以下、遊技媒体として遊技球を用いた回胴式遊技を行う遊技機の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では当該遊技機のことを「スロットマシン」として呼称する。
〔本発明のスロットマシンの設置環境〕
本発明のスロットマシンは、遊技媒体として遊技球を用いる。メダルと遊技球では価値が異なるので規定個数(例えば5個)の遊技球を1単位としてメダル1枚に対応させている。また、遊技球を遊技媒体として用いるためにパチンコ機島に設置される。パチンコ機島の遊技機の設置高さは、約60cmのものが最も多い。これに対して、広く普及している遊技媒体としてメダルを使用する回胴式遊技機はスロットマシン島と呼ばれる島設備に設置される。スロットマシン島の遊技機の設置高さは、約50cmのものが最も多い。つまり、パチンコ機島はスロットマシン島に対して、10cm程度設置位置が高い。
〔スロットマシンの遊技の概略〕
本発明のスロットマシンでは、遊技球を遊技球皿に貯留し、ベットボタンを押すことによって遊技球取込装置が動作し、規定個数単位で遊技球がスロットマシンに取込まれる。遊技球が取込まれることにより有効ラインが決定され、始動レバーが操作可能になる。遊技者の操作によって始動レバーが操作されると3個の図柄リールの駆動モータが起動すると共に抽選が行われる。抽選結果により、大きな特典が得られるボーナスや、小役、リプレイ、ハズレに振分けられる。図柄リールの回転が定回転(例えば80rpm)に達すると停止ボタンが操作可能になる。
遊技者が停止ボタンを押すことにより、対応する図柄リールが停止するが、この際、何らかの役に当選していると、停止ボタンを押すタイミングが少し早くても、スロットマシンは当選役に相当する図柄を有効ラインに引き込んで停止させようとし、逆に当選していない図柄は、狙って停止ボタンを押しても、有効ラインの外に押し出されてしまい入賞はできない。
全ての図柄リールが停止したら、入賞しているか否かの判定を行い、例えば小役に入賞している場合には、遊技球払出装置を駆動して、規定個数の倍数の遊技球が払出される。以上が一連の遊技の流れである。
〔スロットマシンの構成〕
図1はスロットマシンSの全体を略示する斜視図である。スロットマシンSはパチンコ機の島設備に設置可能な外枠1と、中枠2と、扉体3から構成されている。扉体3を上段、中段、下段と略3分割すると、上段の液晶用透明窓4の後方には液晶表示装置5が配置され、中段の図柄表示用透明窓6の後ろにはステッピングモータで個別に駆動される3組の図柄リール7a、7b、7cが臨んでいる。以降各々の図柄リール7a、7b、7cを合わせて図柄表示装置7と呼ぶ。
前述したように本発明のスロットマシンSは、メダルを遊技媒体とする回胴式遊技機に対して設置位置が約10cm高いパチンコ機島に設置される。例えば、メダルを遊技媒体とする回胴式遊技機を10cm高い位置に設置すると図柄表示装置の位置が遊技者から見上げる位置になる。回胴式遊技機はパチンコ機と異なり、図柄表示装置の中の図柄リール各々に対して停止ボタンが設けられており、遊技者が狙った位置で図柄を停止させる目押しを行う。
この際に図柄表示装置の位置が遊技者から見上げる位置であると非常に目押しが行いづらい。これに対処するため、本発明のスロットマシンSはメダルを用いた回胴式遊技機よりも低い位置に図柄表示装置7を設置することにより、各々の図柄リール7a、7b、7cを遊技者から見下ろすことができるようになっている。具体的には標準的な体格の遊技者の目の位置よりも低い位置に各々の図柄リール7a、7b、7cの中心軸を設定した。なお、標準的なパチンコ機とメダルを遊技媒体とする回胴式遊技機の高さもほぼ同じ80cmである。
前記略3分割された下段の一番上には操作部8が配置され、前記操作部8には、マックスベットボタン9、始動レバー10、各々の図柄リール7a、7b、7cに対応した停止ボタン11a、11b、11cと1ベットボタン12が設けられている。遊技者から見て操作部8の左側には、パチンコ機に用いる現金サンド(球貸機)のノズルから落下する遊技球を受け止める球受け部材13と受け止めた遊技球を一旦後方に導く球受け部材の連通穴13aがある。上記マックスベットボタン9と1ベットボタン12が「掛け数設定部」である。
上述の球受け部材13の下方には、遊技者所有の遊技球を貯留する貯留皿14があり、操作部8の下方には、後述する遊技球取込装置50に遊技球を流下させる緩斜面の遊技球通路15が操作部8との間に手が入る程度の間隔をおいて設けられている。なお、貯留皿14の略中央部には、球落とし穴16があり、通常状態では球落とし弁17が閉じる方向に付勢されており、遊技球が抜けないようになっている。なお、貯留皿14から遊技球を抜きたい場合には、球落としボタン18を押込むことにより、図示しないリンクが作動して球落とし弁17が開き、遊技球は、扉体3の下部から落下し、遊技者に返却される。
遊技球通路15の前面部材19は透明な樹脂で構成されており、後述の遊技球取込装置50を透視して見ることができる。スリット状の穴はその後方にある低音を受け持つスピーカであるウーハ(図示せず)のウーハ用放音孔20である。下部にある2つの押しボタンは、球貸ボタン21と返却ボタン22である。この2つのボタンについては、公知のパチンコ機のCRシステムと同じであるので説明を省略する。
ウーハ用放音孔20の右隣にある長方形の穴は、後述する遊技球取込装置50の球抜き弁55と接続された球抜きつまみ24をスライドさせるためのスライド穴23である。操作部8の右横にあるシリンダ錠25は、左に回すと扉体3のロックが解除され、右に回すと中枠2のロックが解除される。
液晶用透明窓4の左右のスリット状の穴はその後方にあるスピーカの放音孔26R、26Lである。また、27R、27Lは右上部電飾と左上部電飾で、28は上部中央電飾であり遊技中の演出に用いられる。
図2はスロットマシンSを分解して略示する説明図である。図2より理解されるようにスロットマシンSは従来のパチンコ機の島設備に設置可能であり、全体を保持する外枠1と、外枠1にヒンジ機構を介して開閉可能に設けられた中枠2と中枠2に設けられたヒンジ機構を介して開閉可能に設けられた扉体3からなる。
払出用の遊技球は島設備から、球タンク29に補給され、中枠2に設けられた払出装置30(図示せず)を通じて払出される。払出装置30から払い出された遊技球は、機内タンク31に設けられた遊技球受入れ口31aに入る。中枠2に対して扉体3を閉じたときは、機内タンク31は払出装置30の下の空間32に収納されている。また遊技球を用いたスロットマシンSに固有な遊技球取込装置50は、扉体3の内側から取付けられており、扉体3の外側から取り外すことはできない。これは遊技球取込装置50を交換する不正に対して有効な対策となる。
扉体3の内側にはその他、スピーカ33R、33Lや、右上部電飾27R、左上部電飾27L、上部中央電飾28に対応するLEDやランプが内蔵されている(図示せず)。
