この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、乗用型の田植機1の側面図と平面図を示すものであり、この乗用型の田植機1は、走行車両2と6条植えの苗植付部3とを備えて構成される。また、図3は田植機1の一部を示す平面図を示し、図4は田植機1の副変速装置11を示す一部展開した平面部分断面図を示す。
なお、以下の実施例には副変速装置11としてベルト式の変速装置について詳述しているが、副変速装置11として油圧式の無段変速装置(HST)を使用してもよい。この油圧式の無段変速装置を使用するとき、副変速レバー105のレバー操作により、HSTのトラニオン軸141(図17)に設けられた斜板の傾斜角度を変更することで副変速装置11の変速出力を変更させる。
走行車両2の前後左右略中央には原動機となるエンジン4を備えており、このエンジン4の左側に設けたエンジン出力プ−リ5から伝動ベルト6を介して中継プ−リ7と一体回転する中継軸8が駆動される。この中継軸8の駆動が油圧ポンプ9へ入力される構成となっており、従って、この油圧ポンプ9はエンジン4の駆動に伴って駆動されるようになっている。
また、前記中継軸8の動力は、変速用伝動ベルト10を備える副変速装置11に伝動され、該副変速装置11からの伝動を断つことができる主クラッチ(図示せず)を備える主ミッションケ−ス12内へ伝動される。なお、前記副変速装置11は、前記変速用伝動ベルト10が巻きかけられた駆動プ−リ13及び従動プ−リ14のプ−リ径を変更することにより変速する構成となっている。
そして、前記主ミッションケ−ス12からの動力により、該主ミッションケ−ス12の左右両端部に突出した前輪駆動軸15の駆動で左右一対の前輪16がそれぞれ駆動回転されると共に、主ミッションケ−ス12から左右それぞれの後輪伝動軸17を介して左右の後輪伝動ケ−ス18内に伝動され該後輪伝動ケ−ス18に設けられた後輪駆動軸19の駆動で左右一対の後輪20がそれぞれ駆動されるようになっている。なお、該後輪20は、前記主ミッションケ−ス12の後端部に固着した主フレ−ム21に対して前後方向の回動軸22回りに回動自在の後輪ロ−リングフレ−ム23の左右両端に左右それぞれの後輪伝動ケ−ス18を固着して支持され、主フレ−ム21に対して左右方向にロ−リング自在に設けられ、圃場の耕盤の凹凸に追従するようになっている。従って、この走行車両2は、走行装置である前輪16及び後輪20が駆動されて走行する構成となっている。
前記副変速装置11は、前記中継軸8と一体回転する駆動プ−リ13と主ミッションケ−ス12への入力軸24と一体回転する従動プ−リ14と前記駆動プ−リ13及び前記従動プ−リ14に巻きかけられた変速用伝動ベルト10とを備えて構成される。前記駆動プ−リ13及び前記従動プ−リ14は、前記変速用伝動ベルト10が接触する左右のプ−リ部13a,13b,14a,14bが別個に構成された割りプ−リであり、前記左右のプ−リ部13a,13b,14a,14bの間隔を変更することにより変速用伝動ベルト10が巻きかけられる有効径が変更可能に構成されている。
前記駆動プ−リ13について説明すると、駆動プ−リ13の左側プ−リ部13aは中継軸8に固定され、右側プ−リ部13bは中継軸8の軸方向すなわち左右方向に摺動可能に構成されていて、該右側プ−リ部13bは軸受25を介して回転する駆動側変速操作カム26によって左右位置が規制される。該駆動側変速操作カム26の駆動プ−リ13とは反対側(主ミッションケ−ス12側)の端面には円周方向に沿って傾斜状に形成された突条26aを設け、該突条26aに主ミッションケ−ス12に取り付けた駆動側ロ−ラ27が当接している。そして、前記駆動側変速操作カム26の第一ア−ム部26bに変速ロッド28を連結しており、該変速ロッド28の前後移動により駆動側変速操作カム26が回転すると、該駆動側変速操作カム26の突条26aの前記駆動側ロ−ラ27との接点が円周方向に沿って変化し、駆動側変速操作カム26の主要部が左右方向へ移動して右側プ−リ部13bが左右に移動し、左右のプ−リ部13a,13bの間隔を変更して駆動プ−リ13の有効径を変更するようになっている。
次に、従動プ−リ14について説明すると、従動プ−リ14の右側プ−リ部14bは主ミッションケ−ス12への入力軸24に固定され、左側プ−リ部14aは前記入力軸24の軸方向すなわち左右方向に摺動可能に構成されていて、該左側プ−リ部14aは軸受29を介して回転する従動側変速操作カム30によって左右位置が規制される。従動側変速操作カム30の従動プ−リ14とは反対側(左側)の端面には円周方向に沿って傾斜状に形成された突条30aを設け、該突条30aには機体に固着された支持プレ−ト31に取り付けた従動側ロ−ラ32が当接している。
そして、前記従動側変速操作カム30のア−ム部30bに駆動側変速操作カム26の第二ア−ム部26cと連結する連結ロッド33を連結しており、駆動側変速操作カム26の回転に伴う前記連結ロッド33の前後移動により従動側変速操作カム30が回転すると、該従動側変速操作カム30の突条30aの前記従動側ロ−ラ32との接点が円周方向に沿って変化し、従動側変速操作カム30の主要部が左右方向へ移動して左側プ−リ部14aが左右に移動し、駆動プ−リ13の左右のプ−リ部13a,13bの間隔の変更とは相反する方向又は同じ方向に従動プ−リ14の左右のプ−リ部14a,14bの間隔を変更し、従動プ−リ14の有効径を変更するようになっている。
