ところで、特許文献1においては、半導体レーザー素子101から出射される光束の中心部が、遮光部材106および受光素子107にて遮光されるので、光軸付近の光強度を落とした光を光ディスク105に照射することができる。その結果、光ディスク105上に照射される光のスポットの径を絞ることができ、高密度記録に対応した、いわゆる超解像効果を得ることができる。
しかし、上記光束の中心部は、遮光部材106および受光素子107によって完全に遮光されるので、光ディスク105に照射される光は、常に、光軸付近の光強度がゼロとなった光である。したがって、特許文献1の構成では、超解像効果を可変にすることができない。
また、カップリングレンズ102とビームスプリッタ103との間の光路中に受光素子107が配設されるので、受光素子107に入射する光の光量は、受光素子107の受光面の面積を変えない限り一定である。つまり、上記受光面の面積を変えない限り、受光素子107でのモニタ光量を可変にすることもできない。
一方、特許文献2においては、レーザーダイオード201から出射されるレーザー光の偏光方向(振動方向)と1/2波長板202の結晶光学軸とのなす角度を適切に設定することにより、PBS203の反射面203aに入射するレーザー光を、その反射面203aにて、所定の光強度を持つ2つのレーザー光に分離することができる。したがって、反射面203aを構成する光学多層膜の波長依存性に影響されることなく、反射面203aに入射するレーザー光を所定の透過率で透過させて、フロントモニタ204でのモニタ光として活用することができる。
しかし、特許文献2の構成では、PBS203を介して光ディスクに照射される光の強度を、光軸付近だけ落とすように調整することはできない。その結果、上述した超解像効果を得ることができず、ましてや超解像効果を可変にすることもできない。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、超解像効果を可変にすることができるとともに、モニタ用の検出器の受光面の面積を変えずにモニタ光量を可変にすることができる光強度変調素子と、その光強度変調素子を備えた光ピックアップとを提供することにある。
本発明の光強度変調素子は、光源からの光束を、その強度分布を変化させて対物レンズに導く光強度変調素子であって、上記光束を、その中心部を含む第1の光束と、残りの第2の光束とに分離するとともに、上記第1の光束をさらに透過および反射によって異なる方向に分岐させ、分岐された上記第1の光束の一方と上記第2の光束とを上記対物レンズに導く光束分岐素子で構成されており、上記光束分岐素子は、上記第1の光束のみ、その偏光状態を変化させる偏光変換部と、上記偏光変換部を介して得られる上記第1の光束と、上記第2の光束との合成光束を、偏光状態に応じて分離する偏光分離部とを有していることを特徴としている。
なお、上記第1の光束としては、少なくとも光源光束の光軸を含む光束であればよく、光源光束の周辺部を一部含んでいてもよい。つまり、上記第1の光束の断面形状は、光軸を中心とする円形には限られない。
上記の構成によれば、光束分岐素子によって、光源光束が第1の光束と第2の光束とに分離されるとともに、第1の光束がさらに透過および反射によって異なる方向に分岐される。そして、分岐された第1の光束の一方と第2の光束とが、光束分離素子から対物レンズに導かれる。これにより、対物レンズを介して光ディスクに照射される光束は、光束分岐素子にて対物レンズ方向とは異なる方向に分岐された光束(第1の光束の一部)を含まない分、その強度分布が変化する。つまり、光ディスクに照射される光束は、光束分岐素子に入射した光束の光軸付近の光強度が低下したような強度分布を持つ。このような強度分布を実現することにより、光ディスク上に集光される光のスポット径を絞ることができ、高密度記録に対応可能な超解像効果を得ることができる。
また、光束分岐素子は、第1の光束をさらに透過および反射によって分岐させるので、光束分岐素子を透過する光の光量(強度)または光束分岐素子にて反射される光の光量(強度)を調整可能とする構成を容易に実現することができる。したがって、このような光量調整により、例えば光軸付近の光強度の低下の度合いを何通りにも変化させて、対物レンズを介して光ディスクに導かれる光束の強度分布を何通りにも変化させることができる。その結果、光ディスクに照射される光のスポット径を調整して、超解像効果を可変にすることができる。
また、上記の光量調整により、光束分岐素子を介して対物レンズ方向とは異なる方向に分岐される光の光量も変化するので、その光をモニタ光として活用すれば、モニタ用の検出器の受光面の面積を変えずに、モニタ光の光量を可変にすることができる。
ここで、上記光束分岐素子は、(1)上記第1の光束のみ、その偏光状態を変化させる偏光変換部(例えば位相板(位相差フィルムを含む))と、(2)上記偏光変換部を介して得られる上記第1の光束と、上記第2の光束との合成光束を、偏光状態に応じて分離する偏光分離部(例えば偏光ビームスプリッタ)とを有している。
この構成では、偏光変換部により、第1の光束のみ、その偏光状態が例えば直線偏光から楕円偏光に変換される。そして、偏光状態の変化した第1の光束と、第2の光束との合成光束が、偏光分離部によって、その偏光状態に応じて分離される。例えば、合成光束において、光源光束の偏光方向(振動方向)と同じ方向の成分は、偏光分離部にて例えば反射されて対物レンズ方向に向かう。一方、合成光束において、光源光束の偏光方向と垂直な方向の成分は、偏光分離部を例えば透過して対物レンズとは異なる方向に向かう。
