JP4438266B2 - ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法、使用済の該錯体の精製方法及び該錯体の再利用方法 - Google Patents

ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法、使用済の該錯体の精製方法及び該錯体の再利用方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4438266B2
JP4438266B2 JP2001303057A JP2001303057A JP4438266B2 JP 4438266 B2 JP4438266 B2 JP 4438266B2 JP 2001303057 A JP2001303057 A JP 2001303057A JP 2001303057 A JP2001303057 A JP 2001303057A JP 4438266 B2 JP4438266 B2 JP 4438266B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solvent
bis
alkylcyclopentadienyl
ruthenium complex
ruthenium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001303057A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003104994A (ja
Inventor
英之 平社
佳典 高山
篤 齋
勝実 小木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2001303057A priority Critical patent/JP4438266B2/ja
Publication of JP2003104994A publication Critical patent/JP2003104994A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4438266B2 publication Critical patent/JP4438266B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の誘電体メモリー、誘電体フィルター等に用いられる複合酸化物系誘電体薄膜と基板との間の下部電極を成膜するために使用されるビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体(以下、Ru(RCp)2という。)の合成方法、使用済の錯体の精製方法及びこの錯体の再利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ、ワークステーションのメインメモリーとして使われるDRAMは高集積化の動きがめまぐるしく、高集積化に対応可能な誘電体材料や電極材料の技術開発が盛んである。
誘電体材料に所定の誘電特性を付与するためには、酸化雰囲気下での結晶化熱処理が必須である。誘電体と積層される電極は従来はポリシリコン、タングステン、窒化チタン等が使われていたが、酸素雰囲気で高温熱処理を行うと、電極が酸化して電極の耐熱性に問題が生じる。そこで高融点で酸素と反応しにくいPtや酸化しても電気伝導性を有するRu、RuO2、Ir、IrO2等が注目されている。RuやRuO2の成膜法としては現在、スパッタ法が広く用いられているが、今後更に進む高集積化に伴って要求される微細加工のために有機金属化学蒸着法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、以下、MOCVD法という。)が検討されている。
【0003】
Ruを用いたMOCVD材料としてはシクロペンタジエン系のビスシクロペンタジエニルルテニウム錯体(以下、Ru(Cp)2という。)やRu(RCp)2として一般的なビスエチルシクロペンタジエニルルテニウム錯体(以下、Ru(EtCp)2という。)、βジケトン系のトリス2,2,6,6テトラメチル3,5ヘプタジオナートルテニウム錯体(以下、Ru(DPM)3という。)が用いられている。このうち、Ru(DPM)3はRu(Cp)2やRu(EtCp)2と比較して蒸気圧が低いため、MOCVD原料として使用される頻度は低い。また、Ru(Cp)2は室温付近では固体として存在し、更に有機溶媒に殆ど溶解しないことから成膜室への供給を昇華法に頼らなければならないため、供給量の増加と安定性に問題がある。これらに対して、Ru(EtCp)2は室温付近で液体として存在するため、従来の成膜装置を利用でき、また、従来のマスフローコントローラによる流量制御が可能であるために、原料供給の安定化が図れるという利点がある。
【0004】
MOCVD法において、実際に成膜に使われる原料は全供給量の数%であると考えられており、MOCVD原料となる有機金属化合物は非常に高価であるため、成膜コストが高いことがMOCVD法が他の成膜法に比べて不利な点の1つに挙げられている。Ruを用いたMOCVD材料の場合、成膜後のトラップに捕集された捕集物の再生が可能ではないかと考えられ検討が行われている。
