JP4432374B2 - ヘッドキャッピング機構及びこれを備えた液滴吐出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッドに代表される機能液滴吐出ヘッドのヘッドキャッピング機構及びこれを備えた液滴吐出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルからワークに向けて機能液滴を吐出して描画するような液滴吐出装置を用い、液晶表示装置や有機EL表示装置等を製造することが考えられている。
【0003】
このような液滴吐出装置においては、機能液を機能液滴吐出ヘッドに充填して吐出可能状態にする初期充填や、機能液滴吐出ヘッドの各ノズルのクリーニング(ヘッドクリーニング)をするために、機能液滴吐出ヘッドのノズルから機能液を吸引する吸引装置が設けられている。
また、液滴吐出装置は、非稼動状態のときに、機能液滴吐出ヘッドのノズルを封止して保護するとともに、機能液の乾燥を防止するヘッド保護装置も備えている。
これら吸引装置やヘッド保護装置に共通するキャッピング機構は、機能液滴吐出ヘッドに密接させて、機能液滴吐出ヘッドのノズルを封止するキャップと、キャップを機能液滴吐出ヘッドに対して離接させる離接機構とを備えている。
【0004】
この場合、キャップ本体を剛性の高い材料で構成するとともに、開口縁を弾性体のシール部材で構成して、押圧力を確実に伝えるとともに、開口縁とノズル面がなじみやすくするなどの、密着性を保つための工夫がなされてきた(例えば、特許文献1および2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−79697号公報
【特許文献2】
特開平11−179927号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、過大な押圧力が加えられると、精密部品であるノズル面(撥水処理面)が損傷する可能性があるため、キャップの押圧力は大きくできないが、押圧力が小さくなると、ノズルの密封状態を維持できない。したがって、シール部材を変形させて、大きすぎず尚且つ密封状態を形成できる適切な弾性変形抗力を得るためには、キャッピング時のキャップ押付け量を高い精度で制御する必要があった。
【0007】
本発明は、ノズルの密封状態を適切かつ安定に維持できるヘッドキャッピング機構及びこれを備えた液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のヘッドキャッピング機構は、機能液滴吐出ヘッドのノズル面に着脱自在に装着されるキャップを備え、当該キャップを、ノズル面に密着させて、ノズル面に形成したノズルを封止するヘッドキャッピング機構であって、機能液滴吐出ヘッドを保持するヘッドホルダと、キャップを保持するキャップホルダと、を備え、ヘッドホルダは、磁性体材料からなる被吸着部と、位置決め凹部と、を有し、キャップホルダは、被吸着部に対する吸着力により、キャップを前記ノズル面に密着させる磁石と、キャッピング状態で前記位置決め凹部が嵌合する位置決め凸部と、を有し、ヘッドホルダには、位置決め凸部をスライドさせるためのガイド溝が設けられ、位置決め凹部は、ガイド溝に形成されていることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、ヘッドにキャップを近づけてゆくと、磁石の吸着力により、ヘッドホルダに側の磁性体が磁石に吸着され、キャップとノズル面とが圧着される。この圧着状態では、ノズル面に直接加わる力は、キャップをノズル面に圧着し、キャップが弾性変形してノズル面になじむときの、変形抗力であり、磁石の吸着力より小さい。従って、磁石の吸着力以上の力が機能液滴吐出ヘッドのノズル面に加わることはなく、予め吸着力(磁力)とキャップの弾性変形抗力とを考慮して磁石を選択しておけば、過大な押圧力が作用してノズル面を損なうことはないし、好適な圧接状態すなわちノズルの好適な密封状態を、容易に実現することができる。さらに、液滴吐出装置が休止状態であっても、磁石の吸着状態は維持されるため、キャップの密封状態が維持される。なお、被吸着部はヘッドホルダの一部で構成してもよいし、全体で構成してもよい。また、機能液滴吐出ヘッドとキャップとの平面方向の位置が正確に定まり、適切な相対位置でキャッピングが実現できる。特に、手動でキャッピング動作を行う場合に有効であり、作業精度とともに作業効率も向上する。さらに、ヘッドプレートの端面から、位置決め凸部をガイド溝に係合させることができ、この係合状態を維持しつつガイド溝に沿って平行移動することにより、キャッピング作業を容易に行うことができる。特に、位置決め凹部を目視できない場合に有用である。
【0010】
この場合、位置決め凸部の片端部がテーパー形状であることが好ましい。また、この場合、キャップホルダは、複数の前記位置決め凸部を有し、前記位置決め凸部の少なくとも1つは、断面円形に形成され、前記位置決め凸部の少なくとも1つは、断面紡錘形に形成されていることが好ましい。
【0011】
この場合、磁石は複数個設けられており、複数の磁石は、キャップの中心に対して略点対称の位置に配設されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、小さい複数の磁石を配置することにより、狭いスペースで、大きい磁石と同等の吸着力が得られ、キャップホルダを小型にすることができる。また、キャップの中心に対して略点対称の位置に配置したことにより、キャップ全体を均等にノズル面に密接させることができ、エアーのリークを有効に防止することができる。
【0013】
この場合、キャップは、その離接方向に伸縮する弾性部材を介してキャップホルダに保持されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、キャップは、キャップホルダに対して揺動自在となり、ヘッドホルダとキャップホルダとが平行でない場合であっても、キャップがノズル面に倣って、好適な密着状態が得られる。
【0019】
この場合、キャップホルダを、キャップの離接方向に摺動自在にかつ抜止め状態に支持する支持部材を、さらに備えたことが好ましい。
【0020】
この構成によれば、キャップは離接方向において、所定の範囲自由に摺動する。従って、磁石の吸着力が支持部材により相殺されることがなく、キャップホルダは磁石の吸着力のみを受けて、磁石がヘッドプレートを吸着して、キャップとノズル面との適切な密着状態が得られる。
【0021】
これらの場合、磁石の吸着力は、キャップおよびキャップホルダの荷重に対する反力と、密着時におけるキャップに設けたシール部材の変形に要する押圧力とのほぼ和に相当することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、キャップに設けたシール部材の適切な変形量が実現でき、ノズルの安定的な密封状態が維持されるとともに、キャップをノズル面から離反させる力を比較的小さくすることができる。離反に要する力が大きいと、離反作業が困難であるばかりでなく、急激な離反となるため、離反時の衝撃によりキャップ内の機能液が飛散する可能性がある。この構成によれば、小さい力で容易且つ安全に、キャップの離反作業が実施できる。
【0023】
本発明による液滴吐出装置は、上記したヘッドキャッピング機構と、機能液滴吐出ヘッドを搭載するとともに、機能液滴吐出ヘッドをワークに対向させ、ワークに対し、機能液滴吐出ヘッドを相対移動させながら機能液滴を選択的に吐出する描画手段と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、適切なキャッピング(封止)を実現することができ、好適な初期充填やヘッドクリーニングを実施でき、機能液滴吐出ヘッドの状態を好適に保って、良好な液滴吐出ができる液滴吐出装置が実現できる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して、本発明を適用した描画システムについて説明する。この描画システムは、いわゆるフラットパネルディスプレイの一種である有機EL装置の製造ラインに組み込まれるものであり、有機EL装置の各画素となる発光素子を形成するものである。
【0031】
描画システム1の説明に先立ち、まず、有機EL装置701の構造および製造工程について簡単に説明する。図1は、有機EL装置701の断面図を示した図である。同図に示すように、有機EL装置701は、基板711、回路素子部721、画素電極731、バンク部741、発光素子751、陰極761(対向電極)、および封止用基板771から成る有機EL素子702に、フレキシブル基板(図示省略)の配線および駆動IC(図示省略)を接続したものである。
