JP4439125B2 - 建設機械の運転室 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建設機械における車体上に設置される運転室に関するもので、詳しくはエンジン室がフロント側に位置して車体前方での作業機操作時における視界性を向上させる機能を備えた建設機械の運転室に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブルドーザなど主として土工作業に用いられる建設機械にあっては、車体に搭載されるエンジン室の後方に運転室が設置され、そのエンジンの前方に配設される作業機を運転操作して作業を行うようにされている。この種の機械において作業時には前方の作業機の動作を常に把握できるように視界の確保が必要である。
【0003】
特に、ブルドーザの場合、運転作業時には、オペレータが前方作業機の動きならびに車両の前進動作などを常時確認しながら作業するので、その作業状態を確認する手段の一つとして、土工板の左右両端カッティングエッジを基準にして、その移動位置が目的とする土工板による土砂の掻き取りや持上げ、あるいは前方への押し退けなどの作業状態を確認するの利用されている。また、同時に車両が前進しているか、スリップの程度がどうであるかを履帯の先端部上面におけるシューの動きによって判断するようにしている。また、トラクタであれば、前輪前方付近が視認できることが必須である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから、従来は、大型ブルドーザにおける先行技術として、例えば特開平5−106240号公報によって知られるように、運転室の前部を、中央部を前方窓として、その左右を斜めに後退させて開口するドア窓にし、そのドア窓の中間部を略くの字状に形成して、それらのドア窓部分から土工板の左右カッティングエッジ部分や履帯先端上部を目視できるようにされている。そして、それらのドア窓の目視要所をワイパーによって払拭するようにし、雨天での視界確保を図っている。
【0005】
このような構成にすることで視界の確保について良好で運転操作時に有効である利点を有するが、どうしても構造的に複雑になることが避けられないのと、中型あるいは小型のブルドーザのように土工板と運転室との幅の比が大型ブルドーザに比較して狭いものでは、そのままこの斜めドア窓を取り入れると視界が十分に得られ難いことになり、適用するには問題がある。併せて構成上、コスト高になってこの構成をそのまま取り入れることができないという事情がある。
【0006】
一方、特開平4−317817号公報あるいは特開平11−91637号公報に開示されているように、エンジン室の後部に設けられる運転室における前面窓を、エンジン室に連接する部分を回避してその両側に視認できる窓の下側への延長部を設けて前方下部の視界を確保できる構造が記載されている。しかしながら、このような構造とすれば、それらに示されるようにワイパーの設置が上面中央部になって、左右の下向き延長部窓を払拭できない。そのために、雨天時など窓を通じての視認性が低下する場合に不都合である。このようなことから、視界を拡大するには解決すべき問題点がある。
【0007】
本発明は、前述のような問題点を解消するためになされたもので、前窓の両サイドが下方に広げられて、前方下部の視界性や作業性を向上させた建設機械の運転室を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前述された目的を達成するために、本発明による建設機械の運転室は、
エンジン室を前部に備えるとともに、前記エンジン室の後側に運転室を備える建設機械において、
前記運転室の前窓が前記エンジン室の幅より広い幅の平面で、前記前窓の両サイドが正面視で前記エンジン室側部を挟むように下方に広がる構成とされ、
前記前窓と前記エンジン室との間に隙間が設けられ、前記前窓にはその前窓の両サイド下方まで拭けるワイパーブレードを有するワイパー装置が備えられ、
前記ワイパーブレードは払拭時に前記隙間に対応する前窓を通過するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、運転室における前窓がエンジン室の幅より広い幅の平面で、前窓の両サイドが正面視で前記エンジン室側部を挟むように下方に広がる構成とされたことから、作業時前方位置のエンジン室カバーにより遮られる左右両端下方部まで視界が広げられることになる。したがって、たとえばブルドーザによる土工作業において、オペレータが土工板の両端カッティングエッジを確実に視認でき、もちろん履帯の先端部の移動状態についても確認できて、視界性並びに作業性が向上し、土工作業を円滑に行えるという効果がある。
