JP4436039B2 - 増幅反応を多重化するための方法および装置 - Google Patents

増幅反応を多重化するための方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
(発明の背景)
1.発明の分野
本発明は、多数の(multiple)核酸標的を同時に増幅する際に使用するための方法、試薬、組成物、および診断キットに関する。詳細には、本発明は、2ステップの多重(multiplex)増幅反応の発見に基づくものであり、その第1のステップは標準的な多重増幅ラウンドを打ち切って、それによって標的中のサンプルのコピー数を100〜1000倍にだけ「増加させる(boost)」。本発明の第1のステップの次に、得られた生成物を、最適化した第二次の単一増幅反応に分割し、この反応はそれぞれ、第1のステップすなわち多重化増加(multiplexed booster)ステップで既に使用したプライマーセット(primer set)の1つを含んでいる。増加ステップは、標的核酸の水溶液を使用して、あるいは固相に収容した核酸を使用して行うことができる。
【0002】
2.現況技術の説明
遺伝情報は生きている細胞中でDNAの糸様分子に保存されている。in vivoでは、DNA分子は二重らせんであり、そのそれぞれの鎖はヌクレオチドの鎖である。それぞれのヌクレオチドは4つの塩基:アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、およびシトシン(C)の1つによって特徴付けられる。官能基の配向によって、ある塩基対が、水素結合を介して互いを引き寄せ、結合するという意味で、これらの塩基は相補的である。DNAの1本の鎖のアデニンは、対向する相補鎖中のチミンと対になり、DNAの1本の鎖のグアニンは、対向する相補鎖中のシトシンと対になる。RNAでは、このチミン塩基がウラシル(U)で置き換えられており、ウラシルは対向する相補鎖中のアデニンと対になる。
【0003】
DNAとRNAの間のもう1つの違いは、それぞれが含む5炭糖の性質である。具体的には、DNAはデオキシリボヌクレオチドが共有結合した鎖からなり、RNAはリボヌクレオチドが共有結合した鎖からなる。
【0004】
1つのヌクレオチドの糖の5’位のヒドロキシル基と、隣接するヌクレオチドの糖の3’位のヒドロキシル基との間のホスホジエステル架橋によって、それぞれの核酸が結合されている。天然のDNAまたはRNAのそれぞれの線状の鎖は、遊離した5’位のヒドロキシル基を有する1つの末端(5’末端と呼ばれる)、および3’位のヒドロキシル基を有するもう1つの末端(3’末端と呼ばれる)を有する。DNAおよびRNAの相補鎖は、1本の鎖の3’末端は、対向する鎖の5’末端に向いているアンチパラレルな(antiparallel)複合体を形成する。
【0005】
核酸ハイブリダイゼーションアッセイは、2本の核酸鎖が相補的領域で対になる傾向に基づくものである。現在、核酸ハイブリダイゼーションアッセイは主として、核酸混合物中の完全なDNA分子中、あるいは核酸断片混合物の、非反復DNAおよびRNA塩基配列または特異的な遺伝子を検出および同定するために使用されている。
【0006】
すべての生物または生物試料は、特異的かつ明確な配列の核酸を含んでいるので、核酸を検出するための一般的戦略は、いくつかの多様な研究および開発領域、ならびに商業上の産業において非常に広く適用されている。組織または培養サンプルから抽出した全DNAまたはRNA中の、非反復DNAまたはRNA配列または特異的な遺伝子を同定することによって、生理学的状態あるいは病理的状態の存在を示すことができる。特に、ヒトまたは動物組織から抽出した全DNAまたはRNA中の、非反復DNAまたはRNA配列または特異的な遺伝子を同定することによって、鎌状赤血球貧血などの遺伝病または状態、組織適合性、ガンおよび前ガン状態または細菌感染もしくはウイルス感染の存在を示すことができる。細菌培養物または細菌を含む組織から抽出した全DNAまたはRNA中の、独特なDNAまたはRNA配列または特異的な遺伝子を同定することによって、抗生物質耐性、毒素、ウイルス、またはプラスミドの存在を示すことができ、あるいは細菌のタイプ間の同定をもたらすことができる。
【0007】
核酸検出の実用の可能性は、低濃度で認められる核酸の正確な配列を、検出方法でより容易に観察されるように、より多くのコピー数に忠実に増幅あるいはコピーする方法が記述されたことによって大幅に増大した。
【0008】
元来の増幅法は、Mullis他によって、同氏の米国特許第4,683,195号、第4,683,202号および第4,965,188号中に記載されたポリメラーゼ連鎖反応であり、これらはすべて、参照によって本明細書に具体的に具体的に組み込まれている。PCRの導入に続き、増幅のための多くの一連の戦略が記載されている。たとえば、「Nucleic Acid Sequence Based Amplification(NASBA)」という表題のMalekの米国特許第5,130,238号、「Isothermal Methodology」という表題のAuerbachの米国特許第5,354,668号、「Ligase Chain Reaction」という表題のBuirkenmeyerの米国特許第5,427,930号、および「Strand Displacement Amplification(SDA)」という表題のWalkerの米国特許第5,455,166号を参照のこと。これらはすべて、参照によって本明細書に具体的に組み込まれている。
【0009】
一般に、核酸増幅技法を使用する特異的な核酸の診断およびスクリーニングは、1度に1つの標的配列を増幅しなければならないことにより制約を受けてきている。可能性のある多数の核酸配列のいずれかが存在する可能性がある場合は、この手順によって多数の別個のアッセイを行うことは厄介で、時間がかかる。たとえば、一般に多くの病原体の感染によって同じ臨床症状が起こり、したがって可能性のある多くの標的生物間の識別診断が必要とされる。ガンの予後および遺伝的リスクは、多数の遺伝子の変化によるものであることは知られている。遺伝的多型および突然変異は、多数の遺伝子座での変化により生じ、接合性の決定をさらに必要とする。多くの状況において、標的核酸の量は制限されているため、試料を分けて、別個の反復分析を使用することが可能ではないことが多い。同じ試料について多数の遺伝子標的の同時分析を可能にする方法が非常に必要とされている。増幅をベースとする方法については、これは「多重反応(multiplex reactions)」と呼ばれている。
