JP4436507B2 - 緩衝器用油圧作動油組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は緩衝器用油圧作動油組成物に関し、詳しくは特に自動車の懸架装置(ショックアブソーバー、アクティブサスペンション、ステーダンパー、エンジンダンパー等)に適する緩衝器用油圧作動油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より自動車の懸架装置(ショックアブソーバー、アクティブサスペンション、ステーダンパー、エンジンダンパー等)に使用される緩衝器用油圧作動油としては、摩擦低減と摩耗防止を目的としてリン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルを添加したものが知られていた。またさらに摩擦低減効果を高めるために脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪族アミン、脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物等の油性剤を併用したものが使用されてきた(特開平6−128581号公報、特開平7−224293号公報、特開平7−258673号公報等)。
緩衝器の摩擦、摩耗は主としてピストンロッド/シール、ピストンロッド/ブッシュ、ピストンバンド/シリンダーで起こる。従って自動車の振動を緩和して乗り心地や操舵性を確保するため、緩衝器に使用される油圧作動油には優れた摩擦低減効果と摩耗防止効果及びこれら特性の維持性が要求される。近年、摩擦低減を材料面から図る目的でテフロン樹脂を含浸させたブッシュやテフロン樹脂にカーボンファイバーやグラファイトを埋め込んだモールドピストン(ピストンバンド)が使用されるようになり、これらの摩耗防止が重要な課題となってきた。また摩擦面にかかる荷重が高いガス封入型や減衰力可変型の緩衝器の使用が増加してきたため、緩衝器用油圧作動油の使用条件は過酷になってきた。
そのため、本出願人は、亜リン酸エステル及び特定構造を有する脂肪族アミン及び/又はそのアルキレンオキシド付加物を併用することにより、貯蔵安定性が良好で、優れた性能を有する緩衝器用油圧作動油組成物が得られることを見いだし、先に特許出願した(特願平4−301578,特願平6−37528,特願平6−77840)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述の緩衝器用油圧作動油組成物では、上述のような緩衝器用油圧作動油の使用環境の変化に伴い、従来のリン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルに脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステルの油性剤を併用したものは摩擦面の摩耗が大きく、摩擦低減効果も小さいという問題が生じることがある。
また、リン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルと脂肪族アミンの組み合わせは初期の摩耗防止効果や摩擦低減効果はあるものの、その効果の維持性に問題があることがある。リン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルに脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物を併用したものは摩擦低減効果や摩耗防止効果は比較的良好なものの、リン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルと脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物との反応生成物が低温時に析出する問題が生じることがある。この問題はリン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルと脂肪族アミンとの組み合わせにおいても認められることがある。これらの析出物は緩衝器に油圧作動油を充填するラインのフィルターを閉塞させる危険性がある。
しかしながら、テフロン樹脂含浸ブッシュやピストンバンドの摩擦、摩耗を低減させるためには、これら亜リン酸エステルと、脂肪族アミン及び/又は脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物の組み合わせが非常に有効である。
そこで、本発明は、特に低温時における貯蔵安定性が良好であり、テフロン樹脂含浸ブッシュやピストンバンドの潤滑において優れた摩擦低減効果や摩耗防止効果を発揮し、これら効果の維持性に優れている緩衝器用油圧作動油組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、[1]特定構造を有する酸性亜リン酸エステルと、[2]特定構造を有する脂肪族アミン又はそのアルキレンオキシド付加物と、[3]特定構造を有する酸性亜リン酸エステルとを含有させると共に、[1]成分と[2]成分との調合の仕方に特徴をもたせることにより、低温時における貯蔵安定性が良好で、優れた性能を有する緩衝器用油圧作動油組成物を見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の緩衝器用油圧作動油組成物は、
潤滑油基油に対し、
[1]炭素数3〜8のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する酸性亜リン酸エステル、
[2]炭素数12〜24のアルキル基及び/若しくはアルケニル基を有する脂肪族アミン又はそのアルキレンオキシド付加物、
