JP4436048B2 - フッ素ガス供給方法および装置ならびにフッ素ガス発生方法および装置 - Google Patents

フッ素ガス供給方法および装置ならびにフッ素ガス発生方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学反応を利用して安全かつ安価にフッ素ガスを製造でき、特に、ユースポイントであるフッ素ガス利用設備の近傍でフッ素ガスを製造するオンサイト型に適したフッ素ガス供給方法および装置ならびにフッ素ガス発生方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程のクリーニングガスとしては、従来からCFやC等のPFC(パーフロロコンパウンド)ガスが利用されてきた。これらのPFCガスは、地球温暖化係数が高く、地球環境保護のために排出を削減することが急務となっている。そこで、地球温暖化係数の低い代替ガスとして、現在はNFが広く使用されるようになっている。ところが、NFガスは、有毒性が高いため、排出に当っては除害が必要であり、除害処理にコストがかかるため、最近ではNFガスに替わるクリーニングガスとしてフッ素ガスが注目を集めている。
【0003】
このような半導体製造工程で用いられるフッ素ガスは、その品質特性として、不純物の少ない高純度のガスが求められる。一方、半導体等の製造現場では、一般に、高圧でフッ素ガスを充填したガスボンベから必要量のガスを取り出して使用している。このため、高圧ボンベの安全な保管場所を確保し、ガスの安全性確保や純度維持等の管理が必要となる。さらに、フッ素ガスは、それ自体で用いられるだけでなく、フッ素ガスを基にしてフッ素系の化合物ガスとして利用される基幹ガスであることから、安定供給が不可欠で在庫を抱える必要もある。これらのことを考慮すると、高圧のフッ素ガスをボンベで扱うよりも、オンサイトのフッ素ガス供給装置をフッ素ガスの使用場所に設置するのが好ましい。
【0004】
このようなフッ素ガスを発生させる方法として、現在工業的に確立されているのは、電気分解による電気分解法と、吸蔵合金を利用した吸蔵法とがある。これらは、いずれもオンサイト型の発生装置として工業的に利用されている。
【0005】
電気分解法は、例えば、下記の特許文献1に開示されたように、無水フッ化水素等の電気分解によってフッ素ガスを発生させるものである。この電気分解法では、比較的安価にガスを発生させることができる反面、以下のような問題を有している。
(1)原料の無水フッ化水素は入手しにくいうえ、腐食性の高いガスであることから取扱いが困難である。また、発生したフッ素ガスにある程度のフッ化水素ガスが混入するため、直接には高純度のガスが得られず、精製装置を設けて高純度化する必要がある。
(2)電極材料としてフッ化されにくい特殊なものを使用する必要があり、入手が困難で汎用性に劣る。また、電解のためには、低電圧・大電流の特殊な電源が必要で、電源装置のイニシャルおよびメンテナンスにコストがかかり、装置自体も大型で複雑なものが必要となる。
(3)電解槽内に発生する汚泥の除去や消耗・破損した電極の交換等、装置自体の維持管理が困難で、費用もかかる。
(4)電解槽内に生じる水素とフッ素は爆発的に反応するものであるため、危険性が極めて高い。
【0006】
これらのように設備が大型でメンテナンスや取扱いに問題があることから、オンサイトでの発生装置として使用されているものの、より安全で小型の発生装置が望まれているのが実情である。
【0007】
一方、吸蔵法は、例えば、下記の特許文献2に開示されたように、フッ素吸蔵合金にフッ素を吸蔵させておき、それを加熱することでフッ素ガスを発生させるものである。この吸蔵法は、吸蔵合金の加熱という簡単な操作だけでフッ素ガスを発生させることができるため、装置が簡易かつ小型となり、オンサイトでの発生装置としては好適なものと考えられる。
【0008】
ところが、吸蔵法による発生装置は、吸蔵合金にフッ素を吸蔵させて供給するため、原料としてフッ素が必要で、そのフッ素は電解法によって発生されることから、結局、上述したような問題を完全に解消するものにはならない。また、オンサイトでは、吸蔵合金を加熱するだけでフッ素を発生させることができるが、ガスの単価が電解法の約250倍以上と極めて高価であり、容易に普及しうるものでもない。
【0009】
また、上記電気分解法や吸蔵法では、フッ素ガスの生成圧力がそれほど高くない。特に、吸蔵法では、吸蔵反応が可逆反応であるため、平衡関係にあると考えられ、圧力を上げると発生量が少なくなり、収率の変化が圧力に対してかなり激しいので、使用条件が限られる。このため、フッ素ガス利用設備に供給する際に、所定圧力の希釈ガスで希釈して圧送したり、コンプレッサ等の圧送装置を用いたりする必要がある。ところが、希釈ガスを利用すると、高濃度のフッ素ガスを供給することができないという問題が生じ、コンプレッサ等の装置を使用すると、腐食による装置の早期損傷が問題となる。
【0010】
そこで、電解法や吸蔵法に替わり、化学反応でフッ素ガスを発生させる方法として、下記の特許文献3の方法が開示されている。この化学法では、蛍石のフッ化カルシウム成分と五酸化バナジウムを約700℃に加熱して反応させることにより、下記の式に示すようにフッ素ガスを発生させるものである。
CaF+V→CaO+V+F
【0011】
【特許文献1】
特開2002−339090号
【特許文献2】
特開2001−7423号
【特許文献3】
特開昭49−36597号
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の第1の目的は、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型のフッ素発生装置に適用することにより、電解法および吸蔵法によるフッ素発生装置の諸問題を解消し、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるフッ素ガス供給方法および装置ならびにフッ素ガス発生方法および装置を提供することにある。
【0013】
一方、上記化学法は、30年以上も前に発案された技術であるにもかかわらず、現在のところ工業的に実用化されるに至っていないのが実情である。それには、下記のような問題があるためと考えられている。
(1)原料となる蛍石および五酸化バナジウムは、いずれも常温で固体の物質であるため、反応の原料としては粉末状のものを使用することになる。このような粉末原料を扱う際には空気の介在が避けられないため、反応の際に空気中の水分がフッ素と反応してフッ化水素が生成してしまう。このようにフッ化水素が生じると、生成フッ素ガスの純度が低下するだけでなく、フッ化水素は腐食性および毒性の高いガスであることから、装置自体の損傷が激しいうえ、フッ素ガスからフッ化水素を除去する必要が生じる。
(2)粉末原料の蛍石と五酸化バナジウムを混合させて加熱すると、700℃程度で五酸化バナジウムが溶融して上述した反応が促進するのであるが、この溶融物が極めて粘稠であるため、容器に粉末を充填して加熱しても、そのままでは溶融物が均一に混じり合わず、容器内の全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることが困難である。
【0014】
そこで、本発明の第2の目的は、化学法によるフッ素発生法の上述した諸問題を解消し、安全かつ安定したフッ素の発生を実現し、簡便な装置で安価にフッ素ガスを供給できるフッ素ガス供給方法および装置ならびにフッ素ガス発生方法および装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のフッ素ガス供給方法は、フッ化カルシウム等の五酸化バナジウムと反応可能なフッ化物粉末と、酸化剤である五酸化バナジウム粉末との原料粉末を混合して密閉容器に充填する工程と、
上記原料粉末が充填された密閉容器を、加熱手段を備えたガス発生装置に装填し、内部の原料粉末を所定のフッ素発生温度に加熱する工程と、
加熱による反応で発生したフッ素ガスを密閉容器から取り出してフッ素ガス利用施設に対して供給する工程とを有し、
ガス発生装置に密閉容器を装填して原料粉末を加熱する際に、フッ素ガスを発生させる前にあらかじめ密閉容器内の水分除去を行ない、その後フッ素ガスを発生させることを要旨とする。
【0016】