【0010】
Chamberlain他のNucleic Acid Research、16:11141−11156(1988)は、ヒトのジストロフィン遺伝子に関する多重分析を初めて示した。他の遺伝病または感染因子のための特異的なプライマーセットも後に同定されている。Caskey他の欧州特許No.EP364,255A3、Caskey他の米国特許第5,582,989号、Wu他の米国特許第5,612,473号(1997)を参照のこと。これらの多重反応に関する戦略は、特異的プライマーを注意深く選択し最適化することによって達成された。確固とした、感度が良く、特異的な多重反応を開発するには、いくつかの特異的な設計を考え、経験的最適化を行うことが必要とされた。EdwardsとGibbsのPCR Methods Applic.、3:S65−S75(1994)、Henegariu他のBiotechniques、23:504−511(1997)を参照のこと。このため開発期間が長くなり、反応条件を損ない、アッセイ感度を低下させる。それぞれの多重アッセイには制限プライマー設計パラメータ、および独特な反応条件の経験的決定が必要なため、新しい診断試験法の開発には非常にコストがかかる。
【0011】
多重反応を制限するいくつかの具体的な問題が確認されている。2つ以上の標的のためのプライマーセットを取り込むには、反応効率を注意深く整合させる必要がある。1つのプライマーがその標的をわずかでも高い効率で増幅すると、より効率よく増幅される標的に増幅が偏り、その多重反応における他の標的遺伝子の増幅が不充分になる結果となる。これは「優先的増幅(preferential amplification)」と呼ばれ、感度のばらつきやおそらくは多重反応の標的の1以上で全て失敗する可能性がある。すべてのプライマー配列を同じ長さおよびGC含量に注意深く合わせ、たとえばあまり効率の良くない標的のプライマー濃度を増大させてプライマー濃度を最適化することによって優先的増幅を修正することもできる。優先的増幅を修正するための1つの手法は、プライマーにイノシンを取り込ませて、プライマー増幅効率を調整することである(Wu他、米国特許第5,738,995号(1998)。他の手法は、キメラ・プライマーを設計することである。それぞれのプライマーは、配列特異的な標的認識部位と相補的な3’領域、および共通の配列でできた5’領域を含んでいる。共通の配列プライマーを使用することによって、様々な標的の増幅効率を標準化することができる。Shuber他のGenome Research、5:488−493(1995)、Shuberの米国特許第5,882,856号を参照のこと。キメラ・プライマーは、多重等温鎖置換増幅(multiplex isothermal strand displacement amplification)のためにも使用されている(Walker他の米国特許第5,422,252号、5,624,825号、および5,736,365号)。
【0012】
多数のプライマーセットが存在するので、プライマーの交差反応性から生じるアーチファクト(artifact)によって、多重化が複雑になることがしばしばある。このことを回避するために、コンピュータBLASTまたはプライマー設計プログラムを使用して、プライマー配列を並べる。標的の数が増えるにつれて、非常に複雑になり、プライマーの選択を厳しく制限するので、考えられるすべての組合せを分析しなければならない。注意深く設計されたプライマーの組合せでさえも、偽陰性または偽陽性の結果をもたらす擬似品を生み出すことが多い。2つ以上の反応が同時に起こっているとき、反応動態および効率は変化する。異なる各試料タイプのそれぞれの多重化反応は、MgCl2濃度とデオキシヌクレオチド濃度、KCl濃度、Taqポリメラーゼ濃度に対する比、熱循環の広がりとアニーリング(annealing)時間、およびアニーリング温度について最適化しなければならない。多重反応では試薬に対して競合があり、したがってすべての反応は早くプラトーに達する。したがって、一般に多重化反応は、対応するシンプレックス(simplex)反応よりも感度が低い。
【0013】
同時増幅反応について他に考えられるのは、それぞれの標的を区別および検出するための方法が存在しなければならないということである。これは一般に、それぞれの標的について増幅産物のサイズを異なるように設計し、ゲル電気泳動を使用してこれらを区別することによって達成される。あるいは、分光、光化学、生化学、免疫化学、または化学的手段によって検出可能なように、プローブまたはPCR産物を標識することができる。たとえば、自己消光プローブ設計と共に取り込まれる多数の蛍光染料を使用することによって、増幅をリアル・タイムで監視することができる。Livak他の米国特許第5,538,848号(1996)、Livak他の米国特許第5,723,591号(1998)、およびDi Cesareの米国特許第5,716,784号を参照のこと。多重化標的の数は、反応中に区別可能な染料または他の標識部分の数によって、さらに制限される。検出する異なる蛍光部分の数が増えるほど、結果を解釈するために必要な光学システムおよびデータ解析プログラムの複雑性も増す。他の手法は、増幅させた多重産物を固相にハイブリダイズさせ、次いでそれぞれの標的を検出することである。この手法では、明確な形の捕獲プローブを有する平坦な(planar)ハイブリダイゼーション・プラットホームを使用することができるか(Granados他、米国特許第5,955,268号(1999)、あるいはフローサイトメトリーによって分けることができるビーズセット上に捕獲することができる(Chandler他、米国特許第5,981,180号(1999))。
【0014】
論じた技術的問題のすべてを総括すると、多重遺伝子検出に関する現在の技術はコストがかかり、分析することができる遺伝子の数および組合せが厳しく制限される。一般に反応は、わずか2個または3個の標的を、最大で約10個の標的を多重化する。等温(isothermal)増幅反応はPCRよりも複雑であり、多重化はより困難である。Van Deursen他、Nucleic Acid Research、27:e15(1999)を参照のこと。
【0015】
したがって、広範囲の設計および最適化の制約なしに、多数の標的を多重化することができる方法が依然として必要とされている。少量の最初の標的核酸から非常に多数の遺伝子標的を検出する方法も、さらに必要とされている。
【0016】
(発明の概要)