従って、高速で伝動するときには、駆動プ−リ13の左右幅を狭くして該駆動プ−リ13の有効径を大きくすると共に従動プ−リ14の左右幅を広くして該従動プ−リ14の有効径を小さくする。逆に、低速で伝動するときには、駆動プ−リ13の左右幅を広くして該駆動プ−リ13の有効径を小さくすると共に従動プ−リ14の左右幅を狭くして該従動プ−リ14の有効径を大きくする。これにより、駆動プ−リ13及び従動プ−リ14の左右幅を共に変更するので、この副変速装置11において、広範囲に変速できるようになっている。
エンジン4の上方には操縦席35を設け、該操縦席35の前側にはステアリングハンドル36を設けている。該ステアリングハンドル36の操舵角は図示しないがハンドルポスト81内に設けられている操舵角センサ110(図8)で検出する。
また、走行車両2の後部には昇降リンク機構37を設け、該昇降リンク機構37を介して前記苗植付部3を装着し、油圧ポンプ9からの油圧により油圧切替バルブ38を介して作動する植付部(油圧)昇降シリンダ39の伸縮により前記苗植付部3が昇降するように構成している。また、該苗植付部3は、前記主ミッションケ−ス12内からの動力がエンジン4の右側方を通過するように設けられた植付伝動軸40により伝動されて作動する構成となっている。なお、前記植付伝動軸40の中途部には植付クラッチケ−ス41を設けており、該植付クラッチケ−ス41に設けた植付クラッチピン124(図14)の作動により苗植付部3の駆動の入切を行えるようになっている。
図14に植付部昇降用油圧装置と植付クラッチ(いずれも図示せず)の切替機構の概略構成図を示し、その構成について説明する。
操縦席35の右側方に設けられている植付昇降レバー104は、レバー軸113回りに上下に回動操作するようになっており、操作範囲内に上から順に「上げ」、「固定」、「自動」及び「植付」の各操作位置が設定されている。
また、レバー軸113には油圧装置と植付クラッチ(センサ111(図8)でクラッチ入りを検出)の切替操作用の操作アーム114が取り付けられ、この操作アーム114の先端部に軸支されているカラー115に位置決めアーム117と油圧アーム118とが接当している。該位置決めアーム117と油圧アーム118は共通の軸119にそれぞれ回動自在に取り付けられている。
位置決めアーム117のカラー接当面には4つの凹部が形成されており、植付昇降レバー104を前記操作位置に操作すると、カラー115がそれぞれの操作位置に対応する凹部に嵌り込み、位置決めアーム117をカラー115の側に付勢するスプリング121により、前記嵌り込み位置で安定するようになっている。
一方、油圧アーム118のカラー接当面には段差が設けられており、植付昇降レバー104の操作位置に応じて油圧アーム118が回動し、その作用部118aが油圧バルブ122のスプール122aを押し込んだり、又は作用部118aがスプール122aから離れる方向に移動して油圧バルブ122に内蔵されたスプリングの作用でスプール122aが突出したりして油圧バルブ122を切り替える。具体的には、「固定」に操作されているときは油圧バルブ122が中立の状態にあり、「上げ」に操作されているときは昇降用油圧シリンダ39のピストンが突出作動(植付部3が上昇)する側に油圧バルブ122が切り替わり、「自動」もしくは「植付」に操作されているときは昇降用油圧シリンダ39のピストンが引っ込み作動(植付部3が下降)する側に油圧バルブ122が切り替わる。
また、主ミッションケース12の上面に突出する植付クラッチ操作用クラッチピン124の上端部に植付クラッチアーム125の一端部が係合し、その他端部が操作アーム114の中間部と植付クラッチワイヤ126を介して結ばれている。これにより、植付昇降レバー104が「自動」もしくは「植付」に操作されているときは、クラッチピン124が押し込まれて植付クラッチが入になり、「上げ」もしくは「固定」に操作されているときは、スプリング128によってクラッチピン124が戻されて植付クラッチが切になる。
位置決めアーム117には、後述するリフトペダル130の操作に連動させるリフトワイヤ131が連結されている。リフトペタル130を所定量踏み込むと、リフトワイヤ131が引っ張られ、位置決めアーム117がカラー115から離れる側に回動する。すると、位置決めアーム117によるカラー115の位置規制がなくなるため、植付昇降レバー104がスプリング132によって「上げ」位置まで移動し、昇降用油圧シリンダ39のピストンが突出作動して植付部3が上昇するとともに、植付クラッチが切りになる。つまり、植付部3が作業状態にある時、リフトペタル130の踏み込み操作で植付部3を非作業状態に切り替えられる。逆に、植付部3が非作業状態にある時にリフトペタル130を踏み込み操作しても、植付部3は作業状態に切り替わらない。
なお、植付昇降レバー104のみで植付部3の操作をしようとすると、走行車両2の旋回直前にステアリングハンドル36から手を離してレバー104を操作しなければならないので、作業者はハンドリングに集中できない。前述のリフトペダル130を設けると、ステアリングハンドル36から手を離す必要がなく、旋回時に作業者はハンドリングに集中できる。