このとき、偏光変換部によって、第1の光束のみ、その偏光状態が変化するので、偏光分離部では、合成光束の中でも特に第1の光束が、その偏光状態に応じて対物レンズ方向とこれとは異なる方向とに分離される。一方、第2の光束は、光源光束の偏光状態を維持しているので(偏光方向が光源光束と同じであるので)、第2の光束自体は偏光分離部にて分離されずに対物レンズ方向に出射される。
このように、偏光分離部からは、第1の光束の一部と第2の光束とを対物レンズ方向に出射させることができるので、偏光分離部から対物レンズを介して光ディスクに照射される光の光軸付近の光強度を低下させることができる。しかも、上記光の光軸付近の光強度は、偏光変換部における偏光状態の変化の度合いに応じて調整することができる。その結果、上記構成によれば、超解像効果およびモニタ光量の両者を容易に可変にすることができる。
特に、偏光変換部が、上記第1の光束の偏光状態を直線偏光から楕円偏光に変換する構成とすれば、上記楕円偏光は、光源光束の偏光方向と同じ方向の成分と、上記偏光方向とは垂直な方向の成分とを持つので、楕円偏光の状態に応じて光軸付近の光強度を変化させながら、上記合成光束を対物レンズ方向とこれとは異なる方向とに確実に分離することができる。その結果、超解像効果およびモニタ光量の両者を確実に可変にすることができる。
また、上記偏光変換部は、上記第1の光束の偏光状態を、上記第1の光束の偏光方向とは異なる直線偏光に変換する構成であってもよい。このような偏光変換部としては、例えば1/2波長板や旋光板を考えることができる。この構成であっても、光源光束の偏光方向と同じ方向の成分と、上記偏光方向とは垂直な方向の成分とを持つ直線偏光を得ることができるので、変換後の偏光状態に応じて光軸付近の光強度を変化させながら、上記合成光束を対物レンズ方向とこれとは異なる方向とに確実に分離することができる。その結果、超解像効果およびモニタ光量の両者を確実に可変にすることができる。
また、上記光束分岐素子は、上記第2の光束の位相を調整する位相調整部をさらに有している構成であってもよい。このような位相調整部での位相調整により、偏光変換部を介して得られる第1の光束と、偏光変換部に入射しない第2の光束との間で、位相ずれが生じるのを抑えることができる。その結果、第1の光束と第2の光束との合成光束の波面が乱れるのを抑えることができる。
ここで、上記偏光変換部および上記位相調整部は、入射光束の光軸に垂直な平面上で隣接して形成されていることが望ましい。この場合、偏光変換部および位相調整部を一体形成によって容易に得ることができる。
また、上記偏光変換部および上記位相調整部は、位相板でそれぞれ構成されていることが望ましい。つまり、上記偏光変換部および上記位相調整部の光学軸は、入射光束の光軸に垂直な面内にあり、上記位相調整部の光学軸は、入射光束の偏光方向と平行であり、上記偏光変換部の光学軸は、入射光束の偏光方向に対して傾いていることが望ましい。
このように、偏光変換部および位相調整部を上述した位相板で構成することにより、第1の光束の偏光状態を変化させる機能を偏光変換部に確実に持たせることができるとともに、第2の光束の位相を調整する機能を位相調整部に確実に持たせることができる。
また、上記偏光変換部は、位相板(例えば位相差フィルム)で構成されているとともに、上記偏光分離部と接着剤を介して接着されており、上記接着剤は、上記位相板における常光線の屈折率または異常光線の屈折率と同等の屈折率を有している構成であってもよい。
この構成では、第2の光束の位相を調整する手段(例えば位相板)を設けなくても、偏光変換部を介して得られる第1の光束と、第2の光束との間で位相ずれをほとんど生じさせることなく、これらの光束を接着剤を介して偏光分離部に入射させることができる。したがって、上記の調整手段を設けなくても、上記光束の波面が乱れるのを抑えることができる。
また、上記偏光変換部は、旋光板で構成されていても構わない。旋光板は、入射する直線偏光を、その偏光方向を回転させて出射させるので、光源光束の偏光方向と同じ方向の成分と、上記偏光方向とは垂直な方向の成分とを持つ直線偏光を得ることができる。したがって、旋光板での偏光方向の回転角に応じて光軸付近の光強度を変化させながら、上記合成光束を対物レンズ方向とこれとは異なる方向とに確実に分離することができる。その結果、超解像効果およびモニタ光量の両者を確実に可変にすることができる。
また、本発明の光ピックアップは、光を出射する光源と、上記光源からの光束の強度分布を変化させる光強度変調素子と、上記光強度変調素子を介して得られる光を光ディスク上に集光させる対物レンズとを備えた光ピックアップであって、上記光強度変調素子は、上述した本発明の光強度変調素子で構成されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、光源からの出射光は、その強度分布が光強度変調素子にて変化され、対物レンズによって光ディスク上に集光される。このとき、上記光強度変調素子が、上述した本発明の光強度変調素子で構成されているので、超解像効果およびモニタ光量の両者を可変にできるなどの上述した効果を得ることができる。
また、本発明の光ピックアップは、上記光源から出射される光の出力を制御するためのモニタ用検出器をさらに備え、上記モニタ用検出器は、上記光強度変調素子にて上記対物レンズの方向とは異なる方向に分岐された光を受光し、その受光量に基づいて上記光源の光出力を制御する構成であってもよい。