したがって、本発明の一般的な目的は、広範囲の設計および最適化の制約なしに、多数の標的を多重増幅することができる方法を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、核酸のコピー数が非常に少ない限られた量の試料からの、多数の標的の増幅を可能にする方法(すなわち多重増幅アッセイ)を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、広範囲の設計および最適化の制約なしに、ユーザーが多数の標的の増幅を行うことができ、核酸のコピー数が非常に少ない限られた量の試料から標的を増幅することができる、診断キットを提供することである。
【0019】
本発明の他の目的、利点および新規な特徴は、以下に続く説明中で一部を述べ、以下の明細書の説明によって当業者に一部が明らかになるか、あるいは本発明を実施することによって知ることができる。添付の特許請求の範囲中で詳細に述べる方法、組合せ、組成物、および方法によって、本発明の目的および利点を実現し、達成することができる。
【0020】
前述の目的または他の目的を達成するために、実施されここに広く記載される本発明の目的に従って、本発明の方法は2ステップの多重増幅反応を含み、その第1のステップは標準的な多重増幅を打ち切って、それによってプライマー産物を最小限にしながら、増大した標的コピー数を有する生成物が結果としてもたらされる。第2のステップは、第1のステップで得られた生成物を最適化した第二次の単一増幅反応に分割し、この反応はそれぞれ、第1のステップで既に使用したプライマーセットの1つを含む。
【0021】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付の図面によって、本発明の好ましい実施形態、および本発明の原理を説明するために働く記載を例示する。
【0022】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
前に論じたように、複雑な設計制約および広範囲の最適化を必要とせずに、多数の核酸標的を増幅する方法および診断キットを案出することができれば非常に有用であろう。一般に本発明の方法および診断キットは、一般的な多重増幅法および試薬の使用を含むものであり、より具体的には、サンプルのコピー数をわずかに「増加させる」ために、分析する核酸サンプルを最初に予備増幅すると、結果として生じる生成物を必要とされるだけの多くのその後の分析反応に分けることができ、これによって標準的な多重化技術の一般的な制約が回避されるという驚くべき発見に由来するものである。
【0023】
本発明は、多数の個別の分析に割り当てるための広範囲の生物サンプルから得られる、核酸の量を増大させるための新規な方法を記載する。それは、出発材料として固相材料に不可逆的に結合した、収容型核酸の使用を含むことが好ましい。いずれも参照によって本明細書に組み込まれている、米国特許出願第09/061,757号、および対応する国際出願WO98/46797を参照のこと。したがって、制限型多重増幅反応を行うことによって、不可逆的に結合した核酸のコピー数が「増加する」。制限型多重増幅反応とは、PCR、RT−PCR、NASBA、SDA、TMA、CRCA、リガーゼ連鎖反応などに限らず、よく知られている任意の増幅法を打ち切った型のものである。収容型核酸を使用することには、本発明の多数の連続ラウンドを行うことができるという利点がある。あるいは、結合していないが水溶液中に存在する核酸を使用することもできる。この場合、いくつかの一般的な手順によって、望ましい生物サンプルから核酸が得られる。これらの手順にはフェノール−クロロホルムおよび/またはエタノール沈澱(Maniatis他、Molecular Cloning;A Laboratory Manual)、高塩沈澱(Dykes、Electrophoresis 9:359−368(1989)、chexおよび他の煮沸法(Walsh他、Biotechniques、10:506−513(1991)、および他の固相結合および溶離(Vogelstein and Gillespie、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、76:615−619(1979))などがある。制限型増幅のこれらの最初のラウンドからの産物を、いくつかの単一分析に分配する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、組織、細胞または他の生物材料を含むサンプルを、固相結合材料の存在下で処理して、サンプル中に含まれる核酸を放出させる。固相収容(solid phase archiving)材料によって、結合した核酸を溶離することなく増幅することが可能になる。サンプル核酸が固相に結合した後、固相材料を洗浄して、溶解緩衝条件を取り除き、増幅条件を準備する。増幅法に適した反応混合物を固相に加えるか、あるいは固相に接触させる。本発明に従って使用するプライマー対の数は、2より大きい任意の数であってよい。しかしながら、標準的な多重化反応の状態および設計は、使用するプライマーの数が増えるにつれてより困難で効率の悪いものとなるので、本発明は、使用するプライマーの数が5を超えると最も有用である。
【0025】
この反応混合物は、いくつかの独立した増幅用増幅プライマーを含む。これは標準的な多重化PCRと類似しているが、以下の点が異なる。第1に、好ましい実施形態ではプライマー濃度は非常に低い。有効なプライマー濃度を制限して数logだけの増幅を可能にするべきであるが、プライマー濃度は明らかに、反応プラトーに達する前に消費されてしまう。第2に、増幅サイクルの数も最小限にすべきである。多重増幅のこの第1段階、すなわち「ブースター増幅(Booster Amp)」の目的は、充分量の増幅のみを進行させて、結果として生じる反応混合物を分割し、その後のシンプルな増幅反応と少なくとも同数に再分配することである。なぜなら、最初の増幅では独立したプライマー対が存在するからである。
【0026】
増幅のこの最初のラウンド、すなわちブースター増幅は、増幅の初期対数期にのみ進行するはずであり、反応プラトーに達するまで進行することはない。ブースター増幅が終了したら、得られた多数の増幅種との反応混合物を固相との接触から取り除き、いくつかの二次的な増幅に分配する。これらの増幅は、第1のブースター増幅において使用したプライマー対の数と等しいか、あるいそれより多い可能性がある。これらの二次増幅反応はそれぞれ、1つのプライマー対しか含まない。このプライマー対はブースター増幅中のプライマー対の1つと同一であるか、あるいはブースター増幅のプライマー対の1つの中に「収まっている(nested)」可能性がある。いずれかの場合、それぞれの二次増幅反応は、ブースター増幅からの投入材料を標的源として使用する。二次増幅反応では、通常量のプライマーを使用し、増幅は正常に進行することができる。放射性同位体、またはビオチンなどの視覚的なマーカーなどの(これらだけには限られないが)、単一の増幅産物の通常な検出システムが、二次増幅に含まれ得る。