【0032】
同図に示すように、有機EL素子702の基板711上には、回路素子部721が形成され、回路素子部721上には、複数の画素電極731が整列している。そして、各画素電極731間には、バンク部741が格子状に形成されており、バンク部741により生じた凹部開口744に、発光素子751が形成されている。バンク部741および発光素子751の上部全面には、陰極761が形成され、陰極761の上には、封止用基板771が積層されている。
【0033】
有機EL素子702の製造プロセスは、バンク部741を形成するバンク部形成工程と、発光素子751を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子751を形成する発光素子形成工程と、陰極761を形成する対向電極形成工程と、封止用基板771を陰極761上に積層して封止する封止工程とを備えている。すなわち、有機EL素子702は、予め回路素子部721および画素電極731が形成された基板711(ワークW)の所定位置にバンク部741を形成した後、プラズマ処理、発光素子751および陰極761(対向電極)の形成を順に行い、さらに、封止用基板771を陰極761上に積層して封止することにより製造される。なお、有機EL素子702は、大気中の水分等の影響を受けて劣化しやすいため、有機EL素子702の製造は、ドライエアーまたは不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)雰囲気で行うことが好ましい。
【0034】
また、各発光素子751は、正孔注入/輸送層752およびR(赤)・G(緑)・B(青)のいずれかの色に着色された発光層(成膜部)753から構成されており、発光素子形成工程には、正孔注入/輸送層752を形成する正孔注入/輸送層形成工程と、3色の発光層753を形成する発光層形成工程と、が含まれている。
【0035】
有機EL装置701は、有機EL素子702を製造した後、有機EL素子702の陰極761にフレキシブル基板の配線を接続すると共に、駆動ICに回路素子部721の配線を接続することにより製造される。
【0036】
次に描画システム1について説明する。この描画システム1は、有機EL素子702の発光素子751を液滴吐出法(インクジェット法)で形成するものである。描画システム1は、注入/輸送層形成工程に用いるものと、発光層形成工程に用いるものとがあるが、装置自体は同一構造のものが用いられるため、ここでは、R・G・B3色の発光層753を形成するための描画システム1を例に説明する。
【0037】
図2は、描画システム1の外観斜視図である。描画システム1は、描画装置2(液滴吐出装置)と、乾燥装置3と、チャンバ装置4と描画装置2に接続されるホスト・コンピュータ12と、を備えている。描画装置2は、バンク部741が形成された基板711(ワークW)に対して、所定の描画処理を行うことにより、基板711の凹部開口744内に発光機能材料を(溶媒に)溶解させた機能液を滴下するものである。具体的には、基板711に対して、機能液を導入した機能液滴吐出ヘッド11を相対的に走査させながら機能液を吐出させることにより、機能液による描画処理が為される。
【0038】
描画装置2の主要部は、エアー吸引手段43を除き機台13に固定された方形の台板15上に配設されている。機台13は、複数(9個)の調節脚14(アジャストボルト付支持脚)が取付けられており、台板15の平面度を調節できるようになっている。なお、有機EL装置701の製造に描画装置2を用いる場合のように、管理された雰囲気下で描画処理を行えるようにするために、描画装置2では、台板15上にチャンバ装置4を載せ込むことが可能となっている。すなわち、台板15がチャンバ装置4の底板を兼ねており、台板15の縁部に、チャンバ装置4を載せ込むようになっている。
【0039】
乾燥装置3は、ワークWに吐出した機能液の溶媒を気化させることにより、発光機能材料を析出させるものであり、発光機能材料による成膜部を形成するものである。乾燥装置3は、乾燥手段として、ホットプレート(図示省略)と、真空乾燥を行う真空オーブン5と、を有しており、状況に応じて適宜これらを使い分けることができるようになっている。
【0040】
チャンバ装置4は、発光層形成工程における外気の影響を排除するためのものであり、ドライエアーまたは不活性ガスを連続的に給気および排気することにより、チャンバ装置4内を新鮮なドライエアー雰囲気または不活性ガス雰囲気に維持する。チャンバ装置4は、描画装置2を収容する描画チャンバ6と、乾燥装置3のホットプレートを収容する乾燥チャンバ7と、描画チャンバ6と乾燥チャンバ7とを架渡す搬送チャンバ8と、を備えている。搬送チャンバ8には、ワークWを搬出入するための搬出入口9が設けられている。描画チャンバ6および乾燥チャンバ7には、ワークWの移動やセット、およびチャンバ装置4内に収容されている描画装置2のメンテナンス等を行うための作業用のグローブ21が取り付けられている。搬出入口9から搬入されたワークWは、先ず描画チャンバ6に導入され、描画装置2により描画処理が施された後、描画チャンバ6から乾燥チャンバ7に搬出される。そして、ワークWは、乾燥装置3による乾燥処理を経て、搬出入口9から搬出される。
【0041】
ここで、描画装置2について詳細に説明する。図3は、描画装置2の外観斜視図、図4は、描画装置2の上面視平面図、図5は、描画装置2の正面図、図6は、描画装置2の側面図である。これらの図に示すように、描画装置2は、機能液滴吐出ヘッド11を搭載したヘッドユニット31を有し、ワークWに対して機能液を吐出するための吐出手段41と、吐出手段41(機能液滴吐出ヘッド11)のメンテナンスを行うメンテナンス手段42と、各手段に液体(例えば、機能液や洗浄液)を供給すると共に不要となった液体を回収する液体供給回収手段44と、各手段を駆動・制御するための圧縮エアー(ドライエアーまたはN2等の不活性ガス)を供給するエアー供給手段(図示省略)と、ワークWを吸引固定するためのエアー吸引手段43と、を備えている。
【0042】
描画装置2には、この他にも、ワークWに対するヘッドユニット31(機能液滴吐出ヘッド11)の位置認識を行うヘッド認識カメラ45や、ワークWの位置認識を行うためのワーク認識カメラ46、ワークWに対する描画処理結果を観察するための描画観察カメラ47等の付帯装置が設けられている。また、描画装置2には、ホスト・コンピュータ12(制御手段)が接続されており、ホスト・コンピュータ12により描画装置2全体が統括制御される。
【0043】
エアー吸引手段43を除く描画装置2の主要部は、機台13に固定された方形の台板15上に配設されている。機台13は、複数(9個)の調節脚14(アジャストボルト付支持脚)が取付けられており、台板15を水平に調節できるようになっている。なお、上記した描画チャンバ6は、台板15上に載せ込むようになっている。すなわち、台板15が描画チャンバの底板を兼ねており、台板15の周縁部に、AT材を介してチャンバ装置を載せ込むようになっている。
【0044】
次に、描画装置2の各手段について説明する。吐出手段41は、ヘッドユニット31と、ヘッドユニット31を支持するキャリッジ32と、ヘッドユニット31(機能液滴吐出ヘッド11)をワークWに対して移動させるX・Y移動機構34と、を備えている。本実施形態では、R、G、およびB色の3色に対応して、3個のヘッドユニット31が設けられている。
【0045】
各ヘッドユニット31は、機能液を吐出する機能液滴吐出ヘッド11を搭載したサブユニット33と、キャリッジ32に固定され、サブユニット33を着脱自在に支持するブラケットユニット37と、で構成されている。図8に示すように、サブユニット33は、(1個の)機能液滴吐出ヘッド11と、機能液滴吐出ヘッド11を搭載するヘッドホルダ16と、ヘッドホルダ16を支持するホルダキャリア141と、を有している。
【0046】