苗植付部3は、苗載置台42、植付伝動部43及び各条の苗植付装置44を備えて構成され、前記植付伝動軸40の動力が入力される前記植付伝動部43を介して伝動され作動する構成となっている。苗植付部3の下部には中央部にセンタ−フロ−ト46及び両側部にサイドフロ−ト47を設けており、これらのフロ−ト46,47が圃場面を滑走するようになっている。前記フロ−ト46,47は、それぞれ左右方向の枢支軸48回りに回動自在に取り付けられ、圃場面の凹凸により該フロ−ト46,47の上下方向の傾斜角度が変更されるようになっている。また、前記センタ−フロ−ト46の前部上方にはフロ−ト迎い角検出センサ46aを設けており、このフロ−ト迎い角検出センサ46aにより前記センタ−フロ−ト46の上下方向の傾斜角度が検出されるようになっている。そして、前記フロ−ト迎い角検出センサ46aの検出値に基づいて油圧切替バルブ38を作動させ、苗植付部3を下降させた状態で前記センタ−フロ−ト46の迎い角が所定値となるように苗植付部3を昇降制御し、苗植付部3が圃場面から所定の高さに維持されるようにしている。
前記苗載置台42は、上部を苗載置台支持ロ−ラ54、下部を左右移動ガイド板55により左右移動可能に支持されている。そして、苗植付部3は、苗植付装置44の作動に伴って、苗載置台42が固着された苗載置台左右移動棒56を左右移動させて苗載置台42を左右移動させ、マット状の苗を苗植付装置44により一株づつ掻き取る構成となっている。なお、前記左右移動ガイド板55には、苗植付装置44の苗掻き取り口55aを設けている。従って、苗載置台42は、左右移動により苗植付装置44が苗を取り出す苗取出位置55aに一株分づつ苗を供給する苗供給装置となっている。なお、苗植付装置44が苗を取り出すときに苗載置台42の左右移動速度が遅くなるように植付伝動部43に備える苗供給変速部(図示せず)により苗載置台左右移動棒56を不等速に左右移動させる構成となっており、苗植付装置44の苗取出周期と同周期で苗載置台42の左右移動速が不等速に変速されるようになっている。
苗載置台42には、各条に苗送りベルト57を設けている。各条の前記苗送りベルト57は、下側の駆動ロ−ラ58と上側の従動ロ−ラ59とに巻回されている。苗載置台42の左右移動終端において、植付伝動部43からの動力により、前記駆動ロ−ラ58が所定量回転して苗送りベルト57がマット状の苗を苗植付装置44側に所定量づつ順次移送する構成となっている。
苗植付装置44は、植付伝動部43の植付伝動フレ−ム43aの後端部から出力され機体の走行速度に比例して一定速度で回動する苗植付装置駆動軸60の駆動により回転駆動する回転ケ−ス61と該回転ケ−ス61の両端部にそれぞれ装着された苗植付具62とを備えて構成され、該苗植付具62が前記苗掻き取り口55a上の苗を掻き取り、掻き取った苗を圃場に植え付けていくようになっている。
なお、昇降リンク機構37に設けた植付部昇降位置検出用ポテンショメータ67(図1)で苗植付部3を所定の対地高さとなるよう昇降制御している状態で耕盤深さ検出ができる。
また、苗植付部3の左右両端部には、それぞれ隣接する後作業行程の走行路の中央となる圃場内の地面に線引きをする線引きマ−カ90を設けている。この線引きマ−カ90は、線引きマ−カモータ91を駆動して該マ−カ90を先端部に取り付けたマーカアーム92を回動させることにより、地面に接地する線引き状態と地面から浮上した非線引き状態とに切り替えられる。
ところで、走行車両2の操縦席35前側のステップ部75bには有段操作される株間変速レバー63を設けており、この株間変速レバー63により走行車両2の走行速度に対する苗植付部3の作動速度を変速できるようになっている。この株間変速レバー63により、植付作業者が圃場に移植する苗の植付株間を設定できるようになっている。従って、前記株間変速レバー63を操作しない限り、走行速度に比例した速度で前記苗植付部3が作動するようになっている。なお、主ミッションケース12内にはギヤの噛み合いを変更して変速する株間変速部12aを設けており、前記株間変速レバー63を操作することにより前記株間変速部12aの変速操作を行う構成となっている。
株間変更レバー63により株間が極端に広い状態(疎植状態)に設定すると、図5(a)に示すように苗植付具62の動軌跡が地面に対して斜めになり、苗の植付姿勢が悪くなるおそれがある。苗植付具62の動軌跡が図5(b)に示すように苗が圃場面に対してほぼ垂直になるように苗が植え付けられることが望ましい。図5(b)に示す理想の動軌跡にするために疎植時に苗植付具62を不等速状態で作動させ、植付タイミングでは苗植付具62を比較的早く作動させる構成が知られている(特開2000−312514号公報)。
しかし、上記文献記載の構成では、疎植時に副変速装置(HST)11が高速作動している場合には、苗の植付タイミングでの植付具62の作動が速くなり過ぎて、苗をとばしたり、苗押出タイミングがばらついたりして、苗の植付精度が悪くなることがある。
そこで、本実施例では疎植時には株間変更レバー63の操作により副変速装置(HST)11の速度を規制して苗の植え付け精度の維持を図っている。また、この速度規制を規制解除ペダル(図示せず)を足で踏むことで解除できる構成にすると疎植時でも作業能率を優先して高速走行させることができる。また、走行車両2において、ステアリングハンドル36の左側には有段変速可能な主変速レバー64を設けており、該レバー64の操作により主ミッションケ−ス12内のギヤの噛み合いを変更して前進で高速となる「路上走行速」位置、通常植付作業時に使用する前進で低速となる「植付作業速」位置、走行車両2を後進させる「後進」位置及び前輪16、後輪20並びに苗植付部3への伝動を断つ「中立」位置に切り替えるようになっている。