【0027】
好ましい実施形態では、前に論じたように、固相材料の存在下で反応が起こる。この利点は、結合核酸を有する元の固相材料を第1のブースター増幅の後に洗い落とすことができ、1秒間再初期化し、次に増幅プライマーの新しい混合物を使用してブースター増幅できることである。次いでこのプロセスを、追加的な二次増幅中まで繰り返す。この全体のプロセスは、多数のラウンドにわたって繰り返すことができる。したがって、分析する核酸サンプルの量が少ない場合は、必要なだけ頻繁かつ充分に分析を行うことができる。あるいは、ブースター増幅ステップを核酸が結合していない水性状態中で行うことができる。
【0028】
マイクロウエル(microwell)をベースとするPCRの(しかしながら、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、トランスクリプターゼ、またはQβレプリカーゼなどに限らないがこれらのポリメラーゼを使用する、プライマーをベースとする任意の増幅法に、任意の形の適切な容器中において適用することができる)概念を図1に示す。反応ウエルまたはチャンバ(chamber、図示せず)を含むチップまたはカードは、正確な熱循環を行うことができる装置中に含まれる。溶かしたサンプルを抽出チャンバ10中に導入し、遊離した核酸を抽出チャンバ10中で固相材料に結合することができる。結合したサンプルを有するチャンバ10を、ステップ12で短時間(10〜20分間)インキュベートする。次いで水性緩衝液、好ましくはPCR緩衝液を、洗浄ステップ14において使用する。洗浄14によって溶解物を取り除き、ステップ16でチャンバ10’をPCR状態に初期化する。第1の多重PCR反応混合物(多重化プライマー、PCR緩衝液、およびTaqポリメラーゼを含む)をチャンバ10中に導入し、ステップ18で循環させる。多重化産物20’は検出可能ではないはずであるが、反応の安定状態を超えないレベルまで、好ましくは100〜1000倍の範囲で増幅しなければならない。次いでブースターPCR反応物20’を、二次PCRチャンバ22’に分ける。それぞれのシンプレックス二次PCR反応(図示せず)の反応混合物(1つのプライマー対を有する)は事前に、あるいはこのポイントで導入する。チップまたはカード上で循環を行って、二次PCR反応22’を最後まで進行させる。ここで最初のサンプル・チャンバは空であり、このチャンバはステップ24で洗浄することができ、Booster/SecondaryPCRの第2ラウンドで再び初期化することができる。
【0029】
本発明によって、多数の遺伝子標的を多重増幅するための、確固とした単純な方法が明らかになる。プライマーセットの濃度が低く、わずか100〜1000倍の標的の増加を結果としてもたらす最初の増幅ラウンドに限られる場合、2〜40以上のプライマーセットを組み合わせて、多重増幅を可能にすることができることが好ましいことを、本発明は教示している。しかしながら、2より大きい任意の数のプライマーセットを、本発明に従って使用することができることを理解されたい。これは「増大ラウンド」またはブースター増幅と呼ばれており、水性の標的核酸を使用して、あるいは核酸を収容した固相を使用して行うことができる。前に論じたように、収容型(archived)材料を使用する利点は、同じ収容型試料から多重増大ラウンドを行うことができることである。たとえば、収容型核酸からの5、20の標的増大ラウンドを行うことによって、100個の異なる遺伝子の分析が可能であろう。それぞれの増大ラウンドの次に、増幅産物を最適化した第二次の1回PCR反応物に希釈し、この反応物はそれぞれ、ブースター反応において多重化させたプライマーセットの1つを含む。これらのシンプレックス反応物は最大感度に最適化することができ、これらはそれぞれ、ただ1つの検出法、たとえば1つの染料の相同的検出を必要とする。本発明は、広範囲の最適化なしで多重化を可能にし、多重化するプライマーをランダムに選択できるほど充分に確固たるものである。
【0030】
本発明は、多重化の通常の技術的な問題点を克服する。多重化サイクルを制限することによって、多数のプライマーの優先的増幅および交差反応が最小限になる。1回PCR反応のみが最適化を必要とする。シンプレックス反応では感度は最大である。なぜなら、試薬の競合が存在しないからである。シンプレックスPCRを使用することによって、検出プローブを多重化する必要がなくなる。多重化プライマーをランダムに組み合わせる可能性によって、最大の柔軟性およびコスト効率が提供される。なぜならこれによって、多重化する標的を特別に選択することが可能であるからである。多重化が必要とされる標的は、個々の地理的な位置、実験室、患者のタイプ、試料のタイプに関して、変わる可能性がしばしばある。収容型核酸は再分析することができるので、多重体は論理的なアルゴリズムで設計することができる。たとえばブースター反応検出セットでは、最もよく知られている突然変異体を識別することができる。したがって、これらが検出されない場合のみ、より珍しい突然変異体について追加的な多重化を行うことが必要である。これによって、経済的であるにもかかわらず包括的な遺伝的分析が可能である。
【0031】
以下の非制限的な例によって、本発明をさらに例示する。科学的用語および技術用語はすべて、当業者によって理解される意味を有する。以下の具体例によって、さまざまな多重化増幅法を例示し、これらの方法と共に作用させるために本発明を適合させることができ、これらの方法は本発明の領域または範囲を制限するものとして解釈するべきではない。これらの方法を変更形態に適合させて、本発明中に含まれるが具体的には開示しない、他の一般的に使用されている多重増幅法と共に機能させることができる。さらに、幾分異なった方法で同じ結果を生み出すための方法の変更形態が、当業者には明らかであろう。
【0032】