図7に示すように、機能液滴吐出ヘッド11は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針203を有する機能液導入部204と、機能液導入部204に連なるヘッド基板205と、機能液導入部204の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体206と、を備えている。各接続針203は、配管アダプタ209を介して、機能液供給系の給液チューブ(図示省略)に接続されており、機能液滴吐出ヘッド11は、各接続針203から機能液の供給を受けるようになっている。ヘッド基板205には、一対のコネクタ219が設けられており、このコネクタ219と中継基板とがFFCケーブル(図示省略)により接続されており、機能液滴吐出ヘッド11とホスト・コンピュータ12とが接続されている。ヘッド本体206は、ピエゾ圧電素子が組み込まれたキャビティ207と、ノズル面202を有するノズルプレート208と、で構成されている。ノズルプレート208には、多数(180個)のノズル201からなるノズル列が2列形成されている。機能液滴吐出ヘッド11では、キャビティ207のポンプ作用によりノズル201から機能液を吐出するようになっている。
【0047】
図8に示すように、各ヘッドホルダ16は、(1個の)機能液滴吐出ヘッド11を搭載するホルダ本体124と、ホルダ本体124の上側に配設され、ホルダ本体124をホルダキャリア141に支持させるための支持プレート123と、を備えている。同図に示すように、ホルダ本体124は、機能液滴吐出ヘッド11を搭載する下ホルダプレート121と、下ホルダプレート121に対向配置される上ホルダプレート125と、上ホルダプレート125および下ホルダプレート121を連結する4本の支柱部材126と、を有しており、4本の支柱部材126に、上下ホルダプレート125、121がねじ止めされている。
【0048】
下ホルダプレート121は、四角を面取りして略方形に形成された磁性体材料(この場合はスチール)からなる厚板で構成されている。下ホルダプレート121には、ノズル面202を下方に突出させ、機能液滴吐出ヘッド11を位置決め固定するための1個の装着開口が形成されており、機能液滴吐出ヘッド11が着脱可能に固定される。なお、下ホルダプレート121の下面には、突出する機能液滴吐出ヘッド11のノズル面202を挟んで、一対のガイド溝122が形成されている。
【0049】
上ホルダプレート125は、下ホルダプレート121よりも一回り大きく形成されたステンレスの厚板で構成されている。支持プレート123は、上ホルダプレート125と同様の大きさに形成されたステンレスの厚板である。支持プレート123には、ホルダ本体124の支持姿勢(あおり)を調整するためのあおり調整機構17が組み込まれており、支持プレート123は、あおり調整機構17を介して、ホルダ本体124を支持している。
【0050】
図8に示すように、あおり調整機構17は、あおりを調整するための基準となる基準部材(図示省略)と、基準部材を中心として、機能液滴吐出ヘッド11のノズル列210と平行する方向における傾き(ピッチング)を調整するピッチング調整機構212と、基準部材を中心として、機能液滴吐出ヘッド11のノズル列210と直交する方向における傾き(ローリング)を調整するロール調整機構211と、を有しており、ピッチング方向およびローリング方向に対して、ホルダ本体124のあおりを調整することにより、ホルダ本体124に搭載された機能液滴吐出ヘッド11のノズル面202とワークWとの平行度を適切に調整することができるようになっている。
【0051】
図8、図9に示すように、ホルダキャリア141は、キャリアプレート140と、キャリアプレート140に固定された2個のキャリアハンドル189と、を有している。キャリアプレート140は、正方形の厚板の一部(1つの頂点)を斜めに切り欠いたものであり、平面視五角形に成形されている。なお、符号182は、キャリアプレート140の切欠部182を示し、厚板を切り欠いたことにより形成された部分を指している。2個のキャリアハンドル189は、キャリアプレート140に対向配置されており、ブラケットユニット37からサブユニット33を着脱し運搬する時の把持部となる。
【0052】
同図に示すように、キャリアプレート140の中心位置には、θ回動調整機構147が組み込まれており、キャリアプレート140は、θ回動調整機構147を介してヘッドホルダ16を支持している。θ回動調整機構147は、ヘッドホルダ16(機能液滴吐出ヘッド11)の水平面内における取付け角度のずれを微調整するためのものである。θ回動調整機構147は、キャリアプレート140を貫通すると共に、キャリアプレート140に、回動自在に軸支されたθ回動軸142と、いわゆるマイクロメータを応用したものであり、θ回動軸142をθ軸方向に確動的に回動させるためのθ回動機構143と、θ回動機構143によるθ回動軸142の回動量を計測するためのθ回動計測器(分度器)144と、を備えている。
【0053】
次に、ブラケットユニット37について説明する。図9に示すように、ブラケットユニット37は、サブユニット33を支持する支持ブラケット100と、支持ブラケット100を支持する背面プレート150と、支持ブラケット100と背面プレート150との間に介設され、サブユニット33の昇降位置を調整するための昇降位置調整機構151と、を有している。
【0054】
支持ブラケット100は、断面横「T」字状のブラケット本体101と、キャリアプレート140を位置決め固定する位置決め固定機構110とを、有している。ブラケット本体101は、支持ブラケット100を昇降位置調整機構151に固定するための固定部となる鉛直部102と、鉛直部102から前方に延び、サブユニット33の固定部となる水平部103と、を有している。ブラケット本体101の水平部103は、上面視逆「U」字形状となるように、その前縁部に開放部105が形成されている。そして、水平部103の開放部105には、サブユニット33のホルダキャリア141が水平方向から遊嵌状態でセットされ、水平部103にサブユニット33が吊設される。
【0055】
上述したように、ブラケットユニット37に対して、サブユニット33は着脱自在に固定されており、ブラケット本体101の水平部103には、ブラケット本体101に対して、サブユニット33を容易かつ迅速に位置決め固定するための位置決め固定機構110が配設されている。位置決め固定機構110は、キャリアプレート140を位置決め固定することにより、遊嵌状態のサブユニット33を精度良く位置決め固定するためのもので、キャリアプレート140の上下位置を安定させるために、キャリアプレート140をブラケット本体101の水平部103に回動自在に設けた押圧部材104と、キャリアプレート140を水平部103上で位置決めするための3個の位置決めピン187と、3個の位置決めピン187に向かってキャリアプレート140の(側)端面を突き当てる押圧ねじ188と、を有している。
【0056】
位置決め固定機構110では、ばねを組み込んだ止め金付の押圧部材104によりキャリアプレート140を軽く押圧し、上下位置を安定させた後、押圧ねじ188により、キャリアプレート140の端面が3個の位置決めピン187に当接するように水平部103上を微小移動させ、位置決めする。その後、押圧部材104の止め金を締結して作業を完了する。なお、ワークW(の凹部開口744のピッチ)に対応して、ブラケットユニット37にサブユニット33がセットされた状態において、サブユニット33に搭載された機能液滴吐出ヘッド11は、主走査方向に対して所定角度傾けて配設されている(図示では傾いていないが)。もっとも、各種ワークWに対して、機能液滴吐出ヘッド11を専用部品とすれば、機能液滴吐出ヘッド11を敢て傾ける構成とする必要はない。この場合、機能液滴吐出ヘッド11のノズル列210が、Y軸方向(副走査方向)に連続していればよい。
【0057】
各背面プレート150は、略方形のステンレスの厚板で構成されており、背面プレート150の前面に取付けられた昇降位置調整機構151を介して、支持ブラケット100を支持している。昇降位置調整機構151は、ワークWと機能液滴吐出ヘッド11のノズル面202とのギャップ調整を行う場合等に用いられ、背面プレート150に対して、支持ブラケット100(サブユニット33)を昇降させることにより、機能液滴吐出ヘッド11のノズル面202の高さ位置を調整するためのものである。昇降位置調整機構151は、背面プレート150の正面に突設される支持ブラケット100を昇降自在に支持する昇降ねじ機構152(マイクロメータ)と、支持ブラケット100の昇降を案内する左右一対の昇降ガイド155と、を有している。
【0058】
キャリッジ32は、ステンレスの方形の厚板で構成されており、3個のヘッドユニット31を横並びに支持している。具体的には、キャリッジ32には、3個のヘッドユニット31の背面プレート150が横並びに整列してねじ止めされており、キャリッジ32の正面に、3個のヘッドユニット31が突設されている。