すなわち、原料粉末を密閉容器に充填し、この密閉容器をガス発生装置に装填して原料粉末を加熱して反応させ、発生したフッ素ガスをフッ素ガス利用施設に供給する。密閉容器内の原料粉末の反応が終了したら、新しい原料粉末が充填された密閉容器と取り替えることにより、引き続いてフッ素ガスの供給を行なうことができる。このように、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現することにより、電解法および吸蔵法によるフッ素発生装置の諸問題を解消し、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。
また、ガス発生装置に密閉容器を装填して原料粉末を加熱する際に、フッ素ガスを発生させる前にあらかじめ密閉容器内の水分除去を行ない、その後フッ素ガスを発生させるため、粉末状の原料に介在する空気中の水分がフッ素と反応することによるフッ化水素の生成が防止され、発生したフッ素ガスの精製を簡略化することが可能となり、フッ化水素による装置の腐食や損傷を防止し、安全性も確保できる。また、フッ素ガスの発生直前に原料粉末に介在する空気中の水分を除去することから、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現する際に問題となる原料粉末に介在する空気中水分の影響を、ほぼ確実に解消し、オンサイトで、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。さらに、フッ素ガス発生の際の原料粉末の加熱と平行して水分除去を行なえることから、工程が圧縮されるうえ、上記加熱の際の熱エネルギーを水分除去にも利用でき、エネルギー効率に優れている。
【0017】
本発明のフッ素ガス供給方法において、密閉容器に充填された状態の原料粉末をあらかじめ水分除去処理してからガス発生装置に装填する場合には、粉末状の原料に介在する空気中の水分がフッ素と反応することによるフッ化水素の生成が防止され、発生したフッ素ガスの精製を簡略化することが可能となり、フッ化水素による装置の腐食や損傷を防止し、安全性も確保できる。また、原料粉末が密閉容器に充填された状態で水分除去を行なうことから、原料粉末の乾燥状態を確保したままガス発生装置に装填することができる。したがって、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現する際に問題となる原料粉末に介在する空気中水分の影響を、ほぼ確実に解消し、オンサイトで、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。特に、原料として粉末状のものを使用することから原料粉末に介在する空気の影響を完全に排除することができないうえ、粉末自体への水分の吸着も避けられないことから、空気中の水分を除去することによりフッ化水素の生成を防止する効果が顕著である。
【0019】
本発明のフッ素ガス供給方法において、密閉容器から取り出したフッ素ガスを、フッ化水素を除去したのちフッ素ガス利用施設に供給する場合には、仮に、密閉容器内に充填された原料粉末に介在する空気に水分が混入していたとしても、反応によって精製されたフッ化水素を除去してからフッ素ガス利用設備に供給することから、装置自体の損傷を防止できて安全性も確保できるうえ、フッ素ガス利用設備に供給するフッ素ガスの濃度も向上させることができる。
【0020】
本発明のフッ素ガス供給方法において、密閉容器がガス発生装置に装填され、フッ素発生温度に加熱された密閉容器内の原料粉末に対して機械的外力を与えながらフッ素ガスを取り出す場合には、安定してフッ素ガスを発生させることができる。すなわち、粉末原料のフッ化カルシウムと五酸化バナジウムを混合させて加熱すると、700℃程度で五酸化バナジウムが溶融して反応が促進するが、この際、加熱手段の近傍すなわち密閉容器の内壁と接触した部分から溶融が開始される。このとき、溶融により原料の嵩が減少することから、密閉容器の内壁近傍の溶融部分に隙間ができてしまう。加えて、原料粉末には空気などの気体が介在してこの空気が断熱材として作用するうえ、密閉容器内には原料粉末が充填されていて対流も阻害されることから、極めて熱伝導が悪い状態である。このため、内部の原料粉末の加熱が促進されないという現象が生じ、スムーズなフッ素ガス発生の障害になる。そこで、原料粉末に対して機械的外力を与えながらフッ素ガスを取り出すことにより、上記隙間に内部の原料粉末を落下させ、原料粉末全体の溶融と加熱を促進して密閉容器内の全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。また、上記機械的外力により密閉容器内で原料粉末が効果的に落下することから、発生したフッ素ガスのヌケがよくなり、密閉容器内の圧力の異常上昇を防止するとともに、安定的なフッ素ガスの供給を実現できる。
【0021】
本発明のフッ素ガス供給方法において、上記フッ化物粉末と五酸化バナジウム粉末のうち少なくともいずれかがあらかじめ顆粒状に形成されている場合には、原料粉末の流動性が高くなり、上記隙間に内部の原料粉末を落下させ、原料粉末全体の溶融と加熱を促進して密閉容器内の全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。また、密閉容器内で顆粒状の原料粉末が効果的に落下することから、発生したフッ素ガスのヌケがよくなり、密閉容器内の圧力の異常上昇を防止するとともに、安定的なフッ素ガスの供給を実現できる。
【0022】
また、本発明のフッ素ガス供給装置は、フッ化カルシウム等の五酸化バナジウムと反応可能なフッ化物粉末と、酸化剤である五酸化バナジウム粉末との原料粉末が混合されて充填された密閉容器と、
上記原料粉末が充填された密閉容器が装填されるとともに、原料粉末を加熱する加熱手段を有し、内部の原料粉末を所定のフッ素発生温度に加熱するガス発生装置とを備え、
上記密閉容器には、加熱による反応で発生したフッ素ガスを密閉容器から取り出してフッ素ガス利用施設に対して供給する供給路が接続され、
上記密閉容器がガス発生装置に装填されて原料粉末を加熱する際に、フッ素ガスを発生させる前にあらかじめ密閉容器内の水分を除去する水分除去手段(A)をさらに備えることを要旨とする。
【0023】
すなわち、原料粉末を密閉容器に充填し、この密閉容器をガス発生装置に装填して原料粉末を加熱して反応させ、発生したフッ素ガスをフッ素ガス利用施設に供給する。密閉容器内の原料粉末の反応が終了したら、新しい原料粉末が充填された密閉容器と取り替えることにより、引き続いてフッ素ガスの供給を行なうことができる。このように、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現することにより、電解法および吸蔵法によるフッ素発生装置の諸問題を解消し、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。
また、上記密閉容器がガス発生装置に装填されて原料粉末を加熱する際に、フッ素ガスを発生させる前にあらかじめ密閉容器内の水分を除去する水分除去手段(A)を備えているため、フッ素ガスの発生直前に原料粉末に介在する空気中の水分を除去することから、密閉容器の搬送や保管中に密閉容器内に空気や水分が浸入することがない。そして、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現する際に問題となる原料粉末に介在する空気中水分の影響を、ほぼ確実に解消し、オンサイトで、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。さらに、フッ素ガス発生の際の原料粉末の加熱と平行して水分除去を行なえることから、工程が簡略化されるうえ、上記加熱の際の熱エネルギーを水分除去にも利用でき、エネルギー効率に優れている。
【0024】
本発明のフッ素ガス供給装置において、上記密閉容器に充填された原料粉末は、水分除去処理されたものである場合には、粉末状の原料に介在する空気中の水分がフッ素と反応することによるフッ化水素の生成が防止され、発生したフッ素ガスの精製を簡略化することが可能となり、フッ化水素による装置の腐食や損傷を防止し、安全性も確保できる。特に、原料として粉末状のものを使用することから原料粉末に介在する空気の影響を完全に排除することができないうえ、粉末自体への水分の吸着も避けられないことから、空気中の水分を除去することによりフッ化水素の生成を防止する効果が顕著である。