指定のないときは、温度はすべて摂氏温度(℃)であると理解されたい。式Tm=81.5+16.6×log(Na+)(41×(#G+#C)/長さ)−500/長さをベースとする、一般に認められている数学的計算式を使用して、プライマーの溶解温度(Tm)を評価した。多重化増幅技法を含めた増幅技法は現在、充分よく知られ広まっており、したがって日常的なものであるとみなされている。ポリメラーゼ酵素およびヌクレオチドはすべて、PE(Biosystems、Foster City、California)から購入することができる。(50mM KC1、10mM Tris、pH8.3、2.0mM Mg2+)を含む緩衝液中において、94℃で1分間、55℃で2分間、および72℃で5秒刻みの30サイクルのPCRを行い、それぞれのサイクルで72℃の伸張ステップを加えた。この手順は、DNA Thermal Cycler #N8010150(Perkin−Elmer Cetus)で行った。
【0033】
例1
ブースターPCRおよび収容を取り込んだ多重増幅
1.プライマー設計
Xtra Amp(商標)Extraction Kit(Xtrana,Inc.)によって、核酸を抽出するための革新的なシステムが提供されており、その中では核酸は抽出チューブ中で結合したままであり、この同じチューブ中でPCRによって核酸を直接増幅させることができる。このシステムの根底にある独特の原理は、専売の核酸結合マトリックスであるXtra Bind(商標)にある。Xtra Bind(商標)は非シリカマトリックスであり、これは安定的かつ不可逆的にDNAとRNAの両方に結合する。Xtra Amp(商標)キットには、Xtra Bind(商標)マトリックスで覆われた96本の0.2mlサイズのミクロ遠心分離チューブ(1×8片として)、細胞溶解緩衝液および洗浄用緩衝液が含まれる。血液全体からゲノムDNAを抽出するために、このキットが現在市販されている(ANSYS Diagnostics、Lake Forest、Californiaによって製造され、Xtrana,Inc.に分配されている)。Xtra Plexの実現可能性を実証するために、Xtra Amp Bloodキットを、抽出用プラットホームとして選択した。PCR多重化実験については、25のプライマー対を得て、それらをさまざまなグループにおいて使用可能にすることを決めた。Lifecodes Corporation(Standford、Connecticut)からの3つのプライマーセット、HLA Primers(HLA−A:Primer A1(cat#164011);Primer A2(cat#164012);HLA−B:Primer B1(cat#165011)、Primer B2(cat#165012;DRβ:Primer A(cat#160031);Primer B(cat#160032)を、以下の表1に示す23の自家製(house)プライマーセットに加え、これらをヒト遺伝子標的用に設計して、合計25のセットを作成した。標的とした遺伝子は以下のものである:ヒト細胞質β−アクチン遺伝子、(受託番号M10277);ホモサピエンス・インターロイキン2前駆体(IL2)遺伝子、(受託番号J00264);ヒト成長ホルモン遺伝子(HGH−N)、(受託番号M13438);ヒトグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水酵素(GAPDH)遺伝子、(受託番号J04038);ホモサピエンスジストロフィン(DMD)遺伝子(受託番号AF214530);ホモサピエンスGタンパク質結合受容体57(GPR57)遺伝子、(受託番号AF112461);ヒトガラクトキナーゼ(GALK1)遺伝子、(受託番号L76927);ホモサピエンスMHCクラス1領域.(受託番号AF055066)。プライマー設計ソフトウェアOLIGO5.0(Molecular Biology Insights)を使用して、プライマー対を設計した。アガロース・ゲル電気泳動によって区別することができるように、増幅産物のサイズを設計した。プライマー対の溶解温度を標準化すること、あるいは異なる対からのプライマー間の構造的相互作用を排除することは、特に考慮しなかった。それぞれのセットの正方向および逆方向プライマー間のヘアピンおよび二量体の回避などの、PCRによるプライマー設計の考慮事項は、任意の典型的なPCRによるプライマー設計に関するものの範囲であった。結果として生じたプライマーは、49℃〜72℃の範囲の溶解温度を有していた。異なる対からのプライマー間の二量体形成の可能性を調べると、いくつかの重大な二量体の可能性が示された場合もあった。このことはほとんど無視した。なぜなら、この手法はこのような潜在的なアーチファクトを克服すると考えられており、これを実証することが重要であると考えたからである。プライマーおよび配列を表1に示す。
【0034】
(表1)
Figure 0004436039
【0035】
2.核酸を取り込んだ固相の一連のブースター反応
多数ラウンドの多重化増幅を行うための実現可能性を示すために設計した、これらの多重化実験では(これらの結果は図2a〜2dに示す)、それぞれのブースター増幅は、5つのプライマーセットを用いるPCR反応からなっていた。第1の5個の部分を持つ(5−plex)実験では、グループ2のプライマーを使用した。第2の実験では、グループ4のプライマーを使用し、第3の実験では、グループ1のプライマーを使用した。20個の部分を持つ(20−plex)実験では、それぞれ正常の50分の1の濃度である(200nMに対して4nM)、5グループすべてから使用するプライマーを選択した。ヌクレオチド三リン酸、緩衝液および塩濃度は正常であった。それぞれのプライマー対に関する理論的に最適な条件間の妥協物として、循環条件を選択した(各サイクル:72℃、30秒;55℃、1分;および65℃、3分)。サイクルの合計数は10までに制限した。最初にプライマーを互いに1:1の比で混合し、次いで正常の10×濃度の50分の1に希釈した。ブースター反応のPCR反応混合物は、通常どおり作製した。キットプロトコールに従って新鮮なヒト血液と共に、Xtra Ampキット(前で論じた)を使用した。正常なPCRと同様に、ブースター反応物をXtra Ampチューブ中に置いた。ブースターPCRの後に、反応混合物を取り出し、5倍に希釈した。
【0036】
それぞれのシンプレックス二次反応に、この希釈したブースター生成物を5マイクロリットル加えた。それぞれの二次反応は5つのプライマー対のただ1つを有しており、正常量のプライマーを用いて正常にセット・アップした。これらのPCRは、全40サイクルで行った。2つの循環プロフィール(72℃、30秒;65℃、または1分;72℃、3分)を、これらの二次反応に使用した。ブースター反応において使用したのと同じ循環プロフィールを、すべての二次PCRについて使用した。プライマーにより高い温度が必要であると考えられる場合は、より高い温度プロフィールを使用して、追加的な二次反応を行った(各サイクル:72℃、30秒;65℃、1分;72℃、3分)。
【0037】
次に、ブースター反応を行ったXtra Ampチューブを、このキットに提供された洗浄緩衝液(Wash Buffer)を用いて3度洗浄した。5つのプライマー対の異なるセットとの第2のブースターPCR反応混合物を、チューブに加えた。最初のブースター増幅と同一の条件を使用した。生成物を取り出し、前と同様に希釈し、第2のブースターPCRと同じプライマー対を使用する、5回の二次シンプレックスPCRの次のグループに等分した。これらの二次反応はすべて、ブースターと同じ循環プロフィールを使用して行い、いくつかのプライマーはより高い温度プロフィールでも追加的に行う。これに続けて、ブースター/二次シンプレックス反応の第3ラウンドを、最初の2ラウンドと同一の条件で、5つのプライマーの第3のグループに関して行った。
【0038】
比較するために、5つのプライマー対グループのそれぞれを使用して、通常の40サイクルの多重PCRを行った。これらはそれぞれ、それぞれがブースターPCRと同じグループ中にある5つのプライマー対を有していた。これらの多重反応は、半正常的なプライマー濃度で40サイクル行った。15個の二次反応、高温の追加的な二次反応物、および3つの通常の多重化PCRすべてからの生成物を、アガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0039】
図2aは、二次PCR反応の第1ラウンドの結果を示す。ブースターPCRの第1ラウンドでは、5つのPCR(グループ2:IL2−1;IL2−3;GAPDH I5;HDYST3;HLA−B)を使用した。Xtra Ampチューブ中でブースターPCRを行い、次にヒト血液から核酸を抽出した。ブースター増幅の後に、生成物を1:5に希釈し、次いでこの1:10体積を、別の通常のPCRチューブ中の6つの後続の反応物に加えた。6つの後続のシンプレックス二次反応物は、ブースターPCR系の5つをすべて含み、更にプライマーが5つの1つ(HLA−B)と類似している追加的な系(HLA−A)を含んでいた。追加的なPCRは二次PCRのコントロールとして働き、陰性であると予想された。図2aに示す結果によって、ブースター反応からの5つのPCR品すべてが、二次シンプレックス反応において働いたことが実証される。対照的に、5つのプライマー対すべてをXtra Ampチューブ中において合計40サイクルで同様に調製した、正常な多重PCR(MMX)は、すべてのPCR産物に働いたわけではなかった。(このゲル像および示したすべてのゲル像において、リファレンスラダーは100bpで始まる100塩基対刻みであり、Lはラダー(ladder)であり、ntは鋳型なし、tは鋳型である)。
【0040】
図2bは、二次PCR反応の第2ラウンドの結果を示す。5つのプライマー対のブースターPCRの第2ラウンドは、第1回目の増大と同じXtra Ampチューブ中において行った。第2のブースター増幅PCR混合物を加える前に、Xtra Ampキットの洗浄緩衝液を用いて、チューブを3度洗浄した。次の5つのプライマー対は、グループ4:HGP57;HDYST−1;HGK−2;HGH−3、およびDRBからのものであった。ブースターPCRを同一的に行った後に、前と同様に生成物を1:5に希釈し、5つの二次シンプレックスPCR反応に等分した。これらの反応は、低温の循環範囲で行った。図2bに示す結果は、4つの反応物はこの温度で働き、鋳型コントロールのないHDYST−1の1つにスポット汚染がいくつかあったことを実証している。HGP57およびHGH−3の二次反応物は、高温の二次循環プロトコルにおいて最も働き、その温度でも機能した。Xtra Ampチューブ中においてこれらの同じプライマーを用いた、正常なPCR多重化(MMX)は再び失敗した。
【0041】
図2cは、二次PCR反応の第3ラウンドの結果を示す。この実験では、グループ1(HBA PCR1;IL2 PCR2;IL2 PCR−old;hGH PCR1およびHLA−A)からのプライマーセットを使用して、前に論じた最初の2回のブースター反応と同じXtra Ampチューブ中において、第3の5つのプライマー対のブースター増幅を行った。ここでも、3つの標準的な洗浄物は、前のブースターPCRと今回のブースターPCRの間のチューブに関して機能した。これらのプライマーを用いた標準的な40サイクルの多重化は、これらのプライマーについても失敗した。図2cに示す結果は、IL2−OLDプライマー反応では鋳型のないコントロール中にいくつかの汚染が見られ、hGH−1 PCRは二次反応用に設定した低温の循環条件に関してはうまく働かなかったことを実証している。hGH−1およびHLA−Aの二次反応はいずれも、より高温の二次循環条件設定で行った(65℃および72℃対55℃および65℃)。
【0042】
図2dに示す結果は、二次反応のこのセットでは、二次反応の第1セットにおいて成功しなかったと思われるプライマーセットを、より高いアニーリングおよび伸張温度(それぞれ65℃および72℃対55℃および65℃)を使用して、再実験したことを示す。IL2−OLDに関する汚染問題は依然として明らかであった(このプライマーセットは我々の研究室で以前使用していた)。残りのPCR反応物は、より一層しっかりとしていた。
【0043】
すべての二次反応物が作用したことが結果によって示される。これらの実験(IL2−OLD)の前に、この研究室でプライマー対を広く使用していた場合、鋳型のないコントロール中にいくつかの汚染が見られた。1つのプライマー対は、弱い陽性な結果を与えた(HGP−57)。4つのプライマー対は、高温二次PCRプロフィールでより良く作用した。1つのプライマー対は、二次反応中において高濃度でより良く作用した。二次PCR反応は正常なPCR反応として機能し、その中でいくつかの最適化によってより良い結果が与えられることをこれらの結果は示す。ブースターPCRは、さまざまなプライマーセットに関して、最適条件未満で充分に機能することができた。対照的に、全40サイクルの多重増幅として行った3回の正常の多重化PCRでは、数個のプライマーセットを除き、すべての増幅産物が示されることはなかった。
【0044】
3.ブースターPCRによって可能になる多重化能力