図6及び図7に基づいて副変速電動シリンダ65から副変速装置11への操作連繋構成について説明する。
なお、副変速装置11がHSTである場合には前記副変速電動シリンダ65はトラニオン軸141を回転させる副変速電動モータ65に代えられる。
図6及び図7に示す副変速電動シリンダ65の作動により、副変速電動シリンダ65に連結した操作ロッド68及び該操作ロッド68の他端側に連結された変速操作ア−ム69を介して左右方向に延びる変速軸70が回動する。該変速軸70が回動すると該軸70と一体で回動する変速作動ア−ム71が回動し、該変速作動ア−ム71と駆動プ−リ13の駆動側変速操作カム26の第一ア−ム部26bとを連結する変速ロッド28が前後移動すると、駆動側変速操作カム26が回転し、該カム26の突条26aの接点が変化し、駆動プーリ13の右側プーリ部13bが左右に移動し、駆動プーリ13の有効径が変更される。また、駆動側変速操作カム26が回転すると、連結ロッド33を介して従動側変速操作カム30が回転し、従動プーリ14の左側プーリ部14bが左右に移動し、従動プーリ14の有効径を駆動プーリ13と背反的に変更できる構成となっている。なお、前記変速ロッド28はロックナット28aを弛めて回動させることによりロッド長が変更されるタ−ンバックル式に構成され、前記変速ロッド28のロッド長を変更調節することにより副変速電動シリンダ65の操作位置と副変速装置11の変速比との対応関係を調節するようになっている。
また、前記変速軸70の左端には該変速軸70と一体で回動する変速位置決めプレ−ト72を設け、該変速位置決めプレ−ト72の外周に連設される複数の位置決め溝72aにそれぞれ係合する位置決めロ−ラ73を設けており、副変速装置11の変速において複数段に有段変速する構成としている。なお、前記位置決めロ−ラ73は、位置決めロ−ラア−ム73aの回動先端部に設けられると共に前記位置決めロ−ラア−ム73aに設けた引張スプリング73bにより変速位置決めプレ−ト72側に付勢されている。これらの変速位置決めプレ−ト72、位置決めロ−ラ73及び引張スプリング73b等により、副変速装置11の伝動における負荷による低速側への自動戻りを防止している。
エンジン4の回転数は該エンジン4のガバナ101(図3)により調節されるが、このガバナ101はスロットル用電動シリンダ102の作動により操作され、スロットル用電動シリンダ102の作動によりエンジン4の回転数が変更される構成となっている。
主ミッションケ−ス12内には主クラッチ(図示せず)を設けており、この主クラッチは、主クラッチ電動シリンダ77(図2)の作動により操作され、走行車輪16,20及び苗植付部3への動力を断つことができる。
ステアリングハンドル36の右側にはエンジン4の回転数を調節できるスロットルレバー76を設け、該レバー76を前後方向に操作してエンジン4の設定回転数を調節して所望の位置で保持できるようになっている。なお、ステアリングハンドル36の下方の右側にはアクセルペダル103を設けており、該アクセルペダル103の踏み込み操作によりその踏み込み量が大きくなるほどエンジン4の設定回転数が増大する構成となっている。アクセルペダル103は、オペレ−タが踏み込み操作していないときはスロットルレバー76の操作位置に対応する位置に連動して操作されており、それ以上に踏み込み操作したときだけエンジン4の設定回転数を一時的に増大できる構成となっている。ステアリングハンドル36の下方の右側には、左右の後輪20をそれぞれ制動するためのブレ−キペダル78を設けている。なお、ステアリングハンドル36の下方近傍には、モニタ−パネル100を設けている。
操縦席35の右側には、油圧切替バルブ38(図示せず)の油路を切り替えて苗植付部3の昇降操作と植付クラッチ電磁ソレノイド93(図1)を作動させて苗植付部3の駆動の入切操作とが行える植付昇降レバー104を設けている。該植付昇降レバー104の更に右側には、副変速電動シリンダ65(図6)を作動させて副変速装置11を変速操作する副変速レバー105を設けている。該副変速レバー105は、停止位置から最高速位置まで変速操作できる構成となっている。
ステアリングハンドル36の下方の左側には主クラッチペダル106を設けており、この主クラッチペダル106の踏み込み操作により主クラッチ電動シリンダ77を作動させて主クラッチにより動力を断ち、機体の走行を停止操作する構成となっている。なお、前記副変速レバー105を停止位置に操作しても、主クラッチ電動シリンダ77を作動させて主クラッチにより動力を断つ構成となっている。
アクセルペダル103、主変速レバー64、株間変更レバー65及び副変速レバー105には、それぞれのペダル又はレバーの操作位置を検出するアクセルペダルセンサ103a、主変速レバーセンサ64a、株間変更レバーセンサ65a及び副変速レバーセンサ105aを設けている。また、主クラッチペダル106の踏み込み操作を検出する主クラッチペダルセンサ106aを設けている。副変速電動シリンダ65、スロットル用電動シリンダ102及び主クラッチ電動シリンダ77には、それぞれのシリンダの作動位置を検出する副変速電動シリンダセンサ65a、スロットル用電動シリンダセンサ102a及び主クラッチ電動シリンダセンサ77aを設けている。そして、これらのセンサ65a,102a,77aの検出値が制御部107へ入力され、該制御部107から副変速電動シリンダ65、スロットル用電動シリンダ102及び主クラッチ電動シリンダ77へ出力信号を発する構成となっている。