中枠2には、遊技ユニットケース34が着脱可能に設けられており、遊技ユニットケース34の中には、液晶表示装置5、図柄表示装置7、主制御基板35(図7に図示)、演出制御基板36(図7に図示)等が内蔵されている。主制御基板35は全体を統括し、操作部8にある各種操作ボタンやレバーの操作に基づいて、遊技球取込装置50を駆動し、抽選を行い、図柄表示装置7の回転/停止の制御を行い、必要に応じて払出装置30を制御する払出制御基板37(図7に図示)にコマンドを送信する。演出制御基板36は主制御基板35からのコマンドに基づいて、スピーカ33R、33Lから効果音を出し、ランプ駆動基板40にシリアルコマンドを送信することにより各種電飾27R、27L、28等の電飾を制御する。また、内蔵するVDPを用いて液晶表示装置5に各種の装飾図柄やアニメーションを表示する。なお、中枠2の下方で扉体3の遊技球取込装置50に相当する位置にある溝状の通路は、遊技球取込装置50で取込が完了した遊技球がパチンコ機島に返還される返還通路38である。
図3は扉体3の背面図である。なお、遊技球取込装置50を拡大した図を一緒に示してある。遊技球取込装置50は扉体3の背面からのみ着脱可能である。また、遊技球取込装置50の上方にはランプ駆動基板40が配設され、右上部電飾27Rと左上部電飾27Lと上部中央電飾28などの電飾(LED)を駆動する。なお、ランプ駆動基板40は階調制御が可能である。また、遊技球取込装置50の直下には複数の溝を持った返還傾斜通路39が設けられ、返還傾斜通路39は、扉体3を中枠2に閉止したときに中枠2の返還通路38と連通する。
図3には、図2において機内タンク31によって覆われていた球受け部材13の内側と球受け部材の連通穴13a、そして、貯留皿14の内側と貯留皿との連通穴14aが示されている。球受け部材の連通穴13aと貯留皿との連通穴14aは機内タンク31を共用しており、球受け部材13に入れられた遊技球は機内タンク31を経由して貯留皿から流出する。また、この機内タンク31は、特典遊技状態(例えばボーナスゲーム中)での払出球が連続した場合、貯留皿14で遊技球を貯留しきれない場合は、第2の貯留皿として機能する。
本発明のスロットマシンSでは、前述のように、遊技者の目の位置よりも低い位置に各々の図柄リール7a、7b、7cの中心軸を設定するために、パチンコ機で広く用いられる上皿、下皿という構成を廃し、貯留皿14で遊技球を貯留する。しかし、それでは貯留容量が減ってしまうため、上記機内タンク31を用いて第2の貯留皿として機能させる。機内タンク31は貯留皿14とほぼ同じ高さに設けられているので、図柄リール7a、7b、7cを低い位置に設けることができる。
〔遊技球取込装置〕
図4は遊技球取込装置50を分解して遊技機背面方向から示す斜視図である。遊技球取込装置50は、ベース51に、奥球通路部材52、手前球通路部材53、遊技球取込装置基板67が固定され、その中に遊技球搬送体54が角度検出板63とともにモータ軸62に同一軸線上に固定されて回転し得るようになっている。なおモータ本体は図示を省略している。
奥球通路部材52と手前球通路部材53に取付けられる部品の構成はほぼ同じであるので、ここでは、手前球通路部材53に取付けられる部品について説明する。
手前球通路部材53に流入する遊技球は、手前流入通路53aを転がり、球抜き弁55が前進位置にある場合(常態においては、コイルスプリング61で前進位置になるように付勢されている)、手前遊技球搬送体回転スペース53bに到達する。手前遊技球搬送体回転スペース53bでは、回転円盤にスプロケット状の歯を備えた遊技球搬送体54に接触する。
遊技球搬送体54のスプロケット状の歯の凹部はちょうど遊技球が1個のみ載るようになっており、遊技球搬送体54を図4において反時計方向に回転させることにより、遊技球は取込方向に搬送され、最終的に、遊技球搬送体54から離れ、手前取込カウントスイッチ58で検出された後、手前遊技球排出口53eを通って前述の返還通路38より、パチンコ機島に返還される(図2参照)。この、手前取込カウントスイッチ58と奥取込カウントスイッチ57が「遊技球検出センサ」である。
遊技球が、球抜き弁55の上を通って手前遊技球搬送体回転スペース53bに流入する際、遊技球搬送体54のスプロケット状の歯の凸部と手前球噛防止片69の間に噛み込まれる可能性がある。本実施例では、この手前球噛防止片69が弾性によって移動し、遊技球が噛み込んで動作が停止することを防いでいる。これに関しては詳細を後述する。
通常、球抜き弁55はコイルスプリング61で前進位置になるように付勢されていて、球抜き弁55の上を遊技球が転がって行く。この球抜き弁55は球抜きつまみ24と爪の弾性変形により接続されており、球抜き弁摺動部53fの中を摺動可能になっている。通常状態ではコイルスプリング61で前進位置になるように付勢されているので、球抜き弁55は閉じた状態になっているが、遊技者が球抜きつまみ24を操作することにより、球抜き弁55は開放状態になり、遊技球は下方に落下し、手前遊技球落下経路53cを通って遊技者に返却される。
手前流入通路53aの入口近くの遊技球の通路の下には手前近接スイッチ60が設けられており、近接スイッチの位置まで遊技球が満たされているときにONして、一定の球圧が確保されていることを検出する。この手前近接スイッチ60と奥近接スイッチ59が「球有無検出手段」である。
また、球抜き弁55には、球抜き弁遮光部55aが設けられており球抜き弁検出器56によって球抜き弁55の前進/後退を検出する。具体的には、遊技者が球抜きつまみ24を操作して、球抜き状態になったことと、手が離されて球抜き弁55が再度前進したことを検出する。
球抜き状態になった後、手が離されて球抜き弁55が再度前進したことが検出されると、遊技球搬送体54は図4において時計方向に回転し、遊技球搬送体54に載っている遊技球は、手前球抜き経路53dを通じて遊技者に返却される。
ベース51には、遊技球取込装置基板67がネジ止めされ、遊技球取込装置基板67上には、角度検出用フォトスイッチ64が配設され、モータ軸62に遊技球搬送体54とともに固定されている角度検出板63に設けられたスリット63aを検出することで遊技球搬送体54から、遊技球が落下する排出位置を検出する。この、角度検出用フォトスイッチ64と角度検出板63と角度検出板63に設けられたスリット63aの組合せで、「遊技球落下位置検出手段」を構成する。
また、遮光部材65は遊技球取込装置基板67と共締めされており、ベース51の遮光壁51bと共に、角度検出用フォトスイッチ64に外乱光が入射しないようにして角度検出用フォトスイッチ64の誤動作を防いでいる。
球抜き弁検出器56は、球抜き弁検出器固定爪部56cによってベース51の球抜き弁検出器取付け穴51aに取付けられている。図示しないモータ本体は放熱板70と共にベース51に共締めされている。
〔遊技球搬送体の形状〕