Ru(EtCp)2のリサイクルについての研究報告は第61回応用物理学会学術講演会講演予稿集P425において、ガスクロマトグラフィーを用いた測定で純度の低いMOCVD原料を用いるとリサイクルを繰り返すと不純物が成膜に悪影響を与えることが開示されている。
【0005】
また、第18回強誘電体応用会議講演予稿集P63−P64,31−T−21(岡本ら)において、液体クロマトグラフィー質量分析計(LCMS)を用いて分析した結果、この悪影響を与える物質はRu(EtCp)2が分解して生成した有機酸であることが開示されている。
しかし、上記報告ではMOCVD材料の再生方法について具体的な提案はなされていない。
【0006】
一方、Ru(RCp)2を合成する方法は、Organic Synthesis Vol.41. P.96に開示されている方法や、特開平11−35589号公報に記載されている方法等が挙げられる。前者の方法は、塩化ルテニウム無水物とナトリウムエチルシクロペンタジエン又はナトリウムイソプロピルシクロペンタジエンを金属ルテニウムとともに溶媒中で反応させる方法である。また、後者の方法は、塩化ルテニウム水和物とエチルシクロペンタジエン又はイソプロピルシクロペンタジエンをアルコール溶媒中で亜鉛分と反応させる方法である。しかしながら、これらの方法による収率はそれぞれ70%程度にとどまっている。この原因は溶媒可溶の不純物が蒸留による加熱のためにRu(RCp)2と化学反応を起こしRu(RCp)2が気化しにくくなってしまうと考えられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い収率でRu(RCp)2を合成する方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、MOCVD法で成膜した後の使用済のRu(RCp)2を成膜前と同等の品質に精製する方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、精製したRu(RCp)2をMOCVD法の原料として再利用する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、(a) 塩化ルテニウム無水物とナトリウムエチルシクロペンタジエン又はナトリウムイソプロピルシクロペンタジエンを金属ルテニウムとともにテトラヒドロフラン又はジメトキシエタノールからなる第1溶媒中で反応させる工程と、(b) 第1溶媒を除去した後に、反応物をヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン又はテトラヒドロフランからなる第2溶媒に溶解して抽出する工程と、(c) 抽出液から第2溶媒を除去して蒸留する工程とを含むビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法の改良である。
この特徴ある構成は、(b)工程と(c)工程の間で抽出液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させる工程を更に含むところにある。
【0009】
請求項2に係る発明は、(d) エタノール、イソプロパノール又はメタノールからなる第3溶媒中に塩化ルテニウム水和物とエチルシクロペンタジエン又はイソプロピルシクロペンタジエンを溶解し、溶解液に亜鉛粉末を添加して反応させる工程と、(e) 第3溶媒を除去した後に、反応物をヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン又はテトラヒドロフランからなる第4溶媒に溶解して抽出する工程と、(f) 抽出液から第4溶媒を除去して蒸留する工程とを含むビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法の改良である。
この特徴ある構成は、(e)工程と(f)工程の間で抽出液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させる工程を更に含むところにある。
【0010】
請求項1又は2に係る発明では、(b)工程と(c)工程の間及び(e)工程と(f)工程の間にそれぞれ抽出液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させる工程を更に含ませることにより、抽出液に含まれる第2溶媒、第4溶媒にそれぞれ可溶な不純物を吸着剤により取除き、蒸留時の加熱により、Ru(RCp)2とこの不純物が反応することを抑制して錯体の収率を向上させる。
【0011】
請求項3に係る発明は、図1に示すように、(g) Ru(RCp)2を減圧下で加熱して気化させる工程と、(h) 気化させたRu(RCp)2蒸気を酸素とともに成膜室に輸送して基板上で熱分解させることにより、基板上にルテニウム含有薄膜を形成する工程と、(i) 薄膜を形成した後の未反応のRu(RCp)2蒸気を冷却して液体として捕集する工程と、(j) 捕集物を有機溶媒に溶解して有機溶液を調製する工程と、(k) 調製した有機溶液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させて有機溶液に含まれる不純物を除去する工程と、(l) 不純物を除去した有機溶液を減圧及び加熱して溶媒を除去し、溶媒除去物を蒸留する工程とを含むRu(RCp)2の精製方法である。
