JP4437588B2 - 鋲輸送用スリーブおよび鋲輸送方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、打鋲装置へ鋲を輸送するのに用いられる技術に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、航空機のフレーム製造(組立)に使用される打鋲装置への鋲輸送には、空気圧を用いた輸送システムが用いられている。すなわち、鋲を一つずつ供給する給鋲装置と上記打鋲装置とは、給鋲装置側から空気圧を導入できるよう構成されたチューブによって結ばれる。そして、給鋲装置側から、このチューブ内に装填された鋲は、空気圧の作用で同チューブ内の輸送路を圧送され、打鋲装置に到達するようになっている。
【0003】
ところで近年は、軸部の長さが非常に短い、正確には、全長Lと頭部の径Dとの比L/Dが1に近いような形状の鋲が使用されることが多い。
【0004】
しかし、鋲は、その長さが短くなればなるほど、チューブ内をスムーズに走行させるのが難しくなる。つまり、鋲の輸送効率が大幅に低下する。これは、短い鋲は走行中にチューブ内で絶えず回転しようとし、チューブ内に導入された空気圧が、鋲を前進させる力に効率よく変換されないからである。
【0005】
ちなみに、鋲が回転すると、その頭部の方向が定まらず、この結果、打鋲前工程にて鋲の把持ができず、したがって鋲を孔に挿入することが不可能となる場合がある。
【0006】
更に言えば、現在使用されている打鋲装置では、鋲の受取りに重力を利用しているため、下向き(鉛直方向)姿勢で鋲を供給するようにしている。だが、今後、鋲の受取りを重力に頼らないシステムが開発された場合に、鋲がいかなる姿勢でも供給可能でなければならず、従来の輸送システムでは対処できなくなる。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、長さが短い鋲についてもスムーズにチューブ内を輸送することが可能な、輸送効率に優れた鋲輸送技術を提供することである。また、あらゆる姿勢で鋲を受取り位置に供給できる鋲輸送技術を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この課題は、
チューブ内に装填された鋲がガス圧により輸送される場合に該鋲が該チューブ内で回転して該鋲の頭部の方向が定まり難い現象が起きる短軸長の鋲を輸送するに際して用いられるスリーブであって、
前記スリーブは、
該スリーブの長手方向に沿って該スリーブの一端側から他端側に向かって形成された前記鋲の軸部が装填される凹部を有するものであり、
かつ、前記チューブ内に装填される形状を有するものであり、
更には、前記鋲の軸部が前記凹部に装填されたスリーブが前記チューブ内に装填されてガス圧により輸送される場合に、該鋲が該チューブ内で回転して該鋲の頭部の方向が定まり難い現象が起きることは無い前記凹部方向に沿って長手の形状を有するものであり、
しかも、該スリーブの周側面から前記凹部内の奥部に連通した孔を有するものであり、
前記鋲の軸部が前記凹部に装填されたスリーブが前記チューブ内に装填されてガス圧により輸送される場合に、該凹部内のガスが前記孔から吸い出されて該装填されている鋲が該凹部内に吸着されるように構成されてなる
ことを特徴とする鋲輸送用スリーブによって解決される。
【0009】
上記の課題は、
上記鋲輸送用スリーブを用いた鋲の輸送方法であって、
鋲の軸部が凹部内に装填されたスリーブをチューブ内に装填する工程と、
前記チューブ内に導入したガス圧の作用により、前記鋲を前記鋲輸送用スリーブと共に前記チューブ内を走行させて輸送する工程
とを具備することを特徴とする鋲輸送方法によって解決される。
【0010】
すなわち、チューブ内の輸送路を経て鋲を輸送する際に、上記のごとく、本発明の鋲輸送用スリーブを用いれば、鋲はその向きが常に一定であるよう(チューブの長手方向と一致するよう)ガイドされた状態となる。したがって、鋲が軸部の長さの非常に短いものであっても、特に全長と頭部の径とが等しいような形状のものであっても、鋲は、チューブ内を走行中に回転しようとするような挙動を示すことはない。この結果、チューブ内に導入されたガス圧(流体圧)は、鋲を前進させる力に効率よく変換され、鋲はチューブ内をスムーズに走行する。つまり、本発明の鋲輸送用スリーブを使用することで、全長が短い鋲についてもスムーズにチューブ内を輸送することが可能となり、鋲輸送効率の大幅な向上が図れる。また、本発明の技術を用いれば、あらゆる姿勢で鋲を受取り位置に供給できるようになる。つまり、360°全姿勢方向に鋲の送給が可能となる。
【0011】
なお、上記本発明の鋲輸送用スリーブにおいては、その外面と凹部内面とをつなぐ孔が、言い換えれば、鋲輸送用スリーブの周囲の空間と同鋲輸送用スリーブの凹部内空間とをつなぐ孔が、更に形成されてなることが好ましい。