【0059】
次に、X・Y移動機構34について説明する。X・Y移動機構34は、いわゆるX・Yロボットであり、ワークWをX軸方向(主走査方向)に移動させるX軸テーブル35と、キャリッジ32を介して、ヘッドユニット31をY軸方向(副走査方向)に移動させるY軸テーブル36と、を有している。X軸テーブル35は、上記した台板15上に直接設置されており、X軸方向に延在している。X軸テーブル35は、ワークWをセットするためのセットテーブル51と、セットテーブル51を支持し、ワークWのθ補正を行うためのθテーブル52と、θテーブル52をX軸方向にスライド自在に支持するX軸エアースライダ53と、θテーブル52およびセットテーブル51を介して、ワークWをX軸方向に移動させるX軸リニアモータ55と、X軸エアースライダ53に併設したX軸リニアスケール54と、を備えている。
【0060】
セットテーブル51の中心部には、ワークWをエアー吸引により吸着セットするための吸引溝56が形成されている。吸引溝56には、上記したエアー吸引手段43のエアー吸引チューブ(図示省略)が接続されており、セットテーブル51に対して、ワークWを不動に吸着セットできるようになっている。X軸テーブル35では、X軸リニアモータ55の駆動により、ワークWを吸着セットしたセットテーブル51およびθテーブル52が、X軸エアースライダ53を案内にしてX軸方向に移動する。
【0061】
X軸テーブル35の一方の端部(装置手前側)は、ワークWを載せ換えるためのワーク交換エリアとなっており、ワーク交換を行う場合には、セットテーブル51をワーク交換エリアまで移動させる。また、ワーク交換エリアと反対側に位置するX軸テーブル35のもう一方の端部は、セットテーブル51にセットしたワークWに対して画像認識を行うためのワーク認識エリアとなっている。ワーク認識エリアには、X軸テーブル35を跨ぎ、Y軸方向に延在するカメラスタンド57が立設されている。そして、カメラスタンド57には、上記したワーク認識カメラ46および描画観察カメラ47が配設されており、ワークWがワーク認識エリアに移動すると、これら両カメラがワークWに臨む構成となっている。
【0062】
なお、図6に示すように、X軸テーブル35と平行に位置して、X軸テーブル35に接続するケーブル類(例えば、エアー吸引チューブやθテーブル52用のケーブル等)を収容したケーブル担持体22(ケーブルベア:登録商標)が配設されており、セットテーブル51およびθテーブル52の移動に追従して、X軸テーブル35に接続するケーブル類の可動端を移動させる構成となっている。
【0063】
Y軸テーブル36は、台板15上に立設されたY軸スタンド38に載置されている。Y軸スタンド36は、上記したカメラスタンド57に併設されており、X軸テーブル35を跨いで、X軸テーブル35に直交して延在している。Y軸スタンド38は、X軸テーブル35を挟んで台板15上に立設した左右一対の支柱23と、Y軸方向に延在し、一対の支柱23上に架け渡した載置プレート24と、Y軸方向に延在するように、載置プレート24上に固定された鉛直プレート25と、を有しており、Y軸テーブル36は、載置プレート24上に載置されると共に、鉛直プレート25の正面部に固定されたY軸固定フレーム26に取り付けられている。
【0064】
Y軸テーブル36は、キャリッジ34の背面に固定され、キャリッジ34を介して3個のヘッドユニット31をY軸方向にスライド自在に支持するY軸スライダ27と、Y軸スライダ27をY軸方向に移動させるY軸リニアモータ28と、Y軸方向へのキャリッジ32の移動を案内するY軸ガイド61と、を有している。Y軸テーブル36では、Y軸リニアモータ28の駆動により、ヘッドユニット31を支持するY軸スライダ27が、Y軸ガイド61を案内にしてY軸方向に移動する。
【0065】
鉛直プレート25の背面には、Y軸収容ボックス62が配設され、Y軸収容ボックス62には、Y軸ケーブル担持体39が収容されている。Y軸ケーブル担持体39には、主にヘッドユニット31に接続するケーブル類(後述する給液チューブを除く)がヘッドユニットの移動に追従するように収容されている。
【0066】
なお、Y軸テーブル36の図示(図4、図5)左側の端部が、キャリッジ32(ヘッドユニット31)のホーム位置となっている。キャリッジ32は、描画装置2の停止時やワーク交換時のような非描画処理時にホーム位置に移動する。ホーム位置に対応して、台板15上には、ヘッド認識カメラ45が配設されている。そして、ヘッド認識カメラ45で、ホーム位置にある各ヘッドユニット31に搭載された機能液吐出ヘッド11の画像認識を行い、これに基づいて、上記したθ回動調整機構147等により適宜機能液滴吐出ヘッド11の位置を補正可能となっている。なお、ブラケットユニット37に対するサブユニット33の着脱は、ホーム位置で行われる。
【0067】
ここで、吐出手段41の一連の動作について簡単に説明する。先ず、描画処理を開始する前の準備として、セットテーブル51を(ワーク認識エリアへ)移動させる。そして、セットテーブル51上のワークWをワーク認識カメラ46を臨ませ、ワークWの位置補正を行う。次に、X・Y移動機構34(X軸テーブル35)を駆動して、ワークWを主走査(X軸)方向に往動させながら、機能液滴吐出ヘッド11の選択的な吐出駆動を行い、ワークWに対し、機能液滴による描画処理を行う。ワークWが一往動すると、X・Y移動機構34(Y軸テーブル36)が駆動して、ヘッドユニット31を副走査(Y軸)方向に移動させる。そして、再びX・Y移動機構34を駆動して、ワークWを復動させると共に、これと同期して機能液滴吐出ヘッド11の選択的な吐出駆動を行う。ワークWの一復動が終了すると、X・Y移動機構34により、ヘッドユニット31を副走査させる。このような主走査方向に対するワークWの往復動と機能液滴吐出ヘッド11の選択的な吐出駆動とを繰り返すことにより、描画装置2は、ワークWに対する機能液の描画処理を行っている。
【0068】
次に、メンテナンス手段42について説明する。メンテナンス手段42は、機能液滴吐出ヘッド11の保守を行うと共に、機能液滴吐出ヘッド11から適切に機能液が吐出されているか否かの検査を行うことにより、機能液滴吐出ヘッド11による機能液の吐出を安定させるためのものである。メンテナンス手段42は、機能液滴吐出ヘッド11から予備吐出された機能液を受けるためのフラッシングユニット63と、機能液滴吐出ヘッド11の吸引を行う吸引ユニット500と、機能液滴吐出ヘッド11から吐出された機能液の重量を測定する重量測定ユニット65と、を備えている。
【0069】
フラッシングユニット63は、フラッシングの機能液を受けるためのものである。フラッシングとは、機能液滴吐出ヘッド11のノズル201から機能液を予備吐出(捨て打ち)することにより、ノズル201のノズル詰まりを防止すると共に、ノズル201に新鮮な機能液を導入するためのものである。フラッシングには、ワークWに対して機能液を吐出させる直前に行う吐出前フラッシングと、ワークWの交換時のように、ワークWに対する機能液の吐出が一時的に休止される時に、上記したホーム位置において定期的に行われる定期フラッシングとがあり、フラッシングユニット63は、吐出前フラッシングの機能液を受ける第1フラッシングユニット66と、定期フラッシングの機能液を受ける第2フラッシングユニット68と、を有している。なお、本実施形態では、3個のヘッドユニット31が同時に移動する構成となっているが、3個のヘッドユニット31を個々に移動可能に構成してもよい。この場合、特に順番は問わないが、R・G・Bの1色ずつ順に描画処理を行う。
【0070】
図4に示すように、第1フラッシングユニット66は、θテーブル52に固定されたスライダ(図示省略)と、セットテーブル51を挟むようにスライダの両端部に固定した一対の第1フラッシングボックス67と、を備えている。フラッシングの機能液を受ける各第1フラッシングボックス67には、機能液を吸収させる吸収材(図示省略)が敷設されている。一対の第1フラッシングボックス67は、主走査におけるθテーブル52(ワークW)の移動に同期してヘッドユニット31へ向かって移動するため、機能液滴吐出ヘッド11は、ワークWに対して機能液を吐出させる直前に、順次第1フラッシングボックス67に臨んで、ノズル201から機能液を順次予備吐出させることが可能となっている。
【0071】
