JP4439315B2 - 抄造成形体の製造方法 - Google Patents
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ところで、この方法では、繊維積層体をプレス成形する際に、例えば表面に凹凸部を有するような繊維積層体の場合は、当該繊維積層体が成形型の成形面と接触して摩擦が生じ易く、プレス成型時に当該表面部分が容易に破損し、所望の抄造成形体が得られない場合があった。特に薄肉で表面形状の精度が要求される抄造成形体を製造する際に、大きな問題であった。
この技術は、原料液から前記原料成分を所定形状のキャリアネットで抄き取って抄造製品を抄造し、前記キャリアネット上に抄造された前記抄造製品の上方に高伸展性の押さえシートを配し、前記キャリアネット側から前記抄造製品を介して前記押さえシートを真空吸引し、該キャリアネットで該抄造製品の表面仕上げを行ってから、プレス乾燥型で乾燥を行うものである。
図1(a)及び(b)に示すように、前記繊維積層体の抄造に用いる抄造型1は、型本体10と、型本体10の抄造面100に配された抄造ネット11とを備えている。抄造面100は、基面部100aから半円柱状に突出する凸部100bを有している。凸部100bの長さ方向の中間部には、さらに径が太くなった凸部100cが所定間隔をおいて2つ形成されている。凸部100b、100cの長さ方向の端面は、基面部100aから略鉛直に起立している。型本体10には、流体の流通路101が接続されている。型本体10の内部には、一端が抄造面100で開口し、他端が流通路101に通ずる流通路102が多数設けられている。流通路101の他端部は吸引ポンプ及び流体供給源に切り替え弁(いずれも図示せず。)を介して接続されている。
図2(a)に示すように、前記抄造型1の上面に、図1(a)の抄造面100を囲むように枠体103を配し、枠体103の上方の原料供給管104から前記原料を所定量注入する。そして、前記流通路101、102を通して前記原料を前記吸引ポンプで吸引して液体成分を排出するとともに、前記繊維材料を含む固形成分を前記抄造ネット11の表面に堆積させる。次に、図2(b)のように、液体成分の吸引による排出が完了し、抄造ネット11の表面に繊維積層体2が形成されたら、枠体103は退避させる。抄造された湿潤状態の繊維積層体2は、前記抄造面100の凸部100b、100cに対応し、基面部2aから突出する凸部2b、2cを有する(図6(a)参照)。繊維積層体2は、その凸部2b、2cの輪郭形状が、後述する弾性膜体5の成形面50の凹部50b、50c(図4参照)の輪郭形状よりも大きくなるように抄造される。
前記繊維積層体2の脱型方法に特に制限はないが、繊維積層体2の破損防止、ハンドリングの容易性等を考慮すると、図2(c)に示すように、抄造型1の抄造面100に対応した表面形状の当接面30に多数の吸引口31を有する吸引型3で、当該繊維積層体2を吸引することによって行うことが好ましい。この際、前記抄造型1の流通路101を通して前記流体供給源から圧縮空気等の流体を供給し、抄造ネット11からの繊維積層体2の離脱を補助することがより好ましい。
図3(a)及び(b)に示すように、成形型4は、雄型40及び雌型41を備えたいわゆるプレス型である。雄型40及び雌型41の成形面(繊維積層体2と当接する面)400、410の形状は、製造する抄造成形体(図8参照)の表面形状と同一形状に設計されている。雄型40及び雌型41は、それらを組み合わせたときに繊維積層体2が収まる所定のクリアランス42が形成されるように設計されている。成形型4は、脱液型及び乾燥型を兼ねている。雄型40及び雌型41には、前記抄造型1と同様に、それぞれ流体の流通路401、411が接続されている。また、雄型40及び雌型41の内部には、一端が成形面400、410で多数開口し、他端が流通路401、411に通ずる流通路402、412が設けられている。流通路401、411の他端部は吸引ポンプ及び流体供給源に切り替え弁(いずれも図示せず。)を介して接続されている。また、雄型40及び雌型41の内部には加熱用のヒーター(図示せず)が配されている。成形型4の材質は、加工し易く軽量である点からアルミニウム又はその合金等の金属製が好ましい。
まず、図5(a)に示すように、モデル成形体60を配した真空成形型6の上方に配する。このとき弾性シート53はその外縁部をフレーム54で挟持しておく。そして、弾性シート53をその上方からヒーター61で加熱して軟化させる。
次に、図5(b)に示すように、フレーム54又は真空成形型6を相対移動させ、弾性シート53でモデル成形型60を覆うとともに、弾性シート53の外縁部分を真空成形型6の外縁部に当接させる。
次に、前記真空成形型6の吸気路62、63を通して吸引を行い、モデル成形体60の外表面に弾性シート53を密着させて外郭形状を弾性シート53に転写し、弾性シート53を塑性変形させてその外郭形状を弾性シート53に賦形し、成形面50を形成する。そして、外郭形状が賦形された弾性シート53の外縁部をトリミングし、弾性膜体5の作製を完了する。モデル成形体60は、通気性を有していればその材質に特に制限はないが、コスト、成形性、種々の形状の成形体を容易に製造できること等を考慮すると、湿式抄造成形体を用いることが好ましい。
まず、図6(a)に示すように、前記繊維積層体2を雄型40の成形面400上に配する。そして、図6(b)に示すように、チャンバー51に取り付けられた弾性体膜5を繊維積層体2上に配するが、配する前に、チャンバー51に接続された流通路52を通してチャンバー51内を吸引し、その際に生じる負圧によって、弾性膜体5を弾性変形させて成形面50の輪郭形状を吸引前よりも大きくする。この状態で、図6(c)のように雄型40とチャンバー51を合体させると、弾性膜体5の成形面50の前記凹部50b、50c内に繊維積層体2の前記凸部2b、2cが収納され、繊維積層体2の凸部2b、2cの表面が被覆された状態で弾性膜体5が繊維積層体2上に配される。その後、前記流通路52を通した吸引を停止して前述の負圧を解除すると、弾性膜体5の成形面50が負圧前の大きさに戻るように弾性変形する。そして、この戻りの力によって、繊維積層体2の凸部2b、2cが弾性体膜5の成形面50の凹部50b、50cで締めつけられるように包まれる。この締めつけ力によって、成形後の繊維積層体2の凸部2b、2cの立ち上がり部分や角の部分の形状がシャープになり、立ち上がり部分や角の部分の強度が向上する。この弾性膜体5による成形は、加熱せずに行っても良いが、成形後の繊維積層体2の損傷を抑えるとともに、その後の乾燥効率を高める観点からは雄型40の前記ヒーターで加熱して行ってもよい。
下記実施例1及び比較例1のようにして、下記寸法形状を有する抄造成形体を製造した。得られた抄造成形体の外観と成形性を下記のようにして評価した。
<抄造成形体>
寸法形状:全幅55mm、長さ550mm、最高高さ30mm(凸部に対応する)、凸部の角度は略鉛直(約88°)。
<原料>
固形成分配合:パルプ繊維:シリカを主体とする無機繊維=1:3(重量比)。
液体成分:水
固形成分含有率%:2.5〜3.5重量%
抄造型本体の材質:アルミニウム合金
抄造型本体の抄造面の形状:前記抄造成形体の内表面と略同形状
抄造ネット:線径0.019mm、目開き40〜60メッシュ、材質はステンレス。
弾性膜体の材質:ウレタンゴム、平均膜厚は0.5mm。
成形型(雄型)材質:アルミニウム合金
成形型(雄型)成形面の形状:前記抄造成形体の外表面と略同形状
弾性膜体による押圧力:0.5MPa
成形型(雌型)材質:アルミニウム合金
成形型(雌型)成形面形状:前記抄造成形体の内表面と略同形状
乾燥温度(金型温度):150℃
乾燥成形時の型間押圧力:0.6MPa
得られた抄造成形体の凸部の角部(角度は88°)に引き裂かれたような傷がないかどうかを目視により確認することによって評価した。
2 繊維積層体
2a 基面部
2b、2c 凸部
20 抄造成形体
3 吸引型
4 成形型
40 雄型
41 雌型
5 弾性膜体
50 成形面
50b、50c 凹部
51 チャンバー
53 弾性シート
6真空成形型
Claims (4)
- 繊維材料を含む原料から、湿潤状態の繊維積層体を抄造し、前記繊維積層体を、前記湿潤状態の繊維積層体の輪郭形状と略同一又は相似の輪郭形状を有する成形面を形成した弾性膜体と成形型との間に挟持して該繊維積層体を成形する抄造成形体の製造方法であって、
前記弾性膜体として、製造する抄造成形体の最終的な形状を備えたモデル成形体によって、該モデル成形体の外郭形状を弾性シートに賦形して、該弾性シートに前記の成形面を形成したものを用いる抄造成形体の製造方法。 - 前記弾性膜体を前記繊維積層体上に配する前に、該弾性膜体を弾性変形させて、該弾性膜体の前記成形面の輪郭形状を大きくし、その状態で該弾性膜体を前記繊維積層体上に配する請求項1記載の抄造成形体の製造方法。
- 弾性変形によって前記成形面の輪郭形状が大きくなった前記弾性膜体を前記繊維積層体上に配した後に、該弾性膜体を弾性変形前の大きさに戻す請求項2記載の抄造成形体の製造方法。
- 前記弾性膜体を流体で加圧して前記繊維積層体を挟持する請求項1〜3の何れかに記載の抄造成形体の製造方法。
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