上述したように、光強度変調素子にて対物レンズとは異なる方向に分岐された光をモニタ光として用いれば、上記光強度変調素子にてモニタ光量を可変にできるので、光ディスクの記録再生に支障を生じさせることなく、モニタ用検出器での光源の光出力の制御を適切に行うことができる。
本発明によれば、光強度変調素子を構成する光束分岐素子は、第1の光束を透過および反射によって分岐させるとともに、上記偏光変換部と上記偏光分離部とを有しているので、光束分岐素子を透過する光の光量(強度)または光束分岐素子にて反射される光の光量(強度)を調整可能とする構成を容易に実現することができる。したがって、このような光量調整により、対物レンズを介して光ディスクに導かれる光束の強度分布を、例えば光軸付近の光強度が低下するように何通りにも変化させることができる。その結果、光ディスクに照射される光のスポット径を調整して、超解像効果を可変にすることができる。
また、上記の光量調整により、光束分岐素子を介して対物レンズ方向とは異なる方向に分岐される光の光量も変化するので、その光をモニタ光として活用すれば、モニタ用の検出器の受光面の面積を変化させずに、モニタ光の光量を可変にすることができる。
〔実施の形態1〕
(1.光ピックアップの構成)
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図2は、本実施形態の光ピックアップの概略の構成を示す説明図である。この光ピックアップは、第1の光源部1と、第2の光源部2と、ダイクロイックプリズム3と、立ち上げミラー4と、1/4波長板6と、対物レンズ7とを有している。
第1の光源部1は、光源11と、光束分岐素子12と、コリメータレンズ13と、受光素子14と、モニタ用検出器15とで構成されている。
光源11は、光ビームとして、例えば波長405nmのレーザー光(青色レーザー)を出射する。光束分岐素子12は、光源11から出射された直線偏光のレーザー光を、対物レンズ7の方向とこれとは異なる方向(例えばモニタ用検出器15の方向)とに分離するものである。この光束分岐素子12は、具体的には、位相板16と、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと略称する)17とで構成されており、光源11からの光束を、その強度分布を変化させて対物レンズ7に導く光強度変調素子を構成しているが、その詳細については後述する。
コリメータレンズ13は、PBS17を介して入射するレーザー光を平行光にする。受光素子14は、PBS17を介して入射する光ディスクDからの戻り光を受光する。受光素子14での受光により、青色レーザーに対応した高密度記録の光ディスクの記録再生時に、サーボ信号(フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号)、情報信号、収差信号等が検出される。
モニタ用検出器15は、光源11からの出射光のうち、光束分岐素子12にて対物レンズ7の方向とは異なる方向に分岐された光を受光し、その受光量に基づいて光源11の光出力を制御するものであり、例えばフォトダイオードと制御部とで構成されている。本実施形態では、光源11から前方(光ディスクDに向かう方向)に出射されたレーザー光を、光束分岐素子12を介してモニタ用検出器15にてモニタするので、フロントモニタ方式となっている。
第2の光源部2は、光源21と、光束分岐素子22と、コリメータレンズ23と、受光素子24と、モニタ用検出器25とで構成されている。
光源21は、光ビームとして、例えば波長660nm(DVD用)のレーザー光と、波長785nm(CD用)のレーザー光とを出射する。すなわち、光源21は、2波長のレーザー光を出射する光源である。光束分岐素子22は、光源21から出射された直線偏光のレーザー光を、対物レンズ7の方向とこれとは異なる方向(例えばモニタ用検出器25の方向)とに分離するものである。この光束分岐素子22は、具体的には、位相板26と、PBS27とで構成されており、光源21からの光束を、その強度分布を変化させて対物レンズ7に導く光強度変調素子を構成しているが、その詳細については後述する。
コリメータレンズ23は、PBS22を介して入射するレーザー光を平行光にする。受光素子24は、PBS22を介して入射する光ディスクDからの戻り光を受光する。受光素子24での受光により、DVDやCDの記録再生時に、サーボ信号(フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号)、情報信号、収差信号等が検出される。
モニタ用検出器25は、光源21からの出射光のうち、光束分岐素子22にて対物レンズ7の方向とは異なる方向に分岐された光を受光し、その受光量に基づいて光源21の光出力を制御するものであり、例えばフォトダイオードと制御部とで構成されている。本実施形態では、光源21から前方(光ディスクDに向かう方向)に出射されたレーザー光を、光束分岐素子22を介してモニタ用検出器25にてモニタするので、フロントモニタ方式となっている。
ダイクロイックプリズム3は、第1の光源部1から供給されるレーザー光を反射させて立ち上げミラー4に導くとともに、第2の光源部2から供給されるレーザー光を透過させて立ち上げミラー4に導く。つまり、ダイクロイックプリズム3は、異なる方向から入射する各レーザー光の進行方向を同一方向にして出射する光路変換素子である。
立ち上げミラー4は、光源11・21と光ディスクDとの間、より詳細にはダイクロイックプリズム3と対物レンズ7との間の光路中に配置され、入射光を反射させることにより、入射光の光路を折り曲げる機能を有している。