増大させた産物を個々の二次PCRに等分する前に、制限型ブースターPCRを使用して標的のコピーを増大させる2ステップのPCR手法は、5つのプライマー対のグループに関して非常に良く働いたので、ブースター反応中のプライマー対の数の増大を行った。サンプルとしてヒト血液を有するXtra Ampキットを使用することを加えた以外は、前と同一の条件を使用して20プライマー対のブースター反応をセットアップし、前に抽出したヒト胎盤DNAを鋳型として使用して、正常なPCRチューブ中でブースターPCRをセットアップした。この実験では、プライマーセット23をプライマーセット4で置き換えた。個々のプライマーは4nM、すなわち正常の濃度の50分の1であった。低温プロフィールを使用して10サイクルで(各サイクル:72℃、30秒;55℃、1分;65℃、3分)、ブースターPCRを行った。このブースター反応の生成物を5倍に希釈し、20の二次シンプレックスPCR反応の鋳型として使用した。これらの反応からの生成物を、図3に示すようにアガロースゲル電気泳動によって分析した。像のコントラストによって結果が分かりにくい場合もあるが、水性PCRの生成物が予想されたサイズで、すべての反応において与えられた。水性反応によって、ブースターPCRをXtra Ampチューブ中で行った反応に関して見られた結果よりも、わずかに良い結果が与えられた場合もあった。二次反応のさらなる最適化のためには、これらの違いを取り除かなければならない。最後の4つの反応(HGH−3、HLA−A、HLA−BおよびDR)は、二次反応で設定した高温の循環条件を使用して行った。
【0045】
水性(非Xtra Amp)増大からの二次PCRは、すべて働いたことが結果によって示された。いくつかの二次PCRでは、より清潔な生成物を生み出すためにいくらかわずかの最適化が依然として必要であるが、すべての反応について正確なサイズの生成物バンドが見られた。Xtra Amp増大からの3つの二次反応物によって、非常に弱い生成が示された(ゲルの写真上ではほとんど再現できない)。二次反応をさらに最適化することによって、パフォーマンスが改善されるはずである。ブースターPCR中に40個の異なるプライマーが存在して、二次反応が作用して正確なサイズの生成物を生み出したことは注目に値する。このことは、ブースター反応中に形成される可能性があり、おそらくは従来の1ステップ多重化において形成される、プライマー系中のプライマー−プライマー産物が、二次シンプレックス反応を著しく妨げることはないことを示す。
【0046】
多重増大の2ステップ多重化、次に二次シンプレックス反応を行うことによって、正常な1ステップ多重増幅に関連した混乱に直面することなく、1つのサンプルについて多数のアッセイを行うことができる。さらに注目すべきは、決して最適化されていないPCRプライマーを使用し、使用するプライマーセットの少なくともいくつかにとって明らかに最適未満であるプロフィールを用いて増大を行うことによっても、この手法が依然として確固たるものであるという事実である。
【0047】
例2
核酸を取り込んだ固相の一連の増大Xtra Plex NASBA反応
1.増大Xtra Plex NASBAの第1のパス
いくつかのNASBA系は、現在我々の研究室で扱っている。以下の表2に示す、これら10個のプライマーセットから選択した。これらは、大腸菌用のSZ遺伝子(SZ)、STL1および2遺伝子(STL1、STL2)、16SリボゾームRNA(16S)、LacZ−(LacZ1およびLacZ2)、およびUIDA遺伝子(UIDA)、リステリア単球遺伝子用(HlyA遺伝子)、Nisseria gonorrhea用の16sリボゾームRNA(NG2)、およびChlamydia trachomatis用の16sリボゾームRNA(CT2)であった。驚くべきことに、プライマーLACZ1およびLACZ2は大腸菌に特異的であり、他の大腸菌種から大腸菌を区別することができることが示された。16sリボゾーム(16s)プライマーセットは、調べたすべてのグラム陰性菌に結合することができ、さらにこれらの増幅を可能にし、すべてのグラム陰性菌の共通のプライマーセットである可能性がある。プライマーセットLACZ1、LACZ2、および16S(配列参照)は、それぞれ大腸菌特異的プライマー、およびグラム陰性菌に共通のプライマーである。
【0048】
(表2)
Figure 0004436039
NASBAのプライマーおよびプローブ配列:FP=正方向プライマー、RP=逆方向プライマー、5DP=5’側面の流れを検出するプローブ、3DP=3’側面の流れを検出するプローブ。
【0049】
様々な細胞抽出物、および人工的なRNAの鋳型(抽出したRNA、RNA流出(runoff)材料、および前のNASBA反応からのRNA産物)をプールした。それぞれの20マイクロリットルを組み合わせ、次いで水で1:1に希釈した。この混合物30マイクロリットルを、Xtra Ampチューブに加えた。次いでこれに、等体積の2×LiCl溶解緩衝液を加えた。この溶液を混合し、室温で20分間放置した。LiCl洗浄緩衝液で3回洗浄した後、NASBA用にチューブを準備した。
【0050】
次いで、5つのプライマー対の2つの逐次ブースターグループを、それぞれ平行して行った。ブースターNASBA反応は、通常の反応成分および濃度で行った。ただし、プライマーはプールし、通常の濃度の50分の1(200nMではなく4nM)にした。2つのブースター反応は平行にセット・アップし、異なる時間で行った。第1の反応は40℃で15分間行い、第2の反応は40℃で30分間行った。反応を停止させ、チューブから生成物を取り出した。次のラウンドのためにチューブを洗浄した。生成物を10倍に希釈し、その後の二次シンプレックス反応用の鋳型として使用した。これらの反応は通常通り行い、可能な場合は側面の流れをアガロースゲル電気泳動によって分析した。次いで、5つのプライマーセットの第2のグループを、第1のグループのブースターに使用したのと同じXtra Ampチューブ中において同一に行った。ブースターから二次シンプレックス増幅への手順は同一であった。プライマー対のグループは、以下の通りであった。グループ1:SZ;SLT2;HlyA;CT2;およびLacZ2;グループ2:SLT1;16S;NG2;LacZ1およびUIDA1。
【0051】