請求項3に係る発明では、工程(i)〜工程(l)を経ることにより、MOCVD法により成膜した後のRu(RCp)2から未反応分に含まれる不純物を効果的に除去できる。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項3ないし6いずれか記載の方法により精製されたRu(RCp)2上記請求項3記載の精製方法における(g)工程の出発原料であるRu(RCp)2として再利用する方法である。
請求項7に係る発明では、請求項3ないし6いずれか記載の方法により精製されたRu(RCp)2を出発原料として再びMOCVD法により成膜したときに成膜速度の低下を抑制し、通常の出発原料と同程度の成膜速度とすることができる。成膜時の未反応のRu(RCp)2を有効活用することにより、MOCVD法の成膜コストを引き下げることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
▲1▼ 合成方法
本発明の第1の合成方法としては、先ず、(a)工程で塩化ルテニウム無水物とナトリウムエチルシクロペンタジエン又はナトリウムイソプロピルシクロペンタジエンを金属ルテニウムとともに第1溶媒中で反応させ、次に第1溶媒を除去した後、(b)工程で反応物を第2溶媒に溶解して抽出する。更に、(c)工程で抽出液から第2溶媒を除去して蒸留する。この合成方法の特徴ある構成は、(b)工程と(c)工程の間で抽出液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させる工程を更に含むところにある。
また、第2の合成方法としては、(d)工程で、第3溶媒中に塩化ルテニウム水和物とエチルシクロペンタジエン又はイソプロピルシクロペンタジエンを溶解し、溶解液に亜鉛粉末を添加して反応させる。次に第3溶媒を除去した後、(e)工程で、反応物を第4溶媒に溶解して抽出する。更に、(f)工程で抽出液から第4溶媒を除去して蒸留する。この合成方法の特徴ある構成は、(e)工程と(f)工程の間で抽出液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させる工程を更に含むところにある。
【0014】
第1溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタノールが挙げられ、第2溶媒としては、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランが挙げられる。第3溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、メタノールが挙げられ、第4溶媒としては、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランが挙げられる。
【0015】
第1及び第2の合成方法におけるカラムは、ガラス又はアクリル製等の円筒に吸着剤を充填して構成される。カラムに充填する吸着剤としては、α-アルミナ、シリカゲル、活性炭等が挙げられる。溶媒にヘキサン等の極性の小さい物質を用いた場合、α-アルミナが極性が適当であるため好ましい。溶媒にテトラヒドロフランやエタノール等の極性の大きい物質を用いた場合、活性炭が極性が適当であるため好ましい。また吸着剤の粒径は20〜500μmが好ましい。カラムに有機溶液を通過させることにより、有機溶液に含まれる不純物をカラム内の吸着剤に吸着させる。
第1及び第2の合成方法はそれぞれ抽出液に含まれる第2溶媒、第4溶媒にそれぞれ可溶な不純物を吸着剤により取除くので、収率を向上させることができる。
【0016】
▲2▼ 精製方法
本発明のRu(RCp)2の精製方法は、MOCVD法において成膜に使用されない未反応のRu(RCp)2を精製するものである。本発明のRu(RCp)2としては、Ru(EtCp)2、Ru(i-PrCp)2が挙げられる。
【0017】
図1に示すように、(g)工程では、出発原料のRu(RCp)2を減圧にして、加熱することにより気化させる。Ru(RCp)2は常温では液体状態であるため、室温でフローコントローラーが利用でき、流量制御が容易である。
(h)工程では、この気化させたRu(RCp)2蒸気を酸素とともに成膜室に輸送し、基板上で熱分解を行う。この熱分解により、Ru或いはRuO2が基板上に形成される。
【0018】
(g)工程及び(h)工程はMOCVD法により基板上にRu或いはRuO2を成膜する工程である。このMOCVD法は、電極膜の製造に用いられる方法の1つであり、金属元素を含む有機金属化合物を減圧下で加熱して気化させ、その蒸気を成膜室に輸送して基板上で熱分解させることにより、生成した金属を基板上に付着させる方法である。このMOCVD法は、他の膜製造方法に比べて、平滑性及び段差被覆性に優れているため、電極膜の製造方法として一般的に行われている。
【0019】