ところで、モニタ−パネル100の近傍にはスロットル連動入切スイッチ108を設けており、このスロットル連動入切スイッチ108からの信号が制御部107へ入力される構成となっている。該スロットル連動入切スイッチ108が「切」状態のときは、スロットルレバー76又はアクセルペダル103の操作位置を検出するアクセルペダルセンサ103aの検出値に対応してスロットル用電動シリンダセンサ102aが所望の検出値となるようにスロットル用電動シリンダ102を作動させ、スロットルレバー76又はアクセルペダル103の操作位置に対応する回転数にエンジン4のガバナ101を設定する。
また、副変速レバーセンサ105aの検出値に対応して副変速電動シリンダセンサ65aが所望の検出値となるように副変速電動シリンダ65を作動させ、副変速レバー105の操作位置に対応する変速比に副変速装置11を設定する。
なお、副変速レバー105を停止位置に操作したときは、副変速装置11を最低速に設定すると共に、主クラッチ電動シリンダセンサ77aの検出に基づいて主クラッチ電動シリンダ77を作動させ、主クラッチにより動力を断つ。また、主クラッチペダルセンサ106aにより主クラッチペダル106が踏み込み操作されていることを検出すると、主クラッチ電動シリンダセンサ77aの検出に基づいて主クラッチ電動シリンダ77を作動させ、主クラッチにより動力を断つ。
一方、スロットル連動入切スイッチ108が「入」状態のときは、副変速レバーセンサ105aの検出値に対応して、副変速電動シリンダ65を作動させると共にスロットル用電動シリンダ102を作動させ、副変速レバー105の操作によりエンジン4の回転数及び副変速装置11の変速比を連動して共に設定変更する状態となる。
このとき、副変速レバーセンサ105aの検出値に対応するエンジン4の設定回転数よりアクセルペダルセンサ103aの検出値に対応するエンジン4の設定回転数が高いときは、アクセルペダルセンサ103aの検出値に対応してスロットル用電動シリンダ102を作動させ、スロットルレバー76又はアクセルペダル103の操作位置に対応するエンジン回転数に設定する。
なお、副変速レバー105を停止位置に操作したときは、エンジン回転数をアイドリング回転(最低速)(スロットルレバー76あるいはアクセルペダル103がアイドリング回転(最低速)以外の操作位置に操作されているときは、該レバー76あるいはペダル103の操作位置に対応するエンジン回転数)に設定し、副変速装置11を最低速に設定すると共に、主クラッチ電動シリンダ77を作動させ、主クラッチにより動力を断つ。
また、主クラッチペダルセンサ106aにより主クラッチペダル106が踏み込み操作されていることを検出すると、主クラッチ電動シリンダ77を作動させて主クラッチにより動力を断つと共に、エンジン回転数をアイドリング回転(又は、上述と同様にスロットルレバー76あるいはアクセルペダル103の操作位置に対応するエンジン回転数)に設定し、その後主クラッチペダルセンサ106aにより主クラッチペダル106の踏み込みが解除されたことを検出すると、主クラッチ電動シリンダ77を作動させて主クラッチを伝動状態にすると共に、主クラッチペダル106の踏み込みが解除されてから所定時間後(2秒程度)にエンジン回転数を上述の副変速レバーセンサ105aの検出値に対応する回転数に復帰させる。
スロットル連動入切スイッチ108が「入」状態のとき、副変速レバーセンサ105aの検出値と副変速装置11の変速比との関係は、図9に示すように、副変速レバー105の停止位置近傍では該レバー105を操作しても副変速装置11の変速比は一定に維持されており、副変速レバー105を所定位置より高速側に操作するにつれて副変速装置11の変速比が増大するようになっている。なお、副変速レバーセンサ105aの検出値とエンジン4の設定回転数との関係は、図10に示すように、副変速レバー105を停止位置から高速側に操作するにつれて比例的にエンジン4の設定回転数が高速側に設定されるようになっている。
また、副変速レバーセンサ105aの検出値が増速側に変化したときは、エンジン4の設定回転数は即座に副変速レバーセンサ105aの検出値に対応する回転数に設定されるが、副変速レバーセンサ105aの検出値が変化してから所定時間後(2秒程度)に副変速装置11が遅れて副変速レバーセンサ105aの検出値に対応する変速比に設定される。
また、図10に示すように、主変速レバーセンサ64aにより主変速レバー64が「後進」位置にあることを検出すると、機体を前進させる「路上走行速」位置及び「植付作業速」位置に主変速レバー64が位置しているときと比較して、副変速レバー105の操作位置に対するエンジン4の設定回転数が低く設定され、副変速レバー105の高速側への操作に伴うエンジン4の設定回転数の変化割合が小さく設定されている。
以上により、この乗用型の田植機1の走行車両2は、原動機であるエンジン4の動力を副変速装置11を介して走行装置である前輪16及び後輪20へ伝動すると共に、前記エンジン4の駆動速度すなわち回転数及び前記副変速装置11の伝動比を連動して共に変更する副変速レバー105を設け、前記副変速レバー105の操作により走行停止状態に設定できる構成とすると共に、スロットル連動入切スイッチ108が「入」状態のとき、走行停止状態から機体を発進させる副変速レバー105の停止位置近傍の発進操作域における増速操作時、副変速装置11の伝動比のみが操作前の所定値に保持される構成としている。
従って、この走行車両2は、副変速レバー105の操作によりエンジン4の回転数及び副変速装置11の伝動比が連動して共に変更されることにより、前輪16及び後輪20の回転速度を変更して走行速度を変更する。また、副変速レバー105の操作により、前輪16及び後輪20の回転を停止させて走行停止状態にすることができる。そして、停止位置から機体を発進させるべく副変速レバー105を増速操作すると、副変速装置11の伝動比のみが所定値に保持され、エンジン4の回転数が増速側に変更されることで走行速度が増速され、走行速度を緩やかに増速させることができる。
また、スロットル連動入切スイッチ108が「入」状態のときにも、スロットルレバー76あるいはアクセルペダル103の操作によりエンジン回転数を副変速レバー105位置に対応する回転数より高速側に増速することができるので、単一の副変速レバー105によりエンジン回転数と変速装置11の変速比とを連動させて変更できる構成でありながら、走行駆動力(駆動トルク)が不足するときには必要に応じてエンジン回転数を増速でき、エンジン4の出力不足ひいてはエンジン4の停止を防止することができる。
また、主変速レバー64が「後進」位置に操作される後進時には、前進時と比較して、副変速レバー105の操作位置に対するエンジン4の設定回転数が低く、且つ副変速レバー105の高速側への操作に伴うエンジン4の設定回転数の変化割合が小さく設定されているので、副変速レバー105を同じ操作位置に操作しても前進時と比較して遅い速度で走行でき、しかも副変速レバー105の増速操作に伴う変速量が前進時と比較して小さくなるために後進時に副変速レバー105の操作で急激に加速されるようなことを防止し、後進時の安全性を向上することができる。また、上記の構成に代えて、後進時には、副変速レバー105の操作位置に拘らず、副変速装置11の変速比が低速側で一定となるようにしてもよい。あるいは、後進時には、前進時と比較して、副変速レバー105の操作位置に対する副変速装置11の変速比が低速側で、且つ副変速レバー105の高速側への操作に伴う副変速装置11の変速比の変化割合が小さく設定されたものとしてもよい。また、後進時は、エンジン4の設定回転数と副変速装置11の変速比とが共に前進時とは異なる構成としてもよい。
よって、この走行車両2は、副変速レバー105の操作でエンジン4の回転数と副変速装置11の伝動比とを連動して共に変更すると共に、副変速レバー105の操作により走行停止状態にすることができるので、走行停止状態も含めた走行速度の変速操作を副変速レバー1本だけで簡単に行えて操作性の向上を図ることができる。そして、副変速レバー105を操作して走行停止状態から機体を発進させるときは走行速度が緩やかに増速するので、オペレ−タの意図に反して急激に増速されて急発進するのを防止し、搭乗するオペレ−タが機外に振り落されたりすることを防止し、安全性の向上を図ることができる。
このように、副変速レバー105の操作によりエンジン4の回転数及び変速装置11の伝動比が連動して共に変更されるものにおいて、機体発進時も含めて副変速レバー105を増速操作に伴って変速装置11の伝動比を所定値に保持したままで原動機であるエンジン4の回転数を増速側に変更することにより、走行停止状態も含めた幅広い変速域の走行速度の変速操作を変速レバー1本だけで簡単に行えて操作性の向上を図ることができると共に、エンジン4の回転数を先に増速側に変更して該エンジン4の出力を上昇させることで走行負荷に対して動力(駆動トルク)が不足してエンジン4が停止するようなことを防止でき、円滑に増速させることができる。
仮に、エンジン4の回転数を所定値に保持したままで副変速装置11の伝動比を増速側に変更する構成とすると、先に変速装置の伝動比を増速側に変更することで機体の走行における駆動力(駆動トルク)が低下し、エンジン4の出力不足によりエンジン4が停止するおそれがある。また、エンジン4の回転数に拘らずベルト式変速装置11の駆動プ−リ13及び従動プ−リ14の左右幅を強制的に変更することになるので、エンジン4の回転数が低いとき等において副変速装置11の変速操作抵抗が過大になるおそれがあり、メカロックを生じて副変速電動シリンダ65あるいはその周辺の変速操作機構が破損するおそれがある。
また、スロットル連動入切スイッチ108が「入」状態のとき、副変速レバー105の減速操作開始時、エンジン4の減速タイミングに比べて副変速装置11の伝動比のみを所定時間前(2秒程度)に副変速レバー105位置に対応する伝動比に設定変更し、この設定変更された副変速装置11の伝動比でエンジン4が回転する構成となっている。
例えば、上記副変速レバー105の作動に応じてエンジン回転数を変化させる構成(スロットル連動入切スイッチ108が「入」状態のとき)において、車速が最高速近傍で植付作業を行っている場合に、植付部3の昇降操作時(植付部昇降位置検出用ポテンショメータ67(図8)で検出する)には変速操作アーム69を低速側に回動させるが、このとき、エンジン4の減速量に比較して副変速装置11の減速量を大きくする。
また前記植付部3の昇降操作時には変速操作アーム69を低速側に回動させるときに、エンジン4の減速タイミングに比して副変速装置11の変速タイミングを早くする。
こうして、車速減速時に走行負荷が大きくてもエンジン4の減速量が比較的大きくないので駆動力が確保でき、走行負荷に対して動力(駆動トルク)が不足してエンジン4が停止するようなことを防止できる。