【0025】
本発明のフッ素ガス供給装置において、ガス発生装置に装填する前の密閉容器に充填された原料粉末を、あらかじめ真空排気を利用して水分除去処理する水分除去手段(B)を備えている場合には、原料粉末が密閉容器に充填された状態で水分除去を行なうことから、原料粉末の乾燥状態を密閉容器内で確保したままガス発生装置に装填することができる。したがって、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現する際に問題となる原料粉末に介在する空気中水分の影響を、ほぼ確実に解消し、オンサイトで、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。
【0027】
本発明のフッ素ガス供給装置において、密閉容器から取り出したフッ素ガスからフッ化水素を除去してからフッ素ガス利用施設に対して供給する精製手段を備えている場合には、仮に、密閉容器内に充填された原料粉末に介在する空気に水分が混入していたとしても、反応によって精製されたフッ化水素を除去してからフッ素ガス利用設備に供給することから、装置自体の損傷を防止できて安全性も確保できるうえ、フッ素ガス利用設備に供給するフッ素ガスの濃度も向上させることができる。
【0028】
本発明のフッ素ガス供給装置において、フッ素発生温度に加熱された密閉容器内の原料粉末に対して機械的外力を与える外力付与手段を備えている場合には、安定してフッ素ガスを発生させることができる。すなわち、粉末原料のフッ化カルシウムと五酸化バナジウムを混合させて加熱すると、700℃程度で五酸化バナジウムが溶融して反応が促進するが、この際、加熱手段の近傍すなわち密閉容器の内壁と接触した部分から溶融が開始される。このとき、溶融により原料の嵩が減少することから、密閉容器の内壁近傍の溶融部分に隙間ができてしまう。加えて、原料粉末には空気などの気体が介在してこの空気が断熱材として作用するうえ、密閉容器内には原料粉末が充填されていて対流も阻害されることから、極めて熱伝導が悪い状態である。このため、内部の原料粉末の加熱が促進されないという現象が生じ、スムーズなフッ素ガス発生の障害になる。そこで、原料粉末に対して機械的外力を与えながらフッ素ガスを取り出すことにより、上記隙間に内部の原料粉末を落下させ、原料粉末全体の溶融と加熱を促進して密閉容器内の全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。また、機械的外力により密閉容器内で原料粉末が効果的に落下することから、発生したフッ素ガスのヌケがよくなり、密閉容器内の圧力の異常上昇を防止するとともに、安定的なフッ素ガスの供給を実現できる。
【0041】
また、本発明のフッ素ガス発生方法は、フッ化カルシウム等の五酸化バナジウムと反応可能なフッ化物粉末と、酸化剤である五酸化バナジウム粉末との原料粉末を混合して密閉容器に充填する工程と、上記密閉容器に充填された状態の原料粉末をあらかじめ水分除去処理する工程と、上記原料粉末が充填された密閉容器内部の水分除去された原料粉末を所定のフッ素発生温度に加熱する工程と、加熱による反応で発生したフッ素ガスを密閉容器から取り出す工程とを有することを要旨とする。
【0042】
また、本発明のフッ素ガス発生装置は、フッ化カルシウム等の五酸化バナジウムと反応可能なフッ化物粉末と、酸化剤である五酸化バナジウム粉末との原料粉末が混合されて充填された密閉容器と、上記密閉容器に充填された原料粉末をあらかじめ真空排気を利用して水分除去処理する水分除去手段と、上記水分除去された原料粉末が充填された密閉容器が装填された状態で、原料粉末を加熱する加熱手段とを備え、内部の原料粉末を所定のフッ素発生温度に加熱することによる反応でフッ素ガスを発生させることを要旨とする。
【0043】
すなわち、原料粉末を密閉容器に充填し、この密閉容器をガス発生装置に装填して原料粉末を加熱して反応させてフッ素ガスを発生させる。密閉容器内の原料粉末の反応が終了したら、新しい原料粉末が充填された密閉容器と取り替えることにより、引き続いてフッ素ガスを発生させることができる。このように、化学法によるフッ素発生法を工業的に実現することにより、電解法および吸蔵法によるフッ素発生装置の諸問題を解消し、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを発生できるようになる。また、粉末状の原料に介在する空気中の水分がフッ素と反応することによるフッ化水素の生成が防止され、発生したフッ素ガスの精製を簡略化することが可能となり、フッ化水素による装置の腐食や損傷を防止し、安全性も確保できる。また、原料粉末が密閉容器に充填された状態で水分除去を行なうことから、原料粉末の乾燥状態を確保したままガス発生装置に装填することができる。したがって、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現する際に問題となる原料粉末に介在する空気中水分の影響を、ほぼ確実に解消し、オンサイトで、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。特に、原料として粉末状のものを使用することから原料粉末に介在する空気の影響を完全に排除することができないうえ、粉末自体への水分の吸着も避けられないことから、空気中の水分を除去することによりフッ化水素の生成を防止する効果が顕著である。
【0044】
そして、本発明は、電気分解法に対しては、次のような利点を有する。すなわち、常温において極めて安定な粉末原料を使用するため原料の取扱いが容易なうえ、電解法のような爆発の危険もなく、安全性が高い。また、密閉容器内の原料粉末の加熱だけでフッ素ガスを発生させることができるうえ、特殊な電源や電極等が不要なため、装置が小さくて安価になり、汚泥の除去や電極の交換等も不要で運転や操作が容易でメンテナンスも極めて簡便となる。
【0045】
また、本発明は、吸蔵法に対しては、次のような利点を有する。すなわち、電解法によるフッ素を原料としないことから、上述した電解法の問題が完全に解消される。また、調達が容易な原料を使用するとともに、原料粉末の加熱という極めて簡便な処理でフッ素ガスが得られるため、ガスの単価が極めて安価となるうえ、大容量化にも容易に対応が可能で、原料収率も高くなる。
【0046】
また、本発明は、電気分解法と吸蔵法の双方に対して、次のような利点を有する。すなわち、密閉容器内で原料粉末を反応させてフッ素ガスを発生させるため、希釈ガスやコンプレッサ等を使用しなくても、高濃度のフッ素ガスをある程度の圧力で得ることができるようになる。このため、従来のようなコンプレッサの腐食の問題も解消し、高濃度のフッ素ガスを直接フッ素ガス利用設備に供給できるようになるという利点が生じる。
【0047】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0048】
図1は、本発明の一実施の形態のフッ素ガス供給装置を示す図である。
【0049】
このフッ素ガス供給装置は、原料粉末が充填される密閉容器1と、上記原料粉末が充填された密閉容器1が装填され、密閉容器1内の原料粉末からフッ素ガスを発生させるガス発生装置28とを備えている。
【0050】
そして、このフッ素ガス供給装置は、例えば半導体製造工場等、ユースポイントであるフッ素ガス利用設備の近傍に設置され、発生したフッ素ガスを直接フッ素ガス利用設備に供給するオンサイト型の装置である。そして、原料粉末が充填された密閉容器1は、フッ素ガス発生能力が低下すると、未使用の密閉容器1と交換され、継続してフッ素ガスの供給を行い得るものである。
【0051】
上記密閉容器1は、この例では略円筒で金属製のボンベ状を呈している、上記密閉容器1の内部には、原料粉末として、あらかじめ混合されたフッ化物粉末と酸化剤粉末が充填されている。上記フッ化物粉末としては、例えば、フッ化カルシウム等をあげることができ、具体的には蛍石を使用することができる。上記酸化物粉末としては、蛍石中のフッ化カルシウムを酸化させやすい五酸化バナジウム等を使用することができる。
【0052】