図5(a)は、遊技球搬送体54を手前方向(遊技者より)から示した図、図5(b)は遊技球搬送体54を回転軸と直交する方向から示した側面図、図5(c)は遊技球搬送体54を奥方向から示した図である。図5(a)の矢印Y1と図5(c)の矢印Y2は遊技球を取込む方向を示す。図5(b)に示すように、遊技球搬送体54は、手前流入通路53aに対応する手前球受部54Aと、奥流入通路52aに対応する奥球受部54Bと、手前球受部54Aと奥球受部54Bとの間に形成された円板状の円盤部54Cとからなり、手前球受部54Aと奥球受部54Bと円盤部54Cとが同一回転軸上に一体に形成されている。
各々の球受部54A,54Bは、スプロケット状をなし、その外周に遊技球を1個のみ受入れ可能であり、かつ回転軸に沿って形成された溝状の凹部54dが周方向に等間隔に複数設けられると共に、各凹部54dの間に各凹部54dを区画するための凸部54eが複数形成されてなる(本実施形態では、各々の球受部には遊技球が1個ずつ載る凹部54dと、その凹部54dを形成するための凸部54eが各々6個設けられている)。
凹部54dには、モータ軸(回転軸)にほぼ沿う方向に形成された基端部54d1と、回転軸に沿う方向において内側から先端に向って(円盤部54Cから離れるに従って)回転軸の中心方向に傾斜する傾斜部54d2(第1傾斜部に相当する)とが設けられている。同様に凸部54eにも、モータ軸にほぼ平沿う方向に形成された基端部54e1と、回転軸に沿う方向において内側から先端に向って(円盤部54Cから離れるに従って)回転軸方向に傾斜する(モータ軸の中心方向に傾斜する)傾斜部54e2(第2傾斜部に相当する)とが設けられている。本実施形態では、遊技球搬送体54は樹脂成形されているので、基端部54d1、基端部54e1には抜き勾配程度の勾配はある。
遊技球搬送体54は、回転に伴って各凹部54dが受入位置で径方向から流入する遊技球を受入れ、排出位置で遊技球を落下させることにより遊技球を搬送する。図5(a)中の矢印Y3は遊技球が進入してくる方向であり、矢印Y5は遊技球が遊技球搬送体54より離れて排出される方向を示す。この進入方向Y3と排出方向Y5は、手前球通路部材53の形状と凸部54eにより規定される。同様に、図5(b)中の矢印Y4は遊技球が進入してくる方向であり、矢印Y6は遊技球が遊技球搬送体54より離れて排出される方向を示す。この進入方向Y4と排出方向Y6は、奥球通路部材52の形状と凸部54eにより規定される。本実施例の場合、排出方向Y5と排出方向Y6とは30°の角度差があり、手前球受部54Aと奥球受部54Bのモータ軸に対する位相は同じであるが、凹部54d(凸部54e)のピッチが60°であるのに対して半ピッチの30°の角度差で排出するので、遊技球搬送体54の回転中には遊技球は手前球受部54A、奥球受部54Bから交互に排出することになる。
〔球抜き弁の詳細〕
図6は球抜き弁55とその球抜き弁55が前進しているのか後退しているのかを検出する球抜き弁検出器56との関係を示す斜視図である。図6(a)は球抜き弁55が前進している状態を示し、図6(b)は球抜き弁55が後退している状態を示している。
図6(a)に球抜き弁55と球抜き弁検出器56の各部の詳細を示す。球抜き弁55は、球抜きのための弁と遊技球の通路の一部を兼用しており、弁の閉鎖時(前進時)奥球通路弁55bは奥流入通路52aとほぼ連なる面となり奥遊技球搬送体回転スペース52bへと遊技球を導く。同時に、手前球通路弁55cは手前流入通路53aとほぼ連なる面となり手前遊技球搬送体回転スペース53bへと遊技球を導く。
球抜きつまみ取付用爪部55dは、球抜きつまみ24(図4参照)と係合するための爪である。また、コイルスプリング取付部55eは図6(b)に示すコイルスプリング61を外嵌により取付けるための突起である。
球抜き弁遮光部55aは、後退時に透過型フォトセンサである球抜き弁検出器56の球抜き弁検出器発光部56aと球抜き弁検出器受光部56bの間を遮る。また、符号56cは、球抜き弁検出器56をベース51の球抜き弁検出器取付け穴51a(図4参照)に取付けるための球抜き弁検出器固定爪部である。
常態においては、コイルスプリング61の付勢により図6(a)のように球抜き弁55は前進位置に押しつけられている。このとき、球抜き弁遮光部55aが球抜き弁検出器56を遮らないので検出されない。ここで、遊技者が球抜きつまみ24(図1参照)を操作して球抜き弁55を後退位置に移動させると、球抜き弁遮光部55aが球抜き弁検出器発光部56aと球抜き弁検出器受光部56bの間を遮るので、球抜き弁55が後退したことが検出される。また、奥球通路弁55bと手前球通路弁55cとが後退するため、遊技球は、奥流入通路52aから奥遊技球落下経路52cへ落下すると共に、手前流入通路53aから手前遊技球落下経路53cへと落下する。
〔ブロック図〕
図7は、実施形態の回胴式遊技機(スロットマシンS)における電気的な接続関係を示すブロック図である。スロットマシンSは、主制御基板35を中心として構成されており、主制御基板35が直接制御する機器は、遊技球取込装置50と図柄表示装置7である。遊技球取込装置50は、遊技者による1ベットボタン12又はマックスベットボタン9の操作に基づき制御され、図柄表示装置7は遊技者による始動レバー10、停止ボタン11a、11b、11cの操作に基づいて制御される。
その他の機器は、他の基板を介して制御を行う。演出制御基板36は主制御基板35から一方向のコマンドを受信することによって内蔵するVDPを用いて液晶表示装置5で演出を行い、左右スピーカ33R、33L、ウーハ(図示せず)から効果音を発生する。また、ランプ駆動基板40にシリアル信号でコマンドを送信し、ランプ駆動基板40は各種電飾27R、27L、28等の電飾を制御する。
遊技者がゲームを行った結果、何らかの役に入賞した場合、払出制御基板37に払出コマンドを送信して遊技球を払出装置30から賞球として遊技者に払出す。上記以外に、遊技球を払出す場合があり、これは、取込を完了した遊技球がある状態で球抜きつまみ24が操作されてゲームのキャンセル操作が行われた場合である。この場合も主制御基板35は払出制御基板37に払出コマンドを送信して遊技球を遊技者に返却する。
また、払出制御基板37はCR度数表示基板上の球貸しボタン21を遊技者が操作することにより、公知のCRサンドから球貸し指令が発生し、この指令に基づいて貸し球を払出装置30から遊技者に払出す。
〔遊技球取込装置の動作〕
図8は、遊技球取込装置50の取込動作状態を背面方向から示す図である。奥球通路部材52内での遊技球の挙動と手前球通路部材53での遊技球の挙動は同じであるので、本例では手前球通路部材53内での遊技球の挙動を例示する。
図8では、手前流入通路53aを転動した遊技球が手前球通路弁55cの上を通り、手前遊技球搬送体回転スペース53bに流入している。そして遊技球は反時計方向に回転している遊技球搬送体54の凹部54dに1個ずつ載り、最終的に遊技球搬送体54から落下して手前取込カウントスイッチ58に検出され、手前遊技球排出口53eから排出される。遊技球取込装置50で取込球としてカウントされ排出された遊技球は、扉体3に設けられた返還傾斜通路39(図3参照)を経て、中枠2(図2参照)に設けられた返還通路38を転動してスロットマシンSの裏(つまりパチンコ機島)に排出される。