[3]炭素数10〜24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する酸性亜リン酸エステル、
をそれぞれ含有してなり、かつ上記[1]成分と[2]成分とが上記[3]成分の不存在下で接触しているものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明における潤滑油基油としては、特に限定されるものではなく、通常潤滑油基油として使用されているものであれば鉱油系、合成系を問わず使用できる。
鉱油系潤滑油基油としては、例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の油が使用できる。
また、合成系潤滑油基油としては、例えば、α−オレフィンオリゴマー(ポリブテン、ポリイソブチレン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレン共重合体等)又はその水素化物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル、(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル等が使用できる。これらの基油は単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明において使用する潤滑油基油の粘度は特に限定されず任意であるが、一般の緩衝器に要求される減衰力に適合させる必要性から、40℃における動粘度の下限値は、好ましくは8mm2/s、より好ましくは10mm2/sであり、一方、40℃における動粘度の上限値は、好ましくは60mm2/s、より好ましくは40mm2/sのものを用いるのが望ましい。
本発明において使用する潤滑油基油の粘度指数も特に限定されず任意であるが、緩衝器に要求される基本的性能である減衰作用が油圧作動油の粘度に依存し、温度による減衰力の変化をできるだけ小さくするという点から、粘度指数は、好ましくは80以上、より好ましくは95以上のものを用いるのが望ましい。
【0006】
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物における[1]成分は、炭素数3〜8のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する酸性亜リン酸ジエステル、酸性亜リン酸モノエステルである。
[1]成分としては、具体的には、下記の一般式(1)で表される酸性亜リン酸ジエステルや一般式(2)で表される酸性亜リン酸モノエステル及びこれらの混合物等が例示できる。
【化1】
Figure 0004436507
【化2】
Figure 0004436507
なお場合によっては、上記(1)式で表される酸性亜リン酸ジエステルはその互変異性体である下記の一般式(3)の形で、また、上記(2)式で表される酸性亜リン酸モノエステルはその互変異性体である下記の一般式(4)の形で表されることもあるが、これらはそれぞれ、同じ化合物を示すものである。
【化3】
Figure 0004436507
【化4】
Figure 0004436507
上記(1)式、(2)式、(3)式及び(4)式中、R1、R2及びR3は、それぞれ個別に、直鎖状又は分枝状の、炭素数3〜8、好ましくは炭素数4〜8のアルキル基又はアルケニル基を示している。
1、R2及びR3としては、それぞれ個別に具体的には例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);
ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良い);
が例示できる。
[1]成分のうち好ましいものとしては、具体的には例えば、ジ−n−ブチルハイドロジェンホスファイト、ジ−n−ヘキシルハイドロジェンホスファイト、ジ−n−オクチルハイドロジェンホスファイト(ジカプリルハイドロジェンホスファイト)、ジ−(2−エチルヘキシル)ハイドロジェンホスファイト等のジエステルや、n−ブチルハイドロジェンホスファイト、n−ヘキシルハイドロジェンホスファイト、n−オクチルハイドロジェンホスファイト(カプリルハイドロジェンホスファイト)、2−エチルヘキシルハイドロジェンホスファイト等のモノエステル等が例示でき、また、これらの混合物も使用可能である。
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物において、[1]成分の含有量は特に限定されず任意であるが、摩擦低減効果や摩耗防止効果の向上効果の点で、その含有量の下限値は、組成物全量基準で好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.3質量%であり、一方、低温時における貯蔵安定性の点からその含有量の上限値は、好ましくは5.0質量%、より好ましくは2.0質量%であるのが望ましい。
【0007】
本発明における[2]成分は、炭素数12〜24のアルキル基及び/若しくはアルケニル基を有する脂肪族アミン又はそのアルキレンオキシド付加物である。脂肪族アミンとしては、下記の一般式(5)で表される脂肪族第1級アミンや下記の一般式(6)で表される脂肪族第2級アミン及びこれらの混合物等が例示できる。
4−NH2 (5)
【化5】
Figure 0004436507
上記(5)式及び(6)式中、R4、R5及びR6は、それぞれ個別に、直鎖状又は分枝状の、炭素数12〜24、好ましくは炭素数16〜18のアルキル基又はアルケニル基を示している。
4、R5及びR6は、具体的にはそれぞれ個別に、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が例示できる。