【0010】
また、運転室の前面部を単純にできるので骨格構造を単純化させて、製作を容易にし、同時にワイパー装置による両サイド下方までの払拭によって雨天時などにおける両サイド下方までの視界性が確保できるという効果がある。
【0012】
本発明において、前記前窓とエンジン室との隙間には、前記ワイパー装置のワイパーブレードの作動範囲から離れて下方で、前記エンジン室後端の幅方向に中央部よりも両端が下位置となるように形成された異物排除部片を設けられているのがよい。このようにすることにより、前記隙間に外部から飛来した異物が堆積して、ワイパーブレードの動作に障害が発生するのを防止できる効果が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による建設機械の運転室の具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
この実施形態は中型ブルドーザに採用されたものについて説明する。図1に本実施形態の運転室を備えた中型ブルドーザの側面図が示されている。図2に図1における運転室の前窓を拡大して表わす正面図が、図3に運転室前窓下部とエンジン室後端との隙間部分の断面図が、それぞれ示されている。
【0015】
この中型ブルドーザ1は、下部走行体2のトラックフレーム3上に、前部にエンジン(図示せず)が搭載され、その外側を外装カバーで覆ってエンジン室4が設けられている。このエンジン室4の後側には所要の寸法の隙間5をとって運転室10がトラックフレーム3上に設置されている。また、下部走行体2の前方位置には土工板6がトラックフレーム3に基部を枢支される操作用の油圧シリンダ7,7aによって支持されて設けられている。図中符号8は履帯である。
【0016】
運転室10は、独立した骨組み構造でトラックフレーム3の上面に図示省略するが緩衝手段を介在させて取り付けられており、内部に運転席12と運転操作を行うレバー操作機構並びに制御装置(いずれも図示せず)が備えられていて、前部に計器などを配したコントロールパネル13が設けられている。また、側面部には出入り口とドア14が設けられている。
【0017】
このような運転室10は、前部に位置するエンジン室4の後端面とその前面との間に所要の隙間5が設けられ、エンジンの駆動による振動が直接伝播されないようにされている。そして、運転室10の前面に形成される前窓15を、運転室10を構成するフレーム11の上部梁11aから下部支持壁11bまでを全面ガラス窓に形成され、上部の前面中央部分に支持軸を配されてモータ駆動されるワイパー装置20が取付けられている。
【0018】
この運転室10の前窓15は、前記エンジン室4の幅よりも広い幅で形成されていて、運転室10内の運転席12に着座したオペレータ40が左右サイドの下部を見下ろせる範囲にガラス面16が存在する寸法で設けられている。そして、この前窓15の中央下部の運転室10内位置には、前記コントロールパネル13が位置して、当該部分での前方内面はパネルによって覆われている。
【0019】
前記ワイパー装置20は、四節リンク機構を構成するワイパーアーム21と、このワイパーアーム21に中間基部23を支持されて左右に摺動するワイパーブレード22とで構成され、前記ワイパーアーム21の基部21aが運転室フレーム11に取付くワイパーモータ24の出力軸に接続されて、所要角度左右に揺動するようにされている。そして、このワイパー装置20のワイパーブレード22は、図2に点a,b,c,dによって囲まれる上下の円弧と左右の直線で表わされる範囲内が払拭されるようになされている。なお、この図2において二点鎖線内を斜線gで表わす範囲がエンジン室4によって視界を遮られる範囲であり、二点鎖線fによって囲まれている範囲が運転席12に着座したオペレータ40から見てエンジン室4のカバーにより死角となる部分を表わしている。
【0020】
また、このようにされた運転室10の前窓15の下部中央には、図2および図3によって示されるように、前記下部支持壁11bに支持されてエンジン室4との隙間5を上方から覆うように帯板を山形状に形成された異物排除部片26が取付けられている。この異物排除部片26は、その頂面が前記ワイパーブレード22下端の揺動範囲(円弧c〜d)から外れるようにして、その両端部26a,26aがエンジン室4カバーの表面延長部とほぼ同様の位置まで伸び、かつ下がり勾配にされて、隙間5に外部からの飛来物が入り込んで堆積しないように保護するようにされている。
【0021】