1/4波長板6は、立ち上げミラー4にて反射された直線偏光を円偏光に変換する一方、光ディスクDからの戻り光(円偏光)を直線偏光に変換する。対物レンズ7は、立ち上げミラー4にて反射され、1/4波長板6を介して得られる光を光ディスクD上に集光させる。
上記の構成において、光源11から出射された直線偏光のレーザー光のうち、その偏光方向と同じ偏光方向の成分(例えばS偏光)は、光束分岐素子12にて反射されてコリメータレンズ13に入射する一方、入射光の偏光方向とは垂直方向の成分(例えばP偏光)は、光束分岐素子12を透過してモニタ用検出器15に入射し、そこでモニタされる。コリメータレンズ13で平行光となったレーザー光は、ダイクロイックプリズム3にて反射されて立ち上げミラー4に入射する。
一方、光源21から出射された直線偏光のレーザー光のうち、その偏光方向と同じ偏光方向の成分(例えばS偏光)は、光束分岐素子22にて反射されてコリメータレンズ23に入射する一方、入射光の偏光方向とは垂直方向の成分(例えばP偏光)は、光束分岐素子22を透過してモニタ用検出器25に入射し、そこでモニタされる。コリメータレンズ23で平行光となったレーザー光は、ダイクロイックプリズム3を透過して立ち上げミラー4に入射する。
立ち上げミラー4に入射したレーザー光は、そこで反射されて1/4波長板6に入射し、1/4波長板6にて円偏光に変換された後、対物レンズ7によって光ディスクD上に集光される。
光ディスクDからの戻り光は、再び対物レンズ7を介して1/4波長板6に入射し、ここで直線偏光(例えばP偏光)に変換された後、立ち上げミラー4にて反射されてダイクロイックプリズム3に入射する。このとき、戻り光が光源11から出射されたレーザー光の戻り光であれば、ダイクロイックプリズム3に入射した戻り光はダイクロイックプリズム3にて反射され、コリメータレンズ13を介して光束分岐素子12のPBS17に入射し、PBS17を透過して受光素子14にて受光される。
一方、上記戻り光が光源21から出射されたレーザー光の戻り光であれば、ダイクロイックプリズム3に入射した戻り光はダイクロイックプリズム3を透過し、コリメータレンズ23を介して光束分岐素子22のPBS27に入射し、PBS27を透過して受光素子24にて受光される。
(2.光束分岐素子の詳細について)
次に、光束分岐素子12・22の詳細について説明する。なお、光束分岐素子12・22の基本的な構造は同じであるため、以下では、光束分岐素子12について説明することとし、光束分岐素子22についての説明も兼ねることとする。
図1は、光束分岐素子12の概略の構成を模式的に示す説明図である。光束分岐素子12は、上述したように、位相板(波長板)16と、PBS17とで構成されている。なお、図1では、入射光束の偏光方向および位相板16の光学軸の方向を、実線の矢印で示している。また、本実施形態では、位相板16とPBS17とを離間させているが、これらを密着させても構わない。図2における光束分岐素子22、位相板26およびPBS27は、図1の光束分岐素子12、位相板16およびPBS17とそれぞれ対応している。
位相板16は、光源11(図2参照)とPBS17との間に配置されており、位相板16aと、2枚の位相板16bとで構成されている。これら位相板16aおよび2枚の位相板16bは、入射光束の光軸に垂直な平面上で、位相板16aを2枚の位相板16bが両側から挟むように隣接して形成されている。これにより、光源11からの光束のうち、その中心部を含む第1の光束A(光軸を含む光束)は、位相板16aに入射し、上記光束の残りである第2の光束Bは、それぞれの位相板16bに入射することになる。このことから、位相板16は、光源光束を、その入射位置によって第1の光束Aと第2の光束Bとに分離する機能を有しているとも言える。
位相板16aの光学軸は、入射光束の光軸に垂直な面内にあり、かつ、入射光束の偏光方向に対して傾いている。これにより、第1の光束Aが位相板16aに入射したとき、第1の光束Aは、位相板16aにて、その偏光状態が直線偏光から楕円偏光に変換されてPBS17の方向に出射される。したがって、位相板16aは、光源11からの光束の中心部を含む第1の光束Aの偏光状態を楕円偏光に変化させる偏光変換部を構成していると言える。
なお、入射光束の偏光方向に対する位相板16aの光学軸の傾き角を調整することにより、その傾き角に応じた楕円偏光を得ることができる。また、位相板16aが例えば1/2波長板として作用する場合、位相板16aの光学軸と入射光の偏光方向とのなす角度をθとすると、入射光の偏光方向は、入射状態に対して2θだけ傾いた直線偏光に変換される。したがって、この場合、位相板16aは、第1の光束Aの偏光状態を、その偏光方向とは異なる直線偏光に変換する偏光変換部として機能する。
一方、位相板16bの光学軸(高速軸および低速軸)は、入射光束の光軸に垂直な面内にあり、かつ、入射光束の偏光方向と平行および垂直である。これにより、第2の光束Bが位相板16bに入射すると、第2の光束Bは偏光方向が変化せずに、その位相だけが変化する。したがって、位相板16bは、第2の光束Bの位相を調整する位相調整部を構成していると言える。このような位相板16bを設けることにより、位相板16aを介して得られる第1の光束Aと、位相板16bを介して得られる第2の光束Bとの位相ずれを小さくすることができ、第1の光束Aと第2の光束Bとの合成光束の波面が乱れるのを抑えることができる。
上記構成の位相板16は、以下のようにして製造することができる。例えば図3に示すように、位相板16a・16bの光学軸が所定の方向となるように、平板状の位相板16aを2枚の平板状の位相板16bで挟み、これをカッター41で所定の厚さにスライスすることにより、位相板16を得ることができる。