図2に示すように、MOCVD装置は、成膜室10と蒸気発生装置11を備える。成膜室10の内部にはヒータ12が設けられ、ヒータ12上には基板13が保持される。この成膜室10の内部は圧力計14及びニードルバルブ16を備える配管17により真空引きされる。蒸気発生装置11は原料容器18を備え、この原料容器18は常温で液体のRu(RCp)2を貯蔵する。原料容器18にはガス流量調節装置19を介して加圧用不活性ガス導入管21が接続され、また原料容器18には供給管22が接続される。供給管22にはニードルバルブ23及び溶液流量調節装置24が設けられ、供給管22は気化室26に接続される。気化室26にはニードルバルブ31、ガス流量調節装置28を介してキャリアガス導入管28が接続される。気化室26は更に配管27により成膜室10に接続される。
この装置では、加圧用不活性ガスが導入管21から原料容器18内に導入され、原料容器18に貯蔵されている原料溶液を供給管22により気化室26に搬送する。キャリアガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素等が挙げられる。気化室26で気化されて蒸気となったRu(RCp)2は、更にキャリアガス導入管28から気化室26へ導入されたキャリアガスにより配管27を経て成膜室10内に供給される。成膜室10内において、Ru(RCp)2の蒸気を酸素とともに熱分解させ、これにより生成したRu或いはRuO2を加熱された基板13上に堆積させてRu含有層を形成する。
【0020】
(i)工程では、基板上にRu含有層を形成した後の、未反応のRu(RCp)2蒸気を成膜室より排出し、この未反応蒸気を冷却することにより、液体として未反応Ru(RCp)2を捕集する。MOCVD法によって実際に成膜に使用される原料は全供給量の数%であるため、残りの未反応分は成膜室外へと排出される。排出された未反応蒸気を冷却して液体状態のRu(RCp)2を捕集する。ここでの冷却温度は、−20〜20℃の範囲内が好ましい。次に、(j)工程において、捕集したRu(RCp)2液体を有機溶媒に溶解して有機溶液を調製する。有機溶媒としては、ベンゼン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、トルエン、ジクロロメタン、ペンタン等が挙げられる。
【0021】
(k)工程では、調製した有機溶液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させて有機溶液に含まれる不純物を除去する。カラムは、ガラス又はアクリル製等の円筒に吸着剤を充填して構成される。カラムに充填する吸着剤としては、α-アルミナ、シリカゲル、活性炭等が挙げられる。溶媒にヘキサンを用いた場合、α-アルミナが極性が適当であるため、好ましい。溶媒にテトラヒドロフランやエタノールを用いた場合、活性炭が極性が適当であるため好ましい。また吸着剤の粒径は20〜500μmが好ましい。カラムに有機溶液を通過させることにより、有機溶液に含まれる不純物をカラム内の吸着剤に吸着させる。不純物は、Ru(RCp)2が酸素と反応して有機酸化物であり、また、これらの酸化物が変性した有機酸化物である。この有機酸化物は高沸点、低蒸気圧の非常に安定な化合物であり、更に、Ru(RCp)2と沸点が近いため、蒸留などの精製手法では取り除くことができない。しかし、カラムクロマトグラフィーの手法を用いることにより、Ru(RCp)2の変性物質を効率的に取除くことができる。(l)工程では、カラムにより不純物を除去した有機溶液を減圧及び加熱して溶媒を除去し、更に溶媒除去物を蒸留する。例えば、有機溶液を100〜1000Paに減圧し、30〜100℃に加熱して溶媒を除去し、更に、蒸留時の系内圧力を制御することにより溶媒除去物を50〜200℃に加熱して蒸留を行う。
【0022】
(i)工程〜(l)工程を経て精製されたRu(RCp)2を(g)工程の出発原料のRu(RCp)2として再利用することにより、成膜速度の低下を抑制し、通常の出発原料と同程度の成膜速度とすることができる。成膜時の未反応のRu(RCp)2を有効活用することにより、MOCVD法の成膜コストを引き下げることができる。
【0023】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
テトラヒドロフラン300ml中で塩化ルテニウム無水物15gと金属ルテニウム2.5gにナトリウムエチルシクロペンタジエンを滴下し、70℃で80時間反応させた。得られた反応物にエタノール200mlを加えて未反応のナトリウムエチルシクロペンタジエンをクエンチした後、エタノールとエチルシクロペンタジエンとテトラヒドロフランを減圧下で揮発させて除去した。残物をヘキサン500mlで抽出し、この抽出液をα-アルミナが充填されたカラム内に通過させて精製した後、抽出液を減圧、加熱してヘキサンを除去し、更に蒸留してRu(EtCp)2を得た。
【0024】
<実施例2>
