JP4431936B2 - インクジェット記録用インク - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録方式に好適な水系顔料分散インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録用インクとしては、一般に水溶性染料と水性媒体とからなる染料インクが広く用いられている。しかしながら、水溶性染料の宿命ゆえに、耐水性に劣る、耐光性が不十分、ニジミのため解像度が上げられない等の問題点が指摘されている。かかる問題を解決するために、色材として染料に代えてカーボンブラック、有機顔料等、顔料を用いたインクが提案されている。
【0003】
一方で、インクジェット記録用インクには、長期保存中に物性が変化しないこと、微細なノズルを目詰まりさせないこと、印字物の濃度が高く鮮明であること、印字物の保存性(耐水性、耐光性など)などが要求されている。特に、顔料系のインクの場合、保存安定性(すなわち、その顔料を長期間安定に分散させること)、印字中または印字中断後の再起動時にノズルの目詰まりがないことが求められる。また同時に、記録紙への定着性も要求される。
【0004】
顔料系インクとしては、いわゆる分散剤にて顔料を水系媒体に微分散させた物が用いられている。分散剤には低分子の、いわゆる界面活性剤的な分散剤、あるいは高分子タイプの分散剤が広く用いられている。近年では親水部、疎水部からなるブロック共重合体を高分子分散剤として用いることにより、高い安定性を有する顔料分散体が得られている。またカーボンブラックの場合には、表面を酸価処理、グラフト処理などにより親水性を高め、自己分散するように工夫した物が上市されてきている。
【0005】
かかる顔料分散体をインクジェットのインクに用いる場合、顔料粒子の記録紙上での定着が問題になる。水性インクの定着には、通常、水溶性の高分子成分を用いることが考えられるが、良く知られているように水溶性高分子は溶液の粘度を高める働きを持つ。一方インクジェット用インクは、通常のインクに比較して非常に低粘度であることが求められるため、かかる水溶性の定着助剤成分を多く添加することは難しい。
かかる理由により、顔料の定着助剤としては、水溶性ではなく、水分散性の高分子成分が主に検討されてきた。
【0006】
顔料インクに水分散性の高分子成分、すなわち微粒子成分を添加することは、特にインクジェット記録に限定されることなく、幅広く行われている。たとえば、特開昭55−157668号公報には、水不溶の樹脂微粒子分散液中に顔料を分散させることにより、比較的低粘度においても分散安定性が保たれることが開示されている。また、特開平1−217088号公報には、特定の造膜温度を有する微粒子を使用することで、インクの保存安定性、流動性が改良されるとされている。しかしながら、これらのインクも低温および高温域での安定性が不十分であったり、目詰まりが依然として生じていた。同様に樹脂微粒子を用いたインクが特開平3−160068号公報および特開平4−18462号公報に開示されているが、これらのインクにあってもインクの安定性に関しては更なる改善の余地を残すものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、定着性を改良した顔料系インクジェット記録用インクにおいて、インクの安定性不良と吐出安定性不良を改良することを課題としている。
本発明者らは、特定の物性を有する樹脂の微粒子をインクに配合することにより、前記課題を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、顔料、および、破断伸度が10%以上である樹脂の微粒子を必須成分とするインクジェット記録用インクであり、前記樹脂の微粒子の最低造膜温度が40℃未満である、インクジェット記録用インクであり、前記樹脂のガラス転位温度が40℃未満である事を特徴とするインクジェット記録インクであり、前記樹脂がリエステル樹脂であることを特徴とするインクジェット記録用インクである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における顔料として、特別な制限なしに無機顔料、有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネスト法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラック、より具体的にはファーネスブラック,ランプブラック,アセチレンブラック若しくはチャネルブラック等のカーボンブラック(C.l.ピグメントブラック7)類を利用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを利用することができる。
【0010】