同様の操作は植付部3の作動を「切」にした場合(植付クラッチセンサ111のオフで検出する)にも行うことでエンジン4の走行負荷が確保できる。または旋回時にハンドル36を一定角以上旋回させるとき(ステアリングハンドル36の操舵角センサ110(図8)で検出する)にも同様の操作をするとハンドル36の安定操作性が確保できる。
さらに、路上走行時に、ブレーキペダル78を作動(踏む)させると副変速レバー105を停止側に自動戻りさせる制御が行われるが、この場合にもブレーキペダル78の作動で、まず副変速装置11の変速段を先行してダウンさせ、その後にエンジン回転数をダウンさせる制御にすると、急激な走行停止を避けることができる。
以上のように副変速レバー105以外の操作具であるブレーキペダル78の作動に連動して減速するときも、エンジン4の減速タイミングに比して副変速装置11の変速タイミングを早くする制御を採用しても良い。
また、スロットル連動入切スイッチ108が「入」状態のとき、走行装置である前輪16及び後輪20の回転を停止する停止操作具となる主クラッチペダル106又は副変速レバー105により停止操作すると、エンジン回転数を低速側のアイドリング回転(又は、スロットルレバー76あるいはアクセルペダル103の操作位置に対応するエンジン回転数)に変更設定するので、田植機1あるいは苗植付部3への苗補給作業時等の走行停止時に無闇にエンジン回転数が高速側へ設定されず、走行停止時の騒音を抑えることができる。そして、停止操作具となる主クラッチペダル106の踏み込みを解除して走行させるとき、主クラッチ電動シリンダ77を作動させて主クラッチを伝動状態にすると共に、主クラッチペダル106の踏み込みが解除されてから所定時間後(2秒程度)にエンジン回転数を副変速レバー105の操作位置に対応する回転数に復帰させるので、走行開始時にはエンジン回転が低速側に保持されているため、機体を発進させるときは走行速度が緩やかに増速し、オペレ−タの意図に反して急激に増速されて急発進するのを防止し、搭乗するオペレ−タが機外に振り落されたりすることを防止し、安全性の向上を図ることができる。
仮に、停止操作具となる主クラッチペダル106の停止操作により変速装置の伝動比を低速側に変更し、該主クラッチペダル106の踏み込みの解除により変速装置の伝動比を高速側に復帰させる構成とすると、エンジン4の回転数に拘らずベルト式変速装置11の駆動プ−リ13及び従動プ−リ14の左右幅を強制的に変更することになるので、エンジンの回転数が低いとき等に変速装置11の変速操作抵抗が過大になるおそれがあり、メカロックを生じて副変速電動シリンダ65あるいはその周辺の変速操作機構が破損するおそれがある。
また、スロットル連動入切スイッチ108を「切」状態にすると、スロットルレバー76あるいはアクセルペダル103の操作によりエンジン回転数を設定し、副変速レバー105の操作により変速装置11の変速比を変更できるので、例えば圃場の耕盤深さや硬軟の圃場条件等に対応するべくエンジン回転数と変速装置11の変速比とをそれぞれ別個に設定することができ、熟練のオペレ−タにとって使い勝手の良い変速操作形態を得ることができる。このとき、右足でアクセルペダル103又は別途設けるアクセルレバー(図示せず)を操作してエンジン回転数を設定しながら右手で副変速レバー105を操作して変速装置11の変速比を同時に設定することができるので、それぞれの設定をオペレ−タの好みに応じてあるいは必要に応じて逐次変更しながら行うことができ、操作性が向上する。
以上の構成を図11に模式的に示し、制御のフローを図12に示す。
なお、上記の副変速装置11はベルト式の変速装置について主に説明したが、副変速装置11として前後進無段変速可能な油圧式の無段変速装置(HST)を使用してもよい。この油圧式の無段変速装置を使用するとき、副変速レバー105のレバー操作パタ−ンは、図13に示すようにクランク状の操作経路となり、操作経路における前後方向中途部のクランク部が油圧式の無段変速装置がその出力軸を停止させる停止位置となり、該停止位置から前側へ操作するほど高速となる「前進」位置と「中立」位置から後側へ操作するほど高速となる「後進」位置とを備えている。
従って、このときは、主変速レバー64の「後進」位置が不要となり、上述の主変速レバーセンサ64aの代わりに副変速レバー105を「後進」位置へ操作したことを検出するにあたり、副変速レバーセンサ105aにて検出するか格別に後進位置センサ(図示せず)を設けるとよい。そして、後進時には、前進時と比較して、例えば、副変速レバー105の停止位置からの操作位置に対するエンジン4の設定回転数を低く設定し、副変速レバー105の高速側への操作量に対するエンジン4の設定回転数の変化割合が小さく設定すればよい。
HST139のトラニオン軸141のモータ145による作動機構を図17に示す。図17(a)は平面図、図17(b)は側面図を示す。
HST139の本体の中央に対してトラニオン軸141は一方の側(図17では機体の後方部位に偏位して配置する。該トラニオン軸141にはトラニオン軸141駆動アーム(扇形歯車)144の回転基部が固着しており、円弧状の扇形歯車部分はHST139の上方部に伸びるように配置していることに本実施例の特徴がある。
扇形歯車144の円弧状の扇形歯車部分はアクチュエータ(モータ)145の回転軸に固着した歯車148と噛合しており、該モータ145はHST139の前方に配置されている。すなわち、HSTアーム基板146の下にモータ145を設け、HST139及びミッションケース12との間の空間にモータ145を配置してある。