上記蛍石および五酸化バナジウムの原料粉末は、混合して所定のフッ素発生温度に加熱すると、蛍石のフッ化カルシウム成分と五酸化バナジウムが下記の式に示す反応を生じ、フッ素ガスが発生する。上記フッ素発生温度は、約600℃〜700℃程度であり、少なくともこのフッ素発生温度以上に加熱すれば反応が開始する。したがって、上記密閉容器1は、少なくとも600〜700℃以上の高温に耐える材質および設計が採用される。
CaF+V→CaO+V+F
【0053】
このとき、フッ化カルシウムと五酸化バナジウムの双方が粉末のままでもある程度の反応が生じ、フッ素ガスが発生する。また、五酸化バナジウムの溶融温度が約690℃であることから、約700℃程度まで加熱することにより、五酸化バナジウムの溶融が開始し、上記反応が促進する。したがって、粉末同士で反応させてフッ素ガスを発生させるにしても、溶融状態で反応させてフッ素ガスを発生させるにしても、上記原料粉末の粒度は比較的細かいほうが好ましく、平均粒度で数〜数百μm程度のものを好適に用いることができる。
【0054】
上記ガス発生装置28は、上記密閉容器1が装填されるものであり、装填された密閉容器1を周囲から加熱するヒータ2と、上記ヒータ2および密閉容器1を収容する断熱ケース3と、断熱ケース3を蓋する断熱性の蓋4とを備えて構成されている。
【0055】
上記ヒータ2は、密閉容器1の周囲から内部の原料粉末を加熱するものであり、内部の原料粉末を上記フッ素発生温度に加熱しうるものであれば、特に限定するものではなく、各種の熱源のものを用いることができる。図示の装置は、電熱ヒータを使用した例を示しているが、それ以外に、例えば、火炎,高周波誘導,レーザ,輻射等、熱源は特に限定されない。
【0056】
上記ガス発生装置28に装填された密閉容器1には、加熱による原料粉末の反応で発生したフッ素ガスを密閉容器1から取り出してフッ素ガス利用施設に対して供給する供給路8が接続される。
【0057】
上記供給路8には、密閉容器1から取り出したフッ素ガスからフッ化水素等の不純物を除去してからフッ素ガス利用施設に対して供給する精製装置5が設けられている。さらに、上記供給路8には、発生したフッ素ガスを昇圧する圧縮機6と、圧縮されたフッ素ガスを一時的に貯留する貯留タンク7とが設けられている。
【0058】
上記フッ素ガス供給装置では、まず、あらかじめ原料粉末を混合して充填した密閉容器1を準備する。このような原料粉末を混合し密閉容器1に充填する工程は、ユースポイントとは別の原料供給施設において行なわれる。そして、原料供給施設では、このような原料粉末が充填された密閉容器1をあらかじめ多数準備しておき、フッ素ガス供給装置が設置された各ユースポイントに供給する。
【0059】
ユースポイントでは、受け入れた未使用の密閉容器1をガス発生装置28に装填して原料粉末を加熱してフッ素ガスを発生させ、半導体製造設備等のフッ素ガス利用施設に供給するのである。そして、密閉容器1内の原料粉末の反応が終了してフッ素ガス発生能力が低下すると、新しい原料粉末が充填された密閉容器1と取り替えることにより、引き続いてフッ素ガスの供給を行なうことができる。このように、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現することにより、電解法および吸蔵法によるフッ素発生装置の諸問題を解消し、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。
【0060】
また、供給路8に精製装置5を設けたことにより、粉末状の原料に介在する空気中の水分がフッ素と反応することによってフッ化水素が生成したり、蛍石等の原料粉末に含まれる不純物が反応して不純物が生成したとしても、フッ化水素等の不純物を除去してからフッ素ガス利用設備に供給することから、装置自体の損傷を防止できて安全性も確保できるうえ、フッ素ガス利用設備に供給するフッ素ガスの濃度も向上させることができる。
【0061】
特に、本発明では、原料として粉末状のものを使用することから原料粉末に介在する空気の影響を完全に排除することができないうえ、粉末自体への水分の吸着も避けられないことから、空気中の水分によりフッ化水素が生成するおそれがあるため、精製装置5を設けてフッ化水素を除去する効果が顕著である。
【0062】
そして、上記フッ素ガス供給装置は、電気分解法に対しては、次のような利点を有する。すなわち、常温において極めて安定な粉末原料を使用するため原料の取扱いが容易なうえ、電解法のような爆発の危険もなく、安全性が高い。また、密閉容器内の原料粉末の加熱だけでフッ素ガスを発生させることができるうえ、特殊な電源や電極等が不要なため、装置が小さくて安価になり、汚泥の除去や電極の交換等も不要で運転や操作が容易でメンテナンスも極めて簡便となる。
【0063】
また、上記フッ素ガス供給装置は、吸蔵法に対しては、次のような利点を有する。すなわち、電解法によるフッ素を原料としないことから、上述した電解法の問題が完全に解消される。また、調達が容易な原料を使用するとともに、原料粉末の加熱という極めて簡便な処理でフッ素ガスが得られるため、ガスの単価が極めて安価となるうえ、大容量化にも容易に対応が可能で、原料収率も高くなる。
【0064】
また、上述した例では、圧縮機6や貯留タンク7を設けた装置を例示したが、上記フッ素ガス供給装置には、電気分解法と吸蔵法の双方に対して、次のような利点を有する。すなわち、密閉容器内で原料粉末を反応させてフッ素ガスを発生させるため、希釈ガスやコンプレッサ等を使用しなくても、高濃度のフッ素ガスをある程度の圧力で得ることができるようになる。このため、従来のようなコンプレッサの腐食の問題も解消し、高濃度のフッ素ガスを直接フッ素ガス利用設備に供給できるようになるという利点が生じる。
【0065】
図2は、本発明の第2の実施の形態を示す。
【0066】
この装置では、1本の供給路8に対して2つのガス発生装置28を有し、一方のガス発生装置28において、密閉容器1のフッ素ガス発生能力が低下したら、他方のガス発生装置28に切り換え、2つの密閉容器1から交互にフッ素ガスを発生させることにより、連続的にフッ素ガスの発生及び供給を行い得るようにしたものである。なお、2つの密閉容器1を交互に使うだけでなく、3つ以上の密閉容器を順番に使用してもよい。
【0067】
本発明では、フッ素ガス発生温度が600〜700℃程度と比較的高温であるため、新しい密閉容器1を装填しても内部の原料粉末がそこまで上昇するのにある程度の時間を要し、密閉容器1の交換直後にはフッ素ガスの発生にタイムラグが生じるおそれがあるが、2つの密閉容器1から交互にフッ素ガスを発生させることにより、上記タイムラグをなくし、連続供給を可能とする。このようにすることにより、貯留タンク7の容量を大幅に小さくしたり、あるいは貯留タンク7を省略したりすることも可能となる。なお、図示した装置では、2つのガス発生装置28を設けたが、1つのガス発生装置28に2つ以上の密閉容器1を装填しうるように構成し、複数の密閉容器1から交互にフッ素ガスを発生させるようにしてもよい。
【0068】
それ以外は、上記実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0069】
図3は、本発明の第3の実施の形態を示す。
【0070】
図示の装置は、原料供給施設において、密閉容器1に原料粉末を充填する際に、密閉容器1内の原料粉末から水分を除去する第1水分除去装置(B)9であり、本実施の形態は、この第1水分除去装置(B)9を使用するフッ素ガス供給装置である。
【0071】
この第1水分除去装置(B)9は、原料粉末が充填された密閉容器1を加熱する加熱部29と、加熱された密閉容器1内部の水分を除去する水分除去部30とから構成されている。
【0072】
上記加熱部29は、装填された密閉容器1を周囲から加熱するヒータ2と、上記ヒータ2および密閉容器1を収容する断熱ケース3と、断熱ケース3を蓋する断熱性の蓋4とを備えて構成されている。
【0073】
上記水分除去部30は、密閉容器1に接続されて密閉容器1内の給排気を行なってパージするパージ路31と、上記パージ路31を介して密閉容器1内を真空排気する真空ポンプ10が接続された排気路33と、上記パージ路31を介して密閉容器1内に窒素ガスを導入する窒素導入路32とから構成されている。図において34は配管のジョイントである。
【0074】