PBS17は、位相板16を介して得られる光のうち、位相板16への入射光と同じ偏光方向の光(例えばS偏光)を反射させて対物レンズ7の方向に導く一方、位相板16への入射光と偏光方向が垂直な光(例えばP偏光)を透過させてモニタ用検出器15に導く。つまり、PBS17は、位相板16aを介して得られる第1の光束Aと、位相板16bを介して得られる第2の光束Bとの合成光束を、その偏光状態に応じて異なる方向に分離する偏光分離部を構成している。
次に、上記構成の光束分岐素子12における光の光路について説明する。
図4は、位相板16bに入射する第2の光束Bの光路を示している。同図に示すように、2本の第2の光束B(S偏光)は、それぞれの位相板16bに入射するが、位相板16bでは偏光方向が変化しないので、入射時の偏光状態と同じ偏光方向を維持したまま位相板16bから出射され、PBS17に入射する。PBS17に入射した光(S偏光)は反射されて、コリメータレンズ13(図2参照)を介して対物レンズ7の方向に向かう。すなわち、第2の光束Bは、全て光束分岐素子12にて反射されて対物レンズ7の方向に向かう。
一方、図5は、位相板16aに入射する第1の光束Aの光路を示している。同図に示すように、第1の光束A(S偏光)は、位相板16aに入射するとそこで直線偏光から楕円偏光に変換される。この楕円偏光のうち、位相板16aへの入射光と偏光方向が同じ成分(S偏光)は、PBS17にて反射され、コリメータレンズ13(図2参照)を介して対物レンズ7の方向に向かう。一方、楕円偏光のうち、位相板16aへの入射光と偏光方向が垂直な成分(P偏光)は、PBS17を透過し、モニタ用検出器15に入射する。
このように、本実施形態の光束分岐素子12が位相板16aとPBS17とを有していることにより、位相板16aを介して得られる第1の光束Aの一部がPBS17を透過し、対物レンズ7の方向とは異なる方向に分離されるので、対物レンズ7を介して光ディスクDに照射される光の強度分布は、第1の光束Aの一部が抜ける分だけ、最終的には図1のように光軸付近の光強度を低下させたような強度分布となる(黒塗り部分が強度低下分)。したがって、光束分岐素子12を介して光ディスクD上に集光される光のスポットを光ディスクDの半径方向または周方向に絞ることができ、高密度の記録再生にも対応できる、いわゆる超解像効果を得ることができる。
また、位相板16aにおける楕円偏光への偏光状態は、上述したように位相板16aの光学軸の傾き角を変化させることで容易に調整することができる。したがって、そのような偏光状態の調整により、PBS17を透過する第1の光束Aの光量(強度)を調整することができるので、モニタ用検出器15に入射する光(モニタ光)の光量を可変にすることができる。さらに、PBS17を透過する第1の光束Aの光量の調整により、結果的に、PBS17にて反射されて光ディスクDに導かれる残りの第1の光束Aの光量(強度)も調整されることになるので、光ディスクDに照射される光の光軸付近の強度の低下のさせ方を様々に調整することができる。その結果、上述した超解像効果を可変にすることができる。
このような作用効果を奏することから、本実施形態の光束分岐素子12は、光源光束を、その中心部を含む第1の光束Aと、残りの第2の光束Bとに分離するとともに、第1の光束Aをさらに透過および反射によって異なる方向に分岐させ、分岐された第1の光束Aの一方と第2の光束Bとを対物レンズ7に導く機能を有していると言うことができる。
ところで、本実施形態では、光源11から位相板16に入射する光束がS偏光である場合について説明したが、上記光束はP偏光であってもよい。例えば図6は、光源11から位相板16に入射する光束がP偏光である場合の光ピックアップの概略の構成を示している。この場合、PBS17に対する光源11、受光素子14、モニタ用検出器15および位相板16の配置が図2とは異なるだけであり、この構成であっても本実施形態と同様の効果が得られることに変わりはない。
また、本実施形態では、偏光変換部として位相板16aを用いた例について説明したが、旋光板を用いてもよい。旋光板は、入射する直線偏光の偏光方向を回転させることができるので、その回転角に応じてモニタ用検出器15に入射する光(モニタ光)の光量および超解像効果を可変にすることができる。このような旋光板としては、例えばTN(Twisted Nematic)液晶、旋光性液晶、旋光子フィルムを用いることができる。
また、本実施形態では、第2の光束Bの位相を調整する位相板16bを設け、位相板16aを介して得られる第1の光束Aと、位相板16bを介して得られる第2の光束Bとの位相ずれを抑えるようにしているが、例えば図7の構成を採用することにより、位相板16bに対応する位相板を設けることなく、上記両光束の位相ずれをなくすことができる。
図7は、光束分岐素子12の他の構成を示す説明図である。この光束分岐素子12は、平面基板18上に形成される位相差フィルム19(位相板)と、PBS17とを、接着剤20を介して接着して構成されている。
位相差フィルム19は、延伸などにより作成される屈折率異方性のある高分子フィルムであり、位相板16aと同等の機能を有している。なお、位相差フィルム19の代わりに水晶などの薄板を用いてもよい。位相差フィルム19は、接着剤20で覆われるように平面基板18上に形成されている。これにより、光源光束の第1の光束Aのみが位相差フィルム19に入射する一方、第2の光束Bは位相差フィルム19に入射せずにその周囲の接着剤20に入射する。