[2]成分の脂肪族アミンのうち好ましいものとしては、具体的には例えば、n−ドデシルアミン(ラウリルアミン)、n−テトラデシルアミン(ミリスチルアミン)、n−ヘキサデシルアミン(パルミチルアミン)、n−オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、9−n−オクタデセニルアミン(オレイルアミン)等の脂肪族第1級アミンやジ(n−ドデシル)アミン等の脂肪族第2級アミン等が例示でき、また、これらの混合物も使用可能である。
また[2]成分の脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物としては、具体的には、下記の一般式(7)で表される脂肪族第1級アミンアルキレンオキシド付加物や下記の一般式(8)で表される脂肪族第2級アミンアルキレンオキシド付加物及びこれらの混合物等が例示できる。
【化6】
Figure 0004436507
【化7】
Figure 0004436507
上記(7)式及び(8)式中、R7、R10及びR11は、それぞれ個別に、直鎖状又は分枝状の、炭素数12〜24、好ましくは炭素数16〜18のアルキル基又はアルケニル基を示している。
7、R10及びR11は、それぞれ個別に具体的には例えば、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が例示できる。
また、上記(7)式及び(8)式中、R8、R9及びR12は、それぞれ個別に、直鎖状又は分枝状の、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜3、より好ましくは炭素数2のアルキレン基を示している。
8、R9及びR12は、それぞれ個別に具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基(これらアルキレン基は直鎖状でも分枝状でも良い)が例示できる。
また、上記(7)式中、a及びbは、それぞれ個別に0〜10、好ましくは0〜5であり、かつ、a+b=1〜10、好ましくは1〜5である数を示し、(8)式中、cは、1〜10、好ましくは1〜5である数を示している。
[2]成分の脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物のうち好ましいものとしては、具体的には例えば、n−ドデシルアミン(ラウリルアミン)、n−テトラデシルアミン(ミリスチルアミン)、n−ヘキサデシルアミン(パルミチルアミン)、n−オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、9−n−オクタデセニルアミン(オレイルアミン)、イソステアリルアミン等の脂肪族第1級アミンのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物、ブチレンオキシド付加物や、ジ(n−ドデシル)アミン等の脂肪族第2級アミンのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物、ブチレンオキシド付加物が例示でき、また、これらの混合物も使用可能である。
また本発明の[2]成分として、上記に例示したような脂肪族アミンと脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物との混合物も使用できるのは言うまでもない。
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物において、[2]成分の含有量は特に限定されず任意であるが、その含有量の下限値は、組成物全量基準で好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.02質量%であり、一方、その含有量の上限値は、好ましくは5.0質量%、より好ましくは2.0質量%であるのが望ましい。[2]成分の含有量が上記下限値未満の場合は、摩擦低減効果や摩耗防止効果の向上効果に乏しい虞があり、一方、[2]成分の含有量が上記上限値を超える場合は、摩耗防止効果の向上効果に乏しい虞がある。
【0008】
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物における[3]成分は、炭素数10〜24のアルキル基及び/若しくはアルケニル基を有する酸性亜リン酸エステルである。
[3]成分としては、具体的には、下記の一般式(9)で表される酸性亜リン酸ジエステルや一般式(10)で表される酸性亜リン酸モノエステル及びこれらの混合物等が例示できる。
【化8】
Figure 0004436507
【化9】
Figure 0004436507
なお、上記(9)式で表される酸性亜リン酸ジエステルや上記(10)式で表される酸性亜リン酸モノエステルは、前述したようにその互変異性体の形で表されることもあるが、これらはそれぞれ、同じ化合物を示すものである。
上記(9)式及び(10)式中、R13、R14及びR15は、それぞれ個別に、直鎖状又は分枝状の、炭素数10〜24、好ましくは炭素数12〜20のアルキル基又はアルケニル基を示している。
13、R14及びR15としては、具体的にはそれぞれ個別に、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が例示できる。