上記第1水分除去装置(B)9では、原料粉末が充填された密閉容器1を加熱するとともに、加熱された密閉容器1内部の真空排気と窒素ガスの導入とを繰り返し、原料粉末に介在して密閉容器内に入り込んだ空気および水分を除去するものである。加熱部29による加熱により、水分は完全に気化して空気とともに真空ポンプ10で密閉容器1の外部に排出される。そして、密閉容器1内をある程度の真空度まで排気したのち、窒素ガスを導入し、空気および水分を窒素ガスと置換する。この操作を複数回繰り返すことにより、密閉容器1内の水分が除去される。この水分除去工程における加熱温度は、密閉容器1内の水分が完全に気化すればよく、100数十度〜200数十度程度に設定される。
【0075】
そして、パージが終了すると、密閉容器1内に窒素ガスを大気圧以上の加圧状態になるまで導入してパージ路31のバルブを閉めて密閉する。内部を加圧状態とすることにより、密閉容器1および原料粉末が冷却された際にも、容器内部が負圧にならず、大気および水分の浸入が防止される。パージを繰り返しながら密閉容器1および原料粉末を冷却したのち、内部に大気圧以上の窒素を導入してから密閉すると、大気および水分の浸入を防止するうえでより好ましくなる。
【0076】
このように、あらかじめ内部の水分が除去された原料粉末入りの密閉容器1は、密閉状態を保ったままユースポイントに供給され、図1〜図2に示したガス発生装置28に装填され、所定のフッ素ガス発生温度まで加熱されてフッ素ガスを供給する。このように、ユースポイントに提供されてガス発生装置28に装填される密閉容器1に充填された原料粉末を、あらかじめ水分除去処理することにより、粉末状の原料に介在する空気中の水分がフッ素と反応することによるフッ化水素の生成が防止され、発生したフッ素ガスの精製を簡略化することが可能となり、フッ化水素による装置の腐食や損傷を防止し、安全性も確保できる。
【0077】
また、ガス発生装置28に装填する前の密閉容器1に充填された原料粉末を上記第1水分除去装置(B)9で水分除去処理することにより、原料粉末が密閉容器1に充填された状態で水分除去を行なうことから、原料粉末の乾燥状態を密閉容器1内で確保したままガス発生装置28に装填することができる。したがって、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現する際に問題となる原料粉末に介在する空気中水分の影響をほぼ確実に解消し、オンサイトで、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。
【0078】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0079】
図4は、本発明の第4の実施の形態を示す。
【0080】
この装置は、ユースポイントに設置されたフッ素ガス供給装置に、装填された密閉容器1内の原料粉末から水分を除去する第2水分除去装置(A)11を備えたものである。
【0081】
上記第2水分除去装置(A)11は、密閉容器1に接続されて密閉容器1内の給排気を行なってパージするパージ路31と、上記パージ路31を介して密閉容器1内を真空排気する真空ポンプ10が接続された排気路33と、上記パージ路31を介して密閉容器1内に窒素ガスを導入する窒素導入路32とから構成されている。上記パージ路31は、発生したフッ素ガスをフッ素ガス利用設備に供給する供給路8と接続されている。図において34は配管のジョイントである。
【0082】
上記第2水分除去装置(A)11では、装填された原料粉末入りの密閉容器1を、フッ素発生温度よりも低温領域に加熱するとともに、加熱された密閉容器1内部の真空排気と窒素ガスの導入とを繰り返し、原料粉末に介在して密閉容器内に入り込んだ空気および水分を除去するものである。上記加熱により水分は完全に気化して空気とともに真空ポンプ10で密閉容器1の外部に排出される。そして、密閉容器1内をある程度の真空度まで排気したのち窒素ガスを導入し、空気および水分を窒素ガスと置換する。この操作を複数回繰り返すことにより、密閉容器内の水分が除去される。
【0083】
この水分除去工程における加熱温度は、密閉容器1内の水分を完全に気化させるために、100数十度〜200数十度以上に設定すればよいが、水分除去工程の直後にフッ素ガス発生温度(600〜700℃程度)でのフッ素ガス発生工程を行なうため、フッ素ガス発生温度よりも低温度領域であれば、もっと高温で行なうこともできる。
【0084】
そして、パージが終了すると、直ちに加熱温度をフッ素ガス発生温度(600〜700℃程度)まで上昇させ、フッ素ガスを発生させ、フッ素ガス利用設備に供給することが行なわれる。このように、フッ素ガスの発生直前に原料粉末に介在する空気中の水分を除去することから、密閉容器1の搬送や保管中に密閉容器1内に空気や水分が浸入することがない。そして、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現する際に問題となる原料粉末に介在する空気中水分の影響を、ほぼ確実に解消し、オンサイトで、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。さらに、フッ素ガス発生の際の原料粉末の加熱と平行して水分除去を行なえることから、工程が圧縮されるうえ、上記加熱の際の熱エネルギーを水分除去にも利用でき、エネルギー効率に優れている。
【0085】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0086】
図5は、本発明の第5の実施の形態を示す。
【0087】
この例は、フッ素発生温度に加熱された密閉容器1内の原料粉末に対して機械的外力を与える外力付与手段を設けたものである。
【0088】
図5(a)に示した装置は、上記外力付与手段として、ガス発生装置28に装填された密閉容器1に対して、外部から振動を与える振動装置12を備えたものである。図示した例では、振動装置12は、断熱ケース3の内部に設けられ、密閉容器1に対して直接振動を付与するようになっている。なお、振動装置12は、鎖線で示したように、断熱ケース3の外部に設けて断熱ケース3を介して密閉容器1に振動を与えるようにしてもよい。また、図5(b)に示すように、密閉容器1を、中心部近傍に空洞部13が形成されるように略二重管状のボンベとし、上記空洞部13内に振動装置12を配置することもできる。
【0089】
上記振動装置12としては、密閉容器1に対して振動を付与し得るものであれば、その機構は特に限定するものではなく、偏心モータ,圧電振動素子等、各種の振動源を用いた方式の装置を採用することができる。
【0090】
このように、上記振動装置12により、フッ素発生温度に加熱されてフッ素ガス発生反応の最中に、原料粉末に対して振動を与えることにより、安定してフッ素ガスを発生させることができる。すなわち、粉末原料のフッ化カルシウムと五酸化バナジウムを混合させて加熱すると、700℃程度で五酸化バナジウムが溶融して反応が促進するが、この際、ヒータ2の近傍すなわち密閉容器1の内壁と接触した部分から溶融が開始される。このとき、溶融により原料の嵩が減少することから、密閉容器1の内壁近傍の溶融部分に隙間ができてしまう。加えて、原料粉末には空気などの気体が介在してこの気体が断熱材として作用するうえ、密閉容器1内には原料粉末が充填されていて対流も阻害されることから、内部は極めて熱伝導が悪い状態である。このため、密閉容器1の中心部近傍の原料粉末の加熱が促進されないという現象が生じ、スムーズなフッ素ガス発生の障害になる。
【0091】
そこで、原料粉末に対して振動を与えながらフッ素ガスを取り出すことにより、上記隙間に内部の原料粉末を落下させるとともにある程度攪拌し、原料粉末全体の溶融と加熱を促進して密閉容器1内の全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。また、振動により密閉容器1内で原料粉末が効果的に落下することから、発生したフッ素ガスのヌケがよくなり、密閉容器1内の圧力の異常上昇を防止するとともに、安定的なフッ素ガスの供給を実現できる。また、上記振動装置12が密閉容器1の外部から密閉容器1に対して振動を与えるものであるため、振動手段12は、密閉容器1に対して外付けとするか、ガス発生装置28に設ければよいことから、容器自体の構造を複雑にすることなく振動付与の効果を実現できる。