図9は、遊技者の操作により球抜き弁55が後退位置に移動して球抜きを行っている状態を示す図である。奥球通路部材52内での遊技球の挙動と手前球通路部材53での遊技球の挙動は同じであるので、本例では奥球通路部材52内での遊技球の挙動を例示する。
遊技者の操作により球抜き弁55が後退位置に移動すると、球抜き弁検出器56の球抜き弁検出器発光部56aと球抜き弁検出器受光部56bの間を球抜き弁遮光部55aが遮るため、遊技者が球抜き操作を行っていることが検出される。球抜き操作が行われていることが検出された場合、たとえ取込動作中で、遊技球搬送体54が回転中であってもモータ軸62を回転させているモータは停止される。
球抜き弁55が後退すると奥球通路弁55bが後退し、奥流入通路52aから奥遊技球搬送体回転スペース52bに遊技球が新たに入ることなく後続球は奥球抜き経路52dから落下し、奥取込カウントスイッチ57にカウントされることなく排出される。この場合、遊技球はスロットマシンSの前側(つまり遊技者)に返却される。この操作で、奥流入通路52aに並んでいる遊技球を返却することができる。ただし、図9に示すB1〜B5と符号を付けた遊技球は残留している。
図10は前記の残留している遊技球B1〜B5を排出するために遊技球搬送体54が逆転(時計方向に回転)している状態を示す図である。これは、図9から連続して発生する事象であるので、引き続き奥球通路部材52内での遊技球の挙動を例示する。
球抜き弁55の操作をやめると、圧縮されていたコイルスプリング61[図6(b)参照]の弾性で再び球抜き弁55は前進位置に移動する。これによって球抜き弁検出器56の球抜き弁検出器発光部56aと球抜き弁検出器受光部56bの間を球抜き弁遮光部55aが遮らなくなるため、球抜き弁55の操作をやめたことが検出される。
球抜き弁55の操作をやめたことが検出されると、遊技球搬送体54が逆転(時計方向に回転)を開始する。これにより、残留していたB1〜B5と符号を付けた遊技球は、取込時とは逆方向に搬送され、奥遊技球落下経路52cから落下し奥取込カウントスイッチ57にカウントされることなく排出される。この場合も、遊技球はスロットマシンSの前側(つまり遊技者)に返却される。また、図10に示すように、まず遊技球搬送体54の凹部54dに載っている遊技球が先に返却され、その後、遊技球搬送体54の凹部54dに載っていなかった遊技球(B4、B5)が遊技球搬送体54の凹部54dに載った後に搬送され落下して返却される。
〔遊技球の取込動作に欠落が生じる場合〕
次に、図11を元に取込動作中に連続的に取込まれるべき遊技球に欠落が生じる場合を説明する。遊技球搬送体54の凹部54dに遊技球が載ることなく遊技球搬送体54が回転する原因は主に2種類ある。
まず、第1の原因としては、遊技球搬送体54の回転速度に対して手前流入通路53a、もしくは奥流入通路52a(以降流入通路と略す)にある遊技球の速度が遅いときが挙げられる。つまり、遊技球搬送体54が回転を始める前には、流入通路にある遊技球は初速度が零で静止している。これに対して、遊技球搬送体54が回転を始めると流入通路に並んだ遊技球の先頭が凹部54dに落ちることによって移動を開始する。
パチンコ機の払出装置の場合、遊技球搬送体54に相当する部品に至るまでの遊技球の列は、ほぼ垂直に多数個の遊技球が並んでいるため、重力加速度により、ただちに移動を開始できる。しかし本発明のスロットマシンSは、メダルを使用する回胴式遊技機よりも約10cm高いパチンコ機島に設置されるため、メダルを用いた回胴式遊技機よりも低い位置に図柄表示装置7を設置することにより、各々の図柄リール7a、7b、7cを遊技者から見下ろすことができるようにしている。上述の低い位置に図柄表示装置7を設置する構成を実現するための方法の一つとして遊技球取込装置50は極力高低差を設けないように、言い換えれば流入通路には緩斜面を用いている。
このように緩斜面を用いているために、遊技球を進行させる重力加速度は、斜面方向の分力となるため、パチンコ機の払出装置の場合と条件が異なり、初速は同じ零でも加速の度合いが大幅に小さくなることになる。このため、遊技球搬送体54が回転を開始した際に最初に遊技球を受け取るべき凹部54dに遊技球が落ちない状態で(つまり欠落して)遊技球搬送体54が回転してしまうことがある。これが、凹部54dに遊技球が載ることなく遊技球搬送体54が回転する原因の1つ目である。
第2の原因としては、遊技球が遊技球搬送体54の凹部54dもしくは凸部54eに接触する際にはじき返され、その結果として後続遊技球とぶつかり、当該遊技球もしくは後続遊技球の凹部54dへの落下が阻害されることが考えられる。
上述のような二つの原因により、図11のように遊技球B2とB3の間に遊技球が欠落した状態が生じる。なお、この図において、遊技球B1、B2は前回の取込操作によって遊技球搬送体54の凹部54dに載っている。
〔遊技球取込時のタイミングチャート〕
図12(a)のタイミングチャートは、図8のように正常な取込状態のときのタイミングチャートである。また、図12(b)のタイミングチャートは、図11のように取込の際に欠落が生じた場合のタイミングチャートである。なお、図8及び図11では手前球通路部材53内での遊技球の挙動を代表として挙げているが、図12では手前球通路部材53と奥球通路部材52との両方の遊技球の挙動をタイミングチャートに示している。
図12(a)及び(b)のタイミングチャートに示されている各信号を説明する。(以下に示す各種のハードウェアは図4を参照)近接スイッチ出力とは、奥近接スイッチ59、手前近接スイッチ60の出力を示し、図12(a)及び(b)の両方とも遊技球を検出していることを示している。すなわち一定以上の球圧が確保されていることが検出されている。角度検出用フォトスイッチ64において角度検出板63のスリット63aにて検出される。カウントスイッチ出力は奥取込カウントスイッチ57、手前取込カウントスイッチ58での検出信号の両方を合わせた信号出力である。
図12(a)及び(b)では、一例としてマックスベットボタン9が押されて15個の遊技球を取込むことを想定している。まずマックスベットボタン9が押されると、近接スイッチ出力を確認する。ここで一定以上の球圧が確保されていることを確認すると、15個の遊技球を取込むために必要な角度だけ、駆動モータを取込方向(図4では反時計方向)に高速回転させる。ここで、15個の遊技球を取込むために必要な角度は1回転+1/4回転であるが、正確を期するために、角度検出用フォトスイッチ64において角度検出板63のスリット63aが15回検出されることでフィードバックしている。もちろん角度検出用フォトスイッチ64において角度検出板63のスリット63aが検出される位置は、ちょうど遊技球搬送体54から遊技球が離れて落下を開始する排出位置である。