先ずエタノール400ml中で塩化ルテニウム水和物50gを溶解し、この溶解液を120rpmの速度で撹拌しながら液温度を−20℃に冷却した。次いで溶解液にエチルシクロペンタジエン40gを溶解した後、亜鉛粉末10gを10分ごとに1gの速度で液温度を−15℃未満に維持しながら溶解液に添加した。亜鉛粉末の添加が終了した後に、溶解液の温度を10℃に昇温して1時間保持した。次に溶解液の撹拌を停止し、溶解液を濾過して未反応の亜鉛粉末を取り除いた。更に溶解液を減圧してエタノールと未反応のエチルシクロペンタジエンを揮発させて除去した後、ヘキサン1000mlに溶解し、上澄み液をデカンテーションしてヘキサン可溶分を抽出した。抽出液をα-アルミナが充填されたカラム内に通過させて精製した後、抽出液を減圧、加熱してヘキサンを除去し、更に蒸留してRu(EtCp)2を得た。
【0025】
<比較例1>
抽出液をα-アルミナが充填されたカラム内に通過させる代わりに濾過を行った以外は、実施例1と同様にしてRu(EtCp)2を得た。
<比較例2>
抽出液をα-アルミナが充填されたカラム内に通過させる代わりに濾過を行った以外は、実施例2と同様にしてRu(EtCp)2を得た。
【0026】
<比較評価1>
実施例1,2及び比較例1,2でそれぞれ得られたRu(EtCp)2の収率を表1にそれぞれ示す。
【0027】
【表1】
Figure 0004438266
【0028】
表1より明らかなように比較例1及び2では収率は70%前後にとどまっているが、実施例1及び2では蒸留する前に抽出液を吸着剤が充填されたカラムに通過させることにより収率を向上させることができた。これは、溶媒に可溶でかつRu(EtCp)2と化学反応を起こす不純物を蒸留操作の加熱前に除去したため、従来Ru(EtCp)2と反応してRu(EtCp)2が気化しにくくなってしまうことを抑制することができたためと考えられる。
【0029】
<実施例3>
先ず、Ru(EtCp)2を図2に示すMOCVD装置を用いて基板上に薄膜を形成させた。このときの成膜速度は30nm/minであった。薄膜形成条件を表2に示す。
薄膜形成に使用されなかった蒸気を成膜室より排出して冷却することにより未反応Ru(EtCp)2を100g捕集した。次いで、捕集物100gをヘキサン1000mlに溶解し、有機溶液をα-アルミナが充填されたカラム内に通過させた。次に有機溶液を減圧、加熱してヘキサンを除去し、更に蒸留して精製したRu(EtCp)2として再生した。この再生したRu(EtCp)2を用いて基板上に薄膜を形成させた。この時の成膜速度は30nm/minであった。
【0030】
【表2】
Figure 0004438266
【0031】
<比較例3>
有機溶液をα-アルミナが充填されたカラム内に通過させる代わりに濾過を行った以外は、実施例3と同様にしてRu(EtCp)2を再生し、この再生したRu(EtCp)2を用いて基板上に薄膜を形成させた。このときの成膜速度は10nm/minであった。
【0032】
<比較評価2>
実施例3の有機溶液をα-アルミナが充填されたカラム内に通過させて精製して再生したRu(EtCp)2は、比較例3のカラム内を通過させずに精製して再生したRu(EtCp)2よりも成膜速度を大きくすることができた。これは成膜したときの付着確率を減少させ、成膜速度を減少させていた変性物質を吸着剤が充填されたカラム内に通過させることにより、取り除くことができたためであると考える。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の第1の合成方法は、(a)工程〜(c)工程を経ることによりRu(RCp)2を合成する方法の改良であり、(b)工程と(c)工程の間で抽出液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させる工程を更に含むことにより、抽出液に含まれる第2溶媒に可溶な不純物を吸着剤により取除き、加熱時のRu(RCp)2と不純物との反応を抑制することによって収率を向上させる。また、第2の合成方法は、(d)工程〜(f)工程を経ることによりRu(RCp)2を合成する方法の改良であり、(b)工程と(c)工程の間で抽出液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させる工程を更に含むことにより、第1の合成方法と同様の効果が得られる。
【0034】
また、本発明の精製方法では、(i)工程〜(l)工程を経ることにより、MOCVD法により成膜した後のRu(RCp)2から未反応分に含まれる不純物を効果的に除去できる。不純物を除去した精製されたRu(RCp)2は出発原料と同等の成膜速度を有することができる。
更に、精製されたRu(RCp)2を出発原料として再びMOCVD法により成膜したときに成膜速度の低下を抑制し、通常の出発原料と同程度の成膜速度とすることができる。成膜時の未反応のRu(RCp)2を有効活用することにより、MOCVD法の成膜コストを引き下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の精製方法を示す図。
【図2】MOCVD装置の概略図。
【符号の説明】
10 成膜室
11 蒸気発生装置
12 ヒータ
13 基板
14 圧力計
16 ニードルバルブ
17 配管
18 原料容器
19 ガス流量調節装置
21 加圧用不活性ガス導入管
22 供給管
23 ニードルバルブ
24 溶液流量調節装置
26 気化室
27 配管
28 ガス流量調節装置
29 キャリアガス導入管
31 ニードルバルブ