【0092】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0093】
図6は、本発明の第6の実施の形態を示す。
【0094】
図6(a)に示した装置は、上記外力付与手段として、密閉容器1bの内部に振動部材14を設け、内部に充填された原料粉末に対して直接振動を与えるようにしたものである。上記密閉容器1bは、図6(b)に示すように、内部に振動部材14が配置されている。図において、16は上記振動部材14を密閉容器1bの内部に配置した状態で支持する支持部材である。また、15は上記振動部材14に対して与える駆動信号を入力するための接点であり、17は上記接点15を介して振動部材14に対して駆動信号を入力するための電源である。
【0095】
上記振動部材14としては、例えば、ピエゾ素子等に代表されるような圧電振動素子を用いることができる。上記接点15を介して振動部材14に駆動信号を入力すると、圧電振動子が撓み振動することにより、フッ素ガス発生反応の最中に、内部の原料粉末に直接振動を付与することができる。
【0096】
この例でも、上記第5の実施の形態で説明したのと同様に、原料粉末全体の溶融と加熱を促進して密閉容器1内の全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができ、発生したフッ素ガスのヌケがよくなり、密閉容器内の圧力の異常上昇を防止する。また、密閉容器1b内部に充填された原料粉末に対して直接振動を付与することから、付与する振動自体は極めて小さなものでも所望の効果を得ることができ、密閉容器1bやガス発生装置28自体に与える振動を大幅に軽減できる。したがって、容器や装置の損傷や劣化を防止できる。特に、発生したガスを供給する供給路等の供給系に対しては、振動による損傷や劣化がガス漏れ等のトラブルに直結しやすいことから、振動を小さくすることによる効果が顕著である。
【0097】
さらに、上記振動部材14は、略円筒のボンベ状の密閉容器1bの場合、円筒の略中心部に軸心に沿うように配置するのが好適である。また、この場合、振動部材14は、上述したように撓み振動の振動挙動を示すものが好適である。このようにすることにより、充填された原料粉末の中心部にボンベの径方向の振動を与え、密閉容器1b内壁近傍の熱を中心部まで効果的に伝熱するとともに、原料粉末を攪拌し、均一な反応を行なわせることができる。
【0098】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0099】
図7は、本発明の第7の実施の形態を示す。
【0100】
図7(a)に示した装置は、上記外力付与手段として、密閉容器1cの内部に攪拌装置19を設け、内部に充填された原料粉末を流動させるようにしたものである。上記密閉容器1cは、図7(b)に示すように、その内部に、攪拌用の羽根22が取り付けられた回転軸20が配置されている。上記回転軸20は、略円筒のボンベ状の密閉容器1cの略中心部に軸心に沿うように配置される。上記回転軸20は、密閉容器1cの底部を貫通してカップリング21によりモータ18の回転駆動軸と連結されている。なお、密閉容器1cの底部には、貫通する回転軸20を軸支する軸受が設けられている。
【0101】
この例では、フッ素ガス発生反応の最中に、密閉容器1cの内部に充填された原料粉末を攪拌することにより、上記第5および第6の実施の形態で説明したのと同様に、原料粉末全体の溶融と加熱を促進して密閉容器1内の全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができ、発生したフッ素ガスのヌケがよくなり、密閉容器内の圧力の異常上昇を防止する。
【0102】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0103】
図8は、本発明の第8の実施の形態を示す。
【0104】
図8に示した装置は、上記ガス発生装置28に、上記外力付与手段として、原料粉末がフッ素発生温度に加熱された状態の密閉容器1に回転を与える回転駆動手段が設けられている。この例では、上記ガス発生装置28の断熱ケース3は、密閉容器1を横倒しで装填するよう横向き配置されている。上記回転駆動手段は、横置き配置された密閉容器1の底部を把持する把持部材24と、上記把持部材24を回転駆動するモータ18とから構成されている。23は把持部材とモータ18を連結する回転軸である。そして、上記密閉容器1は略円筒のボンベ状に形成されており、ボンベの軸心を中心として回転するように構成されている。
【0105】
このように、回転駆動手段により、原料粉末がフッ素発生温度に加熱された状態の密閉容器に回転を与えながらフッ素ガスを発生させることにより、上記第5〜第7の実施の形態で説明したのと同様に、密閉容器1内の原料全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。また、回転駆動により密閉容器1内で原料粉末が効果的に落下することから、発生したフッ素ガスのヌケがよくなり、密閉容器内の圧力の異常上昇を防止するとともに、安定的なフッ素ガスの供給を実現できる。さらに、上記密閉容器1は略円筒のボンベ状に形成されて横置き配置された状態で回転されることにより、内部に充填された原料粉末が極めて効果的に攪拌され、密閉容器1内の原料全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。
【0106】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0107】
ここで、上記第5〜第8の実施の形態では、粉末原料を加熱した際に、五酸化バナジウムが密閉容器1の内壁近傍から溶融を開始してその部分に隙間ができること、および、原料粉末に介在する空気などの気体が断熱材として作用するうえ対流も阻害され内部の熱伝導が悪いことによる弊害を、機械的な外力により解消したが、上記フッ化物粉末と酸化剤粉末のうち少なくともいずれかをあらかじめ顆粒状に形成することにより解消することもできる。
【0108】
このようにすることにより、原料粉末の流動性が高くなり、振動や攪拌を与えなくても原料粉末全体の溶融と加熱を促進して密閉容器内の全体を均一に反応させて安定してフッ素ガスを発生させることができ、発生したフッ素ガスのヌケがよくなって、密閉容器内の圧力の異常上昇を防止するとともに安定的なフッ素ガスの供給を実現できる。また、振動や攪拌,回転等の機械的外力を付与する場合でも、原料粉末を顆粒状にして流動性を高めることにより、振動,攪拌,回転等の加える機械的外力が小さなものですむため、外力付加手段を小さくすることができるうえ、その効果も倍増する。
【0109】
図9は、本発明の第9の実施の形態を示す。
【0110】
図9(a)に示す装置は、密閉用器1dの内部に、充填された原料粉末への熱伝導を促進する伝熱フィン25が設けられている。上記密閉容器1dは、この例では、図9(b)(c)に示すように、密閉容器1d内部の下側約4分の3程度の空間を長手方向に4分割するように4枚の伝熱フィン25が設けられている。4枚の伝熱フィン25は、略円筒状のボンベの軸心部分で繋がっている。
【0111】
上述したように、密閉容器1dの内部は極めて熱伝導が悪い状態であり、容器外部からの加熱により内部まで均一に加熱するのは極めて困難であるが、伝熱フィン25により原料粉末全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。また、複数枚の伝熱フィン25の連続部分が、最も熱が伝わりにくい略円筒状の軸心に配置されていることから、中心部分まで効果的に伝熱できる。
【0112】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0113】
図10は、本発明の第10の実施の形態を示す。
【0114】
図10(a)に示す装置は、密閉用器1eの周壁に、熱伝導を促進する伝熱フィン26が設けられている。上記密閉容器1eは、この例では、図10(b)(c)に示すように、密閉容器1dの周壁に8枚の熱フィン26が放射状に設けられている。
【0115】