アガロースゲル電気泳動または側面の流れの検出のいずれかによって示されるように、第1のブースター反応からの5つの二次反応物のうちの4つが作用したことが結果によって示された。失敗した系である大腸菌SLT−2は、我々の研究室中においてパフォーマンスが一貫していない経歴を有する系である。第2のブースター反応からの5つの二次反応物は、すべて作用した。ゲルの結果および側面の流れ(lateral flow)(参照によって本明細書に組み込まれているGerdesの米国特許第5,989,813号)の結果は、わずかに変化した。この変化は以前にこれらの系に関して見られ、最適未満の状態を示す。したがってその反応条件は、Booster Xtra Plexパラダイムにおいて全体的なパフォーマンスのさらなる最適化が必要であるが、その結果は、それらがまったく試験を行っていない状態、および高度な準備状態に関して非常に陽性であるという点において、非常に有望であり注目に値する。
【0052】
2.ブースターNASBAによって可能になる多重化能力
多重化等温増幅反応は、多重化PCR反応よりもより一層難しい。しかしながら、可能であれば、多数の標的を等温増幅することが第一選択の方法となる適用例がいくつかある。PCR用に開発されたブースター戦略(ただしNASBAプライマーを用いる)を使用することによって、このことが行われている。10個のプライマー対が多様な生物からの遺伝子産物を標的とする、短いブースターNASBA反応を前述のように行ったが、ただし10のプライマー対はすべて同じ反応中に存在した。ブースターNASBAを、セット当たり1:50に希釈したプライマー混合物を使用して(プライマー当たり4.0nMの最終濃度)、HlyA NASBA条件設定で行った。それぞれのプライマーセットの鋳型材料(抽出したRNA、RNA流出材料、および前のNASBA反応からのRNA産物)をプールし、希釈し、ブースター反応用の鋳型として使用した。この鋳型材料は、前述のXtra Ampチューブ中においてXtra Bind材料に結合した。この反応は40℃において、15分および30分で行った。これらの反応からの生成物を10倍に希釈し、10個の別個の二次シンプレックスNASBA反応用の鋳型として使用した。
【0053】
以下の表3に示す、核酸を取り込んだ固相の一連のブースターXtra Plex NASBA反応の結果は、10個のNASBA系のうちの8個が作用したことを示す。作用しなかった系の1つは、前述の実験と同じ系であった。これを書いている時点で、NASBA反応における2つの異なるプライマーセットの多重化さえ実証されていない点で、ここでも結果は注目に値する。
【0054】
(表3)
Figure 0004436039
【0055】
前の記載は、本発明の原理の単なる例示的なものとしてみなす。「からなる、含む(comprise、comprising、include、including、includes)」という語は、本明細書中および以下の特許請求の範囲中で使用するときは、1以上の明確な特徴、整数、成分、またはステップの存在を詳述することを意図するものであるが、これらは1以上の他の特徴、整数、成分、ステップ、またはこれらのグループの存在または追加を除外するものではない。さらに、いくつかの変更形態および変形が当業者には容易に思い浮かぶので、前に記載した通りの構造および方法に本発明を制限することは望ましくない。したがって、あらゆる適切な変更形態および均等物が、頭記の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内のものであってよい。
【0056】
(配列表)
Figure 0004436039
Figure 0004436039
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Figure 0004436039
Figure 0004436039

【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の制限型多重増幅法の概略図である。
【図2】 a〜dは、例1および2における実験の結果を示す、アガロースゲルを示す図である。
【図3】 例1〜3における実験の結果を示す、アガロースゲルを示す図である。

Claims (13)

  1. (a)サンプルを、反応プラトーに達する前に消費されるような有効濃度の少なくとも2つのプライマー対と接触させる、
    (b)サンプルを予備増幅する、
    (c)前記予備増幅したサンプルを少なくとも2つの別々の容器に分割する、および
    (d)前記プライマー対の1つ又は該プライマー対の1つの中に収まっている(nested)プライマー対を前記予備増幅したサンプルに加えて前記分割したサンプルを増幅する、
    ことからなる増幅法によって、核酸のサンプル中に含有される多数の核酸配列標的を同時に増幅する方法であって、前記予備増幅ステップ及び前記予備増幅後の増幅ステップをポリメラーゼ連鎖反応又は等温法を使用して行う上記方法。
  2. 前記サンプルがDNAである請求項1記載の方法。
  3. 前記サンプルがRNAである請求項1記載の方法。
  4. 15〜40個のプライマー対を前記サンプルと接触させる請求項1記載の方法。
  5. 前記予備増幅が標的を100〜1000倍だけ増加させる請求項1記載の方法。
  6. 前記予備増幅させたサンプルを、使用するプライマー対の数と等しいいくつかの部分に分割する請求項1記載の方法。
  7. サンプルが高親和性固相マトリックスに不可逆的に結合している請求項1記載の方法。
  8. サンプルが水性環境中で固相に結合していない請求項1記載の方法。
  9. 多数の核酸標的を同時に増幅する方法であって、
    (a)反応プラトーに達する前に消費されるような有効濃度の少なくとも2つのプライマー対を核酸標的と接触させる、
    (b)前記標的を100〜1000倍に予備増幅する、
    (c)前記予備増幅させた標的を別々の反応容器に分割することであって、使用する前記容器の数がプライマー対の数と等しい、
    (d)前記プライマー対の1つ又は該プライマー対の1つの中に収まっている(nested)プライマー対を接触させることにより、前記予備増幅させた標的を増幅する、
    ことからなり、前記予備増幅ステップ及び前記予備増幅後の増幅ステップをポリメラーゼ連鎖反応又は等温法を使用して行う上記方法。
  10. 核酸標的がDNAポリヌクレオチドであって、ポリメラーゼがDNAポリメラーゼである請求項9記載の方法。
  11. 前記標的が水溶液中に存在する請求項9記載の方法。
  12. 前記標的が固相マトリックスに不可逆的に結合している請求項9記載の方法。
  13. 段階(a)における、前記プライマー対の濃度が1000倍以下の増幅に制限される濃度である、請求項1又は9に記載の方法。
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