従って、副変速レバー105を「前進」位置、「中立」位置又は「後進」位置に操作するとそれに対応してHSTモータ145の駆動によりトラニオン軸141がそれぞれ所定角度だけ回動してオイルの吐出方向と吐出量を変えることで、油圧式の無段変速装置(HST)の変速比が変更される。
また副変速レバー(HSTレバー)105を高速側に操作すると、その操作ストロークに応じてエンジン4のスロットル弁の開度が大きくなり、その後HSTの副変速電動モータ65でトラニオン軸141(図17)を増速側に変更するが、トラニオン軸141の応答性すなわち変速作動の応答性を調節変更可能にする応答性調節ダイヤル137(図7)を設けても良い。
副変速レバー(HSTレバー)105を高速側に操作したとき、副変速装置11の増速側への変更タイミングより早く、エンジン4の回転数を上げることができ、エンジン4に走行負荷がかからず、円滑な加速が得られる。しかし、逆に副変速レバー105を減速側に操作する場合に、副変速装置11の減速側への変更タイミングと同時にエンジン4の回転数を下げてすばやく減速したい場合があるので、前記応答性調節ダイヤル137を設けておくことで、任意に速度応答性を変更でき、オペレータ個々のフィーリングにマッチした操縦ができる。
また、副変速レバー(HSTレバー)105の操作ストロークの大きさに応じてHSTの副変速電動モータ65の作動速度を変化させるようにしても良い。
すなわち、HSTトラニオン軸141の作動速度を、副変速レバー(HSTレバー)105の操作ストロークが大きいときは早くし、前記操作のストロークが小さいときはトラニオン軸141の作動を遅くすることで、エンジン4に負荷がかからず、円滑な加減速が得られ、副変速レバー(HSTレバー)105の操作ストロークの大きさに応じてスムースな車速追従性を得ることができる。
また、圃場の深さ(植付部昇降位置ポジションメータ67で検出)に応じてHSTトラニオン軸141の応答性を変更しても良い。すなわち深い圃場の場合はトラニオン軸141をゆっくり作動させ、浅い圃場の場合にはトラニオン軸141を素早く作動させる構成とする。なお、センタフロート46の前部に設けられた迎い角センサ46aの検出に基づき苗植付部3が表土面に追従して昇降するため、このセンターフロート46の高さを基準にして圃場の深さを植付部昇降位置ポジションメータ67で検出できる。
深い圃場ではエンジン回転数の上昇を行った後にトラニオン軸141をゆっくり作動させるとエンジンドロップが少ない。また逆に、圃場が浅いとトラニオン軸141の動きを比較的早くしてスムーズな車速のエンジン追従性を得ることができる。
また、圃場深さが深くなると、エンジン4の回転数ドロップが大きくなるため、浅田に比べてエンジン回転数変化の反応が鈍くなるので、変速フィーリングが悪くなる。そこで、植付部昇降位置ポジションメータ67で検出した圃場の深さに応じて副変速レバー105の動きに対してエンジンスロットル弁の開く速度を早くすると、エンストのおそれがなくなる。
このように増速時も減速時にも変速装置11とエンジン4は同時に作動させないことで車両の増速と減速がスムーズに行え、エンストが生じない。
また、スロットル連動入切スイッチ108が「入」状態のとき、前述のように耕盤の深さの違いによって副変速レバー105の変速比(走行速度に対応)によりエンジン回転数の調速モードを変えることが望ましい。
たとえば、図16に示すように耕盤の深さが普通のときは図16(a)の調速モード(副変速レバー105の変速比とエンジン回転数の変化は比例)で制御し、耕盤の深さが浅い時は図16(b)の調速モード(先に副変速レバー105の変速比が上昇し、後でエンジン回転数が上昇)で制御し、耕盤の深さが深い時は図16(c)の調速モード(先にエンジン回転数が上昇し、後で副変速レバー105の変速比が上昇)で制御する。
なお、耕盤の深さは植付部3の上下位置を植付部昇降位置検出用ポテンショメータ67で検出することができる。
こうして、耕盤深さに応じたアクセル制御が自動的に行える。
また、スロットル連動入切スイッチ108が「入」状態のとき、副変速レバーセンサ105aの設定位置とエンジン4の回転数の関係は、図15(a)に示すように、副変速レバー105の停止位置近傍ではエンジン4の回転数をアイドリング位置より少し上の値(H1)に設定し、その他の副変速レバー105の設定位置では、最高位置になるまでエンジン4の回転数を上げていく。
このようにすることで、エンジン回転数を単独で設定できないスロットル連動入切スイッチ108が「入」状態の場合に、あらかじめ走行負荷を高めにしておき、低速運転時でもある程度回転が上がっているため、圃場でも走行可能になる。なお、図15(a)の前記(H1)値は可変にすることが望ましい。
またスロットル連動入切スイッチ108が「切」状態の場合には、図15(b)のように該レバー105の変速比とエンジン回転数を比例関係に設定しておく。このときの副変速レバー105の停止位置はエンジン4のアイドリング位置(H2:H1>H2)とする。H1>H2とする理由はエンジン4がエンストのおそれがあるとアクセルペタル103を踏み込むことでエンジン4の回転数を単独で制御できるため、H1を大きくする必要がないからである。
なお、この発明の実施の形態は乗用型の田植機1について記述したが、本発明は乗用型の田植機に限定されるものではない。