第2フラッシングユニット68は、X軸と平行になるように、上記した台板15上に固定されたフラッシングスタンド72と、ホーム位置において定期フラッシングの機能液を受ける第2フラッシングボックス71と、フラッシングスタンド72に支持されると共に、第2フラッシングボックス71をスライド自在に支持するボックス移動機構73と、を有している。
【0072】
フラッシングスタンド72は、ホーム位置からX軸方向に外れた、上記したY軸収容ボックスの略真下に配設されている。第2フラッシングボックス71は、キャリッジ32に横並びに配設された3個のヘッドユニット31(に搭載された全機能液滴吐出ヘッド11)からの定期フラッシングを、ボックス外にはみ出さずに同時に受けることができる大きさに形成されている。ボックス移動機構73は、第2フラッシングボックス71をX軸方向にスライド自在に支持するスライダ69と、スライダを移動させるエアーシリンダ70と、を有している。ボックス移動機構73は、ホーム位置における作業領域を確保するために、ホーム位置から第2フラッシングボックス71をX軸方向(フラッシングスタンド側)に逃がすためのものであり、サブユニット33の交換時や後述する機能液滴吐出ヘッド11のキャッピング時等に用いられる。なお、通常、第2フラッシングボックス71は、ホーム位置に臨んでいる。
【0073】
吸引ユニット500は、ホーム位置に臨むヘッドユニット31の機能液滴吐出ヘッド11を吸引することにより、機能液滴吐出ヘッド11のノズル201から機能液を強制的に排出させるものであり、例えば、新たにヘッドユニット31に機能液滴吐出ヘッド11を投入した場合のように機能液の充填を行う場合や、機能液滴吐出ヘッド11内で増粘した機能液を除去するための吸引(クリーニング)を行う場合に吸引ユニット500は用いられる。吸引ユニット500は、ヘッドユニット31に搭載された機能液滴吐出ヘッド11のノズル面202をキャッピング(封止)する3個のキャップユニット501と、キャップユニット501を介して機能液滴吐出ヘッド11の吸引を行う1台の吸引ポンプ502と、各キャップユニット501と吸引ポンプ502とを接続する3本の吸引チューブ503と、上記した台板15に上配設され、キャップユニット501を保管するためのキャップスタンド(図示省略)と、を備えている(図11参照)。なお、各吸引チューブ503のキャップユニット31近傍には、吸引チューブ503を開閉する開閉バルブ(電磁弁)504が介設されており、吸引ポンプ502による吸引流路を適宜切替え可能となっている。
【0074】
吸引ユニット500のキャップユニット501は、図示省略したが、上記ホーム位置近傍に配設したキャップスタンドに載置されており、機能液滴吐出ヘッド11の吸引を行う場合には、上記したチャンバ装置4のグローブ21を介して、手作業により機能液滴吐出ヘッド11のノズル面202をキャップユニット501で密接した後、吸引ポンプ502を駆動する。
【0075】
なお、キャップユニット501は機能液滴吐出ヘッド11のノズル201の乾燥を防止するためにも用いられ、機能液滴吐出ヘッド11のキャッピングは、吸引を行うときだけではなく、描画装置2の稼動停止時にも行われる。この場合、キャップユニット501に連通する吸引流路を短くして、ノズル201の乾燥を極力防止するために、各吸引チューブ503に介設された開閉バルブ504は全て閉弁される。これにより、描画装置2を再稼動させるときに行われる、機能液滴吐出ヘッド11の吸引によって消費される機能液量を削減することが可能である。
【0076】
重量測定ユニット65は、(1個の)機能液滴吐出ヘッド11から吐出された機能液滴の重量を測定することにより、機能液滴吐出ヘッド11の吐出不良を検出するためのものであり、機能液滴の重量を測定する電子天秤(図示省略)と、電子天秤を収容するカバー(図示省略)付の天秤収容ボックス74と、を備えている。電子天秤は、測定する機能液滴を受ける受け皿(図示省略)と、測定部を有する天秤本体(図示省略)と、で構成されている。受け皿(図示省略)は、上記したフラッシングスタンド72上に載置されており、第2フラッシングボックス71に併設されている。すなわち、通常、受け皿は、ヘッドユニット31(機能液滴吐出ヘッド11)の移動軌跡に臨んで配設されており、ヘッドユニット31のメンテナンス作業時などには、第2フラッシングボックス71と共に、X軸方向に逃げる構成となっている。また、天秤本体は台板15上に載置された天秤収容ボックス74内に収容されている。
【0077】
機能液滴の重量を測定するときには、先ず、機能液滴吐出ヘッド11の移動軌跡に臨む受け皿に対し、機能液滴吐出ヘッド11から機能液滴を吐出させる。なお、受け皿が機能液滴吐出ヘッド11の移動軌跡から逃げた位置にある場合には、上記したボックス移動機構73により、受け皿を機能液滴吐出ヘッド11の移動軌跡に臨ませる。そして、機能液滴を吐出させた受け皿を天秤本体(図示省略)にセットし、天秤収容ボックス74のカバーを閉めた後、測定を行う。なお、本実施形態では、これら作業もチャンバ装置4のグローブ21を介して、手作業で行われる。
【0078】
次に、液体供給回収手段44について説明する。液体供給回収手段44は、各ヘッドユニット31(各機能液滴吐出ヘッド11)に機能液を供給する機能液供給系82と、メンテナンス手段42の吸引ユニットで吸引した機能液を回収する機能液回収系83と、を有している。
【0079】
図3、図6に示すように、機能液供給系82は、上記した台板15上に固定された機能液スタンド84と、機能液スタンド84に横並びに立設された3個の載置部材85と、各載置部材85にセットされる(計3個の)機能液タンク(図示省略)と、3個のヘッドユニット31に対し、機能液タンクから機能液を供給するための給液チューブユニット75と、を備えている。3個の機能液タンクは、3個のヘッドユニット31にそれぞれ対応しており、各ヘッドユニット31は、対応する機能液タンクから機能液の供給を受けるようになっている。
【0080】
各載置部材85には、載置する機能液タンク内の液位と、当該機能液タンクに対応するヘッドユニット31(に搭載する機能液滴吐出ヘッド11のノズル面202)との水頭差を所定値に合わせ込むための水頭差調整機構(図示省略)が組み込まれており、ヘッドユニット31の機能液定期吐出ヘッド11に対して、機能液タンクを昇降させることができるようになっている。
【0081】
給液チューブユニット75は、各機能液タンクとこれに対応するヘッドユニット31の機能液滴吐出ヘッド11とを接続する3組の給液チューブ(図示省略)と、3組の給液チューブを部分的に支持するチューブサポート86と、を有している。チューブサポート86は、機能液タンクおよび液滴吐出ヘッド11間に給液チューブを適切に架け渡すことにより、機能液タンクからヘッドユニット31に適切な給液が為されるように、部分的に給液チューブを支持するものである。
【0082】
図6に示すように、チューブサポート86は、機能液スタンド84に立設されたサポート軸87と、一端をサポート軸87に回動自在に軸支されると共に、上記したY軸収容ボックス62の上方を通り、ヘッドユニット31側に延在するサポート部材88と、を有しており、給液チューブは、サポート部材88に支持される。なお、給液チューブは、十分な遊びを持った状態でサポート部材88と機能液滴吐出ヘッド11との間を架け渡されており、Y軸方向に移動するヘッドユニット31に対して、給液チューブが追従移動できるようになっている。
【0083】
機能液回収系83は、吸引ユニット500のキャップユニット501を介して吸引した機能液を回収するためのものであり、機能液スタンド84に載置され、機能液を貯留する再利用タンク76と、吸引ポンプと再利用タンク76とを接続し、吸引した機能液を再利用タンク76へ導く回収用チューブ505と、を備えている。キャップユニット501に排出された機能液は、吸引ポンプ502の駆動により再利用タンク76に導かれる。なお、本実施形態では、3個の再利用タンク76が設けられており、ヘッドユニット31毎に、すなわちR、G、およびB色の機能液の種類毎に機能液を個別に回収できるようになっている。
【0084】
次に、エアー供給手段について説明する。エアー供給手段は、ドライエアーや不活性ガスを圧縮した圧縮エアーを各部に供給するためものであり、エアーを圧縮するエアーポンプ(コンプレッサー)(図示省略)と、エアーポンプからの圧縮エアーを供給先に応じて一定圧力に保つレギュレータ(図示省略)と、エアーポンプと各部とを配管接続して、圧縮エアーを各部に供給するエアー供給チューブ(図示省略)と、を備えている。
【0085】
エアー吸引手段43は、エアー吸引を行う真空ポンプ48と、セットテーブル51の吸引溝56と真空ポンプ48とを接続するためのエアー吸引チューブ(図示省略)と、を備えている。
【0086】
次に、描画装置2に接続されるホスト・コンピュータ12について説明する。図示省略したが、ホスト・コンピュータ12は、パソコン等で構成されており、一時的に記憶可能な記憶領域を有し、制御処理のための作業領域として使用されるRAMと、各種記憶領域を有し、描画装置2の制御プログラムや描画装置2に関する各種データを記憶するハードディスクと、ハードディスクに記憶されたプログラム等に基づいて、各種データを演算処理するCPUと、これらを互いに接続するバスと、を備えている。
【0087】
ホスト・コンピュータ12では、CPUが、RAMや描画装置2からの各種検出信号、各種指令、各種データ等を、ハードディスクの制御プログラムに従って処理しており、CPUの出力に基づいて、描画装置2の制御信号が出力される。これにより、描画装置2の各手段が有機的に制御され、描画装置2全体が制御されるようになっている。
【0088】
また、図示省略したが、ホスト・コンピュータ12は、各種データやメッセージ等を表示し、ユーザの視認に用いられるモニタディスプレイや、FDドライブやCDドライブ等の各種ドライブを備えている。
【0089】
上述したように、吸引ユニット500は、機能液滴吐出ヘッド11に機能液の充填(初期充填)を行う場合や、機能液滴吐出ヘッド11のクリーニング(機能液の吸引)を行う場合に用いられる。また、上述したように、吸引ユニット500は、R、G、Bの3色の3個のヘッドユニット31に対応する3個のキャップユニット501と、これらのキャップユニット501に連なる1台の吸引ポンプ502と、3個のキャップユニット501と1台の吸引ポンプ502とを結合する3本の吸引チューブ503と、3個のキャップユニットを据え置くためのキャップスタンド(図示省略)と、を備えている。なお、本実施形態のキャップユニット501と、上記した下ホルダプレート(ヘッドホルダ)121とで、特許請求の範囲に記載のキャッピング機構が構成されている。そして、本実施形態では、キャップユニット501を手作業でキャップスタンドからキャッピング位置に移動させて、キャッピングを行う構成になっている。
【0090】
一方、ヘッド側は、上述したように、機能液滴吐出ヘッド11がヘッドユニット31の下ホルダプレート121に搭載されている。下ホルダプレート121は、略方形に成形された磁性体(この場合はスチール)の厚板で構成されており、その装着開口に機能液滴吐出ヘッド11がノズル面202を下方に突出させて、着脱可能に固定されている。下ホルダプレート121の下面には、突出する機能液滴吐出ヘッド11のノズル面202を挟んで、一対のガイド溝122が形成されており、ガイド溝122には、その底から下ホルダプレート121を貫通して位置決め穴127が、各ガイド溝122に2個ずつ(計4個)形成されている。各位置決め穴127は、特許請求の範囲に記載の位置決め凹部に相当し、キャップユニット501がキャッピング位置に合致したとき、後述する位置決めピン536と嵌合するように設けられている。1対のガイド溝122は、位置決めピン536が摺動自在に係合できる幅であって、各2本の位置決めピン536と同時に係合できるように、機能液滴吐出ヘッド11の長手方向と平行に、下ホルダプレート121の一端から他端まで延在している。
【0091】
次に、キャップユニット501の詳細な構成について、説明する。図10は、キャップユニット501の外観斜視図であり、図11は、キャップユニット501の断面図である。キャップユニット501は、機能液滴吐出ヘッド11のノズル面202密着させるキャップ520と、キャップ520を突出方向に付勢する2本のキャップばね510と、キャップ520を出没方向に摺動自在に保持するキャップホルダ530と、で構成されている。
【0092】
キャップ520は、キャップベース521と、キャップベース521の上面に端部を埋め込むようにして設けたキャップパッキン525と、キャップベース521の上面中央にキャップベース521を貫通するように形成した吸引孔523と、吸引孔523の下流側に連なる吸引パイプ526と、で構成されている。キャップパッキン525は、機能液滴吐出ヘッド11のノズル面202を封止した状態でノズル列210を包含するように、平面視長方形環状に形成されている。キャップパッキン525の内側には、機能液の吸収材を敷設してもよいが、本実施形態のものは吸収材を省略したものとなっている。吸引孔523は、吸引パイプ526及びこれに接続された吸引チューブ503を介して、吸引ポンプ502に接続されている。なお、本実施形態のキャップベース521には、大気開放弁が設けられていないため、吸引後機能液滴吐出ヘッド11からキャップユニット501を離間させた後も吸引を継続して、キャップパッキン525の内側に残留する機能液を完全に吸引することが好ましい。
【0093】
キャップベース521は、上面に平面視略長方形のパッキン溝522を設けて、キャップパッキン525を装着したベース本体524と、ベース本体524の長辺方向両端下部から張り出すように設けた一対の係合突起部527と、で一体に形成されている。ベース本体524の下面には、ベース本体524を上面方向に付勢するようにキャップばね510が当接する一対の窪み部529が、吸引孔523を挟んで形成されている。各係合突起部527の上面は、後述するキャップ押え534の係合部542の天面に下側から当接し、キャップばね510に抗してその突出端位置が規制されるようになっている。また、各係合突起部527の外側端面には上下方向に延在する凹部である係合凹部528が形成され、係合凹部528は、後述する係合凸部543と上下方向摺動自在に係合し、キャップ520の摺動を案内している。なお、キャップ520の平面長辺方向の位置は、ベース本体524が一対のキャップ押え534の間に挟まれて、規定されている。
【0094】
キャップホルダ530は、キャップホルダベース531と、キャップホルダベース531の上面に立設した一対のスプリングガイドピン535と、キャップホルダベース531の長辺方向両端部の上面に取り付けた一対のキャップ押え534と、各キャップ押さえ534の上面に立設した各一対の位置決めピン536と、各キャップ押さえ534の上面に固設した一対のキャップ磁石537とで、構成されている。
【0095】
キャップホルダベース531は、長辺方向両端が高くなった側面視凹字形状をしており、低い部分の中間位置には、吸引パイプ526が遊嵌する逃がし穴532が形成され、また、逃がし穴532の両側には上記のスプリングガイドピン535が立設されている。各キャップ押え534は、キャップホルダベース531に直交するように延在しており、平面視長方形の押さえ本体540と、押さえ本体540の外側の側面から張り出した固定用突起部541と、内側の側面に形成され、キャップベース521の係合突起部527と係合する係合部542と、で断面クランク形状に形成されている。係合部542の内部側面には、係合突起部527の係合凹部528と係合する係合凸部543が、一体に形成されている。すなわち、係合部542は、その係合凸部543により、キャップ520の出没方向の摺動をガイドし、かつその天面により、キャップ520の突出端位置を位置規制している。
【0096】
各キャップ押え534の上面は、その長辺方向両端部がわずかに高く形成されており、この高くなった両外端部にそれぞれ位置決めピン536が立設されている。各位置決めピン536は、片端部が位置決め穴127との係合を案内すべくテーパー形状に形成されると共に、基端部が、押さえ本体540に埋め込まれている。また、各位置決めピン536は、1本は断面円形で位置決め穴127と微小な隙間で嵌合し、他の3本は断面略紡錘形に形成されており、位置決め穴127へのかじり付きを防止できるようになっている。4本の位置決めピン536をこのように構成することにより、微小な隙間で嵌合する1組の位置決めピン536と位置決め穴127で精度よく位置決めするとともに、キャッピング(位置決めピン536と位置決め穴127の嵌合)と離反を容易ならしめている。
【0097】