[3]成分のうち特に好ましいものとしては、具体的には、ジ−n−デシルハイドロジェンホスファイト、ジ−n−ドデシルハイドロジェンホスファイト(ジラウリルハイドロジェンホスファイト)、ジ−n−テトラデシルハイドロジェンホスファイト(ジミリスチルハイドロジェンホスファイト)、ジ−n−ヘキサデシルハイドロジェンホスファイト(ジパルミチルハイドロジェンホスファイト)、ジ−n−オクタデシルハイドロジェンホスファイト(ジステアリルハイドロジェンホスファイト)、ジ−9−オクタデセニルハイドロジェンホスファイト(ジオレイルハイドロジェンホスファイト)、ジ−n−イコセニルハイドロジェンホスファイト、ジイソステアリルハイドロジェンホスファイト等のジエステルや、n−ドデシルハイドロジェンホスファイト(ラウリルハイドロジェンホスファイト)、n−テトラデシルハイドロジェンホスファイト(ミリスチルハイドロジェンホスファイト)、n−ヘキサデシルハイドロジェンホスファイト(パルミチルハイドロジェンホスファイト)、n−オクタデシルハイドロジェンホスファイト(ステアリルハイドロジェンホスファイト)、9−オクタデセニルハイドロジェンホスファイト(オレイルハイドロジェンホスファイト)、n−イコセニルハイドロジェンホスファイト、イソステアリルハイドロジェンホスファイト等のモノエステルが例示でき、また、これらの混合物も使用可能である。
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物において、[3]成分の含有量は特に限定されず任意であるが、組成物全量基準で、その含有量の下限値は、好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.02質量%であり、一方、その含有量の上限値は、好ましくは2.0質量%、より好ましくは1.0質量%であるのが望ましい。[3]成分の含有量が上記下限値未満の場合は、[3]成分併用による摩擦低減効果や摩耗防止効果の向上効果に乏しい虞があり、一方、[3]成分の含有量が上記上限値を超える場合は、低温時における貯蔵安定性に劣る虞がある。
【0009】
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物は、[1]成分、[2]成分及び[3]成分をそれぞれ含有されてなり、かつ、[1]成分と[2]成分とが[3]成分の不存在下で接触しているものである。
[1]成分と[2]成分の接触温度は好ましくは10℃以上、さらに好ましくは40℃以上で、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。接触温度が10℃に満たない場合には接触が十分になされず、150℃を越える場合には成分[1]及び[2]の分解等の不都合が生じるため好ましくない。また接触時間は特に制限はないが、通常30分以上、好ましくは60分以上で、3時間以下、好ましくは2時間以下であることが望ましい。接触時間が30分に満たない場合には接触が充分に為されず、また、接触を3時間を越えて行っても得られる油圧作動油組成物の性能はそれ以上向上しないので意味がない。
またここでいう接触は通常、撹拌によって行うが、撹拌方法や、温度及び時間以外の撹拌条件は特に限定されるものでなく、公知の潤滑油組成物製造の際に行われる任意の撹拌方法、撹拌条件が適用可能である。具体的に例えば、プロペラ撹拌機やハニカムミキサーなどの撹拌機を用いる方法が好ましく用いられる。
[3]成分を含有させる条件については特に制限はなく、一般的な潤滑油組成物に脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物を含有させる任意の条件が適用可能である。[3]成分の含有は通常、撹拌によって行うが、この際の撹拌方法も任意であり、公知の潤滑油組成物製造の際に行われる任意の撹拌方法が適用可能である。具体的に例えば、プロペラ撹拌機やハミカムミキサーなどの撹拌機を用いる方法が好ましく用いられる。
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物を得る一つの方法としては、まず[1]成分及び[2]成分を同時に又は別々に潤滑油基油に添加し、次に上記条件、すなわち10〜150℃の温度で接触させ、最後にこれに[3]成分を含有させる方法を挙げることができる。
また、本発明の緩衝器用油圧作動油組成物を得る他の方法としては、まず[1]成分及び[2]成分を上記条件、すなわち10〜150℃の温度で接触させた後、このようにして得られた接触物と[3]成分を混合し、得られた混合物を潤滑油基油に添加する方法を挙げることができる。
また、本発明の緩衝器用油圧作動油組成物を得る他の方法としては、まず[3]成分を潤滑油基油に添加し、次に[1]成分及び[2]成分を上記条件、すなわち10〜150℃の温度で接触させ、このようにして得られた接触物を潤滑油基油に添加する方法を挙げることができる。
また、これら例示した方法において、[1]〜[3]成分は、それぞれ個別に、化合物そのままの形で用いてよく、また前述したとおり、溶剤や潤滑油で希釈した形で用いてもよい。
【0010】
本発明においては、上述のように潤滑油基油に対して[1][2][3]成分を含有させてなり、かつ、[1]成分と[2]成分が[3]成分の不存在下で接触してなることにより、優れた性能を有する緩衝器用油圧作動油組成物を得ることができるが、その各種性能をさらに高める目的で公知の潤滑油添加剤、具体的には例えば、摩耗防止剤、無灰清浄分散剤、金属系清浄剤、酸化防止剤、錆止め剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤等を、単独で、又は数種類組み合わせた形で使用することができる。