このように構成される運転室10によれば、オペレータ40が運転席12に着座して土工作業を行うについて、前窓15が平面のガラス面16にて下部まで一面にされているので、前方に位置するエンジン室4によって前方位置の土工板6の動きが全体として捉えられないが、そのエンジン室4の両側に広がるガラス面16を通じての視界のなかで、土工板6の両端カッティングエッジ6a,6aを確実に視認することができる。すなわち、図1ならびに図4に示すように、オペレータ40の視線Aが両端カッティングエッジ6a,6aを捉えることができるので、その土工板6の操作を把握して作業を推進させることができる。また、同時に履帯8の先端部の動作も目線(視線)Bで追従できて、併せ確認することができ、車両の前進動作を確認しつつ継続的に作業を進行させ得るのである。
【0022】
また、前窓15はワイパー装置20によってその前面下部、殊に左右両下方部までワイパーブレード22が移動できて払拭することが可能にされているので、雨天時などでもガラス面16における前記視線A(B)が通過する範囲を隈なく拭かれ、水滴などにより視界を損なわれることがない。したがって、オペレータに負担を感じさせずに作業を遂行できるのである。そして、ワイパー装置20のワイパーブレード22は、前窓15を形成するガラス面16が下方まで広げて配置されているので、エンジン室4の後端によって視界を遮られている部分では、隙間5の上部をブレード下端部が通過できるようにして、この部分ではガラス面16がワイパーブレード22の案内の役目を果たし、広範囲を円滑に無理なく1枚のワイパーブレード22でもって払拭することができる。
【0023】
また、本実施の形態では、前窓15の前面下部とエンジン室4との間に隙間5が形成され、前記ワイパーブレード22によるガラス面16の払拭を容易にしているのであるが、作業にともない小石や木片その他の異物がこの隙間5に飛来すると、それらが次第に堆積して隙間を埋める虞がある。そのために、この隙間5部分には異物排除部片26が設けられており、この異物排除部片26によって、飛来した小石などが隙間に侵入するとその斜面によって隙間5の外側に転げ落ちて排除できるようにされている。こうすることで隙間5部分に異物の堆積というような事態が生じるのを防止して、ワイパー装置20の作動時に、ワイパーブレード22が異物と接触して正常な動作が行えなくなるのを未然に解消できるのである。また、このような隙間5を設けることで、前述のワイパー装置20の動作確保のほかに、エンジン部分から運転室10への振動の伝播を遮断して運転室10の作業環境の改善にも役立て得るのである。
【0025】
また、本発明によれば、前述のブルドーザのみならず、前側にエンジン室を備えて、かつ前側にて作業機を操作するような走行車両においても、同様の構成の運転室を搭載することにより、視界性・作業性の向上を図ることができる。そのほかに、前方両サイドの下部位置をオペレータが視認しながら作業を行う走行車両においても、運転室を同様の構成にすることで視界性と作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本実施形態の運転室を備えた中型ブルドーザの側面図である。
【図2】 図2は、図1における運転室の前窓を拡大して表わす正面図である。
【図3】 図3は、運転室前窓下部とエンジン室後端との隙間部分の断面図である。
【図4】 図4は、本実施形態のブルドーザを前方から見た斜視図である。
【符号の説明】
1 中型ブルドーザ
2 下部走行体
3 トラックフレーム
4 エンジン室
5 エンジン室と運転室前面との隙間
6 土工板
6a カッティングエッジ
8 履帯
10 運転室
11b 下部支持壁
12 運転席
15 前窓
16,16A ガラス面
20 ワイパー装置
22 ワイパーブレード
26 異物排除部片
40 オペレータ
Claims (2)
- エンジン室を前部に備えるとともに、前記エンジン室の後側に運転室を備える建設機械において、
前記運転室の前窓が前記エンジン室の幅より広い幅の平面で、前記前窓の両サイドが正面視で前記エンジン室側部を挟むように下方に広がる構成とされ、
前記前窓と前記エンジン室との間に隙間が設けられ、前記前窓にはその前窓の両サイド下方まで拭けるワイパーブレードを有するワイパー装置が備えられ、
前記ワイパーブレードは払拭時に前記隙間に対応する前窓を通過するように構成されていることを特徴とする建設機械の運転室。 - 前記前窓と前記エンジン室との隙間には、前記ワイパー装置のワイパーブレードの作動範囲から離れて下方で、前記エンジン室後端の幅方向に中央部よりも両端が下位置となるように形成された異物排除部片を設けられている請求項1に記載の建設機械の運転室。
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