キャップ磁石537は、円柱状の磁石本体538と、磁石本体538を保持するとともに、キャップ押さえ534に固定した磁石ホルダ539とで構成されている。磁石ホルダ539は有底円筒形を為しており、先端部には磁石本体538が嵌合固定される凹部が形成されており、基端部でキャップ押さえ534の位置決めピン536の近傍に固定されている。磁石ホルダ539に嵌合した磁石本体538の先端面は、磁石ホルダ539の上端面より出ないようになっており、キャップ磁石537の吸着状態で、磁石ホルダ539が下ホルダプレート121に直接当接するようになっている。なお、磁石ホルダ539のキャップ押え534への固定は、磁石ホルダ539の基端部に形成したねじによることが好ましい。このようにすることで、加工が困難な磁石に固定構造を形成する必要がなく、精密かつ複雑な構造も可能である。それとともに、磁石の被加工性や強度の制限が少なくなり、プラスチック磁石や焼結磁石などの微細加工のできない材質も自由に使用できる。
【0098】
キャップ520をノズル面202に当接させ、キャッピング状態にするキャッピング作業は、以下のように行う。作業者は、まずキャップユニット501を把持し、キャップスタンドから外して、ヘッドユニット31の正面に持ち込む。ここで、正面から下ホルダプレート121の一対のガイド溝122にキャップユニット501の2本の位置決めピン536を係合させる。次に、係合を維持しつつ、位置決めピン536をガイド溝122に沿って奥側にスライドさせ、他の2本の位置決めピン536もガイド溝122と係合させる。さらにスライドを進めて、位置決めピン536と位置決め穴127とが合致したところで、4本の位置決めピン536を4本の位置決め穴127に下側から嵌合させる。すると、キャップ磁石537が下ホルダプレート121を吸着し、キャップパッキン525がノズル面202に密接し、キャッピング作業が完了する。これにより、下ホルダプレート121の下面を覗き見ることなく、位置決めピン536と位置決め穴127との係合が可能となり、ノズル面202に対しキャップパッキン525を精度良く密接させることができる。
【0099】
キャッピング位置(キャッピング状態)にあるキャップユニット501において、キャップホルダ530はキャップ磁石537が下ホルダプレート121を吸着する力で、下ホルダプレート121に固定されている。吸着状態におけるキャップ520は、キャップばね510に抗して、そのキャップパッキン525がノズル面202に密接する。キャップ520は、キャップばね510を介してキャップホルダ530に支持されているため、キャップホルダ530に対しては揺動自在で、キャップパッキン525がノズル面202に倣って圧接される。キャップベース521と、密着したキャップパッキン525とノズル面202とで、ノズルの密封空間が形成される。形成されたノズルの密封空間は、吸引パイプ526と吸引チューブ503とを介して、吸引ポンプ502に接続されている。
【0100】
ここで、吸引ポンプ502を作動すると、密封空間を介して、ノズル201から機能液を吸引することができる。初期充填やヘッドクリーニングなどの目的に応じて、適宜吸引量を定めて吸引ポンプ502の駆動を制御することにより、初期充填やヘッドクリーニングを適切に実施することができる。また、ノズル201が臨む密封空間は小容積であり、キャッピング状態のノズル201からの機能液溶剤の蒸発が防止できる。
【0101】
キャップ磁石537が下ホルダプレート121を吸着し当接して、ノズル面202にキャップパッキン525が密接し、キャップばね510がキャップ520を付勢する力が、ノズル面202とキャップパッキン525との圧接力になっている。このため、キャップ磁石537とキャップパッキン525との高さと、ノズル面202と下ホルダプレート121との高さと、キャップばね510の特性とで、ノズル面202とキャップパッキン525との圧接力は設定することができる。圧接力の設定に介在する部材が少ないため、設定が容易であるとともに、高い精度の圧接力の実現が可能である。したがって、ノズル面202とキャップパッキン525との密着状態を形成できる好適な力を自在かつ容易に設定することができ、ノズル面202を損なうことがないとともに、密着状態を安定的に維持することができる。
【0102】
キャップ520が下ホルダプレート121に固定される力は、キャップ磁石537が下ホルダプレート121を吸着する力であり、キャップ磁石537を適当に選ぶことで、自在に定めることができ、キャッピング状態を維持できるとともに、キャッピング状態の解除(キャップ520のノズル面202からの離反)も容易な、好適なキャップ520の下ホルダプレート121への固定力を設定することができる。具体的には、キャップ磁石537が下ホルダプレート121を吸着する力は、キャップユニット501の重量を支える力と、キャップパッキン525がノズル面202に密着し変形する抗力、すなわちキャッピング状態でキャップばね510がキャップ520に加えている力との和程度に設定することが好ましい。
【0103】
また、磁石の吸着状態を維持するには特に動力源を必要としないため、液滴吐出装置が稼動休止状態であっても、キャップ磁石537は下ホルダプレート121の吸着状態を維持し、キャッピング状態が維持できる。さらに、キャッピング状態とキャッピング状態の解除とに伴うキャップ磁石537の動作は、下ホルダプレート121の吸着及び下ホルダプレート121からの離反のみであり、磨耗などによるキャップ磁石537の吸着力の劣化はなく、好適なキャップユニット501の下ホルダプレート121への固定力を安定的に維持できる。
【0104】
キャップ磁石537は、略長方形のキャップパッキン525を中心に略対角位置に2個が配置されて、バランスよくキャップ520と機能液滴吐出ヘッド11とを圧接させているが、さらに小形の磁石を両対角に4個設けるなど、多数の磁石を配置してもよい。また、磁石の形状は、本実施形態の円形以外に四角形やキャップベース521を囲む形状など自由に定めてよい。
【0105】
本実施形態の下ホルダプレート121は、全体が磁性体材料からなるが、下ホルダプレート121のキャップ磁石537に対応する部分に、磁性体材料からなる被吸着部材を設けてもよい。
【0106】
次に、第2の実施形態について、述べる。本実施形態では、機能液滴吐出ヘッド11を昇降させることによって、キャッピング作業を自動的に実施する構成になっている。本実施形態の昇降位置調整機構は、上記した実施形態の昇降位置調整機構151の昇降ねじ機構152に代えて、昇降モータを有する昇降機構を備えており、機能液滴吐出ヘッド11を昇降させることができる。
【0107】
また、第2の実施形態のキャップユニット601は、上記実施形態のキャップユニット501に加えて、一対のキャップピン610を、キャップホルダベース531の側面に突設してある。一対のキャップピン610と係合して、キャップユニット601を支持する、一対のキャップ支持体620が、Y軸上を移動する機能液滴吐出ヘッド11とキャップユニット6901とを対向させることができるような位置で、キャップスタンド(図示省略)を介して台板15上に固定されている。キャップ支持体620は、側面視略L字形状で、キャップピン610と係合するキャップピン穴623を設けたキャップ支持部622と、キャップスタンドに固定される支持体基部621が直角になっている。一対のキャップ支持体620は、キャップピン610とキャップピン穴623が係合し、キャップホルダベース531を挟んでキャップ支持部622が対向するように、キャップスタンド上に固定されている。この場合、キャップピン穴623は、キャップホルダベース531に突設したキャップピン610が、平面方向には位置決めされ、昇降方向には摺動可能な長穴である。
【0108】
本第2の実施形態のキャッピング動作は、機能液滴吐出ヘッド11がY軸上をキャップユニット601の上方まで移動し、昇降装置で下降して為される。機能液滴吐出ヘッド11及び下ホルダプレート121が下降して、キャップユニット601に近づくと、キャップ磁石537が下ホルダプレート121を吸着して、キャップユニット601が僅かに上昇し、キャップパッキン525とノズル面202とが密着してキャッピング状態となる。このとき、キャップピン610とキャップピン穴623とは、昇降方向では接触しておらず、上記実施形態と同様に、キャップユニット601はキャップ磁石537が下ホルダプレート121を吸着する力のみで支えられている。
【0109】
本第2の実施形態のキャッピング状態からの離反動作は、機能液滴吐出ヘッド11が、昇降装置で上昇して為される。機能液滴吐出ヘッド11及び下ホルダプレート121が上昇すると、キャップユニット601は下ホルダプレート121と一体に上昇し、キャップピン610がキャップピン穴623の上端に当接する。さらに下ホルダプレート121が上昇すると、キャップ磁石537と下ホルダプレート121とが離反し、キャップパッキン525とノズル面202とが離反して、キャッピング状態が解除される。
【0110】