接着剤20は、例えば紫外線硬化型樹脂、熱硬化型のエポキシ系樹脂、アクリル系の接着剤で構成可能である。図7の構成では、接着剤20として、位相差フィルム19における常光線の屈折率noまたは異常光線の屈折率neと同等の屈折率を有しているものを用いている。これにより、位相差フィルム19のある部分とない部分とで屈折率差による光学的な長さが変わらないようにすることができ、PBS17に入射する光の波面が乱れるのを抑えることができる。
なお、位相差フィルム19が一般的なポリカーボネートを主成分とする材料で構成されている場合、その屈折率noおよびneの値は製法などにより異なるが、屈折率noはおよそ1.590であり、屈折率neはおよそ1.592程度と思われる(屈折率差Δn=0.002程度)。また、位相差フィルム19が液晶性ポリマーで構成される場合、屈折率noおよびneとして、それぞれ1.510、1.620程度(屈折率差Δn=0.11)を実現することが可能である。
接着剤20の屈折率を位相差フィルム19の屈折率noまたはneと整合させることにより、位相差フィルム19のある部分とない部分とで屈折率差による光学的な長さが変わらないようにするためには、接着剤20の屈折率と、位相差フィルム19の屈折率noまたはneとの差は、Δnよりも小さくなることが必要であり、具体的には1/100以上1/1000以下にする必要があると考えられる。
また、図7のように位相差フィルム19を使用すると、結晶性の位相板で問題となる厚さの誤差の問題がほとんど生じず、複数の波長に対する位相差の制御も容易であるという利点がある。
より詳細には、結晶性の位相板の場合、位相差δは、δ=2πΔn・d/λで表される。なお、Δnは、異常光線と常光線との屈折率差(ne−no)を示し、dは位相板の厚さを示す。例えば水晶の屈折率差Δnは0.009程度であるので、厚さ0.5mm(500μm)の位相板では、位相差δは9波長分(波長0.5μm)に相当する(マルチオーダー)。したがって、位相板の厚さdのわずかな違いで位相差δが大きく変化する。これに対して、位相差フィルムでは、シングルオーダーであり、位相差の誤差の影響はほとんど生じない。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図8は、本実施形態の光ピックアップの概略の構成を示す説明図である。この光ピックアップは、実施の形態1の図6の構成と以下の点で異なっており、それ以外は図6の構成と同様である。すなわち、本実施形態では、図6の立ち上げミラー4の代わりに立ち上げミラー4’を配置している。そして、第1の光源部1および第2の光源部2において、位相板16・26およびモニタ用検出器15・25を削除し、その代わりに、立ち上げミラー4’の後方にモニタ用検出器5を配置している。
立ち上げミラー4’は、光源11・21からの光束を、対物レンズ7の方向に向かう光束と、これとは異なる方向に向かう光束とに分岐させる光束分岐素子であるが、その詳細については後述する。
モニタ用検出器5は、各光源11・21から出射されるレーザー光の一部を受光するものであり、例えばフォトダイオードと制御部とで構成されている。本実施形態では、モニタ用検出器5は、立ち上げミラー4’にて対物レンズ7の方向とは異なる方向に分岐された光(例えば立ち上げミラー4’を透過した光)を受光し、その受光量に基づいて光源11・21の光出力を制御する。したがって、本実施形態においても、各光源11・21から前方(光ディスクDに向かう方向)に出射されたレーザー光を、立ち上げミラー4’を介してモニタ用検出器5にてモニタするので、フロントモニタ方式となっている。
本実施形態の構成では、光源11から出射された直線偏光のレーザー光のうち、例えばP偏光はPBS17を透過してコリメータレンズ13に入射する。そして、コリメータレンズ13で平行光となったレーザー光は、ダイクロイックプリズム3にて反射されて立ち上げミラー4’に入射する。一方、光源21から出射された直線偏光のレーザー光のうち、例えばP偏光はPBS27を透過してコリメータレンズ23に入射する。そして、コリメータレンズ23で平行光となったレーザー光は、ダイクロイックプリズム3を透過して立ち上げミラー4’に入射する。
立ち上げミラー4’では、光源11・21から出射されるレーザー光の一部がモニタ用検出器5に導かれ、モニタ用検出器5でモニタされる。一方、光源11・21から出射されるレーザー光の残りは、立ち上げミラー4’にて反射され、1/4波長板6によって円偏光とされた後、対物レンズ7によって光ディスクD上に集光される。
光ディスクDからの戻り光は、再び対物レンズ7を介して1/4波長板6に入射し、ここで直線偏光(例えばS偏光)に変換された後、立ち上げミラー4’に入射し、立ち上げミラー4’にて反射されてダイクロイックプリズム3に入射する。このとき、戻り光が光源11から出射されたレーザー光の戻り光であれば、ダイクロイックプリズム3に入射した戻り光はダイクロイックプリズム3にて反射され、コリメータレンズ13を介してPBS17に入射する。PBS17では、入射した戻り光が反射され、受光素子14にて受光される。
一方、上記戻り光が光源21から出射されたレーザー光の戻り光であれば、ダイクロイックプリズム3に入射した戻り光はダイクロイックプリズム3を透過し、コリメータレンズ23を介してPBS27に入射する。PBS27では、入射した戻り光が反射され、受光素子24にて受光される。
次に、立ち上げミラー4’の詳細について説明する。