以下、より具体的に、主にイエロー用として用いることのできる顔料としては、C.l.ピグメントイエロー1(ハンザイエローG),2,3(ハンザイエロー10G),4,5(ハンザイエロー5G),6,7,10,11,12(ジスアゾイエローAAA),13,14,16,17,24(フラバントロンイエロー),55(ジスアゾイエローAAPT),61,61:1,65,73,74(ファストイエロー5GX),75,81,83(ジスアゾイエローHR),93(縮合アゾイエロー3G),94(縮合アゾイエロー6G),95(縮合アゾイエローGR),97(ファストイエローFGL),98,99(アントラキノン),100,108(アントラピリミジンイエロー),109(イソインドリノンイエロー2GLT),110(イソインドリノンイエロー3RLT),113,117,120(ベンズイミダゾロンイエローH2G),123(アントラキノンイエロー),124,128(縮合アゾイエロー8G),129,133,138(キノフタロンイエロー),139(イソインドリノンイエロー),147,151(ベンズイミダゾロンイエローH4G),153(ニッケルニトロソイエロー),154(ベンズイミダゾロンイエローH3G),155,156(ベンズイミダゾロンイエローHLR),167,168,172,173(イソインドリノンイエロー6GL),180(ベンズイミダゾロンイエロー)などを挙げることができる。
【0011】
更に、マゼンタ用の顔料としては、C.l.ピグメントレッド1(パラレッド),2,3(トルイジンレッド),4,5(lTR Red),6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38(ピラゾロンレッドB),40,41,42,88(チオインジゴボルドー),112(ナフトールレッドFGR),114(ブリリアントカーミンBS),122(ジメチルキナクリドン),123(ペリレンバーミリオン),144,146,149(ペリレンスカーレッド),150,166,168(アントアントロンオレンジ),170(ナフトールレッドF3RK),171(ベンズイミダゾロンマルーンHFM),175(ベンズイミダゾロンレッドHFT),176(ベンズイミダゾロンカーミンHF3C),177,178(ペリレンレッド),179(ペリレンマルーン),185(ベンズイミダゾロンカーミンHF4C),187,188,189(ペリレンレッド),190(ペリレンレッド),194(ペリノンレッド),202(キナクリドンマゼンタ),209(ジクロロキナクリドンレッド),214(縮合アゾレッド),216,219,220(縮合アゾ),224(ペリレンレッド),242(縮合アゾスカーレット),245(ナフトールレッド)、あるいは、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン),23(ジオキサジンバイオレット),31,32,33,36,38,43,50などを挙げることができる。
【0012】
更にまた、シアン用の顔料としては、C.l.ピグメントブルー15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6(以上いずれもフタロシアニンブルー),16(無金属フタロシアニンブルー),17:1,18(アルカリブルートナー),19,21,22,25,56,60(スレンブルー),64(ジクロロインダントロンブルー),65(ビオラントロン),66(インジゴ)等を挙げることができる。
【0013】
また、ブラック用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.l.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を用いることができる。更にまた、イエロー、シアン、あるいは、マゼンタ以外の有機顔料として、C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,7,13,14,15,16(バルカンオレンジ),24,31(縮合アゾオレンジ4R),34,36(ベンズイミダゾロンオレンジHL),38,40(ピラントロンオレンジ),42(イソインドリノンオレンジRLT),43,51,60(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),62(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),63;C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン),10(グリーンゴールド),36(塩臭素化フタロシアニングリーン),37,47(ビオラントロングリーン);C.I.ピグメントブラウン1,2,3,5,23(縮合アゾブラウン5R),25(ベンズイミダゾロンブラウンHFR),26(ペリレンボルドー),32(ベンズイミダゾロンブラウンHFL)等を挙げることができる。
【0014】
かかる顔料のインクにタイする添加量は、0.3〜30重量%、好ましくは1〜25重量%、さらに好ましくは2〜20重量%、なおさらに好ましくは3〜15重量%である。顔料の配合率がこの範囲に満たない場合には記録濃度が不足する場合gある。また顔料の配合量がこの範囲を超えると、ノズルヘッド部での目詰まりが生じやすくなる。