Claims (7)

  1. (a) 塩化ルテニウム無水物とナトリウムエチルシクロペンタジエン又はナトリウムイソプロピルシクロペンタジエンを金属ルテニウムとともにテトラヒドロフラン又はジメトキシエタノールからなる第1溶媒中で反応させる工程と、
    (b) 前記第1溶媒を除去した後に、前記反応物をヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン又はテトラヒドロフランからなる第2溶媒に溶解して抽出する工程と、
    (c) 前記抽出液から第2溶媒を除去して蒸留する工程と
    を含むビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法において、
    前記(b)工程と前記(c)工程の間で前記抽出液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させる工程を更に含むことを特徴とするビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法。
  2. (d) エタノール、イソプロパノール又はメタノールからなる第3溶媒中に塩化ルテニウム水和物とエチルシクロペンタジエン又はイソプロピルシクロペンタジエンを溶解し、前記溶解液に亜鉛粉末を添加して反応させる工程と、
    (e) 前記第3溶媒を除去した後に、前記反応物をヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン又はテトラヒドロフランからなる第4溶媒に溶解して抽出する工程と、
    (f) 前記抽出液から第4溶媒を除去して蒸留する工程と
    を含むビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法において、
    前記(e)工程と前記(f)工程の間で前記抽出液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させる工程を更に含むことを特徴とするビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法。
  3. (g) ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体を減圧下で加熱して気化させる工程と、
    (h) 前記気化させたビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体蒸気を酸素とともに成膜室に輸送して基板上で熱分解させることにより、前記基板上にルテニウム含有薄膜を形成する工程と、
    (i) 前記薄膜を形成した後の未反応のビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体蒸気を冷却して液体として捕集する工程と、
    (j) 前記捕集物を有機溶媒に溶解して有機溶液を調製する工程と、
    (k) 前記調製した有機溶液を吸着剤が充填されたカラム内に通過させて前記有機溶液に含まれる不純物を除去する工程と、
    (l) 前記不純物を除去した有機溶液を減圧及び加熱して溶媒を除去し、溶媒除去物を蒸留する工程と
    を含むビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の精製方法。
  4. 吸着剤がα-アルミナ、シリカゲル又は活性炭である請求項3記載の精製方法。
  5. 有機溶媒がベンゼン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、トルエン、ジクロロメタン又はペンタンである請求項3記載の精製方法。
  6. ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体がビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体又はビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体である請求項3記載の精製方法。
  7. 請求項3ないし6いずれか記載の方法により精製されたビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体を上記請求項3記載の精製方法における(g)工程の出発原料であるビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体として再利用する方法。
JP2001303057A 2001-09-28 2001-09-28 ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法、使用済の該錯体の精製方法及び該錯体の再利用方法 Expired - Fee Related JP4438266B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001303057A JP4438266B2 (ja) 2001-09-28 2001-09-28 ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法、使用済の該錯体の精製方法及び該錯体の再利用方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001303057A JP4438266B2 (ja) 2001-09-28 2001-09-28 ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法、使用済の該錯体の精製方法及び該錯体の再利用方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003104994A JP2003104994A (ja) 2003-04-09
JP4438266B2 true JP4438266B2 (ja) 2010-03-24