【0012】
これは、例えば、この孔の存在により、チューブ内を走行する鋲輸送用スリーブの凹部内空間が減圧され(孔から凹部内空間に存在するガスが吸い出されるため)、この結果、鋲が鋲輸送用スリーブに吸着されるようになるからである。つまり、上記孔を設けることによって、鋲は一層確実に鋲輸送用スリーブに保持されるようになる。また、上記孔を設けておけば、凹部の内径が鋲の外径とほとんど同じ場合でも、鋲の軸部を凹部に挿入した際、凹部内のガスは上記孔から速やかに排出される。よって、孔を形成していない場合よりも迅速に、鋲を鋲輸送用スリーブにセットできるようになる。
【0013】
但し、上記孔の一方の開口は、鋲輸送用スリーブ外面のいかなる位置に存在してもよい。例えば、鋲輸送用スリーブの外周面や底面などに、上記孔の一方の開口を形成することができる。
【0014】
ちなみに、上記鋲輸送用スリーブは、金属(例えばアルミニウム、鋼、真ちゅう)あるいは樹脂などから構成することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図3を用い、本発明の一実施形態を更に詳しく説明する。なお、図1は本実施形態に係る鋲輸送用スリーブの外観図、図2は同鋲輸送用スリーブの縦断面図、図3は同鋲輸送用スリーブを用いて鋲が輸送される様子を示す概念図である。
【0016】
本実施形態に係る鋲輸送用スリーブ(以下、単に本鋲輸送用スリーブと言う)は、後に詳述するように、航空機のフレーム製造に使用される給鋲装置と打鋲装置との間に配されたチューブ内の輸送路を用いて、鋲を、この給鋲装置から打鋲装置へと輸送する際に用いられるものである。
【0017】
本鋲輸送用スリーブは、図1に示すごとく略樽形の形状を有する。すなわち、その両端部は円錐台状に構成され、かつ、中央部は径の均一な円柱状に構成されている。
【0018】
但し、本鋲輸送用スリーブの中央部の外径(図1中、Rで示す)は、言うまでもなく、上記チューブの内径よりも小さくなっている。つまり、本鋲輸送用スリーブがチューブ内をスムーズに走行できるようにするため、チューブ内面との間に適度な空隙が形成されるよう中央部の外径Rを設定している。
【0019】
なお本実施形態では、この鋲輸送用スリーブを金属材料から一体的に形成したが、樹脂など他の材料を用いてもよい。
【0020】
さて本鋲輸送用スリーブは、図2からも判るように、一端面側に、鋲(図2中、一点鎖線で示す)Mの軸部を収納可能な凹部1が形成されている。特に本実施形態では、この凹部1の深さ(図2中、Dで示す)を、鋲Mの軸部長さよりも十分に大きくしている。つまり、凹部1に鋲Mの軸部を収納した状態で、この軸部の端面と凹部1の底面との間に空間が形成されるよう構成している。但し基本的には、上記凹部1は、少なくとも鋲Mの軸部の一部を収納可能な深さを有していればよい。
【0021】
また本鋲輸送用スリーブには、その外面(外周面)と凹部1の内面とをつなぐ孔2が複数(2〜4個程度)形成されている。言い換えれば、本鋲輸送用スリーブは、その周囲の空間と凹部1内の空間(上記軸部端面と凹部1の底面との間の空間)をつなぐ孔2を有する。
【0022】
なお本実施形態では、この孔2を鋲輸送用スリーブの外周面に対して垂直に形成したが、ある程度傾斜させてもよい。但しここでは、凹部1に鋲Mの軸部を収納した際、この軸部の周面によって孔2の開口が閉塞されないようにするため、孔2は、その開口が凹部1の底面近傍(すなわち奥側)に存在するよう設けてある。更に言えば、この外面と凹部1の内面とをつなぐ孔2の外面側開口を、鋲輸送用スリーブの底面に形成してもよい。つまり、孔を鋲輸送用スリーブの軸線と平行になるよう形成することもできる。
【0023】
次に、上記鋲輸送用スリーブを用いた鋲の輸送方法について、図3を用いて説明する。
【0024】
上述したように、本輸送方法は、給鋲装置Aと打鋲装置Bとの間に配されたチューブ3内の輸送路を用いて、鋲Mを、この給鋲装置Aから打鋲装置Bへと輸送するのに利用されるものである。なお、特に図示してはいないが、チューブ3には、給鋲装置Aの側から空気圧(ガス圧)を導入できるようになっている。
【0025】
さて本輸送方法の実施にあたっては、まず給鋲装置Aの側において、本鋲輸送用スリーブFを用いて、鋲Mをチューブ3内に装填する。更に詳しく言うと、鋲Mと本鋲輸送用スリーブFとを、前者の軸部が後者の凹部1内に収納された状態で、上記チューブ3の一端側にセット(鋲Mの頭部が空気圧を受けるような向きにセット)する。
【0026】
この後はチューブ3内に、図3中、右側から空気圧を導入する。そして、その作用によって、鋲Mを本鋲輸送用スリーブFと共に、チューブ3内の輸送路を打鋲装置Bの側に向けて走行させればよい(走行中の状態は図3に拡大して示すとおり)。こうした操作を繰り返し行うことによって、鋲Mは、給鋲装置Aから打鋲装置Bへ次々に輸送される。ちなみに、打鋲装置Bの側では、まず本鋲輸送用スリーブFより鋲Mを取り出し、続いて、この鋲Mを用いて打鋲処理を行うことになる。
【0027】
このように、チューブ3内の輸送路を経て鋲Mを輸送する際に、本鋲輸送用スリーブFを用いれば、鋲Mはその向きが常に一定であるよう(チューブ3の長手方向と一致するよう)ガイドされた状態となる。したがって、鋲Mが軸部の長さの非常に短いもの(特に全長と頭部の径とが等しいような形状のもの)であっても、鋲Mは、チューブ3内を走行中に回転しようとするような挙動を示すことはない。それゆえ、チューブ3内に導入された空気圧は、鋲Mを前進させる推力に効率よく変換され、鋲Mはチューブ3内をスムーズに走行する。つまり、本実施形態の鋲輸送用スリーブFを使用することで、全長が短い鋲Mについてもスムーズにチューブ3内を輸送することが可能となり、鋲輸送効率の大幅な向上が図れる。これに加えて、本実施形態の技術を用いれば、あらゆる姿勢で鋲Mを受取り位置に供給できるようになる。つまり、360°全姿勢方向に鋲Mの送給が可能となる。
【0028】
更に、上述したごとく本鋲輸送用スリーブFには、その外周面と凹部1の内面とをつなぐ孔2が形成されている。このため走行中は、この孔2から、凹部1内に存在している空気が吸い出される。その結果、本鋲輸送用スリーブFの凹部1内の空間は減圧され、鋲Mは本鋲輸送用スリーブFに吸着される。つまり孔2の存在によって、鋲Mは、一層確実に本鋲輸送用スリーブFに保持されるようになる。それゆえ、チューブ3内を走行中に、鋲Mが本鋲輸送用スリーブFから脱落するといったトラブルが極めて起きにくくなる。
【0029】
なお、本発明に係る鋲輸送用スリーブの形状は、言うまでもなく、上記実施形態のそれに限定されるわけではない。ここで、図4に、本発明に係る鋲輸送用スリーブの他実施形態の一部を示す。
【0030】
同図に示す鋲輸送用スリーブは、凹部1’が2段になっていることを特徴とする。すなわち凹部1’は、鋲M’の軸部に対応した部分と頭部に対応した部分(大径部分)とから構成されている。そして、鋲輸送用スリーブをこのような構造とすれば、鋲M’を一層確実に保持することが可能となる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、全長が短い鋲についてもチューブ内をスムーズに輸送することが可能であり、鋲の輸送効率の向上が図れる。また、あらゆる姿勢で鋲を受取り位置に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る鋲輸送用スリーブの外観図
【図2】本発明の一実施形態に係る鋲輸送用スリーブの縦断面図
【図3】本発明の一実施形態に係る鋲輸送用スリーブを用いて鋲が輸送される様子を示す概念図
【図4】本発明の他実施形態に係る鋲輸送用スリーブの一部断面図
【符号の説明】
F 鋲輸送用スリーブ
1,1’ 鋲輸送用スリーブの凹部
2 鋲輸送用スリーブの孔
3 チューブ
A 給鋲装置
B 打鋲装置
M,M’ 鋲

Claims (3)

  1. チューブ内に装填された鋲がガス圧により輸送される場合に該鋲が該チューブ内で回転して該鋲の頭部の方向が定まり難い現象が起きる短軸長の鋲を輸送するに際して用いられるスリーブであって、
    前記スリーブは、
    該スリーブの長手方向に沿って該スリーブの一端側から他端側に向かって形成された前記鋲の軸部が装填される凹部を有するものであり、
    かつ、前記チューブ内に装填される形状を有するものであり、
    更には、前記鋲の軸部が前記凹部に装填されたスリーブが前記チューブ内に装填されてガス圧により輸送される場合に、該鋲が該チューブ内で回転して該鋲の頭部の方向が定まり難い現象が起きることは無い前記凹部方向に沿って長手の形状を有するものであり、
    しかも、該スリーブの周側面から前記凹部内の奥部に連通した孔を有するものであり、
    前記鋲の軸部が前記凹部に装填されたスリーブが前記チューブ内に装填されてガス圧により輸送される場合に、該凹部内のガスが前記孔から吸い出されて該装填されている鋲が該凹部内に吸着されるように構成されてなる
    ことを特徴とする鋲輸送用スリーブ。
  2. 前記凹部の深さ寸法は前記鋲の軸部の長さ寸法より大きい
    ことを特徴とする請求項1の鋲輸送用スリーブ。
  3. 請求項1又は請求項2の鋲輸送用スリーブを用いた鋲の輸送方法であって、
    鋲の軸部が凹部内に装填されたスリーブをチューブ内に装填する工程と、
    前記チューブ内に導入したガス圧の作用により、前記鋲を前記鋲輸送用スリーブと共に前記チューブ内を走行させて輸送する工程
    とを具備することを特徴とする鋲輸送方法。
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