【0015】
顔料の粒径は3μm以下が好ましく、さらに1μm以下が好ましく、なおさらに好ましくは0.3μm以下、よりさらに好ましくは0.1μm以下、なお、さらに好ましくは0.8μm以下である。顔料粒子径が所定の粒径より大きいと保存安定性に問題が出る場合がある。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、この顔料は、顔料を分散剤で溶媒中に分散させて得られた顔料分散液としてインク組成物に添加されるのが好ましい。好ましい分散剤としては、従来公知の顔料分散液を調製するのに用いられている公知の分散剤、例えば高分子分散剤、界面活性剤を利用することができる。
【0017】
高分子分散剤の好ましい例としては天然高分子が挙げられ、その具体例としては、にかわ、ゼラチン、ガゼイン、アルブミンなどのタンパク質類;アラビアゴム、トラガントゴムなどの天然ゴム類;サボニンなどのグルコシド類;アルギン酸およびアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸誘導体;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられる。
【0018】
さらに高分子分散剤の好ましい例として合成高分子が挙げられ、ポリビニルアルコール類;ポリビニルピロリドン類;ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体などのアクリル系樹脂;スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体などのスチレン−アクリル酸樹脂;スチレン−マレイン酸;スチレン−無水マレイン酸;ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体;酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニルマレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニルクロトン酸共重合体、酢酸ビニルアクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体およびこれらの塩が挙げられる。これらのなかで、特に疎水性基を持つモノマーと親水性基を持つモノマーとの共重合体、および、疎水性基と親水性基とを合わせ持ったモノマーからなる重合体が好ましい。上記の塩としては、ジエチルアミン、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどとの塩が挙げられる。これらの共重合体は、重量平均分子量が3,000〜30,000であるのが好ましく、より好ましくは5,000〜15,000である。
【0019】
また、分散剤として好ましい界面活性剤の例としては、脂肪酸塩類、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩類、高級アルキルスルホン酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、スルホ琥珀酸エステル塩、ナフテン酸塩、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類などの陰イオン界面活性剤;脂肪酸アミン塩、第四アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウムなどの陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0020】
これらの分散剤の添加量は、顔料1に対して0.06〜50重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.125〜10重量%の範囲、さらに好ましくは0.2〜3重量%の範囲である。
【0021】
本発明における樹脂微粒子とは、一般にエマルジョンと呼ばれる樹脂分散液中に存在する分散質微粒子を用いることが好ましい。樹脂成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。本発明では、かかる樹脂をフィルム化した際の破断伸度が10%以上となることが必須である。
ここに破断伸度は、ポリテトラフルオロエチレン板上に積層厚み10μmとなるように樹脂をコーティングし、完全に造膜させた上で剥離することにより得られる樹脂フィルムにおいて、JIS−C2318に準拠した測定法により得られる破断伸度である。
破断伸度は10%以上であることが必須であり、15%以上が好ましく25%以上であることが、なお好ましい。
【0022】
本発明における樹脂粒子は、好ましくは0.2μm程度以下、より好ましくは0.15μm以下であり、さらに好ましくは0.01〜0.1μmの範囲、なおさらに好ましくは0.02〜0.08μmの範囲の粒径を有するものである。