遊技球が落下を開始する排出位置と、奥取込カウントスイッチ57、手前取込カウントスイッチ58の間には多少の落差があるため、検出するまでにある程度の時間を必要とする。図12(a)の角度検出用フォトスイッチ出力とカウントスイッチ出力に時間的な差が生じるのはそのような理由による。そして、必要な角度だけ遊技球搬送体54が回転したところで、所定のウェイト時間(所定の待ち時間)だけカウントスイッチ出力を監視し、それまでに15個の遊技球がカウントスイッチ出力によって確認された場合に取込完了となる。
前記の図12(a)に対して、図12(b)は、遊技球搬送体54の凹部54dに遊技球が載ることなく遊技球搬送体54が回転し、遊技球の欠落が生じてしまった場合を示している。基本的に遊技球取込装置50の動作は必要な角度だけ遊技球搬送体54を高速回転させるところまでは同じである。しかし、図12(b)では、奥流入通路52aもしくは手前流入通路53aでの先頭の遊技球が遊技球搬送体54の凹部54dに載ることなく遊技球搬送体54が回転してしまった例を示している。カウントスイッチ出力が始まるタイミングは図12(a)と同じであるが、これは、前回の取込動作によって遊技球搬送体54の凹部54dに既に載っていた遊技球が落下してきたことによるものであり、遊技球搬送体54の回転開始時に凹部54dに欠落を生じた場合には本実施形態の場合では6番目のカウントスイッチ出力が欠落することが多い。この結果として、遊技球搬送体54を回転させた後、所定のウェイト時間までに検出される遊技球は14個となり1個不足している。
所定のウェイト時間が経過しても必要個数の遊技球が検出されない場合はリトライ動作が行われる。本実施形態では、リトライ動作は不足個数に見合った角度だけ、遊技球搬送体54を低速回転することにより行う。図12(b)に示す例の場合は不足個数は1個であるので、1/12回転だけ(つまり次の角度検出板63のスリット63aが検出まで)回転される。その後、この場合も所定のウェイト時間までカウントスイッチ出力を見る。この例では不足個数の1個の遊技球がカウントスイッチ出力として出力されたのでこの時点で取込完了となる。図12(a)と(b)を比較すれば分かるように、1個の欠落が生じただけで遊技球搬送体54を不足分だけ低速回転させる時間と、1回のウェイト時間が余分に必要となる。
〔遊技球取込のフローチャート〕
以下にフローチャートを用いて遊技球取込装置50の制御を説明する。図13は1.5msec毎に起動されるタイマ割込処理のフローチャート、図14〜図16は遊技球取込処理のフローチャート、図17は精算処理のフローチャートである。
予め理解を助けるために変数について説明しておく。
1ステップ時間カウンタ:ステッピングモータの励磁のパルス幅を決める変数であり、初期値として何割込周期のパルス幅にするかが代入され、タイマ割込毎にデクリメントされる。
取込指令数:指令された取込個数。
取込目標個数:初期値は取込指令数となり、取込んだ遊技球が検出されるたびにデクリメントされる。
インデックス検出フラグ:角度検出用フォトスイッチ64がスリット63aを検出したときにONされる。
インデックスカウント数:初期値は取込指令数となり、インデックス検出フラグがONされる度にデクリメントされる。
取込動作モード:A、B、Cと3種類あり、一定以上の球圧があると判断されたときはモードA、一定以上の球圧がないと判断されたときはモードB、リトライ動作の必要が生じた場合はモードCと切替えられる。
図13はタイマ割込処理のフローチャートであり、本実施例では1.5msec毎に起動される。タイマ割込処理での主な処理はセンサ類の読込み、遊技球取込装置50の駆動モータであるステッピングモータの励磁(駆動)パルスを出力する処理などである。
タイマ割込処理S100が起動されると、まずS102で、割込処理が行われたので1ステップ時間カウンタをデクリメントする。この際、元の1ステップ時間カウンタの値は問わない。次にS104においてカウントスイッチの検出があるか否かを判定する。このカウントスイッチは、奥取込カウントスイッチ57と手前取込カウントスイッチ58(図4参照)の両方を示す。S104においてカウントスイッチの検出があった場合は次のS106にて取込目標個数をデクリメントする。S104においてカウントスイッチの検出がなかった場合は、S106の処理をスキップしてS108に進む。
S108では、インデックスの検出があるか否かを判定する。ここで、インデックスの検出とは、角度検出用フォトスイッチ64にて、角度検出板63のスリット63aを検出することを意味する。インデックスが検出されたとき、遊技球搬送体54は遊技球を落下させる排出位置にある。S108で、インデックスの検出が確認できた場合、次のS110にてインデックス検出フラグをONする。S108で、インデックスの検出が確認できなかった場合はS110の処理はスキップする。
次にS112において励磁処理を行う。これは、遊技球取込装置50の駆動源であるステッピングモータの正転/逆転/停止のためのパルスを出力/停止する処理である。この処理の詳細は公知技術を用いればよいので説明を省略する。S112の処理が完了すると、割込処理から通常の処理に復帰する。
図14〜図16は遊技球取込処理S200のフローチャートである。遊技球取込処理S200は、遊技制御の流れの中で呼び出される。まず、S201において、球抜き操作がONされているか否かを確認する。具体的には球抜き弁検出器56が球抜き弁55の移動を検出したか否かを判定する。遊技者が球抜きつまみ24を操作すると球抜き弁55が移動し球抜き弁検出器56がONする。ONしていた場合(S201でYes)は精算処理S300に進む(後述)。精算処理S300が終了すると、再びS201に戻る。
S201において、球抜き操作がONされていない場合(S201でNo)、S202においてベットボタンがONされたか否か判定する。S202においてNoの場合は、ベットボタンがONされるか球抜き操作がONされるまでループする。ベットボタンがONされた場合すなわちYesの場合は、S203に進み、リトライ待機中の報知(後述)を終了する。次いで、S204の処理に進み、ベットボタンによって決まる取込指令数を取込目標個数に代入する。同様に次のS206で取込指令数をインデックスカウント数に代入する。
次にS208でリトライ回数をクリアする。ここにリトライ回数は、遊技球の取込に欠落が生じた場合のリトライ動作が行われた回数であり、このリトライ回数があらかじめ決められた上限数を超えたときには、遊技球が不足しているものと判断し、再度のベットボタンの操作待ちになる(詳細後述)。次に、S210において球圧検出スイッチがONか確認する。ここに球圧検出スイッチとは、図4における奥近接スイッチ59、手前近接スイッチ60を意味し、奥近接スイッチ59、手前近接スイッチ60の両方の位置まで遊技球が満たされていれば、ONされる。本実施形態では、奥近接スイッチ59、手前近接スイッチ60の位置まで遊技球が満たされていれば、一定以上の球圧が確保されていると判断する。S210においてYesの場合はS212へ処理が移行する。