摩耗防止剤としては、ジチオリン酸亜鉛、硫化油脂、サルファイド、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩等を挙げることができる。無灰清浄分散剤としては、コハク酸イミド、コハク酸アミド、コハク酸エステル、ベンジルアミン等を挙げることができ、またホウ素含有無灰清浄分散剤も使用できる。金属系清浄剤としては、アルカリ土類金属スルフォネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属ホスフォネート等を挙げることができる。酸化防止剤としては、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤のほか、硫黄系、ジチオリン酸亜鉛系、フェノチアジン系等の酸化防止剤を挙げることができる。錆止め剤としては、石油系及びジノニルナフタレン系スルフォネート、エステル系錆止め剤等を挙げることができる。金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物等を挙げることができる。粘度指数向上剤、流動点降下剤としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、オレフィンコポリマー等を挙げることができる。消泡剤としては、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等を挙げることができる。
これらの添加剤の含有量は特に限定されず任意であるが、通常、組成物全量基準で、消泡剤の含有量は0.0005〜0.1質量%、粘度指数向上剤の含有量は1〜30質量%、金属不活性化剤の含有量は0.005〜1質量%、その他の添加剤の含有量は0.1〜15質量%である。
【0011】
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物は、特に自動車の懸架装置(ショックアブソーバー、アクティブサスペンション、ステーダンパー、エンジンダンパー等)に好適に使用されるものである。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの内容に何ら限定されるものではない。
【0013】
実施例1〜3及び比較例1〜3
表1に示すような組成の本発明に係る各種(実施例1〜3)の緩衝器用油圧作動油組成物を調製した。この調製は、いずれもまず[1]成分及び[2]成分を基油に添加し、50℃で1時間、プロペラ撹拌機を用いて撹拌して接触を行い、その後、[3]成分を含有させて行った。これら調製した各組成物に対して以下に示す実験室貯蔵安定性試験及び実機耐久試験を実施し、低温時における貯蔵安定性、摩擦低減効果及び摩耗防止効果を評価した。その結果を表1に併記した。
また、比較のため、表1に示すような同一の組成割合の比較例1〜3を次の配合順序で調製した。
比較例1:[1]〜[3]成分を全て同時に添加する。
比較例2:[1]成分と[3]成分とを先に添加し、その後に[]成分を添加する。
比較例3:[2]成分と[3]成分とを先に添加し、その後に[1]成分を添加する。
このように調製した組成物に対しても上記と同様の試験を行い、その結果を表1に示した。
【0014】
<貯蔵安定性試験>
表1に示す組成物100mlを蓋付きスクリュー管に入れ、−5℃で1カ月貯蔵した後、目視しより析出物の有無を調べた。
<実機耐久試験>
市販のストラット型ショックアブソーバーを用い、以下の試験条件で加振回数200万回の耐久試験を行った。
試験油温:80℃
試験油量:330ml
横荷重:200kgf
加振全振幅:50mm
加振速度:0.5m/s
摩擦低減効果
上記の実機耐久試験において、加振回数0回時(耐久試験初期)と加振回数200万回時(耐久試験終了時)におけるそれぞれのショックアブソーバーの摩擦面における摩擦係数を測定し、表1に示した。
摩耗防止効果
上記の実機耐久試験において、耐久試験終了後にショックアブソーバーを分解し、その摩擦面(シリンダー、ピストンロド、ブッシュ、ピストンバンド、オイルシール)の表面を目視で評価し、その結果を表1に示した。なお摩耗防止効果の判定基準は0〜5(最良:5)の6段階で表した。
【0015】
【表1】
Figure 0004436507
【0016】
表1の実施例の結果から明らかなように、本発明に係る緩衝器用油圧作動油組成物(実施例1〜3)はいずれも低温貯蔵安定性が良好であり、耐久初期における摩擦低減効果に優れているとともに、その経時変化が少ないという優れた性能を有している。また耐久終了後の摩擦面は摩耗が少なく、摩耗防止効果の面でも本発明の緩衝器用油圧作動油組成物は優れていることがわかる。
これに対して、[1]成分と[2]成分との接触が[3]成分の不存在下で行われていない比較例1〜3の組成物は、いずれも低温貯蔵安定性に問題がある。
【0017】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、低温時における貯蔵安定性が良好であり、テフロン樹脂含浸ブッシュやピストンバンドの潤滑において優れた摩擦低減効果や摩耗防止効果を発揮し、これら効果の維持性に優れている緩衝器用油圧作動油組成物が得られる。

Claims (1)

  1. 潤滑油基油に対して、
    [1]炭素数3〜8のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する酸性亜リン酸エステル、
    [2]炭素数12〜24のアルキル基及び/若しくはアルケニル基を有する脂肪族アミン又はそのアルキレンオキシド付加物、
    [3]炭素数10〜24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する酸性亜リン酸エステル、
    をそれぞれ含有してなり、かつ上記[1]成分と[2]成分とが上記[3]成分の不存在下で接触していることを特徴とする緩衝器用油圧作動油組成物。
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