これらの樹脂微粒子は、例えば樹脂を可塑化させた状態にて、必要に応じた界面活性剤とともに水に混合することによって得ることができる。例えば、アクリル系樹脂またはスチレン−アクリル系樹脂のエマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステルまたはスチレンと、(メタ)アクリル酸エステルと、場合により(メタ)アクリル酸と、界面活性剤とを水に混合することによって得ることができる。樹脂成分と界面活性剤との混合の割合は、通常10:1〜5:1程度とするのが好ましい。界面活性剤の使用量が前記範囲に満たない場合、エマルジョンが得難く、また前記範囲を越える場合、インクの耐水性が低下したり、浸透性が悪化する傾向があるので好ましくない。界面活性剤は特に限定されないが、好ましい例としては、アニオン系界面活性剤(例えば、ドデシルベンザンスルホン酸ナトリウム、ラウルリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩など)、ノニオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなど)が挙げられ、これらを単独または二種以上混合して用いることができる。
【0023】
また、これらの樹脂粒子は、乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法などで得られる樹脂エマルジョンに含まれる樹脂微粒子を用いることができる。
さらにこれらの樹脂粒子には、自己乳化能を有する樹脂から得られる乳化物中に含まれる樹脂微粒子を用いることもできる。本発明においては、樹脂は親水性部分と、疎水性部分とを合わせ持つ重合体であることが好ましい。これら親水性部分と、疎水性部分とを合わせ持つ重合体は自己乳化機能を有する場合が多い。
【0024】
本発明における樹脂の、最低造膜温度は40℃未満であることが好ましく35℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがなお好ましく、さらには25℃以下であることが好ましい。
【0025】
本発明における樹脂の、ガラス転位温度は40℃未満であることが好ましく 5℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがなお好ましく、さらには25℃以下であることが好ましい。
【0026】
本発明における樹脂は好ましくは、ガラス転位温度は40℃未満のポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル樹脂両方を用いることができる。
ポリエステル樹脂は多価カルボン酸と多価アルコールの縮合により得られる。
ポリエステル樹脂に用いられる多価カルボン酸類としては、例えば、
・テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタルレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、9,10−アントラセンジカルボン酸、9,10−アントラセンジプロピオン酸、ジフェン酸、などの芳香族ジカルボン酸、
・p−オキシ安息香酸p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸、
・コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、
・シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環属多価カルボン酸、
・フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ダイマー酸、トリマー酸、テトラマー酸、等の脂肪族不飽和多価カルボン酸、
・フェニレンジアクリル酸等の芳香族不飽和多価カルボン酸
・ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、等の脂環族ジカルボン酸、
・トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の三価以上の多価カルボン酸
等を例示できる。
本発明においては、多価カルボン酸類に一部、モノカルボン酸類を併用しても良い。モノカルボン酸類としては芳香族モノカルボン酸類が好ましい。芳香族モノカルボン酸としては例えば、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸、4−メチル安息香酸、3メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、およびこれらの低級アルキルエステル、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸、n-ドデシルアミノカルボニル安息香酸、タ−シャルブチル安息香酸、、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、タ−シャルブチルナフタレンカルボン酸等を用いることができ、また特にタ−シャルブチル安息香酸を使用することがより好ましい。該芳香族モノカルボン酸の使用量は酸成分に対して2〜25mol%、さらに5〜20mol%、またさらに8〜16mol%の使用がより好ましい。
【0027】
ポリエステル樹脂に用いられる多価アルコ−ル類としては脂肪族多価アルコ−ル類、脂環族多価アルコ−ル類、芳香族多価アルコ−ル類等を例示できる。
・脂肪族多価アルコ−ル類としては、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、2,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル類、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、グリセリン、ペンタエルスリト−ル等のトリオ−ルおよびテトラオ−ル類等を例示できる。
・脂環族多価アルコ−ル類としては1,4−シクロヘキサンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、スピログリコ−ル、水素化ビスフェノ−ルA、水素化ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、トリシクロデカンジオ−ル、トリシクロデカンジメタノ−ル等を例示できる。
・芳香族多価アルコ−ル類としてはパラキシレングリコ−ル、メタキシレングリコ−ル、オルトキシレングリコ−ル、1,4−フェニレングリコ−ル、1,4−フェニレングリコ−ルのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物等を例示できる。
・さらにポリエステルポリオ−ルとして、ε−カプロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られる、ラクトン系ポリエステルポリオ−ル類等を例示することができる。
・またカルボン酸類と同様、脂肪族アルコ−ル、芳香族アルコ−ル、脂環族アルコ−ル等のモノアルコ−ルを用いることができる。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂の数平均分子量は1000〜20000の範囲が好ましい。また、2000以上5000以下の範囲が好ましく、3000以上4000以下の範囲がさらに好ましい。
ガラス転移点、ならびに分子量が、これより低い場合には、特に耐刷性に問題が出る。
【0029】
本発明においてはポリエステル樹脂がイオン性基を有することが必須である。イオン性基の含有量は 20〜2000meq./kgの範囲が好ましい。
イオン性基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基もしくはそれらのアンモニウム塩、金属塩等のアニオン性基、または第1級ないし第3級アミン基等のカチオン性基であり、好ましくは、スルホン酸アルカリ金属塩の基、カルボン酸アンモニウム塩基を用いることができる。これらイオン性基はポリエステルに共重合された形態、あるいは高分子末端に導入された形態にて含有されることが好ましい。
ポリエステルに共重合可能なスルホン酸金属塩基含有多価カルボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸、およびまたはそれらの塩を例示することができる。またスルホ安息香酸の金属塩を併用することによって高分子末端にスルホン酸金属塩基を導入することができる。塩としてはアンモニウム系イオン、Li、Na、K、Mg、Ca、Cu、Fe、Ni。Co、Al等の塩があげられ、特に好ましいものはK塩またはNa塩である。
カルボキシル基はポリエステルの重合末期にトリメリット酸等の多価カルボン酸を系内に導入することにより高分子末端に付加することができる。さらにこれをアンモニア、水酸化ナトリウム等にて中和することによりカルボン酸塩の基に交換することができる。
これらイオン性基の含有量は、該ポリエステル樹脂に対し、20〜2000meq./kgの範囲が必須であり、好ましくは20〜500meq./kg、さらの好ましくは50〜200meq./kgである。
【0030】
本発明においては、かかるイオン性基含有ポリエステル樹脂を水分散化して用いる。
本発明におけるイオン性基含有ポリエステル樹脂は自己乳化水分散性を有する。本発明のイオン性基含有ポリエステル樹脂の水系微分散体は公知の任意の方法によって製造することができる。すなわち、イオン性基含有ポリエステル樹脂と水溶性有機化合物とを50〜200℃であらかじめ混合し、これに水を加えるか、あるいはイオン性基含有ポリエステル系樹脂と水溶性有機化合物との混合物を水に加え、40〜120℃で撹拌することにより製造される。あるいは水と水溶性有機化合物との混合溶液中にイオン性基含有ポリエステル系樹脂を添加し、40〜100℃で撹拌して分散させる方法によっても製造される。水溶性有機化合物としてはエタノ−ル、ブタノ−ル、イソプロパノ−ル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、等を使用することができる。界面活性剤を併用は好ましくないが、特に使用を制限するものではない。このようにして得られる水系微分散体の平均粒子径は概ね0.01〜1.0μm程度である。本発明ではかかる水分散化したポリエステル樹脂エマルションに含まれる粒子を樹脂微粒子として用いることができる。
【0031】
本発明のインクにおいて、顔料粒子と樹脂微粒子の割合は
顔料/樹脂=100/150 〜 100/10 の範囲が好ましく、
顔料/樹脂=100/110 〜 100/20 の範囲がより好ましく、
顔料/樹脂=100/80 〜 100/30 の範囲がなお好ましい。
樹脂微粒子の割合が、前記範囲を下回る場合その添加の効果が得られず、また前記範囲を越える場合印字濃度が低下し、またインクの粘度が高くなりすぎてしまう場合があるので好ましくない。
【0032】
また、本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインクはさらに湿潤剤を含んでなるのが好ましい。湿潤剤の好ましい例としては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられ、特にエチレンオキサイド基を有するものが好ましく、ジエチレングリコールが最も好ましい。さらに、これらの湿潤剤に加えて、低沸点有機溶剤をさらに添加するのが好ましい。低沸点有機溶剤の好ましい例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert- ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。特に一価アルコールが好ましい。
【0033】
これらの湿潤剤の添加量はインクの0.5〜40重量%、好ましくは2〜20重量%、の範囲が適当である。また、低沸点有機溶剤の添加量はインクの0.5〜10重量%、好ましくは1.5〜6重量%、の範囲が適当である。
【0034】
さらに本発明によるインクには、インクの諸物性を改善するために、必要に応じて適当な添加剤を添加することができる。添加剤の具体例としては、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防カビ剤、防腐剤などが挙げられる。
【0035】
本発明によるインクは、前記成分を適当な方法で分散、混合することによって製造することができる。好ましくは、有機溶剤および揮発性の成分を除いた混合物を、適当な分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミルなど)で混合し、均質な組成物としてから、有機溶剤および揮発性の成分を添加するのが好ましい。その後、目詰まりの原因となる粗大粒子および異物を除去するためにろ過(好ましくは金属フィルター、メンブランフィルターなどを用いた減圧または加圧ろ過)または遠心分離に付すのが好ましい。
【0036】
作用
本発明によるインクは、インク組成物はノズルの先端において非常に薄くかつ脆い被膜を形成する。この被膜はインク組成物からの更なる水などの成分の蒸発を防止し、固形成分の析出によるノズルの目詰まりを防止する。一方、この被膜は薄くかつ脆いため、通常行われているクリーニング操作(復帰操作)により容易に破れ、次の印字を直ちに行うことが可能となる。また、本発明によるインクによれば、印字濃度が高くかつ良好な耐水擦性を持った印字を得ることができる。理論に拘束されるわけではないが、顔料粒子と樹脂微粒子が、お互いの間隙を埋め合うようにバランスよく造膜するため、緻密な膜が形成される物と考えられる。かかる緻密な膜は、ヘッド面のように平滑で、かつ吸水しない表面上では脆くて壊れやすく、逆に記録紙上のように比表面積が大きく、吸湿性の高い表面上では、堅固な皮膜を形成する。
興味深い点は、本発明によるインクの保存安定性がすぐれることである。かかる顔料型のインクに樹脂微粒子を配合することにより、顔料粒子に樹脂微粒子が吸着され、結果として粒子間の反発を強めて、特性が改善されることを主張する向きがあるが、本発明者らは、その考え方を指示しない。むしろ、本発明者らは、樹脂微粒子が、顔料粒子と顔料粒子の間に入り、粒子間の反発作用を補助することにより保存安定性に繋がる物であると考察する。なんとなれば、樹脂微粒子が顔料粒子に吸着されると、結果として分散質の粒子径が増大し、ストークスの定理にしたがって粒子の沈降が生じるからである。本発明のように高伸度の、好ましくは低Tgである、比較的柔らかい部類の樹脂粒子の添加により効果が有るわけであるから、樹脂粒子と顔料粒子がインク中で融着していないことは自明と言える。
【0037】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、MFTは最低造膜温度を表す。
【0038】
[ポリエステル樹脂の重合]
温度計、撹拌機を備えたオ−トクレ−ブ中に、
テレフタル酸ジメチルエステル 90 重量部、
イソフタル酸ジメチルエステル 90 重量部、
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル 9 重量部、
エチレングリコ−ル 62 重量部、
ネオペンチルグリコール 104 重量部、
テトラブトキシチタネ−ト 0.1 重量部、
を仕込み120〜220℃で120分間加熱してエステル交換反応を行った。その後、反応系の温度を220〜240℃に上げ、系の圧力1〜10mmHgとして60分間反応を続けた結果、共重合ポリエステル樹脂(A1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(A1)の組成はNMR分析により、
テレフタル酸 48mol%、
イソフタル酸 49mol%、
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 3mol%、対酸成分
エチレングリコ−ル 50mol%、
ネオペンチルグリコール 50mol%、対アルコール成分
であった。
DSC法にて求めたガラス転移温度は67℃、酸価0.07[mg/KOHg]、GPCにより求めた数平均分子量は15000、S元素の蛍光X線分析により求めたスルホン酸ナトリウム基当量(イオン性基)は125m当量/kgであった。また、樹脂をポリテトラフルオロエチレン板状に溶融整形して作製した厚み50μmのフィルムを用い、幅15mm、長さ100mmの短冊状サンプルを作製し、室温25℃の環境にてJIS−C−2318に準拠した方法で求めた破断伸度は3%であった。
【0039】
以下同様に原料を変えて、以下に示すポリエステル樹脂を作製した。
ポリエステル樹脂(A2)
組成
イソフタル酸 95mol%、
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 5mol%、対酸成分
ジエチレングリコール 100mol% 対アルコール成分
ガラス転位温度 20℃
酸価 0.15mg/KOHg
数平均分子量 12000
スルホン酸ナトリウム基当量 210m当量/kg
破断伸度 800%
ポリエステル樹脂(A3)
組成
テレフタル酸 35mol%、
イソフタル酸 35mol%、
セバシン酸 28mol%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 2mol%、対酸成分
エチレングリコ−ル 50mol%、
ネオペンチルグリコール 50mol%、対アルコール成分
ガラス転位温度 28℃
酸価 0.12mg/KOHg
数平均分子量 10000
スルホン酸ナトリウム基当量 110m当量/kg
破断伸度 35%
【0040】
[ポリエステル樹脂微粒子水系微分散体の製造]
温度計、攪拌機、還流筒を備えた四つ口フラスコに、ポリエステル樹脂(A1)300重量部、メチルエチルケトン150重量部、テトラヒドロフラン100重量部を仕込み、沸点(約80℃)にて還流を行いながら溶解した後、系を70℃まで冷却し、70℃の水680部を添加し水分散化した後、蒸留用フラスコに入れ、留分温度が100℃に達するまで蒸留し、冷却後に水を加えて濃度調整を行い、脱溶剤された固形分濃度30重量%のポリエステル水系微分散粒子(B1)を得た。堀場製作所製粒度分布計LB−500にて測定されたポリエステル水系微分散粒子(B1)の分散粒子径は98nmであった。所定の温度に加温したホットプレートに、得られた水分散体を塗布したアルミホイルを置き、フィルム化の状態を観察し、最低造膜温度MFTを求めた。ポリエステル水系微分散粒子(B1)のMFTは60℃であった。
【0041】
以下、同様に操作し、ポリエステル樹脂(A2)から以下に示すポリエステル水分散体(B2)を、ポリエステル樹脂(A3)からポリエステル水分散体(B3)を得た。
ポリエステル樹脂微粒子水分散体(B2)
固形分 30 重量%
粒子径 65 nm
MFT 15 ℃
ポリエステル樹脂微粒子水分散体(B3)
固形分 30 重量%
粒子径 110 nm
MFT 35 ℃
【0042】
[顔料水分散体の製造]
サンドミル(安川製作所)中に、
カーボンブラックMA7 5重量部
(三菱化成工業株式会社製)
スチレン−無水マレイン酸共重合体 5重量部
(分散剤)
脱イオン水 76重量部
を仕込み、ガラスビース(直径1.7mm、混合物の1.5倍量(重量))とともに2時間分散させた。その後ガラスビーズを取り除き、カーボンブラックの水系分散体(K1)を得た。
以下同様に
カーボンブラックMA100 5重量部
(三菱化成工業株式会社製)
から、カーボンブラック水分散体(K2)を、
顔料KETYELLOW403 5重量部
(大日本インキ化学工業株式会社製)
から、黄色顔料水分散体(Y1)を、
顔料KET Red 309 5重量%
(大日本インキ化学工業株式会社製)
から、マゼンタ顔料水分散体(M1)を、
顔料KETBLUEEX−1 5重量%
(大日本インキ化学工業株式会社製)
から、シアン顔料分散体(C1)を、得た。
【0043】
実施例1〜10 比較例1〜5
温度計、攪拌機、還流筒を備えた四つ口フラスコに、前記製造例で得られた ポリエステル樹脂微粒子水分散体(B2)とカーボンブラック水分散体(K1)を用い、以下に示す組成比で調合し
カーボンブラック水分散体(K1) 81 重量部
樹脂微粒子水分散体 (B2) 10 重量部
グリセリン 6 重量部
アルギニン 0.5 重量部
炭酸水素ナトリウム 0.5 重量部
トリエタノールアミン 1 重量部
攪拌しながら、70℃に加熱し、1時間保持した後に、室温まで冷却し、0.8μmメンブレンフィルターにて濾過して、インクジェット記録用インク(IJP1)を得た。以下同様にカーボンブラック水分散体、顔料水分散体、ポリエステル樹脂微粒子水分散体を変えて同様に操作し、表1に示すインクジェット記録用インクを得た。
【0044】
比較例6〜10
同じく、カーボンブラック水分散体、顔料水分散体を用い、以下に示す組成比で調合し
カーボンブラック水分散体(K1) 81 重量部
脱イオン水 10 重量部
グリセリン 6 重量部
アルギニン 0.5 重量部
炭酸水素ナトリウム 0.5 重量部
トリエタノールアミン 1 重量部
【0045】
得られたインクジェット記録用インクの特性を次のように評価した。
(a)目詰まり性
インクをインクジェットプリンタMJ700V2C(セイコーエプソン株式会社製)に充填し、10分間連続して印字した後、印字を停止した。ヘッドにキャップをせずにプリンタを、実施例1〜8ならびに比較例1および2のインクについては40℃、25%RHの環境に2週間放置し、また実施例9〜21および比較例3のインクについては常温で1日放置した。放置後、ノズルのクリーニング操作を行い、その後印字を行った。カスレ、抜けなどの不良印字がなく、初期と同等の印字が可能となるまでのクリーニング操作の回数で、そのインクの目詰まり特性を評価した。その結果は、表に示される通りである。表中、
0〜2回のクリーニング操作で初期と同等の印字が得られる場合−○
3〜5回のクリーニング操作で初期と同等の印字が得られる場合−△
6回以上のクリーニング操作によっても初期と同等の印字は不可能−×
【0046】
(b) 保存安定性
ラボランスクリュウ管瓶にインク50ccを入れ、70℃にて1ヶ月間放置し、沈降物の有無を調べた。その結果は、表に示される通りである。
沈降物なし−○
沈降物あり−×
【0047】
(c)耐水性
インクジェットプリンタMJ700V2Cで、A4サイズのXeroxR紙(ゼロックス株式会社製)にベタ画像をプリントし、24時間自然乾燥させた。次いでプリント物を一辺が6cmの正方形に切り取り、光学濃度計DM−800(大日本スクリーン製造株式会社製)にて記録濃度を測定した。次いで、その印字物を室温、マグネティックスターラーにて緩やかに攪拌された3000ccの脱イオン水に1分間浸漬し、引き上げて、自然乾燥させた後に再び光学濃度を測定、濃度保持率を次式で算出した。
濃度保持率=(処理後の濃度/処理前の濃度)×100[%]
なお、光学濃度の測定はサンプルを標準白色板の上においておこなっている。
【0048】
(d)耐消しゴム性
インクジェットプリンタMJ700V2CでA4サイズのXeroxR紙(ゼロックス株式会社製)にベタ画像をプリントし、24時間自然乾燥させた。次いでプリント物を一辺が6cmの正方形に切り取り、光学濃度計DM−800(大日本スクリーン製造株式会社製)にて記録濃度を測定した。次いで、その印字物をプラスチック消しゴム、ケシ−51N(コクヨ製)にて10回擦り、その後に再び光学濃度を測定、濃度保持率を次式で算出した。
濃度保持率=(処理後の濃度/処理前の濃度)×100[%]
【0049】
(e)印字品質(にじみ)
インクジェットプリンタMJ700V2Cで、Xerox R紙(ゼロックス株式会社製)に印字し、印字のにじみの発生の有無を調べた。その結果は、表に示される通りである。表中、
にじみがなく鮮明な印字の場合−○
ひげ状ににじみが発生した場合−△
文字の輪郭がはっきりしないほどにじみが発生した場合−×
【0050】
(f)裏写り
インクジェットプリンタMJ700V2CでA4サイズのXeroxR紙(ゼロックス株式会社製)にベタ画像をプリントし、紙面の裏側の濃度を測定した。なお、未記録の紙の光学濃度値は0.05であった。
【0051】
【表1】
Figure 0004431936
【0052】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明のインクジェット記録用インクは、ノズルの目詰まりが無く、印字品位に優れ、裏写りが無く、保存安定性にも優れ、また得られたプリント物の耐水性、耐消しゴム性が優れるなど、極めて有用な物である。

Claims (1)

  1. 顔料粒子、および、25℃での破断伸度が10%以上である樹脂微粒子を必須成分とし、該樹脂微粒子はガラス転位温度が40℃未満のポリエステル樹脂からなり、該樹脂微粒子の最低造膜温度が40℃未満であり、該顔料粒子と該樹脂微粒子の割合が、顔料粒子/樹脂微粒子=100/80〜100/30の範囲内であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
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