Family

ID=19123201

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001303057A Expired - Fee Related JP4438266B2 (ja) 2001-09-28 2001-09-28 ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法、使用済の該錯体の精製方法及び該錯体の再利用方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4438266B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009007270A (ja) * 2007-06-27 2009-01-15 Tosoh Corp ルテニウム化合物の製造方法および薄膜の製造方法
US7893290B1 (en) * 2010-04-13 2011-02-22 W.C. Heraeus Gmbh Process for the preparation of bis(pentadienyl)-complexes of iron group metals
JP5432332B2 (ja) * 2012-06-07 2014-03-05 田中貴金属工業株式会社 化学蒸着用の有機ルテニウム化合物のリサイクル方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2003104994A (ja) 2003-04-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7419699B2 (en) CVD process for forming a thin film
EP0920435B1 (en) Random access memory device and platinum chemical vapour deposition process used in its preparation
JP4759126B2 (ja) 化学気相蒸着用の有機金属化合物及び化学気相蒸着用の有機金属化合物の製造方法並びに貴金属薄膜及び貴金属化合物薄膜の化学気相蒸着方法
JP2008094728A (ja) 化学蒸着用の有機ルテニウム化合物及び該有機ルテニウム化合物を用いた化学蒸着方法
JPH06283438A (ja) 酸化ルテニウムの成膜方法
JP4438266B2 (ja) ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム錯体の合成方法、使用済の該錯体の精製方法及び該錯体の再利用方法
US6663706B2 (en) Raw material compounds for use in CVD, and chemical vapor deposition for producing iridium or iridium compound thin films
JP4661130B2 (ja) 化学気相成長方法
TWI496761B (zh) Cyclopentadienyl tricarbonyl ruthenium-based complex and its production method, and a method for producing the film of the raw material as a raw material
JPH0949081A (ja) 第8族元素類の成膜法およびこれに使用する原料化合物
US8748644B2 (en) Ruthenium compound, method of producing the same, method of producing ruthenium-containing thin film using the same, and ruthenium-containing thin film
JP2019065377A (ja) ルテニウムプリカーサの保管方法
JP2010215982A (ja) ルテニウム錯体有機溶媒溶液を用いたルテニウム含有膜製造方法、及びルテニウム含有膜
JP4672897B2 (ja) ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム誘導体の製造方法
US20030124267A1 (en) Method for manufacturing metal film having high purity
JP2004300152A (ja) 有機金属化合物の製造方法並びに該化合物により得られた金属含有薄膜
JP4051532B2 (ja) 有機金属化学蒸着法用ルテニウム化合物の製造方法及び該方法により得られた有機金属化学蒸着法用ルテニウム化合物並びに該化合物により得られたルテニウム含有薄膜
US7045645B2 (en) Ruthenium compounds, process for their preparation, and ruthenium-containing thin films made by using the compounds
JP2004018468A (ja) ルテニウム化合物及びその製造方法並びに該化合物により得られたルテニウム含有薄膜
JP2009007270A (ja) ルテニウム化合物の製造方法および薄膜の製造方法
JP2004292332A (ja) ルテニウム化合物の製造方法並びに該化合物により得られたルテニウム含有薄膜
JP4856825B2 (ja) Cvd用原料化合物及びその製造方法並びにイリジウム又はイリジウム化合物薄膜の化学気相蒸着方法
JP2004018466A (ja) ルテニウム化合物及びその製造方法並びに該化合物により得られたルテニウム含有薄膜
JP2004018467A (ja) ルテニウム化合物及びその製造方法並びに該化合物により得られたルテニウム含有薄膜
JP2004026680A (ja) ルテニウム化合物及びその製造方法並びに該化合物により得られたルテニウム含有薄膜

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060331

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080910

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090407

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090423

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20091215

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091228

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130115

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees