結合ドメインが前記人工染色体が有する1以上の配列を認識する工程、及び
    (ii)相同な人工染色体の間で減数分裂組換えを生じるように細胞を分裂させる工程
    を含む方法。
  20. 前記細胞が酵母であり、前記人工染色体がCGGN11CGG配列を伴う1以上の部位を有するYACであり、前記融合タンパク質がGal4BD−Spo11融合タンパク質である、請求項19に記載の方法。
  21. ヒト生物を除く、生物の変異体を創生する方法であって
    (i)減数分裂特異的なプロモーターの制御下で、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含み、DNAの二本鎖切断を誘導する、融合タンパク質をコードする核酸を前記生物の細胞に導入し、ここで前記DNA結合ドメインが前記細胞のゲノムが有する1以上の配列を認識する工程、
    (ii)前記細胞に減数分裂を行わせて、前記生物の自然の減数分裂に比して、高い比率で及び/又はそれとは異なった遺伝子座で、前記細胞の相同染色体の間で減数分裂組換えを生じさせる工程、及び
    (iii)工程(ii)において得られた細胞により前記生物の変異体を創生する工程
    を含む方法。
  22. 前記生物が、真菌、植物、哺乳類及び昆虫より成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
  23. 2以上の形質の存在について前記変異体をスクリーニングする工程をさらに含む、請求項21又は22に記載の方法。
  24. Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質において、Spo11部分がSpo11を動員することが可能であるSpo11のパートナーに置き換えられる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記パートナーがREC104である、請求項24に記載の方法。
  26. 生物のゲノムを解析する方法であって、
    (i)請求項2123のいずれか一項記載の方法を実施することにより前記生物の変異体を創生する工程、
    (ii)前記変異体の特定の形質の遺伝子解析及び表現型解析を行う工程、及び
    (iii)前記生物のゲノムを解析する工程
    を含む方法。
  27. Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸を含有し、ここで前記融合タンパク質が以前は不活性の領域で二本鎖切断を誘導することができる、請求項1〜24のいずれか一項記載の方法を実施するためのキット。
  28. Spo11が、真菌、植物細胞、哺乳類細胞及び昆虫細胞より成る群から選択される細胞に由来するSpo11タンパク質の配列を有する、請求項25に記載のキット。
  29. Spo11タンパク質に作動可能に連結されている前記DNA結合ドメインにより認識される標的配列を有する核酸をさらに含む、請求項25又は26に記載のキット。
  30. 前記核酸がベクターに含まれる、請求項2527のいずれか一項記載のキット。
  31. ベクターが、プラスミド、複製可能なDNA、形質移入剤と複合体化した核酸、ファージ又はウイルスである、請求項28に記載のキット。
  32. 融合タンパク質をコードする核酸において、Spo11のコーディング配列が、Spo11を動員することが可能であるSpo11のパートナーのコーディング配列に置き換えられている、請求項2731のいずれか一項記載のキット。
  33. 前記パートナーがREC104である、請求項32に記載のキット。
  34. ヒト細胞を除く、真核細胞であって、減数分裂特異的なプロモーターの制御下で、Spo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含み、DNAの二本鎖切断を誘導する、融合タンパク質を発現し、ここで前記融合タンパク質が、真核細胞のゲノムの以前は不活性であった領域で二本鎖切断を誘導することが可能である、真核細胞。
  35. 真菌、植物細胞、哺乳類細胞又は昆虫細胞である、請求項34に記載の真核細胞。
  36. アラビドプシス・サリアーナ(Arabidopsis thaliana)由来のAtSpo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含み、DNAの二本鎖切断を誘導する、融合タンパク質をコードする核酸。
  37. 減数分裂特異的なプロモーターの制御下で、マウスのSpo11タンパク質に作動可能に連結されているDNA結合ドメインを含み、DNAの二本鎖切断を誘導する、融合タンパク質をコードする核酸。
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