図9は、本実施形態の立ち上げミラー4’の概略の構成を模式的に示す平面図であり、図10は、立ち上げミラー4’の入射光の強度分布と反射光の強度分布とを模式的に示す説明図である。立ち上げミラー4’は、光学特性(例えば反射特性)の互いに異なる第1の領域31と第2の領域32とを有しており、反射光学素子を構成している。なお、図9では、第1の領域31と第2の領域32とを明確に区別する目的で、第1の領域31を黒塗りで示している(図13でも同様)。
第1の領域31は、光源11・21から出射されるレーザー光の一部をモニタ用検出器5に導く領域であり、本実施形態では、入射光を所定の透過率で透過させる透過領域となっている。この第1の領域31は、ガラス基板4a上で第2の領域32の内部(内側)で、かつ、光源11・21から出射されるレーザー光の光軸と交わる平面内で、その光軸中心を含む1個のスポット状に形成されている。これにより、第1の領域31は、光源光束の中心部を所定の透過率で透過させることができる。この第1の領域31は、例えば、透明基板であるガラス基板4a上に一般的な反射防止膜(AR(Anti Reflection)膜)を成膜することで形成可能であるが、図10に示すように、ガラス基板4a上に反射防止膜を設けずに光を素通しにする、つまり、ガラス基板4aのみで第1の領域31を形成することも可能である。
図11は、第1の領域31の分光反射率を示している。第1の領域31では、波長405nm、660nm、785nm付近での光の反射率が2%以下と低く設定されており、これらの波長のレーザー光を透過させてモニタすることが可能となっている。
一方、第2の領域32は、光源11・21から出射されるレーザー光の残り(例えば光源光束の周辺部)を光ディスクDに導く領域である。図9において、第2の領域32の外縁を表す線は、立ち上げミラー4’に入射するレーザー光の光束の外縁を表している。この第2の領域32は、入射光を所定の反射率で反射させる反射領域となっており、本実施形態では、ガラス基板4a上に反射膜としての誘電体多層膜32aを成膜することで形成されている。なお、ガラス基板4a上に誘電体多層膜32aと金属膜とを複合して形成することで第2の領域32を形成してもよい。
図12は、第2の領域32の分光反射率を示している。このように、第2の領域32では、波長405nm、660nm、785nm付近での光の反射率が96%以上に設定されている。これにより、第2の領域32に入射した上記各波長のレーザー光は、第2の領域32にてほとんど反射されて光ディスクDに向かい、光ディスクDの記録再生に供される。
ここで、第2の領域32の反射膜が例えばアルミニウムのみで形成されると、反射率が93%程度しかとれず、反射が弱い(反射光の強度が低い)。また、第2の領域32の反射膜が例えば銀で形成されれば、長期使用に伴って腐食の進行が早いので、信頼性の面で劣る。したがって、第2の領域32の反射膜が、少なくとも誘電体多層膜32aを含んで形成されることで、長期使用による腐食の心配がほとんどなく、信頼性の高い立ち上げミラー4’を実現することができる。
以上のように、ガラス基板4a上には、上述した特性の第1の領域31および第2の領域32が形成されていることから、立ち上げミラー4’は、反射特性の互いに異なる複数の領域が同一平面上に形成されている構成であると言うことができる。
上記の構成において、光源11・21から出射される光束の中心部は、第1の領域31を所定の透過率で透過する。第1の領域31を透過した光は、モニタ用検出器5にてモニタされる。また、上記光束の中心部のうち、第1の領域31で反射された光は、対物レンズ7方向に向かう。一方、光源11・21から出射される光束の周辺部は、第2の領域32にて所定の反射率で反射されて対物レンズ7方向に向かう。対物レンズ7方向に向かう上記両者の光は、対物レンズ7を介して光ディスクDに照射される。
このように、立ち上げミラー4’では、反射特性の互いに異なる複数の領域(第1の領域31および第2の領域32)が同一平面上に形成されているので、立ち上げミラー4’を介して光ディスクDに導かれるレーザー光のうち、その光軸付近の光を、第1の領域31を介してモニタ用検出器5の方向に抜く(所定の透過率で透過させる)ことができる。これにより、光ディスクDに照射されるレーザー光の強度を光軸付近だけ落とすことができる。このとき、立ち上げミラー4’にて反射された光の強度分布は、図10に示すように、ガウス分布となっている入射光の強度分布の光軸付近の強度を若干低下させたような分布となる。この結果、立ち上げミラー4’を介して光ディスクD上に集光される光のスポットを光ディスクDの半径方向および周方向により絞ることができ、高密度の記録再生にも対応できる、いわゆる超解像効果を得ることができる。
また、光ディスクD上の光スポットをより絞ることができるので、例えば対物レンズ7等に多少の設計誤差がある場合でも、光ディスクDに適切な径の光スポットを当てることができ、光ディスクDの記録再生を確実に行うことができる。つまり、光ピックアップを構成する光学素子の設計誤差を、立ち上げミラー4’の上記設計によって吸収することができる。
以上のような超解像効果が得られることから、図9および図10の立ち上げミラー4’は、光源11・21からの光束の中心部を所定の透過率で透過させる第1の領域31と、上記光束の周辺部を所定の反射率で反射させて対物レンズ7に導く第2の領域32とが同一平面(ガラス基板4a)上に形成された反射光学素子であり、かつ、上記光束の中心部と周辺部とを第1の領域31および第2の領域32によって分離するとともに、上記光束の中心部をさらに第1の領域31の光学特性によって(透過および反射により)異なる方向に分岐させ、分岐された一方の光束と上記光束の周辺部とを対物レンズ7に導く光束分岐素子を構成していると言うことができる。