本実施形態では、取込動作の開始時に球圧検出スイッチがONであれば取込動作モードをAに設定し、球圧検出スイッチがOFFであれば取込動作モードをBに設定し、取込動作において遊技球の欠落が生じてリトライ動作するときは取込動作モードをCに設定して動作する。なお、取込動作モードAは、最初中速で駆動モータを回転し、その後に回転速度を切替えて高速で駆動モータを回転することによって取込動作を行う。取込動作モードをBは最初から最後まで中速で駆動モータを回転することによって取込動作を行う。取込動作モードCはリトライ動作用で駆動モータを低速で回転することによって取込動作を行う。取込動作モードAは、最初中速で駆動モータを回転し、その後に高速で駆動モータを回転することによって取込動作を行うため、取込動作の最初で遊技球の初速が不足していても充分に取込動作を行うことができ、また、遊技球の加速に合わせて高速で取込むのでトータルの取込速度も確保できるという利点がある。つまり遊技球の欠落防止と高速取込動作を両立している。
S210において球圧検出スイッチがONであることが確認された場合(S210でYes)、取込動作モードとしてAを設定する。その後、S214にて1ステップ時間カウンタに0をセットする。ここで0をセットするのは後述するS228以降でステップ数時間切替えカウンタに従って1ステップ時間カウンタ、つまり回転速度を変更するためである。次のS216でステップ数時間切替えカウンタを0に初期化し、S224に進む。
一方、S210において球圧検出スイッチがONでなかった場合(S210でNo)、取込動作モードとしてBを設定する(S218)。その後、S220にて1ステップ時間カウンタに中速をセットする。1ステップ時間カウンタは具体的にはステッピングモータの1ステップのパルス幅を何回の割込分にするかという値が代入されるが(例えば高速=3、中速=6、低速=9)ここでは、理解を助けるために、あえて高速、中速、低速という言葉を用いる。次にS222においてステップ数時間切替えカウンタを0に初期化し、S224に進む(なお、本実施形態では、取込動作モードがAのときのみステップ数時間切替えカウンタを参照するので、S222は無くても支障ない)。
S224においては、取込目標個数が0になっているか否かをチェックする。ここで、取込目標個数が0になっていれば、取込が完了しているので(S224がYes)取込処理を終了する。取込目標個数は図13のタイマ割込処理S100のS106で、カウントスイッチの検出がある毎にデクリメントされているものである。また、S224においては、取込目標個数が0になっていなければ(S224がNo)、次のS226に進む。
S226では、1ステップ時間カウンタが0以下であるか否かを確認する。1ステップ時間カウンタが0になっていると言うことはステッピングモータの1ステップのパルス幅分の割込が完了していることを意味する。1ステップ時間カウンタが正の値である間は、S224とS226の間でループする。つまり、1ステップ分の時間が経過するのを待つことになる。前述のS214で、1ステップ時間カウンタに0をセットしている場合は、S224とS226の間でループせず、次のS228に制御が移ることとなる。
S226にて、1ステップ時間カウンタが0以下であると判断された場合はS228に制御が移り、取込動作モードが判断される。S228では取込動作モードがAであるか否かを判断する。取込動作モードがAの場合(S228でYes)S230に進む。取込動作モードがAでない時(S228でNo)、S236に進み、取込動作モードがBであるか否かを判断する。取込動作モードがBの場合(S236でYes)、S238に進む。取込動作モードがBでない時(S236でNo)、S240に進む。ここでS240に進む場合は、取込動作モードがCのときに限られる。
S240では、1ステップ時間カウンタを低速にセットし、S242進む。また取込動作モードがBのときに処理されるS238では、1ステップ時間カウンタを中速にセットし、S242進む。
S228で取込動作モードがAと判断された場合(S228でYes)、S230に制御が移り、ステップ数時間切替えカウンタをインクリメントする。次にS232に進み、ステップ数時間切替えカウンタの値が規定のカウント以上になったか否かを判断する。規定のカウント数に達していない場合は(S232でNo)、S238に移行し、1ステップ時間カウンタを中速にセットし、S242に進む。また、S232でステップ数時間切替えカウンタの値が規程のカウント以上になったと判断された場合(S232でYes)、1ステップ時間カウンタを高速にセットし、S242に進む。つまり、この部分で、ステップ数時間切替えカウンタが規程カウント未満の場合は1ステップ時間カウンタが中速にセットされ、その結果として駆動モータは中速回転する。また、ステップ数時間切替えカウンタが規程カウント以上の場合は1ステップ時間カウンタが高速にセットされ、その結果として駆動モータは高速回転する。
次にS242では、図13の割込処理においてインデックスの検出が行われた結果として、インデックス検出フラグがONされたか否かを判定する。未だインデックス検出フラグがONされていない場合は(S242でNo)このステッピングモータの1ステップにおいてインデックスが検出されなかったと言うことで、S244においてインデックス未検出カウンタをインクリメントする。次にS246でインデックス未検出カウンタが規定値に達したか否かを判断する。ここで規定値は、インデックス間のステップ数(つまりステッピングモータの1回転するステップ数を1回転当たりのインデックス数で除した数)よりも少し余裕(数ステップ)を取った数が選ばれる。S246でインデックス未検出カウンタが規定値に達してしまった場合(S246にてYes)は、球ガミが発生している可能性があるので、S248において球ガミ処理を行う。球ガミ処理は公知の技術で、ステッピングモータを正転→逆転→正転と小刻みに動作させることにより行う。球ガミ処理S248が終わったら、S264に処理が進む。また、S246でインデックス未検出カウンタが規定値に達していない場合(S246にてNo)も、S264に処理が進む。
一方、S242においてインデックス検出フラグがONされたことが確認された場合(S242でYes)、まずS250で次の検出に備えてインデックス検出フラグをクリアし、S252においてインデックス未検出カウンタもクリアする。そして、S254にてインデックスカウント数をデクリメントする。
次にS256で球抜き操作がONか確認する。具体的には球抜き弁検出器56が球抜き弁55の移動を検出したか否かをチェックする。遊技者が球抜きつまみ24を操作すると球抜き弁55が移動し球抜き弁検出器56がONする。ONしていた場合(S256でYes)は精算処理S300に進む(後述)。ONしていなかったときは(S256でNo)、次のS258に進む。