この場合、キャップ磁石525を電磁石で構成してもよい。電磁石であれば、離反操作時には吸着力を解除できるため、磁石の吸着力の設定に際して、離反操作時の抗力を考慮することが不要で、より適切な吸着力を設定することができる。
【0111】
第2の実施形態において、ヘッドユニットを昇降させるヘッド昇降機構を設けてキャッピングを行っているが、ヘッドユニットの昇降方向は固定とし、キャップユニット601を昇降させるキャップユニット昇降機構を設けて、キャップユニット601を昇降させて、キャッピングを行ってもよい。
【0112】
この描画装置2は、液晶表示装置801の製造ラインにも適用することが可能である。図13は、液晶表示装置801の断面構造を表している。図13に示すように、液晶表示装置801は、カラーフィルタ802と、対向基板803と、カラーフィルタ802と対向基板803との間に封入された液晶組成物804と、バックライト(図示省略)と、で構成されている。対向基板803の内側の面には、画素電極805と、TFT(薄膜トランジスタ)素子(図示省略)とがマトリクス状に形成されている。そして、画素電極805に対向する位置に、カラーフィルタ802の赤、緑、青の着色層813が配列するようになっている。また、カラーフィルタ802および対向基板803のそれぞれ内側の面には、液晶分子を一定方向に配列させる配向膜806が形成されており、カラーフィルタ802および対向基板803のそれぞれ外側の面には、偏光板807が接着されている。
【0113】
カラーフィルタ802は、透光性の透明基板811と、透明基板811上にマトリクス状に並んだ多数の画素(フィルタエレメント)812と、画素812上に形成された着色層813と、各画素812を仕切る遮光性の仕切り814と、を備えており、着色層813および仕切り314の上面には、オーバーコート層315および電極層316が形成されている。
【0114】
液晶表示装置801の製造方法について説明すると、先ず、透明基板811に仕切り814を作り込んだ後、画素812部分にR(赤)・G(緑)・B(青)の着色層813を形成する。そして、透明アクリル樹脂塗料をスピンコートしてオーバーコート層815を形成し、さらに、ITO(indium tin oxide)から成る電極層816を形成して、カラーフィルタ802を作成する。また、対向基板803には、画素電極805とTFT素子を作り込んでおく。次に、作成したカラーフィルタ802および画素電極805が形成された対向基板803に配向膜806の塗布を行った後、これらを貼り合わせる。そして、カラーフィルタ802および対向基板803との間に液晶組成物804を封入した後、偏光板807およびバックライトを積層する。
【0115】
描画装置2は、上記したカラーフィルタのフィルタエレメント(R(赤)・G(緑)・B(青)の着色層813)の形成に用いることができる。また、画素電極805に対応する液体材料を用いることにより、画素電極805の形成にも用いることが可能である。
【0116】
描画装置2は、この他の電気光学装置、例えば、金属配線形成、レンズ形成、レジスト形成および光拡散体形成等の他、プレパラート形成を包含する装置等の製造に適用することが考えられる。上記した描画装置2を各種の電気光学装置(デバイス)の製造に用いることにより、これらを搭載した各種の電子機器を効率的に製造することが可能である。
【0117】
【発明の効果】
本発明のヘッドキャッピング機構によれば、上記したように、過大な押圧力が作用してノズル面を損なうことがなく、好適な圧接状態すなわちノズルの好適な密封状態を、容易に実現することができるという効果がある。さらに、液滴吐出装置が休止状態であっても、磁石の吸着状態は維持されるため、キャップの密封状態が維持されるという効果もある。
【0118】
また、本発明による液滴吐出装置は、上記したヘッドキャッピング機構を備えたことにより、適切なキャッピング(封止)を実現することができ、好適な初期充填やヘッドクリーニングを実施でき、機能液滴吐出ヘッドの状態を好適に保てるため、良好な液滴吐出が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機EL装置の縦断面図である。
【図2】本実施形態の描画システムの外観斜視図である。
【図3】本実施形態の描画装置の外観斜視図である。
【図4】本実施形態の描画装置の上面視平面図である。
【図5】本実施形態の描画装置の正面図である。
【図6】本実施形態の描画装置の側面図である。
【図7】(a)は機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図、(b)は機能液滴吐出ヘッドを配管アダプタに装着したときの断面図である。
【図8】本実施形態のサブユニットの外観斜視図である。
【図9】本実施形態のサブユニット及びブラケットユニットの外観斜視図である。
【図10】本実施形態のキャップユニットの外観斜視図である。
【図11】本実施形態のキャップユニットの断面図である。
【図12】第2の実施形態のキャップユニットの正面図及び側面図である。
【図13】液晶表示装置の断面図である。
【符号の説明】
1 描画システム 2 描画装置
11 機能液滴吐出ヘッド 31 ヘッドユニット
42 メンテナンス手段 121 下ホルダプレート
208 ノズルプレート 202 ノズル面
500 吸引ユニット 501 キャップユニット
502 吸引ポンプ 520 キャップ
530 キャップホルダ 510 キャップばね
536 位置決めピン 537 キャップ磁石
W 基板(ワーク)
Claims (8)
- 機能液滴吐出ヘッドのノズル面に着脱自在に装着されるキャップを備え、
当該キャップを、前記ノズル面に密着させて、前記ノズル面に形成したノズルを封止するヘッドキャッピング機構であって、
前記機能液滴吐出ヘッドを保持するヘッドホルダと、
前記キャップを保持するキャップホルダと、を備え、
前記ヘッドホルダは、磁性体材料からなる被吸着部と、位置決め凹部と、を有し、
前記キャップホルダは、前記被吸着部に対する吸着力により、前記キャップを前記ノズル面に密着させる磁石と、キャッピング状態で前記位置決め凹部が嵌合する位置決め凸部と、を有し、
前記ヘッドホルダには、前記位置決め凸部をスライドさせるためのガイド溝が設けられ、
前記位置決め凹部は、前記ガイド溝に形成されていることを特徴とするヘッドキャッピング機構。 - 前記位置決め凸部の片端部がテーパー形状であることを特徴とする請求項1に記載のヘッドキャッピング機構。
- 前記キャップホルダは、複数の前記位置決め凸部を有し、前記位置決め凸部の少なくとも1つは、断面円形に形成され、前記位置決め凸部の少なくとも1つは、断面紡錘形に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドキャッピング機構。
- 前記磁石は複数個設けられており、
前記複数の磁石は、前記キャップの中心に対して略点対称の位置に配設されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のヘッドキャッピング機構。 - 前記キャップは、その離接方向に伸縮する弾性部材を介して前記キャップホルダに保持されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のヘッドキャッピング機構。
- 前記キャップホルダを、前記キャップの離接方向に摺動自在にかつ抜止め状態に支持する支持部材を、さらに備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のヘッドキャッピング機構。
- 前記磁石の吸着力は、前記キャップおよび前記キャップホルダの荷重に対する反力と、密着時における前記キャップに設けたシール部材の変形に要する押圧力とのほぼ和に相当することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のヘッドキャッピング機構。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載のヘッドキャッピング機構と、
前記機能液滴吐出ヘッドを搭載するとともに、前記機能液滴吐出ヘッドをワークに対向させ、当該ワークに対し、前記機能液滴吐出ヘッドを相対移動させながら機能液滴を選択的に吐出する描画手段と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
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