また、立ち上げミラー4’が上記光束分岐素子を構成していることにより、第1の領域31の光学特性(透過率、反射率)を調整すれば、第1の領域31の透過光量を調整することができる。これにより、本実施形態のように、第1の領域31を透過する光をモニタ光として利用すれば、モニタ用検出器5の受光面の面積を変えずに、そのモニタ光の光量を可変にすることができる。
さらに、第1の領域31の光学特性の調整により、第1の領域31にて反射される光の光量(強度)も調整できるので、第1の領域31および第2の領域32での反射光の強度分布を、図10に示したように、光軸付近の光強度が低下するように調整することができ、しかも、その強度分布を第1の領域31の光学特性の調整に応じて何通りにも調整することができる。その結果、光ディスクDに照射される光のスポット径を調整して、超解像効果を可変にすることができる。
つまり、本実施形態では、立ち上げミラー4’が上述した光束分岐素子を構成しているので、第1の領域31の光学特性の調整により、モニタ光量および超解像効果の両者を容易に可変にすることができる。
このように、本実施形態の立ち上げミラー4’は、第1の領域31の光学特性の設定によって、入射光束の強度分布を変化させて対物レンズ7に導くことができることから、光源11・21からの光束を、その強度分布を変化させて対物レンズ7に導く光強度変調素子を構成しているとも言える。
ところで、立ち上げミラー4’は、図9の構成に限定されるわけではない。例えば図13は、立ち上げミラー4’の他の構成を示す平面図である。この立ち上げミラー4’では、第1の領域31が、光源11・21から出射されるレーザー光の光軸と交わる平面内で、上記光軸中心を通る1本のスリット状に形成されている。なお、第1の領域31は、上記光軸中心を通るスリットと、そのスリットを対称の軸として左右対称となる位置に配置される複数のスリットとで形成されていてもよい。
このように第1の領域31が形成されていても、光源光束の中心部と、光源光束の周辺部の一部とが、第1の領域31にて、透過および反射により異なる方向に分岐されるので、少なくとも光源光束の中心部が第1の領域31に入射する限り、図9の構成と同様の効果を得ることができる。特に、図13の構成では、第1の領域31が光軸中心を通るスリット状に形成されているので、光ディスクD上に集光される光スポットの径を、光ディスクDの半径方向または周方向に絞ることができ、使用する光ディスクDに応じた超解像効果を得ることができるという利点がある。
以上、本実施形態の立ち上げミラー4’は、図9または図13の構成であってもよいことから、以下のように表現することができる。つまり、本実施形態の立ち上げミラー4’は、光源11・21からの光束を、その強度分布を変化させて対物レンズ7に導く光強度変調素子であって、上記光束を、その中心部を含む第1の光束と、残りの第2の光束とに分離する第1の領域31および第2の領域32を有しているとともに、第1の領域31の光学特性によって、上記第1の光束をさらに透過および反射により異なる方向に分岐させ、分岐された上記第1の光束の一方と上記第2の光束とを対物レンズ7に導く光束分岐素子で構成されている。
ところで、本実施形態の立ち上げミラー4’において、第1の領域31および第2の領域32での反射光の波面の乱れを抑えるために、反射光の位相を調整する位相調整層を上記各領域の少なくとも一方に設けるようにしてもよい。この点についてさらに説明すると、以下の通りである。
図14は、入射光束が立ち上げミラー4’にて反射される様子を模式的に示している。なお、図14の立ち上げミラー4’には、位相調整層は設けられていないとする。また、同図では、1/4波長板6の図示を省略している。
今、立ち上げミラー4’のガラス基板4aの表面に対して直線偏光が例えば入射角45°で入射する場合を考える。この直線偏光がP偏光である場合、入射光に対する反射光の位相遅れは、第1の領域31での反射光についてPp1、第2の領域32での反射光についてPp2だけ生じる。また、第1の領域31と第2の領域32とでは、図14に示すように、誘電体多層膜32aの厚さに相当する物理的な段差dが生じている。この段差dによって生じる位相遅れは、2d・cos45°で表される。したがって、第1の領域31および第2の領域32にて反射された光全体の波面が乱れないようにする、つまり、光学的に段差が生じないようにするためには、
2mλ=(2d・cos45°+Pp2)−Pp1
の関係をほぼ満たすようにすればよい。なお、mは整数であり、λは、使用波長である。そして、このような関係式を満足するためには、立ち上げミラー4’のガラス基板4a上に位相調整層を設け、この位相調整層の層厚を適切に設定すればよい。
例えば、図15に示すように、第2の領域32において、誘電体多層膜32aの下層に、当該領域での反射光の位相を調整する位相調整層33を設け、この位相調整層33の層厚を適切に設定すればよい。なお、位相調整層33の層厚を適切に設定するのであれば、位相調整層33は、第1の領域31に設けられてもよく、第1の領域31および第2の領域32の両方に設けられてよい。つまり、上記の位相調整層33は、反射特性の異なる複数の領域の少なくとも1つに設けられればよい。
なお、以上で示した各実施形態では、光源が複数設けられている場合について説明したが、光源が1個の光学系にも本発明を適用することは可能である。