S258では、インデックスカウント数が0となっているか否かを判断する。インデックスカウント数が0であれば、取込指令数分のインデックスを検出したのであるから、正常ならば遊技球も取込指令数分だけ取込まれているはずである。そこで、インデックスカウント数が0になっていた場合(S258でYes)、S260に進み、球検出時間ウェイトを行う。このウェイト時間は、遊技球が奥取込カウントスイッチ57と手前取込カウントスイッチ58(図4参照)まで落下し検出されるであろう時間に少し余裕時間を加えている。
S260で球検出時間のウェイトを行うと、S262において取込目標個数が0になっているか否かを判断する。取込目標個数が0になっていれば、今回の取込動作は終了したのでこの遊技球取込処理S200を抜けるためにリターンする(S262でYes)。また、取込目標個数が0になっていない場合(S262でNo)、遊技球の欠落が生じていたことになるので、S266以降のリトライ動作に処理が移る。
一方、S258にてインデックスカウント数が0になっていないと判断された場合には(S258でNo)、取込動作の途中であるので、S264にてステッピングモータの次のステップの励磁パルスを出力するために励磁のパターンを更新する。なお、S248の処理を終えた直後、S246でNoの場合も同様である。ここで更新した励磁パターンは、図13のタイマ割込処理のS112の励磁出力処理で参照される。S264で励磁パターンを更新した後は、次のステップに処理が進むため、再度S224に処理が移り、1ステップ分の時間を待つことになる。以下は、これまでに説明した内容と同じである。
S262でNoであった場合は、取込指令数分の回数のインデックスが検出されたにも拘らず、取込指令数分の個数の遊技球が検出されていないので、遊技球の欠落が生じていたことを意味する。S266以降は欠落が生じた場合のリトライ処理となる。
S266ではリトライ回数をインクリメントする。リトライ回数はこの遊技球取込処理S200の初期設定としてS208でクリアして初期化している。次に現在の取込目標個数が遊技球の不足個数であるので、取込目標個数を新たなインデックスカウント数として代入する(S268)。次にリトライ動作をさせるので、S270にて1ステップ時間カウンタを低速にする。そして、取込動作モードをCとする(S272)。
S274ではリトライ回数が規定値に達したかが判断される。リトライ回数が規定値とはすなわちリトライ動作の上限回数である。リトライ回数が規定値に達していなければ(S274でNo)、低速で取込動作を再開すべく再度S224に処理が移り、1ステップ分の時間を待つことになる。以下は、これまでに説明した内容と同じである。
もし、リトライ回数が規定値に達していれば(S274でYes)、リトライ待機中のランプ(図示せず)を点灯させる等によりリトライ待機中を報知する(S276)。そして次のS278に進む。S278では、現在の取込目標個数が遊技球の不足個数であるので、取込目標個数を新たな取込指令数として代入し、遊技球取込処理S200の最初の処理であるS201に移行して球抜き操作もしくはベットボタンが操作されるのを待つ。遊技者は、ここで球抜き操作を行い精算して遊技を終了するか、もしくは遊技球を補充して再度ベットボタンを押して遊技を続行するかを選択できる。
図17は、精算処理S300である。精算処理S300は遊技球取込処理の中で遊技者が球抜き操作を行うことによって行われる。精算処理S300では、最初に励磁停止を指示し(S302)、遊技球取込装置の駆動モータを停止する。その後、S304にて球抜き操作がOFFされたか否かを確認する。具体的には球抜き弁検出器56が移動されていた球抜き弁55の戻りを検出したかチェックする。遊技者が球抜きつまみ24から手を離すとコイルスプリング61が元に戻ろうとする力によって球抜き弁55が前進し球抜き弁検出器56がOFFする(図4参照)。S304がNoである限り、S304をループし、遊技者の球抜き操作の終了を待つ。
S304でYesになると、次はS306で、球圧検出スイッチがONか確認する。ここに球圧検出スイッチとは、図4における奥近接スイッチ59、手前近接スイッチ60を意味し、奥近接スイッチ59、手前近接スイッチ60の両方の位置まで遊技球が満たされていれば、ONしていると判断する。本実施形態では、奥近接スイッチ59、手前近接スイッチ60の位置まで遊技球が満たされていれば、一定以上の球圧が確保されていると判断する。ここで球圧検出スイッチがONであると言うことは、取込装置内に相応の残留球がある。つまり、この場合は、遊技者には、遊技継続の意思があり、単に貯留皿14の遊技球を減らしたいだけと判断し(S306でYes)そのまま精算処理を抜ける。
S306で球圧検出スイッチがONでなければ(S306でNo)、次にS308において取込済みの遊技球があるか否かを判断する。取込済みの遊技球とは、カウントスイッチ(奥取込カウントスイッチ57又は手前取込カウントスイッチ58)によって検出された遊技球のことであり、取込済みの遊技球がある場合には、取込指令数から取込目標個数を差し引いた数だけ取込済みの遊技球があることになる。既に取込んだ遊技球があれば(S308でYes)、S310において取込済み個数分の遊技球を払出装置30から払出すべく払出コマンドを出力する。また、取込済みの遊技球がない場合(S308でNo)、次にS314において規定時間として0.5秒をセットする。また、S310において取込済み個数分の遊技球を払出す払出コマンドを出力した場合はS312において規定時間として6秒をセットする。
次にS316において、前のステップでセットした規定時間だけ待機する。この待機は、払出装置30か遊技球が払出された場合に払出された遊技球が貯留皿14から遊技球通路15を転動し、遊技球取込装置50に至るまでの必要時間である。このように、払出装置30を通じて返却される場合は、遊技球の転動時間を考慮して遊技球取込装置50が動作するので、遊技者に対する返却漏れがなくなる。
次に、S318で励磁パターンを逆転方向(つまり返却方向)に変更する。これによりタイマ割込処理S100の中の励磁出力処理S112が駆動モータを逆転させる。S318で逆転を指示したら、S320で規程回転数回転したかを確認する。ここで規程回転数は、遊技球取込装置50に残留している遊技球と、既に取込完了していた遊技球が払出装置から払出されて返却された数を加算した分が返却できるだけでよい。ただし、本実施形態の場合は、遊技球取込装置50は2列の遊技球を扱うようになっているが、万一、返却すべき遊技球が片方の列に片寄っている可能性もあるので、規程回数は上記の計算の2倍にしておくことが望ましい。
S320の判断がNoの間は、S318に戻り、S320の判断がYesに転じた場合、精算処理は終了したとしてリターンする。