上述したように、密閉容器1eの内部は極めて熱伝導が悪い状態であり、容器外部からの加熱により内部まで均一に加熱するのは極めて困難であるが、伝熱フィン26により効果的に熱交換を行なって、原料粉末全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。特に、ヒータ2として、輻射熱や火炎を用いる場合に効果的である。
【0116】
なお、後述することでもあるが、密閉容器の内部と外部の双方に伝熱フィンを設けることもできる。
【0117】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0118】
図11は、本発明の第11の実施の形態を示す。
【0119】
図11(a)(b)に示す装置は、密閉容器1fが略円筒のボンベ状で、上記ボンベ状の密閉容器1fには軸芯に沿って延びる空洞部27が設けられている。上記密閉容器1fの空洞部27は、容器の下側約4分の3に設けられ、底部に開口している。また、上記空洞部27は、円筒状のボンベの軸心に沿って長手方向に延びるように設けられている。そして、上記密閉容器1fの外周部にヒータ2が設けられるとともに、上記空洞部27内にもヒータ2aが挿通されている。
【0120】
このように、密閉容器1fに空洞部27を設け、容器の外側と空洞部27の双方から加熱することにより、原料粉末全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。また、上記空洞部27がボンベの軸心に沿って設けられているため、空洞部27と外壁に挟まれる部分の厚みが均一になり、加熱むらを少なくしてより均一にフッ素ガスを発生させることができる。
【0121】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0122】
図12は、本発明の第12の実施の形態を示す。
【0123】
図12に示す装置は、密閉容器1gが略円筒のボンベ状で、1つのガス発生装置28に複数の密閉容器1gが装填されるようになっており、ヒータ2,2bは装填されたすべての密閉容器1gに対して伝熱を行なうように構成され、上記密閉容器1gの直径が細径に設定されている。この例では、1つの断熱ケース3内に3本の密閉容器1gが装填されている。また、3本の密閉容器1gの周囲を取り巻くヒータ2が設けられるとともに、各密閉容器1gの間にもヒータ2bが配設されている。
【0124】
このようにすることにより、原料粉末全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。なお、上記密閉容器1gの径は、中心部の原料粉末まで速やかに伝熱が行なわれる程度に設定され、具体的には、例えば50mm以下程度に設定される。
【0125】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0126】
図13および図14は、本発明の第13の実施の形態を示す。
【0127】
図13(a)に示す装置は、密閉容器1hが平盤状に形成されている。この平盤状の密閉容器1hは、例えば、図13(b)に示すように、薄箱状に形成することもできるし、図13(c)に示すように、円盤状に形成することもできる。そして、ヒータ2cは、盤状の密閉容器1cの盤面を加熱しうる程度の大きさに形成され、このヒータ2cと密閉容器1hとが積層され、平盤状の密閉容器1hの盤面を介して伝熱を行なうようになっている。
【0128】
この例では、1つの密閉容器1hが2つのヒータ2cに挟まれて、密閉容器1hが両盤面から加熱されるようになっている。図14は、第13の実施の形態の第2例の装置であり、3つのヒータ2cのそれぞれの間に1つずつ合計2つの密閉容器1hが挟まれて、密閉容器1hが両盤面から加熱されるようになっている。また、盤状の密閉容器1hの出し入れが容易なように断熱ケース3および密閉容器1hは横置き配置されている。
【0129】
このように、平盤状の密閉容器1hとその盤面を加熱するヒータ2cとを積層し、上記盤面を介して伝熱を行なうことにより原料粉末全体を均一に反応させ、安定してフッ素ガスを発生させることができる。
【0130】
それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、この例でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0131】
なお、上記第8,第13,第14の実施の形態では、密閉容器を横置き配置し、それ以外の実施の形態では、密閉容器を縦置き配置した例を説明したが、これに限定するものではなく、いずれの実施の形態においても、密閉容器は、縦置き配置,横置き配置のいずれを採択することもできる趣旨である。
【0132】
また、あえて説明するまでもないが、本発明は、上記第1〜第14の実施の形態におけるそれぞれの特徴を複数組み合わせた態様で実施することを排除する趣旨ではなく、そのような実施例も本発明に含まれるものである。
【0133】
また、上記各実施の形態では、本発明を、オンサイト型のフッ素ガス供給装置に適用した例を示したが、上記各実施の形態に示したガス発生装置28により発生させたフッ素ガスをボンベ等に充填し、そのフッ素ガス入りのボンベの状態でフッ素ガスをユースポイントに供給する、オフサイトのフッ素ガス発生装置および方法として実施することも可能である。
【0134】
そして、上記各実施の形態の装置は、電気分解法に対しては、次のような利点を有する。すなわち、常温において極めて安定な粉末原料を使用するため原料の取扱いが容易なうえ、電解法のような爆発の危険もなく、安全性が高い。また、密閉容器内の原料粉末の加熱だけでフッ素ガスを発生させることができるうえ、特殊な電源や電極等が不要なため、装置が小さくて安価になり、汚泥の除去や電極の交換等も不要で運転や操作が容易でメンテナンスも極めて簡便となる。
【0135】
また、上記各実施の形態の装置は、吸蔵法に対しては、次のような利点を有する。すなわち、電解法によるフッ素を原料としないことから、上述した電解法の問題が完全に解消される。また、調達が容易な原料を使用するとともに、原料粉末の加熱という極めて簡便な処理でフッ素ガスが得られるため、ガスの単価が極めて安価となるうえ、大容量化にも容易に対応が可能で、原料収率も高くなる。
【0136】
また、上記各実施の形態の装置は、電気分解法と吸蔵法の双方に対して、次のような利点を有する。すなわち、密閉容器内で原料粉末を反応させてフッ素ガスを発生させるため、希釈ガスやコンプレッサ等を使用しなくても、高濃度のフッ素ガスをある程度の圧力で得ることができるようになる。このため、従来のようなコンプレッサの腐食の問題も解消し、高濃度のフッ素ガスを直接フッ素ガス利用設備に供給できるようになるという利点が生じる。
【0137】
【発明の効果】
以上のように、本発明のフッ素ガス供給方法および装置によれば、原料粉末を密閉容器に充填し、この密閉容器をガス発生装置に装填して原料粉末を加熱して反応させ、発生したフッ素ガスをフッ素ガス利用施設に供給する。密閉容器内の原料粉末の反応が終了したら、新しい原料粉末が充填された密閉容器と取り替えることにより、引き続いてフッ素ガスの供給を行なうことができる。このように、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現することにより、電解法および吸蔵法によるフッ素発生装置の諸問題を解消し、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。
また、ガス発生装置に密閉容器を装填して原料粉末を加熱する際に、フッ素ガスを発生させる前にあらかじめ密閉容器内の水分除去を行ない、その後フッ素ガスを発生させるため、粉末状の原料に介在する空気中の水分がフッ素と反応することによるフッ化水素の生成が防止され、発生したフッ素ガスの精製を簡略化することが可能となり、フッ化水素による装置の腐食や損傷を防止し、安全性も確保できる。また、フッ素ガスの発生直前に原料粉末に介在する空気中の水分を除去することから、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現する際に問題となる原料粉末に介在する空気中水分の影響を、ほぼ確実に解消し、オンサイトで、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。さらに、フッ素ガス発生の際の原料粉末の加熱と平行して水分除去を行なえることから、工程が圧縮されるうえ、上記加熱の際の熱エネルギーを水分除去にも利用でき、エネルギー効率に優れている。