いずれの場合も、精算処理S300が終了した場合は、処理は遊技球取込処理S200の最初の処理であるS201に移行し、球抜き操作もしくはベットボタンが操作されるのを待つ。遊技者は、ここで遊技球を補充して再度ベットボタンを押して遊技を続行することを選択できる。
本実施形態における図13〜図17のフローチャートによる遊技球取込動作のタイミングチャートを図18に示す。各信号の意味は図12のタイミングチャートと同じであるが、角度検出用フォトスイッチ出力とカウントスイッチ出力のタイミングが図12(a)とは異なる。例えば、角度検出用フォトスイッチ出力のスタートから1番目、1番目から2番目の間隔が中速回転になっているので若干広い。それに合わせてカウントスイッチ出力もスタートから1個目の出力、1個目から2個目の出力の間隔が若干広い。それ以降は、高速回転に切替わるので等間隔となる。図18の場合は、最初の2個の遊技球を取込むべき角度の間は中速回転で遊技球が遊技球搬送体54の凹部54dに落入するため、遊技球の初速がゼロである取込の最初において欠落を生じることがない。その結果として、欠落が生じた場合に必要となるリトライ動作とウェイト動作が生じない(図12(b)参照)ので、複数回の取込動作を平均すれば、取込動作が速くなる。
〔遊技球搬送体と遊技球の関係について〕
図19は遊技球取込装置50の内部で、遊技球搬送体54と遊技球が衝突する際の挙動について示した図である。最初に、遊技球搬送体54の凹部54dに衝突する場合を説明する。遊技球が奥遊技球搬送体回転スペース52bもしくは、手前遊技球搬送体回転スペース53b(図4参照)に流入し、凹部54dに接触する際、必ずモータ軸の中心方向に傾斜する傾斜部54d2の点P1に衝突する(理由は後述)。このときP1は傾斜部54d2にあるので、落下の衝撃力F1は傾斜部54d2に垂直な方向の分力F1Vと傾斜部54d2の傾斜方向に平行な分力F1Hに分けられる。一方、遊技球の側には、点P1(接点)からの反力としてF1Vbを受け、自らが持っていた慣性(衝撃力)の分力F1Hの合力としてF1Gの力を受ける。この結果として、たとえ遊技球搬送体54の凹部54dと遊技球が衝突した結果として跳ね返っても、後続の遊技球の進行方向とずれた位置に跳ね返るので、後続の遊技球をまっすぐに後ろに跳ね返すことはなく、その結果として後続の遊技球が遊技球搬送体54の次の凹部54dに入らなくなる事態は避けることができる。
次に、遊技球搬送体54の凸部54eに遊技球が衝突する場合を説明する。遊技球が奥遊技球搬送体回転スペース52bもしくは、手前遊技球搬送体回転スペース53b(図4参照)に流入し、凸部54eに接触する際、必ずモータ軸の中心方向に傾斜する傾斜部54e2の点P2に衝突する(理由は後述)。このとき落下の衝撃力F2は傾斜部54e2に垂直な方向の分力F2Vと傾斜部54e2の傾斜方向に平行な分力F2Hに分けられる。一方、遊技球の側には、点P2(接点)からの反力としてF2Vbを受け、自らが持っていた慣性(衝撃力)の分力F2Hの合力としてF2Gの力を受ける。この結果としてたとえ遊技球搬送体54の凸部54eと遊技球が衝突した結果として跳ね返っても、後続の遊技球の進行方向とずれた位置に跳ね返るので、後続の遊技球をそのまままっすぐに跳ね返すことはなく、その結果として後続の遊技球が遊技球搬送体54の次の凹部54dに入らなくなる事態は避けることができる。
図20は、遊技球取込装置50の内部で、遊技球搬送体54と遊技球の寸法関係を示した図である。遊技球の通路幅は、遊技球の直径DよりもGだけ広いWに設定されている。
なお、請求項1に記載の「前記受入位置で、前記円盤部に向き合った正面に遊技球の直径よりも大きい幅で離隔した壁部」は、図20内の中央の円盤部に対して幅Wだけ離隔して円盤部に対抗する壁に相当する。「前記円盤部と前記壁部間の離隔幅と、前記遊技球の直径との差寸法」は、図20に示された寸法Gである。凹部54dは、図5に示したように、モータ軸にほぼ平行に形成された基端部54d1とモータ軸の中心方向に傾斜する傾斜部54d2からなる。基端部54d1の軸方向に沿う方向の長さはB1であり、これはD/2つまり遊技球の半径よりも小さく作られている。このため、遊技球と凹部54dが接触する接点は、必ず中心方向に傾斜する傾斜部54d2上の点P1となる。また、その傾斜角αはモータ軸にほぼ平行に形成された基端部54d1に与えられている抜き勾配(樹脂製品である)よりも遙かに大きい。また、本実施形態においては凹部54dをモータ軸にほぼ平行に形成された基端部54d1とモータ軸の中心方向に傾斜する傾斜部54d2の2つで構成したが、凹部54dをモータ軸の中心方向に傾斜する傾斜部54d2だけで構成してもよい。
同様に凸部54eもモータ軸にほぼ平行に形成された基端部54e1とモータ軸の中心方向に傾斜する傾斜部54e2からなる。基端部54e1の軸方向に沿う方向の長さはB2であり、これはD/2つまり遊技球の半径よりも小さく作られている。このため、遊技球と凸部54eが接触する接点は、必ず中心方向に傾斜する傾斜部54e2上の点P2となる。また、その傾斜角βはモータ軸にほぼ平行に形成された基端部54e1に与えられている抜き勾配(樹脂製品である)よりも遙かに大きい。また、本実施形態においては凸部54eをモータ軸にほぼ平行に形成された基端部54e1とモータ軸の中心方向に傾斜する傾斜部54e2の2つで構成したが、凸部54eをモータ軸の中心方向に傾斜する傾斜部54e2だけで構成してもよい。
図21は、手前球通路部材53の中での手前球噛防止片69の動作を説明する説明図である。なお、奥球通路部材52の中での奥球噛防止片68の動作も同様であるので省略する。手前球噛防止片69は樹脂で一体に整形された部材であるが、主に3種類の構成からなる。符号69aは、手前遊技球搬送体回転スペース53bの内壁を兼用した球噛防止片内壁部である。それ自体はリブがつけられており比較的変形しにくい部分である。符号69bは、湾曲し薄く構成された弾性部である。符号69cは軸受部であり、手前球通路部材53に設けられた軸にはめ込まれ、手前球噛防止片69を可動にする。この軸受部69cと弾性部69bの作用によって、手前遊技球搬送体回転スペース53bの内側から外側に向かう力を適度な弾性で規制する。
例えば、図21で遊技球B6が、遊技球取込装置50内に充分な遊技球がないなどの原因で、遊技球搬送体54に対する落入が遅れたと仮定する。このときにちょうど遊技球搬送体54の凸部54eの端点と手前球噛防止片69の初期位置での球噛防止片内壁部69aの端点69a0で遊技球の直径を挟んでしまった場合、もし、手前球噛防止片69の初期位置での球噛防止片内壁部69aの端点69a0が移動しなければ(2点鎖線部分)、遊技球はちょうど直径の2点で固定され、球噛が生じてしまう。
しかし、本実施形態では、手前球噛防止片69は、軸受部69cと弾性部69bの作用によって、球噛防止片内壁部69aは適度な弾性を持って後退し(実線部分)、その結果として遊技球搬送体54の回転に従い、遊技球B6は凹部54dに収納される。このようにして手前球噛防止片69と奥球噛防止片68は球噛みを防止する。