【0138】
また、本発明のフッ素ガス発生方法および装置によれば、原料粉末を密閉容器に充填し、この密閉容器をガス発生装置に装填して原料粉末を加熱して反応させ、発生したフッ素ガスをフッ素ガス利用施設に供給する。密閉容器内の原料粉末の反応が終了したら、新しい原料粉末が充填された密閉容器と取り替えることにより、引き続いてフッ素ガスの供給を行なうことができる。このように、化学法によるフッ素発生法をオンサイト型で実現することにより、電解法および吸蔵法によるフッ素発生装置の諸問題を解消し、簡便な装置により安全かつ安価にフッ素ガスを供給できるようになる。
【0139】
そして、本発明は、電気分解法に対しては、次のような利点を有する。すなわち、常温において極めて安定な粉末原料を使用するため原料の取扱いが容易なうえ、電解法のような爆発の危険もなく、安全性が高い。また、密閉容器内の原料粉末の加熱だけでフッ素ガスを発生させることができるうえ、特殊な電源や電極等が不要なため、装置が小さくて安価になり、汚泥の除去や電極の交換等も不要で運転や操作が容易でメンテナンスも極めて簡便となる。
【0140】
また、本発明は、吸蔵法に対しては、次のような利点を有する。すなわち、電解法によるフッ素を原料としないことから、上述した電解法の問題が完全に解消される。また、調達が容易な原料を使用するとともに、原料粉末の加熱という極めて簡便な処理でフッ素ガスが得られるため、ガスの単価が極めて安価となるうえ、大容量化にも容易に対応が可能で、原料収率も高くなる。
【0141】
また、本発明は、電気分解法と吸蔵法の双方に対して、次のような利点を有する。すなわち、密閉容器内で原料粉末を反応させてフッ素ガスを発生させるため、希釈ガスやコンプレッサ等を使用しなくても、高濃度のフッ素ガスをある程度の圧力で得ることができるようになる。このため、従来のようなコンプレッサの腐食の問題も解消し、高濃度のフッ素ガスを直接フッ素ガス利用設備に供給できるようになるという利点が生じる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフッ素ガス供給装置の第1の実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明のフッ素ガス供給装置の第2の実施の形態を示す構成図である。
【図3】本発明のフッ素ガス供給装置の第3の実施の形態を示す構成図である。
【図4】本発明のフッ素ガス供給装置の第4の実施の形態を示す構成図である。
【図5】本発明のフッ素ガス供給装置の第5の実施の形態を示す構成図である。
【図6】本発明のフッ素ガス供給装置の第6の実施の形態を示す構成図である。
【図7】本発明のフッ素ガス供給装置の第7の実施の形態を示す構成図である。
【図8】本発明のフッ素ガス供給装置の第8の実施の形態を示す構成図である。
【図9】本発明のフッ素ガス供給装置の第9の実施の形態を示す構成図である。
【図10】本発明のフッ素ガス供給装置の第10の実施の形態を示す構成図である。
【図11】本発明のフッ素ガス供給装置の第11の実施の形態を示す構成図である。
【図12】本発明のフッ素ガス供給装置の第12の実施の形態を示す構成図である。
【図13】本発明のフッ素ガス供給装置の第13の実施の形態を示す構成図である。
【図14】上記第13の実施の形態の第2例を示す構成図である。
【符号の説明】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1h 密閉容器
2,2a,2b,2c ヒータ
3 断熱ケース
4 蓋
5 精製装置
6 圧縮機
7 貯留タンク
8 供給路
9 第1水分除去装置
10 真空ポンプ
11 第2水分除去装置
12 振動装置
13 空洞部
14 振動部材
15 接点
16 支持部材
17 電源
18 モータ
19 攪拌装置
20 回転軸
21 カップリング
22 羽根
23 回転軸
24 把持部材
25 伝熱フィン
26 伝熱フィン
27 空洞部
28 ガス発生装置
29 加熱部
30 水分除去部
31 パージ路
32 窒素導入路
33 排気路
34 ジョイント

Claims (12)

  1. フッ化カルシウム等の五酸化バナジウムと反応可能なフッ化物粉末と、酸化剤である五酸化バナジウム粉末との原料粉末を混合して密閉容器に充填する工程と、
    上記原料粉末が充填された密閉容器を、加熱手段を備えたガス発生装置に装填し、内部の原料粉末を所定のフッ素発生温度に加熱する工程と、
    加熱による反応で発生したフッ素ガスを密閉容器から取り出してフッ素ガス利用施設に対して供給する工程とを有し、
    ガス発生装置に密閉容器を装填して原料粉末を加熱する際に、フッ素ガスを発生させる前にあらかじめ密閉容器内の水分除去を行ない、その後フッ素ガスを発生させることを特徴とするフッ素ガス供給方法。
  2. 密閉容器に充填された状態の原料粉末をあらかじめ水分除去処理してからガス発生装置に装填する請求項1記載のフッ素ガス供給方法。
  3. 密閉容器から取り出したフッ素ガスを、フッ化水素を除去したのちフッ素ガス利用施設に供給する請求項1または2記載のフッ素ガス供給方法。
  4. 密閉容器がガス発生装置に装填され、フッ素発生温度に加熱された密閉容器内の原料粉末に対して機械的外力を与えながらフッ素ガスを取り出す請求項1〜3のいずれか一項に記載のフッ素ガス供給方法。
  5. 上記フッ化物粉末と五酸化バナジウム粉末のうち少なくともいずれかがあらかじめ顆粒状に形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のフッ素ガス供給方法。
  6. フッ化カルシウム等の五酸化バナジウムと反応可能なフッ化物粉末と、酸化剤である五酸化バナジウム粉末との原料粉末が混合されて充填された密閉容器と、
    上記原料粉末が充填された密閉容器が装填されるとともに、原料粉末を加熱する加熱手段を有し、内部の原料粉末を所定のフッ素発生温度に加熱するガス発生装置とを備え、
    上記密閉容器には、加熱による反応で発生したフッ素ガスを密閉容器から取り出してフッ素ガス利用施設に対して供給する供給路が接続され、
    上記密閉容器がガス発生装置に装填されて原料粉末を加熱する際に、フッ素ガスを発生させる前にあらかじめ密閉容器内の水分を除去する水分除去手段(A)をさらに備えることを特徴とするフッ素ガス供給装置。
  7. 上記密閉容器に充填された原料粉末は、水分除去処理されたものである請求項6記載のフッ素ガス供給装置。
  8. ガス発生装置に装填する前の密閉容器に充填された原料粉末を、あらかじめ真空排気を利用して水分除去処理する水分除去手段(B)を備えている請求項6または7記載のフッ素ガス供給装置。
  9. 密閉容器から取り出したフッ素ガスからフッ化水素を除去してからフッ素ガス利用施設に対して供給する精製手段を備えている請求項6〜8のいずれか一項に記載のフッ素ガス供給装置。
  10. フッ素発生温度に加熱された密閉容器内の原料粉末に対して機械的外力を与える外力付与手段を備えている請求項6〜9のいずれか一項に記載のフッ素ガス供給装置。
  11. フッ化カルシウム等の五酸化バナジウムと反応可能なフッ化物粉末と、酸化剤である五酸化バナジウム粉末との原料粉末を混合して密閉容器に充填する工程と、上記密閉容器に充填された状態の原料粉末をあらかじめ水分除去処理する工程と、上記原料粉末が充填された密閉容器内部の水分除去された原料粉末を所定のフッ素発生温度に加熱する工程と、加熱による反応で発生したフッ素ガスを密閉容器から取り出す工程とを有することを特徴とするフッ素ガス発生方法。
  12. フッ化カルシウム等の五酸化バナジウムと反応可能なフッ化物粉末と、酸化剤である五酸化バナジウム粉末との原料粉末が混合されて充填された密閉容器と、上記密閉容器に充填された原料粉末をあらかじめ真空排気を利用して水分除去処理する水分除去手段と、上記水分除去された原料粉末が充填された密閉容器が装填された状態で、原料粉末を加熱する加熱手段とを備え、内部の原料粉末を所定のフッ素発生温度に加熱することによる反応でフッ素ガスを発生させることを特徴とするフッ素ガス発生装置。
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